説明

液体包装袋用ワイン容器

【課題】使い捨てタイプのバッグインボックスワインの外装箱に代わって、再利用でき且つ操作性の良い液体包装袋用ワイン容器を提供する。また容器の内部に、液体包装袋中のワインの残留防止と酸化防止の機能を提供する。
【解決手段】液体包装袋用ワイン容器において、注ぎ口を固定するための穴3aを容器の低位置に設け、該穴3aより高い位置を境に上下に二分割して蓋と本体を作り、更に注ぎ口近傍において、本体の上側から凹状に該穴3aを上下に二分割するように切り取り、切り取った部分に扉10aを設けたことを特徴とする容器1を作成する。更に容器1の内部に、ワインの量の減少に応じて傾斜角度を高める可変傾斜板13を設置する。もしくは該穴10aとの間に所定の間隔を有する凹溝を設け、該穴の高さより高い位置に液体包装袋を支持する上面を有する隆起台を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッグインボックスワインの外装箱に代わる容器、即ちワインを入れた液体包装袋を収納するためのワイン容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワインを充填した注ぎ口を有するプラスティック或いはアルミ製の液体包装袋(以下、液体包装袋、もしくは包装袋と呼ぶ)は、防水加工された厚紙の外装箱に梱包し、外装箱の一側面に穴をあけて袋の注ぎ口を箱の外に引き出して使う、バッグインボックスという形態が一般的である。バッグインボックスのワインは、ボトルのワインに比べて開栓後の酸化が少ないため、ワインを数週間にわたって飲むことも可能で、また梱包や輸送、デッドスペース等の面からもコストパフォーマンスが良く、コストを抑えた日常ワインとして、欧米諸国やオーストラリアを中心にワイン市場に広まっていった。日本でもここ数年店頭で見られるようになってきており、今後もバッグインボックスの市場はますます伸びる傾向にある。
しかし従来のバッグインボックスは、そのまま外装箱を傾けずに液体を注ぎ続けた場合、量の減少に伴って徐々に流出速度が遅くなると共に最後に液体が出なくなった時点での残液量が多いという欠点がある。この欠点を補うため幾つかの発明がなされている。例えば、特開2004−18079「バッグインボックス」による内装袋と外装箱とを融合させた構造の発明に関するものや、特開2002−104431「バッグインボックス用袋体およびバッグインボックス」や特開2000−281133「バッグインボックス型液体容器」による業務用または容量の大きい液体包装袋を主な対象にした発明に関するもの等がある。
【0003】
しかしながらバッグインボックスに関するこれらの発明は、飲料水や薬品等、広範囲にわたる液体を対象にしており、特に酒類を優先したものではない。液体の中でも、酒類、特にワインにおいては、機能だけでなく容器の外観も重要な要素となっている。最近ではイメージを重視した卓上サイズの化粧樽に入ったワインもパーティーや贈答用として市販されている。しかしこのタイプの化粧樽はワインが直接ワイン樽に入っており、バッグインボックスの液体包装袋を収納するようには構成されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ワインを入れた液体包装袋を収納する容器として、特に良質のワインを対象としてみた場合、従来のバッグインボックスでは、外観、利便性、効率性の上で下記のような課題がある。
1.バッグインボックスワインの外装箱にはダンボール紙が使われていて、素材と形状的に高級感に乏しく、一般的に安いワインというイメージを作り出している。また、厚手のダンボール紙の場合、箱の中から注ぎ口を最初に取り出して固定する作業が容易ではなく、また薄手のダンボール紙の場合では、注ぎ口周辺が型崩れを起こし易いという欠点がある。
2.バッグインボックスワインの外装箱は、用後は再利用せず廃棄するのみである。しかしながら外装箱にはワインを注ぐ容器としての機能を備えており防水加工や頑丈な糊付けなどが施されているため、現状のリサイクル分別では禁忌品扱いとなり古紙としてリサイクルができない。
