液体クロマトグラフィ用送液装置
【課題】 2種類以上の反応試薬を添加する液体クロマトグラフィにおいて、前記反応試薬の混合が容易であり、低流速域における正確な送液が可能であり、かつ検出器において安定したベースラインが得られる送液装置を提供すること。
【解決手段】 2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプとを備えた液体クロマトグラフィ用送液装置、および前記装置を備えた液体クロマトグラフィにより前記課題を解決する。
【解決手段】 2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプとを備えた液体クロマトグラフィ用送液装置、および前記装置を備えた液体クロマトグラフィにより前記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィで使用する送液装置に関する。特に本発明は反応液体クロマトグラフィで使用する反応試薬を送液する装置およびそれを備えた液体クロマトグラフィに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィは様々な試料成分の分離・分析に用いられている。試料成分の検出または定量を行なう場合、その成分に適した検出器が用いられる。最も多く用いられるのが、紫外/可視吸収検出器である。これは、試料成分と溶離液との紫外/可視吸収の差に基づき、試料成分の検出または定量を行なうものである。また、試料成分が紫外/可視吸収を有しない場合は、試料成分の屈折率と溶離液の屈折率との差に基づき検出または定量を行なう示差屈折計などが用いられる。しかしながら、これらの検出器は特異性が低いため、試料中に夾雑物が多い場合など、目的の試料成分のみを検出または定量するのが困難な場合がある。このような場合、試料成分を分析カラムで分離後、検出または定量したい試料成分と特異的に反応する試薬とを混合し、加熱などにより誘導体化した後、前記誘導体化した試料成分の紫外/可視吸収や蛍光を測定する方法がある。この方法は一般的にポストカラム反応液体クロマトグラフィと呼ばれている。
【0003】
図1にポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成の一態様を示す。試料注入バルブ(3)により注入された試料(5)は分析カラム(7)により各成分に分離される。分析カラム(7)から溶出した成分に、送液ポンプ(10a)により送液された反応試薬A(11a)および送液ポンプ(10b)により送液された反応試薬B(11b)が添加され、その後、適切な温度に温調された反応オーブン(9)内に設けた反応コイル(8)内を通ることで、検出または定量する成分に対して特異的な誘導体を生成する反応が進行する。その後、前記誘導体を特異的に検出する検出器(12)により主に目的成分を高感度に検出することで、検出または定量を行なう。
【0004】
一般的に、ポストカラム反応液体クロマトグラフィで使用する溶離液(2)は検出器(12)に対するバックグラウンドが低い傾向にあり、反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)は検出器(12)に対するバックグラウンドが比較的高い傾向にある。そのため、溶離液(2)と反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)との混合物、または反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)との混合物の組成に変化が生じると、検出器(12)のバックグラウンドが変動することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−046819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した課題の解決策として、いくつかの対策が検討されている。たとえば、分析カラム(7)から溶出した成分に反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)を添加する際に、まず反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)とを一旦合流させた後、ミキシングコイル(25)を通過することで反応試薬混合物をある程度均一化した後、分析カラム(7)から溶出した成分に添加して反応させる方法がある(図2参照)。
【0007】
また特許文献1には、溶離液の送液ポンプおよび反応試薬の各送液ポンプのすべてを単一のクロック信号に基づいた信号で制御することで送液の周期に規則性をもたせ、溶離液や反応試薬の組成変動を抑える方法を開示している。しかしながら、溶離液送液ポンプおよび反応試薬送液ポンプは、図3に示すプランジャポンプを通常用いるため、組成を均一にするのは困難である。
【0008】
プランジャポンプ(図3)は主にポンプヘッド(24)、プランジャ(16)、入口側/出口側逆止弁(18a、18b)から構成される。プランジャ(16)を引く(図3では左方向に移動する)操作により入口側逆止弁(18a)を経由してチャンバ(17)内に液体が吸引され(図3a)、プランジャ(16)を押す(図3では右方向に移動する)操作によりチャンバ(17)から出口側逆止弁(18b)を経由して液体が吐出される。通常は送液の安定性を向上させるため、吸引操作はできるだけ短時間で完了し吐出操作は一定速度で行なうよう制御を行なう。
【0009】
ポストカラム反応液体クロマトグラフィでは反応試薬を2種類用いることが多く、反応試薬を送液するポンプも2台必要となる。そのため、反応試薬の送液ポンプとしてプランジャポンプを用いた場合、送液パターンは例えば図4に示すようなパターンとなる。なお、図4では反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに同じ(具体的には反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに毎分20μL)場合の流速パターンである。反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに同じである場合、理論的には合算したときの流速パターンは図4cに示すように同一周期となる。しかしながら、図5に示すように反応試薬Aと反応試薬Bとで流速が僅かに異なる(具体的には反応試薬Aの流速が毎分20μL、反応試薬Bの流速が毎分19μL)場合、合算したときの流速パターンの周期は一定とはならない(図5c)。合算した時の送液パターンに周期性がないと、その後のミキシングコイルによる混合を行なっても均一な混合は非常に困難となり、その結果、検出器の安定性を損ね、検出精度の低下を招く。また、図4cのように合算したときの送液パターンの周期が一定であったとしても、混合試薬の組成を完全に一定にするにはポンプの周期の数倍容量のミキシングコイルが必要となる。プランジャポンプ(図3)の場合、プランジャ容量(すなわちチャンバ(17)の容量)は通常50μLから数百μLであり、流速が低くなるにつれてポンプの周期が長くなる。そのため、反応試薬の流速が比較的速い場合はポンプの周期を合わせる方法はある程度有効であるが、反応試薬の流速が遅い場合はポンプの周期を合わせる方法では混合が不十分であり検出器の安定性を損ねる問題点がある。
【0010】
次に反応試薬送液ポンプとして、低流量の送液に適すると考えられる図6に示す電磁式ダイアフラムポンプを用いる場合について検討する。電磁式ダイアフラムポンプ(図6)は、電磁コイル(28)に通電/遮断することで筒状のピストン(27)が上下運動し、前記上下運動と連動してダイアフラム(26)が収縮/膨張することで、送液を可能にしている。ダイアフラム(26)にはポートを2箇所(液体の入口用と出口用)設けており、各ポートにはそれぞれ簡易型の逆止弁(29a、29b)を設けている。これにより、ダイアフラム(26)の収縮/膨張による送液が一方向に制御される。流量はピストン(27)のストロークにより決まり、ストロークの調整はストローク調整止具(30)の調整によりピストン(27)の戻る位置を制限することで行なう。電磁式ダイアフラムポンプを、2種類の反応試薬を使用するポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける反応試薬送液ポンプに適用した場合、例えば図7に示す流路構成であれば反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)を交互に、かつ同じ周期で送液することが可能であり、前記2試薬の混合も容易に行なうことができる。反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに同じ場合における各反応試薬を送液するポンプの吐出パターンを図8に示す。なお、図6に示す電磁式ダイアフラムポンプの場合、前記2試薬の送液量が異なっていても、ストローク調整止具(30)を調整してピストン(27)の戻る位置を調整することで流量を変更することができるため、反応試薬Aを送液するポンプAと反応試薬Bを送液するポンプBの送液周期とが同期するように(図9に示す吐出パターンとなるように)調整することで、前記2試薬の混合は容易に行なうことが可能である。
【0011】
電磁式ダイアフラムポンプを用いて反応試薬Aと反応試薬Bとを交互に吐出する設定の場合、図11に示すようなポンプの下流側に負荷のない流路構成であれば、理論上、反応試薬は、試薬A−試薬B―試薬A―試薬B―試薬A―試薬B・・・の順で等量かつ規則的に液が流れる(図13a)。以上より電磁式ダイアフラムポンプは、ポストカラム反応液体クロマトグラフィの反応試薬用送液ポンプとして有用と思われる。
【0012】
