説明

液体収容容器、画像形成装置、液体収容容器の組み付け方法

【課題】サブタンクの弁座部材の内径ゆがみを低減してリークの発生を低減することができる液体収容容器を提供する。
【解決手段】インク収容する容器本体の内外を連通する連通路に配置された環状の弁座223及び弁座223を内側から押圧付勢されて封止する弁体224を有する弁手段と、弁座223の少なくとも外周面を保持する保持部材となるホルダとを備え、弁座223は、弾性部材であり、かつ、ホルダで保持される外周部分401の少なくとも一部の硬度が、弁体224が当接する部分402の硬度よりも高く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器、画像形成装置、液体収容容器の組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出する装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
このような液滴を吐出する装置を備えて画像を形成する画像形成装置においては、キャリッジ上に記録ヘッドに記録液を供給する小容量の液体収容容器であるサブ(ヘッドタンク、バッファタンクと称されるものを含む。)を搭載し、大容量のメインカートリッジ(メインタンク)を装置本体側に設置し、ヘッドタンクに装置本体側のメインカートリッジから記録液(インク)を補充供給するようにした装置、あるいは、記録ヘッドとともに交換可能に記録液収容容器であるインクカートリッジを搭載するようにした装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−043289号公報
【特許文献2】特開2002−086748号公報
【特許文献3】特開2005−138472号公報
【特許文献4】特開2007−210231号公報
【0006】
ところで、一般的なサブタンクを用いる画像形成装置にあっては、メインタンクからサブタンクへインクを供給する供給チューブや、サブタンク内の圧力変動を抑制するためのダンパーとなる可撓性フィルム状部材が設けられているが、これらは、長期使用によって徐々に空気が透過し、やがてサブタンク内に空気が蓄積することになり、また、メインタンクの脱着によってもわずかながら空気が入り込み、これがインクとともにサブタンクに供給されることでサブタンク内に空気が入り込む。
【0007】
ここで、例えば特許文献3もしくは4には、ケース(容器本体)に装着され、先端部に大気開放穴を介して容器本体の空気流路と連通する大気開放穴が形成されたホルダと、ホルダ内に設けられ、大気開放穴と空気流路とを連通する弁座と、弁座に当接または離隔するように移動する弁体であるボールと、ボールを弁座に当接するように付勢するコイルスプリングと、ホルダ内に設けられるとともに一端部が大気開放穴から外方に突出し、他端部がボールに対向する押圧ピンとを備えた大気解放機構を有し、押圧ピンを外部の駆動ユニットで作動される大気開放ピンにより押圧することで、大気開放機構を開放状態にするようにしたサブタンクが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記サブタンクの構成において、弁座を組み付ける際に、弁座は半径方向と面方向に圧縮されるため、ホルダ部材と弁座の中心が完全に合っていないと、内周側がゆがんでしまう現象が発生する。弁座の内周側にゆがみが生じると、ボールの当接が不完全になりリークの発生に伴い、タンク内の負圧が維持されず、インク吐出異常となるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、弁座部材の内径ゆがみを低減してリークの発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体収容容器は、
液体を収容する容器本体の内外を連通する連通路と、
前記連通路に配置された環状の弁座部材及びこの弁座部材を内側から押圧付勢されて封止する弁体を有する弁手段と、
前記弁座部材の少なくとも外周面を保持する保持部材と、を備え、
前記弁座部材は、弾性部材であり、かつ、前記保持部材で保持される外周部分の少なくとも一部の硬度が、前記弁体が当接する部分の硬度よりも高く形成されている
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弁座部材のゆがみが低減し、確実に弁体で封止することができて連通路からのリークが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】本発明に係る液体収容容器(サブタンク)の一例の説明に供するヘッド部分の斜視説明図である。
【図4】同じくサブタンク本体(容器本体)の側面説明図である。
【図5】同じく分解斜視説明図である。
【図6】同容器の大気解放機構の平断面説明図である。
【図7】同じく要部斜視説明図である。
