液体カートリッジ及び液体カートリッジの製造方法
【課題】液体消費装置への誤装着を防止する誤装着防止部を、ゴミを排出することなく高い強度で形成する。
【解決手段】液体カートリッジ100に収納された液体の種類に応じて液体カートリッジを選択的に装着可能にする、液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジの製造方法を提供する。本製造方法は、液体消費装置に装着する際に識別形状部と対向する外壁を有する液体カートリッジ100を準備する第1の工程と、装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには識別形状部と接触して液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには液体消費装置への装着を可能にする形状である誤装着防止部310を、液体カートリッジ100の外壁に熱加工によって形成する第2の工程と、を有する。
【解決手段】液体カートリッジ100に収納された液体の種類に応じて液体カートリッジを選択的に装着可能にする、液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジの製造方法を提供する。本製造方法は、液体消費装置に装着する際に識別形状部と対向する外壁を有する液体カートリッジ100を準備する第1の工程と、装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには識別形状部と接触して液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには液体消費装置への装着を可能にする形状である誤装着防止部310を、液体カートリッジ100の外壁に熱加工によって形成する第2の工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に対して交換可能に構成された液体カートリッジ及び当該液体カートリッジの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置としてのインクジェット記録装置は、記録媒体に対してインクなどの液体を吐出して記録を行う。インクジェット記録装置には、吐出するインクを収納するインクカートリッジを交換可能に構成されているものがある。通常、インクジェット記録装置は、異なる種類のインクを取り扱うことができるように、複数のインクカートリッジを搭載できる。
【0003】
交換式のインクカートリッジを搭載するインクジェット記録装置においては、インクカートリッジを装着する際にインクの混色を回避するために、誤装着を防止する構成を有しているものがある。これにより、インクジェット記録装置に対して、インクの種類に応じた適切な箇所に各々のインクカートリッジを装着することができる。
【0004】
特許文献1には、インクカートリッジに貯留するインクの種類ごとに定められた固有の係止部ボスがインクカートリッジの外装ケースに形成されることが記載されている。インクジェット記録装置の所定の箇所に、指定のインク種と異なる種類のインクを収納するインクカートリッジを装着しようとすると、インクジェット記録装置側に配置された係止部と、インクカートリッジの係止部ボスとが当たり、装着不可能な状態になる。これにより、インクカートリッジの誤装着が防止される。
【0005】
図11は、特許文献1に記載のインクカートリッジの模式図である。インクカートリッジ100は外装ケース600を有し、外装ケース600にはインクを導出するインク供給口700が配されている。さらに、誤装着を防止する係止部ボス620は、インクカートリッジに2つ以上設けられた後に、インクの種類に応じて決められた少なくとも1本のみを残して除去されている。インクジェット記録装置側の係止部は、対応する種類のインクを収納するインクカートリッジの、除去された係止部ボスがあった箇所630と対応する個所のみ突出している。そして、インク種の異なるインクカートリッジを装着しようとすると、記録装置側の係止部とインクカートリッジの係止部ボス620とが当たり、装着が防止される。この構成によれば、インクカートリッジの外装ケース600およびインクカートリッジを収納する記録装置側の収納部の金型が一種類で済み、コストダウンを実現することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−009687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、インクカートリッジの係止部ボスを削除するための具体的な方法については記載されていない。これに対し、切断加工によって係止部ボスの削除を行うことが考えられるが、この場合、切断した係止部ボスがゴミとして排出される。この排出されたゴミが、係止部ボスを切断する切断装置に挟まると、切断装置の稼働率を低下させてしまう恐れがある。
【0008】
また、切断加工を行うと、係止部ボスやその周辺に機械的なストレスがかかり、場合によっては、除去した係止部ボスの周辺に変形やクラックが生じ、インクカートリッジの外装ケースの機械的強度が低下することがある。特に、誤装着を防止するための係止部ボスの周辺の強度が低下すると、インクカートリッジを誤った箇所に装着しようとした場合に、係止部ボスが破損してストッパーとして機能しなくなり、誤装着が行われてインクの混色を引き起こす恐れがある。
【0009】
本発明は、液体を収納するカートリッジの外壁に形成される、誤装着を防止する部分を、ゴミの排出を防止しつつ高い強度で形成することを可能にする液体収納容器及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体カートリッジの製造方法は、液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジの製造方法に関する。本製造方法は、前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有する液体カートリッジを準備する第1の工程と、装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状である誤装着防止部を、前記液体カートリッジの前記外壁に熱加工によって形成する第2の工程と、を有する。
【0011】
また、本発明の液体カートリッジは、液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される。この液体カートリッジは、前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有し、装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状の、熱加工によって形成された誤装着防止部が、前記外壁に設けられている。
【0012】
さらに、上記の液体カートリッジと該液体カートリッジを装着した液体消費装置とを含む液体処理装置も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、誤装着防止部を熱加工によって形成するため、ゴミを排出することがない。また、加工時に誤装着防止部に機械的なストレスが与えられることがないため、誤装着防止部周辺の強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は実施形態1における熱加工工程前のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態1における熱加工工程前のインクカートリッジの正面図を示す。