しかしながら電磁式ダイアフラムポンプは、ピストンの駆動が電磁コイルへの通電/遮断により行なわれており、ダイアフラムの材質も通常は樹脂製であることから、耐圧性は0.2MPa以下とプランジャポンプ(図3)に比べると極端に低い。そのため、負荷圧が大きくなると電磁式ダイアフラムポンプで得られる流速が大きく変動する。つまり、同じ設定であっても負荷が大きくなるにつれ実際の流速が大きく減少してしまう問題がある(図10)。よって、図12に示すようなポンプの下流側に負荷がある流路構成の場合、反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)とをそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b)を用いて連続供給しようとすると、指定した流速が得られない状態が発生する。反応試薬Aを送液するポンプA(10a)と反応試薬Bを送液するポンプB(10b)とで負荷圧に対する流量特性が異なる場合、図13bに示すように反応試薬Aと反応試薬Bとが不均一に流れたり、場合によっては反応試薬のどちらかが全く流れない状態となり得る。したがって、電磁式ダイアフラムポンプをポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける反応試薬送液ポンプとして適用しようとする場合、単純に適用するだけでは、検出および定量精度の優れた液体クロマトグラフィを提供するのは困難である。
【0013】
そこで本発明の目的は、2種類以上の反応試薬を添加する液体クロマトグラフィにおいて、前記反応試薬の混合が容易であり、低流速域における正確な送液が可能であり、かつ検出器において安定したベースラインが得られる送液装置を提供することである。また本発明は、液体の吸引/吐出周期の制御がしやすい電磁式ダイアフラムポンプの特徴を生かしながら、耐圧性の低さを補うことで、反応試薬送液ポンプとして使用可能な装置を提供することを目的とする。さらにまた本発明は、そのような送液装置を備えた液体クロマトグラフィを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するためになされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0015】
第一の発明は、
2種類以上の試薬を混合し、前記混合した試薬を送液する、液体クロマトグラフィ用送液装置であって、
前記2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプと、
を備えた、液体クロマトグラフィ用送液装置である。
【0016】
第二の発明は、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプが電磁式ダイアフラムポンプである、第一の発明に記載の送液装置である。
【0017】
第三の発明は、
混合容器が、
2種類以上の試薬を受け入れるポートと、
貯留した混合試薬を送液するためのポートと、
混合試薬の貯留容量を一定に保つための試薬排出ポートと、
を備えた混合容器である、第一または第二の発明に記載の送液装置である。
【0018】
第四の発明は、
試料を導入する導入手段と、
導入手段から導入した試料を分離する分析カラムと、
分析カラムから溶出した成分を検出または定量する検出手段と、
を備えた液体クロマトグラフィであって、
分析カラムの上流側、または分析カラムの下流側から検出手段までの間に、第一から第三の発明に記載の送液装置を備えた、液体クロマトグラフィである。
【0019】
第五の発明は、
送液装置を分析カラムの下流側から検出手段までの間に備え、
分析カラムから溶出した成分に前記送液装置により送液された混合試薬を添加する位置から検出手段までの間に、前記溶出した成分と前記混合試薬とを反応させる反応手段をさらに備えた、第四の発明に記載の液体クロマトグラフィである。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の送液装置は、
2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を吸引し吐出する混合試薬送液ポンプと、
を備えていることを特徴としており、前記送液装置は試料を分析カラムに導入する前に試料成分を誘導体化し分析を行なうプレカラム反応液体クロマトグラフィ、または分析カラムから溶出した試料成分を誘導体化し分析を行なうポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として用いることができる。
【0022】
本発明の送液装置に備える、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプや混合試薬送液ポンプは、液体クロマトグラフィで通常用いられるポンプであればよく、プランジャポンプや電磁式ダイヤフラムポンプが例示できるが、試薬の送液量が少ない場合は、低流速領域において安定した送液が可能な電磁式ダイヤフラムポンプを、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合試薬送液ポンプとして用いると好ましい。なお、前記電磁式ダイアフラムポンプは、電磁コイル(ソレノイドともいう)に駆動制御されたピストンの往復動を、逆止弁を介して流路中に設けたダイアフラム室に伝達することにより送液力を得る動作原理を有した送液ポンプであればよい。電磁式ダイアフラムポンプにおいて、吸引時間と吐出時間すなわち送液周期は制御用パルス信号により仕様の範囲内で自由に設定することができ、流量はピストンのストロークを調節することで設定することができる。
【0023】
本発明の送液装置に備える混合容器の一態様としては、
それぞれのポンプで送液された2種類以上の試薬を受け入れるためのポートと、
混合された前記2種類以上の試薬を混合試薬送液ポンプで吸引し送液するためのポートと、
混合された前記2種類以上の試薬の容量を一定に保つための試薬排出ポート(オーバーフローポート)と、
を備えた混合容器をあげることができる。なお、本発明の送液装置をプレカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として使用する場合は、前記混合容器に、図25に示すような、試料導入手段により導入された試料を受け入れるためのポートをさらに備えてもよい。
【0024】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の送液装置の一態様を図14に示す。図14aおよび図14bの送液装置はともに、ポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける、分析カラムから溶出した成分を誘導体化させるための反応試薬を添加するための装置であって
反応試薬A(11a)送液用のポンプ(10a)と、
反応試薬B(11b)送液用のポンプ(10b)と、
混合容器(20)と、
混合反応試薬送液用ポンプ(19)とを備えている。図14aはポンプ(10a)で送液された反応試薬A(11a)とポンプ(10b)で送液された反応試薬B(11b)とが個別に混合容器(20)に導入される態様を、図14bはポンプ(10a)で送液された反応試薬A(11a)とポンプ(10b)で送液された反応試薬B(11b)とが事前に合流し混合した状態で混合容器(20)に供給される態様を、それぞれ示している。図14の送液装置では、反応試薬A(10a)と反応試薬B(10b)との混合比率を安定させるため、ほぼ大気圧下の状態(すなわち、ほぼ負荷がない状態)に設けた混合容器(20)に反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)をそれぞれ別のポンプ(10a、10b)を用いて供給し混合後、混合した反応試薬をポンプ(19)を用いて一定の周期で送液する。送液された混合反応試薬は分析カラムから溶出した試料成分と混合し、反応コイル(8)といった反応手段において前記成分を誘導体化させる。混合容器(20)は、
反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)を受け入れるための1つ以上のポート(好ましくは図14aに示すような2つのポート)と、
貯留した混合反応試薬をポンプ(19)で送液するためのポートと、
混合反応試薬の貯留容量を一定に保つための混合反応試薬排出ポート(オーバーフローポート、23)と、
を備えている。なお、反応試薬の送液量が少ない場合は、ポンプ(10a)、ポンプ(10b)、ポンプ(19)がいずれも電磁式ダイヤフラムポンプであると好ましい。
【0026】
反応試薬A送液用ポンプ(10a)および反応試薬B送液用ポンプ(10b)が電磁式ダイヤフラムポンプである場合、ポンプ(10a)およびポンプ(10b)はそれぞれ吸引/吐出を数秒周期で繰り返して混合容器(20)へ送液するのが好ましい。混合した反応試薬は混合容器(20)内で均一化され、混合反応試薬の一部は混合反応試薬送液ポンプ(19)により送液され、分析カラムから溶出した試料中の成分に添加される。なお、混合容器(20)の容量を超えた混合反応試薬は排出ポート(オーバーフローポート、23)から容器外に排出される。図14の送液装置のうち混合容器(20)付近を拡大した図を図15に示す。混合反応試薬の送液量(流速)Fmは反応試薬Aの流速Faと反応試薬Bの流速Fbの合計より若干少なく設定する。これにより、混合容器内の混合反応試薬の量は容器容量まで徐々に増加し、最終的には容器容量と同じ容量まで達する。以降、増加分は混合反応試薬排出ポート(オーバーフローポート)より系外に廃棄される(流速:Fw)。図15aは図14aの混合容器(20)付近を、図15bは図14bの混合容器(20)付近を、それぞれ拡大した図である。なお、混合容器(20)に供給される反応試薬Aおよび反応試薬Bの混合効率を向上させることを目的に、混合容器(20)内に攪拌子(21)を入れ、外部に設置された駆動ユニット(22)により攪拌子(21)を回転させることで反応試薬を攪拌させてもよい。また、反応試薬Aの流速Faと反応試薬Bの流速Fbとの合計(すなわちFa+Fb)と、混合反応試薬の流速Fmとの差(すなわちFa+Fb−Fm)は、出来るだけ小さい方が望ましい。その差分はオーバーフローFwとなり廃棄されるためである。
