説明

液体収容容器

【課題】 容器本体に組み付けられる回路チップのチップ接点と接続端子板のチップ接触片とを確実に導通接続させることができると共に、チップ接触片が前記チップ接点以外で回路チップに接触する不都合を回避できる安価で小型化の液体収容容器を提供する。
【解決手段】 容器本体の所定位置には、センサチップ110と、このセンサチップ110上のチップ接点116a,116bに接触するチップ接触片162を有した接続端子板とが組み付けられる。チップ接点116a,116bは、対応するチップ接触片162が延出してくる側の接続用外面114の一側の端縁118に、接続用外面114の一側の縁部115a,115bに達する一対の延長部119を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器に関し、特に、液体を収容する容器本体の所定位置に位置決めされる回路チップと、この回路チップ上のチップ接点に押圧接触させるチップ接触片を有して前記チップ接点を他回路の接点に導通接続する接続端子板とを備えた液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体収容容器及び液体消費装置の例として、例えば、インク液を貯留したインクカートリッジと、該インクカートリッジが交換可能に装着されるインクジェット式記録装置(インクジェットプリンタ)を挙げることができる。
【0003】
インクジェット式記録装置用のインクカートリッジには、所定量のインク液を貯留するカートリッジケース(容器本体)に、プリンタのカートリッジ装着部に装着された際に前記カートリッジ装着部に装備されたインク供給針が挿入接続されることにより貯留しているインク液がプリンタに供給可能になるインク供給口が設けられる。
【0004】
インクジェット式記録装置は、インクカートリッジから供給されるインクを記録ヘッドへ送り込み、この記録ヘッドが用紙等の被記録体にインク滴を噴射・塗布することで、画像や文字の記録を行う。
このようなインクジェット式記録装置における記録ヘッドは、熱や振動を利用してインク滴の噴射を制御するもので、インクカートリッジがインク切れになり、インクが供給されない状態でインク吐出動作を行う空打ちが発生すると、故障する可能性がある。
【0005】
そこで、インクジェット式記録装置では、記録ヘッドが空打ちをしないように、インクカートリッジにおけるインク液の残量を監視する必要が生じる。
また、例えば、フルカラーの写真印刷を主用途とする場合と、単色のテキスト印刷等を主用途とする場合とのように、使用条件が異なると、消費するインク液の色や量に差異が生じる。そこで、最近のインクジェット式記録装置では、使用条件に応じて、装置に装着されている複数個のインクカートリッジの一部を、使用条件に適したインクカートリッジに変更可能にしたものがある。このようなインクジェット式記録装置の場合は、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジが新品のものか、以前に使用していたものが再装着されたものかなど、使用履歴等を管理することも必要になる。
【0006】
このような背景から、最近のインクカートリッジでは、容器本体に貯留したインク液の残量が予め設定した閾値まで消費された時に、所定の電気信号を出力する残量検出手段を備えたり、インクの種別や使用履歴等の情報をプリンタの制御部が読み書きできる情報記憶手段(メモリ)を備えたりしたものが、各種提案されている。
【0007】
インクカートリッジに搭載される前記残量検出手段や情報記憶手段は、各種のインクカートリッジの容器本体への組付け性や、部品の共通化等を考慮して、それぞれ1チップ化した回路チップとして用意される。
そして、インクカートリッジを設計する際には、例えば、残量検出手段としての回路チップ上に装備されるチップ接点を、金属板製の接続端子板を使って他回路(例えば、情報記憶手段としての回路チップ)のチップ接点に導通接続して、組み立て時における配線等の手間を省略する工夫が要求される。
【0008】
図13は、従来のインクカートリッジにおいて残量検出手段として容器本体に組み付けられたセンサチップ(回路チップ)1上の一対のチップ接点2a,2bと、これらのチップ接点2a,2bを他回路に導通接続する接続端子板の一対のチップ接触片5a,5bとの導通構造を例示したものである。
ここに示した導通構造は、下記特許文献1に開示された導通構造と同一のものである。センサチップ1は、偏平な直方体状のチップ本体1aが振動板となっており、チップ本体1aの上面が、前記一対のチップ接点2a,2bが配置される平坦な接続用外面1bとなっている。このチップ本体1aの中央には、圧電素子としてのピエゾ素子6が配置され、該ピエゾ素子6の上下に配置された上部電極3a及び下部電極3bが、それぞれ前記チップ接点2a,2bに接続されている。
【0009】
一対のチップ接点2a,2bは、図13に示すように、接続用外面1bの一対の対辺近くに装備されている。各チップ接点2a,2bは、近接する接続用外面1bの縁部から適宜距離L1,L2だけ離して設けられている。