3.バッグインボックスワインの場合、包装袋の出し入れは考慮されていないため、ワインを冷蔵庫で冷やす場合は箱ごと冷やす必要があり、包装袋のワインの残量に関わらず、常に箱の大きさを冷蔵庫に確保しなければならない。
4.バッグインボックスの包装袋の中のワインがまだグラス数杯分以上残っているにも関わらず、水頭圧が下がりワインの出が悪くなるため、注ぐ際に箱を傾ける必要があるが、片手にワイングラスを持ちながら、もう片手で注ぎ口からワインを注ぎつつ且つ箱を傾けるのは困難である。
5.包装袋はワインの品質を長時間保持できる構造であるが、バッグインボックスの箱の底面積が比較的広いものでは、水頭圧が下がるとワインを注ぐ際に注ぎ口から空気が逆流して包装袋に入り易くなる場合があり、ワインの酸化が始まり易くなる。空気の逆流によって酸化を受けるワインの残量は、容器の形状や包装袋のフィルムの形状によって異なり、また注ぎ方によっても状況が変わってくるため格差があるが、箱のデザインによっては4分の1以上が酸化してしまうものもあり、液体包装袋の機能が充分満たされていない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ワインが入った、注ぎ口を有する液体包装袋を装填した液体包装袋用ワイン容器において、注ぎ口を固定する穴を上記液体包装袋用ワイン容器の低位置に設け、該穴より高い位置を境に上下に二分割して蓋と本体を作り、更に注ぎ口近傍において、上記本体の上側から凹状に該穴を上下に二分割するように切り取り、切り取った部分に扉を設けたことを特徴とする。本項の発明により、上記1から3の課題が解決される。
【0006】
請求項2に記載の発明は、上記の液体包装袋用ワイン容器内に、上記液体包装袋を支持し、ワインの量の減少に応じて傾斜角度を高める可変傾斜板を取り付けたことを特徴とする。本項の発明により、上記の課題4及び5が解決される。
【0007】
請求項3に記載の発明においては、請求項2記載の可変傾斜板と同じ目的ではあるが別の手段として、上記液体包装袋用ワイン容器内に、上記注ぎ口固定用の穴との間に所定の間隔を有する凹溝を設け、該穴の高さより高い位置に上記液体包装袋を支持する上面を有する隆起台を設けたことを特徴とする。本項の発明により、請求項2の発明と同じく上記の課題4及び5が解決される。
【0008】
請求項4に記載の発明においては、ワイン入り液体包装袋用の外装箱または容器内に、上記請求項2,3いずれか1項に記載の可変傾斜板または隆起台を有したことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明においては、上記液体包装袋中の液体が酒類である請求項1から4のいずれか1項記載の液体包装袋用外装箱または容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明における液体包装袋用ワイン容器(以下、ワイン容器と呼ぶ)は、開閉可能な上蓋と注ぎ口用扉を設けたことで、包装袋の詰め替えがし易くなり、注ぎ口も簡単に注ぎ口固定用穴にセットできるようになり、注ぎ口周辺の型崩れを無くし、容器も再利用ができるようになる。またワインを冷蔵庫で冷やす場合、包装袋のみを取り出して入れることができ、冷蔵庫の隙間に入り易く収納スペースが利用し易くなる。本ワイン容器は容易に開閉できるため包装袋と一緒に保冷材を入れることも可能で、場所を問わず適度に冷えたワインが飲める。また、本ワイン容器の形状は任意で自由にデザインし良いため、容器の外観からワインをイメージし易い形状、たとえばワイン樽のような形状にすることで、包装袋に入ったワインに対する違和感を和らげる効果が期待でき、また高級感も生まれ、店頭やレストラン等のカウンターでのディスプレイ効果が期待できる。
【0011】
また請求項2〜4の発明においては、可変傾斜板または隆起台をワイン容器内に取り付けることにより、包装袋中のワインが少量になっても容器を傾けずにワインを注ぐことができ、同時に包装袋内の残液量も減る。また容器の底面積が広い場合でも、空気の逆流を防いで酸化されるワインの量を極力抑えることができるため、最後まで新鮮なワインが味わえる。よって底面積の広い容器のデザインも可能となり、デザイン性に幅が出てくる。
