説明

液体包装袋

【課題】需要者自身が、使用に際して、被包装物の種類や用途、好み等に合わせて注出口を選択することのできる液体包装袋を提案する。
【解決手段】積層フィルムを幅方向に折り返して、内側となるシーラント層の側縁どうしを縦方向にヒートシールすると共に、上側と下側をそれぞれ横方向にヒートシールしてなる包装袋であって、上側および下側の横シール部の、縦ヒートシールが施されていない側の折返し辺側縁部にそれぞれ、被包装物収納スペースに連通する、幅、長さおよび形状の少なくともいずれか1つが異なる狭幅の注出通路を設け、それらの注出通路の各内側縁部に向かって、上側横シール部の上端辺および下側横シール部の下端辺からそれぞれ、弧状または直線状の引裂き誘導疵を、上側および下側の横シール部分だけに形成し、上記引裂き誘導疵に沿う引裂きによって形成される液体注出口のそれぞれの吐出口断面積が異なる大きさとなるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状、ゼリー状等の飲食物、調味料その他各種の液状ないし粘稠状の飲食物、医薬品、化粧品等の流動性物質を充填包装してなる液体包装袋に関するものである。とくに、開封が容易で、その開封状態が良好で、開封後の被包装物の液だれや不測の漏れを十分に阻止することができると共に、使用に際し、被包装物の種類や使用者の好み等に合わせて被包装物の吐出量を選択することのできる複数の液体注出通路を設けてなる液体包装袋を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースフィルム層とシーラント層とを具え、液状ないしは粘稠状の被包装物を充填包装する液体包装袋は、図1に示すように、たとえば二軸延伸したエチレンービニルアルコール共重合体樹脂フィルムからなるベースフィルム層と、無延伸のエチレン−ビニルアセテート共重合体樹脂からなるシーラント層との積層フィルムを、自動充填製袋機によって、シーラント層が互いに向かい合わせになるように、幅方向の中央部位置にて二つ折りにした後、三方シールを施すことによって形成される。
【0003】
そして、液体包装袋からの被包装物の取り出しは、まず図1に示すところでは、液体包装袋20の縦シール部分21に設けたIノッチ22から、その包装袋20の引裂きを開始して、それによる袋の裂け目を、注出通路24を過ぎる位置まで進行させた状態にて、より好ましくは、その裂け目を、包装袋20を完全に横切る位置まで進行させた状態にして包装袋20を開封する。そして、一般には、包装袋20の被包装物収納スペース23を手・指等にて押圧して、注出通路24を開口させて、被包装物を流出させることにより行われる。
なお、一般に、Iノッチ22は、縦シール部分21に設けられるため、注出通路24も縦シール部分21側に形成される。
【0004】
しかし、上記従来の液体包装袋20は、それ自体が軟質であるため、被包装物の注出の際に包装袋20が意図しない変形をして被包装物がこぼれ出すおそれがあった。また、注出通路24は、横シール部分25と縦シール部分21によって区画形成されていて、注出通路24を形成する表裏のフィルム部分は、それらのシール部分21、25によって平坦形状に拘束されている。そのため、注出通路24には、横シール部分25と縦シール部分21との拘束によって平坦に重なり合おうとする力が作用して引裂き開口を閉じようとする傾向がある。そのため、従来の液体包装袋20は、注出通路24のフィルム同士が密着して、被包装物を注出し難いものにしている。一方で、収納スペース23を強く押さえると、逆に被包装物が勢いよく吐出して飛散し、手や衣類を汚してしまうという問題点があった。
【0005】
さらに、被包装物は、注出通路24から、縦シール部分21を超えて注出されることになるため、被包装物の注出時や、注出後に液体包装袋20を直立姿勢に戻す際に、被包装物が縦シール部分21を伝わり、液だれが発生し易いという問題があった。
【0006】
また、縦シール部分21に形成したIノッチ22と、注出通路24までの距離が短いため、液体包装袋20の取り扱い中に、それが破断してしてしまい、被包装物が漏れ出すことがあった。
【0007】
従来技術が抱える上記問題点を解決するため、発明者らは、特許文献1において、積層フィルムを、シーラント層が相互に対向するように幅方向に折返し、側縁どうしを縦方向にヒートシールすると共に、上端と下端とを横方向にヒートシールして得られる包装袋について、その上側横シール部の、縦ヒートシールが施されていない側の折返し辺側縁部に、被包装物収納スペースに連通する狭幅の注出通路を設けると共に、その上側横シール部の上端辺から前記注出通路の側端辺部に向かって、弧状または直線状の引裂き誘導疵を形成した液体包装袋を提案した。
【0008】