一対のチップ接触片5a,5bは、金属板のプレス成形によりそれぞれ形成される接続端子板の一部であり、先端には接続用外面1bの一側から接続用外面1bの上に延出する舌状部5cが形成されている。これら一対のチップ接触片5a,5bは、図14(a)に示すように、基端側を弾性変形させた状態で先端の舌状部5cを各チップ接点2a,2bに接触させることで、チップ接点2a,2bとの導通接続を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−146030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、図13に示した導通構造を持つインクカートリッジでは、容器本体に組み付けた際の部品相互の組付け誤差や、各部品の寸法公差等により、チップ接触片5の位置が、図14(b)に矢印Xで示すように、チップ接触片5における舌状部5cの接続用外面1b上への延出長が減少する方向に位置ずれした場合に、舌状部5cが接続用外面1bの縁部1cに当たることで、舌状部5cがチップ接点2bに接触できなくなったり、あるいは接触しても接触圧が不足したりするために、電気的には接続不良となり、センサチップ1の動作不良を招く虞があった。
【0012】
このような不都合の発生を防止する方法として、次の二つの対応が考えられる。
一つは、各部品の組付け誤差や寸法公差等により発生するチップ接触片5a,5bの位置ずれが、チップ接触片5a,5bにおける舌状部5cの接続用外面1b上への延出長が増大する方向(図14(b)の矢印Xと反対方向)に発生するように、各部品の位置決めや、公差の設定を規制する対応である。
他の一つは、各部品の公差を小さくしたり、或いは各部品の取り付け後に組付けを微調整したりすることで、組付け精度を向上させて、位置ずれの発生自体を防止するという対応である。
【0013】
ところが、前者の対応の場合は、チップ接触片5a,5bにおける舌状部5cとピエゾ素子6等との間の離間距離を十分に確保できなくなり、上部電極3aとチップ接触片5との接触という不都合を招く虞があった。
一方、後者の対応の場合は、各部品の加工コストの増大や、組付け位置の微調整作業の手間による生産性の低下のために、インクカートリッジの製造コストが大幅に増大する虞があった。
【0014】
また、以上のような対応は採らずに、例えば、図14(b)の矢印X方向への位置ずれを見込んで、その分、位置ずれ方向に沿うチップ接点2bの長さや、接続用外面1bの縁部を延長すると、センサチップ1が大型化し、このセンサチップ1が組み付けられるインクカートリッジの大型化を招くという問題が生じた。
【0015】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、容器本体に組み付けられる回路チップのチップ接点と接続端子板のチップ接触片とを確実に導通接続させることができると共に、前記チップ接触片が前記チップ接点以外で回路チップに接触する不都合を回避できる安価で小型化の液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、液体消費装置に供給する液体を収容して前記液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着される容器本体と、
前記容器本体の所定位置に位置決めされるチップ本体上の平坦な接続用外面に一対のチップ接点が装備された回路チップと、
前記容器本体における前記回路チップの周辺に位置決めされると共に前記接続用外面の一側から前記接続用外面の上に延出して対応する前記チップ接点に接触するチップ接触片と、他回路の接点に導通接続される他回路接続部とを有して対応する前記チップ接点を前記他回路に導通接続する一対の接続端子板と、を備える液体収容容器であって、
前記各チップ接点は、対応する前記チップ接触片が延出してくる側の前記接続用外面の一側に位置する端縁に、前記接続用外面の一側の縁部に達する延長部を有することを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0017】
上記構成によれば、回路チップの接続用外面上のチップ接点は、チップ接触片が延出してくる接続用外面の一側に位置する端縁に、接続用外面の一側の縁部に達する延長部を設ける構成とした。
そこで、回路チップや接続端子板を容器本体に組み付けた際の部品相互の組付け誤差や、各部品の寸法公差等により、チップ接触片の位置がチップ本体の接続用外面上へのチップ接触片の延出長が減少する方向に位置ずれし、チップ接触片の先端側が接続用外面の縁部上に位置する場合でも、チップ接触片の先端は確実に回路チップの延長部に接触することができる。
【0018】
即ち、チップ接触片の位置を、チップ本体の接続用外面上へのチップ接触片の延出長が減少する方向に管理するだけで、容器本体に組み付けられる回路チップのチップ接点と接続端子板のチップ接触片とを確実に導通接続させることができる。
【0019】
