説明

液体吐出ヘッドユニット及び画像形成装置

【課題】ヘッドカバー上に垂れたインクをヘッドの小型化を図りつつ特定の場所に誘導する。
【解決手段】ヘッド2とタンク4とが電気回路基板3を挟んで一体化され、タンク4にはインクを供給する供給チューブがジョイント部を介して接続される供給ポート45を有し、ヘッド2の液滴吐出側を下方にしたとき、タンク4の上部側からタンク4及び電気回路基板3の周囲及びヘッド2の上部部分の周囲を覆うヘッドカバー61が設けられ、ヘッドカバー61の表面側には垂れ落ちた廃インクをヘッドカバー61の下方の排出部に誘導する誘導溝部64を形成するリブ65a、65bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッドユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで、例えばライン型画像形成装置では、ヘッドとヘッドに液体を供給するタンク(ヘッドタンク)を一体化した複数の液体吐出ヘッドユニット(以下「ヘッドユニット」という。)を並べて被記録媒体のほぼ全幅にわたる幅を有する記録ヘッドを構成し、メインタンクから直接あるいはサブタンクやディストリビュータ(分配器)を経て、各ヘッドタンクにチューブを介して供給する。
【0005】
そして、ライン型画像形成装置では、ヘッド不良や経時劣化などによって各ヘッドユニットをヘッドユニット単位で交換可能とするため、ヘッドタンクとチューブとは着脱可能なジョイント部にて接続するようにしている。
【0006】
さらに、このようなヘッドユニットの交換に際してチューブを取り外したとき、チューブなどからヘッドユニットにインクが垂れることがあるため、ヘッドユニットを覆うヘッドカバーを備えるようにしている。
【0007】
従来、中継容器に凸形状のリブを立てて端子基板へのインク付着を防ぐものがある(特許文献1)。また、吐出口面を包囲するカバー部に漏れ出た液体を所定量貯留する液体貯留部を設けるものがある(特許文献2)。さらに、メインタンクについてであるが、メインタンク(インクカートリッジ)の抜き差しによって垂れるインクが電子回路基板に付着することを防ぐために遮蔽部材を設けるものがある(特許文献3)。その他、ヘッドの吐出面以外を覆ってしまうことでミストの付着を防止するものがある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−168140号公報
【特許文献2】特開2001−063080号公報
【特許文献3】特開2000−218814号公報
【特許文献4】特開2002−103573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような従来の技術にあっては、垂れたインクからヘッドユニットの破損を防止することはできるが、ヘッドカバー上に垂れたインクがそのまま更に下方に滴下したのでは装置が汚れ、あるいは、その他の電気回路に影響を与えるという課題がある。
【0010】
この場合、貫通穴などで垂れた廃液を特定の場所に誘導することも考えられるが、そうすると穴を囲む部分だけヘッド幅が広がるという課題を生じる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドサイズを可能な限り小さくして廃液を特定の場所に誘導できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドユニットは、
液滴を吐出するヘッドと前記ヘッドに供給する液体を収容するタンクとが一体化され、
前記ヘッドと接続する電子部品が実装された電気回路基板が前記ヘッドとタンクとの間に介装された液体吐出ヘッドユニットであって、
前記タンクには液体を供給するチューブがジョイント部を介して着脱可能に接続される供給ポートを有し、
前記ヘッドの液滴吐出側を下方にしたとき、前記タンクの上部側から前記タンクの周囲及び前記ヘッドの少なくとも上部部分の周囲を覆うヘッドカバーが設けられ、
前記ヘッドカバーには、上面に垂れた液体を下方に向けて誘導する誘導路を形成する突起部が設けられている
構成とした。
【0013】
ここで、前記ヘッドカバーの表面には毛細管現象によって前記液体を誘導する溝が形成されている構成とできる。
【0014】
また、前記ヘッドカバーの表面には撥液処理が施されている構成とできる。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、
本発明に係る液体吐出ヘッドユニットと、
前記液体吐出ヘッドユニットの誘導路で誘導された液体を受ける廃液受けと、
を備えている
構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体吐出ヘッドユニットによれば、ヘッドの液滴吐出側を下方にしたとき、タンクの上部側からタンクの周囲及びヘッドの少なくとも上部部分の周囲を覆うヘッドカバーが設けられ、ヘッドカバーには、上面に垂れた液体を下方に向けて誘導する誘導路を形成する突起部が設けられている構成としたので、ヘッドサイズを可能な限り小さくして廃液を特定の場所に誘導できるようになる。
【0017】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る液体吐出ヘッドユニットと、液体吐出ヘッドユニットの誘導路で誘導された液体を受ける廃液受けとを備えているので、液体吐出ヘッドユニットに垂れ落ちた廃液が印写中にヘッドユニットから垂れ落ちることが防止され、画像品質が低下することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドユニットの第1実施形態の側断面説明図である。
【図2】同ヘッドユニットのヘッドの要部断面説明図である。
【図3】同じくヘッドカバーを取り外した状態の斜視説明図である。