【図2】(a)は実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジの正面図を示す。
【図3】実施形態1における熱加工工程中の様子を示す斜視図である。
【図4】実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジの装着防止部がプリンター側の識別形状部と不適合になっている状態を示す。
【図5】(a)は熱加工中の図3に示すB−B断面の拡大図を示す。(b)は熱加工工程後の被加工部の拡大図を示す。
【図6】(a)は実施形態2における熱加工工程前のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態2における熱加工工程前のインクカートリッジの正面図を示す。
【図7】(a)は実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジの正面図を示す。
【図8】実施形態2における熱加工工程中の状態を示す斜視図である。
【図9】実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジの誤装着防止部がプリンター側の識別形状部と不適合になっている状態を示す。
【図10】(a)は実施形態2における熱加工工程中の状態を示す。(b)は図10(a)に示す熱加工工程後の被加工部の拡大図を示す。
【図11】特許文献1に記載のインクカートリッジを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。以下では、インクを収納し、液体消費装置としてのプリンターに着脱可能なインクカートリッジを例に挙げて説明する。しかし、本発明は、これに限定されず、任意の液体を収納して当該液体を消費する任意の液体消費装置に着脱可能な液体カートリッジに適用できる。このような液体消費装置としては、例えばインクジェット記録装置のような液体吐出装置がある。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態において、インクカートリッジの製造方法は、インクカートリッジを準備する工程(第1の工程)と、プリンターへの誤装着を防止するための誤装着防止部をインクカートリッジの外壁に熱加工によって形成する熱加工工程(第2の工程)とを有する。ここで、プリンターへの誤装着とは、プリンターの特定の種類のインクを処理すべき被装着部に、当該インクの種類とは異なるインクを収納するインクカートリッジを装着しようとする行為を指す。
【0017】
図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態1における熱加工工程前のインクカートリッジ100の構成を示す斜視図および正面図である。インクカートリッジ100は、インクを収納する液体収納容器200と、カバー部材300とを含んでいる。液体収納容器200には、インクを導出する供給口210と、供給口210とプリンター側のニードル(不図示)との間の位置決めを行う位置決め部220とが、形成されている。本実施形態では、供給口210および位置決め部220は、インクカートリッジ100をプリンターに装着する際の装着方向の前面、つまり図1(b)に示されている面に配されている。カバー部材300の外壁には、プリンターの誤った箇所にインクカートリッジ100を装着するという誤装着を防止する誤装着防止部310となるべき領域315が、装着方向の前面に配されている。図1に示す例では、この領域315に、カバー部材300の外壁から突出する6本の柱状の識別用ピン320が設けられている。本実施形態1において、識別用ピン320は円柱形状であることが好ましい。なお、識別用ピン320の数は複数あればよく、識別用ピン320の形状は上記例に限らず、様々変更可能である。このインクカートリッジ100は、金型を用いて射出成型やブロー成型を行うことにより準備できる。この場合、インクカートリッジ100を構成する材料としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
図2(a)及び(b)は、熱加工工程後のインクカートリッジ100を示す斜視図および平面図である。熱加工工程では、図1に示す識別用ピン320のうちの少なくとも1つを除くピンを熱溶融させて誤装着防止部310を形成する。熱加工工程により、いくつかの識別用ピン320はつぶされているため、誤装着防止部310は、1本または複数本の識別用ピン320と、熱加工によってつぶされた被加工部330とを有している。図2(b)に示す例では、図中の左から3、5、6番目の識別用ピンが熱加工によって潰されて成る被加工部330を形成している。被加工部330は、識別用ピン320がつぶれて高さが低くなり、その直径が広がって、インクカートリッジ100の外壁と一体化している。実施形態1における識別用ピン320は、熱を加えて溶かしてつぶされている。熱加工工程における加工時間や加工のしやすさを考慮すると、識別用ピン320の形状は中空の円柱形状であることが好ましい。他の実施形態として、識別用ピン320は、中実の円柱形状であっても良い。ただし、識別用ピン320の形状は、これに限定されず、円錐や四角柱など様々な形状であって良い。
【0019】
図3は実施形態1における熱加工中の様子を示している。インクカートリッジ100を構成する部材は、融点が高くなく熱加工が行いやすいポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。本実施形態1のカバー部材300は、インクカートリッジ100の供給口210を落下などの衝撃から保護する部材であることが好ましい。そのため、カバー部材300としては、耐衝撃性の高いアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂、いわゆるABS樹脂を使用することがより好ましい。
【0020】
本実施形態1では、識別用ピン320は、一例として、高さ13.5mm、直径φ5mm、肉厚0.7mmの中空の円柱形状としている。熱加工は、熱加工手段としての熱溶着機(インパルスウェルダー)にて行うことができる。熱溶着機の加工ホーン500の形状は、直径φ8mm、加工面の凹部高さ1.6mmのものを使用した。加工ホーン500は、識別用ピン320の先端からインクカートリッジの外壁に向けて識別用ピン320を押圧しつつ熱を供給することが好ましい。
【0021】
熱加工の条件は、一例として、加工温度360℃、押し付け荷重78.4Nにて、加熱および押し付け時間を10.3秒、その後の冷却時間を8秒とした。このようにして、全体として約20秒で識別用ピン320をつぶすことが可能である。熱加工時には、複数の識別用ピン320を水平面に対して鉛直方向(重力方向)に立てた状態で、加工ホーン500によりピン320の先端からインクカートリッジの外壁に向けてピン320を押圧することが好ましい。これにより、加工時に溶融した被加工部330がその周囲に均等に広がるため、インクカートリッジの外壁の被加工部330の強度が増すという利点がある。また、加工ホーン500を、水平方向、または重力に対して下から識別用ピン320に押し当てる場合、加工時に溶融した部分が偏って流れて加工ホーン500の先端よりはみ出してバリを形成し、プリンター側の被装着部と干渉してしまう可能性がある。上記のように、熱加工にて、ゴミを排出することなく誤装着防止部310を形成することができる。また、熱加工では、被加工部330に機械的なストレスを与えないため、被加工部330の強度の低下を抑制できる。場合によっては、被加工部330が、インクカートリッジ100の外壁に肉厚部を形成するため、インクカートリッジの外壁の強度を増大させるこという効果もある。