また、容器本体への各部品の組付け精度を高めたり、或いは各部品の加工精度を向上させたりすることによって、位置ずれを低減させずとも、容器本体に組み付けられる回路チップのチップ接点と接続端子板のチップ接触片とを確実に導通接続させることができるため、組付け精度や加工精度の緩和により加工コストを低減させてコストダウンを図ると共に、生産性を向上させることができる。
【0020】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記延長部が達した縁部と対向する前記接続用外面の対辺の縁部は、前記チップ接点の端縁との間に所定の離間距離が確保されることが望ましい。
【0021】
このような構成の液体収容容器によれば、例えば、回路チップの製造工程で、多数の回路チップを一枚のウェハ上に隣接する形態で板取りした時に、隣接する回路チップ間ではチップ接点が連続することがない。
従って、一枚のウェハ上に隣接する形態で板取りした多数の回路チップを、チップ相互の切り離しをする前に、一括で分極処理する製法を採用して、回路チップの生産を効率化することができる。
【0022】
また、上記構成の液体収容容器において、前記一対のチップ接点が、前記回路チップにおける前記接続用外面の対辺付近にそれぞれ設けられ、対向する各チップ接点の前記延長部が、対向するチップ接点とは逆側にそれぞれ延出して前記接続用外面の一側の縁部に達すると共に、
対向する各チップ接点の前記延長部の位置が、各チップ接点の対向方向に重ならないように設定されることが望ましい。
【0023】
このような構成の液体収容容器によれば、延長部を各チップ接点の端縁に沿って櫛歯状に複数設けることで、各チップ接点とチップ接触片との間の接触面積を稼いで、導通性能を向上させることができる。
そこで、各チップ接点は、対辺の縁部に沿って延在する導体部に縮幅部を形成し、導体幅の低減による導体資源の節約を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器としてのインクカートリッジが装着されたインクジェット式記録装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの一部破断側面図である。
【図3】図2に示したインクカートリッジのIII−III断面矢視図である。
【図4】図2に示したインクカートリッジにおける容器本体への残量検出手段や情報記憶手段の組付け構造を示す要部の分解斜視図である。
【図5】図4に示した残量検出手段の分解斜視図である。
【図6】図3のA部の拡大図である。
【図7】図6のVII−VII断面矢視図である。
【図8】図7に示した回路チップ周辺の拡大図である。
【図9】図6のB部の拡大図であり、(a)はチップ接点に対してチップ接触片が位置ずれしていない状態の説明図、(b)はチップ接点に対して接続用外面上への延出長が増大する方向にチップ接触片が位置ずれした状態の説明図である。
【図10】チップ接点に対して接続用外面上への延出長が減少する方向にチップ接触片が位置ずれした状態の説明図である。
【図11】(a)は本発明の第2実施形態に係るインクカートリッジにおける回路チップと接続端子板との位置関係を示す平面図、(b)は(a)に示した回路チップ周辺の拡大図である。
【図12】(a)は本発明の第3実施形態に係るインクカートリッジにおける回路チップと接続端子板との位置関係を示す平面図、(b)は(a)に示した回路チップ周辺の拡大図である。
【図13】従来のインクカートリッジにおいて残量検出手段として容器本体に組み付けられた回路チップのチップ接点とチップ接触片との導通構造を示す平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV断面矢視図であり、(a)はチップ接点に対してチップ接触片が位置ずれしていない状態の説明図、(b)はチップ接点に対して接続用外面上への延出長が減少する方向にチップ接触片が位置ずれした状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る液体収容容器の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体収容容器としてのインクカートリッジが装着されたインクジェット式記録装置の全体斜視図である。
【0026】
図1に示したインクジェット式記録装置10において、キャリッジ11は、キャリッジモータ12により駆動されるタイミングベルト13を介して、ガイド部材14に案内されてプラテン15の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0027】
キャリッジ11の記録用紙16に対向する側にはインクジェット式記録ヘッド22が搭載され、またその上部には記録ヘッド22にインクを供給する複数のインクカートリッジ31が着脱可能に装着されるカートリッジ装着部18が設けられている。
【0028】
このインクジェット式記録装置の非印字領域であるホームポジション(図中、右側)には、キャップ部材23が配置されており、このキャップ部材23はキャリッジ11に搭載された記録ヘッド22がホームポジションに移動した時に、記録ヘッド22のノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材23の下方には、キャップ部材23により形成された密閉空間に負圧を与えてクリーニング等を実施するためのポンプユニット20が配置されている。
