説明

液体タンク用コネクタ

【課題】湾曲した液体取出管の先端位置が、パーティングラインを避けて容易かつ確実に設置可能な液体タンク用コネクタを提供する。
【解決手段】容器50側の雌ねじ部58aと螺合する雄ねじ部22が形成された結合部20と、結合部20と中心軸CLを共有して内側に配設され、相対的な回動を可能に連結されたコネクタ本体30と、コネクタ本体30に取り付けられて容器50の底部へ延びるとともに先端部を略水平方向に湾曲させたサイフォン管とを備え、コネクタ本体30の上方から挿入され凹凸部を係合させて互いの相対的な回動を阻止する固定治具60と、結合部20の上面に係合させて雄ねじ部22を締め込む締付治具70とを用い、コネクタ取付時に結合部20がコネクタ本体30から独立してねじ込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タンク内の液体を外部へと供出するための液体タンク用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体高純度薬品や一般化学薬品等の液体は、生産工場にてポリエチレンタンク等の液体タンクに充填され、この液体タンクに形成された充填・取出用の口栓部に蓋を取り付けた状態で出荷されている。このような液体タンク中に収容された液体を取り出す手法としては、容器内部に空気等の気体を導入することにより、その気体圧力により液体を容器外へ送り出すサイフォン管方式が知られている。
この方式では、液体タンクの口栓部に取り付けられていた蓋を取り外した後、口栓部に液体流路となるサイフォン管及び気体供給路を備えたプラグが取り付けられる。そして、液体を液体タンク外部へ取り出すためのチューブと、気体を導入するためのチューブとをそれぞれ連結可能とされたソケットをプラグに接続することにより、液体を取り出すための液体流路及び気体を導入するための気体流路を形成する。
【0003】
このような液体タンク用コネクタは、容器(口栓部)と螺合させる構成となっているため、コネクタを容器に取り付ける際には、コネクタを回転させる必要がある。このため、サイフォン管の先端を湾曲させて容器内の残液量を低減する構造では、コネクタの回転により先端開口部を最も深い領域に配置することが困難となり、この対策として、結合部と本体とを中心軸回りに相対回転可能に接続する構造のコネクタが提案されている。(たとえば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した液体タンクは、一般的に樹脂(ポリエチレン等)のブロー成形品が使用される。このようなブロー成形品の液体タンクは、原則として成形時に製品の外側形状しか規制できないため、容器内の底部にパーティングラインが残ってしまう。このパーティングラインは、左右の金型接合部に形成されて容器内底面の中心線上に突出する凸部であり、一般的には略円形の中央部から両側に向けて直線状に延在する。
このため、ブロー成形品の液体タンクにサイフォン管を挿入して取り付けると、パーティングラインの凸部上面にサイフォン管の下端が当たってしまい、この結果、凸部より下方の液体を吸入できなくなって残液が発生する。なお、コネクタを螺合させて取り付ける容器側の口栓部は、ブロー成形の都合上、中心位置が金型の分割位置と一致することは避けられない。
【0006】
一方、特許文献1に開示されたコネクタは、容器側のねじ部にねじ込む結合部と、サイフォン管を固定した本体とが、中心軸回りに相対回転可能に接続されているので、結合部のみを回転させて容器にコネクタを設置できる。このため、先端部を湾曲させたサイフォン管は、結合部のねじ込みから分離されてねじ込み作業の影響を受けることはなく、従って、パーティングラインを避けた位置に容易に設置可能となる。
【0007】
しかし、特許文献1のコネクタは、本体の上端面に結合部をねじ込んで固定する構造となっているため、締付完了位置付近になると本体の上端面に結合部の下端面が接触する。このため、結合部に大きな締付力を受けると、本体は摩擦力によって結合部と供回りすることになる。従って、サイフォン管も本体と一体に結合部と供回りし、サイフォン管の先端位置がパーティングライン上まで位置ずれするので、このような位置ずれを生じると、容器内には吸入できない残液が生じることになる。
