説明

液体切換装置および液体噴射装置

【課題】複数の開閉弁の開弁時に流路抵抗が異ならないように抑制する液体切換装置を提供する。
【解決手段】コイルばね77Aによって付勢されて開口領域78Aを閉弁してインクAをインク合流路78から液体噴射ヘッドに供給しないようにするとともに、第1作動部材72Aの駆動によってコイルばね77Aの付勢方向と反対方向に変位させられて開口領域78Aを開弁してインクAをインク合流路から液体噴射ヘッド側に供給するダイヤフラム弁76Aと、コイルばね77Bによって付勢されて開口領域78Bを閉弁してインクBをインク合流路から液体噴射ヘッド側に供給しないようにするとともに、第2作動部材72Bの駆動によってコイルばね77Bの付勢方向と反対方向に変位させられて第2供給路を開弁してインクBをインク合流路から液体噴射ヘッド側に供給するダイヤフラム弁76Bと、第1作動部材および第2作動部材を駆動するカム71と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の供給側から消費側に供給する液体を切換える液体切換装置およびこの液体切換装置を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種として、液体の消費側である液体噴射ヘッド(記録ヘッド)に設けられたノズル開口から、液体収容体に収容された液体の一種としてのインクを用紙などの媒体に噴射して記録を施すインクジェット式のプリンターが広く知られている。そして、液体噴射ヘッドから離れた位置に液体収容体としてのインクカートリッジが配置されているプリンターの場合には、インクが、プリンター内部に引き回されたインクの供給チューブを介して、供給側であるインクカートリッジから消費側である液体噴射ヘッドへ供給される。
【0003】
このようなプリンターにおいて、例えばインクの噴射対象となる媒体の種類(例えば光沢紙と非光沢紙等)に応じて、液体噴射ヘッドに供給するインクを別の種類のインクに切り替えることがある。そしてこのインクの切り替えにおいて、供給チューブ内に残存する切り替え前のインクを無駄に消費しないように、液体噴射ヘッドの近傍に各インクカートリッジに対応した供給チューブを介して接続されるインクの切換装置を設けたプリンターが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、液体噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジに、開閉弁を備えた切換装置が開示されている。そして、この切換装置は、長時間閉弁された状態にあった開閉弁を確実に開弁することが可能な構造を提供している。すなわち、第1開閉弁及び第2開閉弁のうちの一方が開弁しているとともに他方が閉弁している状態から両開閉弁の双方が開弁している状態にする場合に、両開閉弁のうちの開弁している一方を閉弁動作させる。こうすることで閉弁している他方が一方の弁の閉弁動作に連動して開弁された後に、両開閉弁の双方の開弁動作を許容する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−45863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された切換装置は、互いに対向する第1開閉弁と第2開閉弁とが伝達部材によって連動するように構成されている。すなわち、開弁している一方の弁部を押して閉弁させることによって伝達部材が移動し、この移動に連動して他方の閉弁している弁部が押されて開弁する構造になっている。このような構造の場合、例えば供給チューブにインクを初期充填するため対向する第1開閉弁と第2開閉弁を同時に開弁させた場合、第1開閉弁と第2開閉弁のそれぞれの開弁量が均等になる中央位置に伝達部材が移動する必要がある。
【0007】
しかしながら、伝達部材は、第1開閉弁と第2開閉弁とが開弁状態であるとき、フィルムの弾性復元力によって互いに反対方向に引っ張られる状態になっているため、少なからず生ずるフィルムの弾性復元力の差異によって伝達部材が中央位置に移動することは困難である。そのため、第1開閉弁と第2開閉弁とで弁の開放量が異なる状態になることによってそれぞれの流路抵抗が異なり、供給チューブに均等にインクが充填されないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、複数の開閉弁の開弁時に流路抵抗が異ならないように抑制する液体切換装置を提供することを主な目的とする。さらにこの液体切換装置を備えた液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の液体切換装置は、液体の供給側から第1液体を供給する第1供給路と、前記液体の供給側から前記第1液体と異なる第2液体を供給する第2供給路と、前記第1供給路および前記第2供給路よりも前記液体の供給方向における下流側に位置し、前記第1液体および前記第2液体を前記液体の消費側に供給する第3供給路と、第1付勢手段によって付勢されて前記第1供給路を閉弁して前記第1液体を前記第3供給路から前記消費側に供給しないようにするとともに、第1アクチュエーターの駆動によって前記第1付勢手段の付勢方向と反対方向に変位させられて前記第1供給路を開弁して前記第1液体を前記第3供給路から前記消費側に供給する第1開閉弁と、第2付勢手段によって付勢されて前記第2供給路を閉弁して前記第2液体を前記第3供給路から前記消費側に供給しないようにするとともに、第2アクチュエーターの駆動によって前記第2付勢手段の付勢方向と反対方向に変位させられて前記第2供給路を開弁して前記第2液体を前記第3供給路から前記消費側に供給する第2開閉弁と、前記第1アクチュエーターおよび前記第2アクチュエーターを駆動する駆動手段と、を備えた。
【0010】
この構成によれば、第1付勢手段によって付勢されて閉弁している第1開閉弁、および第2付勢手段によって付勢されて閉弁している第2開閉弁の双方を、第1アクチュエーターおよび第2アクチュエーターによって付勢方向と反対方向に変位させて開弁させる。このとき、第1開閉弁および第2開閉弁の変位量をそれぞれ同じにすることで同じ開弁量で開弁させることができる。従って、第1開閉弁および第2開閉弁の開弁時にそれぞれの流路抵抗が異ならないように抑制する液体切換装置を提供できる。
【0011】
本発明の液体切換装置において、前記駆動手段は、回転駆動されるカムを備え、前記第1付勢手段および前記第2付勢手段は、それぞれの付勢力によって前記第1アクチュエーターおよび前記第2アクチュエーターを前記カムと当接する方向に付勢する。
【0012】
この構成によれば、第1付勢手段および第2付勢手段によって第1開閉弁および第2開閉弁を閉弁させるとともに、第1アクチュエーターおよび第2アクチュエーターをカムに当接させることができる。従って、第1アクチュエーターおよび第2アクチュエーターをカムに当接させる付勢力を付与する付勢手段を別途設ける必要が無い。
【0013】
本発明の液体切換装置において、前記カムは、前記第1アクチュエーターが当接する第1カム面と、前記第2アクチュエーターが当接する第2カム面とを備え、前記第1アクチュエーターおよび前記第2アクチュエーターは、1つの前記カムの回転駆動に伴って、前記第1カム面および前記第2カム面によってそれぞれ個別に駆動される。
【0014】
この構成によれば、1つのカムに形成されたそれぞれのカム面の形状に応じて、第1アクチュエーター及び第2アクチュエーターがそれぞれ個別に駆動される。従って、第1開閉弁及び第2開閉弁のうち、一方が閉弁されるとともに他方が開弁される状態と双方が開弁される状態を状態とを、1つのカムの回転によって容易に切り換えることができる。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、上記構成の液体切換装置と、前記第3供給路によって供給される前記液体を消費する液体噴射ヘッドと、を備えた。
この構成によれば、第1開閉弁および第2開閉弁の双方の開弁時に、それぞれの流路抵抗が異ならないように抑制することで、例えば液体を供給路に同時に素早く充填して液体噴射ヘッドに供給することができる液体噴射装置を提供できる。
【0016】
