説明

液体化粧料塗布容器

【課題】力の入れ加減に拘わらず、一定幅の塗布線で塗布を行うことができる液状化粧料塗布容器を提供する。
【解決手段】液状化粧料を収容するタンク室17が内部に設けられる軸筒12,14と、軸筒の先端側に配置された塗布体22と、を備え、塗布体22は、タンク室17と連通可能となった貫通孔24aを備えるチップ24と、チップ24の貫通孔24aの先端部において転動可能に保持されて、その一部がチップ先端から突出するボール26と、から構成されて、ボール26の転動によって、液状化粧料がボール26とチップ24の貫通孔24aの内壁面との間の隙間から滲出されて、塗布に供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイライナ等の液状化粧料を供給する液状化粧料塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液状化粧料塗布容器としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の液状化粧料塗布容器においては、軸筒の後端開口部より、化粧料の塗布体と、この塗布体に密接する中継芯を固持してなるアジャスタを軸筒先端内に後方より挿入して、アジャスタの後端を軸筒内で係止固定すると共に、軸筒後端開口部を尾栓によって密封閉塞して、化粧料の貯留部を形成している。
【0004】
ここで、特許文献1には、塗布体の材料についての詳細な開示はないものの、塗布体は、先端を尖らせたシャフトからなっている。
【0005】
一般的に、液状化粧料塗布容器の塗布体は、化粧料を塗布する皮膚に負担のないものが好ましく、従来の塗布体は、軟質のブラシや、樹脂糸を固めて先端を尖らせた形状に研磨した軟質のシャフトから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2557614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる従来の液状化粧料塗布容器においては、塗布体が軟質のブラシやシャフトから構成されているために、力の入れ加減によって塗布線の幅が変化するという問題がある。この液状化粧料塗布容器は、顔といった非水平な立体的な表面に塗布するのに使用されることが一般的であり、軸筒を把持して塗布するときの手の姿勢自体が不安定であるため、力の入れ加減を一定にすることは困難であり、そのため、一定の幅で化粧料を塗布することができずムラが出来て、細かい化粧作業を行うことが容易でないという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、塗布線を常に一定にして塗布を行うことができる液状化粧料塗布容器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、
液状化粧料を収容するタンク室が内部に設けられる軸筒と、
軸筒の先端側に配置された塗布体と、
を備える液状化粧料塗布容器において、
塗布体は、タンク室と連通可能となった貫通孔を備えるチップと、チップの貫通孔の先端部において転動可能に保持されて、その一部がチップ先端から突出するボールと、から構成されて、ボールの転動によって、液状化粧料がボールとチップの貫通孔の内壁面との間の隙間から滲出されて、塗布に供されることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記チップは、プラスチック製であり、前記ボールは、セラミックス製であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記タンク室と前記ボールとの間には、液状化粧料が浸透して液状化粧料を誘導可能となった誘導部材が設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記タンク室内に外圧が加わりタンク室内から液状化粧料が溢れ出た場合に溢れ出た液状化粧料を貯留する貯留部が前記タンク室と前記塗布体との間に設けられ、貯留部には多数のフィンが形成されており、隣り合うフィン同士の間隔が0.1mm〜0.2mmに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボールの転動を利用して液状化粧料が滲出されるようになっているので、力の入れ加減に影響を受けることなく、塗布幅はボールの径によって一定に制御することができる。
【0014】
従って、力の入れ加減を気にすることなく使用することができるので、使い勝手が良く、細かい化粧作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る液状化粧料塗布容器の全体縦断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1の液状化粧料塗布容器のキャップを取り外して使用した状態を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態を表す。図に示すように、本発明による液状化粧料塗布容器10は、使用者によって把持されて、液状化粧料が内部に収容される後筒12を備える。後筒12内には、その前方から前筒14の後部が圧入される。