【0012】
また請求項5の発明においては、本ワイン容器の自由なデザイン性を活かして、ワインに留まらず、日本酒、焼酎などの他の酒に関しても同様に、液体包装袋入りの新しい容器でのお酒が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
液体包装袋を収納する容器として、卓上サイズの横置きもしくは縦置きのワイン樽を設ける。樽容器のサイズは包装袋の大きさによるが、保冷材のためのスペースを併せて配慮する。材質は木を用いるのが望ましいが、プラスティック等に木の材質感を持たせたものでも利用できる。横置きの樽の場合はスタンドを併せて作成する。
樽容器には注ぎ口固定用の穴を容器の低位置に設ける。穴は包装袋に付いている注ぎ口の固定部分の径より若干大きめにし、簡単に取り外しできるようにする。次に樽容器を蓋と本体に分ける。柔らかくて自立性のない包装袋を容器本体内に装填しやすくするには、容器本体に包装袋の高さを考慮した深さが必要なため、蓋と本体の分割境界線を樽の半分より高い位置に設定し、この境界線をもって、樽容器を上下に二分割する。分割した上下は、上の部分を蓋に、下の部分を本体にして、上蓋と本体によって開閉ができるような構造にする。
【0014】
更に、包装袋の装填や取り替えの際に、包装袋の注ぎ口を容器の該穴に簡単に出し入れすることができ、且つ注ぎ口周辺の型崩れも起こらないようにするため、上記本体部分の該穴面を凹状に切込んで扉を作る。切り込みは、容器の該穴幅より広い幅で本体部分の二分割境界線から下方向へ該穴を上下に二分割するように凹状に切込む。そして切り取った部分は、開閉ができるように扉にする。尚、扉の形式については、切り取った板をスライド式で差し込む方法や板の上の方を留めて前後に開閉できるようにする縦開きの方法等がある。容器の素材が厚紙で箱型の場合はスライド式が適しているが、他は容器の素材や意匠に応じて用いるのが望ましい。
【0015】
尚、本項におけるワイン容器は任意で、ワイン樽の形に限定するものではなく、円柱形や多角形等の他の形状の容器でも良い。また容器の材質においても、合成木、金属やプラスティック等の単体の材質だけでなく、ガラスとシリコンの組み合わせ、あるいは厚手の紙に布張りしたもの等、用途や価格に合わせて様々な容器が考えられる。
【0016】
可変傾斜板においては、まず包装袋を支持するための板(以下、上面板と呼ぶ)と、上面板をワイン容器に固定するための板(以下、固定板と呼ぶ)を設ける。上面板の形状はワイン容器内部での傾斜角可変領域の形状に応じて形成し、固定板については容器内での固定位置の形状に合わせて形成する。横置きの樽形の容器に可変傾斜板を設置した場合の例を図16に示す。可変傾斜板の角度設定については、可変傾斜板に包装袋が乗っていない、即ち負荷の掛かっていない状態での上面板の固定板からの角度を60度前後から90度以内にし、一方、可変傾斜板に最大負荷が掛かっている状態においては上面板の固定板からの角度を0度から20度前後とするのが望ましい。可変傾斜板に使用する板については、負荷に耐えられる硬い素材の板、例えば木板、金属板、プラスチック板等を使用する。
【0017】
尚、容器の形状によっては、上面板が可変できる角度が制限され、これらの角度を満たし難い場合がある。
その制限を緩和する方法として、本発明の可変傾斜板では次の2つの対処法を挙げる。
1. 上面板をくの字状に屈折させた構造にする。上面板をくの字状に屈折した例を図9に示す。上面板を屈折した構造にすることで、上面板が容器内の天井部に触れる場所をより傾斜角度の高い位置にすることができる。上面板の作成においては、上面板の素材が金属板や硬プラスチック板等の場合は予め所定の角度に屈折させて加工又は作成できるが、木板等のように屈折が難しい場合は、上面板を屈折部分で二分割し、その分割した2枚の板を所定の角度を有する連結用資材を用いて繋ぎ合わせて作成する。