本発明の液体噴射装置において、前記液体切換装置よりも上流側の前記第1供給路及び前記第2供給路に、前記液体噴射ヘッドに供給される前記液体の圧力を調節する圧力調整機構をそれぞれ備える。
【0017】
この構成によれば、液体切換装置に供給する第1液体および第2液体の圧力を圧力調整機構によって調整するので、液体噴射ヘッドからのインクの噴射性能に対する影響が抑制された適切な圧力で、液体を液体切換装置に供給できる。
【0018】
本発明の液体噴射装置において、前記第1供給路および前記第2供給路のそれぞれに前記液体を供給する供給側となる液体収容体と、前記液体収容体から前記液体を吸い上げて前記圧力調整機構に前記液体を供給する吸引装置と、を備える。
【0019】
この構成によれば、液体収容体内を加圧することなく液体収容体から液体を吸い上げて圧力調整機構に供給することによって、供給される液体に大きな圧力が生じないように抑制することができる。従って、圧力調整機構における液体の圧力調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施形態のプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】プリンターが備える2つのインク収容部の配置構成を示す正面図。
【図3】プリンターにおけるインク供給に関する機能部品の構成を示す斜視図。
【図4】2つのインク収容部から供給されるインク供給チューブが合流する合流経路部の構造を示す斜視図。
【図5】2つのインク収容部から供給されるインク供給チューブが合流する合流経路部の構造を、図4における矢視方向と反対の方向から見た斜視図。
【図6】実施形態の切換装置を備えるキャリッジの斜視図。
【図7】キャリッジにおけるインクの切り替えに関わる構成を示す斜視図。
【図8】装置構造を一部断面で示した切換装置の構成斜視図。
【図9】切換装置が、インクAの流路を開弁した動作状態を示す模式図。
【図10】切換装置が、インクA,B双方の流路を開弁した動作状態を示す模式図。
【図11】切換装置が、インクBの流路を開弁した動作状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を、液体を用紙などの媒体に噴射する液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)において具体化した実施形態について、図を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における反重力方向を上方向、重力方向を下方向とする。また、これと交差する方向であって、プリンター11に装着されるインクカートリッジの装着方向を後方向、装着方向と反対の抜取方向を前方向とする。さらに上下方向および前後方向の双方と交差する水平方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、その一部を二点鎖線で示した略矩形箱状を有するハウジング12の上面部右側に前方先下がりの斜面形状部12aが形成され、この斜面形状部12aにプリンター11の動作に関する命令を入力する入力パネル16が取り付けられている。この入力パネル16の操作によって入力される各動作命令に応じた信号をプリンター11内の制御部(不図示)が取得し、この制御部がプリンター11に備えられた駆動源を駆動することで、プリンター11において媒体へのインクの噴射動作や後述するインクの切換動作など、所定の動作が行われる。
【0023】
また、ハウジング12の前面における左右両側には、それぞれカバーケース13およびカバーケース14がハウジング12の一部として備えられている。ハウジング12の前面左側に備えられたカバーケース13は、媒体に噴射される液体の一例としてのインクを収容した液体収容体としてのインクカートリッジ31を装着するカートリッジ装着部30が、ハウジング12の前面において露出しないように閉蓋する部材である。また、ハウジング12の前面右側に備えられたカバーケース14は、媒体に噴射されるインクを収容した液体収容体としてのインクカートリッジ41(図2参照)を装着するカートリッジ装着部40(図2参照)が、ハウジング12の前面において露出しないように閉蓋する部材である。
【0024】
本実施形態では、カバーケース13は、下から順にケース部位13b、ケース部位13aの各部位が上下方向に積層された外観を有している。また、ケース部位13aには、カートリッジ装着部30内の上下端部にそれぞれ設けられたガイド部材32a,32bに沿ってインクカートリッジ31を前後方向に移動させて挿抜する際、カートリッジ装着部30をハウジング12の前面において露出させるようにカバーケース13を開蓋操作するための凹部13dが設けられている。
【0025】
一方、カバーケース14は、下から順にケース部位14b、ケース部位14a、およびケース部位14cの各部位が積層された外観を有している。また、ケース部位14aには、カートリッジ装着部40内の上下端部にそれぞれ設けられたガイド部材42a,42b(図3参照)に沿ってインクカートリッジ41(図3参照)を前後方向に移動させて挿抜する際、カートリッジ装着部40をハウジング12の前面において露出させるようにカバーケース14を開蓋操作するための凹部14dが設けられている。
【0026】
なお、本実施形態では、図1および図2に示すように、カバーケース13におけるケース部位13a,13bの各部位とカバーケース14におけるケース部位14a,14bの各部位とが、前方から見て、上下方向において同じ高さで、かつ左右対称の形状となる外観を有している。
【0027】
また、図2に示すように、プリンター11は、カートリッジ装着部30およびカートリッジ装着部40から供給されたインクが媒体への噴射に使用されずに排出される廃インクタンク18を備えている。すなわち、カートリッジ装着部30に装着された液体の供給側となるインクカートリッジ31からは、一部分(水平部分)がチューブ保護板15aで覆われたインク供給チューブ35を通して、インクが送り出される。一方、カートリッジ装着部40に装着された液体の供給側となるインクカートリッジ41からは、同じく一部分(水平部分)がチューブ保護板15aで覆われたインク供給チューブ45を通して、インクが送り出される。
【0028】
送り出されたそれぞれのインクは、保護ケース15で覆われた合流経路部50において合流し、上下方向に複数のチューブが並列するインク供給チューブ55を通してインクの消費側となる液体噴射ヘッド100(図3参照)が取り付けられたキャリッジ60へ供給される。そして、キャリッジ60へ供給されたインクのうち、媒体への噴射以外に噴射されたり吸引されたりして液体噴射ヘッド100から排出される廃インクを回収する廃インクタンク18を備えている。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、廃インクタンク18は、カートリッジ装着部40の下方に配設される。従って、プリンター11では、カートリッジ装着部40は、下方に配設された廃インクタンク18のための領域SPを上下方向において確保するため、カートリッジ装着部30よりも上方に寸法Hだけ高い位置に配設されている。このため、カバーケース14は、廃インクタンク18がハウジング12の前面において露出しないようにケース部位14a,14b,14cによってカートリッジ装着部40とともに廃インクタンク18を覆うように配置されている。
【0030】
さて、このプリンター11では、カートリッジ装着部30は、キャリッジ60にインクを供給するためのインクカートリッジ31が6つ装着できるように、6つの装着領域部36が形成されたカートリッジ受け部33をその後方に備えている。また、カートリッジ装着部40はカートリッジ装着部30と同一構成を有し、同じくキャリッジ60にインクを供給するためのインクカートリッジ41が6つ装着できるように、6つの装着領域部46が形成されたカートリッジ受け部43をその後方に備えている。
【0031】
なお、本実施形態では、カートリッジ装着部40のカートリッジ受け部43において、最も左側の装着領域部46は、例えば供給針を備えない非供給装着領域部49とすることで、インクカートリッジ41が装着されても収容されたインクが供給されないようになっている。従って、カートリッジ装着部40は、キャリッジ60にインクを供給するためのインクカートリッジとして、実際には5つのインクカートリッジ41が装着される。このため、ハウジング12は、カバーケース14が開蓋操作されたとき、誤ってインクカートリッジ41が非供給装着領域部49に挿入されないように、この非供給装着領域部49の一部(ここでは上部左側)がハウジング12によって覆われるように構成されている。