【図4】同じく外観斜視説明図である。
【図5】本発明に係る液体吐出ヘッドユニットの第2実施形態のヘッドカバーの外観斜視図である。
【図6】本発明に係る液体吐出ヘッドユニットを備える画像形成装置の要部模式的斜視説明図である。
【図7】同じく要部正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドユニットの第1実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドユニットの側断面説明図、図2は同ヘッドユニットのヘッドの要部断面説明図、図3は同じくヘッドカバーを取り外した状態の斜視説明図、図4は同じく外観斜視説明図である。
【0020】
この液体吐出ヘッドユニット(以下、単に「ヘッドユニット」という。)1は、液滴を吐出するヘッド2と、ヘッド2と接続する電子部品が実装された電気回路基板3と、ヘッド2に供給するインクを収容するタンク4とを備え、ヘッド2のフレーム部材と電気回路基板3とタンク4とは積層構造をなして一体化され、ヘッド2のフレーム部材17と電気回路基板3との間及び電気回路基板3とタンク4との間に空間6、7がそれぞれ設けられ、電気回路基板3の電子部品32が空間6、7に収容されている。
【0021】
ここで、ヘッド2は、液滴を吐出するノズル11が形成されたノズル板12と、ノズル11が連通する液室13を形成する流路板14と、液室13の壁面の一部を形成する振動板15aを形成する振動板部材15と、振動板15aを変位させる2つの圧電アクチュエータ16と、各液室13にインクを供給する共通液室18を形成し、圧電アクチュエータ16を内部に収納し、ノズル板12、流路板14及び振動板部材15を前面側に保持するフレーム部材17とを備えている。
【0022】
各圧電アクチュエータ16は、基板21に接合された2列の圧力発生手段である積層型圧電素子部材22を有し、圧電素子部材22にはスリット加工が施されて各液室13に対応する圧電素子柱22aが形成されている。そして、各圧電素子部材22には、各圧電素子柱22aと電気回路基板3とを電気的に接続するFPCなどのフレキシブル配線基板23が接合されて接続されている。
【0023】
なお、振動板部材15には共通液室18と液室13との間に液供給口部となるフィルタ部19が形成されている。また、共通液室18と振動板15を挟んで反対側にダンパ室20が形成されている。
【0024】
電気回路基板3には、基板本体31の両面に、圧電アクチュエータ16とフレキシブル配線基板23及び基板3上の配線パターンを介して接続される電子部品32が実装され、また、このヘッドユニット1と画像形成装置本体のコントローラなどの制御ボードと接続するためのFFCコネクタ33などが搭載されている。
【0025】
タンク4は、2分割されたインク室41、41を形成するポリスチレン、ポリプロピレンなどからなるタンクケース42の各開口部に弾性変形可能な部材(可撓性フィルム部材や弾性部材:以下「可撓性フィルム」という。)43が設けられている。
【0026】
そして、ヘッド2の滴吐出方向を下方向としたとき、タンク4のタンクケース42の上部には、各インク室41、41に外部のメインタンクからインクを供給するための供給ポート(インク導入口)45と、インクを排出するための排出ポート(インク排出口)46と、気泡を排出するための気泡排出ポート(気泡排出口)47とが設けられている。
【0027】
インク導入口45には供給チューブ51が接続され、供給チューブ51の他端部は図示しないインクタンク(メインタンク)に接続される。インク排出口46には排出チューブ52が接続され、排出チューブ52の他端部はインク廃棄タンクに接続される。気泡排出口47には気泡排出チューブ53が接続され、気泡排出チューブ53の他端部はインク廃棄タンクに接続される。
【0028】
そして、これらの供給チューブ51、排出チューブ52、気泡排出チューブ53は、経路の途中にジョイント部54が設けられ、ジョイント54部で装置本体側からヘッドユニット1を分離することができる。
【0029】
このヘッドユニット1のヘッド2とタンク4とはネジ止めで固定され、タンク4の上部からタンク4の側面周囲、電子回路基板3及びヘッド2のタンク4側の上部部分を覆うヘッドカバー61を設けている。
【0030】
ヘッドカバー61は、樹脂の射出成型で形成している。ヘッドカバー61は、インク導入口45とインク排出口46と気泡排出口47を避けるように孔が形成されている。このヘッドカバー61の取り付けはスナップフィットで行なわれ、その後シーリング材で覆われる。
【0031】
そして、ヘッドカバー61の上面61aには、周囲を囲み、上面に垂れ落ちたインクの廃液(廃インク)を堰き止めて一箇所に集める複数の突起部であるリブ62a〜62dが設けられている。ここで、ヘッドカバー61のヘッド長手方向の端部ではリブ62aとリブ62dとの間に開口部63を形成している。
【0032】
この上面のリブ62aとリブ62dとの間で形成された開口部63に対応して、ヘッドカバー61の側面61bには、上下方向に、誘導溝部64を形成する2本の突起部であるリブ65a、65bが設けられ、開口部63から流出する廃インクを下方の排出部66に誘導する。
【0033】
また、ヘッドカバー61の側面61bの下端縁部及び誘導溝部64を設けた側と反対側の端縁部にも突起部であるリブ67a、67bが設けられている。ここで、リブ67aとリブ64bとの間には排出部66に臨む開口部68を形成し、側面に垂れた(付着した)廃インクを開口部68から排出部66に誘導している。
【0034】
このように構成したので、例えばヘッドユニット1を交換するために供給チューブ45をジョイント部54から取り外すとき、供給チューブ45内の圧力が高い状態でジョイント部54をはずした場合などには、供給チューブ45からヘッドカバー61の上面や側面などにインクが垂れてしまう。
