説明

液体クロマトグラフ装置

【課題】分離カラムの劣化判断や、試料の導入時間を自動的に判断可能な液体クロマトグラフ装置を実現する。
【解決手段】インジェクター2より導入された試料は送液ポンプ1による移動相6の送液で分離カラム4に送られ、分離カラム4で分離された後、試料分析部5に導入され分析される。分離カラム4はカラムオーブン9内に配置されカラムオーブン9内には光源7と検出部8とが配置されている。分離カラム4は内部を可視可能な可視部3を備え、光源7からの光は可視部3に照射され分離カラム4の内部材料に反射して検出部8に入射される。検出部8はデータ処理部に接続される。分離カラム4の劣化具合をモニタリングでき、分離カラム4に試料が導入されたことを判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ装置では、試料の各成分を分離するための分離カラムが用いられるが、生体試料を測定する際、試料中に含まれる多量の夾雑物が測定の障害となり高感度分析の妨げになるだけでなく、分離カラムの劣化を大きな要因となる。
【0003】
劣化による分離カラムの使用寿命は、測定試料の種類や使用環境などに依存することから、定量的に規定することは難しく、実測定データの質の低下や送液圧力の変動などから判断される。しかし、測定データの質低下および送液圧力の変動の要因は、分離カラムの劣化以外にも数多く存在し、その判断は困難を伴い、測定者の経験則に大きく依存している現状がある。
【0004】
そのため、特許文献1には、同定及び定量後に、予め指定された分離能計算用の2つのピークのデータを用いて分離能の計算を行い、計算された分離能を基準値と比較することによって、分離カラムが正常であるか劣化しているかを判定する技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−120451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分離カラムの劣化状態は送液圧力の変動等で知ることができるが、送液圧力の変動の要因は、分離カラムの劣化以外にも数多く存在し、その正確な判断は長年の経験に頼る部分が大きく、困難を伴う。
【0007】
また、液体クロマトグラフ装置にトラブルが発生した場合、分離カラムへの試料の導入時点が判明可能であれば、トラブルの発生と導入試料との関係を判断することが可能となる。
【0008】
しかしながら、従来の技術にあっては、液体クロマトグラフ装置に試料に関するトラブルが発生した場合、分離カラムへの試料の導入時点を容易に判断することができなかった。
【0009】
また、従来技術におけるカラムスイッチング法においては、最適な試料導入時間の設定が煩雑で長時間を要するものであった。
【0010】
ここで、カラムスイッチング法とは、生体試料を測定する際、目的成分の濃縮および夾雑物の除去等を自動で行なう方法であり、分離カラムの前にトラップカラムを高圧切替バルブを介して接続し、高圧切替バルブにより移動相の流路を切り替えることで、目的成分の濃縮および夾雑物の除去等を自動で行なうことができる方法である。
【0011】
試料は、まずトラップカラムに導入されて、このトラップカラムに一旦保持された後、高圧切替バルブの切替により移動相の流路が切り替わることで分離カラムに導入される。トラップカラムへの試料導入に必要とされる時間は、流路内容積と流速から計算で求めることが出来る。
【0012】
しかし、実際は流路内拡散等によって、試料の到達が遅れるので、尤度をみて試料導入時間は計算値よりも長く設定されている。
【0013】
試料導入時間は、長すぎると吸着力の弱い成分がトラップカラムに保持されずに素通りしてしまい、高圧切替バルブを切り替えてもその成分が分離カラムまで到達せず、試料を分析することが出来ない。逆に、試料導入時間が短すぎるとトラップカラムに試料が到達しないため、高圧切替バルブを切り替えてもその成分が分離カラムまで到達せず、試料を分析することが出来ない。
【0014】
従来技術におけるカラムスイッチング法では、試料導入時間の最適化は実験検討によって決めるしか手段はなく、この実験検討には、煩雑な手間と長時間が必要であった。
【0015】
本発明の目的は、分離カラムの劣化判断や、試料の導入時間を自動的に判断可能な液体クロマトグラフ装置を実現することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の液体クロマトグラフ装置は、試料導入手段により導入された試料を分離する分離カラムの一部又は全体が透明な材質で形成され、その内部材料を可視できる可視部を有し、分離カラムの可視部に光を照射する光源と、上記可視部から反射された光を検知する検知部と、この検知部が検知した反射光に基づいて、分離カラムの内部材質の劣化を判断するデータ処理部とを備える。