【0022】
図4は、図2(a)のA−A断面の拡大図であり、実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジ100がプリンターに誤装着しようとした様子を示している。プリンターは、通常、異なる種類のインクカートリッジが装着される複数の被装着部を有している。各々の被装着部には、所望の種類のインクを収納したカートリッジのみを選択的に装着可能にする形状を有する識別形状部410が配されている。図4に示す例では、プリンターのフレーム400に、識別形状部410として複数のピンが設けられている。このピンの配置は、装着されるべきインクカートリッジのインクの種別ごとに定められている。
【0023】
図4では、誤装着しようとしているところであるため、インクカートリッジ100の誤装着防止部310がプリンター側の識別形状部410と接触して、インクカートリッジ100のプリンターへの装着が不能になっている状態を示している。プリンター側の識別形状部410は、装着されるべきインクカートリッジ100のインクの種類(色)に合わせて形成されており、このプリンター側の識別形状部410と誤装着防止部310の識別用ピン320が適合していない。そのため、識別形状部410と識別用ピン320とが突き当り、誤装着が防止される。この突き当たりにより、プリンター側のジョイント部(不図示)が、インクカートリッジ100の供給口210に挿入されることを防ぎ、インクの混色を防止できる。
【0024】
一方、インクカートリッジ100をプリンターの正しい箇所に装着する場合には、インクカートリッジ100の誤装着防止部310とプリンターの識別形状部410とが合致して、プリンターへの装着を可能にする。具体的には、インクカートリッジ100の誤装着防止部310において、被加工部330は、プリンターの識別形状部410を構成するピン位置に対応して設けられており、識別用ピン320は、識別形状部410を構成するピンが無い位置に設けられている。上記熱加工工程では、誤装着防止部310がこのように機能するように、所定の識別用ピン320を加工する。
【0025】
図5(a)は、実施形態1における熱加工工程中の様子を示している、図3によるB−B断面に相当する拡大図である。図5(a)では、加工ホーン500が識別用ピン320を溶解し変形させて、誤装着防止部310の被加工部330を形成した状態を示している。
【0026】
図5(b)は、図5(a)に示す熱加工後の被加工部330の拡大図であり、熱加工によって被加工部330に相当するインクカートリッジの外壁が肉厚に形成されている状態を示している。
【0027】
識別用ピン320が円柱形状の場合、熱加工によって図5(b)に示すように溶融した被加工部330は、カバー部材300の外壁、より具体的には誤装着防止部の底面340と一体化することで肉厚部が形成される。インクカートリッジの誤装着時、識別用ピン320への突き当たりの衝撃は誤装着防止部の底面340で受け止めることになる。この被加工部330の肉厚により、識別用ピン320の周辺の底面340は強度を増すため、誤装着時の衝撃を受けても底面340の変形や破損を抑制することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態1に示す熱加工方法では、図3に示すように加工ホーン500を識別用ピン320の先端から直進させて加工を行うことが好ましい。これによれば、誤装着防止部310の領域で、識別用ピン320同士のピッチ(中心間距離)は加工ホーン500の直径程度であって良く、識別用ピン320を配置するスペースを小さくすることができる。
【0029】
これに対し、識別用ピンを切断加工によって除去する場合には、識別用ピンを切断するための刃物をピンの根元に挿入しなければならないため、各々の識別用ピンの周りにはある一定のスペースが必要となる。そのため、識別用ピンを配置するスペースが大きくなってしまう。省スペースになるように識別用ピンを構成すると、識別用ピン自体のサイズを小さくする必要があり、誤装着防止部の強度が低下してしまう。よって、切断加工においては、誤装着防止部を省スペースで構成することが難しい。
【0030】
一方、本実施形態では、熱加工によって識別用ピンを加工するため、識別用ピン320を高密度に配置することができる。これにより省スペースで且つ、強度の高い誤装着防止部310を設けることが可能となる。
【0031】
上記実施形態では、第1の工程において、誤装着防止部となるべき領域315を、どのインクを収納するインクカートリッジに対しても同じ形状で形成しておき、その後、熱加工工程によってインクの種類ごとに異なる誤装着防止部310にしている。このようにすることで、第1の工程でインクカートリッジ100の全体的な形状を作成する際に、射出成型やブロー成型などで用いられる金型が一種類で済むため、金型の起工に要する費用を削減することができる。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態においても、インクカートリッジの製造方法は、インクカートリッジを準備する工程と、プリンターへの誤装着を防止するための誤装着防止部を当該インクカートリッジの外壁に熱加工によって形成する熱加工工程と、を有する。
【0033】
図6(a)及び(b)は実施形態2における熱加工工程前のインクカートリッジ100の構成を示す図である。インクカートリッジ100は液体収納容器200とカバー部材300とを含んでいる。液体収納容器200には、インクを導出する供給口210と、供給口210とプリンター側のニードルとの位置決めを行う位置決め部220とが、装着方向の前面に配されている。カバー部材300は、誤装着を防止する誤装着防止部310となるべき領域315が装着方向の前面に配されている。この領域315は、平面状の外壁からなる識別用平面325より形成される。
【0034】
図7(a)および(b)は、本発明の実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジ100の状態を示した図である。熱加工工程において、識別用平面325の一部を熱溶融して少なくとも1つの穴部(被加工部)330を開けて誤装着防止部310を形成する。したがって、誤装着防止部310は、平面状の外壁(識別用平面)325に形成された1または複数の穴部330を有する。
【0035】
本実施形態2においては、誤装着時にプリンター側の識別形状部と突き当たるべきインクカートリッジ側の形状を平面に形成している。図8は実施形態2における熱加工中の状態を示す斜視図である。図8に示すように、加工時に溶融した材料が被加工部330の周囲に均等に広げるため、上記の識別用平面325を水平面に平行に維持した状態で熱加工することが好ましい。このとき、識別用平面325の真上より加工ホーン500を直進させ押し当て加工を行うことが好ましい。熱加工によって、溶かされた外壁の一部が被加工部330の外周部に凸形状を形成することから、加工によってゴミを排出することなく識別用平面325を加工することが可能となる。また、被加工部330の周囲の外壁が肉厚になることから、穴部の周辺の強度を増大させることもできる。
