説明

液体供給装置

【課題】液体容器が装着部に不完全に装着された状態でカバーが閉じられることを防止する手段を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ100は、インク室102と垂直壁126とを具備する。カートリッジ装着部202は、装着位置において垂直壁126と係合してインクカートリッジ100を保持する第1姿勢と、垂直壁126に係合しない第2姿勢とに姿勢変化可能であって、第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢されたロックアーム230と、開口207を開閉するカバー250と、カバー250に設けられた円筒部256〜259と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器が開口を通じて装着部へ装着可能な液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを用いて記録用紙に画像を記録する画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドを備え、記録ヘッドのノズルからインク滴を記録用紙へ向けて選択的に噴出する。このインク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。この画像記録装置には、記録ヘッドへ供給するインクを貯蔵する液体容器が設けられる。この液体容器として、カートリッジ形式が採用されたものが公知である。カートリッジ形式の液体容器は、画像記録装置に設けられた装着部に対して着脱可能である。このようなカートリッジ形式の液体容器はインクカートリッジとも称される。
【0003】
インクカートリッジ内のインクが無くなると、そのインクカートリッジが画像記録装置の装着部から取り外されて、インクを貯蔵する新たなインクカートリッジが装着部に装着される。装着部において、インクカートリッジの位置決めを行ったり、インクカートリッジの装着状態を保持したりするためのロック構造が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−132098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述されたような装着部には、ユーザが不意にインクカートリッジに触れたり、ロック解除を行ったりしないように開閉可能なカバーが設けられている。このカバーは、画像記録装置の外観を構成する外装材の一部を構成してもよい。また、カバーが開かれた状態で画像記録装置が画像記録を行うことを防止するために、カバーが閉じられていることを検知するセンサが設けられ、カバーが閉じられないと画像記録が行われないように画像記録装置が制御されることもある。
【0006】
前述されたロック構造においては、レバーの回動によってインクカートリッジのロック又はリリースが選択的に行われるが、インクカートリッジの装着操作をユーザが不完全に行うと、外見上はレバーがロック状態であるように見えるが、実はレバーは完全にロック状態となっておらず、インクカートリッジも不完全に装着された状態となるおそれがある。特に、インクカートリッジがロックされているときのレバーの姿勢と、ロックされていないときのレバーの姿勢とが外観上区別しにくいときには、レバーの姿勢がインクカートリッジを完全にロックしていない状態であっても、ロックが完全に行われているとユーザが誤解しやすい。このようなインクカートリッジの不完全な装着は、インク漏れやインク流路への空気の混入などを引き起こす原因となる。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体容器が装着部に不完全に装着された状態でカバーが閉じられることを防止する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、液体容器が開口を通じて装着部へ装着可能な液体供給装置であって、上記液体容器は、液体を貯留する貯留室と、その外面に設けられた被係合部と、を具備するものであり、上記装着部は、上記液体容器が貯留室から液体を供給可能な装着位置において、上記被係合部と係合して上記液体容器を装着位置に保持する第1姿勢と、上記被係合部と係合しない第2姿勢との間で姿勢変化可能であって、第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢された保持部材と、上記開口を開放する開姿勢及び上記開口を閉止する閉姿勢に姿勢変化可能なカバーと、上記カバーに設けられており、上記カバーの閉姿勢への姿勢変化において、第1姿勢である上記保持部材とは当接せず、かつ第1姿勢以外の姿勢である上記保持部材と当接して上記カバーが閉姿勢となることを防止する閉止防止部材と、を具備する。
【0009】
液体容器は、開姿勢のカバーによって開放された開口を通じて装着部へ挿入され、装着位置へ到達すると、保持部材が液体容器の被係合部に係合して装着位置に保持される。そして、カバーが閉姿勢にされると開口が閉止される。保持部材が第1姿勢であれば、閉止防止部材が保持部材と当接しないので、カバーは閉姿勢に姿勢変化され得る。
【0010】
液体容器が装着位置まで挿入されず、保持部材が第1姿勢以外の姿勢であれば、カバーが閉姿勢に姿勢変化される過程において、閉止防止部材が保持部材と当接する。これにより、カバーを閉姿勢にすることができない。
【0011】
なお、保持部材が第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢される態様としては、バネやゴムなどの弾性体によって、保持部材が第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢されていてもよいし、保持部材に加わる重力により、保持部材が第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢されていてもよい。
【0012】
(2) 上記閉止防止部材は、上記保持部材との当接によって、第1姿勢以外の姿勢である上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動するように上記保持部材を案内する形状であってもよい。
【0013】
保持部材が第1姿勢以外の姿勢であるときに、カバーが閉姿勢に姿勢変化される過程において閉止防止部材が保持部材と当接すると、保持部材が第2姿勢側へ姿勢変化するように案内される。よって、閉止部材との当接によって、保持部材が第1姿勢側へ案内されることがないので、閉止防止部材が第1姿勢以外の姿勢である保持部材と確実に当接して、カバーが閉姿勢にされることが防止される。保持部材が第1姿勢付近に留まらず、閉止防止部材が当接される保持部材の姿勢が、第1姿勢から遠ざけられるので、閉止防止部材の位置やカバーなどのガタツキなどに寸法の余裕ができ、閉止防止部材やカバーの設計や加工、組み付けが容易である。
【0014】
(3) 上記閉止防止部材は、上記保持部材との当接によって、上記保持部材を第1姿勢と第2姿勢との間の第3姿勢へ案内する形状であってもよい。
【0015】
保持部材が第1姿勢以外の姿勢であるときに、カバーが閉姿勢に姿勢変化される過程において閉止防止部材が保持部材と当接すると、保持部材は第3姿勢へ案内される。これにより、閉止防止部材との当接によって、第1姿勢以外の姿勢の保持部材が、第3姿勢から第1姿勢側又は第2姿勢側へ姿勢変化されることがないので、保持部材が第3姿勢において閉止防止部材と確実に当接されて、カバーが閉姿勢にされることが防止される。
【0016】
(4) 上記保持部材として、閉姿勢である上記カバーへ延びるレバーであって、その延出端における角部が丸められた平板形状を有するものが挙げられる。上記閉止防止部材として、その開口端が上記保持部材の延出端と当接可能な円筒形状のものが挙げられる。
【0017】
(5) 上記液体容器は、上記装着部への挿入過程において上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させて上記被係合部へ案内するガイド部を有するものであり、上記カバーは、閉姿勢への姿勢変化において、上記ガイド部によって上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させている上記液体容器を、上記保持部材が更に第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動させるように上記液体容器と当接する当接部を有するものであってもよい。
【0018】
液体容器が装着部へ挿入されると、ガイド部が保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させる。そして、液体容器が装着位置へ到達すると、ガイド部によって被係合部へ案内された保持部材が第1姿勢となって被係合部と係合する。
【0019】