【0017】
また、本発明の液体クロマトグラフ装置は、試料導入手段により導入された試料を一時的に保持するトラップカラムの一部又は全体が透明な材質で形成され、その内部材料を可視できる可視部を有し、トラップカラムの可視部に光を照射する光源と、トラップカラムの可視部から反射された光を検知する検知部と、この検知部が検知した反射光に基づいて、トラップカラムの内部材質の劣化を判断するデータ処理部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
分離カラムの劣化判断や、試料の導入時間を自動的に判断可能な液体クロマトグラフ装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である液体クロマトグラフ装置の概略構成図である。図1において、インジェクター2より導入された試料は、送液ポンプ1による移動相6の送液により分離カラム4に送られる。そして、上記試料は、分離カラム4で分離された後、試料分析部5に導入され分析される。
【0020】
分離カラム4は、カラムオーブン9内に配置されている。そして、このカラムオーブン9内には、紫外線や可視光の光源7と、検出部8とが配置されている。また、分離カラム4は、カラム内部を可視可能な透明部材で形成された可視部3を備えている。
【0021】
光源7からの光は、可視部3に照射され、分離カラム4の内部材料に反射して検出部8に入射される。この検出部8は、カラムオーブン9外部のデータ処理部(図示せず)に接続されている。
【0022】
液体クロマトグラフ装置による分析を繰り返すうち、試料中に含まれる夾雑物が、分離カラム4に蓄積することで、分離カラム4の劣化が生じる。生体由来の試料は特に含有夾雑物が多く含まれ、その代表的な夾雑物としては脂質、タンパク質、糖質などがあげられる。
【0023】
これらの夾雑物は、分離カラム4に吸着する際に例えばメイラード反応により茶褐色に着色することが知られており、その吸着を可視部3で反射された紫外線又は可視光の波長を検出部8で検出し、データ処理部に供給することで、分離カラム4の劣化具合をデジタルでモニタリングすることが可能となる。データ処理部には、表示部が接続されており、表示部で分離カラム4の劣化具合を表示することができる。
【0024】
また、蛍光標識を付加する若しくは試料中に蛍光標識を付加した標準物質を添加してラベル化することにより、データ処理部は、分離カラム4に試料が導入されたことを検出部8の検出結果から判断でき、分離カラム4に試料が導入された時点を記録することが可能となっている。
【0025】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、分離カラム3に内部材料を透視可能な可視部3を形成し、光学系の検出部8で検出した結果をデータ処理部で処理し、分離カラムの内部材料の劣化判断を自動的に行なうことができる。さらに、分離カラム4に試料が導入されたタイミングを検出し、記録可能であるので、測定データの質低下や圧力変動が発生した場合、試料導入時からのどの時点で上記質低下等が発生したかを判断することができる。これは、上記質低下等の原因判断に用いることが可能である。
【0026】
図2は、本発明の第2の実施形態である液体クロマトグラフ装置の概略構成図である。
図2において、測定試料は、試料導入部12よりトラップカラム10に導入されて一旦保持される。次に、六方バルブ11内の流路を切り替えることで、試料は送液ポンプ1の、移動相6の送液によって分析カラム4に送られて分離される。その後、試料分析部5に導入され、分析される。
【0027】
トラップカラム10には、このトラップカラム10内部を可視可能な透明部材で形成された可視部13を備えている。また、図示は省略したが、トラップカラム10の可視部13に紫外線や可視光を照射するための光源と、検出部とが配置され、この検出部はデータ処理部に接続されている。
【0028】
試料に蛍光標識を付加する若しくは試料中に蛍光標識を付加した標準物質を添加してラベル化し、可視部を蛍光検出部及びデータ処理部にてモニタリングすることで、試料が試料導入部12よりトラップカラム10に導入される際、試料導入部12に試料が導入された時点から、トラップカラム10に到達するのに要する時間を測定することが可能となる。
【0029】
蛍光検出部、データ処理部にてトラップカラム10をモニタリングして得られるクロマトグラムの概略図を図3に示す。図3において、縦軸が信号強度を示し、横軸が経過時間を示す。信号強度のピークが極大値を示す時点で、六方バルブ11を切り替えることで、試料をロスすることなく分析カラム4に送り、高感度な分析を実現可能である。