2. 上面板を支点部と先端部の板に分け、両端にレールを付け、上面板の角度が上がると先端部の板がスライドして上面板全体の長さが収縮する構造にする。収縮する上面板を図10に示す。本上面板は充填した包装袋が乗っている場合は上面板の角度が低く袋も重いので先端部の板は動きにくいが、液体が減ってくると、上面板の角度が上がり液体が注ぎ口の方へ集まるので先端部で支持する袋も軽くなり、それに伴って先端部の板が重みでスライドする仕組みである。先端部の板がスライドして上面板全体が縮めば上面板が容器内の天井部に触れずに傾斜できるので、上記角度の制限を取り除くことができる。
【0018】
上面板と固定板用に設けた2枚の板については、図12又は図13に示すように、注ぎ口側を支点とするように注ぎ口側の辺沿いをばねで結合する。ばねはねじりばね(図15参照)を用い、アーム長はなるべく長い方が望ましい。尚、ねじりばねのアームの角度(巻角度)と使用角度(許容ねじり角度)は、可変傾斜板の動作条件に合わせる。更に可変傾斜板がねじりばねのコイルの部分と接する箇所には、図14に示すように、上面板と固定板にそれぞれ浅く窪みを作り、コイルの位置が可変傾斜板の動きでずれないようにする。また、特にねじりばねのアーム部分を固定する際には、必要に応じて薄い金属板等をアームの上から覆う等の補強を施し、しっかり可変傾斜板に固定する。取り付けるねじりばねの数は、上面板の大きさや重さ、ワインにより掛かる負荷、ばねの形状や強度等によっても違うが、2個ないし3個が好ましい。
【0019】
次に、可変傾斜板の先端部分に、先端の幅に沿ってクリップを取り付け、包装袋の一箇所をクリップで固定し、可変傾斜板が起き上ってもワインの重みで包装袋が下がらないようにする。但し、上記のレール付きでスライドする可変傾斜板の場合にはクリップは取り付けない。
【0020】
作成した可変傾斜板は、ばねの付いた方を容器の注ぎ口固定用の穴側にして、可変傾斜板の固定板を容器内の底辺部に固定する。
【0021】
隆起台においては、常にワインが注ぎ口へ集まるようにすることにより、少量になったワインを、容器を傾けることなく、空気の逆流も防ぎながら注ぐことができるようにするものである。通常、ワイン用の包装袋は2枚の四角形フィルムを重合し、その周囲を溶着し、更に片方のフィルムの下辺部に注ぎ口固定用の穴をあけてプラスチック製の注ぎ口を溶着しており、注ぎ口の方へワインを誘導するロート状の形状(以下、ワイン流出通路と呼ぶ)は包装袋についていない。よって代わりに凹溝を有する隆起台をもってワイン流出通路となる形状を形成できるようにし、常にワインが注ぎ口へ誘導されるようにする。
隆起台を作成するに当たっては、木、厚紙、スチール、プラスチックや発泡スチロール等、包装袋の台になり得る素材を用いる。素材によっては隆起台を立体状に形成する場合と板で隆起台の上面のみを形成する場合がある。何れの場合も、隆起台側面の形状は容器内の設置部分の形状に合わせる。隆起台は凹溝が注ぎ口側にくるように容器内の底辺部に設置する。
【0022】
立体状の隆起台を作成する場合は、隆起台上面の注ぎ口側の高さが容器の該穴よりやや高い位置に来るように設定し、且つ上面の注ぎ口側が一番低くなるようにゆるやかな傾斜をつけ、注ぎ口と隆起台との間に所定の大きさの凹溝を作り、凹溝に沿って包装袋の注ぎ口を引き出してワイン容器の該穴に固定することでワイン流出通路となる形状を作り出し、ワインが注ぎ口に流れるようにする。凹溝は隆起台の注ぎ口側の側面を上面から縦方向に切り抜き、溝の大きさは包装袋の注ぎ口を引き出したり収納したりできる大きさにし、形状は柱状またはロート状とする。溝の長さは固定した注ぎ口全体が溝の中に位置するような長さとし、溝の低端が該穴より下になるようにする、もしくは隆起台の上面から底面までを切り抜く。
【0023】
板で作成する場合の隆起台は、上記立体状の隆起台の上面のみを残して、上面を立脚等で支えたような構造にする。よって板の場合も、隆起台上面の注ぎ口側が容器の該穴よりやや高い位置に来るようにし、上面の注ぎ口側が一番低くなるようにゆるやかな傾斜をつけ、立脚等で支えて固定できるようにする。更に板の注ぎ口側には、上記立体状の隆起台の上面と同じ凹状の切り込みを入れて、切り込んだ部分から包装袋の注ぎ口を引き出して容器の該穴に固定し、包装袋にワイン流出通路となる形状を作り出す。
【実施例1】