【0027】
Fa+Fb>Fm
Fw=Fa+Fb−Fm
反応試薬Aの流速:Fa、反応試薬Bの流速:Fb
混合反応試薬の流速:Fm、オーバーフローの流速:Fw
本発明の送液装置は、混合反応試薬の組成を決定する反応試薬A送液ポンプおよび反応試薬B送液ポンプには負荷が全く掛からない。そのため、反応試薬の送液量を常に一定の値に保つことができ、混合比率を一定に保つことができる。また混合試薬送液ポンプは下流に存在する反応コイルといった反応手段や検出手段により若干の負荷を受けるが、負荷の変動は少なく、送液量も安定している(図16参照)。
【0028】
反応試薬Aおよび反応試薬Bが混合容器に供給されるときの流速と、混合容器の容量とを仮定したときの混合容器内の各反応試薬の組成変化を数値計算した。図17は、反応試薬Aの流速Faを毎分10μL、反応試薬Bの流速Fbを毎分10μLとして仮定し、混合容器の容量を変化させたときの容器内の各反応試薬の組成を示したものであり(初期状態として混合容器内には反応液Aが100%満たされている)、図17aは容器容量を500μL、図17bは容器容量を200μL、図17cは容器容量を100μL、図17dは容器容量を50μL、図17eは容器容量を20μLとそれぞれ仮定した場合の組成変化を示している。時間の経過とともに混合容器内の混合反応試薬に占める反応試薬Bの割合が増加していき、最終的に反応試薬Aと反応試薬Bの割合がそれぞれ50%の状態で一定となる。たとえば混合容器の容量が50μLの場合は約10分で安定化し、混合容器の容量が大きいほど50%に到達する時間が長くなる。混合容器の容量は大きいほど反応試薬の混合は良好になるが、反応試薬Aおよび/または反応試薬Bの送液量を意図的に変化させた場合、実際には各反応試薬の組成が変化するのに時間を要してしまう。また、混合試薬の劣化などにより測定結果が変動する可能性を考慮すると、可能な限り混合容器の容量は小さい方が好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の液体クロマトグラフィ用送液装置は、
2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプと、
を備えていることを特徴としており、過大な背圧がかからない混合容器を備えることで、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプには負荷がほとんど掛からない。このため、これまで耐圧性の低さから適用が困難であった電磁式ダイアフラムポンプを、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプとして適用することが可能となる。電磁式ダイアフラムポンプは液体の吸引/吐出周期が制御しやすく、各試薬の送液量が同じ場合であっても異なる場合であっても、ピストンの戻り位置を調整することで送液量の変更が可能であり、送液周期が同期するように調整することも可能なため、反応試薬の混合を確実に行なうことができる。したがって、本発明の送液装置に備える、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプを電磁式ダイアフラムポンプにすることにより、特に低流量領域における送液安定性を正確に制御することができる。なお、本発明の送液装置に備えた混合容器に、混合試薬の容量を一定に保つための試薬排出ポート(オーバーフローポート)を設けると、混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプの吸引配管にエアが混入することを防止できるため、各試薬の流速を変化させたときに得られる混合比率を予測可能なものとすることができる。
【0030】
本発明の送液装置は、試料を分析カラムに導入する前に試料成分を誘導体化し分析を行なうプレカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として、または分析カラムから溶出した試料成分を誘導体化し分析を行なうポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として、液体クロマトグラフィに備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成の一態様(複数の反応試薬を直接反応系へ導入する場合)を示した図である。
【図2】ポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成の別の態様(複数の反応試薬を事前に混合後、反応系へ導入する場合)を示した図である。
【図3】一般的なプランジャポンプの構造を示した図である。aは液体を吸引する工程を、bは液体を吐出する工程を、それぞれ示している。
【図4】2種類の反応試薬をそれぞれのプランジャポンプを用いて送液したときの送液パターンの一例(反応試薬Aと反応試薬Bとの流速が完全に一致する場合)を示した図である。aは反応試薬Aの流速パターンを、bは反応試薬Bの流速パターンを、cは反応試薬Aと反応試薬Bの合計流速パターンを、それぞれ示している。
【図5】2種類の反応試薬をそれぞれのプランジャポンプを用いて送液したときの送液パターンの別の例(反応試薬Aと反応試薬Bとの流速が僅かに異なる場合)を示した図である。aは反応試薬Aの流速パターンを、bは反応試薬Bの流速パターンを、cは反応試薬Aと反応試薬Bの合計流速パターンを、それぞれ示している。
【図6】一般的な電磁式ダイアフラムポンプの構造を示した図である。aは液体を吸引する工程を、bは液体を吐出する工程を、それぞれ示している。
【図7】2種類の反応試薬を送液するポンプとして電磁式ダイアフラムポンプを用いたときの流路構成の一態様を示した図である。
【図8】2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの吐出パターンの一例(反応試薬Aと反応試薬Bの流速が完全に一致する場合)を示した図である。aは反応試薬Aを送液するポンプAの吐出パターンを、bは反応試薬Bを送液するポンプBの吐出パターンを、cはポンプAとポンプBの合計吐出パターンを、それぞれ示している。
【図9】2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの吐出パターンの別の例(反応試薬Aと反応試薬Bの流速が異なる場合)を示した図である。図aは反応試薬Aを送液するポンプAの吐出パターン、図bは反応試薬Bを送液するポンプBの吐出パターン、図cはポンプAとポンプBの合計吐出パターンを、それぞれ示している。
【図10】一般的な電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの負荷に対する流量特性の一例を示した図である。
【図11】ポンプの下流側に負荷がない流路構成において、2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの、各試薬の流れを示した図である。aはポンプAにより反応試薬Aを吐出する工程を、bはポンプBにより反応試薬Bを吐出する工程を、それぞれ示している。
【図12】ポンプの下流側に負荷がある流路構成において、2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの、各試薬の流れを示した図である。aはポンプAにより反応試薬Aを吐出する工程を、bはポンプBにより反応試薬Bを吐出する工程を、それぞれ示している。
【図13】図11および図12に示す流路構成において、2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの、各試薬の流れの模式図である。aは図11に示す流路構成における流れを、bは図12に示す流路構成における流れを、それぞれ示している。
【図14】本発明の送液装置の一態様を示した図である。aはそれぞれのポンプにより送液された2種類の反応試薬を混合容器へ直接導入した態様を、bはそれぞれのポンプにより送液された2種類の反応試薬を事前に混合後混合容器へ導入した態様を、それぞれ示している。
【図15】図14の送液装置のうち混合容器付近を拡大した図である。aは図14aの送液装置の混合容器付近を、bは図14bの送液装置の混合容器付近を、それぞれ拡大した図である。
【図16】本発明の送液装置を用いたときの、反応試薬A送液ポンプ(ポンプA)、反応試薬B送液ポンプ(ポンプB)および混合反応試薬送液ポンプの動作を示した図である。
【図17】本発明の送液装置を用いたときの、混合容器内の組成変化を示した図である。なお、反応試薬A(Fa)および反応試薬B(Fb)の流速は毎分10μLであり、aは混合容器容量が500μL、bは混合容器容量が200μL、cは混合容器容量が100μL、dは混合容器容量が50μL、eは混合容器容量が20μLの場合を、それぞれ示している。
【図18】実施例1で使用した本発明の送液装置を備えた液体クロマトグラフィの流路構成を示した図である。
【図19】実施例1で使用したグルコースの誘導体化反応を示した図である。
【図20】実施例1で使用した液体クロマトグラフィでグルコースを測定したときのクロマトグラムである。
【図21】実施例1の測定における反応試薬A送液ポンプ(ポンプA)、反応試薬B送液ポンプ(ポンプB)および混合反応試薬送液ポンプの動作を示した図である。
【図22】実施例2で使用した本発明の送液装置を備えた装置の流路構成を示した図である。
