説明

液体の輸送システム

【課題】配管を通して容器に液体を供給するシステムであって、供給する液体の温度が容器内の気体の温度よりも低い場合に、水撃現象の発生を防止し、よって安全かつ安定的に液体を輸送することができるという優れた効果を有する液体の輸送システムを提供する。
【解決手段】配管の内部で供給液体と容器内の気体が接触しない構造を有する液体の輸送システム。構造の好ましい具体例としては配管の先端部に液シール構造をあげることができ、更に具体的には液シール構造がUシール及び/又はポットである構造をあげることができる。配管としては、特に制限がなく、たとえば直径15センチメートル程度の中空パイプをあげることができる。容器としては、特に制限がなく、たとえば容量50立方メートル程度の容器をあげることができ、その形状としては縦型又は横型の円筒状のものが一般である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の輸送システムに関するものである。更に詳しくは、本発明は、配管を通して容器に液体を供給するシステムであって、供給する液体の温度が容器内の気体の温度よりも低い場合に、水撃現象の発生を防止し、よって安全かつ安定的に液体を輸送することができるという優れた効果を有する液体の輸送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば水のような液体を配管を通して容器に輸送する場合、いわゆる水撃現象(ハンマーリング)が発生し、その衝撃により設備にダメージを与え、著しい場合には設備を破壊するという問題がある。ここで、水撃現象とは、液体の運動量が短時間に変化し、管路に衝撃を与える現象であり、配管で移送される比較的温度の低い液と容器内の比較的温度の高い気体が接触した際、配管内の比較的温度の高い気体が急激に冷却され凝縮する際に起こる圧力変動により発生すると考えられている。
【0003】
水撃現象を抑制する方法として、たとえば特許文献1には管に構造物を挿入する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の方法は、管に挿入する構造物が比較的複雑であること、また可動部を有するため設置およびメンテナンスに手間とコストがかかるという点において不都合である。
【0005】
【特許文献1】特開平11−148591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、従来の方法の不都合を解消し、配管を通して容器に液体を供給するシステムであって、水撃現象の発生を防止し、よって安全かつ安定的に液体を輸送することができるという優れた効果を有する液体の輸送システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、配管を通して容器に液体を供給するシステムにおいて、供給する液体の温度が容器内の気体の温度よりも低い場合に、配管の内部で供給液体と容器内の気体が接触しない構造を有する液体の輸送システムに係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、配管を通して容器に液体を供給するシステムであって、供給する液体の温度が容器内の気体の温度よりも低い場合に、水撃現象の発生を防止し、よって安全かつ安定的に液体を輸送することができるという優れた効果を有する液体の輸送システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の対象は、配管を通して容器に液体を供給するシステムである。
【0010】
配管としては、特に制限がなく、たとえば直径15センチメートル程度の中空パイプをあげることができる。
【0011】
容器としては、特に制限がなく、たとえば容量50立方メートル程度の容器をあげることができ、その形状としては縦型又は横型の円筒状のものが一般である。
【0012】
本発明の最大の特徴は、配管の内部で配管内の比較的温度の低い液と容器内の比較的温度の高い気体が接触しない構造を有する点にある。その構造の好ましい具体例としては配管の先端部に液シール構造をあげることができ、更に具体的には液シール構造がUシール及び/又はポットである構造をあげることができる。
【0013】
次に、本発明により前記の課題が解決される理由、換言すれば本発明の効果が発現する作用機構について説明する。
【0014】
配管内の液体の流速は、経済性、配管材質への影響を考慮し決定される場合が多いが、通常用いられる、移送流量に見合った配管サイズでも、容器への液体移送時、容器内に存在する気体が配管内に入り込むことが多い。この際、配管を通して移送される液体の温度より、容器より入り込む気体の温度が高いと、配管に入り込む気体が移送される液体により冷却され、凝縮し、その際に生じる圧力変動により水撃作用が生じる。
【0015】
従って、容器内の気体の配管内への進入を防止することで、水撃作用を防止することができる。たとえば配管先端部を容器内部まで延長し、液シール構造を有する対策を講じることで、容器中の気体が配管内へ進入するのを最小限に抑えることが可能となる。
【実施例】
【0016】
次に本発明を実施例により説明する。
実施例1
図1のように、直径15センチメートルの円筒形配管を46立方メートル、内温100℃の容器の内部まで挿入し、その先端部にシール構造を有する形状(この場合は、配管の内部で供給液体と容器内の気体が接触しない。)とした。配管を通して98℃の水を毎時40トンで移送したところ、当該配管における水撃作用は観測されなかった。
【0017】
比較例1
図2のように、円筒形配管を容器の壁に直接接続した構造を有するほかは、実施例1と同じ条件で98℃の水を毎時40トンで移送したところ、当該配管における水撃作用が観測された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1のシステムの概要を示す図である。
【図2】比較例1のシステムの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
[図1において]
1 液体移送配管
2 容器
3 シール構造物
[図2において]
1 液体移送配管
2 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を通して容器に液体を供給するシステムにおいて、供給する液体の温度が容器内の気体の温度よりも低い場合に、配管の内部で供給液体と容器内の気体が接触しない構造を有する液体の輸送システム。
【請求項2】
容器の内部であって、配管の先端部に液シール構造を有する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
液シール構造がUシール及び/又はポットである請求項2記載のシステム。
【請求項4】
液体が水である請求項1〜3のいずれか一の請求項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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