液体容器が装着位置まで挿入されず、ガイド部が保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させている状態において、カバーが閉姿勢に姿勢変化されると、カバーの当接部が液体容器と当接し、カバーの姿勢変化に伴って液体容器を移動させる。この移動によって、液体容器は、ガイド部が保持部材を更に第2姿勢側へ姿勢変化させるので、保持部材が第1姿勢付近に留まらない。これにより、閉止防止部材が当接される保持部材の姿勢が第1姿勢から遠ざけられるので、閉止防止部材の位置やカバーなどのガタツキなどに寸法の余裕ができるので、閉止防止部材や保持部材の設計や加工、組付けが容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液体容器が装着部の装着位置まで挿入されず、保持部材が第1姿勢以外の姿勢であれば、カバーが閉姿勢に姿勢変化される過程において、閉止防止部材が保持部材と当接するので、カバーを閉姿勢にすることができない。これにより、液体容器が装着部に不完全に装着された状態でカバーが閉じられることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るインク供給装置200の外観構成を示す斜視図である。
【図2】(A)はスライダ41が第1位置であるインクカートリッジ100を示す斜視図であり、(B)はスライダ41が第2位置であるインクカートリッジ100を示す斜視図である。
【図3】(A)はスライダ41が第1位置であるインクカートリッジ100を示す側面図であり、(B)はスライダ41が第2位置であるインクカートリッジ100を示す側面図である。
【図4】図2(A)におけるIV-IV切断線の断面構造を示す断面図である。
【図5】(A)はロックアーム230の平面図であり、(B)はロックアーム230の側面図である。
【図6】カバー250の面260側を示す正面図である。
【図7】インクカートリッジ100が正常なロック状態であるインク供給装置200を示す断面図である。
【図8】インクカートリッジ100が半ロック状態であるインク供給装置200を示す断面図である。
【図9】変形例において、インクカートリッジ100が半ロック状態であるインク供給装置200を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されながら本発明の実施形態が説明される。なお、本実施の形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨が変更されない範囲で、実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。
【0023】
[インク供給装置200の概略構成]
以下に、インク供給装置200の概略構成が説明される。インク供給装置200は、例えばインクジェットプリンタなどのインクが消費される装置(以下、「インク消費装置」とも称される。)に適用される。インク供給装置200は、インク消費装置に一体に構成されていてもよい。このインク供給装置200が、本発明に係る液体供給装置に相当する。
【0024】
図1に示されるように、インク供給装置200は、主としてインクカートリッジ100及びカートリッジ装着部202から構成されている。インクカートリッジ100はカートリッジ方式であり、カートリッジ装着部202に対して着脱可能である。インク供給装置200においては、4種類のインクカートリッジ100が着脱可能に構成されている。各インクカートリッジ100には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのうちのいずれかの色のインクが収容されている。インク供給装置200においてカートリッジ装着部202に装着された各インクカートリッジ100から、各々が収容する各インクがインク消費装置へ供給される。このインクカートリッジ100が、本発明における液体容器に相当する。カートリッジ装着部202が、本発明における装着部に相当する。
【0025】
[インクカートリッジ100]
以下に、インクカートリッジ100の詳細な構成が説明される。図2及び図3に示されるように、インクカートリッジ100は、扁平形状の略六面体の外形、つまり扁平な直方体である。詳細には、インクカートリッジ100の外形は、幅方向(矢印31の方向)に対して細く、高さ方向(矢印32の方向)及び奥行き方向(矢印33の方向)に対して上記幅方向よりも長い略直方体形状である。このインクカートリッジ100は、図2及び図3に示された起立状態、つまり、図中の下側の面を底面とし、図中の上側の面を上面として、カートリッジ装着部202に対して矢印30で示される向き(以下「挿入向き30」と称する。)に挿入され、矢印29で示される向き(以下「脱抜向き29」と称する。)に脱抜される。脱抜向き29と挿入向き30とは、相反する2つの向きである。なお、本明細書において、特に言及しない限りインクカートリッジ100の底面及び上面は、図2及び図3に示される起立状態におけるものを指す。
【0026】
インクカートリッジ100は、大別して、インクが収容される容器本体40(図4参照)と、スライダ41と、本体カバー42と、コイルバネ48,49(図4参照)とを備えている。インクカートリッジ100の外装はスライダ41及び本体カバー42によって概ね構成されている。容器本体40は、スライダ41及び本体カバー42で概ね覆われている。
【0027】
本体カバー42は、容器本体40を概ね覆うが、容器本体40のストッパ125が本体カバー42から露出される。スライダ41は、本体カバー42に対して挿入向き30の前側に配置されて本体カバー42の前面側部分46を覆う。本体カバー42の前面側部分46とは、挿入向き30に対して前側となる本体カバー42の一部である。
【0028】
スライダ41は、インクカートリッジ100の奥行き方向(矢印33の方向)へスライド可能であり、容器本体40の前面34(図4参照)から挿入向き30の前側へ最も離された第1位置(図2(A)参照)と、容器本体40の前面34に最も近づけられた第2位置(図2(B)参照)との間でスライドされる。スライダ41が第2位置となると、後述されるインク供給バルブ90のキャップ95(図4参照)がスライダ41から外部へ突出される。スライダ41が第1位置となると、キャップ95がスライダ41内に没入される。
【0029】
[容器本体40]
以下に、容器本体40の詳細な構成が説明される。容器本体40は、概ね扁平形状の略六面体の外形である。本実施形態では、図4に示されるように、容器本体40において、挿入向き30に対して前側となる面が前面34であり、挿入向き30に対して後ろ側となる面が背面35であり、重力方向(図4における下方向)に対して上方側の面が上面36であり、重力方向に対して下方側の面が底面37である。
【0030】
容器本体40は、大別して、フレーム50と、大気連通バルブ80と、インク供給バルブ90と、透明な樹脂からなるフィルム(不図示)とにより構成されている。図4には現れていないが、フレーム50の幅方向(図2の矢印31の方向)における両側面にフィルムがそれぞれ溶着されて、このフィルムとフレーム50とによって一定の空間が液密に形成される。このフレーム50の内側の一定空間がインク室102である。インク室102には所定のインクが注入されて貯留される。このインク室102が、本発明における貯留室に相当する。
【0031】
なお、本実施形態では、フレーム50及びフィルムによってインク室102が形成される態様が示されているが、例えば、フレーム50自体を直方体の容器形状として、その内部空間がインク室102とされてもよい。
【0032】
フレーム50は、容器本体40の外壁を構成する略環形状の部材である。フレーム50は、前述されたように、容器本体40の前面34、背面35、上面36、及び底面37を形成して環形状をなしている。フレーム50において、前面34、背面35、上面36、及び底面37の幅(図2における矢印31の方向の寸法)は、ほぼ一定である。フレーム50は、透光性のある部材、例えば、透明又は半透明の樹脂材料で構成されており、例えば、樹脂材料を射出成形して得られる。このような樹脂材料として、例えばポリアセタールやナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがあげられる。
【0033】
フレーム50の前面34の上部に、バルブ収容室55が形成されている。バルブ収容室55は、フレーム50の前面34からフレーム50の内側へ延出された円筒形状の空間である。バルブ収容室55は、フレーム50の前面34においてフレーム50の外部に開口する。バルブ収容室55は、その開口とは奥行き方向(図2における矢印33の方向)において反対側に位置する奥部においてインク室102の上部空間(空気層)と通ずる。バルブ収容室55に、大気連通バルブ80が収容されている。
【0034】
大気連通バルブ80は、バルブ収容室55の開口からインク室102に至る空気経路を開放又は閉塞する弁である。大気連通バルブ80は、主として、バルブ本体87、コイルバネ86、シール部材83、キャップ85から構成されている。バルブ本体87は、バルブ収容室55において、容器本体40の奥行き方向へスライド可能である。このバルブ本体87は、蓋88と、ロッド84とを有する。
【0035】
バルブ本体87は、バルブ収容室55の内壁に案内されてスライドすることにより、蓋88がシール部材83に当接する閉姿勢とシール部材83から離れる開姿勢とに姿勢変化する。蓋88がシール部材83に当接すると、後述する大気連通口81が閉塞され、蓋88がシール部材83から離れると、大気連通口81が開放される。ロッド84は、蓋88の中心から大気連通口81を通じてフレーム50の外側へほぼ水平方向へ突出されている。このロッド84の先端は、容器本体40の前面34側に設けられた部材の中で最も外側に位置する。
【0036】
