説明

液体処理方法および液体処理装置

【課題】超音波を利用して液体を高能率に撹拌できる液体処理方法、装置を提供する。
【解決手段】超音波振動子4に連接されたホーン2に、その先端面から側面に抜ける流路9を形成し、該ホーン2を、その先端面が撹拌容器1内の台座5に所定の間隙で対向配置されるように配設する。撹拌容器1内に、給水管7を通じて水を所定量供給した後、ホーン2から超音波照射を行い、その先端面と台座5との間隙でキャビテーションを集中的に発生させて、そのポンピング作用で、水を流路9内に吸上げると共に、遮蔽板10に衝突させて撹拌容器1に還流し、この循環する水に粉末粒子6を投入して撹拌し、その後、撹拌容器1を回転ユニット11により回転させて、遮蔽板10に代えて輸送管12を前記口部9aに接近させ、ホーン2からの超音波照射を継続して、処理液を輸送管12を経て、他の処理設備へ輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して液体を撹拌する液体処理方法および液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して液体を撹拌する方法、装置としては、例えば、特許文献1または2に記載されたものがあった。特許文献1に記載されたものは、撹拌容器(反応容器)の内底部に超音波振動子を配置すると共に、撹拌容器内の中間または上部側に循環補助部材を配置し、超音波照射によって生じる液体の音響流を前記循環補助部材により積極的に循環させるようにしている。また、特許文献2に記載されたものは、超音波振動子に連設されたホーンまたはホーンに接続されたチップを液体に浸漬して、液体に超音波振動を伝達するようにしている。
【特許文献1】特開2003−71277号公報
【特許文献2】特開平8−113300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載される液体の撹拌方法、装置によれば、音響流による液体の対流を期待するものであるため、撹拌に時間がかかり、また、特許文献2に記載される撹拌方法、装置によれば、ホーンまたはチップの周辺にしか撹拌効果が及ばず、何れも撹拌能力が不十分である、という問題があった。また、特許文献1に記載される液体の撹拌方法、装置によれば、容器内に循環補助部材を配置する必要があるため、装置構造が複雑化する、という問題もある。
【0004】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、超音波を利用して液体を高能率に撹拌できる液体処理方法、装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための第1の方法発明は、撹拌容器内の液体に、超音波振動子に連接され、内部に先端面から側面または後端面へ抜ける流路を有するホーンの先端部を浸漬し、前記ホーンからの超音波照射によって該ホーンの先端面付近にキャビテーションを集中的に発生させると共に、前記ホーン内の流路を通して液体を循環させて撹拌することを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するための第2の方法発明は、撹拌容器内の液体に、超音波振動子に連接され、内部に先端面から側面または後端面へ抜ける流路を有するホーンの先端部を浸漬し、前記ホーンからの超音波照射によって該ホーンの先端面付近にキャビテーションを集中的に発生させると共に、前記ホーン内の流路を通して液体を循環させて撹拌し、しかる後、前記超音波照射を継続しながら、前記ホーン内の流路を経て、撹拌容器内の液体をその外部へ輸送することを特徴とする。
【0007】
上記第1の方法発明においては、超音波照射によってホーンの先端面付近にキャビテーションを集中的に発生させるので、ポンピング作用により撹拌容器内の液体がホーン内の流路を通して循環し、効率よく撹拌される。また、上記第2の方法発明においては、前記第1の方法発明の作用に加え、撹拌後の液体が、同様のポンピング作用でホーン内の流路を通して撹拌容器外へ高能率に輸送される。
【0008】
上記課題を解決するための第1の装置発明は、上記第1の方法発明の実施に用いられるもので、超音波振動子に連接されたホーンに、その先端面から側面または後端面に抜ける流路を形成し、該ホーンを、その先端部が撹拌容器内の液体に浸漬されるように配設し、前記撹拌容器内には、前記ホーンの先端面と所定の間隙で対向配置される台座を配設したことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するための第2の装置発明は、上記第2の方法発明の実施に用いられるもので、超音波振動子に連接されたホーンに、その先端面から側面または後端面に抜ける流路を形成し、該ホーンを、その先端部が撹拌容器内の液体に浸漬されるように配設し、前記撹拌容器内には、前記ホーンの先端面と所定の間隙で対向配置される台座を配設し、さらに、前記ホーンの側面または後端面に開口する、前記流路の口部から吐出される液体を受けて撹拌容器内に戻す還流手段と、前記口部から吐出される液体を受けて撹拌容器の外部へ輸送する輸送手段と、前記還流手段と前記輸送手段とを前記口部に対して切換える切換手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記第1の装置発明においては、ホーンの先端面と台座との間隙内でキャビテーションが集中的に発生し、ホーンの先端面に開口する、流路の口部付近に強いポンピング作用が生じる。また、上記第2の装置発明においては、還流手段と輸送手段とを切換えることで、撹拌後の液体が、同様のポンピング作用でホーン内の流路を通して撹拌容器外へ高能率に輸送される。