【0029】
また、キャップ部材23における印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段21が記録ヘッド22の移動軌跡に対して例えば垂直方向に進退できるように配置されており、キャリッジ11がキャップ部材23側に往復移動するに際して必要に応じて記録ヘッド22のノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
【0030】
図2は本発明の第1実施形態に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの一部破断側面図、図3は図2に示したインクカートリッジのIII−III断面矢視図、図4は図2に示したインクカートリッジにおける容器本体への残量検出手段や情報記憶手段の組付け構造を示す要部の分解斜視図である。
【0031】
インクカートリッジ31は、図2及び図3に示すように、片側の開放面を封止フィルム32で密閉することにより形成したインク貯留部33にインク34を貯留した樹脂製の容器本体35と、その封止フィルム32側の側面を覆って封止フィルム32を保護する樹脂製のカバー37とで構成されている。
【0032】
容器本体35は、略直方体形状で、その下端面には、インク供給部(液体供給部)39が突設され、インク供給部39の下端面にはインク供給口39aを保護するためのカバーフィルム40が貼られている。
容器本体35の前端面の下部には、図4にも示すように、センサユニット50を収容するためのセンサ収容凹部35aが開口している。そして、このセンサ収容凹部35a内には、センサユニット50と、該センサユニット50をセンサ収容凹部35aの下方に付勢してセンサ収容凹部35aの底部に開口しているインク流路に密着させるセンサ押圧バネ60とが挿入装着される。
【0033】
そして、センサユニット50及びセンサ押圧バネ60を収容したセンサ収容凹部35aの前面開口は、センサ収容凹部35aに嵌合装着される封止カバー70により封止される。
封止カバー70の前面の略平板状の窪み71には、ICチップ基板80が組み付けられる。このICチップ基板80は、インクの種別や残量や使用履歴等の情報を読み書き可能な情報記憶手段としてのICチップを平板状の回路基板81の裏面に搭載したもので、回路基板81の前面にはICチップをカートリッジ装着部18側の接続端子に導通接続する基板接点83が装備されている。
【0034】
センサユニット50は、図5に示すように、圧電素子による振動をインク流路に印加した際の自由振動の変化から容器本体35内のインク残量を検出する残量検出手段としてのセンサチップ(回路チップ)110と、このセンサチップ110の振動特性(音響特性)を向上させるべくセンサチップ110の底面に固着装備された金属製のセンサベース120と、このセンサベース120が気密に嵌合する凹所131を有して前記センサ収容凹部35a内でのセンサチップ110の位置決めを果たす樹脂製のユニットベース130と、このユニットベース130の底面に貼着されてセンサ収容凹部35aの底面とユニットベース130との間をシールするシールリング140と、中心にセンサチップ110を挿通させる開口151を有してユニットベース130に嵌合装着されたセンサベース120の上面123と該センサベース120の周囲に広がるユニットベース130の上面とを覆う絶縁フィルム150と、この絶縁フィルム150の上からユニットベース130に取り付けられる一対の接続端子板160と、一対の接続端子板160をユニットベース130に押さえつける押えカバー170とから構成されている。
【0035】
センサチップ110は、図6乃至図9(a)に示すように、略長方形の板状を成すチップ本体111が振動板となっており、チップ本体111の上面中央に圧電素子としてのピエゾ素子112が配置され、該ピエゾ素子112の上下に配置された図示しない上部電極及び下部電極が、それぞれチップ接点116a,116bに接続されている。
チップ本体111の下面中央には、センサ収容凹部35aの底部に開口するインク流路が連通する凹部113が形成されている。この凹部113の形成により、振動板であるチップ本体111の上面中央部は、薄肉化されている。
【0036】
このチップ本体111の上面は、平坦な接続用外面114となっている。この接続用外面114の一対の対辺近くには、これらの対辺の縁部115a,115b(図8参照)に沿って延在するように、一対のチップ接点116a,116bが設けられている。これらのチップ接点116a,116bは、チップ本体111上のピエゾ素子112に通電するための接点である。
本実施形態の特徴であるチップ接点116a,116bの構造は、後で詳述する。
【0037】
センサベース120は、図6に示すように、チップ本体111の凹部113に連通する2つの孔121,122が貫通形成されている。