バルブ収容室55がフレーム50の前面34において開口する部分には、シール部材83を介在させてキャップ85が取り付けられている。キャップ85及びシール部材83は各々貫通孔(不図示)を有し、これら貫通孔は連通している。キャップ85及びシール部材83の各貫通孔によって、バルブ収容室55の内部と外部とを連通する大気連通口81が形成される。
【0037】
コイルバネ86は、バルブ収容室55に設けられて、バルブ本体87を閉姿勢側へ付勢している。つまり、コイルバネ86は、蓋88をシール部材83に近づける方向へバルブ本体87を付勢している。したがって、大気連通バルブ80は、外力が付与されなければ、コイルバネ86に付勢されて蓋88により大気連通口81を閉塞する。一方、外力によりロッド84が外側から押圧されると、コイルバネ86の付勢に抗してバルブ本体87の蓋88がシール部材83から離間され、大気連通口81が開放される。これにより、バルブ収容室55の開口からインク室102に至る空気経路が開放され、インク室102の空気層が大気圧になる。
【0038】
フレーム50の前面34の下部に、バルブ収容室54が形成されている。バルブ収容室54は、フレーム50の前面34からフレーム50の内側へ延出された円筒形状の空間である。バルブ収容室54は、フレーム50の前面34においてフレーム50の外部に開口する。バルブ収容室54は、その開口とは奥行き方向(図2の矢印33の方向)において反対側に位置する奥部においてインク室102の下部空間と通ずる。バルブ収容室54に、インク供給バルブ90が収容されている。
【0039】
インク供給バルブ90は、フレーム50の前面34からインク室102に至るインク経路を開放又は閉塞する弁である。このインク供給バルブ90は、主として、シール部材93、キャップ95、コイルバネ96、バルブ本体97から構成されている。
【0040】
バルブ収容室54がフレーム50の前面34において開口する部分には、シール部材93を介在させてキャップ95が取り付けられている。シール部材93は、ほぼ円筒形状の外形をなす。シール部材93の内孔は、後述されるようにインク供給口91の一部を構成する。シール部材93は、ゴムなどの弾性変形可能な素材であって、他の部材と密接することにより接触面を液密とすることができ、かつ他の部材が摺動する際に摩擦による摺動負荷を生じさせるものである。シール部材93は、その内孔の軸線151が脱抜向き29及び挿入向き30に平行してバルブ収容室54に取り付けられている。また、シール部材93の内孔の径は、後述されるインクニードル209の外形より若干小さい。したがって、シール部材93の内孔に挿入されるインクニードル209は、シール部材93の内孔を拡径するように弾性変形させて、シール部材93と圧接する。
【0041】
キャップ95には、貫通孔(不図示)が設けられている。キャップ95の貫通孔は、シール部材93の内孔の軸線151上にある。シール部材93の内孔は、キャップ95の貫通孔と共に、フレーム50の前面34においてバルブ収容室54の内部と外部とを連通するインク供給口91を形成する。インク供給口91には、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されたときに、管状のインクニードル209(図7参照)が挿入される。
【0042】
バルブ本体97は、バルブ収容室54の内壁に案内されてスライドし、シール部材93から離反する開姿勢と、シール部材93と密着する閉姿勢とに姿勢変化可能である。バルブ収容室54は、その半径方向がバルブ本体97の外形より若干大きく、軸線方向がバルブ本体97のスライドやコイルバネ96の収容に十分な長さである。バルブ本体97は、円筒形状であって、シール部材93と対向する側に当接壁を有する。この当接壁がシール部材93と密着すると、インク供給口91が閉塞される。バルブ本体97の周面とバルブ収容室54の内壁との間には、インクが流通できる程度の隙間が設けられている。
【0043】
コイルバネ96は、バルブ収容室54に設けられて、バルブ本体97を閉姿勢側へ付勢する。つまり、コイルバネ96は、バルブ本体97をシール部材93へ近づける方向へ付勢している。したがって、インク供給バルブ90は、外力が付与されなければ、コイルバネ96がバルブ本体97をシール部材93に密着させることによって、インク供給口91が閉塞される。一方、インク供給口91に外側からインクニードル209が挿入されると、インクニードル209の先端がバルブ本体97を押し込み、コイルバネ96の付勢力に抗してバルブ本体97がシール部材93から離間されるとともに、インク供給口91はインクニードル209の外周面により液密に封止される。そして、インク供給口91より内側へ進入したインクニードル209の先端に形成された開口を介してインクニードル209の内部空間へインク室102のインクが流れ込み、インクニードル209を通じてインク室102から外部へインクが流出可能となる。
【0044】
フレーム50の前面34における上端付近及び下端付近にバネ収容室110,111がそれぞれ形成されている。バネ収容室110,111は、いずれもフレーム50の前面34からインク室102側へ穿たれた略円筒状の空間である。バネ収容室110,111には、コイルバネ48,49がそれぞれ収容されている。このコイルバネ48,49は、スライダ41を挿入向き30へ付勢する。なお、バネ収容室110,111の位置や孔の内径寸法又は深さ寸法などは、収容されるバネの仕様に応じて適宜決定される要素であるが、容器本体40の高さ方向(矢印32の方向)に長尺なスライダ41を、容器本体40に対して安定姿勢を保持するように均等に付勢するには、本実施形態の如く、容器本体40の高さ方向に隔てられた上下位置に一対のバネ収容室110,111が配置されることが望ましい。
【0045】
フレーム50の上面36における挿入向き30の前側に、支持部材115が設けられている。また、フレーム50の底面37における挿入向き30の前側に、支持部材116が設けられている。各支持部材115,116は、フレーム50に一体に形成されている。各支持部材115,116は、スライダ41に形成された突片192,193とそれぞれ係合して、容器本体40に対してスライダ41をスライド可能に支持する。また、支持部材115,116がスライダ41に係合することにより、容器本体40からスライダ41が離脱することがない。
【0046】
支持部材115は、フレーム50の上面36から垂直上方へ突出された基台118と、基台118の前面34側の端に形成された鉤部119とを有する。鉤部119は、基台118から挿入向き30へ延び、更に上向きに折れ曲がる鉤形状である。支持部材116は、フレーム50の底面37から垂直下方へ突出された基台121と、基台121の前面34側の端に形成された鉤部122を有する。鉤部122は、基台121から挿入向き30へ延び、更に下向きに折れ曲がる鉤形状である。
【0047】
フレーム50の上面36に台部124が設けられている。台部124は、上面36から上方へ突出する概ね台形状をなしており、上面36において奥行き方向(矢印33の方向)の中間部分から挿入向き30の後側へ、つまり容器本体40の背面35側へ延出されている。台部124は、容器本体40が本体カバー42で覆われると、本体カバー42の上面に設けられた開口128(図2参照)を通じて本体カバー42の外部へ露出される。
【0048】
台部124には、ストッパ125が設けられている。ストッパ125は、台部124における挿入向き30の前側の端に設けられて、台部124の上面からさらに上方へ突出している。ストッパ125は、台部124の上面に対してほぼ垂直に起立する垂直壁126と、その上面が垂直壁126の上面から概ね45度の角度で挿入向き30の前側へ傾斜しながら降下するリブ127とを有する。ストッパ125は、容器本体40が本体カバー42で覆われると、本体カバー42の上面に設けられた開口128(図2参照)を通じて本体カバー42の外部へ露出される。ストッパ125は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されたときに、カートリッジ装着部202からインクカートリッジ100が脱抜しないように装着状態をロックするためのものであり、このロックは、後述されるロックアーム230のロック部237(図7参照)との係合により達成される。ストッパ125における垂直壁126の垂直面が、本発明における被係合部に相当する。垂直壁126の上面及びリブ127が、本発明におけるガイド部の一部に相当する。
【0049】
フレーム50には、複数の貫通孔130が設けられている。各貫通孔130は、フレーム50において幅方向(図4の紙面に垂直な方向)へ貫通されており、フレーム50において上面36側及び底面37側にそれぞれ4つずつ形成されている。この貫通孔130に本体カバー42の係合爪132がそれぞれ係合して、容器本体40と本体カバー42とが組み付けられている。
【0050】
[スライダ41、本体カバー42]
以下に、スライダ41及び本体カバー42の詳細な構成が説明される。図2及び図3に示されるように、本体カバー42は、容器本体40をほぼ収容可能な容器形状である。本体カバー42は、容器本体40の外形に対応して扁平な直方体の外形をなしている。
【0051】
本体カバー42の側面には、奥行き方向(矢印33の方向)におけるほぼ中央付近に、接続部43が形成されている。本体カバー42の側面は、接続部43を介して、インクカートリッジ100の背面35側となる背面側部分47と、前面34側となる前面側部分46とに区分けされている。幅方向(矢印31の方向)に対して、前面側部分46が背面側部分47よりも狭く、これにより、本体カバー42の側面には二段の面により段差が形成されている。この段差は、スライダ41の左側壁165及び右側壁166の厚みに対応されている。よって、スライダ41の幅を本体カバー42の背面側部分47の幅と同じ寸法にするとともに、本体カバー42の前面側部分46をスライダ41の内部に収容することができる。