【図23】実施例2の測定における反応試薬A送液用ポンプ、反応試薬B送液用ポンプおよび混合反応試薬送液用ポンプの動作を示した図である。aは反応試薬A送液用ポンプの動作、bは反応試薬B送液用ポンプの動作、cは混合反応試薬送液用ポンプの動作を、それぞれ示している。
【図24】実施例2で得られた結果を示した図である。aは紫外検出器の出力変化、bは混合反応試薬の実際の流量変化を示している。
【図25】本発明の送液装置をプレカラム反応液体クロマトグラフィに適用したときの流路構成の一態様を示した図である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
実施例1
本発明の送液装置の効果を実証するため、本発明の送液装置を備えたポストカラム反応液体クロマトグラフィを用いて糖分析を行なった。
【0034】
アルドール類の糖は強アルカリ存在下で、2−シアノアセトアミド(2−cyanoacetamide)と加熱することで280nmから300nmに紫外吸収を有する物質(誘導体)に変換される(図19参照)。ここで変換された誘導体を検出器で検出することで糖分析を行なう。
【0035】
本実施例で使用したポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成を図18に示す。試料注入バルブ(3)から注入された試料(5)は、溶離液送液ポンプ(1)で送液された溶離液(2)により分析カラム(7)に移送され、順相クロマトグラフィにより各成分に分離される。分離した各成分に対し、2.5% 2−シアノアセトアミド溶液(反応試薬A(11a))および0.1M NaOH溶液(反応試薬B(11b))を本発明の送液装置を用いて混合/送液し、予熱コイル(32)で87℃に加熱した状態で連続的に添加後、45℃で保たれた反応オーブン(9)中で誘導体を生成させ、その生成物を紫外検出器(12)で検出した。なお、溶離液送液ポンプ(1)として東ソー製CCPMIIを、検出器(12)として東ソー製UV−8020(マイクロセル、波長300nm)を、カラムオーブン(9)として東ソー製CO−8020を、反応試薬および混合反応試薬送液ポンプ(10a、10b、19)としてKNF社製ソレノイド駆動ダイアフラム式送液ポンプFMM20を、それぞれ使用した。前記検出器の下流には加熱による気泡の発生を防ぐ目的で抵抗管(31a)を配し、若干検出器に圧力が掛かるようにした。電磁式ダイアフラムポンプの下流(吐出部側)には、実送液量を抑える目的と脈流を緩和する目的で抵抗管(31b、31c)を配した。混合容器(20)としては約300μL容量のガラス製容器を使用した。溶離液(2)としては20mMのトリエチルアミンを含むアセトニトリル/水(75/25)、分析カラム(7)としては順相クロマトグラフィーカラム(東ソー製、TSKgel Amide−80、粒径:5μm、内径:1mm、長さ:200mm)を使用し、溶離液送液ポンプ(1)を用いて毎分27μLで溶離液の送液を行なった。反応コイル(8)は内径0.2mm、長さ2mのPTFEチューブを使用した。試料(5)は、グルコース(濃度25μg/mL)を用い、試料注入バルブ(3)を用いて0.5μLを分析カラム(7)に導入した。
【0036】
反応試薬A(2−シアノアセトアミド溶液、11a)、反応試薬B(0.1M NaOH溶液、11b)および反応試薬Aと反応試薬Bとが混合した試薬を送液するための電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b、19)の吸引/吐出周期(設定値)および実際の流速(実測)は表1の通りである。また、本実施例における送液パターン(制御値)を図21に示す。
【0037】
【表1】
前記条件で得られたクロマトグラムを図20に、グルコースの溶出時間と面積、高さの再現性(n=10)をまとめた表を表2にそれぞれ示す。溶出時間のCVが0.26%、面積のCVが4.5%と良好な値を示しており、2つの反応試薬が安定的に送液されていることを示唆している。
【0038】
【表2】
実施例2
本発明の送液装置の効果を実証するため、紫外吸収を有する液体と紫外吸収を有しない液体(純水)を送液し、送液安定性、混合効率の検証を実施した。
【0039】
本実施例で使用した装置の流路構成を図22に示す。反応試薬A(11a)として純水、反応試薬B(11b)として1%アセトン水溶液を使用し、それぞれ電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b)を用い、4秒周期で混合容器(20)へ送液した。さらに、前記混合容器(20)内の混合溶液を、別の電磁式ダイアフラムポンプ(19)で10秒周期で送液し、その組成変化を紫外検出器(12)(検出波長:254nm)でモニタした。電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b)の脈動を抑える目的で下流に抵抗管(31b、31c)を設けている。紫外検出器(12)としてK−Mac製UV−Vis Spectrometer Detector(Spectra Academy)を、電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b、19)としてKNF社製ソレノイド駆動ダイアフラム式送液ポンプFMM20を、それぞれ使用した。紫外検出器(12)の下流には、実際の流量をリアルタイムで計測する目的で、電子天秤(34)および時間と重量増加から流量を積算する流量計算機(35)を設けている。なお、混合容器(20)は約300μL容量のガラス製容器を使用した。
【0040】
本実施例における送液パターン(制御値)を図23に示す。図24は0分から120分までは反応試薬Bのみを送液、120分から270分までは反応試薬Aのみを送液、270分から350分までは反応試薬Aおよび反応試薬Bの送液を行なった場合の、実際に測定された流速および紫外吸収の変化を示したものである。図23cと図24bとの比較からもわかるように、電磁式ダイアフラムポンプによる吸引/吐出動作は間欠的に行なうものの、実際の流量はほぼ一定で連続的な値を示していることがわかる。これは、電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b、19)の吸引/吐出の周期が早く、下流に設置した抵抗管(31a)が脈流を緩和させているためである。また、図24aと図24bとの比較からわかるように、最終的に送液される溶液の組成が変化しても、実際の流量はほとんど変化せず、一定であることが分かる。
【0041】
実施例3
本発明の送液装置を備えたプレカラム反応液体クロマトグラフィの一態様を図25に示す。図25に示す液体クロマトグラフィにおいて、本発明の送液装置に備える混合容器(20)には、
試料導入手段(36)により導入された試料(5)を受け入れるためのポートと、
反応試薬A送液ポンプ(10a)により送液された反応試薬A(11a)を受け入れるためのポートと、
反応試薬B送液ポンプ(10b)により送液された反応試薬B(11b)を受け入れるためのポートと、
反応試薬A、反応試薬Bおよび試料が混合した溶液を送液ポンプ(19)で送液するためのポートと、
反応試薬A、反応試薬Bおよび試料の混合溶液の容量を一定に保つための試薬排出ポート(23)と、
を設けている。
【0042】
試料導入手段(36)により導入された試料(5)は混合容器(20)へ導入され、混合容器(20)内で反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)と混合する。前記混合した溶液は、送液ポンプ(19)により反応オーブン(9)内に設けた反応コイル(8)内を通過することで前記試料成分の誘導体化反応を行なう。前記誘導体化された試料成分は液体クロマトグラフィ試料注入バルブ(3)へ導入され、前記注入バルブ(3)の切り替えにより分析カラム(7)へ導入することにより特異的検出を行なう。
【符号の説明】
【0043】
1:溶離液送液ポンプ
2:溶離液
3:試料注入バルブ
4:試料ループ
5:試料
6:カラムオーブン
7:分析カラム
8:反応コイル
9:反応オーブン
10:反応試薬送液ポンプ
11:反応試薬
12:検出器
13:廃液
14:カム
15:カム回転中心
16:プランジャ
17:チャンバ
18:逆止弁
19:混合反応試薬送液ポンプ
20:混合容器
21:攪拌子
22:ミキサ(駆動ユニット)
23:試薬排出ポート
24:ポンプヘッド
25:ミキシングコイル
26:ダイアフラム
27:ピストン
28:電磁コイル
29:電磁式ポンプの逆止弁
30:ストローク調整止具
31:抵抗管
32:予熱コイル
33:キャップ
34:電子天秤
35:流量計算器
36:試料導入手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィで使用する送液装置に関する。特に本発明は反応液体クロマトグラフィで使用する反応試薬を送液する装置およびそれを備えた液体クロマトグラフィに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィは様々な試料成分の分離・分析に用いられている。試料成分の検出または定量を行なう場合、その成分に適した検出器が用いられる。最も多く用いられるのが、紫外/可視吸収検出器である。これは、試料成分と溶離液との紫外/可視吸収の差に基づき、試料成分の検出または定量を行なうものである。また、試料成分が紫外/可視吸収を有しない場合は、試料成分の屈折率と溶離液の屈折率との差に基づき検出または定量を行なう示差屈折計などが用いられる。しかしながら、これらの検出器は特異性が低いため、試料中に夾雑物が多い場合など、目的の試料成分のみを検出または定量するのが困難な場合がある。このような場合、試料成分を分析カラムで分離後、検出または定量したい試料成分と特異的に反応する試薬とを混合し、加熱などにより誘導体化した後、前記誘導体化した試料成分の紫外/可視吸収や蛍光を測定する方法がある。この方法は一般的にポストカラム反応液体クロマトグラフィと呼ばれている。