【0008】
このような背景から、ブロー成形品の液体タンクに取り付けて使用される液体タンク用コネクタは、容器内の残液をなくすという観点から、湾曲したサイフォン管の先端位置について、パーティングラインを避けて容易かつ確実に設置可能とすることが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、湾曲したサイフォン管の先端位置が、パーティングラインを避けて容易かつ確実に設置可能な液体タンク用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る液体タンク用コネクタは、液体が貯蔵された容器の口栓部に設置され、前記容器内から液体の引き出しを行う液体タンク用コネクタであって、前記口栓部に形成された容器側の内ねじ部と螺合する外ねじ部が形成された結合部と、該結合部と中心軸を共有して内側に配設されるとともに相対的な回動を可能に連結された本体と、該本体に取り付けられて前記容器の底部へと延びるとともに先端部を略水平方向に湾曲させた液体取出管とを備え、前記本体の上方から取り付けられて接触面間に設けた凹凸部の係合により互いの相対的な回動を阻止する固定治具と、前記結合部の上面に係合させて前記外ねじ部を締め込む締付治具とを用い、コネクタ取付時に前記結合部が前記本体から独立してねじ込まれることを特徴とするものである。
【0010】
このような液体タンク用コネクタによれば、本体の上方から取り付けられて接触面間に設けた凹凸部の係合により互いの相対的な回動を阻止する固定治具と、結合部の上面に係合させて外ねじ部を締め込む締付治具とを用い、コネクタ取付時に結合部が本体から独立してねじ込まれるようにしたので、液体取出管の連れ廻りにより先端部の湾曲方向が変化することを防止できる。この場合、接触面間に設けた凹凸部の係合は、たとえば本体の上面及び固定冶具の下面を接触面として凹凸部を設けた構成や、本体の凹部内周面及び固定冶具の外周面(側面)を接触面として凹凸部を設けた構成がある。
【0011】
この場合に好適な液体取出管としては、サイフォン管やディップチューブ等があり、特に、液体取出管をサイフォン管とする場合の固定冶具は、前記本体の上面に形成された円形中空部に上方から挿入されて接触面間の凹凸部を係合させるように構成されたもの、換言すれば、本体の円形中空部内周面及び固定冶具の外周面を接触面として凹凸部を設けたものが望ましい。
このような構成によれば、コネクタ取付時においては、本体及び液体取出管が回転しないように固定冶具を用いて保持しながら締付治具により結合部を締め込むことができるので、サイフォン管やディップチューブのような液体取出管先端部の湾曲方向がパーティングラインの凸部上面と重ならないように所望の方向へ向けて容器内に挿入した状態を維持できる。
【0012】
上記の発明において、前記接触面間の凹凸部は、前記固定治具の外周面に設けた凹部または凸部と前記円形中空部の内周面に形成した凸部または凹部であることが好ましく、これにより、本体上方から円形中空部の凹部空間に固定冶具を容易に挿入して取り付け、固定冶具による本体の回転を確実に防止することができる。
この場合、前記円形中空部に設けた凸部または凹部は、種別に応じて周方向に配置した複数個の組合せが異なっていれば、液体の取出時にコネクタの円形中空部に挿入して連結するソケットの誤組防止に利用できる。すなわち、同種のコネクタ及びソケットに周方向の配置が同一の凹凸部を設けておくことにより、異種の組合せによるソケット挿入を阻止できる。
【0013】
上記の発明において、前記固定冶具の外周面に設けた凹部または凸部は、前記円形中空部側の凸部または凹部に対し、少なくとも複数の種別に対応して設けられていることが好ましく、これにより、固定冶具の共用化が可能となる。
【0014】
上記の発明において、前記本体の上面外周部に前記液体取出管の湾曲方向表示部を設けることが好ましく、これにより、容器内における液体取出管先端部の湾曲方向を容易に把握できる。
【0015】
また、前記固定冶具に、前記凹凸部の係合位置で前記湾曲方向表示部と周方向位置が一致する挿入位置表示部を設けておけば、円形中空部に対して固定冶具を容易に位置合わせして挿入することができる。
