説明

液体保存容器

【課題】開栓後に飲み残したワインを確実且つ簡便に酸化防止して保存することができる液体保存容器を提供する。
【解決手段】収縮可能な容器に飲み残しのワインを入れ、容器本体1を収縮させて、その液面を首部10に達する程度にまで押し上げ、首部の径より小さい状態の栓2を首部に挿入し、栓の底部が首部内の液面に接する位置で栓の径を拡大させ首部に密着させることで、容器内の空気空間をなくした状態で容器を密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を保存する容器に関し、特に、飲み残したワインの酸化を防止する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイン瓶(ワインボトル)を開栓すると、瓶内のワインは空気中の酸素と接触し、酸化が進み、風味が劣化するため、できるだけ早く飲みきることが望ましいが、飲み残した場合は、ワイン瓶等の容器を再度密栓して保存する。その際、飲み残したワインの風味が劣化しないように容器内のワインを酸化防止して保存するために、さまざまな手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平2006−264781号公報)や特許文献2(特開2006−36344号公報)は、栓に脱酸素剤を固定し、脱酸素剤を容器内の空間に配置することで、容器内のワインに触れる酸素を除去することで、ワインの酸化を防止する。
【0004】
また、特許文献3(特開2006−176148号公報)や特許文献4(特開2001−335008号公報)は、容器内の空気を不活性ガスに置換することで、ワインの酸化を防止する。
【0005】
また、特許文献5(特開2001−58700号公報)は、容器内の空間を真空にすることで、ワインの酸化を防止する。
【0006】
さらに、特許文献6(特開2001−139032号公報)は、容器内にガラス棒を入れ、容器内の空気の体積を減らすことでワインの酸化を防止する。
【特許文献1】特開平2006−264781号公報
【特許文献2】特開2006−36344号公報
【特許文献3】特開2006−176148号公報
【特許文献4】特開2001−335008号公報
【特許文献5】特開2001−58700号公報
【特許文献6】特開2001−139032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、脱酸素剤により酸素を除去する構成は、酸素を完全に除去できるとは限らず、また、開栓する毎に脱酸素剤を交換する必要がある。
【0008】
また、容器内の空気空間を不活性ガスに置換する構成及び真空に引く構成は、機構が複雑であり、家庭などでの簡便な保存には適さない。また、安全上の問題も残る。
【0009】
さらに、ガラス棒を挿入する構成は、容器内の空気空間を完全になくすことはできず、さらに、容器内の空気空間の体積の変化に柔軟に対応することができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、開栓後に飲み残したワインを確実且つ簡便に酸化防止して保存することができる液体保存容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、収縮可能な容器に飲み残しのワインを入れ、容器を収縮させて、その液面を容器の首部に達する程度にまで押し上げ、首部の径より小さい状態の栓を首部に挿入し、栓の底部が首部内の液面に接する位置で栓の径を拡大させ首部に密着させることで、容器内の空気空間をなくした状態で容器を密閉する。
【0012】
具体的には、本発明の液体保存容器の第一の構成は、開口している所定長の首部を有し、容積可変に収縮可能な容器本体と、前記首部の内径よりも小さい口径から前記首部の内径より大きい口径まで径を拡大させることができる栓とを備え、前記栓が前記首部の内径よりも小さい口径の状態で前記首部の開口部分から前記首部に挿入され、前記栓を前記首部の内面に密着させるように前記首部内で前記栓の径を拡大させることで、前記首部の任意の位置で前記首部を密閉することを特徴とする。
【0013】
本発明の液体保存容器の第二の構成は、上記第一の構成のおいて、前記栓は、内部の空洞に収容された押圧部材の移動により、前記栓の側面を空洞内から押圧することで、前記栓の径を拡大させることを特徴とする。
【0014】