【0024】
以下、図面に沿って、本発明の実施例について説明するが、本発明の主旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0025】
横置きの樽型の容器を作成する例を示す。本実施例は特に記述がない限り木製の容器を前提とする。まずワイン3リットル入りの包装袋用の容器として、胴回りが内部最大直径20cm、最小直径18cm、長さ22cmの樽容器1を作成する。横に置いた樽を安定させるためにスタンドも用意する。次に図2に示すように、樽容器1の正面の円形部分において、包装袋の注ぎ口を固定するための穴3aの最下部が下から3cmの高さにくるように、穴3aの位置を設定する。また穴3aの直径は包装袋の注ぎ口の固定部分の直径よりも若干(約2ミリ程)大きめに作る。次に樽容器1を二つに分割するための境界線5aを、樽の高さ4分の3の位置に設定し、樽容器1を二つに分割する。そして、正面右側の側面に開閉のための金具8aを付け、また、図3に示すように、背面右側の側面に蝶番9aを取り付ける。次に、図4の点線4aに示すように、境界線5aから注ぎ口固定用の穴3aを中心で二分割するような凹状の切り込みを入れ、10aを作り切り離す。凹状の幅は注ぎ口固定用の穴3aの両端より各1cmづつ幅広に設定する。図5は、境界線5aと切り込み線4aによって上蓋と本体部分に分かれた正面の図を示している。
【0026】
容器の該穴面を凹状に切込んだ部分10aを開閉できる扉にする2つの実施例を図6及び図7に示す。
図6においては、容器の該穴面を凹状に切込んだ部分を前後に開閉する縦開き式注ぎ口用扉6の作成例を示す。図6で示すように、長さ数センチで直径約2mmの金属製の丸棒11−1と11−2を凹状に切り取った板10aと正面本体部分2の境界線5a沿いに取り付ける。丸棒11−1と11−2は、それぞれ約半分の長さを板10aの最上部から約5mm位の位置に打ち込み、本体部分2には10aに打ち込んだ丸棒の残り半分が収まるように境界線5aの上部から溝を掘る。掘った溝に板10aの11−1と11−2部分を上から挿入してセットし、板10aが丸棒を支点にして前後に動くようにする。また、扉となった板10aの内側には高さ半分より下方の位置に、液体を充填した包装袋を装填する際に内側からの圧力で板10aが開かないように、ストッパーを容器の内側に取り付ける。例えば、長さ数センチ程の薄くて細長い金属片の片方を、金属片の半分が本体部分2に届くように、小さなねじ又は釘で板10aの内側の所定の位置に固定し且つ固定部分を支点として回転できるようにする。本体部分2の内側には、板10aに取り付けた金属片を受け止めるためのL字状の金具を上向きに固定する。
【0027】
図7においては、容器の該穴面を凹状に切込んだ部分を縦にスライド式に差し込んで開閉できる扉7を作成する例を示す。図7で示すように、凹状に切り取った板10aの両辺に凸状の形状17を付ける。本例ではこの凸状17は厚さ1mm、幅10mm、長さが板10aの縦の長さに等しい金属板を、板10aの両辺に幅5mm埋め込んで作成する。一方、本体部分2には、板10aに形成した凸状17を受ける凹状の溝を設ける。凹状の溝は凸状17と同じ長さで両辺の縦方向に、凸状17が滑らかに動くような大きさの幅と深さで作成する。板10aの凸状17を、本体部分2に設けた凹状の溝に上から差し込み、縦にスライドさせて開閉する扉7とする。
【0028】
図8は、縦開き式注ぎ口用扉6を取り付けた場合の横置きの樽容器1の外観を示している。
【0029】
次に樽容器1に装着するための可変傾斜板の実施例を2例、図9から図18で説明する。
まず、くの字状に屈折した構造の上面板を有する可変傾斜板の例について説明する。本可変傾斜板は、図12に示すように、上面板14と固定板18及びばね21で構成される。本例では上面板を緩く屈折させて作成する。まず図9に示すような、底辺12cm、高さ7cm、上辺8cmの台形型の板14aと、幅12cm、長さ13cmの長方形の板14bを用意する。板14bは図9に示すように両角を切り落とす。そして板14aと板14bを繋ぎの部分で15度屈折させて14cを165度にして繋げ、これを上面板14とする。屈折部の接続は、予め165度に屈折した金属板、厚さ1mm、幅6cm、長さ10cm、を連結資材として用い、上面板14の上面に連結資材を付けて2枚の板を繋ぐ。