【0003】
図1にポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成の一態様を示す。試料注入バルブ(3)により注入された試料(5)は分析カラム(7)により各成分に分離される。分析カラム(7)から溶出した成分に、送液ポンプ(10a)により送液された反応試薬A(11a)および送液ポンプ(10b)により送液された反応試薬B(11b)が添加され、その後、適切な温度に温調された反応オーブン(9)内に設けた反応コイル(8)内を通ることで、検出または定量する成分に対して特異的な誘導体を生成する反応が進行する。その後、前記誘導体を特異的に検出する検出器(12)により主に目的成分を高感度に検出することで、検出または定量を行なう。
【0004】
一般的に、ポストカラム反応液体クロマトグラフィで使用する溶離液(2)は検出器(12)に対するバックグラウンドが低い傾向にあり、反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)は検出器(12)に対するバックグラウンドが比較的高い傾向にある。そのため、溶離液(2)と反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)との混合物、または反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)との混合物の組成に変化が生じると、検出器(12)のバックグラウンドが変動することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−046819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した課題の解決策として、いくつかの対策が検討されている。たとえば、分析カラム(7)から溶出した成分に反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)を添加する際に、まず反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)とを一旦合流させた後、ミキシングコイル(25)を通過することで反応試薬混合物をある程度均一化した後、分析カラム(7)から溶出した成分に添加して反応させる方法がある(図2参照)。
【0007】
また特許文献1には、溶離液の送液ポンプおよび反応試薬の各送液ポンプのすべてを単一のクロック信号に基づいた信号で制御することで送液の周期に規則性をもたせ、溶離液や反応試薬の組成変動を抑える方法を開示している。しかしながら、溶離液送液ポンプおよび反応試薬送液ポンプは、図3に示すプランジャポンプを通常用いるため、組成を均一にするのは困難である。
【0008】
プランジャポンプ(図3)は主にポンプヘッド(24)、プランジャ(16)、入口側/出口側逆止弁(18a、18b)から構成される。プランジャ(16)を引く(図3では左方向に移動する)操作により入口側逆止弁(18a)を経由してチャンバ(17)内に液体が吸引され(図3a)、プランジャ(16)を押す(図3では右方向に移動する)操作によりチャンバ(17)から出口側逆止弁(18b)を経由して液体が吐出される。通常は送液の安定性を向上させるため、吸引操作はできるだけ短時間で完了し吐出操作は一定速度で行なうよう制御を行なう。
【0009】
ポストカラム反応液体クロマトグラフィでは反応試薬を2種類用いることが多く、反応試薬を送液するポンプも2台必要となる。そのため、反応試薬の送液ポンプとしてプランジャポンプを用いた場合、送液パターンは例えば図4に示すようなパターンとなる。なお、図4では反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに同じ(具体的には反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに毎分20μL)場合の流速パターンである。反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに同じである場合、理論的には合算したときの流速パターンは図4cに示すように同一周期となる。しかしながら、図5に示すように反応試薬Aと反応試薬Bとで流速が僅かに異なる(具体的には反応試薬Aの流速が毎分20μL、反応試薬Bの流速が毎分19μL)場合、合算したときの流速パターンの周期は一定とはならない(図5c)。合算した時の送液パターンに周期性がないと、その後のミキシングコイルによる混合を行なっても均一な混合は非常に困難となり、その結果、検出器の安定性を損ね、検出精度の低下を招く。また、図4cのように合算したときの送液パターンの周期が一定であったとしても、混合試薬の組成を完全に一定にするにはポンプの周期の数倍容量のミキシングコイルが必要となる。プランジャポンプ(図3)の場合、プランジャ容量(すなわちチャンバ(17)の容量)は通常50μLから数百μLであり、流速が低くなるにつれてポンプの周期が長くなる。そのため、反応試薬の流速が比較的速い場合はポンプの周期を合わせる方法はある程度有効であるが、反応試薬の流速が遅い場合はポンプの周期を合わせる方法では混合が不十分であり検出器の安定性を損ねる問題点がある。
【0010】
次に反応試薬送液ポンプとして、低流量の送液に適すると考えられる図6に示す電磁式ダイアフラムポンプを用いる場合について検討する。電磁式ダイアフラムポンプ(図6)は、電磁コイル(28)に通電/遮断することで筒状のピストン(27)が上下運動し、前記上下運動と連動してダイアフラム(26)が収縮/膨張することで、送液を可能にしている。ダイアフラム(26)にはポートを2箇所(液体の入口用と出口用)設けており、各ポートにはそれぞれ簡易型の逆止弁(29a、29b)を設けている。これにより、ダイアフラム(26)の収縮/膨張による送液が一方向に制御される。流量はピストン(27)のストロークにより決まり、ストロークの調整はストローク調整止具(30)の調整によりピストン(27)の戻る位置を制限することで行なう。電磁式ダイアフラムポンプを、2種類の反応試薬を使用するポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける反応試薬送液ポンプに適用した場合、例えば図7に示す流路構成であれば反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)を交互に、かつ同じ周期で送液することが可能であり、前記2試薬の混合も容易に行なうことができる。反応試薬Aと反応試薬Bの流速がともに同じ場合における各反応試薬を送液するポンプの吐出パターンを図8に示す。なお、図6に示す電磁式ダイアフラムポンプの場合、前記2試薬の送液量が異なっていても、ストローク調整止具(30)を調整してピストン(27)の戻る位置を調整することで流量を変更することができるため、反応試薬Aを送液するポンプAと反応試薬Bを送液するポンプBの送液周期とが同期するように(図9に示す吐出パターンとなるように)調整することで、前記2試薬の混合は容易に行なうことが可能である。
【0011】
電磁式ダイアフラムポンプを用いて反応試薬Aと反応試薬Bとを交互に吐出する設定の場合、図11に示すようなポンプの下流側に負荷のない流路構成であれば、理論上、反応試薬は、試薬A−試薬B―試薬A―試薬B―試薬A―試薬B・・・の順で等量かつ規則的に液が流れる(図13a)。以上より電磁式ダイアフラムポンプは、ポストカラム反応液体クロマトグラフィの反応試薬用送液ポンプとして有用と思われる。
【0012】
しかしながら電磁式ダイアフラムポンプは、ピストンの駆動が電磁コイルへの通電/遮断により行なわれており、ダイアフラムの材質も通常は樹脂製であることから、耐圧性は0.2MPa以下とプランジャポンプ(図3)に比べると極端に低い。そのため、負荷圧が大きくなると電磁式ダイアフラムポンプで得られる流速が大きく変動する。つまり、同じ設定であっても負荷が大きくなるにつれ実際の流速が大きく減少してしまう問題がある(図10)。よって、図12に示すようなポンプの下流側に負荷がある流路構成の場合、反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)とをそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b)を用いて連続供給しようとすると、指定した流速が得られない状態が発生する。反応試薬Aを送液するポンプA(10a)と反応試薬Bを送液するポンプB(10b)とで負荷圧に対する流量特性が異なる場合、図13bに示すように反応試薬Aと反応試薬Bとが不均一に流れたり、場合によっては反応試薬のどちらかが全く流れない状態となり得る。したがって、電磁式ダイアフラムポンプをポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける反応試薬送液ポンプとして適用しようとする場合、単純に適用するだけでは、検出および定量精度の優れた液体クロマトグラフィを提供するのは困難である。
【0013】
そこで本発明の目的は、2種類以上の反応試薬を添加する液体クロマトグラフィにおいて、前記反応試薬の混合が容易であり、低流速域における正確な送液が可能であり、かつ検出器において安定したベースラインが得られる送液装置を提供することである。また本発明は、液体の吸引/吐出周期の制御がしやすい電磁式ダイアフラムポンプの特徴を生かしながら、耐圧性の低さを補うことで、反応試薬送液ポンプとして使用可能な装置を提供することを目的とする。さらにまた本発明は、そのような送液装置を備えた液体クロマトグラフィを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するためになされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0015】