【0036】
図9は、実施形態2における熱加工工程後の誤装着防止部310がプリンター側の識別形状部410に突き当たり装着不能な状態となっている様子を示し、図7(a)によるC−C断面の拡大図である。プリンター側の識別形状部410は、装着されるインクカートリッジ100に収納されるインクの種類に合わせて形成されている。図9に示す場合では、このプリンター側の識別形状部410と誤装着防止部310の識別用平面325とが適合していないため、識別形状部410と識別用平面325とが突き当り装着できない状態を示している。この突き当たりにより、インクカートリッジ100をプリンターに誤装着しようとしたときには、プリンター側のジョイント部(不図示)が供給口210に挿入されてインクの混色が生じることを防いでいる。
【0037】
図10(a)は、実施形態2における熱加工中の誤装着防止部310の被加工部330の状態を示し、図8によるD−D断面に想到する部分の拡大図を示している。誤装着防止部310となるべき識別用平面325が、熱せられた加工ホーン500によって溶解し拡張することで被加工部330が形成されている。
【0038】
図10(b)は、図10(a)に示す熱加工後の被加工部330の拡大図であり、熱加工によって被加工部330の外周部350が凸形状に形成されている状態を示している。熱加工によって識別用平面325を溶かして被加工部330が形成されている。その際に、溶融した部分にて被加工部330の外周部に凸形状を形成することができる。このように、被加工部330の外周が凸形状に形成されると、誤装着時の衝撃で破損の起点となる強度の弱い穴部330の周辺が肉厚になり、穴部330周辺の強度が増すことになる。これにより、誤装着時に誤装着防止部310の衝撃を受けても破損することなく、信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態2に示す熱加工方法では、図8に示すように、識別用平面325の真上から加工ホーン500を直進させて加工を行うことが好ましい。この場合、誤装着防止部310領域で加工するために必要とされるスペースは加工ホーン500の径程度の省スペースで済む。以上のことからも、熱加工では省スペースで且つ、強度の高い複数の誤装着防止部310を設けることが可能となる。
【0040】
上記実施形態1,2では、誤装着防止部310は、インクカートリッジ100のカバー部材300の外壁に設けられているが、誤装着防止部310は、インクカートリッジ100の、プリンター側の識別形状部と対向する外壁であればどこに設けられていても良い。
【0041】
インクカートリッジ100の、熱加工によって形成される誤装着防止部は、上述した形状に限定されず、様々変更可能である。プリンターは、インクカートリッジの被装着部に、処理すべきインクの種類ごとに定められ、インクカートリッジに収納されたインクの種類に応じて該インクカートリッジを選択的に装着可能にする形状をした識別形状部を有する。これに対し、インクカートリッジの誤装着防止部は、収納されるインクが上記の処理すべきインクと異なるときには識別形状部と接触してプリンターへの装着を不能にする形状をしている。その上で、誤装着防止部は、上記の処理すべきインクと同一であるときには識別形状部と合致してプリンターへのインクカートリッジの装着を可能にする形状をしていれば良い。
【0042】
さらに、上述した液体カートリッジと、当該液体カートリッジが装着される、例えばプリンターのような液体消費装置と、を備えた液体処理装置も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
100 インクカートリッジ
310 誤装着防止部
320 識別用ピン
325 識別用平面
330 被加工部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に対して交換可能に構成された液体カートリッジ及び当該液体カートリッジの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置としてのインクジェット記録装置は、記録媒体に対してインクなどの液体を吐出して記録を行う。インクジェット記録装置には、吐出するインクを収納するインクカートリッジを交換可能に構成されているものがある。通常、インクジェット記録装置は、異なる種類のインクを取り扱うことができるように、複数のインクカートリッジを搭載できる。
【0003】
交換式のインクカートリッジを搭載するインクジェット記録装置においては、インクカートリッジを装着する際にインクの混色を回避するために、誤装着を防止する構成を有しているものがある。これにより、インクジェット記録装置に対して、インクの種類に応じた適切な箇所に各々のインクカートリッジを装着することができる。
【0004】
特許文献1には、インクカートリッジに貯留するインクの種類ごとに定められた固有の係止部ボスがインクカートリッジの外装ケースに形成されることが記載されている。インクジェット記録装置の所定の箇所に、指定のインク種と異なる種類のインクを収納するインクカートリッジを装着しようとすると、インクジェット記録装置側に配置された係止部と、インクカートリッジの係止部ボスとが当たり、装着不可能な状態になる。これにより、インクカートリッジの誤装着が防止される。
【0005】
図11は、特許文献1に記載のインクカートリッジの模式図である。インクカートリッジ100は外装ケース600を有し、外装ケース600にはインクを導出するインク供給口700が配されている。さらに、誤装着を防止する係止部ボス620は、インクカートリッジに2つ以上設けられた後に、インクの種類に応じて決められた少なくとも1本のみを残して除去されている。インクジェット記録装置側の係止部は、対応する種類のインクを収納するインクカートリッジの、除去された係止部ボスがあった箇所630と対応する個所のみ突出している。そして、インク種の異なるインクカートリッジを装着しようとすると、記録装置側の係止部とインクカートリッジの係止部ボス620とが当たり、装着が防止される。この構成によれば、インクカートリッジの外装ケース600およびインクカートリッジを収納する記録装置側の収納部の金型が一種類で済み、コストダウンを実現することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−009687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、インクカートリッジの係止部ボスを削除するための具体的な方法については記載されていない。これに対し、切断加工によって係止部ボスの削除を行うことが考えられるが、この場合、切断した係止部ボスがゴミとして排出される。この排出されたゴミが、係止部ボスを切断する切断装置に挟まると、切断装置の稼働率を低下させてしまう恐れがある。
【0008】
また、切断加工を行うと、係止部ボスやその周辺に機械的なストレスがかかり、場合によっては、除去した係止部ボスの周辺に変形やクラックが生じ、インクカートリッジの外装ケースの機械的強度が低下することがある。特に、誤装着を防止するための係止部ボスの周辺の強度が低下すると、インクカートリッジを誤った箇所に装着しようとした場合に、係止部ボスが破損してストッパーとして機能しなくなり、誤装着が行われてインクの混色を引き起こす恐れがある。