【発明の効果】
【0011】
第1の方法発明および第1の装置発明によれば、撹拌容器内の液体を超音波を利用して高能率に撹拌することができ、生産性の向上に大きく寄与する効果を奏する。
【0012】
また、第2の方法発明および第2の装置発明によれば、撹拌容器内の液体を超音波を利用して高能率に撹拌することができることに加え、撹拌を終えた液体を撹拌容器の外へ高能率に輸送することができ、各種処理設備の付帯設備としてきわめて有用となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面も参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る液体処理装置の一つの実施形態を示したものである。同図において、1は、有底円筒形状をなす撹拌容器、2は、発振器3により駆動される超音波振動子4に連接された超音波照射用ホーンである。ホーン2は、超音波振動子3と一体に撹拌容器1内に直立する姿勢で配設され、一方、撹拌容器1の内底には、前記ホーン2の先端面と所定の間隙で対向配置される台座5が配設されている。台座5は、ここでは、ホーン2の先端面との間にわずかの間隙(一例として、1〜5mm)を形成するようにその高さが設定されると共に、ホーン2よりも小径となるようにその直径が設定されている。本実施形態としての液体処理装置は、水に薬剤である粉末粒子6を溶解して均一な処理液(液体)を得るためのもので、撹拌容器1の上方には、該撹拌容器1内に水を供給するための給水管7と前記粉末粒子6を供給するためのシュート8とが配設されている。
【0015】
本実施形態において、上記ホーン2の内部には、その先端面から側面へ抜ける流路9が形成されている。また、撹拌容器1の側壁の一部には、前記ホーン2の側面に開口する、流路9の口部(以下、これを吐出口という)9aの前方を遮蔽可能な遮蔽板(還流手段)10が固設されている。撹拌容器1は、回転ユニット(切換手段)11の回転体11a上に載置されており、前記遮蔽板10は、この回転ユニット11により撹拌容器1が回転することで、前記吐出口9aの前方を遮蔽する位置と、該吐出口9aの前方から退避する位置とに任意位置決めされるようになっている。一方、撹拌容器1の側方には、前記吐出口9aに対して進退動可能に輸送管(輸送手段)12が配設されており、輸送管12は、前記遮蔽板10が吐出口9aの前方から退避した状態で、該吐出口9aの近傍に前進できるようになっている。なお、撹拌容器1の底面には排液口が設けられており、この排液口は、常時は栓13により封止されている。
【0016】
以下、上記のように構成された液体処理装置による液体処理方法を、図2および図3も参照して説明する。
【0017】
液体処理に際しては、図2に示されるように、先ず給水管7を通じて撹拌容器1内に一定量の水Wを供給し、続いて発振器3により超音波振動子4を駆動してホーン2から撹拌容器1内の水Wに超音波を照射する。すると、ホーン2の先端面と台座5との間隙内で集中的にキャビテーションが発生し、ホーン2の先端面に開口する、流路9の口部9b付近に強いポンピング作用が生じる。そして、このポンピング作用により撹拌容器1内の水Wが前記口部9bから流路9内に吸引され、さらにその吐出口9aから前方へ向けて吐出される。この時、吐出口9aの前方には、遮蔽板10が位置決めされており、吐出口9aから吐出された水Wは、この遮蔽板10に衝突して撹拌容器1内に流下する。すなわち、撹拌容器1内の水Wは、ホーン2内の流路9を経て循環し、これにより激しく撹拌される。
【0018】
次に、同じく図2に示されるように、シュート8を通じて粉末粒子6が一定量ずつ撹拌容器1内の水Wに投入される。すると、この投入された粉末粒子6は、激しく撹拌されている水W中に速やかに溶解し、その必要量の投入により所望の濃度を有する処理液Lが短時間で得られるようになる。
【0019】
その後、図3に示されるように、回転ユニット11の作動で、撹拌容器1が180度回転して、遮蔽板10が前記吐出口9aの反対側に移動退避し、一方、この回転にタイミングを合せて、輸送管12がホーン2の側面の吐出口9aの近傍に進出する。しかして、この間、ホーン2からの超音波照射が継続されており、前記撹拌を終えた処理液Lは、上記撹拌時と同様に、ホーン2内の流路9を通って前記吐出口9aから吐出され、そのまま輸送管12内に流入する。輸送管12の他端部は、例えば、該処理液Lを必要とする他の処理設備(一例として、排水処理設備)へ延ばされており、前記処理液Lは、この輸送管12を通して他の処理設備へ輸送される。