【図8】同じく要部拡大説明図である。
【図9】同じく弁座組み付け時の説明に供する説明図である。
【図10】同じくホルダの他の例を示す側面説明図である。
【図11】同じくピン部材を用いる場合の弁座組み付け時の説明に供する説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態における大気開放機構部分の平断面説明図である。
【図13】同大気開放機構の弁座の一例を説明する断面説明図である。
【図14】同じく弁座の他の例を説明する断面説明図である。
【図15】図13の弁座の成型の説明に供する説明図である。
【図16】弁座のゆがみの説明に供する断面説明図である。
【図17】同じく弁座のゆがみの説明に供する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0014】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0015】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0016】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0017】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0018】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0019】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0020】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0021】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0022】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0023】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0024】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0025】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0026】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0027】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0028】
次に、この画像形成装置におけるサブタンクに適用する本発明に係る液体収容容器(サブタンク)の一例について図3ないし図5を参照して説明する。なお、図3はヘッド部分の斜視説明図、図4は同じく側面説明図、図5はサブタンク本体(容器本体)の分解斜視説明図である。
【0029】
ヘッド部分は、1つの記録ヘッド34と、1つの記録ヘッド34の2つのノズル列にそれぞれ異なる色のインクを供給するためサブタンク35と、サブタンク35と記録ヘッド34との間に介在させたフィルタユニット101とで構成され、記録ヘッド34からは記録ヘッド34のアクチュエータ手段を駆動する信号を伝達するためのフレキシブルケーブル102(符号に「A」、「B」を付加して図示する。)が引き出されている。
【0030】
サブタンク35は、容器本体(タンク本体)202の両側にそれぞれ液体収容部である2つのインク収容部201を形成し、これらのインク収容部201の開口には可撓性を有するフィルム状部材(可撓性フィルム状部材)211を接着又は溶着などで貼り付けて封止し、更にインク収容部201内部にはタンク本体202とフィルム状部材211との間にフィルム状部材211を外方に付勢するための弾性部材であるバネ(スプリング)212を配設し、これらのフィルム状部材211及び弾性部材212によって負圧発生機構を構成している。また、容器本体202にはフィルム状部材211の変位に応じて変位する負圧検知レバー213を揺動可能に装着している。
【0031】
また、タンク本体202の上部にはインク収容部201を大気に開放するための大気開放通路203を形成し、この大気開放通路203を開閉する大気開放機構204を備えている。
【0032】
また、タンク本体202にはインク収容部201にインクを供給するためのインク供給口部207を形成し、チューブ36が連結部材208で連結される。また、容器本体202の上部にはインク収容部201内のインクを検出するための2本の検知電極216が設けられている。
【0033】
ここで、タンク本体202の底面には、インク収容部201A、201Bからフィルタユニット101に個別的にインクを供給するための供給口217をそれぞれインク収容部201の端部に形成し、また、供給口217を中央部分に配置するためにインク収容部201には他方の収容部に膨らんだ膨出部218を形成している。