【0016】
また、前記円形中空部は、前記本体の上部に一体化して取り付けられたキーリング部であることが好ましく、これにより、本体及びキーリングを別体の部品で容易に成形してから一体化することができる。なお、本体及びキーリングは、たとえば超音波溶着等により一体化することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の液体タンク用コネクタによれば、コネクタ取付時の結合部締め込み操作により、容器内で所望の方向に向けられている湾曲した液体取出管が本体とともに供回りすることを防止できる。この結果、湾曲した液体取出管の先端位置(方向)がコネクタ取付の結合部締め込みにより変動することはなく、従って、ブロー成形品の液体タンクに取り付けて使用する場合であっても、液体取出管は、液体を取り込む湾曲した先端がパーティングラインを避けた位置に容易かつ確実に設置可能となるので、容器内の残液量低減に顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る液体タンク用コネクタの一実施形態を示す要部の縦断面図であり、液体取出管がサイフォン管である場合について、固定治具及び締付治具を用いて容器の口栓部に取り付けた状態が示されている。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1に示す液体タンク用コネクタを容器に取り付けた状態を示す部分断面全体図である。
【図4】本発明に係る液体タンク用コネクタが適用される容器の概略構成例を示す説明図である。
【図5】容器内部の底面形状例を示す容器内横断面図である。
【図6】液体タンク用コネクタを容器に取り付ける際に使用する治具の構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図7】図1に示した液体タンク用コネクタの変形例として、液体取出管がディップチューブである場合について、要部構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液体タンク用コネクタの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明における液体タンク用コネクタ(以下、「コネクタ」と呼ぶ)10が、半導体高純度薬品等の液体を貯蔵する容器50に取り付けられた状態を説明する図である。このコネクタ10は、容器50の底面に到達する長さを有するとともに、先端部を略水平方向に湾曲させたサイフォン管(液体取出管)12を備えている。この場合の液体取出管としては、サイフォン管12に限定されることはなく、たとえば図7に示したコネクタ10Aのように、ディップチューブ12Aを備えたコネクタ本体30Aとしてもよい。
【0020】
容器50の上面には、二つの開口部(口栓部)52A、52Bが形成され、一方の開口部52Aには液体引き出し用のコネクタ10が取り付けられ、他方の開口部52Bには、気体流通用のコネクタ10Aが取り付けられている。
コネクタ10,10Aには、ホース54を有するソケット56が着脱可能に取り付けられる。コネクタ10に取り付けられたソケット56及びホース54からは、容器50内の液体が引き上げられ、コネクタ10Aに取り付けられたソケット56及びホース54からは、容器50内へ気体が供給される。なお、図中の符号58は容器50の内蓋であり、この内蓋58には、コネクタ取付用の雌ねじ部(内ねじ部)58aが形成されている。
【0021】
容器50は、たとえばポリエチレン等の樹脂をブロー成形して製造されたブロー成形品である。このため、たとえば図5に示す容器内横断面図のように、上述した開口部52Aの中心位置は、平面視において成形用金型の分割位置(分割線BL)と一致するので、容器50内の底部に形成されるパーティングラインPLとも一致する。このパーティングラインPLは、左右の金型接合部に形成されて容器内底面の分割線BL上に突出する凸部であり、一般的には略円形の中央部Caから分割線BLに沿って左右両方向へ直線状に延在している。なお、上述した分割線BLは、容器50の中心線とも一致している。
【0022】