【0018】
前筒14には、その外周面に鍔部14aが形成されており、鍔部14aよりも後部が後筒12内に前方から挿入される。前筒14の後端は尾栓16によって閉塞されることで、前筒14と尾栓16とによってタンク室17が形成され、このタンク室17内に液状化粧料が収容される。液状化粧料としては、アイライナのような顔料を含む顔料水性インキ等を使用することができる。また、その粘度は、2−20cp程度のものとすることができる。液状化粧料は、液体に限らず、チキソトロピー性を持ったゲル状の化粧料とすることも可能である。タンク室17内には、液状化粧料を攪拌するためのボール19が配設される。
【0019】
前筒14の鍔部14aよりも前部は、前方に向かって漸次縮径したテーパ部となっており、その前方端は、先端開口14bを画成している。
【0020】
以上の後筒12と前筒14とで軸筒が構成される。これらの前筒14と後筒12とは別体部品となっているが、これらを一体部品として形成することも可能であり、液状化粧料は後筒12内に直接収容することとしてもよい。
【0021】
前筒14の内部前方には、タンク室17内から溢れ出た液状化粧料を貯留する貯留部18aを備えたアジャスタ筒18が挿入される。前筒14の内周面には、環状突起14cが形成されており、環状突起14cがアジャスタ筒18に形成された環状溝18bに嵌合することで、アジャスタ筒18が前筒14内で固定される。貯留溝18aは、蛇腹状に多数のフィン18dを有しており、隣り合うフィン18d同士の間に形成された隙間に毛細管力で液状化粧料を保持可能となっている。好ましくは、隣り合うフィン同士18dの幅は、0.1mm〜0.2mmに設定すると、適度な毛細管力を発揮することができる。
【0022】
アジャスタ筒18の貫通孔18e内には誘導部材としての中継芯20が貫通している。中継芯20の後端部は、アジャスタ筒18の後鍔部18cよりも後方に延びて、タンク室17内に突出する。中継芯20は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等からなる繊維芯で構成することができ、その内部を液状化粧料に浸透させて液状化粧料を誘導するようになっており、タンク室17内の液状化粧料は中継芯20内を伝わって前方へと誘導される。図2に示したように、アジャスタ筒18の貫通孔18eには、前記貯留部18aに連通するための連通窓18fが形成されている。このため、タンク室17内に外圧が加わり、外気との圧力差が高まって、タンク室17から大量の液状化粧料がアジャスタ筒18の貫通孔18e内へと溢れ出したときに、液状化粧料が毛細管力によって連通窓18fを通り貯留部18aに一時的に貯留されて、液状化粧料の外部への溢れ出しを防止できるようになっている。
【0023】
前筒14の先端開口14bには、塗布体22が設けられる。塗布体22は、貫通孔24aを備えるチップ24と、チップ24の先端において転動可能に保持されて、その一部がチップ24の先端から突出するボール26と、から構成される。塗布体22のチップ24の後端が、前記アジャスタ筒18の先端内に圧入されて、チップ24の段部24bが前筒14の先端開口14bの周囲面に当接することで、塗布体22は、前筒14に固定される。チップ24の段部24bよりも前部は、前方に向かうにつれて漸次縮径されたテーパ部となっている。
【0024】
チップ24の貫通孔24aの先端部は、縮径されて内周面に液状化粧料が流通するための複数のチャンネル24cが形成された縮径部24dと、ボール26を収容・保持するべく縮径部24dより拡径されたボールハウジング24eを備える。
【0025】
チップ24の貫通孔24a内には前記中継芯20の前端が挿入されており、中継芯20の先端は縮径部24dにまで達して、そこでボール26に接触するか、または液状化粧料の表面張力等により液状化粧料が中継芯20からボール26へと伝達することが可能な距離として、中継芯20の先端とボール26との間に0〜0.5mm程度の隙間が設定されている。好ましくは、0.01〜0.1mm程度の隙間が設定されるとよい。または、液状化粧料の表面張力等によっては0.5mm以上の隙間を設けることも可能である。いずれにおいても、中継芯20を介してチップ24の貫通孔24aは、タンク室17と連通可能である。
【0026】
チップ24及びボール26は、ステンレス等の金属を含む任意の材料から構成することができるが、好ましくは、チップ24はプラスチック製とし、ボール26はセラミックス製とすると、皮膚のような被塗布面に塗布体22が接触したときに、不快感を与えず、被塗布面に対してなじみが良くて、好適である。
