説明

液体吐出ヘッド

【課題】高密度に配置された吐出孔及び圧力室に応じて駆動素子及び該駆動素子への配線の高密度化を実現すると共に、安定した吐出を実現する液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】2次元状に配置されたノズル12及び圧力室14に対応して2次元状に配置される圧電素子26は、パッド22から垂直方向へ形成される垂直導電部材38及び水平導電部材46を介して圧電素子配設面24Aの圧力室14と反対側に接合される電気配線構造体45に実装されるSWIC23と接合されるので、駆動信号を伝送する電気配線を高密度に形成することが可能になる。また、電気配線構造体45は圧電素子配設面24Aに接合される絶縁性構造部材40、断熱部材42、放熱部材44を下から圧電素子配設面24Aから順に積層させた構造を有し、放熱部材44にSWIC23が実装されるので、SWIC23の発熱によるヘッド100内のインクの温度変動を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッドに係り、特に、吐出孔から吐出させる液体に吐出力を与える駆動素子の配線及び駆動回路等の高密度化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェット記録装置が普及している。インクジェット記録装置は印字ヘッドに備えられたノズルに対応したアクチュエータをデータに応じて駆動し、ノズルからインクを吐出させてメディア上にデータに応じた画像やドキュメントなどを形成する。
【0003】
インクジェット記録装置では結果画像の高品質化への要求が高くなっている。高密度に配置された微小サイズのドットによって画像を構成することで、結果画像の高品質化が達成されている。ドットサイズを微小化させるにはノズル径を微小化してノズルから1回に吐出されるインク滴の量を微少量化すればよく、また、ドット配置を高密度化するにはノズル密度を上げるとともにドット配置の高密度化に応じた打滴制御を行えばよい。
【0004】
また、圧電素子などのアクチュエータによってインクの吐出力を得る構成では、ノズル配置が高密化されるとノズル配置に応じてアクチュエータも高密度に配置される。アクチュエータが高密度に配置されると、アクチュエータへの駆動信号を伝送する配線をアクチュエータ配設面に配置することが困難になり、該配線は多層化されたフレキシブル基板などの配線部材を用いてアクチュエータ配設面から一旦垂直方向に引き出された後に水平方向に配置され、アクチュエータ及びアクチュエータへの配線の高密度配置が実現されている。
【0005】
特許文献1に記載されたアクチュエータ装置及びインクジェット式記録ヘッド並びにインクジェット式記録装置では、外部配線が接続される実装部が圧電素子とは反対側の領域に設けられ、その一端が実装部に接続されるとともに他端が圧電素子に接続される駆動用配線が設けられる接合部材を有し、この接続部材をノズル及び圧力室などが形成される流路形成基板の圧電素子側に接合することで、インクジェット式記録ヘッドの構造簡略化及び小型化が実現されている。
【0006】
また、特許文献2に記載されたインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及び積層型圧電素子では、L字状断面の圧電素子の段部上に引き出された外部電極が積層セラミック基板のスルーホールにワイヤボンディングで配線され、積層セラミック基板の反対面側に外部電極と電気的に接続されるドライバICが実装される構造を有し、圧電素子の配線の作業性、信頼性が高く構造がシンプル、コンパクトなインクジェットヘッドが実現されている。
【0007】
また、特許文献3に記載された記録ヘッドでは、ノズル、加圧室、振動板、共通インク室等が形成される1枚の接合部のないシリコン単結晶基板と、ヘッド筐体部と、からインクジェット記録ヘッドが構成されるので、構成部品が少なく簡易な構造が実現されている。
【特許文献1】特開2003−136721号公報
【特許文献2】特開2003−251813号公報