次に、上述したコネクタ10の構成例について、図1から図3を参照して説明する。なお、図1及び図3は、後述する固定治具60及び締結冶具70を用いて、コネクタ10を容器50の開口部52Aに取り付けた状態を示している。
コネクタ10は、液体が貯蔵された容器50の口栓部である開口部52Aに設置され、このコネクタ10にソケット56及びホース54を接続することにより、開口部52B側から供給される気体圧力を利用して容器50内の液体引き出しが行われる。
【0023】
図示のコネクタ10は、開口部52Aに形成された容器50側の雌ねじ部(内ねじ部)58aと螺合する雄ねじ部(外ねじ部)22が形成された結合部20と、この結合部20と中心軸CLを共有して内側に配設されるとともに相対的な回動を可能に連結されたコネクタ本体(本体)30と、このコネクタ本体30に取り付けられて容器50の底部へと延びるとともに先端部を略水平方向に湾曲させたサイフォン管12とを備えている。
すなわち、本実施形態のコネクタ10は、コネクタ10の本体部分であるコネクタ本体30と、容器50の内蓋58に形成された雌ねじ部58aと螺合して容器50に結合される結合部20と、コネクタ本体30のプラグ部32に固定して連結されたサイフォン管12とにより概略構成されている。なお、コネクタ本体30の一部であるプラグ部32は、上述したソケット56との連結部であり、流通孔32aを通って容器50内の液体が流れる部分である。
【0024】
結合部20は、その外周面に内蓋58の雌ねじ部58aと螺合する雄ねじ部22が形成された略リング状の部材である。また、結合部20の内周面下端には、円周方向にわたって半径方向内側に突出し、後述するコネクタ本体30の本体側突起38と係合する結合部側突起24が形成されている。
一方、結合部20の上端面には、締結冶具70と係合させるための冶具取付穴26が、円周方向へ等ピッチで複数(図示の構成例では60度ピッチに6個)設けられている。
【0025】
コネクタ本体30は、上面に円形中空部が形成された略有底円筒状とされ、その底面内部には、底面側から突出するプラグ部32が一体に形成されている。また、コネクタ本体30の上部開口端側には、コネクタ本体30の中心軸CL回りに、外周側を回転可能とした結合部20が同軸に配設されている。
本実施形態では、コネクタ本体30の円形中空部が、本体上部に一体化して取り付けられたキーリング部Krにより形成されている。すなわち、コネクタ本体30は、別部品で成形したキーリング部Krを超音波溶着等の手段により固定して一体化した構造が好ましく、キーリング部Krの上端面が円形中空部の周囲上面となる。これは、キーリング部Krを別体の部品で成形してから一体化する方が、コネクタ本体30を一体で成形するより容易に製造できるためである。
【0026】
コネクタ本体30の外周面には、半径方向外側に突出する鍔部34が形成され、鍔部34のサイフォン管12側となる面(図中下方の面)には、内蓋58との間で圧縮されるシール部材のOリング36が配設されている。また、コネクタ本体30の外周面の開口端側には、円周方向にわたって半径方向外側に突出し、結合部20と係合する本体側突起38が形成されている。
【0027】
プラグ部32の上端面及び外周には、略有底円筒状に形成されたキャップ40が螺合して取り付けられ、シール部材としてOリング42を備えている。このキャップ40は、コネクタ10にソケット56が取り付けられる際にプラグ部32から取り外され、それ以外の場合には、プラグ部32に取り付けられ流体が流出することを防止している。
なお、キャップ40を取り外す場合には、たとえばキャップ回転用の冶具が用いられている。
【0028】
このように構成されたコネクタ本体30は、容器50内にサイフォン管12を挿入して開口部52Aに設置された後、雄ねじ部22を内蓋58の雌ねじ部58aと螺合するように上方から締め込んだ結合部20により固定される。このとき、サイフォン管12の湾曲部先端は、パーティングラインPLを避けた所望の方向に向けられている。
すなわち、上述したコネクタ10は、結合部側突起24の内径が本体側突起38の外径よりも大きく形成されているので、結合部側突起24は本体側突起部38に係合された状態となり、コネクタ本体30は、結合部20とコネクタ本体30とが中心軸CL回りに回転可能に係合され、さらに、鍔部34が結合部20の下面により上方から下向きに押圧を受けて固定される。