【0027】
また、ボール26の直径は、用途に応じて選択可能であり、例えば、アイライナに適用する場合には、0.8mm〜1.0mm程度とするとよい。
【0028】
不使用時に塗布体22を乾燥から保護するために、前筒14の前部には着脱可能にキャップ28が被着される。
【0029】
以上のように構成される液状化粧料塗布容器10においては、使用時に、図3に示すようにキャップ28を取り外して、被塗布面に対して塗布体22を当てて移動させる。これによって、ボール26が転動し、タンク室17から中継芯20を通過し、ボール26の転動と共にボール26とチップ24の貫通孔24aの内周面との間から液状化粧料が滲出され、被塗布面へと供給される。
【0030】
液状化粧料塗布容器としてアイライナに適用した場合、被塗布面は、目の周囲の領域となり、非水平で、且つ立体的に湾曲した面となる。このような非水平な面に塗布する場合、軸筒を握った手を安定的に支持させることが困難であるので、被塗布面に対して与える圧力も不安定になりがちである。その一方で、アイライナは目の縁どりを行うことが目的であるから、一定の幅で塗布することが望ましい。
【0031】
本発明の塗布体22では、力の加減に拘わらず、ボール26の径で決まる線幅に塗布することができるので、手の姿勢がどのようなものであっても、塗布幅を一定に制御することができる。
【0032】
また、目の周囲の領域または顔のようなほぼ鉛直の面に塗布する場合は、塗布体22が下向きになっておらず、よって、タンク室17内の液状化粧料が、塗布体22に伝わらないおそれがある。しかしながら、中継芯20を介して液状化粧料が塗布体22に伝わるようになっているために、中継芯20に既に吸引されている液状化粧料を塗布体22から供給することができ、塗布のかすれ等を防ぐことができる。
【0033】
また、以上の例では、中継芯20のみによって誘導部材を構成していたが、中継芯20と液体吸収材を組み合わせて誘導体とすることも可能である。液体吸収材としては、スポンジのような多孔質のエラストマーから構成することができる。
【0034】
尚、以上の実施形態では、直液式であり、直接タンク室内に液状化粧料を収容していたが、これに限るものではなく、中綿のような吸収体に液状化粧料を吸収させてタンク室に収容してもよい。
【0035】
以上の実施形態において複数の部材で構成した部品を単一部材で構成することも可能であり、または単一の部材で構成した部品を複数の部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 液状化粧料塗布容器
12 後筒(軸筒)
14 前筒(軸筒)
17 タンク室
18a 貯留部
18d フィン
20 中継芯(誘導部材)
22 塗布体
24 チップ
24a 貫通孔
26 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化粧料を収容するタンク室が内部に設けられる軸筒と、
軸筒の先端側に配置された塗布体と、
を備える液状化粧料塗布容器において、
塗布体は、タンク室と連通可能となった貫通孔を備えるチップと、チップの貫通孔の先端部において転動可能に保持されて、その一部がチップ先端から突出するボールと、から構成されて、ボールの転動によって、液状化粧料がボールとチップの貫通孔の内壁面との間の隙間から滲出されて、塗布に供されることを特徴とする液状化粧料塗布容器。
【請求項2】
前記チップは、プラスチック製であり、前記ボールは、セラミックス製であることを特徴とする請求項1記載の液状化粧料塗布容器。
【請求項3】
前記タンク室と前記ボールとの間には、液状化粧料が浸透して液状化粧料を誘導可能となった誘導部材が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の液状化粧料塗布容器。
【請求項4】
前記タンク室内に外圧が加わりタンク室内から液状化粧料が溢れ出た場合に溢れ出た液状化粧料を貯留する貯留部が前記タンク室と前記塗布体との間に設けられ、貯留部には多数のフィンが形成されており、隣り合うフィン同士の間隔が0.1mm〜0.2mmに設定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液状化粧料塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81699(P2013−81699A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224858(P2011−224858)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000156134)株式会社壽 (69)
【Fターム(参考)】