【0032】
この結果、プリンター11では、左側のカートリッジ装着部30から最多で6種類のインクと右側のカートリッジ装着部40から最多で5種類のインクとの合計11種類のインクを、それぞれキャリッジ60に供給可能である。本実施形態では、この11種類のインクがそれぞれ収容されたインクカートリッジ31,41が、それぞれのカートリッジ装着部30,40に装着されるものとし、この11種類のインクがキャリッジ60へ供給される供給経路について、図3を参照して説明する。
【0033】
プリンター11内には、図3に示すようにインクの供給経路が構成されている。すなわち、カートリッジ装着部40において、インクカートリッジ41が前方から挿入されてカートリッジ受け部43に装着されると、カートリッジ受け部43に設けられた図示しない供給針がインクカートリッジ41に挿入され、カートリッジ受け部43側にインクが流出可能な状態となる。そして、カートリッジ受け部43の後側に配設されたインク送出部47によって、インクカートリッジ41からインクを吸い上げてインク供給チューブ45に送り出す。
【0034】
すなわち、インク送出部47は、プリンター11に備えられた吸引装置20においてポンプ21が作動することによって生じる負圧が、負圧供給チューブ22を介して印加されることによって動作する流路ポンプ備えている。また、流路ポンプの動作時にインク供給チューブ45側からインクカートリッジ41側へのインクの逆流を抑止する逆止弁やチョーク弁などを備えている。そして、これらの流路ポンプおよび逆止弁やチョーク弁の動作によって、インクカートリッジ41からインクを吸い上げてインク供給チューブ45にインクを送り出す。
【0035】
同様に、カートリッジ装着部30において、インクカートリッジ31が挿入されてカートリッジ受け部33に装着されると、カートリッジ受け部33に設けられた図示しない供給針がインクカートリッジ31に挿入され、カートリッジ受け部33側にインクが流出可能な状態となる。そして、カートリッジ受け部33の後側に配設されたインク送出部37によって、インクカートリッジ31からインクを吸い上げてインク供給チューブ35に送り出す。すなわち、インク送出部37は、インク送出部47と同様に、吸引装置20においてポンプ21が作動することによって生ずる負圧が、負圧供給チューブ22から負圧供給チューブ23を介して印加されることによって動作する流路ポンプや、逆止弁およびチョーク弁などを備えている。そして、これらの流路ポンプおよび逆止弁やチョーク弁の動作によって、インクカートリッジ31からインクを吸い上げてインク供給チューブ35にインクを送り出す。
【0036】
インクが送り出される一方のインク供給チューブ35は6本のチューブが並列配置された構成を有し、他方のインク供給チューブ45はインクが供給されない非供給装着領域部49に対応する1本のチューブを含む6本のチューブが並列配置された構成を有している。そして、これらは、プリンター11のハウジング12において、左右方向の略中間の位置に設けられた合流経路部50において合流する。その後、合流経路部50から消費側へのインクの供給方向における下流側は、11本のチューブが上下方向に並列配置されたインク供給チューブ55となるとともに、その各チューブの終端はキャリッジ60に接続される。
【0037】
この結果、カートリッジ装着部30に装着されたインクカートリッジ31から送り出された6種類のインクは、インク供給チューブ35を通して合流経路部50に供給される。一方、カートリッジ装着部40に装着されたインクカートリッジ41から送り出された5種類のインクは、インク供給チューブ45を通して合流経路部50に供給される。そして、合流経路部50で全てのチューブが合流したインク供給チューブ55を通して、キャリッジ60に11種類のインクが供給される。
【0038】
ここで、合流経路部50の構成について、図4および図5を参照して説明する。
図4,5に示すように、合流経路部50は、合流経路形成部材51と、インク供給チューブ35の各チューブのインクの供給方向における下流側端部が接続された流路コネクタ35Cと、インク供給チューブ45の各チューブのインクの供給方向における下流側端部が接続された流路コネクタ45Cとを備えている。さらに、インク供給チューブ55の各チューブのインクの供給方向における上流側端部が接続された流路コネクタ55Cを備えている。なお、本実施形態では、流路コネクタ35Cと流路コネクタ45Cとは同一部材が用いられている。
【0039】
合流経路形成部材51は、左右方向から見て長辺が上下方向に沿うとともに短辺が前後方向に沿う略矩形形状をなした左右方向に所定の厚みを有する板状部51Aと、この板状部51Aの下端部から左方向に延設されてプリンター11に固定される延設部51Bと、を有している。この合流経路形成部材51に対して、その板状部51Aの左面上端側において、インク供給チューブ35の6本の各チューブを前後方向(水平方向)に並列させた状態で流路コネクタ35Cがねじ固定されている。また、板状部51Aの右面下端側において、インク供給チューブ45の6本の各チューブを前後方向(水平方向)に並列させた状態で、流路コネクタ45Cがねじ固定されている。さらに、合流経路形成部材51の右面前端側において、インク供給チューブ55の11本の各チューブを上下方向(鉛直方向)に並列させた状態で、流路コネクタ55Cがねじ固定されている。
【0040】
従って、本実施形態では、インク供給チューブ35はチューブ保護板15aにおいて6本の各チューブが前後方向(水平方向)に並置された所謂平置き状態のまま、流路コネクタ35Cによって合流経路形成部材51に対して左側に接続される。また、インク供給チューブ45も同様に、6本の各チューブが前後方向(水平方向)に並置された平置き状態のまま、流路コネクタ45Cによって合流経路形成部材51に対して右側に接続される。
【0041】
一方、インク供給チューブ55は、11本の各チューブが鉛直方向に並置された所謂縦置き状態で、流路コネクタ55Cによって合流経路形成部材51に対して右側から接続される。このようにインク供給チューブ55を縦置き状態にすることによって、キャリッジ60が左右方向に移動したとき、インク供給チューブ55が曲がり易くなるとともに、キャリッジ60までのインクの流路長が11本の各チューブにおいて凡そ等しくなる。なお、インク供給チューブ55は、ガイド部材15bや保持部材15cによって縦置き状態が維持されるようになっている。
【0042】
さて、図4に示すように、合流経路形成部材51の板状部51Aにおける流路コネクタ35Cが固定された左面と反対側の右面の上部にはシール板51aが貼り付けられ、このシール板51aによって、流路コネクタ35Cから右面側に流出するインクを、反対側の板状部51Aの左面側に戻すように流動させる戻り流路が形成されている。一方、板状部51Aの左面側には、図5に示すようにほぼ全面にシール板51bが貼り付けられ、このシール板51bによって、流路コネクタ35Cから供給され戻り流路で反対側の左面側に流出したインクを、右面側に固定された流路コネクタ55Cに導くための誘導流路が形成されている。さらに、この誘導流路は、右面側に固定された流路コネクタ45Cから供給されるインクを同じく流路コネクタ55Cに導く流路も形成している。従って、合流経路部50において、インク供給チューブ35およびインク供給チューブ45によってそれぞれ供給される各インクは、合流経路形成部材51において戻り流路や誘導流路によって形成される合流経路によって合流し、インク供給チューブ55に供給される。
【0043】