第一の発明は、
2種類以上の試薬を混合し、前記混合した試薬を送液する、液体クロマトグラフィ用送液装置であって、
前記2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプと、
を備えた、液体クロマトグラフィ用送液装置である。
【0016】
第二の発明は、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプが電磁式ダイアフラムポンプである、第一の発明に記載の送液装置である。
【0017】
第三の発明は、
混合容器が、
2種類以上の試薬を受け入れるポートと、
貯留した混合試薬を送液するためのポートと、
混合試薬の貯留容量を一定に保つための試薬排出ポートと、
を備えた混合容器である、第一または第二の発明に記載の送液装置である。
【0018】
第四の発明は、
試料を導入する導入手段と、
導入手段から導入した試料を分離する分析カラムと、
分析カラムから溶出した成分を検出または定量する検出手段と、
を備えた液体クロマトグラフィであって、
分析カラムの上流側、または分析カラムの下流側から検出手段までの間に、第一から第三の発明に記載の送液装置を備えた、液体クロマトグラフィである。
【0019】
第五の発明は、
送液装置を分析カラムの下流側から検出手段までの間に備え、
分析カラムから溶出した成分に前記送液装置により送液された混合試薬を添加する位置から検出手段までの間に、前記溶出した成分と前記混合試薬とを反応させる反応手段をさらに備えた、第四の発明に記載の液体クロマトグラフィである。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の送液装置は、
2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を吸引し吐出する混合試薬送液ポンプと、
を備えていることを特徴としており、前記送液装置は試料を分析カラムに導入する前に試料成分を誘導体化し分析を行なうプレカラム反応液体クロマトグラフィ、または分析カラムから溶出した試料成分を誘導体化し分析を行なうポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として用いることができる。
【0022】
本発明の送液装置に備える、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプや混合試薬送液ポンプは、液体クロマトグラフィで通常用いられるポンプであればよく、プランジャポンプや電磁式ダイヤフラムポンプが例示できるが、試薬の送液量が少ない場合は、低流速領域において安定した送液が可能な電磁式ダイヤフラムポンプを、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合試薬送液ポンプとして用いると好ましい。なお、前記電磁式ダイアフラムポンプは、電磁コイル(ソレノイドともいう)に駆動制御されたピストンの往復動を、逆止弁を介して流路中に設けたダイアフラム室に伝達することにより送液力を得る動作原理を有した送液ポンプであればよい。電磁式ダイアフラムポンプにおいて、吸引時間と吐出時間すなわち送液周期は制御用パルス信号により仕様の範囲内で自由に設定することができ、流量はピストンのストロークを調節することで設定することができる。
【0023】
本発明の送液装置に備える混合容器の一態様としては、
それぞれのポンプで送液された2種類以上の試薬を受け入れるためのポートと、
混合された前記2種類以上の試薬を混合試薬送液ポンプで吸引し送液するためのポートと、
混合された前記2種類以上の試薬の容量を一定に保つための試薬排出ポート(オーバーフローポート)と、
を備えた混合容器をあげることができる。なお、本発明の送液装置をプレカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として使用する場合は、前記混合容器に、図25に示すような、試料導入手段により導入された試料を受け入れるためのポートをさらに備えてもよい。
【0024】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の送液装置の一態様を図14に示す。図14aおよび図14bの送液装置はともに、ポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける、分析カラムから溶出した成分を誘導体化させるための反応試薬を添加するための装置であって
反応試薬A(11a)送液用のポンプ(10a)と、
反応試薬B(11b)送液用のポンプ(10b)と、
混合容器(20)と、
混合反応試薬送液用ポンプ(19)とを備えている。図14aはポンプ(10a)で送液された反応試薬A(11a)とポンプ(10b)で送液された反応試薬B(11b)とが個別に混合容器(20)に導入される態様を、図14bはポンプ(10a)で送液された反応試薬A(11a)とポンプ(10b)で送液された反応試薬B(11b)とが事前に合流し混合した状態で混合容器(20)に供給される態様を、それぞれ示している。図14の送液装置では、反応試薬A(10a)と反応試薬B(10b)との混合比率を安定させるため、ほぼ大気圧下の状態(すなわち、ほぼ負荷がない状態)に設けた混合容器(20)に反応試薬A(11a)と反応試薬B(11b)をそれぞれ別のポンプ(10a、10b)を用いて供給し混合後、混合した反応試薬をポンプ(19)を用いて一定の周期で送液する。送液された混合反応試薬は分析カラムから溶出した試料成分と混合し、反応コイル(8)といった反応手段において前記成分を誘導体化させる。混合容器(20)は、
反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)を受け入れるための1つ以上のポート(好ましくは図14aに示すような2つのポート)と、
貯留した混合反応試薬をポンプ(19)で送液するためのポートと、
混合反応試薬の貯留容量を一定に保つための混合反応試薬排出ポート(オーバーフローポート、23)と、
を備えている。なお、反応試薬の送液量が少ない場合は、ポンプ(10a)、ポンプ(10b)、ポンプ(19)がいずれも電磁式ダイヤフラムポンプであると好ましい。
【0026】
反応試薬A送液用ポンプ(10a)および反応試薬B送液用ポンプ(10b)が電磁式ダイヤフラムポンプである場合、ポンプ(10a)およびポンプ(10b)はそれぞれ吸引/吐出を数秒周期で繰り返して混合容器(20)へ送液するのが好ましい。混合した反応試薬は混合容器(20)内で均一化され、混合反応試薬の一部は混合反応試薬送液ポンプ(19)により送液され、分析カラムから溶出した試料中の成分に添加される。なお、混合容器(20)の容量を超えた混合反応試薬は排出ポート(オーバーフローポート、23)から容器外に排出される。図14の送液装置のうち混合容器(20)付近を拡大した図を図15に示す。混合反応試薬の送液量(流速)Fmは反応試薬Aの流速Faと反応試薬Bの流速Fbの合計より若干少なく設定する。これにより、混合容器内の混合反応試薬の量は容器容量まで徐々に増加し、最終的には容器容量と同じ容量まで達する。以降、増加分は混合反応試薬排出ポート(オーバーフローポート)より系外に廃棄される(流速:Fw)。図15aは図14aの混合容器(20)付近を、図15bは図14bの混合容器(20)付近を、それぞれ拡大した図である。なお、混合容器(20)に供給される反応試薬Aおよび反応試薬Bの混合効率を向上させることを目的に、混合容器(20)内に攪拌子(21)を入れ、外部に設置された駆動ユニット(22)により攪拌子(21)を回転させることで反応試薬を攪拌させてもよい。また、反応試薬Aの流速Faと反応試薬Bの流速Fbとの合計(すなわちFa+Fb)と、混合反応試薬の流速Fmとの差(すなわちFa+Fb−Fm)は、出来るだけ小さい方が望ましい。その差分はオーバーフローFwとなり廃棄されるためである。
【0027】
Fa+Fb>Fm
Fw=Fa+Fb−Fm
反応試薬Aの流速:Fa、反応試薬Bの流速:Fb
混合反応試薬の流速:Fm、オーバーフローの流速:Fw
本発明の送液装置は、混合反応試薬の組成を決定する反応試薬A送液ポンプおよび反応試薬B送液ポンプには負荷が全く掛からない。そのため、反応試薬の送液量を常に一定の値に保つことができ、混合比率を一定に保つことができる。また混合試薬送液ポンプは下流に存在する反応コイルといった反応手段や検出手段により若干の負荷を受けるが、負荷の変動は少なく、送液量も安定している(図16参照)。
【0028】
反応試薬Aおよび反応試薬Bが混合容器に供給されるときの流速と、混合容器の容量とを仮定したときの混合容器内の各反応試薬の組成変化を数値計算した。図17は、反応試薬Aの流速Faを毎分10μL、反応試薬Bの流速Fbを毎分10μLとして仮定し、混合容器の容量を変化させたときの容器内の各反応試薬の組成を示したものであり(初期状態として混合容器内には反応液Aが100%満たされている)、図17aは容器容量を500μL、図17bは容器容量を200μL、図17cは容器容量を100μL、図17dは容器容量を50μL、図17eは容器容量を20μLとそれぞれ仮定した場合の組成変化を示している。時間の経過とともに混合容器内の混合反応試薬に占める反応試薬Bの割合が増加していき、最終的に反応試薬Aと反応試薬Bの割合がそれぞれ50%の状態で一定となる。たとえば混合容器の容量が50μLの場合は約10分で安定化し、混合容器の容量が大きいほど50%に到達する時間が長くなる。混合容器の容量は大きいほど反応試薬の混合は良好になるが、反応試薬Aおよび/または反応試薬Bの送液量を意図的に変化させた場合、実際には各反応試薬の組成が変化するのに時間を要してしまう。また、混合試薬の劣化などにより測定結果が変動する可能性を考慮すると、可能な限り混合容器の容量は小さい方が好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の液体クロマトグラフィ用送液装置は、