【0052】
図2及び図4に示されるように、本体カバー42における背面側部分47の上面には、開口128が設けられている。この開口128は、容器本体40の台部124及びストッパ125が露出可能な矩形の長孔である。本体カバー42が容器本体40に組み付けられると、開口128から台部124及びストッパ125が外部へ露出される。
【0053】
図2に示されるように、本体カバー42は、幅方向(矢印31の方向)に対して対称形状をなす一対の左カバー44と右カバー45とからなる。左カバー44及び右カバー45は、その内面からほぼ水平方向へ突出する複数の係合爪132(図4参照)を有する。これら係合爪132が容器本体40の貫通孔130にそれぞれ係合して、容器本体40を挟み込むようにして、容器本体40、左カバー44及び右カバー45が一体に組み付けられている。
【0054】
スライダ41は、本体カバー42の前面側部分46を収容可能な容器形状であり、扁平形状の外形をなす。詳細には、スライダ41は、容器本体40の前面34に対応する前壁161と、本体カバー42の前面側部分46における上面に対応する上壁163と、前面側部分46における下面に対応する下壁164と、前面側部分46における両側面に対応する左側壁165及び右側壁166とを有する。これら各壁によって囲まれたスライダ41の内部空間に本体カバー42の前面側部分46が収容されうる。なお、上壁163の上面は、本発明におけるガイド部の一部に相当する。
【0055】
図4に示されるように、スライダ41の内部には、ロッド168,169が設けられている。各ロッド168,169は、スライダ41の前壁161の内面から容器本体40の前面34へ向かってほぼ水平方向に突出する。ロッド168は、前壁161における上側に配置され、ロッド169は、前壁161における下側に配置されている。ロッド168には、容器本体40のバネ収容室110に配置されたコイルバネ48が外嵌され、ロッド169には、容器本体40のバネ収容室111に配置されたコイルバネ49が外嵌される。各コイルバネ48,49が収縮されると、各ロッド168,169は、それぞれバネ収容室110,111に挿入される。
【0056】
スライダ41における上壁163の内面側に、摺動溝171が形成されている。摺動溝171は、上壁163と、左側壁165の一部及び右側壁166の一部とで形成され、縦断面において下側が開放された逆U字形状をなす。また、摺動溝171の前壁161側はスライダ41の外部に開口されている。この摺動溝171において、上壁163の内面から突片192が垂下されている。この突片192に対して、支持部材115の大部分が摺動可能であるが、支持部材115の鉤部119が当接する。鉤部119は、突片192に対して前壁161側から当接する。この当接により、スライダ41が容器本体40から脱落することが防止される。鉤部119が突片192に当接しない範囲においては、基台118によって容器本体40に対するスライダ41のスライドが一定方向へ案内され、容器本体40に対してスライダ41がスライド自在である。
【0057】
スライダ41における下壁164の内面側に、摺動溝172が形成されている。摺動溝172は、下壁164と、左側壁165の一部及び右側壁166の一部とで形成され、縦断面において上側が開放されたU字形状をなす。また、摺動溝172の前壁161側はスライダ41の外部に開口されている。この摺動溝172において、下壁164の内面から突片193が起立されている。この突片193に対して、支持部材116の大部分が摺動可能であるが、支持部材116の鉤部122が当接する。鉤部122は、突片193に対して前壁161側から当接する。この当接により、スライダ41が容器本体40から脱落することが防止される。鉤部122が突片193に当接しない範囲においては、基台121によって容器本体40に対するスライダ41のスライドが一定方向へ案内され、容器本体40に対してスライダ41がスライド自在である。スライダ41の奥行き方向(矢印33の方向)に対して、各突片192,193は同位置である。したがって、鉤部119が突片192に当接するスライダ41のスライド位置と、鉤部122が突片193に当接するスライダ41のスライド位置は同じである。
【0058】
スライダ41は、コイルバネ48,49によって容器本体40の前面34から離れる方向へ付勢されている。スライダ41に外力が加えられていない状態では、スライダ41は、突片192,193に鉤部119,122がそれぞれ当接して、図3(A)に示される第1位置で静止する。一方、スライダ41に対して前壁161側から外力が加えられると、スライダ41がコイルバネ48,49の付勢力に抗して図3(B)に示される第2位置へスライドし得る。
【0059】
スライダ41には、前壁161における上側に開口177が形成されている。開口177の高さ位置(図2の矢印32の方向における位置)は、大気連通バルブ80の高さ位置に対応する。開口177は、前壁161側から視て円形であり、カートリッジ装着部202に設けられた押圧部216(図7参照)が挿通可能なサイズである。インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着される過程において、押圧部216が開口177に挿通される。
【0060】
スライダ41には、前壁161における下側に開口178が形成されている。開口178の高さ位置(図2の矢印32の方向における位置)は、インク供給バルブ90の高さ位置に対応する。開口178は、インク供給バルブ90のキャップ95が挿通可能な形状及びサイズである。スライダ41が第2位置にあるときに、キャップ95が開口178からスライダ41の外部に飛び出す。
【0061】
[カートリッジ装着部202]
以下に、カートリッジ装着部202の詳細な構成が説明される。図1に示されるように、カートリッジ装着部202は、開口207を有する概ね直方体形状の外形をなすフレーム204によって主として形成されている。フレーム204の内部空間に、各インクカートリッジ100がそれぞれ収容される。本実施形態において、カートリッジ装着部202は、各インクカートリッジ100に対応する1つの空間である。つまり、4つのカートリッジ装着部202が幅方向21に並んで配置されており、各カートリッジ装着部202に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ100がそれぞれ収容可能である。なお、カートリッジ装着部202が並べられている幅方向21は、インクカートリッジ100の挿入向き30と直交する水平方向であって、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着された状態において、インクカートリッジ100の幅方向(図2の矢印31の方向)と平行となる。
【0062】
各図には現れていないが、フレーム204には、内部空間を仕切り分ける3つのプレートが設けられている。このプレートによって仕切り分けられた4つの空間(カートリッジ装着部202)それぞれにインクカートリッジ100が収容される。プレートは、フレーム204の開口207の反対側に位置する奥面から開口207側へ突出された薄板であり、フレーム204の内部空間において上下方向へ延出されている。各プレートは、フレーム204の幅方向21に所定間隔で平行に配列されている。フレーム204の内面とプレートとの間、或いは隣り合う一対のプレートの間は、その間に収容されるべきインクカートリッジ100の幅に対応されている。フレーム204及びプレートにより区画形成された各空間であるカートリッジ装着部202にインクカートリッジ100が収容される。インクカートリッジ100は、開口207を通じてカートリッジ装着部202へ挿入される。
【0063】
フレーム204における内面の底に、4つのガイド溝206が設けられている。各ガイド溝206は、フレーム204の内面とプレートとの間、或いは隣り合う一対のプレートの間に設けられて、フレーム204の開口207から奥部に渡って直線形状に形成されている。フレーム204内の各空間に収容されるインクカートリッジ100は、各ガイド溝206に案内されて、フレーム204に対して所定の挿抜方向に沿って挿抜される。インクカートリッジ100の挿抜方向はガイド溝206に沿った相反する脱抜向き29及び挿入向き30からなる方向である。フレーム204の奥部から開口207へ延びる向きが脱抜向き29であり、フレーム204の開口207から奥部へ延びる向きが挿入向き30である。
【0064】
図7に示されるように、フレーム204の奥面に、ジョイント208が設けられている。ジョイント208は、インクカートリッジ100のインク供給口91に接続されて、インク室102のインクを導出するためのものである。したがって、ジョイント208は、各カートリッジ装着部202に収容される4つのインクカートリッジ100に対応して4つが設けられている。フレーム204には、その幅方向21に4つのインクカートリッジ100が収容されるので、4つのジョイント208もフレーム204の幅方向21に配列されており、各ジョイント208の高さ位置は、カートリッジ装着部202に収容されたインクカートリッジ100におけるインク供給口91の高さ位置に対応されている。
【0065】