固定板18は、幅を8cm、長さを約21cmの長方形にする。次に、図12に示すように、上面板14及び固定板18の両端から内側に、ばね21を1個ずつ取り付けて2枚の板を結合する。図13は、ばね21を取り付けた部分20を拡大した図である。そして図14に示すように、上面板14と固定板18の、ばね21のコイルが接触する部分に浅い窪みをつけて、ばね21を取り付け、アームの部分には補強のための薄い金属板22,23を覆い、ねじ又はボルト等で留めてアームを固定させる。
【0030】
また、図12に示すように、可変傾斜板の上面板14bの先端にはクリップ19を取り付け、包装袋の一箇所を固定できるようにする。図16は出来上がった可変傾斜板13を樽容器1に装着した状態を示している。
【0031】
図17は、可変傾斜板を装着した樽容器1に、ワイン30が充填された包装袋28を入れた状態を示している。ワイン30の重みで上面板14が下がっているが、図18に示すように、包装袋28内のワイン30の量が少なくなり軽くなると、ばね21の力で上面板14が起き上がり、包装袋28の中のワイン30が注ぎ口29の方へ集まる。
【0032】
次に、レールを取り付けたスライド式の上面板を有する可変傾斜板の例について説明する。図10に示すように、まず幅12cmで長さ12cmの支点部の板15aと、幅10cmで長さ11cmの先端部の板15bを設ける。本例では上面板全体の長さを約20cmに設定する。よって支点部の板15aと、先端部の板15bが約3cm程互いに重なり合うが、重なり合うことで2枚の板が荷重に耐え連結状態を維持できるのと、傾斜角が上がった時に若干ではあるが先端部の板15bの滑り出しを助ける効果がある。
先端部の板15bには図11に示すような形状を有する厚さ約1mmで長さ11cmの金属板16b−1と16b−2を両端に取り付ける。一方、支点部の板15aの両端には、図11に示すような形状を有する厚さ約1mmで長さ10cmの金属板16a−1と16a−2を取り付ける。これらの金属板は、金属板同士の接する面が滑りやすい材質のものか又は潤滑処理を施したものを使用するのが望ましい。金属板を取り付けた2枚の板は、支点部の板15aと先端部の板15bとで、図11に示すように組み合わせてスライド式の上面板15を構成する。最後に、図14の可変傾斜板と同じく、ばね21で本上面板15と固定板18とを結合して、スライド式の上面板を有する可変傾斜板とする。
本スライド式上面板に取り付けるレールに関しては、スライドレールでも適用できる。
【0033】
本実施例1での可変傾斜板はねじりばねを用いたが、ねじりばね以外でも同等の機能を果たすものであれば良い。例えば、今日の技術をもってすれば、1枚の大きなばねの素材板を用いて、可変傾斜板の支点となる部分に角度や弾性を与えて可変傾斜板を作成したり、あるいは予め角度と弾性を与えた板状のばねに2枚の板を溶着して、連続した1枚の板として可変傾斜板を作成する等が考えられる。
【実施例2】
【0034】
次に縦置きの樽の容器を作成する例を示す。本実施例は特に記述がない限り木製の容器を前提とする。図19に示すように、縦置きの樽容器31の場合も、横置きの樽容器1と同じく、底辺から3cmのところに穴の最下部が位置するように注ぎ口固定用の穴3bを設け、樽の高さが約4分の3の高さの位置に境界線5bを設定し、上下二つに分割する。注ぎ口側を正面として、正面右側の側面に開閉のための金具8bを取り付け、図20に示すように、正面左側の側面に蝶番9bを取り付ける。また、上記実施例1における樽容器1の場合と同じように、縦開き式注ぎ口用扉10bを設ける。
【0035】
本実施例2では、可変傾斜板に代わって隆起台を用いる。以下、隆起台の構成を、図21から図26を用いて、縦置きの樽容器31に隆起台を設ける場合を前提に示す。
【0036】