【0009】
本発明は、液体を収納するカートリッジの外壁に形成される、誤装着を防止する部分を、ゴミの排出を防止しつつ高い強度で形成することを可能にする液体収納容器及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体カートリッジの製造方法は、液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジの製造方法に関する。本製造方法は、前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有する液体カートリッジを準備する第1の工程と、装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状である誤装着防止部を、前記液体カートリッジの前記外壁に熱加工によって形成する第2の工程と、を有する。
【0011】
また、本発明の液体カートリッジは、液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される。この液体カートリッジは、前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有し、装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状の、熱加工によって形成された誤装着防止部が、前記外壁に設けられている。
【0012】
さらに、上記の液体カートリッジと該液体カートリッジを装着した液体消費装置とを含む液体処理装置も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、誤装着防止部を熱加工によって形成するため、ゴミを排出することがない。また、加工時に誤装着防止部に機械的なストレスが与えられることがないため、誤装着防止部周辺の強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は実施形態1における熱加工工程前のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態1における熱加工工程前のインクカートリッジの正面図を示す。
【図2】(a)は実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジの正面図を示す。
【図3】実施形態1における熱加工工程中の様子を示す斜視図である。
【図4】実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジの装着防止部がプリンター側の識別形状部と不適合になっている状態を示す。
【図5】(a)は熱加工中の図3に示すB−B断面の拡大図を示す。(b)は熱加工工程後の被加工部の拡大図を示す。
【図6】(a)は実施形態2における熱加工工程前のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態2における熱加工工程前のインクカートリッジの正面図を示す。
【図7】(a)は実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジの斜視図を示す。(b)は実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジの正面図を示す。
【図8】実施形態2における熱加工工程中の状態を示す斜視図である。
【図9】実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジの誤装着防止部がプリンター側の識別形状部と不適合になっている状態を示す。
【図10】(a)は実施形態2における熱加工工程中の状態を示す。(b)は図10(a)に示す熱加工工程後の被加工部の拡大図を示す。
【図11】特許文献1に記載のインクカートリッジを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。以下では、インクを収納し、液体消費装置としてのプリンターに着脱可能なインクカートリッジを例に挙げて説明する。しかし、本発明は、これに限定されず、任意の液体を収納して当該液体を消費する任意の液体消費装置に着脱可能な液体カートリッジに適用できる。このような液体消費装置としては、例えばインクジェット記録装置のような液体吐出装置がある。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態において、インクカートリッジの製造方法は、インクカートリッジを準備する工程(第1の工程)と、プリンターへの誤装着を防止するための誤装着防止部をインクカートリッジの外壁に熱加工によって形成する熱加工工程(第2の工程)とを有する。ここで、プリンターへの誤装着とは、プリンターの特定の種類のインクを処理すべき被装着部に、当該インクの種類とは異なるインクを収納するインクカートリッジを装着しようとする行為を指す。
【0017】
図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態1における熱加工工程前のインクカートリッジ100の構成を示す斜視図および正面図である。インクカートリッジ100は、インクを収納する液体収納容器200と、カバー部材300とを含んでいる。液体収納容器200には、インクを導出する供給口210と、供給口210とプリンター側のニードル(不図示)との間の位置決めを行う位置決め部220とが、形成されている。本実施形態では、供給口210および位置決め部220は、インクカートリッジ100をプリンターに装着する際の装着方向の前面、つまり図1(b)に示されている面に配されている。カバー部材300の外壁には、プリンターの誤った箇所にインクカートリッジ100を装着するという誤装着を防止する誤装着防止部310となるべき領域315が、装着方向の前面に配されている。図1に示す例では、この領域315に、カバー部材300の外壁から突出する6本の柱状の識別用ピン320が設けられている。本実施形態1において、識別用ピン320は円柱形状であることが好ましい。なお、識別用ピン320の数は複数あればよく、識別用ピン320の形状は上記例に限らず、様々変更可能である。このインクカートリッジ100は、金型を用いて射出成型やブロー成型を行うことにより準備できる。この場合、インクカートリッジ100を構成する材料としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
図2(a)及び(b)は、熱加工工程後のインクカートリッジ100を示す斜視図および平面図である。熱加工工程では、図1に示す識別用ピン320のうちの少なくとも1つを除くピンを熱溶融させて誤装着防止部310を形成する。熱加工工程により、いくつかの識別用ピン320はつぶされているため、誤装着防止部310は、1本または複数本の識別用ピン320と、熱加工によってつぶされた被加工部330とを有している。図2(b)に示す例では、図中の左から3、5、6番目の識別用ピンが熱加工によって潰されて成る被加工部330を形成している。被加工部330は、識別用ピン320がつぶれて高さが低くなり、その直径が広がって、インクカートリッジ100の外壁と一体化している。実施形態1における識別用ピン320は、熱を加えて溶かしてつぶされている。熱加工工程における加工時間や加工のしやすさを考慮すると、識別用ピン320の形状は中空の円柱形状であることが好ましい。他の実施形態として、識別用ピン320は、中実の円柱形状であっても良い。ただし、識別用ピン320の形状は、これに限定されず、円錐や四角柱など様々な形状であって良い。