【特許文献3】特開平9−327912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アクチュエータから配線を水平方向に引き出す際に用いられるフレキシブル基板等の配線部材の電流容量、サイズによって配線の高密度化には限界がある。例えば、配線部材にフレキシブル基板を用いる場合、このフレキシブル基板を多層化することで配線密度を上げることが可能であるが、製造難易性や強度などの面からフレキシブル基板の多層化にも限界がある。
【0009】
また、ヘッドを小型化するために、上述したフレキシブル基板やヘッドの構造部材にアクチュエータを駆動する駆動回路が実装されることがあり、この駆動回路から発生する熱によってインクの温度変動が大きくなることがある。インクの温度変動が大きくなると、吐出が不安定になり、吐出性能を大きく落とすことになる。
【0010】
特許文献1に記載されたアクチュエータ装置及びインクジェット式記録ヘッド並びにインクジェット式記録装置では、接合部材と流路形成基板とを接合する際に高精度の位置決めが必要であり、製造難易度が高くなってしまう。また、接合部材に設けられる実装部の放熱設計によっては実装部に搭載される駆動回路(ドライバIC)から発生する熱が流路形成基板に伝導されてしまい、圧力発生室内のインクの温度を変化させてしまう恐れがある。
【0011】
また、特許文献2に記載されたインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及び積層型圧電素子では、L字状断面の圧電素子を形成するので、該圧電素子の製造工程が複雑になり圧電素子の製造難易度が高くなってしまう。また、圧電素子の外部電極が引き出される段部が存在するので、圧電素子の高密度配置の妨げになる。
【0012】
また、特許文献3に記載された記録ヘッドでは、構成部品が少なく簡易な構造が実現される技術についてのみ開示されており、記録ヘッド内の高密度配置化については開示されていない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高密度に配置された吐出孔及び圧力室に応じて駆動素子及び該駆動素子への配線の高密度化を実現すると共に、安定した吐出を実現する液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出ヘッドは、被吐出媒体上に液体を吐出させる2次元状に並べられた複数の吐出孔と、前記複数の吐出孔に対応して設けられ、前記吐出孔から吐出させる液体が収容される複数の圧力室と、前記複数の圧力室へ液体を供給する共通液室と、前記圧力室を構成する壁のうち前記吐出孔が形成される壁と対向する壁に設けられ、駆動信号が入力される個別電極を有する圧電素子と、前記圧電素子が有する前記個別電極から取り出され、該個別電極と電気的に接合される取出電極と、前記圧力室を構成する壁の前記液体の吐出方向と反対側の面に接合される構造部材と、前記構造部材の大気に接する面に実装され、前記圧電素子へ与える駆動信号が生成される駆動回路と、を備え、前記構造部材は、2以上の部材を積層させた積層構造を有し、少なくとも大気に接する最外層は放熱部材で構成されると共に、少なくとも1層以上の断熱部材を有し、前記構造部材を形成する部材は、前記圧電素子が取り付けられる面に対して略垂直方向に形成される垂直導電部材及び該垂直導電部材と略直交方向に形成される水平導電部材のうち少なくとも前記垂直導電部材を含み、一方の端が前記取出電極に接合され他方の端が前記駆動回路に接合される導電部材を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、2次元状に配置された吐出孔及び圧力室を有する液体吐出ヘッドにおいて、各圧力室に対応して設けられる圧電素子に駆動信号を伝送する配線部材を、断熱部
材及び放熱部材を含む構造部材(上部構造体)を貫通するように形成される垂直導電部材及び該垂直導電部材と略直交方向に形成される水平導電部材のうち少なくとも垂直導電部材を含むように構成される。したがって、圧電素子駆動回路と該圧電素子との電気配線の高密度化を容易に実現することができる。
【0016】
また、構造部材は、最外層に設けられる放熱部材と1層以上の断熱部材とから構成され、該放熱部材に圧電素子を駆動する駆動回路を実装するように構成されるので、駆動回路から発生する熱を外部に効率よく放出させると共に、駆動回路から発生する熱が液体吐出ヘッド内(液体吐出ヘッドから吐出する液体)へ与える影響を低減させることができる。
【0017】