まず、図21及び図22は、発泡スチロールを用いて隆起台を作成する場合を表している。発泡スチロールのブロックで樽容器31の底辺部の形に合った台を作り、図21に示すように包装袋28をワイン容器に装填した際に、注ぎ口側の隆起台上面の高さ34を、注ぎ口溶着部外輪の最上点の高さ35より若干高くなるように設定し、反対側の隆起台上面の高さ37を、注ぎ口側の隆起台上面の高さ34より2cm程高い緩やかな傾斜を持つ隆起台上面33を作り、隆起台本体とする。更に、隆起台本体の注ぎ口側の側面に図22に示すような凹溝38を切り抜き、隆起台32を完成する。本例での凹溝38の大きさは、図21における注ぎ口29の溶着部36の外輪の直径が5cmの場合では、図22における凹溝の深さ40は5cm程、凹溝の幅39は6cm程とする。本例の発泡スチロール製の隆起台32を樽容器31に設置した場合の内部の要部を図23に示す。図24の側面断面図は、隆起台32を装着した樽容器31に、ワイン30が充填された包装袋28を入れた状態を示している。
【0037】
同様に、木板を用いて隆起台を作成する例を図25に示す。本例においても前述の発泡スチロールのブロックによる例と同じ寸法を用いる。まず、木板製隆起台の上面板43を、図22の隆起台上面33に相当する形に作成する。次に木板製隆起台の上面板43に傾斜を付けて支えるための立脚板45−1及び45−2を2枚同じサイズで作成する。立脚板は、完成時に木板製隆起台の上面板43が発泡スチロール製隆起台32の上面33における高さと傾斜に等しくなるように角度を設定して形成する。次に2枚の立脚板を固定するための立脚板固定板44を図22の隆起台底面に相当する形に作成する。作成した木板製隆起台の上面板43、2枚の立脚板45−1,45−2、立脚板固定板44を、図25のように組み立てて木板製の隆起台42を完成する。図26の側面断面図は、隆起台42を装着した樽容器31に、ワイン30が充填された包装袋28を入れた状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によるワイン容器は、容器を開閉可能にして包装袋の取り替えや出し入れをできるようにしただけでなく、注ぎ口の取り付けや取り外しが簡単にできるようにしており、利用者が容易に使えるようになっている。また保冷材と一緒に包装袋を収納すれば、場所を問わず適度に冷えたワインが楽しめるといった利便性もあり、パーティーやピクニック、あるいはレストランのハウスワイン用にも適した容器である。
更に、本発明は容器の形状に依存せず、ワインの残留防止や酸化防止を実現していることから、容器のデザインや材質の選択の幅が拡がり、ユーザ層や用途に合わせた容器のデザインが可能になる。またデザイン性に富んだ本容器は、ワインに留まらず、日本酒、焼酎など、ボトル酒に代わって、包装袋入りの酒類の商品化という新しい分野の参入も期待できる。
また、容器内に使用する液体包装袋は非常に薄いフィルムでできていて、用後の処理が簡単で廃棄しやすいので環境対応型パッケージといわれているが、その液体包装袋のみを取り替えて長期に利用できる本発明の容器は、更なる環境対応の促進に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】横置きの樽容器の外観と可変傾斜板を装着した内部を示した前面斜視図である。
【図2】横置きの樽容器の外観を示した前面斜視図である。
【図3】横置きの樽容器の外観を示した背面斜視図である。
【図4】横置きの樽容器の正面の切り込み線を示した前面図である。
【図5】図4において、切り込み線に沿って上蓋と本体を切り離した状態を示した前面図である。
【図6】縦開き式注ぎ口用扉を示した前面斜視図である。
【図7】スライド式注ぎ口用房を示した前面斜視図である。
【図8】縦開き式注ぎ口用扉を有する樽容器の前面斜視図である。
【図9】くの字に屈折した構造の可変傾斜板の上面板を示した上面図と側面図である。
【図10】スライド式の可変傾斜板の上面板を示した前面斜視図である。
【図11】図10の上面板の背面を拡大した図である。
【図12】くの字型の可変傾斜板を示した前面斜視図である。
【図13】図12のばねの領域を拡大した前面斜視図である。
【図14】図13のばねを示した側面断面図である。
【図15】ねじりばねを示した側面図である。