【0019】
図3は実施形態1における熱加工中の様子を示している。インクカートリッジ100を構成する部材は、融点が高くなく熱加工が行いやすいポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。本実施形態1のカバー部材300は、インクカートリッジ100の供給口210を落下などの衝撃から保護する部材であることが好ましい。そのため、カバー部材300としては、耐衝撃性の高いアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂、いわゆるABS樹脂を使用することがより好ましい。
【0020】
本実施形態1では、識別用ピン320は、一例として、高さ13.5mm、直径φ5mm、肉厚0.7mmの中空の円柱形状としている。熱加工は、熱加工手段としての熱溶着機(インパルスウェルダー)にて行うことができる。熱溶着機の加工ホーン500の形状は、直径φ8mm、加工面の凹部高さ1.6mmのものを使用した。加工ホーン500は、識別用ピン320の先端からインクカートリッジの外壁に向けて識別用ピン320を押圧しつつ熱を供給することが好ましい。
【0021】
熱加工の条件は、一例として、加工温度360℃、押し付け荷重78.4Nにて、加熱および押し付け時間を10.3秒、その後の冷却時間を8秒とした。このようにして、全体として約20秒で識別用ピン320をつぶすことが可能である。熱加工時には、複数の識別用ピン320を水平面に対して鉛直方向(重力方向)に立てた状態で、加工ホーン500によりピン320の先端からインクカートリッジの外壁に向けてピン320を押圧することが好ましい。これにより、加工時に溶融した被加工部330がその周囲に均等に広がるため、インクカートリッジの外壁の被加工部330の強度が増すという利点がある。また、加工ホーン500を、水平方向、または重力に対して下から識別用ピン320に押し当てる場合、加工時に溶融した部分が偏って流れて加工ホーン500の先端よりはみ出してバリを形成し、プリンター側の被装着部と干渉してしまう可能性がある。上記のように、熱加工にて、ゴミを排出することなく誤装着防止部310を形成することができる。また、熱加工では、被加工部330に機械的なストレスを与えないため、被加工部330の強度の低下を抑制できる。場合によっては、被加工部330が、インクカートリッジ100の外壁に肉厚部を形成するため、インクカートリッジの外壁の強度を増大させるこという効果もある。
【0022】
図4は、図2(a)のA−A断面の拡大図であり、実施形態1における熱加工工程後のインクカートリッジ100がプリンターに誤装着しようとした様子を示している。プリンターは、通常、異なる種類のインクカートリッジが装着される複数の被装着部を有している。各々の被装着部には、所望の種類のインクを収納したカートリッジのみを選択的に装着可能にする形状を有する識別形状部410が配されている。図4に示す例では、プリンターのフレーム400に、識別形状部410として複数のピンが設けられている。このピンの配置は、装着されるべきインクカートリッジのインクの種別ごとに定められている。
【0023】
図4では、誤装着しようとしているところであるため、インクカートリッジ100の誤装着防止部310がプリンター側の識別形状部410と接触して、インクカートリッジ100のプリンターへの装着が不能になっている状態を示している。プリンター側の識別形状部410は、装着されるべきインクカートリッジ100のインクの種類(色)に合わせて形成されており、このプリンター側の識別形状部410と誤装着防止部310の識別用ピン320が適合していない。そのため、識別形状部410と識別用ピン320とが突き当り、誤装着が防止される。この突き当たりにより、プリンター側のジョイント部(不図示)が、インクカートリッジ100の供給口210に挿入されることを防ぎ、インクの混色を防止できる。
【0024】
一方、インクカートリッジ100をプリンターの正しい箇所に装着する場合には、インクカートリッジ100の誤装着防止部310とプリンターの識別形状部410とが合致して、プリンターへの装着を可能にする。具体的には、インクカートリッジ100の誤装着防止部310において、被加工部330は、プリンターの識別形状部410を構成するピン位置に対応して設けられており、識別用ピン320は、識別形状部410を構成するピンが無い位置に設けられている。上記熱加工工程では、誤装着防止部310がこのように機能するように、所定の識別用ピン320を加工する。
【0025】
図5(a)は、実施形態1における熱加工工程中の様子を示している、図3によるB−B断面に相当する拡大図である。図5(a)では、加工ホーン500が識別用ピン320を溶解し変形させて、誤装着防止部310の被加工部330を形成した状態を示している。
【0026】
図5(b)は、図5(a)に示す熱加工後の被加工部330の拡大図であり、熱加工によって被加工部330に相当するインクカートリッジの外壁が肉厚に形成されている状態を示している。
【0027】
識別用ピン320が円柱形状の場合、熱加工によって図5(b)に示すように溶融した被加工部330は、カバー部材300の外壁、より具体的には誤装着防止部の底面340と一体化することで肉厚部が形成される。インクカートリッジの誤装着時、識別用ピン320への突き当たりの衝撃は誤装着防止部の底面340で受け止めることになる。この被加工部330の肉厚により、識別用ピン320の周辺の底面340は強度を増すため、誤装着時の衝撃を受けても底面340の変形や破損を抑制することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態1に示す熱加工方法では、図3に示すように加工ホーン500を識別用ピン320の先端から直進させて加工を行うことが好ましい。これによれば、誤装着防止部310の領域で、識別用ピン320同士のピッチ(中心間距離)は加工ホーン500の直径程度であって良く、識別用ピン320を配置するスペースを小さくすることができる。
【0029】
これに対し、識別用ピンを切断加工によって除去する場合には、識別用ピンを切断するための刃物をピンの根元に挿入しなければならないため、各々の識別用ピンの周りにはある一定のスペースが必要となる。そのため、識別用ピンを配置するスペースが大きくなってしまう。省スペースになるように識別用ピンを構成すると、識別用ピン自体のサイズを小さくする必要があり、誤装着防止部の強度が低下してしまう。よって、切断加工においては、誤装着防止部を省スペースで構成することが難しい。
【0030】
一方、本実施形態では、熱加工によって識別用ピンを加工するため、識別用ピン320を高密度に配置することができる。これにより省スペースで且つ、強度の高い誤装着防止部310を設けることが可能となる。
【0031】