【0034】
次に、このサブタンク35における大気開放機構について図6ないし図8をも参照して説明する。なお、図6は同大気解放機構部分の平断面説明図、図7は同じく要部拡大図、図8は同じく要部斜視説明図である。
この大気解放機構204は、容器本体202の上部に側方に大気連通路203に通じ、容器本体202の内外を連通する大気開放路220を形成した中空のホルダ取付部221を一体的に形成している。
【0035】
そして、このホルダ取付部221の外端面には、弁座部材(以下「弁座」という。)223をホルダ取付部221に装着したホルダ222との間で挟み持って保持し、大気開放路220内には弁座223に押し付ける方向に加圧手段であるコイルスプリング225で押圧付勢した弁体としてのボール224を収納している。これらの弁座223、ボール224及びコイルスプリング225によって大気開放路220を開閉可能な弁手段を構成している。なお、弁座223の両面にはシール部材226を介在させている。また、図6中では、大気解放機構204Aは大気開放路220を開放している状態、大気開放機構204Bは大気開放路220Bを閉じている状態を図示している。
【0036】
ここで、保持部材としてのホルダ222は、ホルダ取付部221に装着するとともに弁座223の外周を保持する装着部231及び押圧部材である開放部材241を保持し、大気開放路220の出口を形成する部分である保持部232を有し、装着部231の外周部に形成した切り欠き部222aをホルダ取付部221に設けた突起221aに嵌め合わせることでホルダ取付部221に装着している(図3参照)。また、このホルダ222の装着部231の外周面には切り欠き部222aを設けることによる強度低下を補うための補強用のリブ231aを形成している。
【0037】
そして、このホルダ222の保持部232にはボール224をコイルスプリング225の付勢力に抗して押圧することで弁手段を開放状態にし、大気開放路220を保持部232で形成される出口部分を介して大気に開放するための押圧部材である開放部材241を進退可能に装着している。
【0038】
この開放部材241は、ホルダ222の保持部232に挿通されて弁手段を構成するボール224を押圧する押圧部242と、この開放部材241を外部から押圧する部材である大気開放ピン部材251で押圧される受け部243と、大気開放通路220の出口部分となる保持部232の開口部(中空部)を覆う覆い部244を有している。なお、この開放部材241の押圧部242は、図8に示すように、側面部242aを切り欠いてホルダ223内周面との間に大気開放用の流路を確保している。
【0039】
次に、開放部材241とホルダ222とは、ホルダ222の保持部232の外周面に形成した凸部233と、開放部材241の覆い部244に形成した凹部245とを嵌め合わせることで、開放部材である開放部材231が弁手段を構成するボール225を押圧する方向に移動可能で保持部232から外れない状態で装着されている。
【0040】
この構成では、図7(a)に示すように、ホルダ222の保持部232に開放部材241の押圧部242を差し込んで矢示方向に押し込むことにより、開放部材241の覆い部244がホルダ222の凸部233に乗り上げながら押し込まれて、同図(b)に示すように、ホルダ222の凸部233が開放部材241の凹部245に嵌まり込み、開放部材241はコイルスプリング225の付勢力で押されるがホルダ222から外れることが防止されるとともに、凹部245の長さ分だけ矢示方向に移動可能となって弁体であるボール224を押し込んで開放することができる状態になる。
【0041】
次に、このサブタンク35の大気開放機構204における弁座223の組み付け時のゆがみの発生について図16及び図17を参照して説明する。なお、図16は弁座の中心ズレによる半径方向のつぶれの模式的説明図、図17は同じく弁座の中心ズレによる厚み方向のつぶれの状態を示す模式的説明図である。
【0042】
前述したように弁座223はホルダ222の中に嵌め込まれるが、ホルダ222の内径と弁座223の外径は、組付性を優先すると、ホルダ222の外径の方を僅かに大きくすることが好ましい。この場合、半径方向において弁座223のつぶれは、径の差による隙間301が発生するため、内径に対して均一なつぶれ方をしない。
【0043】
つまり、弁座223がホルダ222に外周の一部で接触している場合、ホルダ222をホルダ取付部221に装着するとき、ホルダ取付部221によって弁座223は面方向で潰されるが、ホルダ222の内周面に接している面223aは外方向へのつぶれが規制され、内周面側が内方向(矢示A方向)に潰れる。他方、ホルダ221の内周面に接していない面223bは、外方向(矢示B方向)と内方向(矢示C方向)につぶれる。これにより、弁座223の内周側のゆがみが発生する。
【0044】