導電部材は、1つの垂直導電部材によって構成されてもよいし(1つの垂直導電部材を介して圧電素子と駆動回路とを接合してもよいし)、垂直導電部材及び水平導電部材から構成されてもよい。また、導電部材には、複数の垂直導電部材及び複数の水平導電部材が含まれていてもよい。
【0018】
垂直導電部材は、構造部材全体を貫通するように形成されてもよいし、断熱部材及び放熱部材のうち少なくとも何れか1つの部材を貫通するように形成され、水平導電部材を介して他の垂直導電部材や駆動回路に接合されてもよい。なお、導電部材を絶縁被覆(絶縁処理)すれば、放熱部材として金属を用いることも可能である。
【0019】
吐出孔から吐出される液体に吐出力を与える圧電素子は、複数の圧力室に共通の圧電体(圧電部材)を備え、該圧電体に各圧力室に対応して個別電極を備えてもよいし(電極分割)、圧力室ごとに圧電体及び個別電極を備えてもよい(メカ分割)。また、圧電素子は複数の圧電体および電極が交互に積層される積層構造を有していてもよい。
【0020】
液体吐出ヘッドには、吐出孔から吐出された液体を受容する被吐出媒体の吐出可能幅に対応する長さの吐出孔列を有するライン型ヘッドや、該吐出可能幅に満たない長さの吐出孔列を有し、被吐出媒体の幅方向に被吐出媒体と液体吐出ヘッドとを相対的に移動させながら被吐出媒体の幅方向の全幅に液体を吐出させるシャトル型ヘッドがある。
【0021】
なお、被吐出媒体には、液体吐出ヘッドによって吐出された液体を受ける媒体(メディア)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材料や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記構造部材は、前記圧力室を構成する壁の前記液体の吐出方向と反対側の面に接合される絶縁性構造部材を有することを特徴とする。
【0023】
構造部材の圧力室と接合される面に断熱部材や放熱部材を支持する絶縁性構造部材を設けることで、断熱部材や放熱部材、放熱部材に実装される駆動回路を確実に支持することができ、所定のヘッドの剛性を確保することができる。また、断熱部材や放熱部材に施す絶縁処理が不要になる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記駆動回路は、1以上のICに集積化された構造を有し、前記ICは、前記放熱部材の該駆動回路が実装される面にフリップチップ実装されることを特徴とする。
【0025】
圧電素子の駆動信号を発生させる駆動回路は、1又は2以上のICに集積化し、このICを放熱部材の駆動回路実装面にフリップチップ実装するので、駆動回路を高密度に実装することができ、駆動回路が実装される面のうち駆動回路が占める領域 (面積)を小さく
することができる。また、駆動回路を分散配置することができるので、それぞれの駆動回路近傍における垂直導電部材及び水平導電部材の配置密度を低くすることが可能になる。
【0026】
駆動回路実装面は放熱部材の断熱部材と反対側(放熱部材の上面側)でもよいし、断熱部材側(放熱部材の下面側)でもよい。
【0027】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記放熱部材の熱伝導率α1 と、前記断熱部材の熱伝導率βと、の関係は、次式α1 >βを満たすことを特徴とする。
【0028】
駆動回路の放熱の点で放熱部材はその熱伝導率α1 が15(W/m・K)を超える部材が好ましく、この条件を満たす部材にはアルミナなどのセラミックや金属部材などがある。また、共通液室内の温度コントロールの点で断熱部材はその熱伝導率βが1(W/m・K)未満の部材が好ましく、この条件を満たす部材にはエポキシ樹脂やガラスなどがある。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記絶縁性構造部材は、熱硬化型エポキシ樹脂に無機微粒子を含有させた部材を含むことを特徴とする。
【0030】
熱硬化型エポキシ樹脂や熱硬化型エポキシ樹脂に無機微粒子を含有させた材料は耐熱性が高く、駆動回路をフリップチップ接合させるのに好適である。また、電気絶縁性が高く吸水性が低いので、液体吐出ヘッドを構成する構造体に用いるのに好適である。
【0031】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記駆動回路は、駆動回路用放熱部材を具備することを特徴とする。