本発明の液体保存容器の第三の構成は、上記第一又は第二の構成において、前記首部の開口部分は末広がり形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器内の空気空間をなくし、容器内の液体を空気(酸素)に触れさせずに保存することができるので、液体の酸化を防止し、風味劣化を抑制した保存が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態における液体保存容器の構成例を示す図である。液体保存容器は、飲み残しのワインを保存するための容器であって、開口している首部(注ぎ口)10を有し、且つ首部10の下部が容積可変に変形可能な容器本体1と、その首部10に挿入されて、首部10を密閉する栓2とを備えて構成される。なお、図1(a)は、容器本体1が収縮されておらず、且つ栓2は首部10に挿入されていない状態を示し、図1(b)は容器本体1が収縮され、且つ栓2は首部10を密閉している状態を示す。
【0018】
容器本体1の形状は、図示されるように、フラスコ状であってもよいし、またワインボトルのような形状であってもよく、その形状は問わない。また、首部10は、円筒形状であり、好ましくは、所定長にわたって一定内径を有する。ただし、首部10の開口部分を末広がり形状とすることで、飲み残しのワインを容器内に移す作業を容易にし、容器内のワインを注ぎやすくすることができる。また、首部10は、容器本体1に対して取りはずし可能に取り付けられていてもよい(例えばネジ式)。もちろん、取り付けられている状態では、首部10は、容器本体1に密着している。
【0019】
容器本体1は、ポリエチレン(PE)フィルム等を積層したオレフィン積層材料で形成され、好ましくは、容器本体1からの酸素透過を防止するために、非通気性プラスチック(例えばエチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH))層を挟んでいる(例えば、市販のマヨネーズやケチャップの容器)。容器本体1は、その柔軟性(軟質性)により、手で押したり握る程度の外部からの力により、その形状を自在に変形させることができ、容器本体1を凹ませるように変形することで、容器本体1の容積は縮小される。なお、容器本体1は、変形可能な程度であるが且つ自立可能な程度の硬さを有し、特に、容器本体1における首部10の部分は、後述するように、栓2による密閉が可能な程度の剛性(硬質性)を有する。既知のブロー成形により、硬さが部位により異なる部材を一体的に成形することができる。また、容器本体1は、液面位置を視認可能とするために、透明であることが好ましいが、液面位置を視認可能な程度に色づけされていてもよい。
【0020】
図1(b)に示すように、手で握るようにして容器本体1を変形させることで、容積を縮小させ、容器本体1内のワインの液面位置を自在に調整可能となり、その液面位置が首部10にまで達するように容器本体1を収縮させる。この状態で、栓2を首部10内の液面位置まで挿入し、栓2の底部が液面と接触する位置で首部10を密閉するように栓2は固定される。
【0021】
栓2が液面に接触して首部10は密閉されるので、容器内の空気空間をなくすことができ、ワインは酸素に触れることなく保存することができる。
【0022】
図2は、栓2の原理的な構成の断面図である。例えば、ワインボトルのコルク栓のように、ワインボトルの内径よりわずかに広くその弾力性及び復元性を利用してボトルの開口部に強制的に挿入して密閉する場合、容器内の空気を外部に排出できないため、液面位置に接するように、ワインボトルを密閉することができず、密閉状態において必ず容器内に空気空間が残る。
【0023】
これに対して、本実施の形態における栓2は、挿入される際に、首部10に残る空気を排出させながら、ワインの液面位置まで達し、その位置で容器本体1を密閉することができる。その原理的な構成は、図2(a)に示すように、栓2の円筒部20は、例えばシリコンゴムのような圧力により変形する材質で形成され、内部に空洞部分21を有する。空洞部分には、上下方向に移動可能な球形部材22を収容し、球形部材22には、栓2の上面部から突出する棒状部材23が連結している。円筒部23と棒状部材23が係合する部分はそれぞれねじ切り加工されており、人の手により棒状部材23を回転させることで、球形部材22を空洞部分21内で上下方向に動かすことができる。空洞部分21は、その内径が上下方向(高さ方向)において異なるように形成され、球形部材22の径(幅方向長さ)より広い部分21aと球形部材の径より狭い部分21bが形成される。図2の例では、内径が連続的に変化する構造となっている。
【0024】
従って、図2(b)に示すように、棒状部材23を回転させて下方向に動かし、球形部材22を、内径が球形部材22の径より広い空洞部分21aから狭い空洞部分21bに移動させると、球形部材22は、空洞部分21bの内面を押圧し、それにより、栓2の径が外方向に広げられる。
【0025】