また、図17に示すように、ボール224の位置により、弁座223の内径の位置が倣おうとするため、弁座223の内周側が斜めになろうともして、内周側ゆがみが発生する。
【0045】
そこで、この実施形態においては、図8に示すように、押圧部材としての開放部材241の押圧部242には、弁座223の内径D1よりも小さい外径D2を有して弁座223内を進退する第1部分242aと、弁座223の内径D1と略同じ外径D3を有する第2部分242bとを形成して、更に開放部材241の押圧部242の第2部分242bを弁座223内に嵌め込み可能な位置まで押し込める状態で配置している。
【0046】
具体的には、装置の通常動作の場合、開放部材241は押圧ピン部材251で押されたとき、図6の位置Eから位置Fまでしか移動せず、ホルダ222の端面との間に距離Lだけの隙間ができるように設けている。そこで、開放部材241を距離Lの隙間部分がなくなるようにホルダ222に奥まで挿入することで、開放部材241の押圧部242の第2部分242bが弁座223内に嵌め込まれるようにしている。
【0047】
したがって、弁座223を嵌め込んだホルダ222をホルダ取付部221に取り付けるとき、図9に示すように、開放部材241を距離Lの隙間部分がなくなるようにホルダ222に奥まで挿入して、開放部材241の押圧部242の第2部分242bが弁座223内に嵌め込まれた状態にする。
【0048】
これにより、弁座223の内周側が押圧部242の第2部分242bに嵌め込まれて規制されるため、ホルダ取付部221によって潰されるときに、弁座223のつぶれは均等になろうとして、内周側のゆがみが低減する。
【0049】
そして、ホルダ222をホルダ取付部221に取り付けた後は、開放部材241の押圧部242の第2部分242bを弁座223から抜き出す。これによって、前述したように通常の動作時には開放部材241の押圧部242の第1部分242aだけで弁座223内を貫通してボール224を押圧するので、押圧部242と弁座223とが干渉して動作不良を生じることはない。
【0050】
なお、開放部材241の押圧部242の第2部分242bの外径D3は弁座223の内径D1に対して±0.1mm以内とすることで、スムーズに弁座223から押圧部242の第2部分242bを抜くことができる。また、図6及び図8に示すように、上記構成に大気開放機構204においては、開放部材241の外周側端面とホルダ222の端面との距離Mは距離L以上であることが必要である。
【0051】
このように、押圧部材には、弁座部材の内径よりも小さい外径を有して弁座部材内を進退する第1部分と、弁座部材の内径と略同じ外径を有する第2部分とが形成され、押圧部材は第2部分を弁座部材内に嵌め込み可能に設けられている構成としたので、弁座を半径方向と面方向に圧縮して装着するときに、押圧部材の第2部分を弁座部材内に嵌め込んだ状態で弁座部材を装着することができ、弁座部材のつぶれが一様になって、弁座部材のゆがみが低減し、確実に弁体で封止することができて連通路からのリークが低減する。
【0052】
また、この実施形態においては、弁座223の側面を押さえるホルダ222の弁座223が接する面(押圧面)222aをブラスト加工を施してブラスト面(粗面)とすることにより、弁座223とホルダ222の接触面積が減り、弁座223の移動自由度が向上し、弁座223がより均一につぶれるようになる。なお、この部分は、大気とのシール性に関係ない箇所であり、接触抵抗を低減する方法があればブラスト面以外の凹凸面でもよい。
【0053】
また、図10に示すように、弁座223の外周面を保持する部材であるホルダ222の内面に突起部(リブ)222bを少なくとも4箇所設け、さらにリブ222bが互いに直径方向に対し対面しており、リブ222bの高さを0.1mm以下とすることで、弁座223とホルダ222の位置ズレを低減しつつ、弁座223の外径とホルダ222の内径の寸法嵌合性調整が行いやすくなると共に、リブ222bが対面しているため、中心出しがしやすい。また、リブ222bの高さが0.1mm以下であれば、リブ222bによる弁座223の外周側のつぶし変化が内周側まで影響せず、内周側ゆがみも抑制できる。
【0054】
また、この実施形態では、押圧部材である開閉部材241の押圧部242を進退可能に保持する保持部材となるホルダ222の内径D4を弁座223の内径D1よりも大きく形成している。したがって、ホルダ222に弁座223を嵌め込んだ状態では弁座223の内周面がホルダ222の内周面よりも内側に配置されることになる。
【0055】
そこで、図11に示すように、開閉部材241に代えて、弁座222の内径D1と同じ外径D1を有するピン部材261を用いて、弁座223を嵌め込んだホルダ222をホルダ取付部221に取り付けるとき、ピン部材261を弁座223内に嵌め込まれた状態にする。
【0056】