ユニットベース130の凹所131の中央付近には、センサベース120の孔121,122を介してチップ本体111の凹部113に連通する2つの孔133,134が貫通形成されている。これらの各孔133,134は、センサ収容凹部35aの底部に開口するインク流路に連通する。
従って、容器本体35内のインク流路にインクが残留するとき、そのインク流路内のインクは各孔121,122,133,134をインク流路として流れて凹部113に流入し、センサチップ110から振動が印加された時にインク中の気泡の有無に応じて振動特性が変化する振動系を形成する。
【0038】
ユニットベース130の下面に貼着されたシールリング140は、孔133,134と容器本体35側のインク流路との接続部の周囲をシールしている。
ユニットベース130の上面の4隅には、一対の接続端子板160,160及び押えカバー170を支持するための支柱136が立設されている。
【0039】
接続端子板160は、図5及び図7に示すように、チップ本体111の一対の対辺における縁部115a,115b(図8参照)の外側の位置をこれらの縁部115a,115bに沿って延在してユニットベース130に固定される本体板部161と、この本体板部161の中央部からチップ本体111の接続用外面114上に延出して先端をチップ接点116a,116bに接触させるチップ接触片162と、本体板部161の両端から本体板部161の長手方向に沿って延出して前述の回路基板81の裏面に形成されたセンサ用接点(不図示)との接触を果たす基板接触片163とを具備している。
【0040】
本体板部161は、その両端部付近に、ユニットベース130に立設された支柱136が嵌合する取付穴164が貫通形成されており、取付穴164に支柱136を挿通させた状態にすることにより、ユニットベース130上に位置決めされる。即ち、一対の接続端子板160,160は、ユニットベース130を介して、センサ収容凹部35a内の所定位置に位置決めされる。
【0041】
チップ接触片162の先端には、チップ接点116a,116b側に凸の湾曲部162aが形成されている。
また、基板接触片163は、上記回路基板81の裏面のセンサ用接点(不図示)に接触した際に、弾性変形して必要な接触圧を得ると同時に寸法誤差を許容し得るように、傾斜して設けられている。
【0042】
本実施形態の場合、ICチップ基板80は、センサチップ110とは別個の回路である他回路に相当する。従って、一対の接続端子板160,160における基板接触片163は、他回路であるICチップ基板80上のセンサ用接点をチップ接点116a,116bに導通接続する他回路接続部に相当する。
【0043】
一対の接続端子板160,160を介してICチップ基板80上のセンサ用接点に導通接続されたセンサチップ110のチップ接点116a,116bは、ICチップ基板80の前面の基板接点83を介してカートリッジ装着部18側の接続端子に接続される。このような導通接続により、残量検出手段としてのセンサチップ110の動作を、インクジェット式記録装置10側から制御可能になる。
【0044】
押えカバー170は、一対の接続端子板160の各本体板部161の上に被さる平板部171の4隅に、ユニットベース130の支柱136が嵌合する取付穴172を装備したもので、ユニットベース130との間に本体板部161を挾持して、一対の接続端子板160をユニットベース130に固定する。
【0045】
本実施形態の場合、チップ本体111の一対の対辺に装備された一対のチップ接点116a,116bは、対応するチップ接触片162が延出してくる側の接続用外面114の一側(本体板部161側)に位置する端縁118に、接続用外面114の一側の縁部(即ち、対辺の縁部115a,115b)に達する一対の延長部119,119が設けられている。
【0046】
更に、チップ接点116a(116b)の延長部119が達した縁部115a(115b)と対向する接続用外面114の対辺の縁部115b(115a)は、チップ接点116b(116a)との間に所定の離間距離が確保されている。
更に詳述すると、本実施形態の場合、各チップ接点116a,116bへのチップ接触片162の延出方向が互いに逆向きとなっているため、各チップ接点116a,116bに形成される延長部119は、対向するチップ接点116a,116bとは逆側に延出して接続用外面114の対辺の縁部115a,115bに達している。
そして、図8に示したように、対向する各チップ接点116a,116bの各延長部119の位置が、各チップ接点116a,116bの対向方向(図8中左右方向)に重ならないように設定されている。
【0047】
本実施形態のインクカートリッジ31に係るセンサチップ110によれば、センサチップ110の接続用外面114上のチップ接点116a(116b)は、チップ接触片162が延出してくる接続用外面114の一側に位置する端縁118に、接続用外面114の一側の縁部115a(115b)に達する延長部119を設ける構成とした。
【0048】