この特許文献1の液体包装袋によれば、被包装物の注出通路が、縦ヒートシールが施されていない側(積層フィルムの基端部側)に設けられているため、注出口部分はヒートシールの影響がなく、そのため、とくに圧力を加えてなくても、積層フィルムの復元力だけによって常にストロー状(楕円状)に開口した状態になり、そのため、被包装物の注出量を、その収納スペースの押圧によってコントロールすることができると共に、被包装物の注出の際の液だれや飛散を防止できるという効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4246760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上記特許文献1の液体包装袋をさらに改良し、需要者自身が、使用に際して、被包装物の種類や用途、好み等に合わせて注出量を選択することのできる複数の注出通路を有する液体包装袋を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える積層フィルムを幅方向に折り返して、内側となるシーラント層の側縁どうしを縦方向にヒートシールすると共に、袋を形造る上側と下側をそれぞれ横方向にヒートシールしてなる包装袋であって、上側および下側の横シール部の、縦ヒートシールが施されていない側の折返し辺側縁部にそれぞれ、被包装物収納スペースに連通する、幅、長さおよび形状の少なくともいずれか1つが異なる狭幅の上側注出通路および下側注出通路を設け、それらの上側注出通路および下側注出通路の各内側縁部に向かって、上側横シール部の上端辺および下側横シール部の下端辺からそれぞれ、弧状または直線状の引裂き誘導疵を、上側および下側の横シール部分だけに形成し、前記上側注出通路と下側注出通路とは、上記引裂き誘導疵に沿う引裂きによって形成される液体注出口のそれぞれの吐出口断面積が異なる大きさとなるように形成されていることを特徴とする液体包装袋を提供するものである。
【0012】
なお、本発明においては、
(1)異なる液体注出口を具える上側注出通路および下側注出通路は、そのいずれか一方の吐出口断面積が大きく、他方が小さい組み合わせであること、
(2)前記上側および下側の横シール部分に形成される引裂き誘導疵はいずれも、始端と上側横シール部上端辺または下側横シール部下端辺とのクリアランスが0.3〜1.0mmの範囲であるとともに、終端と上側注出通路または下側注出通路の各側端辺部とのクリアランスが0.3〜5.0mmの範囲であること、
(3)前記注出通路が設けられる、ヒートシールが施されていない側縁部は、三方シール袋、中央合掌シール袋または背貼りシール袋の折返し幅方向側端部であること、
(4)前記弧状に延びる引裂き誘導疵に沿う引裂きによって開口される注出通路の液体注出口が、包装袋の上側の横シール部上端辺または下側の横シール部下端辺と平行または、包装袋の折返し辺側縁部に向って上向き、または下向きに湾曲するように形成されていること、
(5)前記注出通路は、上側横シール部上端辺または下側横シール部下端辺に向かって次第に先細る円錐状であること、
(6)前記液体注出口の、ほぼ幅方向での寸法が0.3〜50mmであること、
が、より好ましい実施形態となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の液体包装袋によれば、被包装物の注出通路が、縦ヒートシールが施されていない側(積層フィルムの折返し基端部側)に設けられているため、注出口部分は、圧力を加えなくても、積層フィルムの復元力によって十分にストロー状(楕円状)に開口した状態になり、被包装物の注出量を、その収納スペースの押圧によってコントロールすることができる。しかも、この袋は、注出通路が注出口に向かって次第に狭幅となっているため、被包装物が注出通路に沿って常に一定方向に注出されるから、注出時に被包装物が飛散することがなく、また、被包装物の液引きが良く、注出時に液だれを発生するおそれがない。
【0014】
さらに、本発明の液体包装袋では、縦シールを施していない側の袋の側縁部に、注出通路を形成すると共に、上側横シール部にあるものと、下側横シール部にあるものとで、それぞれの注出通路の大きさを変えて、例えば大・小とし、引裂き誘導疵の引裂きによって各注出通路に形成される注出口の吐出断面積を、異なる大きさとなるようにすることにより、被包装物の種類や用途、それを使用する者の好み等に合わせて注出口(注出量)を、大小いずれか一方に選択して開封し、使用することができるようになる。
【0015】