【0035】
このとき、ヘッドカバー61の上面61aに垂れ落ちた廃インクはリブ62a〜62dで塞き止められて開口部63から誘導溝部64を通じてヘッドカバー61の下方の排出部66に誘導される。また、ヘッドカバー61の側面61bに垂れ落ちた廃インクはリブ67a、67bで塞き止められて開口部68からヘッドカバー61の下方の排出部66に誘導される。
【0036】
これにより、ヘッドカバー61の外周面に垂れ落ちた廃インクは特定の場所であるヘッドカバー61の排出部66に誘導されるので、排出部66で廃インクを受けることができるようになり、印写中にヘッドカバー61に垂れ落ちた廃インクが下方の印字機構部に垂れ落ち、機構部を汚したり、印写中の用紙に垂れ落ちることを防止できる。
【0037】
この場合、廃インクを誘導する誘導路をリブ(突起部)によって形成しているので、ヘッドの幅の増加を抑えることができる。
【0038】
このように、タンクには液体を供給するチューブを着脱自在に連結するジョイント部が設けられ、ヘッドの液滴吐出側を下方にしたとき、タンクの上部側からタンクの周囲及びヘッドの少なくとも上部部分の周囲を覆うヘッドカバーが設けられ、ヘッドカバーの表面側にはジョイント部から垂れた液体を誘導する誘導路が設けられている構成とすることで、ヘッドサイズを可能な限り小さくして廃液を特定の場所に誘導できるようになる。
【0039】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドユニットの第2実施形態について図5を参照して説明する。なお、図5は同ヘッドユニットのヘッドカバーの外観斜視図である。
本実施形態では、ヘッドカバー61の側面61bに毛細管現象を生じる微細なパターン68を形成し、毛細管現象によって排出部66に廃インクを誘導集約するようにしている。ここでは、前記第1実施形態における誘導溝部64の一方を形成しているリブ65bを設けないで微細なパターン69を誘導路の一部としている。
【0040】
なお、微細パターン68は射出成型によって形成することができる。また、ヘッドカバー61の上面61aにも微細パターン68を形成することができる。
【0041】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドユニットの第3実施形態について説明する。
本実施形態では、ヘッドカバー61の表面に撥液性を付与する処理を施している。これにより、ヘッドカバー61の表面に付着した廃液となるインクを排出部66側に向けて容易に移動させることができる。また、清掃時も撥液性によって簡単に清掃することができる。
【0042】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドユニットを備える画像形成装置の一例について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は同装置の要部模式的斜視説明図、図7は要部正面説明図である。
この画像形成装置は、ライン型画像形成装置であり、複数の液体吐出ヘッドユニット1をヘッドベース部材71上に千鳥状に配列した記録ヘッド70を備えている。ここで、液体吐出ヘッドユニット1の排出部66に対応してインクを受け止める回収部72を配置している。
【0043】
一方、記録ヘッド70に対向して被記録媒体を搬送する搬送ベルト81を有し、搬送ベルト81は駆動ローラ82と従動ローラ83との間に掛け回されて、被記録媒体搬送方向(矢示方向)に周回移動される。
【0044】
これにより、液体吐出ヘッドユニット1のヘッドカバー61に垂れ落ちた廃インクは排出部66に誘導集約されて回収部72にて回収され、印写中にヘッドカバー61に付着した廃インクが印写面に垂れ落ちることが防止され、画像品質の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0045】
1 液体吐出ヘッドユニット
2 ヘッド
3 電気回路基板
4 タンク
45 供給チューブ
54 ジョイント部
61 ヘッドカバー
62a〜62d、65a、65b、67a、67b リブ
64 誘導溝部
63、68 開口部
66 排出部
69 毛細管現象を生じる微細なパターン
70 回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するヘッドと前記ヘッドに供給する液体を収容するタンクとが一体化され、
前記ヘッドと接続する電子部品が実装された電気回路基板が前記ヘッドとタンクとの間に介装された液体吐出ヘッドユニットであって、
前記タンクには液体を供給するチューブがジョイント部を介して着脱可能に接続される供給ポートを有し、
前記ヘッドの液滴吐出側を下方にしたとき、前記タンクの上部側から前記タンクの周囲及び前記ヘッドの少なくとも上部部分の周囲を覆うヘッドカバーが設けられ、
前記ヘッドカバーには、上面に垂れた液体を下方に向けて誘導する誘導路を形成する突起部が設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッドユニット。
【請求項2】
前記ヘッドカバーの表面には毛細管現象によって前記液体を誘導する溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項3】
前記ヘッドカバーの表面には撥液処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドユニットの誘導路で誘導された液体を受ける廃液受けと、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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