本実施形態では、合流経路形成部材51において形成される合流経路は、インク供給チューブ45において最も前側の1本を除く5本のチューブを、インク供給チューブ55における下側の5本のチューブと連結させる。例えば、図5に示すように、インク供給チューブ45aを通して供給されるインクは、インク供給チューブ55aに流れる。また、インク供給チューブ45bを通して供給されるインクは、インク供給チューブ55bに流れる。従って、インク供給チューブ45とインク供給チューブ55との間では、インク供給チューブ45aを通して供給されるインクの流路が、インク供給チューブ45bを通して供給されるインクの流路よりも、合流経路における流路長が短くなっている。このように、インク供給チューブ45において前側のチューブがその後側のチューブよりも合流経路における流路長が短くなっている。なお、インク供給チューブ45nは、インク供給チューブ55に連結されないチューブであって、インクが供給されないダミーチューブになっている。
【0044】
また、合流経路は、インク供給チューブ35の6本のチューブを、インク供給チューブ55における上側の6本のチューブと連結させる。例えば、図5に示すように、インク供給チューブ35aを通して供給されるインクは、インク供給チューブ55dに流れる。また、インク供給チューブ35bを通して供給されるインクは、インク供給チューブ55cに流れる。そして、インク供給チューブ35aを通して供給されるインクの流路が、インク供給チューブ35bを通して供給されるインクの流路よりも、合流経路における流路長が短くなっている。このように、インク供給チューブ35において前側のチューブがその後側のチューブよりも合流経路における流路長が短くなっている。
【0045】
なお、本実施形態では、合流経路部50に対してインクの供給方向の上流側において、各チューブの流路長に大きな差異が生じないように、インク供給チューブ35の長さとインク供給チューブ45の長さとが凡そ等しくなる位置に合流経路部50(合流経路形成部材51)が配設されている。
【0046】
図3に戻り、11種類のインクが供給されるキャリッジ60には、供給された各インクを噴射して消費する消費側となる液体噴射ヘッド100が下面側に取り付けられている。また、キャリッジ60はハウジング12内において左右方向に架設されたガイド軸(不図示)が挿通された形状部(不図示)を有し、モーターやベルトなどからなる駆動装置(不図示)によってガイド軸に沿って左右方向へ往復移動される。また、プリンター11には、媒体を搬送する搬送装置(不図示)が備えられている。そして、このキャリッジ60の左右方向の往復移動において搬送装置によって媒体が一方向(例えば後ろから前方向)に搬送され、この搬送される媒体に対してキャリッジ60とともに左右方向に往復移動する液体噴射ヘッド100からインクを噴射して、媒体に画像を形成する。
【0047】
さらに、プリンター11には、媒体へのインクの噴射性能を維持するため、媒体への噴射以外に液体噴射ヘッド100から噴射されるインクを受容したり、液体噴射ヘッド100からインクを吸引したりするメンテナンス装置80が備えられている。そして、プリンター11には、このメンテナンス装置80において受容および吸引したインクつまり廃インクを、廃インクチューブ81を介して回収する廃インクタンク18が備えられている。廃インクタンク18は、内部に廃インクを収容する有底箱状のタンクケース18cと、このタンクケース18cを左右両側と下側とから前後方向に摺動可能に支持するタンク枠部18aと、を有している。そして、タンクケース18cは、その前面に設けられた把持部を用いて、タンク枠部18aから前方に引き抜き可能になっている。なお、タンクケース18cの取り外しの際は、カバーケース14(図2参照)を開蓋操作して、廃インクタンク18(タンクケース18c)をカートリッジ装着部40とともにハウジング12において前方に露出させる。
【0048】
さて、本実施形態では、キャリッジ60において、供給される11種類のインクのうちの2種類のインクを、噴射する媒体の種類に応じて切換える液体切換装置(以降、単に「切換装置」)70(図7参照)が設けられている。そして切換装置70は、具体的には、インク供給チューブ55におけるインク供給チューブ55a(図5参照)によって、キャリッジ60に供給される第1液体としてのインクAと、インク供給チューブ55b(図5参照)によってキャリッジ60に供給される第2液体としてのインクBとを切換える。
【0049】
なお、インクAはカートリッジ装着部40において、装着領域部46のうち最も左側の供給針を備えない非供給装着領域部49の右隣に位置する装着領域部46に装着されるインクカートリッジ41から供給される。また、インクBは、さらにその右隣に位置する装着領域部46に装着されるインクカートリッジ41から供給される。すなわち、インクAとインクBは隣り合う2つの装着領域部46にそれぞれ装着される各インクカートリッジ41から供給される。ちなみに、本実施形態では、インクAとしてフォトブラックインクが、またインクBとしてマットブラックインクが用いられる。
【0050】
以下、切換装置70が設けられたキャリッジ60の構成について、切換装置70の構成を含めて図6および図7を参照して説明する。
図6に示すように、キャリッジ60は、略直方体形状を有するフレーム枠60aの右側面に接続流路板61が固定されるとともに、フレーム枠60aの上面に、11種類のインクをキャリッジ60におけるぞれぞれの位置に導く導入流路が形成された導入流路板62が固定されている。また、フレーム枠60a内には、切換装置70を動作させる駆動源としてのモーター66が取り付けられている。
【0051】
接続流路板61には、その後端側において、インク供給チューブ55の各チューブにおけるインク供給方向の下流側端部が縦置き状態のまま接続される流路コネクタ部61Cが設けられている。流路コネクタ部61Cは、上下方向に11個の接続パイプが並列配置され、各接続パイプにインク供給チューブ55の11本の各チューブが接続される。ちなみに、最も下側の接続パイプにはインクAが供給されるインク供給チューブ55aが、その上側隣の接続パイプにはインクBが供給されるインク供給チューブ55bが、それぞれ接続される。また、最も上側の接続パイプにはインク供給チューブ55dが接続される。
【0052】
そして、図7に示すように、接続流路板61には、その上端面において導入流路板62と各インクの接続流路とが接続される接続パイプが前後方向に配列された流路コネクタ部61Dが設けられている。さらに、接続流路板61には、その左面側においてシール板61sが貼り付けられ、流路コネクタ部61Cに供給される各インクを、流路コネクタ部61Dを介して導入流路板62へ導くための接続流路が形成されている。
【0053】
この接続流路において、例えば、インクAは接続流路61aによって流路コネクタ部61Dにおける最も前側の位置の接続パイプに流れ、さらにこの接続パイプから導入流路62aに導かれる。また、インクBは接続流路61bによって流路コネクタ部61Dにおける前から2つ目の位置の接続パイプに流れ、さらにこの接続パイプから導入流路62aの隣に位置する導入流路62bに導かれる。従って、インクAが流れる接続流路61aは、インクBが流れる接続流路61bよりも、接続流路における流路長が長くなっている。なお、流路コネクタ部61Cの最も上側の接続パイプに接続されたインク供給チューブ55dから供給されるインクは、接続流路において最も短い流路長である接続流路61dによって、流路コネクタ部61Dの最も後側の位置の接続パイプに流れ、さらにこの接続パイプから導入流路62dに導かれる。このように、接続流路板61において、インク供給チューブ55における上側のチューブから供給されるインクの流路長は、下側のチューブから供給されるインクの流路長よりも短くなっている。
【0054】
その後、図7に示すように、各導入流路に導かれて供給される各インクは、周知の圧力調整弁などからなる圧力調整機構90を介して、キャリッジ60の下面側に取り付けられた液体噴射ヘッド100にインクを供給する。このとき、本実施形態のプリンター11では、導入流路62aから供給されるインクAと導入流路62bから供給されるインクBとを、インクの供給方向における圧力調整機構90の下流側で切り換えて液体噴射ヘッド100に供給する。一方、それ以外の導入流路(例えば導入流路62d)から供給されるインクについては、圧力調整機構90を介してそのまま液体噴射ヘッド100に供給される。なお、図7では、インクAとインクBに対応する圧力調整機構90のみを形状を簡略化(二点鎖線)して図示している。
【0055】