図7に示されるように、各ジョイント208は、インクニードル209と保持部210とをそれぞれ有する。インクニードル209は、円筒形状の管であり、フレーム204の奥面から開口207へ向かってほぼ水平方向へ突出されている。インクニードル209の軸線153は、脱抜向き29と一致する。インクニードル209の外径は、軸線方向153に対してほぼ一定であり、インク供給バルブ90のシール部材93の内径より若干大きい。また、インクニードル209は、その外周面がシール部材93の内孔周面と液密に接触した状態で軸線153方向に摺動可能であり、その摺動に際して摩擦による摺動負荷が発生する。インクニードル209の先端は開口しており、その先端がインクカートリッジ100のインク供給バルブ90へ挿入されて、インク供給バルブ90を開放する。インクニードル209の内部空間は、先端から基端へ通ずる流路であり、この流路をインクが流通可能である。
【0066】
各図には現れていないが、インクニードル209の基端は、フレーム204の外部においてインクチューブに接続されている。これにより、インクチューブは、インクニードル209と共にインク流路を形成する。インクチューブはインクジェットプリンタの記録ヘッドなどのインク消費装置へ延出されている。
【0067】
保持部210は、フレーム204の奥面に設けられて、インクニードル209の基端側を囲繞する円筒形状である。保持部210の軸線とインクニードル209の軸線153とはほぼ一致する。インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着されると、キャップ95(図2(B)参照)が保持部210内に嵌合されるとともに、インクニードル209がインク供給バルブ90のシール部材93(インク供給口91)へ挿入される。そして、インク供給口91より内側へ進入したインクニードル209の先端の開口から、インクニードル209の内部空間へインク室102のインクが流れ込み、インクニードル209を通じてインク室102から外部へインクが流出可能となる。
【0068】
フレーム204の奥面には、押圧部216が設けられている。押圧部216の高さ位置は、カートリッジ装着部202に装着されたインクカートリッジ100の大気連通バルブ80の高さ位置に対応する。したがって、前述された各ジョイント208の上側に各押圧部216が配置され、4つの押圧部216がフレーム204の幅方向21に並べられている。各押圧部216は、フレーム204の奥面から開口207へ向かって水平方向に突出する円筒形状であり、その先端には円形の窪み217が形成されている。インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に装着される過程において、押圧部216がインクカートリッジ100の開口177に挿入され、大気連通バルブ80のロッド84が窪み217に誘い込まれ、窪み217の底面がロッド84をインク室102側へ押し込む。このロッド84の押し込みより、大気連通口81が開放される。
【0069】
[ロックアーム230及びコイルバネ219]
図1及び図7に示されるように、フレーム204の上面にはロックアーム230、コイルバネ219が設けられている。本実施形態において、本発明における保持部材は、主として、フレーム204、ロックアーム230及びコイルバネ219により構成されている。
【0070】
ロックアーム230は、カートリッジ装着部202においてインクカートリッジ100を装着状態にロックするためのものであり、本発明における保持部材の一部をなす。フレーム204には、4つのインクカートリッジ100に対応して4つのロックアーム230が幅方向21に並んで配置されている。なお、図1では、一部のロックアーム230及びコイルバネ219が省略されている。
【0071】
図7に示されるように、ロックアーム230は、フレーム204の開口207側から奥面側へ向かって曲折しつつ延出されている。図5に示されるように、ロックアーム230の延出方向の中央付近に支持軸232が設けられている。この支持軸232は、ロックアーム230の両端から水平方向へ突出したピン形状である。図7には詳細に示されていないが、フレーム204の上面付近に、支持軸232を支持可能な一対の軸受けが形成されており、この一対の軸受けに支持軸232がそれぞれ回転自在に支持されて、フレーム204にロックアーム230が支持軸232周りに回動可能に支持されている。この支持軸232及びフレーム204の一対の軸受けにより、ロックアーム230の支持機構が実現されている。
【0072】
ロックアーム230は、フレーム204の開口207側となる第1端に操作レバー234を有し、フレーム204の奥面側となる第2端にロック部237を有する。操作レバー234は、フレーム204の外部に向かって、つまりカバー250側へ突出しており、平板形状を有する。操作レバー234の延出端235は、平面視において角部が丸められた半円形状をなしている。
【0073】
ロックアーム230は、その幅方向21の厚み、換言すればインクカートリッジ100が挿入される挿入向き30と直交する水平方向の厚みが、インクカートリッジ100の厚みより小さい。これにより、カートリッジ装着部202において各インクカートリッジ100が収容される幅の範囲内にロックアーム230が配置されている。ロック部237は、その下面が先端に向かうにつれて曲線状をなしている。
【0074】
操作レバー234が下方へ押圧された際に、操作レバー234の下方において突出するフレーム204の突片236(図1参照)がロックアーム230の下面に当接して、ロックアーム230の回動範囲を制限する。一方、フレーム204の開口207付近における上縁部205(図1参照)は、ロックアーム230の上面と当接して、ロックアーム230の回動範囲を制限する。つまり、ロックアーム230は、フレーム204の突片236及び上縁部205によって、その回動範囲が制限されている。
【0075】
ロックアーム230とフレーム204との間には、コイルバネ219が設けられている。ロックアーム230が曲折する部分には、その上面から上方へ鈎形状に突出する掛け部241が設けられている。この掛け部241は、コイルバネ219の一端を掛止するためのものである。フレーム204の上面には、コイルバネ219の他端を掛止する掛け部239が水平方向へ突出されている。掛け部239は、4つのロックアーム230に対応してフレーム204に4つ形成されている。この掛け部239,241に両端がそれぞれ掛止されて、ロックアーム230とフレーム204との間にコイルバネ219が張られている。コイルバネ219は、ロックアーム230とフレーム204との間に張られた状態において収縮力を発生させる。このコイルバネ219の収縮力によって、ロックアーム230は、図7における時計回り方向(矢印245の方向)への回動力が付与される。
【0076】
操作レバー234に外力が加えられていない状態では、ロックアーム230は、コイルバネ219により矢印245方向へ付勢されるとともに、上縁部205に当接して回動が制止された状態で保持される。このロックアーム230の姿勢が、本明細書において第1姿勢と称される。第1姿勢において、操作レバー234の上面は、概ね水平方向に延びており、ロック部237は、フレーム204の内面から下方へ突出している。第1姿勢におけるロック部237の突出位置は、カートリッジ装着部202に収容されるインクカートリッジ100と当接し得る位置である。具体的には、第1姿勢におけるロック部237がインクカートリッジ100のストッパ125の垂直壁126の垂直面と係合して、カートリッジ装着部202に挿入されたインクカートリッジ100の脱抜向き29への移動を制止し得る位置である。コイルバネ219の収縮力に抗して、操作レバー234が下げられると、ロックアーム230が、矢印245と反対方向へ回動され、ロック部237がフレーム204の内面へ没入する。このようなロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢にあるとき、ロック部237は、カートリッジ装着部202に収容されるインクカートリッジ100と当接しない位置にある。すなわち、第1姿勢以外の姿勢において、ロック部237は、ストッパ125の垂直壁126の垂直面と係合しない位置にある。さらに、ロックアーム230が回動されると、ロックアーム230の下面がフレーム204の突片236(図1参照)に当接する。このときのロックアーム230の姿勢が、本明細書において第2姿勢と称される。第2姿勢は、第1姿勢以外の姿勢であるので、ロックアーム230が第2姿勢にあるときにおいても、ロック部237は、カートリッジ装着部202に収容されるインクカートリッジ100と当接しない位置にある。すなわち、第2姿勢において、ロック部237は、ストッパ125の垂直壁126の垂直面と係合しない位置にある。
【0077】
図1及び図6に示されるように、カートリッジ装着部202には、開口207を開放及び閉止可能なように開閉可能なカバー250が設けられている。カバー250は、カバー250が閉じられたときに、4つのカートリッジ装着部202すべてを覆う大きさの概略平板形状のカバー本体251を有する。カバー本体251の下端には、その両側から軸受け部252,253が互いに近づく向きへ突出されている。軸受け部252,253は、幅方向21に延びるボスが嵌合可能な円筒形状をなしている。各図には現れていないが、フレーム204の開口207付近の下端には、幅方向21に沿って互いに離れる向きへ突出するボスが設けられており、このボスが軸受け部252,253に嵌合されている。これにより、カバー本体251がボスを軸として回動可能である。すなわち、カバー250がフレーム204に組み付けられて、カバー本体251の下端側を軸として上端側が起伏するように回動可能となっている。これにおり、カバー本体251が、開口207を開放する開姿勢と、開口207を閉止する閉姿勢に姿勢変化可能となっている。