上記実施形態では、第1の工程において、誤装着防止部となるべき領域315を、どのインクを収納するインクカートリッジに対しても同じ形状で形成しておき、その後、熱加工工程によってインクの種類ごとに異なる誤装着防止部310にしている。このようにすることで、第1の工程でインクカートリッジ100の全体的な形状を作成する際に、射出成型やブロー成型などで用いられる金型が一種類で済むため、金型の起工に要する費用を削減することができる。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態においても、インクカートリッジの製造方法は、インクカートリッジを準備する工程と、プリンターへの誤装着を防止するための誤装着防止部を当該インクカートリッジの外壁に熱加工によって形成する熱加工工程と、を有する。
【0033】
図6(a)及び(b)は実施形態2における熱加工工程前のインクカートリッジ100の構成を示す図である。インクカートリッジ100は液体収納容器200とカバー部材300とを含んでいる。液体収納容器200には、インクを導出する供給口210と、供給口210とプリンター側のニードルとの位置決めを行う位置決め部220とが、装着方向の前面に配されている。カバー部材300は、誤装着を防止する誤装着防止部310となるべき領域315が装着方向の前面に配されている。この領域315は、平面状の外壁からなる識別用平面325より形成される。
【0034】
図7(a)および(b)は、本発明の実施形態2における熱加工工程後のインクカートリッジ100の状態を示した図である。熱加工工程において、識別用平面325の一部を熱溶融して少なくとも1つの穴部(被加工部)330を開けて誤装着防止部310を形成する。したがって、誤装着防止部310は、平面状の外壁(識別用平面)325に形成された1または複数の穴部330を有する。
【0035】
本実施形態2においては、誤装着時にプリンター側の識別形状部と突き当たるべきインクカートリッジ側の形状を平面に形成している。図8は実施形態2における熱加工中の状態を示す斜視図である。図8に示すように、加工時に溶融した材料が被加工部330の周囲に均等に広げるため、上記の識別用平面325を水平面に平行に維持した状態で熱加工することが好ましい。このとき、識別用平面325の真上より加工ホーン500を直進させ押し当て加工を行うことが好ましい。熱加工によって、溶かされた外壁の一部が被加工部330の外周部に凸形状を形成することから、加工によってゴミを排出することなく識別用平面325を加工することが可能となる。また、被加工部330の周囲の外壁が肉厚になることから、穴部の周辺の強度を増大させることもできる。
【0036】
図9は、実施形態2における熱加工工程後の誤装着防止部310がプリンター側の識別形状部410に突き当たり装着不能な状態となっている様子を示し、図7(a)によるC−C断面の拡大図である。プリンター側の識別形状部410は、装着されるインクカートリッジ100に収納されるインクの種類に合わせて形成されている。図9に示す場合では、このプリンター側の識別形状部410と誤装着防止部310の識別用平面325とが適合していないため、識別形状部410と識別用平面325とが突き当り装着できない状態を示している。この突き当たりにより、インクカートリッジ100をプリンターに誤装着しようとしたときには、プリンター側のジョイント部(不図示)が供給口210に挿入されてインクの混色が生じることを防いでいる。
【0037】
図10(a)は、実施形態2における熱加工中の誤装着防止部310の被加工部330の状態を示し、図8によるD−D断面に想到する部分の拡大図を示している。誤装着防止部310となるべき識別用平面325が、熱せられた加工ホーン500によって溶解し拡張することで被加工部330が形成されている。
【0038】
図10(b)は、図10(a)に示す熱加工後の被加工部330の拡大図であり、熱加工によって被加工部330の外周部350が凸形状に形成されている状態を示している。熱加工によって識別用平面325を溶かして被加工部330が形成されている。その際に、溶融した部分にて被加工部330の外周部に凸形状を形成することができる。このように、被加工部330の外周が凸形状に形成されると、誤装着時の衝撃で破損の起点となる強度の弱い穴部330の周辺が肉厚になり、穴部330周辺の強度が増すことになる。これにより、誤装着時に誤装着防止部310の衝撃を受けても破損することなく、信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態2に示す熱加工方法では、図8に示すように、識別用平面325の真上から加工ホーン500を直進させて加工を行うことが好ましい。この場合、誤装着防止部310領域で加工するために必要とされるスペースは加工ホーン500の径程度の省スペースで済む。以上のことからも、熱加工では省スペースで且つ、強度の高い複数の誤装着防止部310を設けることが可能となる。
【0040】
上記実施形態1,2では、誤装着防止部310は、インクカートリッジ100のカバー部材300の外壁に設けられているが、誤装着防止部310は、インクカートリッジ100の、プリンター側の識別形状部と対向する外壁であればどこに設けられていても良い。
【0041】
インクカートリッジ100の、熱加工によって形成される誤装着防止部は、上述した形状に限定されず、様々変更可能である。プリンターは、インクカートリッジの被装着部に、処理すべきインクの種類ごとに定められ、インクカートリッジに収納されたインクの種類に応じて該インクカートリッジを選択的に装着可能にする形状をした識別形状部を有する。これに対し、インクカートリッジの誤装着防止部は、収納されるインクが上記の処理すべきインクと異なるときには識別形状部と接触してプリンターへの装着を不能にする形状をしている。その上で、誤装着防止部は、上記の処理すべきインクと同一であるときには識別形状部と合致してプリンターへのインクカートリッジの装着を可能にする形状をしていれば良い。
【0042】
さらに、上述した液体カートリッジと、当該液体カートリッジが装着される、例えばプリンターのような液体消費装置と、を備えた液体処理装置も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
100 インクカートリッジ
310 誤装着防止部
320 識別用ピン
325 識別用平面
330 被加工部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジの製造方法であって、
前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有する液体カートリッジを準備する第1の工程と、
装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状である誤装着防止部を、前記液体カートリッジの前記外壁に熱加工によって形成する第2の工程と、を有する液体カートリッジの製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、前記外壁に柱状の複数のピンを有する前記液体カートリッジを準備し、
前記第2の工程において、前記複数のピンのうちの少なくとも1つを除くピンを熱溶融させて前記誤装着防止部を形成する、請求項1に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記複数のピンを水平面に対して鉛直方向に立てた状態で、熱加工手段により前記ピンの先端から前記外壁に向けて前記ピンを押圧しつつ前記熱加工を行い、該ピンを前記外壁に一体化させる、請求項2に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項4】