また、本発明では、液体包装袋の引裂き誘導疵が、包装袋の上側横シールや下側横シール部の部分の中だけに設けられ、その始端が注出口部分から離隔して形成されている。しかも、その引裂き誘導疵の始端と上側横シール上端および下側横シール部下端とに0.3〜1.0mmのクリアランスを設けると共に、終端を注出通路の各側端辺部から0.3〜5.0mm離隔して設けることにより、包装袋の取り扱い中に、それが破断して被包装物が漏れ出すというようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の液体包装袋を示す平面図である。
【図2】本発明の液体包装袋の一の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の液体包装袋の他の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明の液体包装袋の引裂き誘導疵の形成方法を示す平面図である。
【図5】本発明の液体包装袋を構成する積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の液体包装袋に(a)突部、(b)ローレットシール部を形成した場合の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
図2は、本発明の液体包装袋の一実施形態を示すものであり、図中斜線を施した部分は、ヒートシール部分を示す。この液体包装袋5は、少なくともベースフィルム層とシーラント層とからなる積層フィルムを、たとえば、3方シールの場合であれば、積層フィルムのシーラント層が相互に対向するように幅方向で二つ折りした後、折返し辺側の端部である基端辺を除く各辺部分を三方シールして形成したものであり、上側横シール部6および下側横シール部9内に、曲線状の引裂き誘導疵10a、10bがそれぞれ形成されている。なお、本発明の液体包装袋は、図2の三方シール形態の包装袋の他、中央合掌シール形の包装袋や背貼りシール形の包装袋などヒートシールが施されることのない、少なくともいずれかの位置に折返し辺等を有する包装袋に適用することができる。
【0018】
上側横シール部6および下側横シール部9はいずれも、その包装袋の縦シールが施されていない基端辺7側である折返し辺側縁部に、角形形状の非シール部分を有し、この非シール部分が液体注出通路8a、8bとして形成されており、それぞれが袋本体の被包装物の収納スペース12と連通している。なお、液体注出通路8a、8bは、図視のように正面視で三角形状だけに限定されるものではなく、後述の方法によって形成される液体注出口11a、11bに向かって次第に狭幅となる形状であれば、台形状のようなものでもよい。これは、注出通路8a、8bを、液体注出口11a、11bに向かって先細形状とすることで、被包装物の押出し方向が一定となり、被包装物があたりに飛び散るようなことがなくなり、液だれ発生の抑制に有効だからである。これらの液体注出通路8a、8bは、縦シールのない基端辺7側の側端が三角形状に窪んだ形状からなる瓶口形ヒートシール刃を用いることにより形成することができる。ところで、ヒートシール目の形状としては、ベタシール、三線シール、布目シールなどを用いることができ、とくにシールの確実性と安全性の点から、ベタシール、三線シールを用いることが好ましい。
【0019】
ところで、本発明の液体包装袋5は、上記のように上側横シール部6と下側横シール部9の非縦シール側の折返し辺側縁部(基端辺)7に、それぞれに液体注出通路8a、8bを形成すると共に、それらの注出通路8a、8bの幅方向および/または長さ方向の大きさを、例えば、図2のように、上側横シール部6側の液体注出通路8aの幅を、下側横シール部9側の液体注出通路8bの幅よりも大きくして、異なる形状のものにするところに特徴がある。これによって、液体注出通路8a、8bに、後述するようにして形成される液体注出口11a、11bの吐出断面積に差をつけることができ、需要者自身が使用に際して、被包装物の種類や用途、好み等に合わせて、液体注出口11a、11bを選択し、さらには被包装物の注出量を調整することができる。しかも、注出量、注出速度、注出形態のコントロールを単に注出通路8a、8bの選択だけで、被包装物等に関係なく、同一の液体包装袋5を利用して実現することができるため、製造コストを低減することができる。
【0020】
前記のように液体注出通路8a、8bに形成される液体注出口11a、11bは、液体包装袋5の上側横シール部6上端および下側横シール部9下端をそれぞれ始端として、注出通路8a、8bの側端辺部に向かって形成された引裂き誘導疵10a、10bを、使用に際して引裂いて開封することで形成することができる。
【0021】