【0032】
駆動回路に駆動回路用放熱部材を具備することで、該駆動回路から発生する熱を効果的に外部に放出させることができる。
【0033】
駆動回路用放熱部材には、銅、アルミなど熱伝導率が高い金属部材を用いるとよい。
【0034】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記駆動回路用放熱部材の熱伝導率α2 と前記断熱部材の熱伝導率βとの関係は、次式α2 >βを満たすことを特徴とする。
【0035】
駆動回路用放熱部材の熱伝導率α2 は駆動回路が実装される放熱部材の熱伝導率α1 と同程度でもよい。また、駆動回路用放熱部材の熱伝導率α2 が放熱部材の熱伝導率α1 よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0036】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記共通液室及び前記圧電素子は、前記圧力室の液体吐出方向と反対側に設けられ、前記導電部材は前記圧電素子が配設される面から立ち上がり前記共通液室を貫通するように設けられ、一方の端が前記取出電極と接合され、他方の端が前記駆動回路に接合されることを特徴とする。
【0037】
共通液室を圧力室の液体吐出方向側に備えると、吐出孔や圧力室が高密度化された場合に共通液室のサイズが小さくなり、高い吐出周波数で液体を吐出させる際に圧力室への液体供給が間に合わない恐れがある。また、共通液室を大きくすると圧力室から吐出孔までの吐出側流路の長さが長くなってしまい、高い吐出周波数を維持することができない恐れ
がある。したがって、圧力室の液体吐出方向と反対側に所定の面積を持った面状の共通液室を備え、この共通液室から複数の圧力室へ垂直方向に液体を供給することで、高い吐出周波数を維持しながら遅滞なく液体の供給を行うことができる。
【0038】
また、圧電素子の配設面から立ち上がり共通液室を貫通するように圧電素子への駆動信号を伝送する導電部材が配設される構造を有するので、圧電素子(個別電極)、圧力室、吐出孔を高密度に配置することが可能になる。
【0039】
この導電部材は、共通液室に収容される液体と接触しないように(所定の絶縁性能を確保するように)、絶縁性構造部材によって覆われる。
【0040】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記駆動回路は、前記放熱部材上に接する領域のうち、前記圧力室又は前記共通液室の非配設領域に対応する領域に配設されることを特徴とする。
【0041】
駆動回路は共通液室(液体流路)が配設される領域(液体流路範囲)を避けて配置されるので、駆動回路から発生する熱による該液体流路内の液体の温度変動を低減させることができる。該液体流路内の温度変動を低減させることで、液体の濃度上昇や粘度上昇を抑制することができる。
【0042】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記被吐出媒体の液体吐出可能幅の全幅に対応する長さにわたって前記吐出孔が並べられる構造を有することを特徴とする。
【0043】
被吐出媒体の全幅に対応するラインヘッドでは、被吐出媒体とヘッドとを被吐出媒体の幅方向と略直交する方向に沿って、液体吐出ヘッド及び被吐出媒体のうち少なくとも何れか一方を1度だけ移動させることで、被吐出媒体の液体吐出可能領域の全域に液体を吐出させることができる。被吐出媒体の幅よりも短い幅のヘッドを被吐出媒体の幅方向に走査させる方式に比べて短い時間で被吐出媒体の液体吐出可能領域の全域に液体を吐出させることができる。
【0044】
請求項11に記載の発明は、請求項10記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記被吐出媒体の液体吐出可能幅の全幅に満たない長さにわたって前記吐出孔が並べられる吐出孔列を有する液体吐出ヘッドモジュールを、前記被吐出媒体の幅方向に複数並べた構造を有することを特徴とする。
【0045】
大きなサイズ(例えば、ポスターサイズなど)を有する被吐出媒体に対応する長尺ヘッドは、製造時 (組み立て時)のばらつきによって吐出性能が変わってしまい、製造時の難易度が高くなるが、長尺ヘッドに比べて製造容易な短尺ヘッドを複数組み合わせることで、大サイズの被吐出媒体に対応した長尺ヘッドを容易に製造可能である。