これにより、弁座223の内周側がピン部材261に嵌め込まれて規制されるため、ホルダ取付部221によって潰されるときに、弁座223のつぶれは均等になろうとして、内周側のゆがみが低減する。そして、組み立てた後、ピン部材261を引き抜いて、開放部材241を挿入する。
【0057】
このように、別のピン部材を用いることで、前述した距離L、Mのよる制限がなくなり、弁機構の小型化を図れる。なお、このようにピン部材を用いる場合には、開放部材241としては押圧部242に第1部分242aと第2部分242bを有するものを用いる必要はなく、次に述べる他の実施形態と同様に押圧部242の外径が一定のものを用いることができる。
【0058】
このように、押圧部材の外周面を進退可能に保持する保持部材を備え、保持部材の押圧部材を保持している内径が弁座部材の内径よりも大きい構成としたので、弁座を半径方向と面方向に圧縮して装着するときに、押圧部材に代えて、弁座部材の内径と略同じ外径を有するピン部材を挿入した状態で装着することができ、弁座部材のゆがみが低減し、確実に弁体で封止することができて連通路からのリークが低減する。
【0059】
次に、本発明の他の実施形態における大気開放機構について図12ないし図14を参照して説明する。なお、図12は同大気開放機構部分の平断面説明図、図13は同大気開放機構の弁座の一例を説明する断面説明図、図14は同じく弁座の他の例を説明する断面説明図である。
この大気開放機構204は、開放部材241として押圧部242の外径が一定のものを用いている。また、弁座223の内径はホルダ222の内径よりも大きいものを用いている。
【0060】
そして、弁座223は、図13又は図14に示すように、異なる硬度の材質で構成し、封止部材となるボール224と接触する部分の硬度はそのままで、外周側の少なくとも一部の硬度を高くしている。
【0061】
つまり、図13に示す弁座223は、外周側に相対的に硬度の高い高硬度部分401が、弁体224が当接する内周側に相対的に硬度が低い低硬度部分402が形成されている。
【0062】
また、図14に示す弁座223は、中心軸方向で弁体224が当接する側と反対側に相対的に硬度の高い高硬度部分401が、弁体224が当接する側に相対的に硬度が低い低硬度部分402が形成され、高硬度部分401の厚みが低硬度部分402の厚みより厚く形成されている。
【0063】
このように構成された弁座223をホルダ222に挿入して、ホルダ取付部221で圧接して固定する場合、外周側に硬度の高い高硬度部分401があると、ホルダ222との反発力で、弁座223自体がホルダ222の中心に落ち着こうとする。また、封止部材となるボール224との接触部の硬度はそのまま(低硬度部分402)であるため、全体が硬度の低いものとの接触状態の差は少ない。
【0064】
なお、弁座223としては、ノズルからのインクの蒸発、固着や大気からノズルへの空気の流入を阻止する水蒸気透過率の低い材質が好ましく、ゴムではブチルゴム、プラスチックではポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂が好ましい。ただし、要求性能もしくは、他の空気の侵入防止回復手段などがある場合は、ゴムとして、フッ素ゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フロロシリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム等の選択もできる。
【0065】
このように、弁座部材は、保持部材で保持される外周部分の少なくとも一部の硬度が、弁体が当接する部分の硬度よりも高く形成されている構成としたので、弁座部材を保持部材に嵌め込むときに弁座部材の外周が保持部材に倣い、弁座部材のゆがみが低減し、確実に弁体で封止することができて連通路からのリークが低減する。
【0066】
これらの構成のように異なる硬度で形成された弁座223の成型方法について説明すると、一般に、弁座の成型方法として、コンプレッション成型(圧縮成型)方式とインジェクション成型(射出成型)方式がある。
【0067】
コンプレッション成型方式は、上下型に分割された金型に、金型のキャビテイ(空隙間)に配合した材料を入れ、上下金型を合せて熱板間にはさみ、加圧しながら加硫して成形する方法である。
インジェクション成型方式、上下に分割した金型を合わせた状態で、成型品の空間に配合した材料を射出する方法である。
【0068】
図13に示す径方向に硬度が異なる弁座223を成型するには、インジェクション成型方式が有利である。弁座穴の中心に対して、ほぼ対象となるように射出口を複数設けて注入する。例として図15に射出口と弁座との関係を示している。この例では、射出口411から高硬度材料401aを、射出口412から低硬度材料402aを射出して成型する。成型時は凸を有するシート状になっているが、図示のC1部及びC2部で型抜きを行うことで環状の最終形状が得られる。
【0069】