2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプと、
を備えていることを特徴としており、過大な背圧がかからない混合容器を備えることで、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプには負荷がほとんど掛からない。このため、これまで耐圧性の低さから適用が困難であった電磁式ダイアフラムポンプを、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプとして適用することが可能となる。電磁式ダイアフラムポンプは液体の吸引/吐出周期が制御しやすく、各試薬の送液量が同じ場合であっても異なる場合であっても、ピストンの戻り位置を調整することで送液量の変更が可能であり、送液周期が同期するように調整することも可能なため、反応試薬の混合を確実に行なうことができる。したがって、本発明の送液装置に備える、2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプを電磁式ダイアフラムポンプにすることにより、特に低流量領域における送液安定性を正確に制御することができる。なお、本発明の送液装置に備えた混合容器に、混合試薬の容量を一定に保つための試薬排出ポート(オーバーフローポート)を設けると、混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプの吸引配管にエアが混入することを防止できるため、各試薬の流速を変化させたときに得られる混合比率を予測可能なものとすることができる。
【0030】
本発明の送液装置は、試料を分析カラムに導入する前に試料成分を誘導体化し分析を行なうプレカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として、または分析カラムから溶出した試料成分を誘導体化し分析を行なうポストカラム反応液体クロマトグラフィにおける試料成分を誘導体化するための試薬を添加する装置として、液体クロマトグラフィに備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成の一態様(複数の反応試薬を直接反応系へ導入する場合)を示した図である。
【図2】ポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成の別の態様(複数の反応試薬を事前に混合後、反応系へ導入する場合)を示した図である。
【図3】一般的なプランジャポンプの構造を示した図である。aは液体を吸引する工程を、bは液体を吐出する工程を、それぞれ示している。
【図4】2種類の反応試薬をそれぞれのプランジャポンプを用いて送液したときの送液パターンの一例(反応試薬Aと反応試薬Bとの流速が完全に一致する場合)を示した図である。aは反応試薬Aの流速パターンを、bは反応試薬Bの流速パターンを、cは反応試薬Aと反応試薬Bの合計流速パターンを、それぞれ示している。
【図5】2種類の反応試薬をそれぞれのプランジャポンプを用いて送液したときの送液パターンの別の例(反応試薬Aと反応試薬Bとの流速が僅かに異なる場合)を示した図である。aは反応試薬Aの流速パターンを、bは反応試薬Bの流速パターンを、cは反応試薬Aと反応試薬Bの合計流速パターンを、それぞれ示している。
【図6】一般的な電磁式ダイアフラムポンプの構造を示した図である。aは液体を吸引する工程を、bは液体を吐出する工程を、それぞれ示している。
【図7】2種類の反応試薬を送液するポンプとして電磁式ダイアフラムポンプを用いたときの流路構成の一態様を示した図である。
【図8】2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの吐出パターンの一例(反応試薬Aと反応試薬Bの流速が完全に一致する場合)を示した図である。aは反応試薬Aを送液するポンプAの吐出パターンを、bは反応試薬Bを送液するポンプBの吐出パターンを、cはポンプAとポンプBの合計吐出パターンを、それぞれ示している。
【図9】2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの吐出パターンの別の例(反応試薬Aと反応試薬Bの流速が異なる場合)を示した図である。図aは反応試薬Aを送液するポンプAの吐出パターン、図bは反応試薬Bを送液するポンプBの吐出パターン、図cはポンプAとポンプBの合計吐出パターンを、それぞれ示している。
【図10】一般的な電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの負荷に対する流量特性の一例を示した図である。
【図11】ポンプの下流側に負荷がない流路構成において、2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの、各試薬の流れを示した図である。aはポンプAにより反応試薬Aを吐出する工程を、bはポンプBにより反応試薬Bを吐出する工程を、それぞれ示している。
【図12】ポンプの下流側に負荷がある流路構成において、2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの、各試薬の流れを示した図である。aはポンプAにより反応試薬Aを吐出する工程を、bはポンプBにより反応試薬Bを吐出する工程を、それぞれ示している。
【図13】図11および図12に示す流路構成において、2種類の反応試薬をそれぞれの電磁式ダイアフラムポンプを用いて送液したときの、各試薬の流れの模式図である。aは図11に示す流路構成における流れを、bは図12に示す流路構成における流れを、それぞれ示している。
【図14】本発明の送液装置の一態様を示した図である。aはそれぞれのポンプにより送液された2種類の反応試薬を混合容器へ直接導入した態様を、bはそれぞれのポンプにより送液された2種類の反応試薬を事前に混合後混合容器へ導入した態様を、それぞれ示している。
【図15】図14の送液装置のうち混合容器付近を拡大した図である。aは図14aの送液装置の混合容器付近を、bは図14bの送液装置の混合容器付近を、それぞれ拡大した図である。
【図16】本発明の送液装置を用いたときの、反応試薬A送液ポンプ(ポンプA)、反応試薬B送液ポンプ(ポンプB)および混合反応試薬送液ポンプの動作を示した図である。
【図17】本発明の送液装置を用いたときの、混合容器内の組成変化を示した図である。なお、反応試薬A(Fa)および反応試薬B(Fb)の流速は毎分10μLであり、aは混合容器容量が500μL、bは混合容器容量が200μL、cは混合容器容量が100μL、dは混合容器容量が50μL、eは混合容器容量が20μLの場合を、それぞれ示している。
【図18】実施例1で使用した本発明の送液装置を備えた液体クロマトグラフィの流路構成を示した図である。
【図19】実施例1で使用したグルコースの誘導体化反応を示した図である。
【図20】実施例1で使用した液体クロマトグラフィでグルコースを測定したときのクロマトグラムである。
【図21】実施例1の測定における反応試薬A送液ポンプ(ポンプA)、反応試薬B送液ポンプ(ポンプB)および混合反応試薬送液ポンプの動作を示した図である。
【図22】実施例2で使用した本発明の送液装置を備えた装置の流路構成を示した図である。
【図23】実施例2の測定における反応試薬A送液用ポンプ、反応試薬B送液用ポンプおよび混合反応試薬送液用ポンプの動作を示した図である。aは反応試薬A送液用ポンプの動作、bは反応試薬B送液用ポンプの動作、cは混合反応試薬送液用ポンプの動作を、それぞれ示している。
【図24】実施例2で得られた結果を示した図である。aは紫外検出器の出力変化、bは混合反応試薬の実際の流量変化を示している。
【図25】本発明の送液装置をプレカラム反応液体クロマトグラフィに適用したときの流路構成の一態様を示した図である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
実施例1
本発明の送液装置の効果を実証するため、本発明の送液装置を備えたポストカラム反応液体クロマトグラフィを用いて糖分析を行なった。
【0034】
アルドール類の糖は強アルカリ存在下で、2−シアノアセトアミド(2−cyanoacetamide)と加熱することで280nmから300nmに紫外吸収を有する物質(誘導体)に変換される(図19参照)。ここで変換された誘導体を検出器で検出することで糖分析を行なう。
【0035】
本実施例で使用したポストカラム反応液体クロマトグラフィの流路構成を図18に示す。試料注入バルブ(3)から注入された試料(5)は、溶離液送液ポンプ(1)で送液された溶離液(2)により分析カラム(7)に移送され、順相クロマトグラフィにより各成分に分離される。分離した各成分に対し、2.5% 2−シアノアセトアミド溶液(反応試薬A(11a))および0.1M NaOH溶液(反応試薬B(11b))を本発明の送液装置を用いて混合/送液し、予熱コイル(32)で87℃に加熱した状態で連続的に添加後、45℃で保たれた反応オーブン(9)中で誘導体を生成させ、その生成物を紫外検出器(12)で検出した。なお、溶離液送液ポンプ(1)として東ソー製CCPMIIを、検出器(12)として東ソー製UV−8020(マイクロセル、波長300nm)を、カラムオーブン(9)として東ソー製CO−8020を、反応試薬および混合反応試薬送液ポンプ(10a、10b、19)としてKNF社製ソレノイド駆動ダイアフラム式送液ポンプFMM20を、それぞれ使用した。前記検出器の下流には加熱による気泡の発生を防ぐ目的で抵抗管(31a)を配し、若干検出器に圧力が掛かるようにした。電磁式ダイアフラムポンプの下流(吐出部側)には、実送液量を抑える目的と脈流を緩和する目的で抵抗管(31b、31c)を配した。混合容器(20)としては約300μL容量のガラス製容器を使用した。溶離液(2)としては20mMのトリエチルアミンを含むアセトニトリル/水(75/25)、分析カラム(7)としては順相クロマトグラフィーカラム(東ソー製、TSKgel Amide−80、粒径:5μm、内径:1mm、長さ:200mm)を使用し、溶離液送液ポンプ(1)を用いて毎分27μLで溶離液の送液を行なった。反応コイル(8)は内径0.2mm、長さ2mのPTFEチューブを使用した。試料(5)は、グルコース(濃度25μg/mL)を用い、試料注入バルブ(3)を用いて0.5μLを分析カラム(7)に導入した。