【0046】
ヘッドモジュールを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被吐出媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、2次元状に配置された圧電素子へ駆動信号を伝送する導電部材を、最外層に放熱部材が設けられるとともに1層以上の断熱部材が設けられた構造部材を圧電素子の取出電極から垂直方向に貫通するように配設し、該構造部材の垂直配線部材と略直交する面に実装される駆動回路と電気的に接合されるので、高密度化された電気配線を容易に実現することができる。
【0048】
また、該放熱部材に圧電素子を駆動する駆動回路を実装するように構成されるので、駆動回路から発生する熱を外部に効率よく放出させるとともに、該断熱部材を設けることで、駆動回路から発生する熱の液体吐出ヘッド内への影響を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0050】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッド(吐出デバイス、以下、単にヘッドと記載することがある)10の構造を示す平面透視図であり、図2は、ヘッド10の立体構造を示す断面図 (図1中、2−2線に沿う断面図)である。
【0051】
図1に示すヘッド10は、例えば、吐出孔から吐出させるインクによってメディア(被吐出媒体)上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドである。なお、ヘッド10には印字ヘッドや記録ヘッドなどと呼ばれるものを含んでいてもよい。
【0052】
図1に示すように、ヘッド10は、インク(液体)を吐出させるノズル12 (吐出孔)と、ノズル12から吐出させるインクが収容され、その平面形状が略正方形の圧力室14と、インク供給系 (不図示)から共通液室(共通流路)16を介して圧力室14へインクを供給する供給絞り18と、前記インク供給系から共通液室16へインクが補給される補給口20と、圧力室14に収容されているインクに吐出力を与える圧電素子(図1中不図示、図2に符号26で図示)に備えられる個別電極(図1中不図示、図2に符号28で図示)から該圧電素子の外部に取り出されたパッド22 (取出電極)と、を有している。
【0053】
図1では圧電素子26の外部にパッド22を設ける態様を示したが、パッド22は圧電素子26の個別電極28が形成される面に形成されてもよい。また、共通電極と兼用される加圧板(図1中不図示、図2に符号24で図示)にパッド22を設ける場合には、加圧板24とパッドとの間には不図示の絶縁層が形成される。
【0054】
なお、図1中、符号23(破線で図示)に示した略正方形は、各圧電素子を駆動する駆動信号が生成されるスイッチングIC(駆動回路、SWIC)である。
【0055】
図1に示すヘッド10は、2個のノズル12が行方向に並べられたノズル群を、列方向に6列有している。なお、図1に示すノズル配列はあくまでも一例であり、1つのノズル群が2以上(又は1つ)のノズル12を有してもよい。また、列方向のノズル群は6列未満でもよいし、6列以上でもよい。
【0056】
また、図2によれば、ヘッド10は、圧力室14の天面を形成する加圧板24の圧力室14と反対側の面には圧力室14に収容されるインクに吐出力を与える圧電素子(圧電アクチュエータ)26が設けられている。圧電素子26はその上部(加圧板24と反対側の面)に駆動信号が印加される個別電極28を有し、該個別電極28と反対側の面に設けられる共通電極はSUSなどの金属材料 (導電性を備えた材料)によって構成される加圧板24と兼用される。
【0057】
なお、加圧板24が樹脂やセラミックなどの絶縁性を有する材料(絶縁材料、非導電性材料)によって構成される場合には、個別電極28と反対側の面には金属などの導電性部材によって形成される共通電極が設けられる。
【0058】
図2には、圧電素子26を加圧板24の圧力室14の反対側(即ち、圧力室14の外部