すなわち、切換装置70に供給されるインクAとインクBは、圧力調整機構90を通過後、切換装置70の構成部材となっている切換流路枠体64の前方において凸状パイプで設けられた流入口63aと流入口63bとにそれぞれ流入する。切換流路枠体64には、その前方側の下面の一部にシート板64sが貼り付けられてインクAの流路およびインクBの流路が形成される。また、その後方側の上面の一部にシート板64fが貼り付けられて、切換後のインクすなわちインクAおよびインクBの双方のインクが合流して流れるインク合流路が形成される。そして、切換後のインクは、切換流路枠体64の後方において設けられたインク合流路の流路端65から、その下側に配設された液体噴射ヘッド100に供給される。
【0056】
一方、切換装置70に供給されるインクAとインクB以外の9種類のインクは、それぞれ圧力調整機構90(不図示)を通過後、そのうちの6種類のインクが液体噴射ヘッド100に流出するための流路連結部材68に凸状パイプで設けられた供給ピン69に導かれる。また、残りの3種類のインクは、流路連結部材68として機能する切換流路枠体64に凸状パイプで設けられた3つの供給ピン69にそれぞれ供給される。こうして、流路端65から液体噴射ヘッド100に向けて供給される切換後のインクを含め、合計10種類のインクが、液体噴射ヘッド100に供給され、液体噴射ヘッド100から噴射されて消費される。
【0057】
さて、切換装置70は、モーター66の駆動によって回転軸71Jを中心に回転するカム71を駆動手段としてアクチュエーターを駆動し、インクを切り換える。すなわち、モーター66の回転に伴ってモーター66の回転軸に固定されたウオーム歯車66aが回転することで、このウオーム歯車66aと噛み合う斜歯車67aとウオーム歯車67bとがそれぞれ両端部に形成された回転軸67が回転する。そして、この回転軸67の回転によって、ウオーム歯車67bと噛み合う斜歯車71Gが回転することで、この斜歯車71Gが一体で形成されたカム71が回転軸71Jを中心に回転する。そして、このカム71を所定の回転位置にすることでインクA,Bを切換える。
【0058】
カム71には3つの凸部71a,71b,71cが、回転軸71Jを中心に90度ずつ回転した各位置に凸部71cが凸部71aと凸部71bの間となる順で形成されている。本実施形態では、凸部71cは前後方向に所定の長さで形成されるとともに、凸部71aは凸部71cの後半分の長さで、凸部71bは凸部71cの前半分の長さでそれぞれ形成されている。そして、これらの凸部71a,71b,71cの位置を、例えばマイクロスイッチなどによる検出手段TSW(図8参照)によって検出することでカム71を所定の回転位置に回転させる。
【0059】
次に、カム71によって駆動されるアクチュエーターを含め、切換装置70の構造について、図8を参照して詳しく説明する。なお、図8において、切換流路枠体64を含め、切換装置70の主な構成部材については、説明の都合から切断して取り除いた状態で図示している。
【0060】
図8に示すように、切換装置70は、カム71において、前後方向に互いにずれた位置に、第1カム面としてのカム面71Aと、第2カム面としてのカム面71Bとが形成されている。そして、カム71のカム面71Aと当接する上側当接部72Aaを上端側(一端側)に有し、キャリッジ60のフレーム枠60aに固定された回転軸Jaを中心として回転する第1アクチュエーターとしての第1作動部材72Aを備えている。さらに、第1作動部材72Aにおける回転軸Jaを挟んで上側当接部72Aaと反対側となる下端側(他端側)には、切換流路枠体64に対して左右方向に移動可能な略円板形状を有する係止板73Aと当接する下側当接部72Abが設けられている。そして、第1作動部材72Aは、この下側当接部72Abが係止板73Aに当接しながら回転軸Jaを中心に揺動運動をする所謂レーバー部材となっている。
【0061】
係止板73Aは、切換装置70において左右方向に移動可能なスライド軸74Aの右端部に取り付けられ、スライド軸74Aと一体で左右方向に移動する。また、スライド軸74Aの左端部はアンダーカット部を有する鍔形状部74Aaに形成され、この鍔形状部74Aaに、円板形状部を有する第1開閉弁としてのダイヤフラム弁76Aが係合固定されている。
【0062】
ダイヤフラム弁76Aは、その円板形状部の外周が、切換流路枠体64に対して右方向から挿入される一端が開口した円筒形状を有するキャップ部材75Aの開口端部によって切換流路枠体64との間で挟み込まれ、外周部においてインクAが流通しないように封止固定されている。
【0063】
スライド軸74Aは、このキャップ部材75Aの円筒形状の底部となる右側壁部の中央に設けられた軸孔に挿入され、この軸孔を摺動して左右方向にスライド移動が可能である。そして、キャップ部材75Aと切換流路枠体64との間には、スライド軸74Aの鍔形状部74Aaにその一端が当接し、その他端がキャップ部材75Aの右側壁部に設けられた環状の凹部と当接する第1付勢手段としてのコイルばね77Aが組み込まれている。本実施形態では、コイルばね77Aは、鍔形状部74Aaに当接する一端における直径が、他端における直径よりも小さい円錐台の形状を有し、圧縮されることでスライド軸74Aを左方向に移動させるように付勢する。
【0064】
さらに、切換流路枠体64におけるダイヤフラム弁76Aの中央部分と対向する部位は、内側が略円柱形の開口領域78Aに形成されるとともに、外側が開口領域78Aを取り囲む環状の凹部領域RAに形成された円筒壁形状部とされている。また、開口領域78Aは、切換流路枠体64の後方上面側に貼り付けられたシート板64fによって形成された切換後のインクが流れるインク合流路78と連通し、液体噴射ヘッド100にインクを供給する流路端65まで切換後のインクを供給する。なお、ここでは具体的な構造を省略しているが、切換流路枠体64において、流入口63aから凹部領域RAまでインクAが供給されるインク供給路が形成されている。
【0065】
同様に、切換装置70は、カム71のカム面71Bと当接する上側当接部72Baを上端側(一端側)に有し、キャリッジ60のフレーム枠60aに固定された回転軸Jbを中心として回転する第2アクチュエーターとしての第2作動部材72Bを備えている。そして、第2作動部材72Bにおける回転軸Jbを挟んで上側当接部72Baと反対側となる下端側(他端側)には、切換流路枠体64に対して左右方向に移動可能な略円板形状を有する係止板73Bと当接する下側当接部72Bbが設けられている。そして、第2作動部材72Bは、この下側当接部72Bbが係止板73Bに当接しながら回転軸Jbを中心に揺動運動をする所謂レーバー部材となっている。
【0066】
係止板73Bは、切換装置70において左右方向に移動可能なスライド軸74Bの左端部に取り付けられ、スライド軸74Bと一体で左右方向に移動する。また、スライド軸74Bの右端部はアンダーカット部を有する鍔形状部74Baに形成され、この鍔形状部74Baに、円板形状部を有する第2開閉弁としてのダイヤフラム弁76Bが係合固定されている。
【0067】
ダイヤフラム弁76Bは、その円板形状部の外周が、切換流路枠体64に対して左方向から挿入される一端が開口した円筒形状を有するキャップ部材75Bの開口端部によって切換流路枠体64との間で挟み込まれ、外周部においてインクBが流通しないように封止固定されている。
【0068】
スライド軸74Bは、このキャップ部材75Bの円筒形状の底部となる左側壁部の中央に設けられた軸孔に挿入され、この軸孔を摺動して左右方向にスライド移動が可能である。そして、キャップ部材75Bと切換流路枠体64との間には、スライド軸74Bの鍔形状部74Baにその一端が当接し、その他端がキャップ部材75Bの左側壁部に設けられた環状の凹部と当接する第2付勢手段としてのコイルばね77Bが組み込まれている。本実施形態では、コイルばね77Bは、鍔形状部74Baに当接する一端における直径が、他端における直径よりも小さい円錐台の形状を有し、圧縮されることでスライド軸74Bを右方向に移動させるように付勢する。
【0069】
さらに、切換流路枠体64におけるダイヤフラム弁76Bの中央部分と対向する部位には、内側が略円柱形の開口領域78Bに形成されるとともに、外側が開口領域78Bを取り囲む環状の凹部領域RBに形成された円筒壁形状部とされている。また、開口領域78Bは、開口領域78Aと同様に、切換流路枠体64の後方上面側に形成された切換後のインクが流れるインク合流路78と連通し、液体噴射ヘッド100にインクを供給する流路端65まで切換後のインクを供給する。なお、ここでは具体的な構造を省略しているが、切換流路枠体64において、流入口63bから凹部領域RBまでインクAが供給されるインク供給路が形成されている。