【0036】
反応試薬A(2−シアノアセトアミド溶液、11a)、反応試薬B(0.1M NaOH溶液、11b)および反応試薬Aと反応試薬Bとが混合した試薬を送液するための電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b、19)の吸引/吐出周期(設定値)および実際の流速(実測)は表1の通りである。また、本実施例における送液パターン(制御値)を図21に示す。
【0037】
【表1】
前記条件で得られたクロマトグラムを図20に、グルコースの溶出時間と面積、高さの再現性(n=10)をまとめた表を表2にそれぞれ示す。溶出時間のCVが0.26%、面積のCVが4.5%と良好な値を示しており、2つの反応試薬が安定的に送液されていることを示唆している。
【0038】
【表2】
実施例2
本発明の送液装置の効果を実証するため、紫外吸収を有する液体と紫外吸収を有しない液体(純水)を送液し、送液安定性、混合効率の検証を実施した。
【0039】
本実施例で使用した装置の流路構成を図22に示す。反応試薬A(11a)として純水、反応試薬B(11b)として1%アセトン水溶液を使用し、それぞれ電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b)を用い、4秒周期で混合容器(20)へ送液した。さらに、前記混合容器(20)内の混合溶液を、別の電磁式ダイアフラムポンプ(19)で10秒周期で送液し、その組成変化を紫外検出器(12)(検出波長:254nm)でモニタした。電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b)の脈動を抑える目的で下流に抵抗管(31b、31c)を設けている。紫外検出器(12)としてK−Mac製UV−Vis Spectrometer Detector(Spectra Academy)を、電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b、19)としてKNF社製ソレノイド駆動ダイアフラム式送液ポンプFMM20を、それぞれ使用した。紫外検出器(12)の下流には、実際の流量をリアルタイムで計測する目的で、電子天秤(34)および時間と重量増加から流量を積算する流量計算機(35)を設けている。なお、混合容器(20)は約300μL容量のガラス製容器を使用した。
【0040】
本実施例における送液パターン(制御値)を図23に示す。図24は0分から120分までは反応試薬Bのみを送液、120分から270分までは反応試薬Aのみを送液、270分から350分までは反応試薬Aおよび反応試薬Bの送液を行なった場合の、実際に測定された流速および紫外吸収の変化を示したものである。図23cと図24bとの比較からもわかるように、電磁式ダイアフラムポンプによる吸引/吐出動作は間欠的に行なうものの、実際の流量はほぼ一定で連続的な値を示していることがわかる。これは、電磁式ダイアフラムポンプ(10a、10b、19)の吸引/吐出の周期が早く、下流に設置した抵抗管(31a)が脈流を緩和させているためである。また、図24aと図24bとの比較からわかるように、最終的に送液される溶液の組成が変化しても、実際の流量はほとんど変化せず、一定であることが分かる。
【0041】
実施例3
本発明の送液装置を備えたプレカラム反応液体クロマトグラフィの一態様を図25に示す。図25に示す液体クロマトグラフィにおいて、本発明の送液装置に備える混合容器(20)には、
試料導入手段(36)により導入された試料(5)を受け入れるためのポートと、
反応試薬A送液ポンプ(10a)により送液された反応試薬A(11a)を受け入れるためのポートと、
反応試薬B送液ポンプ(10b)により送液された反応試薬B(11b)を受け入れるためのポートと、
反応試薬A、反応試薬Bおよび試料が混合した溶液を送液ポンプ(19)で送液するためのポートと、
反応試薬A、反応試薬Bおよび試料の混合溶液の容量を一定に保つための試薬排出ポート(23)と、
を設けている。
【0042】
試料導入手段(36)により導入された試料(5)は混合容器(20)へ導入され、混合容器(20)内で反応試薬A(11a)および反応試薬B(11b)と混合する。前記混合した溶液は、送液ポンプ(19)により反応オーブン(9)内に設けた反応コイル(8)内を通過することで前記試料成分の誘導体化反応を行なう。前記誘導体化された試料成分は液体クロマトグラフィ試料注入バルブ(3)へ導入され、前記注入バルブ(3)の切り替えにより分析カラム(7)へ導入することにより特異的検出を行なう。
【符号の説明】
【0043】
1:溶離液送液ポンプ
2:溶離液
3:試料注入バルブ
4:試料ループ
5:試料
6:カラムオーブン
7:分析カラム
8:反応コイル
9:反応オーブン
10:反応試薬送液ポンプ
11:反応試薬
12:検出器
13:廃液
14:カム
15:カム回転中心
16:プランジャ
17:チャンバ
18:逆止弁
19:混合反応試薬送液ポンプ
20:混合容器
21:攪拌子
22:ミキサ(駆動ユニット)
23:試薬排出ポート
24:ポンプヘッド
25:ミキシングコイル
26:ダイアフラム
27:ピストン
28:電磁コイル
29:電磁式ポンプの逆止弁
30:ストローク調整止具
31:抵抗管
32:予熱コイル
33:キャップ
34:電子天秤
35:流量計算器
36:試料導入手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の試薬を混合し、前記混合した試薬を送液する、液体クロマトグラフィ用送液装置であって、
前記2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプと、
を備えた、液体クロマトグラフィ用送液装置。
【請求項2】
2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプが電磁式ダイアフラムポンプである、請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
混合容器が、
2種類以上の試薬を受け入れるポートと、
貯留した混合試薬を送液するためのポートと、
混合試薬の貯留容量を一定に保つための試薬排出ポートと、
を備えた混合容器である、請求項1または2に記載の送液装置。
【請求項4】
試料を導入する導入手段と、
導入手段から導入した試料を分離する分析カラムと、
分析カラムから溶出した成分を検出または定量する検出手段と、
を備えた液体クロマトグラフィであって、
分析カラムの上流側、または分析カラムの下流側から検出手段までの間に、請求項1から3に記載の送液装置を備えた、液体クロマトグラフィ。
【請求項5】
送液装置を分析カラムの下流側から検出手段までの間に備え、
分析カラムから溶出した成分に前記送液装置により送液された混合試薬を添加する位置から検出手段までの間に、前記溶出した成分と前記混合試薬とを反応させる反応手段をさらに備えた、請求項4に記載の液体クロマトグラフィ。
【請求項1】
2種類以上の試薬を混合し、前記混合した試薬を送液する、液体クロマトグラフィ用送液装置であって、
前記2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプと、
前記ポンプにより送液された試薬を混合し貯留する混合容器と、
前記混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプと、
を備えた、液体クロマトグラフィ用送液装置。
【請求項2】
2種類以上の試薬をそれぞれ送液するポンプおよび/または混合容器に貯留した混合試薬を送液するポンプが電磁式ダイアフラムポンプである、請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
混合容器が、
2種類以上の試薬を受け入れるポートと、
貯留した混合試薬を送液するためのポートと、
混合試薬の貯留容量を一定に保つための試薬排出ポートと、
を備えた混合容器である、請求項1または2に記載の送液装置。
【請求項4】
試料を導入する導入手段と、
導入手段から導入した試料を分離する分析カラムと、
分析カラムから溶出した成分を検出または定量する検出手段と、
を備えた液体クロマトグラフィであって、
分析カラムの上流側、または分析カラムの下流側から検出手段までの間に、請求項1から3に記載の送液装置を備えた、液体クロマトグラフィ。
【請求項5】
送液装置を分析カラムの下流側から検出手段までの間に備え、
分析カラムから溶出した成分に前記送液装置により送液された混合試薬を添加する位置から検出手段までの間に、前記溶出した成分と前記混合試薬とを反応させる反応手段をさらに備えた、請求項4に記載の液体クロマトグラフィ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−226914(P2011−226914A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96905(P2010−96905)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
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