【0078】
カバー本体251には、その一側方からフレーム204に向かって延びる円弧形状のガイド部材254が設けられている。ガイド部材254は、カバー本体251の回動軌跡に沿った円弧形状をなしている。各図には現れていないが、ガイド部材254の先端はフレーム204の側壁に到達している。フレーム204の側壁には、ガイド部材254と同じ円弧形状をなすガイド溝が形成されている。このガイド溝に、ガイド部材254の先端側に設けられたボスが係入されている。ボスがガイド溝内を移動可能な範囲が、カバー本体251の回動範囲となる。
【0079】
カバー本体251の上端付近には、フック部255が設けられている。フック部255は、カバー本体251の幅方向21のほぼ中央からフレーム204へ向かって延出されている。各図には現れていないが、カバー本体251が閉姿勢となると、フック部255がインク消費装置のフレームなどと係合して、カバー本体251が閉姿勢に保持される。フック部255が弾性変形されると、その係合が解除されて、カバー本体251が閉姿勢から開姿勢へ姿勢変化可能となる。
【0080】
カバー本体251において各ロックアーム230と対向する位置には、円筒部256〜259が設けられている。ロックアーム230は、各インク色毎のインクカートリッジ100に応じて幅方向21へ4個が配置されており、これらロックアーム230に対応して、円筒部256〜259も幅方向21へ4個が配置されている。各円筒部256〜259が、本発明における閉止防止手段に相当する。各円筒部256〜259は、第1姿勢であるロックアーム230とは当接せず、第1姿勢以外の姿勢であるロックアーム230と当接する位置に配置されている。各円筒部256〜259は、その配置が異なる他は同じ形状なので、円筒部256を例として詳細な構成が説明される。
【0081】
円筒部256は、カバー本体251においてロックアーム230と対向する面260から面260に対して垂直となるように延出されており、その先端が開口端となっている。円筒部256が面260から延出する寸法は、カバー本体251が閉姿勢であるときに、重力方向においてロックアーム230の操作レバー234とオーバーラップする寸法である。
【0082】
円筒部256の内径は、ロックアーム230の操作レバー234の延出端235の半円形状における径より若干小さい。したがって、操作レバー234の延出端235は、円筒部256の内部に一部進入可能であるが、完全に進入することはない。操作レバー234の延出端235が円筒部256の内部に一部進入して、円筒部256の開口端と延出端235の縁とが当接すると、円筒部256の開口端の円形状と延出端235の半円形状とによって、延出端235が円筒部256に進入しつつ、円筒部256の中央側へ案内される。その結果、延出端235がそれ以上円筒部256に進入できない姿勢に至り、延出端235と円筒部256との当接状態が安定する。このときのロックアーム230の姿勢が、本明細書において第3姿勢と称される。
【0083】
より具体的には、円筒部256の上部において円筒部256の開口端と延出端235の縁とが当接すると、ロックアーム230が第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動するように案内され、ロックアーム230は第3姿勢となる。円筒部256の下部において円筒部256の開口端と延出端235の縁とが当接すると、ロックアーム230が第1姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動するように案内され、ロックアーム230が第3姿勢となる。
【0084】
円筒部256の内部空間には、カバー本体251が閉姿勢にあるときに、高さ方向32へ延びるリブ261が設けられている。リブ261は、円筒部256の開口端より奥側、つまり面260側にある。操作レバー234の延出端235は、円筒部256の開口端と接触して第3姿勢に至ると、リブ261とも当接する。なお、各図においては参照符号が付されていないが、他の円筒部257〜259においても同様のリブが設けられている。
【0085】
カバー本体251の面260の下端付近には、幅方向21へ延びる複数のリブ262が設けられている。この複数のリブ262は、面260における軸受け部252,253付近から、面260の上下方向の中央付近に亘って配置されている。このリブ262は、カバー250が開姿勢から閉姿勢へ姿勢変化されるときに、後述される半ロック状態のインクカートリッジ100の背面35側の下隅と当接して、インクカートリッジ100を斜め上方(挿入向き30と重力方向上向きとの間の向き)へ移動させる。このリブ262が、本発明における当接部に相当する。
【0086】
[インクカートリッジ100の正常なロック動作]
以下に、カートリッジ装着部202に対してインクカートリッジ100を装着する動作が説明される。なお、図7においては、インクカートリッジ100の内部構成の一部が省略されている。
【0087】
カートリッジ装着部202にインクカートリッジ100が装着されておらず、かつロックアーム230の操作レバー234に外力が加えられていない状態では、コイルバネ219の収縮力によって、ロックアーム230が第1姿勢に維持される。この第1姿勢において、操作レバー234の上面は概ね水平方向に延びており、ロック部237はフレーム204の内面から下方へ突出している。したがって、カートリッジ装着部202にインクカートリッジ100が挿入されると、ロック部237付近がインクカートリッジ100に当接しうる。また、挿入前のインクカートリッジ100においては、コイルバネ48,49に弾性付勢されて、スライダ41が第1位置にある。
【0088】
インクカートリッジ100の装着に際しては、カバー250が開姿勢にされて、フレーム204の開口207からカートリッジ装着部202へインクカートリッジ100が挿入される。インクカートリッジ100の挿入向き30は水平方向と平行である。インクカートリッジ100の底面は、フレーム204に形成されたガイド溝206に嵌り込み、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202へ押し込まれると、ガイド溝206によってインクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の奧へ直線的に案内される。ガイド溝206によって案内されているインクカートリッジ100におけるシール部材93の軸線方向151と、カートリッジ装着部202におけるインクニードル209の軸線方向153とは一致する。
【0089】
インクカートリッジ100の上面においては、本発明におけるガイド部の一部であるスライダ41の上壁163にロックアーム230のロック部237が当接する。これにより、ロックアーム230がコイルバネ219の収縮力に抗して矢印245と反対向きに、すなわち第2姿勢側へ姿勢変化される。ロック部237の下面が曲線状であるので、ロック部237がスライダ41の上壁163上へ円滑に移動し、ストッパ125へ向かって案内される。
【0090】
さらに、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の奥へ押し込まれると、スライダ41の前壁161がカートリッジ装着部202の奥面に当接する。このとき、ロック部237は、スライダ41の上壁163から本体カバー42の上面へ移動する。このとき、ロックアーム230は第1姿勢側に少し復帰する。
【0091】
スライダ41がカートリッジ装着部202の奥面に当接してから、さらにインクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の奧へ押し込まれると、コイルバネ48,49が収縮する。コイルバネ48,49を収縮させる力は、ユーザがインクカートリッジ100を押し込む力である。スライダ41は、カートリッジ装着部202の奥面に当接して制止されているので、容器本体40及び本体カバー42がスライダ41に対して相対移動しながらカートリッジ装着部202へ押し込まれ、その結果、第1位置のスライダ41が第2位置へスライドされる。なお、図7においては、コイルバネ48,49が省略されている。
【0092】
容器本体40が移動し、大気連通バルブ80のロッド84が押圧部216に当接して、コイルバネ86の付勢力に抗してロッド84が押し込まれる。このコイルバネ86を収縮させる力は、ユーザがインクカートリッジ100をカートリッジ装着部202へ押し込む力である。これにより、バルブ本体87がシール部材83から離れて大気連通口81が開放され、その結果、インク室102の空気層が大気圧にされる。
【0093】
また、容器本体40が移動し、スライダ41の開口178からインク供給バルブ90のキャップ95が飛び出てジョイント208の保持部210と嵌合し、かつ、コイルバネ96の付勢力に抗してインク供給口91にインクニードル209が挿入される。シール部材93の軸線151とインクニードル209の軸線153とは、共に挿入向き30と一致するので、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に挿入されることにより、インクニードル209がシール部材93の内孔に挿入される。インクニードル209がシール部材93の内孔を拡径しながら、インクニードル209とシール部材93とが摺接する際に、摩擦による摺動負荷が生じる。この摺動負荷に抗してコイルバネ96を収縮させる力は、ユーザがインクカートリッジ100をカートリッジ装着部202へ押し込む力である。これにより、ジョイント208にインク供給バルブ90が接続され、インク室102のインクがインク供給口91及びインクニードル209を通じて外部へ流出しうる。