また、図14に示す中心軸方向で硬度が異なる弁座223は、コンプレッション成型方式が有利である。弁座穴の中心に対して、ほぼ対象となるが、穴方向に対して、材質の硬度が異なるようにしている。硬度の違う材質の厚さが均等である場合が一番成型しやすいが、キャビテイ(空隙間)に配合した材料の入れ方や上下金型の分割でそれぞれの厚さを変えることも可能である。コンプレッション成型方式の場合も成型時はインジェクション成型方式と同じように凸を有するシート状になっているが、型抜きを行うことで環状の最終形状が得られる。
【0070】
なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ単機能構成のものに限らず、プリンタ/ファクシミリ/複写などの複合機能を有する画像形成装置であっても良く、したがってまた、液体収容容器もこれらの画像形成装置に適用するものであっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
33…キャリッジ
34…記録ヘッド
35…サブタンク
51…搬送ベルト
201…インク収容部
202…容器本体
203…大気開放通路
204…大気解放機構
220…大気開放路
221…ホルダ取付部
222…ホルダ
223…弁座(弁座部材)
224…ボール(弁体)
241…開放部材
242…押圧部
242a…第1部分
242b…第2部分
401…高硬度部分
402…低硬度部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器本体の内外を連通する連通路と、
前記連通路に配置された環状の弁座部材及びこの弁座部材を内側から押圧付勢されて封止する弁体を有する弁手段と、
前記弁座部材の少なくとも外周面を保持する保持部材と、を備え、
前記弁座部材は、弾性部材であり、かつ、前記保持部材で保持される外周部分の少なくとも一部の硬度が、前記弁体が当接する部分の硬度よりも高く形成されている
ことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記弁座部材は、外周側に相対的に硬度の高い高硬度部分が、前記弁体が当接する内周側に相対的に硬度が低い低硬度部分が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記弁座部材は、中心軸方向で前記弁体が当接する側と反対側に相対的に硬度の高い高硬度部分が、前記弁体が当接する側に相対的に硬度が低い低硬度部分が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記弁座部材は、高硬度部分の厚みが低硬度部分の厚みより厚いことを特徴とする請求項3に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記弁座部材を保持し、前記押圧部材の外周面を進退可能に保持する保持部材を備え、前記弁座部材の外周が接触する前記保持部材の内壁に、挿入前の前記弁座部材内径と略同じ内径のリブを複数設け、さらに外リブが互いに直径方向に対し対面していることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の液体収容容器において、液滴を吐出する液体吐出ヘッドに供給する液体を収容することを特徴とする液体収容容器。
【請求項7】
請求項6に記載の液体収容容器を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
液体を収容する容器本体の内外を連通する連通路と、
前記連通路に配置された環状の弁座部材及びこの弁座部材を内側から押圧付勢されて封止する弁体を有する弁手段と、
前記弁手段の前記弁座部材内を貫通し、前記弁体を外方から押圧して開弁させる移動可能に配置された押圧部材と、
前記弁座部材を保持し、前記押圧部材の外周面を進退可能に保持する保持部材と、を備える液体収容容器の組み付け方法であって、
前記保持部材内に前記弁座部材を保持して、前記保持部材を前記容器本体に組み付けるとき、
前記弁座部材の内径と略同じ外径を有する棒状部材を、前記弁座部材内に嵌め込んだ状態で、前記保持部材を前記容器本体に組み付ける工程と、
前記棒状部材を前記弁座部材から抜き取り、前記押圧部材を前記弁座部材内に挿入する工程と、を行う
ことを特徴とする液体収容容器の組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−91326(P2013−91326A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7059(P2013−7059)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2008−68436(P2008−68436)の分割
【原出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】