前記複数のピンは円柱形状である、請求項3に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程において、前記外壁が平面状である前記液体カートリッジを準備し、
前記第2の工程において、前記外壁の一部を熱溶融して少なくとも1つの穴部を形成して前記誤装着防止部を形成する、請求項1に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項6】
前記外壁を水平面に平行に維持した状態で前記第2の工程を行う、請求項5に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項7】
液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジであって、
前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有し、
装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状の、熱加工によって形成された誤装着防止部が、前記外壁に設けられている、液体カートリッジ。
【請求項8】
前記誤装着防止部は、前記外壁に柱状に形成された1本または複数本のピンを有する、請求項7に記載の液体カートリッジ。
【請求項9】
前記ピンの周りの前記外壁は、該外壁から突出していたピンが熱加工によって潰されて成る肉厚部を有している、請求項8に記載の液体カートリッジ。
【請求項10】
前記誤装着防止部は、平面状の前記外壁に形成された1または複数の穴部を有する、請求項7に記載の液体カートリッジ。
【請求項11】
前記外壁の、前記穴部を取り囲む部分は、他の部分よりも厚くなっている、請求項10に記載の液体カートリッジ。
【請求項12】
液体を収納する液体カートリッジと、
前記液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置と、を備えた液体処理装置であって、
前記液体カートリッジは、前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有し、
装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への液体カートリッジの装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への液体カートリッジの装着を可能にする形状の、熱加工によって形成された誤装着防止部が、前記外壁に設けられている、液体処理装置。
【請求項1】
液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジの製造方法であって、
前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有する液体カートリッジを準備する第1の工程と、
装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状である誤装着防止部を、前記液体カートリッジの前記外壁に熱加工によって形成する第2の工程と、を有する液体カートリッジの製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、前記外壁に柱状の複数のピンを有する前記液体カートリッジを準備し、
前記第2の工程において、前記複数のピンのうちの少なくとも1つを除くピンを熱溶融させて前記誤装着防止部を形成する、請求項1に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記複数のピンを水平面に対して鉛直方向に立てた状態で、熱加工手段により前記ピンの先端から前記外壁に向けて前記ピンを押圧しつつ前記熱加工を行い、該ピンを前記外壁に一体化させる、請求項2に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項4】
前記複数のピンは円柱形状である、請求項3に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程において、前記外壁が平面状である前記液体カートリッジを準備し、
前記第2の工程において、前記外壁の一部を熱溶融して少なくとも1つの穴部を形成して前記誤装着防止部を形成する、請求項1に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項6】
前記外壁を水平面に平行に維持した状態で前記第2の工程を行う、請求項5に記載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項7】
液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置に装着される液体カートリッジであって、
前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有し、
装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への装着を可能にする形状の、熱加工によって形成された誤装着防止部が、前記外壁に設けられている、液体カートリッジ。
【請求項8】
前記誤装着防止部は、前記外壁に柱状に形成された1本または複数本のピンを有する、請求項7に記載の液体カートリッジ。
【請求項9】
前記ピンの周りの前記外壁は、該外壁から突出していたピンが熱加工によって潰されて成る肉厚部を有している、請求項8に記載の液体カートリッジ。
【請求項10】
前記誤装着防止部は、平面状の前記外壁に形成された1または複数の穴部を有する、請求項7に記載の液体カートリッジ。
【請求項11】
前記外壁の、前記穴部を取り囲む部分は、他の部分よりも厚くなっている、請求項10に記載の液体カートリッジ。
【請求項12】
液体を収納する液体カートリッジと、
前記液体カートリッジに収納された液体の種類に応じて該液体カートリッジを選択的に装着可能にする、前記液体カートリッジの種類ごとに定められた形状の識別形状部を備えた液体消費装置と、を備えた液体処理装置であって、
前記液体カートリッジは、前記液体消費装置に装着する際に前記識別形状部と対向する外壁を有し、
装着すべき液体カートリッジの種類が合致しないときには前記識別形状部と接触して前記液体消費装置への液体カートリッジの装着を不能にし、且つ装着すべき液体カートリッジの種類が合致するときには前記液体消費装置への液体カートリッジの装着を可能にする形状の、熱加工によって形成された誤装着防止部が、前記外壁に設けられている、液体処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−161931(P2012−161931A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21782(P2011−21782)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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