【0094】
また、容器本体40が移動し、ロックアーム230のロック部237は、本体カバー42の上面から本発明におけるガイド部の一部である容器本体40のリブ127へ到達し、さらに、垂直壁126の上面に案内される。これにより、ロックアーム230が第2姿勢側へ姿勢変化される。ロックアーム230のロック部237が垂直壁126を乗り越えて台部124へ到達すると、ロックアーム230が矢印245へ回動して第1姿勢に復帰する。
【0095】
スライダ41が第2位置となるまで本体カバー42が押し込まれると、ユーザは、それ以上にインクカートリッジ100をカートリッジ装着部202へ押し込むことができない。これにより、インクカートリッジ100が挿入限界までカートリッジ装着部202へ押し込まれたことが認識される。そして、ユーザがインクカートリッジ100の押し込みを止めると、コイルバネ48,49に付勢されて、スライダ41が第2位置から第1位置へ復帰しようとする。つまり、本体カバー42及び容器本体40が脱抜向き29へスライダ41に対して相対移動しようとする。
【0096】
また、大気連通バルブ80においては、コイルバネ86に付勢されて、バルブ本体87がシール部材83側へ移動しようとする。インク供給バルブ90においては、コイルバネ96に付勢されて、バルブ本体97がシール部材93側へ移動しようとする。
【0097】
前述された各コイルバネ48,49,86,96に付勢されて容器本体40が脱抜向き29へ移動しようとするが、第1姿勢のロックアーム230におけるロック部237がストッパ125の垂直壁126の垂直面と係合することにより、容器本体40の脱抜向き29への移動が制止される。これにより、インクカートリッジ100は、各コイルバネ48,49,86,96の付勢力に抗して、装着状態にロックされる。このインクカートリッジ100の位置が、本発明において装着位置と称される。
【0098】
インクカートリッジ100をカートリッジ装着部202へ装着し終えると、カバー250が閉じられる。図7に示されるように、カバー250の各円筒部256〜259は、第1姿勢であるロックアーム230とは当接しない位置に配置されているので、カバー250が開姿勢から閉姿勢へ姿勢変化されて、開口207が閉じられる。この状態において、インク消費装置が動作されて、インクカートリッジ100のインクが消費される。
【0099】
[インクカートリッジ100の脱抜動作]
インクカートリッジ100の交換に際しては、閉姿勢のカバー250が開姿勢に姿勢変化される。これにより、カートリッジ装着部202の開口207が露出される。そして、インクカートリッジ100のロックを解除するために、ユーザがロックアーム230の操作レバー234を押し下げる。これにより、ロックアーム230は支持軸232を中心にして矢印245と反対向きへ回動し、ロックアーム230が第1姿勢から第1姿勢以外の姿勢に姿勢変化する。ロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢になると、ロック部237が台部124から離れて垂直壁126より上側へ移動する。
【0100】
ロック部237が垂直壁126より上側へ移動すると、容器本体40の脱抜向き29への移動は制止されない。したがって、前述された各コイルバネ48,49,86,96の付勢力を受けて容器本体40が脱抜向き29へ移動し、スライダ41が相対的に第2位置から第1位置へスライドする。
【0101】
容器本体40の移動に伴って、インク供給バルブ90においては、インク供給口91からインクニードル209が脱抜するとともにバルブ本体97がインク供給口91を閉塞する。さらに、ジョイント208の保持部210からキャップ95が外れる。
【0102】
インク供給口91を形成するシール部材93の内孔の軸線151、及びインクニードル209の軸線153は、インクカートリッジ100の脱抜向き29と一致するので、容器本体40が脱抜向き29へ移動するに伴って、シール部材93は、インクニードル209と摺接しながら脱抜向き29へ移動する。そして、インクニードル209がインク供給口91から完全に抜け出る。
【0103】
スライダ41が第1位置となるまで、容器本体40及び本体カバー42がスライダ41に対して相対移動すると、本体カバー42の一部がカートリッジ装着部202の開口207から外側へ突出する。そして、ユーザが、カートリッジ装着部202から突出したインクカートリッジ100の一部を挟み持ってカートリッジ装着部202から引き出すことにより、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202から取り外される。
【0104】
[インクカートリッジ100の半ロック動作]
以下に、カートリッジ装着部202に対してインクカートリッジ100が装着されるが、完全にロックされずに半ロックとなるときの動作が説明される。なお、図8においては、インクカートリッジ100の内部構成の一部が省略されている。
【0105】
インクカートリッジ100の装着に際して、カバー250が開姿勢にされて、フレーム204の開口207からカートリッジ装着部202へインクカートリッジ100が挿入される動作は、正常なロック動作において説明された動作と同様である。つまり、カバー250が開姿勢にされて、フレーム204の開口207からカートリッジ装着部202へインクカートリッジ100が挿入される。なお、カートリッジ装着部202にインクカートリッジ100が装着されておらず、かつロックアーム230の操作レバー234に外力が加えられていない状態では、コイルバネ219の収縮力によって、ロックアーム230が第1姿勢に維持されている。
【0106】
図8に示されるように、容器本体40が移動し、ロックアーム230のロック部237は、本体カバー42の上面から容器本体40のリブ127へ到達し、さらに、垂直壁126の上面に案内されると、ロックアーム230が第2姿勢側へ姿勢変化される。この状態から、ロックアーム230のロック部237が垂直壁126を乗り越えることなく、ロックアーム230が第1姿勢へ復帰する力によって、ロック部237が垂直壁126の上面に圧接することによって、インクカートリッジ100が各コイルバネ48,49,86,96の付勢力に抗して、その位置に留まることがある。このような状態が、本明細書において半ロック状態と称される。
【0107】
半ロック状態において、インクカートリッジ100が挿入限界までカートリッジ装着部202へ押し込まれたとユーザが誤認して、さらにインクカートリッジ100をカートリッジ装着部202へ押し込むことを止めると、例えば、インク供給バルブ90のインク供給口91にインクニードル209が完全に挿入されずに、インク室102のインクが外部へ流出できない状態となる。
【0108】
半ロック状態においてカバー250が閉じられると、カバー250が開姿勢から閉姿勢へ姿勢変化される途中において、カバー本体251の面260の下端付近に設けられた複数のリブ262が、インクカートリッジ100の背面側の下隅と当接して、インクカートリッジ100を斜め上方へ押し込むように移動させる。これにより、ロックアーム230が更に第2姿勢側へ姿勢変化される。それと同時、もしくは、それに続いて、第1姿勢以外の姿勢であるロックアーム230の操作レバー234の延出端235が円筒部256の開口端と当接する。また、円筒部256の開口端の円形状と延出端235の半円形状とによって、延出端235が円筒部256の中央側へ案内されて、第3姿勢においてロックアーム230と円筒部256との当接状態が安定する。これにより、カバー250が閉姿勢になることがない。なお、前述されたように、円筒部256の上部において円筒部256の開口端と延出端235の縁とが当接すると、ロックアーム230が第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動するように案内され、ロックアーム230は第3姿勢となる。円筒部256の下部において円筒部256の開口端と延出端235の縁とが当接すると、ロックアーム230が第1姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動するように案内され、ロックアーム230は第3姿勢となる。
【0109】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202の装着位置まで挿入されず、ロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢であれば、カバー250が閉姿勢に姿勢変化される過程において、円筒部256〜259が操作レバー234と当接するので、カバー250を閉姿勢にすることができない。これにより、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部202に不完全に装着された状態でカバー250が閉じられることが防止される。
【0110】
