説明

液体口腔用組成物

【課題】 カテキン類を含有し、所望の色調を呈する液体口腔用組成物において、カテキン類を安定に維持するためにアスコルビン酸類を含有しても、色素の褪色等がなく、色調を維持する。
【解決手段】 カテキン類、アスコルビン酸類、色素を含有した液体口腔用組成物であって、前記色素としてキノリン色素を含有したことを特徴とする液体口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキン類を含有し、所望の色調を呈する洗口剤等の液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口臭予防や口腔内細菌の抑制のために、洗口液にカテキン類を添加することが試されている。ところが、カテキン類は酸化して劣化しやすいことから、有機酸を併用したり、さらにpHを弱酸性としてカテキン類を安定に維持することが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、洗口液においては、その商品特性からして、消費者に清涼感を与えるため、また商品価値を高めるために、色素を配合して所望の色調となるように調整することが行われている。
【0004】
本発明者らは上記のごとき従来技術を踏まえて、カテキン類を配合した洗口液について検討を進める中で、カテキン類を安定に維持するためにアスコルビン酸類を配合し、さらに色調を整えるために色素を配合すると、アスコルビン酸類の影響により色素の褪色等が生じて所望の色調を保つことができないという問題が生じた。
【0005】
しかしながら従来技術においては、カテキン類を配合した洗口液において色調を保つことを検討されたものはなく、その解決手段も知られてはいない。
【0006】
【特許文献1】特開平7−258054号公報(第1−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、カテキン類を含有し、所望の色調を呈する液体口腔用組成物において、カテキン類を安定に維持するためにアスコルビン酸類を含有しても、色素の褪色等がなく、色調を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、色素としてキノリン色素を用いることで、アスコルビン酸類による褪色等の影響を防ぎ、所望の色調を保つことができることを見出し本発明に至った。即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)の液体口腔用組成物からなるものである。
(1)カテキン類、アスコルビン酸類、色素を含有した液体口腔用組成物であって、前記色素としてキノリン色素を含有したことを特徴とする液体口腔用組成物。
(2)色調がLab表色系で、L≧50、−15≦a≦−5、15≦b≦30の範囲であることを特徴とする(1)記載の液体口腔用組成物。
(3)青色色素及び/又は銅クロロフィリン類を含有したことを特徴とする(2)記載の液体口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、カテキン類を安定に維持することができ、さらに色素の褪色等がなく、所望の色調を保つことができるので、商品価値を損なうことがない液体口腔用組成物を提
供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
本発明の液体口腔用組成物において、カテキン類としては、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、これらを主に含む茶抽出物、茶乾留物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0012】
アスコルビン酸類としては、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸−2−リン酸エステル、アスコルビン酸−3−リン酸エステル、アスコルビン酸−6−リン酸エステル、アスコルビン酸−2−ポリリン酸エステル、アスコルビン酸−2−硫酸エステル、アスコルビン酸−2−パルミチン酸エステル、アスコルビン酸−6−パルミチン酸エステル、アスコルビン酸−2−ステアリン酸エステル、アスコルビン酸−6−ステアリン酸エステル、アスコルビン酸−2,6−ジブチルエステル、アスコルビン酸−2,6−ジパルミチン酸エステル、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0013】
キノリン色素は、キノリン塩基を母体とし、カービン基(=C=N−)を発色団とする化合物であり、具体的には黄色203号、黄色204号等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0014】
本発明の液体口腔用組成物において、カテキン類は0.00001〜1重量%、アスコルビン酸類は0.00001〜2重量%、キノリン色素は0.000001〜0.01重量%となるように含有させればよい。尚、残部は、後述される各種添加剤、その他の色素及び水である。
【0015】
本発明の液体口腔用組成物は、茶葉抽出物でもあるカテキン類を含有したものであるから、そのイメージからして色調を緑色系とすることがよく、Lab表色系(JIS Z 8729参照)で、L≧50、−15≦a≦−5、15≦b≦30の範囲とするのがよい。キノリン色素は、上記の具体例のように黄色系の色素であるため、青色色素や銅クロロフィリン類を適宜組み合わせて上記のような色調に調整することが好ましい。
【0016】
青色色素としては、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号等、銅クロロフィリン類としては、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0017】
これらの色素は、液体口腔用組成物が上記の色調を呈するように配合量が調整されるが、0.0001〜0.002重量%とすることが適当であり、キノリン色素と青色色素及び/又は銅クロロフィリン類との配合比は、重量比で1:1〜10:1とするのがよい。
【0018】
本発明の液体口腔用組成物としては、洗口液、液体歯磨剤、うがい液等とすることができ、それぞれの形態に合わせて、水(精製水、イオン水等)及びエタノール(各種変性剤を用いた変性アルコールでもよい)を溶剤として常法によって調製すればよい。さらに緩衝剤を用いてpHを4〜5程度の弱酸性とすることで、カテキン類、銅クロロフィリン類を安定に維持することができるのでよい。