【0029】
そして、容器50内におけるサイフォン管12の先端部湾曲方向を容易に把握できるようにするため、コネクタ本体30の適所には、たとえば図1及び2に示すように、容易に視認できる位置に湾曲方向表示部Maを設けておくとよい。この湾曲方向表示部Maは、凹凸部、着色部及び矢印マーク等を形成するものであり、サイフォン管12がプラグ部32に固定して連結されていることから、たとえば円形中空部の周囲上面に対し、湾曲方向と一致させて設ければよい。
【0030】
上述した結合部20の締め込みには、たとえば図6に示すような固定冶具60及び締結冶具70が使用され、コネクタ取付時において、結合部20がコネクタ本体30から独立してねじ込まれる。すなわち、コネクタ取付時においては、人力等で保持した固定冶具60によりコネクタ本体30を回転しないよう固定し、締結冶具70により結合部20のみ回転させて締め込むことになる。
【0031】
固定冶具60は、円柱状とした把持部61の下端部側に中空円柱状の係止部62を備えており、コネクタ本体30の上面に開口して形成された円形中空部に、係止部62を上方から挿入して使用される。すなわち、固定冶具60は、コネクタ本体30の上方から取り付けて使用する。
そして、係止部62の外周面には凹凸部の凹部63が形成され、この凹部63と、コネクタ本体30の円形中空部内周面に形成された凹凸部の凸部39とを係合させることにより、接触面間の凹凸部が係合して互いの相対的な回動を阻止できる。図示の構成例では、固定冶具60を把持部61及び係止部62に分割可能な2部品構造とし、把持部61の一端に設けた傘部64と係止部63との間に円形断面の連結部65が設けられている。
【0032】
締結冶具70は、トルクレンチ等の工具80を用いて回転させることにより、結合部20の上面に係合させて外ねじ部22を締め込むものである。この締結冶具70は、冶具本体71に、固定冶具60を通す貫通孔72と、結合部20の上面に係合させる複数本の突起部73と、工具80を係合させる工具穴74とを備えている。
貫通孔72は、固定冶具60の連結部65が締結冶具70と干渉することなく貫通する穴径に設定されている。
【0033】
突起部73は、結合部20の上端面に設けられた冶具取付穴26に挿入されることにより、締結冶具70を結合部20と係合させて回転力を伝達するピン状部材である。この突起部73は、冶具本体71の下面から突出し、円周方向へ等ピッチに複数本(図示の構成例では60度ピッチに6本)が設けられている。
工具穴74は、工具80の係合部を挿入して冶具本体71にトルク伝達を行う部分であり、冶具本体71の外周方向へ突出した位置に設けられている。
【0034】
ところで、上述した実施形態では、コネクタ本体30の円形中空部内周面に一対の凸部39を設けておき、固定治具60の係止部外周面に同数以上設けた凹部63と係合するようにしてあり、コネクタ本体30の上方から円形中空部の凹部空間に固定冶具60を容易に挿入して取り付け可能となっている。しかし、このような凹凸部の形成は、固定冶具60によるコネクタ本体30の回転を確実に防止できれば凹凸が逆でもよい。すなわち、コネクタ本体30の円形中空部内周面に一対の凹部を設け、固定治具60の係止部外周面に設けた凸部と係合するようにしてもよい。
また、この場合の凹凸部39,63は、図示した半円形に限定されることはなく、たとえば三角形状など互いに係合することで相対的な回転を阻止できればよい。
【0035】
このように構成されたコネクタ10は、コネクタ本体30の上面に形成された円形中空部に上方から挿入されることで凹凸部39,63を係合させて互いの相対的な回動を阻止する固定治具60と、結合部20の上面に係合させて雄ねじ部22を締め込む締付治具70とを用い、コネクタ取付時に結合部20がコネクタ本体から独立してねじ込まれるようにしたので、サイフォン管12の連れ廻りにより先端部の湾曲方向が変化することを防止できる。換言すれば、コネクタ取付時においては、コネクタ本体30及びサイフォン管12が回転しないように、固定冶具60を用いてコネクタ本体30を保持しながら締付治具70により結合部20を締め込むことができ、この結果、サイフォン管12の先端部湾曲方向がパーティングラインPLの凸部上面と重ならないように、予め所望の方向へ向けて容器50内に挿入した状態を維持できる。