栓2の径は、球形部材22が空洞部分21aにあるときは、容器本体1の内径より小さく、首部10と栓2との隙間から空気を外部に排出しながら、栓2は首部10内に挿入され、栓2の底部(下面部)が液面位置に接した位置で、棒状部材23を押し下げることで、栓2の径を拡大させ、空洞部分21内部から圧力を首部10の内面に与えることで、栓2を首部10に密着する。こうして、栓2は、液面位置に接した位置で容器本体1を密閉することで、容器本体1内の空気空間をなくして、容器本体1内のワインを保存することが可能となる。
球形部材22及び棒状部材23は金属、プラスチック、ガラスなどで形成され、好ましくは一体的に成型される。また、球形部材22に変わって、別の形状の押圧部材であってもよく、径差により空洞部分21を内部から押圧できる形状であれば、その形状は問わない。さらに、空洞部分21の内径は、図2に例示するように、下に向かって狭くする場合に限らず、上方向に向かって狭くする構造であってもよい。その場合、棒状部材23を下から上に上げる(球形部材22を下から上に移動させる)操作により、栓2の径を拡大させる。円筒部材20の肉厚、球形部材22の径などの各種寸法は、首部10に密着して密閉するのに必要な数値を適宜選択する。
【0026】
図3は、栓2の具体的な構成例を示す外観斜視図である。栓2の円筒部20の上面から棒状部材23が突出しており、円筒部20の上面には、持ち手24が取り付けられ、手で持ち手24を持って首部10内の円筒部20を液面位置に留めながら、棒状部材23を押し下げることで、円筒部20の径を拡大させ(点線部)、首部10に密着させる。
【0027】
図4は、容器本体1の別の構成例を示す図である。図4には、容器本体1の外観形状と底面の形状が示される。容器本体1は、四角錐形状を基本形とし(図4(a))、その側面を内側に折り曲げるように凹ませることにより(図4(b))、底面積を小さくして容積を収縮させることで、ワインの液面位置を首部10まで押し上げることができる。
【0028】
図5は、液体保存容器を支える支持具の例を示す図である。容器本体1の柔軟性により自立できない場合は、図5に示すように、支持具3の把持部30により、首部10のくびれ部分を把持し、吊り下げる。もちろん、容器本体1が自立可能に形成されている場合は、図5の支持具は必要ない。なお、図5では、栓2の記載を省略している。
【0029】
図6は、本発明の実施の形態における栓の別の構成例を示す図である。本例の栓5は、飲み残しのワインが入っている円筒形のワイン瓶40にそのまま適用するものであり、ワイン瓶40の首部41からその内部に挿入可能な棒状部材51の先端に、径が変化する径可変構造体52が固定されている。
【0030】
径可変構造体52は、棒状部材51のワイン瓶40内部の一端51aに固定され且つ径が変化する拡大収縮部521と、拡大収縮部521に接続して首部41から外部に延びるパイプ状の延長部522を備えて構成される。
【0031】
延長部522は、例えばステンレスパイプで形成されるが、必要な強度が確保される他の素材でもかまわない。棒状部材51は延長部522内を通り、外部に突出している。
【0032】
拡大収縮部521は、傘状の円錐形状を2つ合わせたような形状であり、傘の開閉動作のように上下動させることで、径が変化する。拡大収縮部521の径は首部41の内径より小さい径からワイン瓶40の少なくとも最大内径まで拡大可能であり、図示されるように、延長部522を固定したまま、棒状部材51を上に引き上げることで、拡大収縮部521は傘状に開き、その径が拡大し、その状態から下に押し下げることで、傘が閉じられるようにその径を収縮させることができる。拡大収縮部521は、例えば、ビニールやナイロンなどの水及び空気が浸透しない素材で形成され、拡大時にワイン瓶40の内面に密着する外縁部はシリコンゴムなどが取り付けられる。
【0033】
好ましくは、栓5は、首部41に嵌合する円筒部53を有し、延長部522は円筒部53を貫通して外部に露出し、棒状部材の他端51bは、パイプ状の延長部522から外部に突出している。円筒部53は、延長部522を固定するのに有用である。また、円筒部53は、延長部522の長さ方向に対して移動可能であり、径可変構造体52をワイン瓶40内の所望の位置に位置決めすることができる。
【0034】
径可変構造体52の動作は以下の通りである。飲み残しのワインが残っているワイン瓶40内部に拡大収縮部521を閉じた状態で挿入し(図6(a))、外部に露出している棒状部材51の他端51b側を引き上げて、拡大収縮部522の径を拡大させ、その外縁522aをワイン瓶40の内面に密着させる。これにより、ワイン瓶40の断面が覆われ、ワインの液面付近を密閉することで、液面上の空気空間をほぼなくすことができ、ワインの酸化防止を抑制することができる。
【0035】