そこで、センサチップ110や接続端子板160を容器本体35に組み付けた際の部品相互の組付け誤差や、各部品の寸法公差等により、チップ接触片162の位置がチップ本体111の接続用外面114上へのチップ接触片162の延出長が減少する方向に位置ずれして、図10に示すようにチップ接触片162の先端側が接続用外面114の縁部115b(115a)上に位置する場合でも、チップ接触片162の先端は確実に延長部119に接触することができる。
【0049】
即ち、チップ接触片162の位置を、チップ本体111の接続用外面114上へのチップ接触片162の延出長が減少する方向に管理するだけで、容器本体35に組み付けられるセンサチップ110のチップ接点116b(116a)と接続端子板160のチップ接触片162とを確実に導通接続させることができる。
【0050】
従って、各部品の組付け誤差や寸法公差等により発生するチップ接触片162の位置ずれが、チップ接触片162の接続用外面114上への延出長が増大する方向に発生する虞が少なくなる。そこで、例えば図9(b)に示すように、チップ接触片162とチップ接点116b(116a)の内側に配置されるピエゾ素子112等との離間距離Sが過少になって、チップ接触片162がチップ接点116b(116a)以外でセンサチップ110に接触するといった不都合を回避できる。
【0051】
また、容器本体35への各部品の組付け精度を高めたり、或いは各部品の加工精度を向上させたりすることによって、位置ずれを低減させずとも、容器本体35に組み付けられるセンサチップ110のチップ接点116a,116bと接続端子板160のチップ接触片162とを確実に導通接続させることができるため、組付け精度や加工精度の緩和により加工コストを低減させてコストダウンを図ると共に、生産性を向上させることができる。
【0052】
更に、容器本体35に組み付けられるセンサチップ110のチップ接点116a,116bと接続端子板160のチップ接触片162との導通接続を確実にするために、チップ接点116a,116bとチップ本体111の縁部の寸法を、部品相互の組付け誤差や各部品の寸法公差等により発生する位置ずれ方向に延長する必要は無いので、このような寸法の延長によるセンサチップ110の大型化を防止でき、結果的に、センサチップ110が組み付けられるインクカートリッジ31のコンパクト化を図ることもできる。
【0053】
更に、本実施形態に係るセンサチップ110において、チップ接点116a(116b)の延長部119が達した縁部115a(115b)と対向する接続用外面114の対辺の縁部115b(115a)は、チップ接点116b(116a)の端縁118との間に所定の離間距離が確保されている。即ち、対向する各チップ接点116a,116bの各延長部119の位置が、各チップ接点116a,116bの対向方向(図8中左右方向)に重ならないように設定されている。
【0054】
そこで、例えば、センサチップ110の製造工程で、多数のセンサチップ110を一枚のウェハ上に隣接する形態で板取りした時に、隣接するセンサチップ110間ではチップ接点116aとチップ接点116bとが連続することがない。
従って、一枚のウェハ上に隣接する形態で板取りした多数のセンサチップ110を、チップ相互の切り離しをする前に、一括で分極処理する製法を採用して、センサチップ110の生産を効率化することができる。
【0055】
また、本実施形態のセンサチップ110では、センサチップ110の平坦な接続用外面114の対辺付近にそれぞれチップ接点116a,116bが設けられ、対向する各チップ接点116a(116b)の延長部119が、対向するチップ接点116b(116a)とは逆側にそれぞれ延出して接続用外面114の一側の縁部115a(115b)に達すると共に、対向する各チップ接点116a,116bの延長部119の位置が、各チップ接点116a,116bの対向方向に重ならないように設定されている。
【0056】
そこで、延長部119を図示例のように櫛歯状に複数設けることで、チップ接触片162との接触面積を稼いで、導通性能を向上させることができる。また、対辺の縁部115a,115bに沿って延在する帯状の導体部に、図8に想像線で示す縮幅部181を形成し、導体幅の低減による導体資源の節約を図ることができる。
【0057】
尚、チップ本体111のチップ接点116a,116bに設けられる延長部119の形成位置は、接続端子板160のチップ接触片162がチップ本体111の接続用外面114上に延出する方向に応じて変わる。
図11及び図12は、チップ本体111上へのチップ接触片162の延出方向を変えた場合の本発明の第2実施形態及び第3実施形態に係るインクカートリッジのセンサユニットを示している。
【0058】
図11に示した第2実施形態の場合、一対の接続端子板260,260は、図11(a)に示すように、センサチップ110の短辺方向に離間して、該センサチップ110を挟むように配置されている。
そして、各接続端子板260のチップ接触片262は、図11(b)に示すように、互いに逆側からチップ本体111上の各チップ接点216a,216bの長手方向に沿って接続用外面114上に延出している。
【0059】