なお、引裂き誘導疵10a、10bは、それを境界として、上側横シール部6または下側横シール部9を両手指で把持し、テコの力を利用して引裂き誘導疵10に沿って手指で引裂くことで容易に開封することができる。そのため、上側横シール部6および下側横シール部9の縦長さ、すなわち幅は、手指で把持できる寸法、好ましくは20mm以上とする。なお、引裂き誘導疵10a、10bは、図2に示すような曲線状の他、図3に示すように直線状に設けてもよい。なお、図3はまた、下側横シール部9側の注出通路8bが、上側横シール部6側の注出通路8aよりも幅方向に大きい場合の実施形態を示すものである。
【0022】
このように、本発明では、注出口11a、11bが包装袋5の縦シールを施していない基端辺7側に設けられていることから、包装袋5に圧力を加えなくても、積層フィルムの、折り返し前の状態に復元しようとする力の助勢を得て、単に傾けるだけで、常にストロー状(楕円状)に開口された状態となり、さらに、注出通路8a、8bが注出口11a、11bに向かって次第に狭幅となっているため、被包装物が収納スペース12の押圧によって注出通路8a、8bに沿って、一定方向に滑らかに注出することができるようになる。したがって、従来のように液体注出時に被包装物が飛散し、手指や衣類を汚すことがない。
【0023】
さらに、本発明の液体包装袋5は、被包装物がその表面張力の働きにより、包装袋5の傾倒によっても注出通路8a、8bから漏れ出すことがなく、また、注出量を、収納スペース12の指圧コントロールによって調整することができる。
【0024】
また、従来のように被包装物が縦シール部を超えて注出されるのではなく、注出口先端から直接、注出されるため、被包装物が縦シール部を伝わることによる液だれの発生がない。
【0025】
さらに、包装袋5の引裂き誘導疵10a、10bは、包装袋5の上側横シール部6および下側横シール部9内だけに設けられ、その始端と上側横シール部6上端、下側シール部9下端との間に0.3〜1.0mmのクリアランスを有する一方、終端が注出通路8a、8bの各側端辺部から0.3〜5.0mm離隔して設けられているため、包装袋5の取り扱い中に、それが破断して被包装物が不測に漏れ出すおそれがない。
【0026】
なお、引裂き誘導疵10a、10bの始端と、上側横シール部6上端、下側横シール部9下端との間には、0.3〜1.0mmのクリアランスを設けることにより、包装袋5が移動、梱包、輸送などの取り扱い中、とくに連続包装袋をミシン目を介して1袋づつ、もしくは所要の数袋毎に切り離す際に、誘導疵10a、10bが不測に破断し、被包装物が漏れ出すのを防ぐことができる。なお、クリアランスが0.3mmより小さい場合には、上記効果が期待できず、一方、1.0mmよりも大きい場合には、引裂き誘導疵10a、10bの始端において包装袋5が切り取れず、手指により開封することができない。
【0027】
また、引裂き誘導疵10a、10bの終端は、液体注出通路8a、8bとのクリアランスがそれぞれ、0.3〜5.0mmになるようにすることが好ましく、これは、クリアランスが0.3mmより小さい場合、包装袋5が移動、梱包、輸送などの取り扱い中に、それ自身の落下衝撃や積み重ね荷重などを受けたりすることによって誘導疵10a、10bが不測に破断し、被包装物が漏れ出すおそれがあり、一方、クリアランスが5.0mmよりも大きい場合には、引裂き誘導疵10a、10bの終端において包装袋5が切り取れず、手指による開封ができない。
【0028】
また、本発明の液体包装袋5を連続包装袋の状態で製造する場合においても、引裂き誘導疵10a、10bの始端がそれぞれ、上側横シール部6上端および下側横シール部9下端の中程に位置しているため、自動充填包装中に引裂き誘導疵10a、10bの始端がロール等に引っ掛かり、誘導疵10a、10bが破断してしまうようなことがない。さらに、縦シール部より横一直線に形成した従来の誘導疵よりも、折れ曲がり難く、移動中にちぎれてしまうようなこともない。
【0029】
なお、引裂き誘導疵10a、10bは、積層フィルムの幅方向へ−(マイナス)状に延在させて設けた一本の疵、ミシン目状に穿設した複数の疵、その幅方向に間隔をおいて設けた複数の小孔状の疵、あるいはレーザ光線等をもって連続的もしくは間欠的に設けた溶融痕などの、適宜の形状および数の疵にて形成することができ、このような引裂き誘導疵の、深さ、積層フィルムの幅方向での長さ、その他の寸法は、積層フィルムの厚さ、積層フィルムの構成材料などに応じて選択する。
【0030】
本発明では、引裂き誘導疵10a、10bによる引裂きによって形成される液体注出口11a、11bの、ほぼ幅方向での寸法は、0.3〜50mmの範囲とすることが好ましく、この寸法は、被包装物の種類や粘性等によって適宜決定する。ここにおける「ほぼ幅方向」とは、本発明において包装袋に形成する引裂き誘導疵を、上向きに傾斜して形成する場合を考慮したものである。なお、注出口11a、11bを0.3〜50mmに限定する理由は、0.3mmより小さい場合には、注出量が少なすぎてしまい、50mmを超えると包装袋が傾倒等した際に、被包装物の表面張力以上の力が働くことになって、注出口11a、11bから被包装物が漏れ出したり、指圧のコントロールによる注出量の調整ができなくなってしまうためである。