【0019】
また、添加される各種成分の溶解、分散及び可溶化をスムーズにするために、非イオン性界面活性剤を用いるとよく、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0020】
更に、必要に応じて、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物;アズレン、アズレンスルホン酸塩、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及び塩類、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン、オウバクエキス、トウキエキス、酢酸dl−α−トコフェロール、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸等の抗炎症剤;塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤;ガントレッツ酸、塩化亜鉛、有機酸亜鉛等の歯石予防剤;ヒノキチオール、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、塩化ナトリウム等の収斂剤;グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の湿潤剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の発泡剤;α−ピネン、ペパーミント油、アニス油、シナモンオイル、グローブオイル、オイゲノール、レモンオイル、バニリン、シネオール、ユーカリオイル、メントール、チモール等の香料;サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリストール、ソルビトール、ステビア、グリチルリチン酸ジカリウム等の甘味料;パラベン類、安息香酸ナトリウム等の保存料;リン酸二水素一ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム等の緩衝剤、リゾチーム等の酵素類;ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、セラック、ミツロウ、ハイドロキシアパタイト、ビタミン類、リン酸カルシウム類、精油成分、植物エキス、芳香成分等を配合することもできる。尚、これらの成分の用途は上記のものに限定はされない。
【0021】
以下に、洗口剤としたときの処方を例示する。尚、単位はw/v%である。
(処方例1)
・緑茶カテキン 0.01
・L−アスコルビン酸 0.012
・黄色203号 0.00095
・青色1号 0.00001
・銅クロロフィリンナトリウム 0.0001
・安息香酸 0.15
・安息香酸ナトリウム 0.05
・パラオキシ安息香酸ブチル 0.01
・サッカリンナトリウム 0.03
・D−ソルビトール 5.0
・エタノール 10.0
・グリセリン 5.0
・精製水 100mlとする量
また、この洗口剤の色調は、Lab表色系でL=98.73、a=−10.78、b=20.75である。
(処方例2)
・緑茶カテキン 0.01
・L−アスコルビン酸 0.012
・黄色203号 0.0006
・銅クロロフィリンナトリウム 0.00035
・安息香酸 0.15
・安息香酸ナトリウム 0.05
・パラオキシ安息香酸ブチル 0.01
・サッカリンナトリウム 0.03
・D−ソルビトール 5.0
・エタノール 10.0
・グリセリン 5.0
・精製水 100mlとする量
また、この洗口剤の色調は、Lab表色系でL=96.72、a=−9.84、b=17.16である。
(処方例3)
・緑茶カテキン 0.001
・L−アスコルビン酸 0.0012
・黄色203号 0.00095
・青色1号 0.00001
・銅クロロフィリンナトリウム 0.0001
・安息香酸 0.15
・安息香酸ナトリウム 0.05
・パラオキシ安息香酸ブチル 0.01
・サッカリンナトリウム 0.03
・D−ソルビトール 5.0
・エタノール 5.0
・グリセリン 10.0
・精製水 100mlとする量
また、この洗口剤の色調は、Lab表色系でL=98.47、a=−11.27、b=21.45である。
【実施例】
【0022】
以下に試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
表1記載の液体口腔用組成物を調製し、ガラス製容器に50ml充填して蓋をした。そして60℃条件下の暗所で1週間保存し、色調の変化を目視にて確認した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すように、本発明品では褪色、黄変はみられなかったが、比較例1では褪色、黄変がみられ、pHを弱酸性とした比較例2でも褪色は改善されず、褪色は目視にて判別できる程度のものであった。試験は3回繰り返して行ったが、いずれも結果は同じであった。
【0026】
更に、本発明品と比較例1とで、1週間経過後の黄変の程度をLab色差計(NIPPON DENSHOKU社製「ZE2000」)を用いて測定した結果、色差(ΔE)は、本発明では1.6、比較例1では10.4であってその差は明らかであった。
【0027】
ここで用いた各色素は酸やアルカリ等に対する耐性が略同程度とされているが、理由は明らかではないが、上記のごとき結果の差異が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類、アスコルビン酸類、色素を含有した液体口腔用組成物であって、前記色素としてキノリン色素を含有したことを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項2】
色調がLab表色系で、L≧50、−15≦a≦−5、15≦b≦30の範囲であることを特徴とする請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
青色色素及び/又は銅クロロフィリン類を含有したことを特徴とする請求項2記載の液体口腔用組成物。

【公開番号】特開2006−219418(P2006−219418A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34198(P2005−34198)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】