【0070】
従って、本実施形態では、少なくとも導入流路62aから開口領域78AまでのインクAが供給される流路が第1供給路に相当する。また、少なくとも導入流路62bから開口領域78BまでのインクBが供給される流路が第2供給路に相当する。そして、開口領域78Aおよび開口領域78Bの双方と連通するインク合流路78から流路端65までの下流側流路が第3供給路に相当する。
【0071】
次に、このように構成された切換装置70の作用、すなわち、インクAとインクBとの間で行われるインクの切換作用について、図9〜図11を参照して説明する。なお、ここでは、液体噴射ヘッド100に対して、最初にインクAが供給された状態であり、この状態からインクBに切換えるものとする。また、インクAからインクBに切換える過程で、インクAとインクBとが同時に供給される状態が生ずる。この状態は、例えば、インクAとインクBとを最初にインク供給チューブ45,55に充填する際に利用される。
【0072】
まず、切換装置70において液体噴射ヘッド100へ供給するインクがインクAに切換えられている状態を説明する。この状態は、図9に示すように、切換装置70において、モーター66(図7参照)の回転駆動によってカム71を回転させ、凸部71aが上方に位置したことを検出してカム71の回転を停止させた状態である。
【0073】
すなわち、第1作動部材72Aの上側当接部72Aaがカム面71Aと当接して、回転軸Jaを中心にして第1作動部材72Aを回転(図9では前から見て反時計方向に回転)させる。この結果、係止板73Aは第1作動部材72Aの回転に伴って下側当接部72Abが右方向へ移動する際に力FAを受け、スライド軸74Aとともに右方向に所定量移動させられた状態になる。なお、このスライド軸74Aの移動によって、コイルばね77Aはその付勢力に抗して圧縮された状態になるとともに、この圧縮されたコイルばね77Aの付勢力によって、係止板73Aは力FAの反力を受ける。この結果、第1作動部材72Aの下側当接部72Abは左方向へ付勢されるので、上側当接部72Aaは右方向つまりカム面71Aに付勢されて当接状態が維持される。
【0074】
すると、スライド軸74Aに固定されたダイヤフラム弁76Aは、その中央部分が右方向に引っ張られることによってスライド軸74Aと同様に所定量変位し、この中央部分と対向する開口領域78Aから離れて開口領域78Aを開放する。換言すれば、ダイヤフラム弁76Aが所定量の開弁量で開弁する。この結果、ダイヤフラム弁76Aは周囲が固定されているため略傘形状になり、開口領域78Aと、その外側に形成された環状の凹部領域RAと、を連通させる連通領域SAが形成される。したがって、凹部領域RAに供給されるインクAは、形成された連通領域SAを介して開口領域78Aに流入し、開口領域78Aと連通しているインク合流路78に流れる。なお、ダイヤフラム弁76Aは、略傘形状に変形可能なように、少なくとも円板形状部が弾性材料などの可撓性材料で形成されている。
【0075】
一方、第2作動部材72Bは、このカム71において凸部71aが上方に位置する状態では、下側当接部72Bbが係止板73Bを左方向に移動させていない状態になるようにカム面71Bが形成されている。ちなみに、本実施形態では、下側当接部72Bbが係止板73Bと当接した状態では、上側当接部72Baがカム面71Bと当接せず離れた状態になる。
【0076】
従って、係止板73Bは第2作動部材72Bの下側当接部72Bbによって左方向へ移動させられる力を受けないので、スライド軸74Bは、コイルばね77Bの付勢力によって右方向への力fbを受ける。すると、スライド軸74Bに固定されたダイヤフラム弁76Bは、その中央部分が右方向に押し付けられ、この中央部分と対向する開口領域78Bを閉鎖して、開口領域78Bと、その外側に形成された環状の凹部領域RBとを遮断(閉弁)する。この結果、凹部領域RBに供給されるインクBは、開口領域78Bに流入しなくなる。
【0077】
以上説明したように、切換装置70は、カム71を凸部71aが上方に位置する回転位置とすることによって、インクAとインクBのうちインクAを液体噴射ヘッド100に供給する状態となる。なお、ダイヤフラム弁76Aが開口領域78Aを開放する際に凹部領域RAとの連通領域SAが形成されることに起因して、供給されるインクAに圧力変化(減圧)が生ずる。そこで、ここでは詳細な説明を省略するが、切換装置70へ流入するインクAの圧力変化が圧力調整機構90によって調整される。
【0078】
次に、切換装置70では、このインクAの供給状態からインクBに切換える動作の過程においてインクAとインクBとが同時に供給される状態になる。このインクAとインクBとが同時に供給される状態について、図10を参照して説明する。もとより、この状態はインクAとインクBとをインク供給チューブ45,55に同時に充填(初期充填)させることを主目的として利用される。従って、充填時においては、空気あるいは空気を含むインクが初期的に流れる場合がある。
【0079】
図10に示すように、インクAが液体噴射ヘッド100に供給された状態から、切換装置70において、モーター66(図7参照)の回転駆動によって、回転軸71Jを中心にカム71を回転(前方から見て時計方向に回転)させる。そして、凸部71cが上方に位置したことを検出してカム71の回転を停止させた状態にする。
【0080】
この状態では、第1作動部材72Aは、上側当接部72Aaがカム面71Aと当接した状態が維持される。すなわち、カム面71Aは、凸部71aが上方に位置する状態から凸部71cが上方に位置する状態まで回転軸71Jを中心とする円弧形状になっており、回転軸Jaを中心に第1作動部材72Aが回転された状態がそのまま維持される。この結果、係止板73Aは第1作動部材72Aの回転に伴って下側当接部72Abから右方向への力FAを受け、スライド軸74Aとともに右方向に移動したままの状態になる。
【0081】
従って、上述するように、ダイヤフラム弁76Aは開口領域78Aを開放し、開口領域78Aと、その外側に形成された環状の凹部領域RAとを連通させたままの開弁状態が維持される。この結果、凹部領域RAに供給されるインクAが開口領域78Aに流入してインク合流路78に流れる状態が維持される。
【0082】
一方、第2作動部材72Bは、上側当接部72Baがカム面71Bと当接した状態になるとともに、回転軸Jbを中心に第2作動部材72Bを回転(前方から見て時計方向に回転)させる。すなわち、カム面71Bは凸部71aが上方に位置する状態から凸部71cが上方に位置するまでの間に、回転軸71Jからの距離が漸次長くなるように形成されている。
【0083】
この結果、係止板73Bは第2作動部材72Bの回転に伴って下側当接部72Bbが左方向へ移動する際に力FBを受け、スライド軸74Bとともに左方向に所定量移動させられた状態になる。なお、スライド軸74Bの移動によって、コイルばね77Bはその付勢力に抗して圧縮された状態になるとともに、この圧縮されたコイルばね77Bの付勢力によって、係止板73Bは力FBの反力を受ける。この結果、第2作動部材72Bの下側当接部72Bbは左方向へ付勢されるので、上側当接部72Baは右方向つまりカム面71Bに付勢されて当接状態が維持される。
【0084】
すると、スライド軸74Bに固定されたダイヤフラム弁76Bは、その中央部分が左方向に引っ張られることによってスライド軸74Bと同様に所定量変位し、この中央部分と対向する開口領域78Bから離れて開口領域78Bを開放する。換言すれば、ダイヤフラム弁76Bが所定量の開弁量で開弁する。この結果、ダイヤフラム弁76Bは周囲が固定されているため略傘形状になり、開口領域78Bと、その外側に形成された環状の凹部領域RBと、を連通させる連通領域SBが形成される。したがって、凹部領域RBに供給されるインクBは、形成された連通領域SBを介して開口領域78Bに流入し、開口領域78Bと連通しているインク合流路78に流れる。なお、ダイヤフラム弁76Bは、略傘形状に変形可能なように、少なくとも円板形状部が弾性材料などの可撓性材料で形成されている。