【0036】
また、上述したコネクタ本体30の円形中空部側に設けた凸部39または凹部は、コネクタ10の種別に応じて周方向に配置した複数個の組合せが異なっていれば、液体の取出時にコネクタ本体30の円形中空部に挿入して連結するソケット56の誤組防止に利用できる。すなわち、同種のコネクタ10及びソケット56に周方向の配置及び数が同一の凹凸部を設けておくことにより、異なる組合せでは凹凸部が干渉する部分が生じて挿入できなくなるため、異種の組合せによりソケット56が挿入される誤組を阻止できる。
【0037】
そして、固定冶具60の外周面に設ける凹部63または凸部は、コネクタ本体30の凸部39または凹部に対し、少なくとも複数の異なる種別に対応して設けられていることが望ましい。すなわち、図示の固定冶具60には、周方向の異なる位置に合計11個の凹部63が設けられているので、たとえば一対の凸部39が180度の位置にある場合だけでなく、1つの固定冶具60で複数種のコネクタ本体30に対応可能となり、従って、固定冶具60の共用化が可能となる。
【0038】
また、上述した固定冶具60には、凹凸部39,63の係合位置で湾曲方向表示部Maと周方向位置が一致するように、視認しやすい適所に挿入位置表示部Mbを設けておくことが望ましい。図示の構成例では、固定治具60を構成する傘部64の上面に形成されているが、たとえば把持部61の上端面に設けた挿入位置表示部Mb′としてもよい。
このような挿入位置表示部Mb,Mb′を設けておくと、固定治具60を円形中空部に挿入して使用する際には、上方からの目視により、容易に凹凸部39,63の位置合わせをすることができる。
【0039】
図7に示す固定冶具60Aは、コネクタ10Aのようにディップチューブ12Aを備えたコネクタ本体30Aに適用するものである。この固定冶具60Aは、コネクタ本体30Aの上方から取り付けて使用する。
コネクタ本体30Aの上端部に形成されたリング状の上面には、固定冶具60Aのピン(凸部)66を挿入するピン挿入穴(凹部)37が設けられている。ピン66は、固定冶具60Aの把持部61と一体に設けられた円板形状部67の下面から下向きに突出する部分であり、円周方向に複数設けられている。また、ピン挿入穴37についても、所定位置でピン66を挿入して固定冶具60Aの取付が可能となるように、コネクタ本体30Aの上面に複数設けられている。
【0040】
このように構成されたコネクタ10Aは、コネクタ本体30Aの上面から取り付けられることでピン66及びピン挿入穴37の凹凸部を係合させて互いの相対的な回動を阻止する固定治具60Aと、結合部20の上面に係合させて雄ねじ部22を締め込む締付治具70とを用い、コネクタ取付時に結合部20がコネクタ本体30Aから独立してねじ込まれるようにしたので、ディップチューブ12Aの連れ廻りにより先端部の湾曲方向が変化することを防止できる。
【0041】
換言すれば、コネクタ取付時においては、コネクタ本体30A及びディップチューブ12Aが回転しないように、固定冶具60Aを用いてコネクタ本体30Aを保持しながら締付治具70により結合部20を締め込むことができ、この結果、ディップチューブ12Aの先端部湾曲方向がパーティングラインPLの凸部上面と重ならないように、予め所望の方向へ向けて容器50内に挿入した状態を維持できる。
なお、ピン66及びピン挿入穴37の凹凸部については、コネクタ本体30Aの上面に凸部を設けて固定冶具側の凹部に挿入するようにしてもよい。
【0042】
このように、上述した本実施形態の液体タンク用コネクタによれば、コネクタ取付時の結合部締め込み操作により、容器50内で所望の方向に向けられている湾曲した液体取出管(サイフォン管12やディップチューブ12A)がコネクタ本体30とともに供回りすることを防止できる。この結果、湾曲した液体取出管の先端位置(方向)がコネクタ取付の結合部締め込みにより変動することはなく、従って、ブロー成形品の容器50に取り付けて使用する場合であっても、液体取出管は、液体を取り込む湾曲した先端がパーティングラインPLを避けた位置に容易かつ確実に設置可能となるので、容器50内の残液量を確実に低減できる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