【0020】
上記処理液Lの輸送は、撹拌容器1内の処理液Lの液面がホーン2の先端面に開口する口部9bのレベルまで下がると停止されるので、この段階でホーン2からの超音波照射が中断される。また、これと同時に回転ユニット11の作動で撹拌容器1が180度回転し、遮蔽板10が、吐出口9aの前方に再び位置決めされる。そして、撹拌容器1内に所定量の水Wが再び供給され、前記操作が繰返えされて処理液Lの製造および処理液Lの他設備への輸送が順次行われ、以降、前記操作の繰返しで他設備に対して間欠的に処理液が輸送される。なお、他設備で必要とする量の処理液Lの輸送を終えたら、栓13を抜いて撹拌容器1内に残っている処理液Lを排出し、これにて一連の液体処理が終了する。
【0021】
ここで、上記実施形態においては、ホーン2内にその先端面から側面に抜ける流路9を形成したが、この流路は、ホーンの先端面から後端面に抜けるように形成してもよいもので、この場合は、超音波振動子4に前記流路を延長する流路を設けて、超音波振動子4の上端側から水Wを撹拌容器1内に還流させるようにする。また、この場合は、水を撹拌容器1内に還流させる手段を始め、処理液を他設備へ輸送する手段、それらの切換手段は、前記超音波振動子4の上端の吐出口に合せて、適宜の設置形態とする。
【0022】
なお、上記実施形態においては、水Wに粉末粒子6を撹拌溶解させる処理に適用した例を示したが、本発明は、液体と液体との撹拌混合させる処理に適用してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る液体処理装置の一つの実施形態を示す模式図である。
【図2】本液体処理装置による液体処理方法の途中過程を示す模式図である。
【図3】本液体処理装置による液体処理方法の最終過程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1 撹拌容器
2 ホーン
3 発振器
4 超音波振動子
5 台座
9 流路
9a 吐出口(ホーン側面に開口する、流路の口部)
10 遮蔽板(還流手段)
11 回転ユニット(切換手段)
12 輸送管(輸送手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌容器内の液体に、超音波振動子に連接され、内部に先端面から側面または後端面へ抜ける流路を有するホーンの先端部を浸漬し、前記ホーンからの超音波照射によって該ホーンの先端面付近にキャビテーションを集中的に発生させると共に、前記ホーン内の流路を通して液体を循環させて撹拌することを特徴とする液体処理方法。
【請求項2】
撹拌容器内の液体に、超音波振動子に連接され、内部に先端面から側面または後端面へ抜ける流路を有するホーンの先端部を浸漬し、前記ホーンからの超音波照射によって該ホーンの先端面付近にキャビテーションを集中的に発生させると共に、前記ホーン内の流路を通して液体を循環させて撹拌し、しかる後、前記超音波照射を継続しながら、前記ホーン内の流路を経て、撹拌容器内の液体をその外部へ輸送することを特徴とする液体処理方法。
【請求項3】
超音波振動子に連接されたホーンに、その先端面から側面または後端面に抜ける流路を形成し、該ホーンを、その先端部が撹拌容器内の液体に浸漬されるように配設し、前記撹拌容器内には、前記ホーンの先端面と所定の間隙で対向配置される台座を配設したことを特徴とする液体処理装置。
【請求項4】
超音波振動子に連接されたホーンに、その先端面から側面または後端面に抜ける流路を形成し、該ホーンを、その先端部が撹拌容器内の液体に浸漬されるように配設し、前記撹拌容器内には、前記ホーンの先端面と所定の間隙で対向配置される台座を配設し、さらに、前記ホーンの側面または後端面に開口する、前記流路の口部から吐出される液体を受けて撹拌容器内に戻す還流手段と、前記口部から吐出される液体を受けて撹拌容器の外部へ輸送する輸送手段と、前記還流手段と前記輸送手段とを前記口部に対して切換える切換手段とを備えていることを特徴とする液体処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−198527(P2006−198527A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13056(P2005−13056)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592032636)学校法人トヨタ学園 (57)
【出願人】(593078257)株式会社メックインターナショナル (24)
【出願人】(000107424)ジャパンマシナリー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】