【0085】
このとき、本実施形態の切換装置70では、スライド軸74Bは、第1作動部材72Aによって右方向へ移動したスライド軸74Aの移動量と同じ量で左方向に移動させられる。従って、ダイヤフラム弁76Aの変位によって形成される開口領域78Aと凹部領域RAとの間の連通領域SAと、ダイヤフラム弁76Bの変位によって形成される開口領域78Bと凹部領域RBとの間の連通領域SBとが、ほぼ等しい形状でほぼ等しい容積を有する領域になる。この結果、それぞれの連通領域SA,SBを流れるインクA,Bおよび空気の流路抵抗はほぼ等しくなる。
【0086】
以上説明したように、切換装置70は、カム71を凸部71cが上方に位置する回転位置とすることによって、インクAとインクBの双方のインクを液体噴射ヘッド100に供給する状態となる。なお、ダイヤフラム弁76Bが開口領域78Bを開放する際に凹部領域RBとの連通領域SBが形成されることに起因して、少なくとも供給されるインクBに圧力変化(減圧)が生ずる。そこで、ここでは詳細な説明を省略するが、切換装置70へ流入するインクBの圧力変化が圧力調整機構90によって調整される。
【0087】
次に、切換装置70では、液体噴射ヘッド100にインクAおよびインクBの双方を供給する状態から、インクBを供給する状態に切換える。このインクBが供給される状態について、図11を参照して説明する。
【0088】
図11に示すように、切換装置70では、インクAおよびインクBが液体噴射ヘッド100に供給された状態から、切換装置70において、モーター66(図7参照)の回転駆動によって、回転軸71Jを中心にカム71を回転(前方から見て時計方向に回転)させる。そして、凸部71bが上方に位置したことを検出してカム71の回転を停止させた状態にする。
【0089】
この状態では、第2作動部材72Bは、上側当接部72Baがカム面71Bと当接した状態が維持される。すなわち、カム面71Bは、凸部71cが上方に位置する状態から凸部71bが上方に位置する状態まで回転軸71Jを中心とする円弧形状になっており、第2作動部材72Bが回転軸Jbを中心に回転された状態がそのまま維持される。この結果、係止板73Bは、回転が維持された第2作動部材72Bの下側当接部72Bbから左方向への力FBを継続して受け、スライド軸74Bとともに左方向に移動したままの状態になる。
【0090】
従って、上述するように、ダイヤフラム弁76Bは開口領域78Bを開放し、開口領域78Bと、その外側に形成された環状の凹部領域RBとを連通させたままの開弁状態が維持される。この結果、凹部領域RBに供給されるインクBが開口領域78Bに流入し、開口領域78Bと連通するインク合流路78に流れる状態が維持される。
【0091】
一方、第1作動部材72Aは、下側当接部72Bbが係止板73Bからコイルばね77Aの圧縮力による反力を受けることによって、上側当接部72Aaがカム面71Aとの当接状態を保ちながら摺動する。そして、カム71において凸部71bが上方に位置する状態になったとき、下側当接部72Abが係止板73Aと離れた状態、もしくは係止板73Aと当接しても上側当接部72Aaがカム面71Aと離れた状態になって係止板73Aを右方向に移動させない状態になる。すなわち、カム面71Aは凸部71cが上方に位置する状態から凸部71bが上方に位置するまでの間に、回転軸71Jからの距離が漸次短くなるように形成されている。
【0092】
従って、係止板73Aは第1作動部材72Aの下側当接部72Abから右方向への力を受けないので、スライド軸74Aは、コイルばね77Aの付勢力によって左方向への力faを受ける。すると、スライド軸74Aに固定されたダイヤフラム弁76Aは、その中央部分が左方向に押し付けられ、この中央部分と対向する開口領域78Aを閉鎖して、開口領域78Aと、その外側に形成された環状の凹部領域RAとを遮断(閉弁)する。この結果、凹部領域RAに供給されるインクAは、開口領域78Aに流入しない。
【0093】
以上説明したように、切換装置70では、カム71を凸部71bが上方に位置する回転位置とすることによって、インクAとインクBのうちインクBを液体噴射ヘッド100に供給する状態になる。なお、ダイヤフラム弁76Aが開口領域78Aを閉鎖(閉弁)する際に凹部領域RAとの連通領域SAが減少することに起因して、少なくとも供給されるインクAに圧力変化(加圧)が生ずる。そこで、ここでは詳細な説明を省略するが、切換装置70へ流入するインクAの圧力変化が圧力調整機構90によって調整される。
【0094】
また、本実施形態では、液体噴射ヘッド100へ供給するインクをインクAからインクBへ切換える際に、開口領域78A付近にそれまで流入しているインクAをインクBによって流動させるように、開口領域78Aの領域と開口領域78Bの領域とを連結する連通流路78Cが形成されている。もとより、液体噴射ヘッド100へ供給するインクをインクBからインクAへ切換える際にも、インクAがこの連通流路78Cを流れて開口領域78B付近にそれまで流入しているインクBを押し流す。
【0095】
なお、切換装置70において、インクBの供給状態から再びインクAの供給状態に切換える場合は、凸部71bが下方に位置し凸部71aが上方に位置するようにカム71を逆方向(前方から見て反時計方向)に回転させる。そして、インクAとインクBとが同時に供給される状態は、このインクBからインクAへの切換過程においても同様に生ずる。すなわち、インクAおよびインクBの双方を供給する状態は、カム71を逆方向(前方から見て反時計方向)に回転させる過程において凸部71cが上方に位置する状態で生ずる。
【0096】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)コイルばね77Aによって付勢されて閉弁しているダイヤフラム弁76A、およびコイルばね77Bによって付勢されて閉弁しているダイヤフラム弁76Bの双方を、第1作動部材72Aおよび第2作動部材72Bによって付勢方向と反対方向に変位させて開弁させる。このとき、ダイヤフラム弁76Aおよびダイヤフラム弁76Bの変位量をそれぞれ同じにすることで同じ開弁量で開弁させることができる。従って、ダイヤフラム弁76Aおよびダイヤフラム弁76Bの開弁時にそれぞれの流路抵抗が異ならないように抑制する切換装置70を提供できる。
【0097】
(2)コイルばね77Aおよびコイルばね77Bによってダイヤフラム弁76Aおよびダイヤフラム弁76Bを閉弁させるとともに、第1作動部材72Aおよび第2作動部材72Bをカム71(カム面71Aおよびカム面71B)に当接させることができる。従って、第1作動部材72Aおよび第2作動部材72Bをカム71に当接させる付勢力を付与する付勢手段を別途設ける必要が無い。
【0098】
(3)1つのカム71に形成されたそれぞれのカム面71Aおよびカム面71Bの形状に応じて、第1作動部材72Aおよび第2作動部材72Bがそれぞれ個別に駆動される。従って、ダイヤフラム弁76A及びダイヤフラム弁76Bのうち、一方が閉弁されるとともに他方が開弁される状態と、双方が開弁される状態を状態とを、1つのカム71の回転によって容易に切り換えることができる。
【0099】
(4)ダイヤフラム弁76A及びダイヤフラム弁76Bの双方の開弁時に、それぞれの流路抵抗が異ならないように抑制することで、例えばインクA,Bをインク供給チューブ45,55に同時に素早く充填(初期充填)して液体噴射ヘッド100に供給することができるプリンター11を提供できる。
【0100】
(5)切換装置70に供給するインクAおよびインクBの圧力を圧力調整機構90によって調整するので、液体噴射ヘッド100からのインクの噴射性能に対する影響が抑制された適切な圧力で、インクAおよびインクBを切換装置70に供給できる。
【0101】
(6)インクカートリッジ31,41内を加圧することなくインクカートリッジ31,41からインクを吸い上げて圧力調整機構90に供給することによって、供給されるインクに大きな圧力が生じないように抑制することができる。従って、圧力調整機構90におけるインクAおよびインクBの圧力調整が容易になる。
【0102】