即ち、各チップ接点216a,216bによって、チップ接触片262の延出方向が逆になっているため、各チップ接点216a,216bの端縁から接続用外面114の縁部115c(115d)まで達する延長部119の装備位置が、各チップ接点216a,216bで逆側になっている。
【0060】
図12に示した第3実施形態の場合、一対の接続端子板360,360は、図12(a)に示すように、センサチップ110の長辺方向に離間して、該センサチップ110を挟むように配置されている。
そして、各接続端子板360のチップ接触片362は、図12(b)に示すように、同一の側(図中上側)からチップ本体111上の各チップ接点316a,316bの長手方向に沿って接続用外面114上に延出している。
【0061】
即ち、いずれのチップ接点316a,316bでも、チップ接触片362の延出方向が同じであるため、各チップ接点316a,316bの端縁から接続用外面114の縁部115cまで達する延長部119の装備位置が、各チップ接点316a,316bで同一側になっている。
【0062】
上述した第2実施形態及び第3実施形態に係るインクカートリッジのセンサユニットによれば、上記第1実施形態に係るインクカートリッジ31のセンサユニット50と同様に、センサチップ110や接続端子板260(360)を容器本体35に組み付けた際の部品相互の組付け誤差や、各部品の寸法公差等により、チップ接触片262(362)の位置がチップ本体111の接続用外面114上へのチップ接触片262(362)の延出長が減少する方向に位置ずれして、チップ接触片262(362)の先端側が接続用外面114の縁部115c(及び115d)上に位置する場合でも、チップ接触片262(362)の先端は確実に延長部119に接触することができる。
【0063】
なお、本発明の液体収容容器の用途は、上記実施形態に示したインクカートリッジに限らない。また、本発明の液体収容容器が装着される容器装着部を備えた液体消費装置も、上記実施形態に示したインクジェット式記録装置に限らない。
液体消費装置としては、液体収容容器が着脱可能に装着される容器装着部を備え、前記液体収容容器に貯留されている液体が装置に供給される各種の装置が該当し、具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【符号の説明】
【0064】
10…インクジェット式記録装置(液体消費装置)、18…カートリッジ装着部(容器装着部)、31…インクカートリッジ(液体収容容器)、35…容器本体、35a…センサ収容凹部、50…センサユニット、80…ICチップ基板(他回路)、83…基板接点、110…センサチップ(回路チップ)、114…接続用外面、116a,116b…チップ接点、119…延長部、160…接続端子板、162…チップ接触片、163…基板接触片(他回路接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費装置に供給する液体を収容して前記液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着される容器本体と、
前記容器本体の所定位置に位置決めされるチップ本体上の平坦な接続用外面に一対のチップ接点が装備された回路チップと、
前記容器本体における前記回路チップの周辺に位置決めされると共に前記接続用外面の一側から前記接続用外面の上に延出して対応する前記チップ接点に接触するチップ接触片と、他回路の接点に導通接続される他回路接続部とを有して対応する前記チップ接点を前記他回路に導通接続する一対の接続端子板と、を備える液体収容容器であって、
前記各チップ接点は、対応する前記チップ接触片が延出してくる側の前記接続用外面の一側に位置する端縁に、前記接続用外面の一側の縁部に達する延長部を有することを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記延長部が達した縁部と対向する前記接続用外面の対辺の縁部は、前記チップ接点の端縁との間に所定の離間距離が確保されることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記一対のチップ接点が、前記回路チップにおける前記接続用外面の対辺付近にそれぞれ設けられ、対向する各チップ接点の前記延長部が、対向するチップ接点とは逆側にそれぞれ延出して前記接続用外面の一側の縁部に達すると共に、
対向する各チップ接点の前記延長部の位置が、各チップ接点の対向方向に重ならないように設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−173042(P2009−173042A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114917(P2009−114917)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2006−220757(P2006−220757)の分割
【原出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】