【0030】
試料が特定の光の波長に吸収を有する場合も、可視部3を紫外可視吸光光度計でモニタリングすることで、同様の効果を得ることが出来る。
【0031】
また、第1の実形態と同様に、トラップカラム10内部の劣化を自動的に判断することが可能である。
【0032】
なお、この第2の実施形態において、分離カラム4及びトラップカラム10のいずれにも、可視部を形成し、内部をモニターすることも可能である。
【0033】
また、上述した例は、分離カラム、トラップカラムの一部を可視部としたが、全体を透明な材質により形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態である液体クロマトグラフ装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態である液体クロマトグラフ装置の概略構成図である。
【図3】トラップカラムに試料が到達する際のクロマトグラムの概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 送液ポンプ
2 インジェクター
3、13 可視部
4 分離カラム
5 試料分析部
6 移動相
7 光源
8 検出部
9 カラムオーブン
10 トラップカラム
11 六方バルブ
12 試料導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフ装置において、
試料導入手段と、
一部又は全体が透明な材質で形成され、その内部材料を可視できる可視部を有し、上記試料導入手段により導入された試料を分離する分離カラムと、
上記分離カラムにより分離された試料を分析する分析部と、
上記分離カラムの可視部に光を照射する光源と、
上記分離カラムの可視部から反射された光を検知する検知部と、
上記検知部が検知した反射光に基づいて、上記分離カラムの内部材質の劣化を判断するデータ処理部と、
を備えることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体クロマトグラフ装置において、上記データ処理部は、上記分離カラムに試料が到達した時点を記憶することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項3】
液体クロマトグラフ装置において、
試料導入手段と、
送液手段と、
上記試料導入手段により導入された試料を分離する分離カラムと、
上記分離カラムにより分離された試料を分析する分析部と、
一部又は全体が透明な材質で形成され、その内部材料を可視できる可視部を有し、上記試料導入手段により導入された試料を一時的に保持するトラップカラムと、
上記トラップカラムの可視部に光を照射する光源と、
上記トラップカラムの可視部から反射された光を検知する検知部と、
上記検知部が検知した反射光に基づいて、上記トラップカラムの内部材質の劣化を判断するデータ処理部と、
上記試料導入手段から試料を上記トラップカラムに供給する流路と、上記送液手段からトラップカラムを介して、分離カラムに送液する流路とを切り替える切り替えバルブと、
を備えることを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項4】
請求項3記載の液体クロマトグラフ装置において、上記データ処理部は、上記トラップカラムに試料が到達した時点を記憶することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項5】
請求項3記載の液体クロマトグラフ装置において、上記分離カラムは、一部又は全体が透明な材質で形成され、その内部材料を可視できる可視部を有し、上記分離カラムの可視部に光を照射する光源と、上記分離カラムの可視部から反射された光を検知する検知部とを備え、上記データ処理部は、上記検知部が検知した反射光に基づいて、上記分離カラムの内部材質の劣化を判断することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項6】
請求項5記載の液体クロマトグラフ装置において、上記データ処理部は、上記分離カラムに試料が到達した時点を記憶することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−2988(P2008−2988A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173791(P2006−173791)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】