【0031】
とくに、図2のように引裂き誘導疵10a、10bが曲線状の場合では、引裂き誘導疵10a、10bを引裂いて開封することにより開口される注出口11a、11bが、液体包装袋5の幅方向に対して水平に(図4(a))、もしくは、終端に向かって上向き(誘導疵10a)または下向き(誘導疵10b)に湾曲する(図4(b))ように設けることが好ましく、このように注出口11a、11bを、液体包装袋5の幅方向に対して水平もしくは上向き・下向きに湾曲させて形成すると、被包装物の液引きがよく、とくに上向き・下向きに湾曲している場合(図4(b))には、注出口11a、11bの先端が細く(鋭く)なるため、別の容器に移し替える場合等にこぼれ難いという効果が期待できる。
【0032】
ところで、本発明の液体包装袋5は、図5に概略断面図を一例として示した積層フィルムを用いて形成することができる。ここで、積層フィルム1は、ベースフィルム層2とシーラント層3からなり、必要に応じて、ベースフィルム層2とシーラント層3の間にバリア層となる中間層4を設けてもよい。なお、この積層フィルム1は、ベースフィルム層2、シーラント層3および中間層4を、たとえば押出しラミネートまたはドライラミネートにより積層して形成する。
【0033】
上記ベースフィルム層2としては、一軸もしくは二軸延伸のエチレンビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドもしくは塩化ビニリデン等の合成樹脂フィルムから構成されることが好ましく、これらは優れた水蒸気不透過性および、高いガスバリア性を発揮することができる。
【0034】
なかでも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層は、直線カット性ポリエステルフィルムである「エンブレットPC」(商標ユニチカ株式会社)を用いることが、また、二軸延伸ナイロンフィルム層とするときは、直線カット性ナイロンフィルムである「エンブレムNC」(商標ユニチカ株式会社)を用いることが、以下の理由により好適である。
すなわち、これらによれば、一軸延伸ベースフィルム層を用いる場合に比してより高い水蒸気不透過性、ガスバリア性等を付与することができる他、引裂き開封部分の、手指による、直線的な引裂き除去を円滑かつ容易にし、しかも、引裂き開口を、毛羽立ち等のない十分平滑なものとすることができる。
【0035】
また、シーラント層3として、ポリエチレン層またはポリプロピレン層を用いれば、比較的低い温度のヒートシール温度で優れたシール強度を発揮することができる。
【0036】
また、中間層4は、包装袋として必要とする性質、たとえば水蒸気不透過性やガスバリア性、腰度などを向上させるために適宜、積層させることが好ましく、SiO2蒸着層、塩化ビニリデンコーティング層、酸化アルミニウムコーティング層、Al蒸着層あるいはSiO2やAl、Al2O3などのスパッタリング層などが好適である。
【0037】
さらに、本発明においては、図6に示すように、引裂き誘導疵10a、10bの始端を隔てた位置に、突部13(図6(a))または、ローレットシール部14(図6(b))を対にして設けることが好ましい。この突部13またはローレットシール部14は、包装袋5を、引裂き誘導疵10aまたは10bを境界として、上側横シール部6または下側横シール部9を両手指で把持し、テコの力を利用して引裂き誘導疵10aまたは10bの始端から手指で引裂き開封する際に、手指が滑ることを防止するという効果と共に、引裂き誘導疵10a、10bの始端を、触覚をもって検知することが可能となり、たとえ目が不自由な人でもその位置を、簡易迅速に見つけ出すことができるという効果がある。
【0038】
したがって、突部13またはローレットシール部14は、上側横シール部6および下側横シール部9上の、両手指で把持する位置、即ち、引裂き誘導疵10a、10b始端付近を境界として、その両側に対で設けることが好ましい。なお、突部13は、引裂き誘導疵10a、10bの両側に複数対形成してもよく、また、ローレットシール部14のそれぞれの大きさは、少なくとも手指で把持できる大きさ、例えば10mm(上側・下側横シール部長さ方向)×5mm(上側・下側横シール部幅方向)程度であればよい。
【0039】