また、図6に示した構造の栓5は、容積可変に変形可能な容器本体1(図1)の首部を密閉する栓としても適用可能である。すなわち、棒状部材51の一端が首部内に挿入され、径可変構造体52の拡大収縮部521は、首部の内径より小さい径から少なくとも首部の内径まで拡大可能とする。そして、延長部522を固定したまま、棒状部材51を上に引き上げることで、拡大収縮部521は傘状に開き、その径を拡大し、拡大収縮部521の外周部が首部の内周面に密着することで、首部の任意の位置を密閉することができる。
【0036】
棒状部材51と延長部材522とを螺合させ、棒状部材51を回転させることで、延長部材522に対して上下方向に移動させ、拡大収縮部521の径を変化させるようにしてもよい。また、ワイン瓶に限らず、他の液体保存用容器にも適用可能である。
上述の実施の形態例では、ワインの保存容器として説明したが、本実施の形態例の液体保存容器は、ワインに限らず、空気(酸素)との接触により劣化する他の液体の保存にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態における液体保存容器の構成例を示す図である。
【図2】栓2の原理的な構成の断面図である。
【図3】栓2の具体的な構成例を示す外観斜視図である。
【図4】容器本体1の別の構成例を示す図である。
【図5】液体保存容器を支える支持具の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における栓の別の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1:容器本体、2:栓、3:支持具、10:首部、20:円筒部、21:空洞部分、22:球形部材、23:棒状部材、24:持ち手、30:把持部、40:ワイン瓶、41:首部、51:棒状部材、52:径可変構造体、521:拡大収縮部、522:延長部材、53:円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口している所定長の首部を有し、容積可変に変形可能な容器本体と、
前記首部の内径よりも小さい口径から前記首部の内径より大きい口径まで径を拡大させることができる栓とを備え、
前記栓が前記首部の内径よりも小さい口径の状態で前記首部の開口部分から前記首部に挿入され、前記栓を前記首部の内面に密着させるように前記首部内で前記栓の径を拡大させることで、前記首部の任意の位置で前記首部を密閉することを特徴とする液体保存容器。
【請求項2】
請求項1において、
前記栓は、内部の空洞に収容された押圧部材の移動により、前記栓の側面を空洞内から押圧することで、前記栓の径を拡大させることを特徴とする液体保存容器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記首部の開口部分は末広がり形状であることを特徴とする液体保存容器。
【請求項4】
内部に空洞部分を有する円筒部材と、
前記空洞部分に移動可能に収容される押圧部材と、
前記押圧部材に連結し、前記円筒部材の上面から突出する棒状部材とを備え、
前記空洞部分には、前記押圧部材の幅方向長さより広い内径部分と前記押圧部材の幅方向長さより短い内径が形成されていることを特徴とする液体保存容器用栓。
【請求項5】
開口している首部を有する円筒形の容器を閉じる栓において、
前記容器よりも長く、前記首部から前記容器内部に挿入可能な棒状部材と、
前記棒状部材の前記容器内部側の一端に固定され、前記容器内部で前記首部の内径よりも小さい状態から少なくとも前記容器の最大内径まで変化し、前記容器の断面を覆う径可変構造体とを備えることを特徴とする栓。
【請求項6】
開口している首部を有する円筒形の容器を閉じる栓において、
前記首部に挿入可能な棒状部材と、
前記棒状部材の前記首部内側の一端に固定され、前記首部の内径よりも小さい状態から少なくとも前記首部の最大内径まで変化し、前記首部の断面を覆う径可変構造体とを備えることを特徴とする栓。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記径可変構造体に対して前記棒状部材をその長さ方向に相対的に移動させることで、前記可変構造体の径を変化させることを特徴とする栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−100320(P2010−100320A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274380(P2008−274380)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【特許番号】特許第4267060号(P4267060)
【特許公報発行日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(508319842)
【出願人】(508319853)
【Fターム(参考)】