(7)インクカートリッジ41と廃インクタンク18とをプリンター11の前面に露出しないように1つのカバーケース14で覆うので、カバー部材の増加を抑制できる。また、プリンター11を前方から見たとき、ハウジング12の左右両側の各端部に、カバーケース13のケース部位13aとカバーケース14のケース部位14aとが左右方向において対称に配置されるので、プリンター11のハウジング12は、左右のバランスがとれた外観となる。
【0103】
(8)インク供給チューブ45aを通して供給されるインクAの流路が、インク供給チューブ45bを通して供給されるインクBの流路よりも、合流経路部50における流路長が短くなっている。一方、キャリッジ60の接続流路板61において、インクAが流れる接続流路61aは、インクBが流れる接続流路61bよりも、接続流路における流路長が長くなっている。従って、合流経路部50において生ずるインクAの流路長とインクBの流路長との間の差異が、接続流路板61において少なくなるように補正され、切換装置70に流入するインクAおよびインクBの流路抵抗がほぼ同じになる。この結果、切換装置70におけるインクAおよびインクBの流れ方が同じになるので、ダイヤフラム弁76Aの開弁動作とダイヤフラム弁76Bの開弁動作とを同一にできるなど、インクの切換に関する動作の制御が容易になる。
【0104】
(9)キャリッジ60(接続流路板61)において、インクカートリッジ31から供給されるインクの流路長は、インクカートリッジ41から供給されるインクの流路長よりも短い。従って、左右のカートリッジ装着部30とカートリッジ装着部40との間で高さが異なることによって生ずるインクカートリッジ31とインクカートリッジ41との間の水頭差が減少するように補正することができる。
【0105】
(10)カートリッジ装着部30とカートリッジ装着部40とを共通化することができるので製造コストを抑制することができる。また、カートリッジ装着部40において、実際にインクを供給しない非供給装着領域部49として1つの装着領域部46を設けているので、例えば、この装着領域部46(非供給装着領域部49)に予備のインクカートリッジ41(またはインクカートリッジ31)を装着しておくことができる。
【0106】
なお、上記実施形態において、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、スライド軸74Aおよびスライド軸74Bを、カム71によって回転駆動される第1作動部材72Aおよび第2作動部材72B以外のアクチュエーター(例えば油圧シリンダーやボールねじなど)によって左右方向に移動させて、ダイヤフラム弁76Aおよびダイヤフラム弁76Bを変位させるようにしてもよい。
【0107】
・上記実施形態において、第1作動部材72Aおよび第2作動部材72Bをカム面71Aおよびカム面71Bへ付勢する付勢手段を、コイルばね77Aおよびコイルばね77B以外に別途設けるようにしてもよい。
【0108】
・上記実施形態において、カム71を複数(ここでは2つ)備え、それぞれのカムが独立して回転駆動されるようにしてもよい。こうすれば、実際に形成されるインクの流路抵抗に応じて、ダイヤフラム弁の変位量や変位させるタイミングを調節することができる。
【0109】
・上記実施形態において、例えば切換装置70において生ずるインクの圧力変動が、液体噴射ヘッド100からのインクの噴射に影響を及ぼさない場合は、プリンター11には、切換装置70の上流側に必ずしも圧力調整機構90が備えられなくてもよい。
【0110】
・上記実施形態において、例えばインクカートリッジ31,41から供給されるインクが、インクカートリッジ31,41内を加圧して行う場合などでは吸引装置20は必ずしも備えなくてもよい。
【0111】
・上記実施形態において、インクカートリッジ31,41は、全て異なる種類のインクでなく、互いに同一種類のインクが収容されたインクカートリッジが含まれていても差し支えない。
【0112】
・上記実施形態において、実際にインクを供給しない非供給装着領域部49として装着領域部46が複数設けられていてもよい。
・上記実施形態では、切換装置70は2つのインク(インクAとインクB)を切換える形態としているが、必ずしも2つのインクに限るものでない。例えば4つのインクを切換える形態としてもよい。この形態の場合は、説明は省略するが、上記実施形態における切換装置70を2つ用いた構成とすることで実現可能である。
【0113】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
11…液体噴射装置としてのプリンター、20…吸引装置、31,41…液体収容体としてのインクカートリッジ、60…キャリッジ、70…液体切換装置、71…駆動手段としてのカム、72A…第1アクチュエーターとしての第1作動部材、72B…第2アクチュエーターとしての第2作動部材、76A…第1開閉弁としてのダイヤフラム弁、76B…第2開閉弁としてのダイヤフラム弁、78A…開口領域、78B…開口領域、78…インク合流路、90…圧力調整機構、100…液体噴射ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の供給側から第1液体を供給する第1供給路と、
前記液体の供給側から前記第1液体と異なる第2液体を供給する第2供給路と、
前記第1供給路および前記第2供給路よりも前記液体の供給方向における下流側に位置し、前記第1液体および前記第2液体を前記液体の消費側に供給する第3供給路と、
第1付勢手段によって付勢されて前記第1供給路を閉弁して前記第1液体を前記第3供給路から前記消費側に供給しないようにするとともに、第1アクチュエーターの駆動によって前記第1付勢手段の付勢方向と反対方向に変位させられて前記第1供給路を開弁して前記第1液体を前記第3供給路から前記消費側に供給する第1開閉弁と、
第2付勢手段によって付勢されて前記第2供給路を閉弁して前記第2液体を前記第3供給路から前記消費側に供給しないようにするとともに、第2アクチュエーターの駆動によって前記第2付勢手段の付勢方向と反対方向に変位させられて前記第2供給路を開弁して前記第2液体を前記第3供給路から前記消費側に供給する第2開閉弁と、
前記第1アクチュエーターおよび前記第2アクチュエーターを駆動する駆動手段と、
を備えたことを特徴とする液体切換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体切換装置において、
前記駆動手段は、回転駆動されるカムを備え、
前記第1付勢手段および前記第2付勢手段は、それぞれの付勢力によって前記第1アクチュエーターおよび前記第2アクチュエーターを前記カムと当接する方向に付勢することを特徴とする液体切換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体切換装置において、
前記カムは、前記第1アクチュエーターが当接する第1カム面と、前記第2アクチュエーターが当接する第2カム面とを備え、
前記第1アクチュエーターおよび前記第2アクチュエーターは、1つの前記カムの回転駆動に伴って、前記第1カム面および前記第2カム面によってそれぞれ個別に駆動されることを特徴とする液体切換装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液体切換装置と、
前記第3供給路によって供給される前記液体を消費する液体噴射ヘッドと、
を備えた液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置において、
前記液体切換装置よりも上流側の前記第1供給路及び前記第2供給路に、前記液体噴射ヘッドに供給される前記液体の圧力を調節する圧力調整機構をそれぞれ備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記第1供給路および前記第2供給路のそれぞれに前記液体を供給する供給側となる液体収容体と、
前記液体収容体から前記液体を吸い上げて前記圧力調整機構に前記液体を供給する吸引装置と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22877(P2013−22877A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161134(P2011−161134)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】