突部13は、円形、三角形、四角形、多角形など様々な形状とすることができる。この突部13の形成方法は、上側横シール部6および下側横シール部9を形成するための、横ヒートシールロールの一方のヒートシール刃表面に、そのフィルム幅方向に間隔をおいて位置する二個一対の、上記形状からなる凹部を、また他方のヒートシール刃に、それらの凹部と対応して位置するそれぞれの凸部を設けることにより、両ヒートシール刃間を通過した包装用フィルムに、上側横シール部6および下側横シール部9の形成と同時に、突部13を形成することによる。同様に、ローレットシール部14も、上記一対の横ヒートシール刃のそれぞれの表面に、ローレット状の粗面を形成しておくことで、特別な工程を付加することなしに形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明に係る液体包装袋は、醤油、ソース、各種の調味料類、スープ類、清涼飲料、アルコール飲料、果汁類、その他の粉粒状物を含むことのある液状ないし粘体状の飲食物、洗剤、医薬品等を包装するのに用いられる包装袋として使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 積層フィルム
2 ベースフィルム層
3 シーラント層
4 中間層
5、20 液体包装袋
6 上側横シール部
7 基端辺
8a、8b、24 液体注出通路
9 下側横シール部
10a、10b 引裂き誘導疵
11a、11b 注出口
12、23 収納スペース
13 突部
14 ローレットシール部
21 縦シール部分
22 Iノッチ
25 横シール部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える積層フィルムを幅方向に折り返して、内側となるシーラント層の側縁どうしを縦方向にヒートシールすると共に、袋を形造る上側と下側をそれぞれ横方向にヒートシールしてなる包装袋であって、
上側および下側の横シール部の、縦ヒートシールが施されていない側の折返し辺側縁部にそれぞれ、被包装物収納スペースに連通する、幅、長さおよび形状の少なくともいずれか1つが異なる狭幅の上側注出通路および下側注出通路を設け、
それらの上側注出通路および下側注出通路の各内側縁部に向かって、上側横シール部の上端辺および下側横シール部の下端辺からそれぞれ、弧状または直線状の引裂き誘導疵を、上側および下側の横シール部分だけに形成し、
前記上側注出通路と下側注出通路とは、上記引裂き誘導疵に沿う引裂きによって形成される液体注出口のそれぞれの吐出口断面積が異なる大きさとなるように形成されていることを特徴とする液体包装袋。
【請求項2】
異なる液体注出口を具える上側注出通路および下側注出通路は、そのいずれか一方の吐出口断面積が大きく、他方が小さい組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の液体包装袋。
【請求項3】
前記上側および下側の横シール部分に形成される引裂き誘導疵はいずれも、始端と上側横シール部上端辺または下側横シール部下端辺とのクリアランスが0.3〜1.0mmの範囲であるとともに、終端と上側注出通路または下側注出通路の各側端辺部とのクリアランスが0.3〜5.0mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体包装袋。
【請求項4】
前記注出通路が設けられる、ヒートシールが施されていない側縁部は、三方シール袋、中央合掌シール袋または背貼りシール袋の折返し幅方向側端部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項5】
前記弧状に延びる引裂き誘導疵に沿う引裂きによって開口される注出通路の液体注出口が、包装袋の上側の横シール部上端辺または下側の横シール部下端辺と平行または、包装袋の折返し辺側縁部に向って上向き、または下向きに湾曲するように形成されていることを特徴とする請求項1〜4にいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項6】
前記注出通路は、上側横シール部上端辺または下側横シール部下端辺に向かって次第に先細る円錐状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項7】
前記液体注出口の、ほぼ幅方向での寸法が0.3〜50mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17118(P2012−17118A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154619(P2010−154619)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000206233)大成ラミック株式会社 (56)
【Fターム(参考)】