カバー250が閉じられなければ、インクカートリッジ100のカートリッジ装着部202への装着が不完全であることをユーザが認識し、そのユーザはインクカートリッジ100をカートリッジ装着部202に再装着するであろうから、インクカートリッジ100の装着が不完全な状態で、インク消費装置によりインクが消費されることが抑制される。また、カバー250が閉じられていることを検知するセンサがインク消費装置に設けられ、カバー250が閉じられていないとインク消費が行われないようにインク消費装置が制御される場合には、インクカートリッジ100の装着が不完全な状態でインクが消費されることが防止される。
【0111】
ロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢であるときに、カバー250が閉姿勢に姿勢変化される過程において、円筒部256〜259の上部とロックアーム230とが当接すると、ロックアーム230は第2姿勢側へ姿勢変化するように案内される。よって、ロックアーム230が第1姿勢側へ姿勢変化されることがないので、円筒部256〜259と第1姿勢以外の姿勢であるロックアーム230とが確実に当接し、カバー250が閉姿勢にされることが防止される。ロックアーム230が第1姿勢付近に留まらず、ロックアーム230の姿勢が第1姿勢から遠ざけられるので、円筒部256〜259の位置やカバー250のガタツキなどに寸法の余裕ができ、円筒部256〜259やカバー250の設計や加工、組み付けが容易である。
【0112】
ロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢であるときに、カバー250が閉姿勢に姿勢変化される過程において円筒部256〜259の上部とロックアーム230とが当接すると、ロックアーム230は第2姿勢側へ姿勢変化するように案内されて第3姿勢となる。また、ロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢であるときに、カバー250が閉姿勢に姿勢変化される過程において円筒部256〜259の下部とロックアーム230とが当接すると、ロックアーム230は第1姿勢側へ姿勢変化するように案内されて第3姿勢となる。これにより、円筒部256〜259との当接によって、ロックアーム230が第3姿勢から第1姿勢側又は第2姿勢側へ姿勢変化されることがないので、ロックアーム230が第3姿勢にて円筒部256〜259と確実に当接されて、カバー250が閉姿勢にされることが防止される。
【0113】
仮に、円筒部256〜259が開口端を有しておらず、円筒部256〜259がロックアーム230の延出端235と平面で当接する場合を想定する。この場合、延出端235が円筒部256〜259の平面に当接した後、カバー250がさらに閉姿勢に向かって移動されると、第2姿勢側に向かって延出端235が円筒部256〜259の平面上を滑りながら移動して、円筒部256〜259の下方へ移動するおそれがある。延出端235が円筒部256〜259の下方へ移動して、延出端235が円筒部256〜259ともはや当接していない状態では、カバー250が閉姿勢になる可能性がある。本実施形態によれば、そのような可能性が低減される。
【0114】
インクカートリッジ100が半ロック状態までしか挿入されていない状態において、カバー250が閉姿勢に姿勢変化されると、カバー250のリブ262がインクカートリッジ100と当接し、カバー250の姿勢変化に伴ってインクカートリッジ100を斜め上方へ移動させる。この移動によって、ロックアーム230が第2姿勢側へ姿勢変化されるので、ロックアーム230が第1姿勢付近に留まらない。これにより、ロックアーム230の姿勢が第1姿勢から遠ざけられるので、円筒部256〜259の位置やカバー250などのガタツキなどに寸法の余裕ができるので、円筒部256〜259やカバー250の設計や加工、組付けが容易である。
【0115】
[変形例]
なお、本実施形態では、円筒部256の開口端の円形状と延出端235の半円形状とによって、延出端235が円筒部256の中央側へ案内されて、第3姿勢においてロックレバー230と円筒部256との当接状態が安定するが、このようなロックアーム230の安定は、別の構成により実現されてもよい。例えば、図9に示されるように、円筒部256の内部空間に設けられたリブ263において操作レバー234と対向する端が、高さ方向32の中央において円筒部256の奥側へ凹むように傾斜した形状であり、操作レバー234の延出端235が、円筒部256の開口端と接触せずにリブ263の端と当接することによって、リブ263の高さ方向32の中央側へ案内されて、第3姿勢においてロックレバー230と円筒部256との当接状態が安定するように構成されてもよい。
【0116】
また、複数のリブ262が、インクカートリッジ100の背面側の下隅と当接して、インクカートリッジ100を斜め上方へ押し込むように移動させるという構成は省略されてもよい。この構成が無くとも、半ロック状態では、ロックアーム230が第1姿勢以外の姿勢であるから、延出端235が円筒部256と当接する。
【0117】
また、ロックアーム230が第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢される態様としては、コイルバネ219によってロックアーム230が第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢されている態様に限らず、ロックアーム230に加わる重力によってロックアーム230が第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢されていてもよい。
【符号の説明】
【0118】
100・・・インクカートリッジ(液体容器)
102・・・インク室(貯留室)
126・・・垂直壁(被係合部)
127・・・リブ(ガイド部)
200・・・インク供給装置(液体供給装置)
202・・・カートリッジ装着部(装着部)
207・・・開口
230・・・ロックアーム(保持部材)
235・・・延出端
250・・・カバー
256〜259・・・円筒部(閉止防止部材)
262・・・リブ(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器が開口を通じて装着部へ装着可能な液体供給装置であって、
上記液体容器は、
液体を貯留する貯留室と、
その外面に設けられた被係合部と、を具備するものであり、
上記装着部は、
上記液体容器が貯留室から液体を供給可能な装着位置において、上記被係合部と係合して上記液体容器を装着位置に保持する第1姿勢と、上記被係合部と係合しない第2姿勢との間で姿勢変化可能であって、第1姿勢側へ姿勢変化するように付勢された保持部材と、
上記開口を開放する開姿勢及び上記開口を閉止する閉姿勢に姿勢変化可能なカバーと、
上記カバーに設けられており、上記カバーの閉姿勢への姿勢変化において、第1姿勢である上記保持部材とは当接せず、かつ第1姿勢以外の姿勢である上記保持部材と当接して上記カバーが閉姿勢となることを防止する閉止防止部材と、を具備する液体供給装置。
【請求項2】
上記閉止防止部材は、上記保持部材との当接によって、第1姿勢以外の姿勢である上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動するように上記保持部材を案内する形状である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
上記閉止防止部材は、上記保持部材との当接によって、上記保持部材を第1姿勢と第2姿勢との間の第3姿勢へ案内する形状である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項4】
上記保持部材は、閉姿勢である上記カバーへ延びるレバーであって、その延出端における角部が丸められた平板形状を有しており、
上記閉止防止部材は、その開口端が上記保持部材の延出端と当接可能な円筒形状である請求項3に記載の液体供給装置。
【請求項5】
上記液体容器は、上記装着部への挿入過程において上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させて上記被係合部へ案内するガイド部を有するものであり、
上記カバーは、閉姿勢への姿勢変化において、上記ガイド部によって上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させている上記液体容器を、上記保持部材が更に第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動させるように上記液体容器と当接する当接部を有する請求項2から4のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項6】
上記液体容器は、上記装着部への挿入過程において上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させて上記被係合部へ案内するガイド部を有するものであり、
上記カバーは、閉姿勢への姿勢変化において、上記ガイド部によって上記保持部材を第2姿勢側へ姿勢変化させている上記液体容器を、上記保持部材が更に第2姿勢側へ姿勢変化する向きへ移動させるように上記液体容器と当接する当接部を有する請求項1に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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