10,10A 液体タンク用コネクタ(コネクタ)
12 サイフォン管(液体取出管)
12A ディップチューブ(液体取出管)
20 結合部
22 雄ねじ部(外ねじ部)
24 結合部側突起
26 治具取付穴
30,30A コネクタ本体(本体)
32 プラグ部
34 鍔部
37 ピン挿入穴(凹部)
38 本体側突起
39 凸部(凹凸部)
40 キャップ
50 容器
52A,52B 開口部(口栓部)
56 ソケット
58 内蓋
58a 雌ねじ部(内ねじ部)
60,60A 固定治具
61 把持部
62 係止部
63 凹部(凹凸部)
66 ピン(凸部)
70 締付治具
71 治具本体
72 貫通孔
73 突起部
74 工具穴
Kr キーリング
Ma 湾曲方向表示部
Mb,Mb′ 挿入位置表示部
CL 中心軸
BL 分割線
PL パーティングライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯蔵された容器の口栓部に設置され、前記容器内から液体の引き出しを行う液体タンク用コネクタであって、
前記口栓部に形成された容器側の内ねじ部と螺合する外ねじ部が形成された結合部と、該結合部と中心軸を共有して内側に配設されるとともに相対的な回動を可能に連結された本体と、該本体に取り付けられて前記容器の底部へと延びるとともに先端部を略水平方向に湾曲させた液体取出管とを備え、
前記本体の上方から取り付けられて接触面間に設けた凹凸部の係合により互いの相対的な回動を阻止する固定治具と、前記結合部の上面に係合させて前記外ねじ部を締め込む締付治具とを用い、コネクタ取付時に前記結合部が前記本体から独立してねじ込まれることを特徴とする液体タンク用コネクタ。
【請求項2】
前記固定冶具は、前記本体の上面に形成された円形中空部に上方から挿入されて接触面間の凹凸部を係合させることを特徴とする請求項1に記載の液体タンク用コネクタ。
【請求項3】
前記接触面間の凹凸部が、前記固定治具の外周面に設けた凹部または凸部と前記円形中空部の内周面に形成した凸部または凹部であることを特徴とする請求項2に記載の液体タンク用コネクタ。
【請求項4】
前記円形中空部に設けた凸部または凹部は、種別に応じて周方向に配置した複数個の組合せが異なることを特徴とする請求項3に記載の液体タンク用コネクタ。
【請求項5】
前記固定冶具の外周面に設けた凹部または凸部は、前記円形中空部側の凸部または凹部に対し、少なくとも複数の種別に対応して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液体タンク用コネクタ。
【請求項6】
前記本体の上面外周部に前記液体取出管の湾曲方向表示部を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液体タンク用コネクタ。
【請求項7】
前記固定冶具に、前記凹凸部の係合位置で前記湾曲方向表示部と周方向位置が一致する挿入位置表示部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の液体タンク用コネクタ。
【請求項8】
前記円形中空部が前記本体の上部に一体化して取り付けられたキーリング部であることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の液体タンク用コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71778(P2013−71778A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214534(P2011−214534)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(591257111)サーパス工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】