【図16】可変傾斜板を装着した樽容器の蓋を開けた状態を示した前面斜視図である。
【図17】可変傾斜板を装着した樽容器に、ワインが充填された包装袋を入れた状態を示した側面断面図である。
【図18】図17の包装袋のワインが少なくなってきた状態を示した側面断面図である。
【図19】縦置きの樽容器の外観を示した前面斜視図である。
【図20】縦置きの樽容器の外観を示した背面斜視図である。
【図21】発砲スチロール製の隆起台に包装袋を載せた状態を示した前面拡大図である。
【図22】発砲スチロール製の隆起台を示した前面斜視図である。
【図23】図22の隆起台を装着した樽容器の内部の要部を示した前面斜視図である。
【図24】図22の隆起台を装着した樽容器に、ワインが充填された包装袋を入れた状態を示した側面断面図である。
【図25】木板製の隆起台を示した前面斜視図である。
【図26】図25の隆起台を装着した樽容器に、ワインが充填された包装袋を入れた状態を示した側面断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 横置きの樽容器
2 正面の本体部分
3a,3b 注ぎ口固定用の穴
4a,4b 切り込み線
5a,5b 境界線(分割した辺)
6 縦開き式注ぎ口用扉
7 スライド式注ぎ口用扉
8a,8b 開閉のための金具
9a,9b 蝶番
10a,10b 扉板
11−1,11−2 丸棒
12 スタンド
13 可変傾斜板
14 上面板
14a 台形型の板
14b 長方形の板
14c 上面板の屈折角
15 スライド式上面板
15a 支点部の板
15b 先端部の板
16a−1,16a−2 金属板(レール部品)
16b−1,16b−2 金属板(レール部品)
17 凸状の形状
18 固定板
19 クリップ
20 ばね取り付け部分の拡大図
21 ばね
22,23 補強板
24 ねじりばね
25 アームの長さ
26 巻角度
27 許容ねじり角度
28 包装袋
29 注ぎ口
30 液体(ワイン)
31 縦置きの樽容器
32 立体状の隆起台
33 隆起台上面
34 注ぎ口側の上面の高さ
35 注ぎ口溶着部外輪の最上点
36 注ぎ口溶着部
37 注ぎ口反対側の上面の高さ
38 凹溝
39 凹溝の幅
40 凹溝の深さ
41 ワイン流出通路
42 木板製隆起台
43 木板製隆起台の上面
44 立脚板固定板
45−1,45−2 立脚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワインが入った、注ぎ口を有する液体包装袋を装填した液体包装袋用ワイン容器において、注ぎ口を固定する穴を上記液体包装袋用ワイン容器の低位置に設け、該穴より高い位置を境に上下に二分割して蓋と本体を作り、更に注ぎ口近傍において、上記本体の上側から凹状に該穴を上下に二分割するように切り取り、切り取った部分に扉を設けたことを特徴とする液体包装袋用ワイン容器。
【請求項2】
上記液体包装袋用ワイン容器内に、上記液体包装袋を支持し、ワインの量の減少に応じて傾斜角度を高める可変傾斜板を取り付けたことを特徴とする請求項1記載の液体包装袋用ワイン容器。
【請求項3】
上記液体包装袋用ワイン容器内に、上記注ぎ口固定用の穴との間に所定の間隔を有する凹溝を設け、該穴の高さより高い位置に上記液体包装袋を支持する上面を有する隆起台を設けたことを特徴とする請求項1記載の液体包装袋用ワイン容器。
【請求項4】
上記液体包装袋支持が上記請求項2または3いずれか1項記載のワイン入り液体包装袋用外装箱または容器。
【請求項5】
上記液体包装袋中の液体が酒類である請求項1から4のいずれか1項記載の液体包装袋用外装箱または容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−91334(P2007−91334A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309053(P2005−309053)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(596065429)
【Fターム(参考)】