)に備える態様を示したが、圧電素子26に所定の絶縁処理及び耐インク処理を施して圧電素子26を加圧板24の圧力室14側(即ち、圧力室14の内部)に備えてもよい。
【0059】
圧電素子26を圧力室14の内部に備える態様では、圧力室14の外部に設けられるパッド22と個別電極28とを電気的に接合させるように、加圧板24を貫通する配線が設けられる。
【0060】
また、図2に示すように、ヘッド10は複数のキャビティプレートを積層させた積層構造を有している。即ち、ヘッド10は、ノズル12が形成されるノズルプレート30に、圧力室14や共通液室16などの流路、液室が形成される流路プレート32が積層され、流路プレート32には加圧板24が積層される。
【0061】
更に、加圧板24の圧電素子配設面24Aには、個別電極28から圧電素子26の外部へ引き出されたパッド22が設けられ、このパッド22には、パッド22と略直交する垂直方向に形成される垂直導電部材38が電気的に接合されている。
【0062】
垂直導電性部材38は、加圧板24の圧力室14と反対側の面(圧電素子配設面24A)に形成される絶縁性構造部材40及び絶縁性構造部材40の加圧板24と反対側に積層される断熱部材42、断熱部材42の絶縁性構造部材40と反対側に積層される放熱部材44を含む電気配線構造体45を貫通するように形成される。
【0063】
放熱部材44には、その一方の端部が垂直導電部材38と電気的に接合される水平導電部材46が形成され、水平導電部材46の他方の端部は放熱部材の断熱部材と反対側の面(駆動回路実装面)44Aに実装されるスイッチングIC23と接合される。
【0064】
即ち、上述したように、水平導電部材46、垂直導電部材38、パッド22を含む駆動信号伝送路を介してスイッチングIC23と圧電素子26が有する個別電極28とは電気的に接合され、スイッチングIC23で生成される駆動信号は該駆動信号伝送路を通って個別電極28へ伝送される。
【0065】
本例に示すスイッチングIC23を構成する電子部品(電子デバイス)及びそれらを電気的に接合する電気配線部材(電気配線パターン)は、半導体製造工程や印刷工程などの工程を経てベアチップ (チップコア)50内に形成され、このベアチップ50の入出力端子には水平導電部材46に形成された突起電極(バンプ)52に直接接合される。即ち、スイッチングIC23は放熱部材44にフリップチップ実装される。なお、図2に示す方式では、ベアチップ50の表面が放熱部材44側を向くフェイスダウン実装となる。
【0066】
上述した突起電極52とベアチップ50との接合には導電性接着剤が用いられる。また、前記駆動信号伝送路を構成する各部材の接合にも導電性接着剤が用いられる。もちろん、これらの部材をはんだによって電気的に接合してもよい。
【0067】
本例に示したフリップチップ実装を用いると、リードフレームを持ったICに比べてスイッチングIC23の実装面積を小さくすることができ、駆動回路の高密度配置や分散配置を容易にする。また、フリップチップ実装ではワイヤボンディングに比べて配線長が短くなり、ボンディングワイヤによるインダクタ成分を除去することができる。したがって、電気的特性が向上し(駆動信号の伝送における遅延時間が短くなり)高速動作が可能になる。
【0068】
なお、ベアチップ50と突起電極52との接合部を保護するために、ベアチップ50及びその実装領域はエポキシ樹脂やシリコンなどの絶縁部材によって封止(モールド)され
る。
【0069】
図2には、放熱部材44の断熱部材反対側面44Aに水平導電部材46を形成する態様を示したが、図3に示すように、水平導電部材46は放熱部材44の断熱部材側面44Bや、断熱部材42の放熱部材側面42A或いは絶縁性構造部材側面42B、絶縁性構造部材40の断熱部材側面40A或いは圧電素子側面40Bに形成されてもよい。
【0070】
即ち、水平導電部材46は、絶縁性構造部材40、断熱部材42、放熱部材44の垂直導電部材38と交差する面の何れの面に形成してもよい。また、水平導電部材46はこれらの面のうち少なくとも何れか1つの面に形成される。
【0071】
図3に示す符号46Aは、断熱部材42の放熱部材側面42Aに形成された水平導電部材46を示し、符号46Bは、放熱部材44の断熱部材側面44Bに形成された水平導電部材46を示す。また、符号46C及び46Dはそれぞれ絶縁性構造部材40の断熱部材側面40A及び断熱部材42の絶縁性構造部材側面42Bに形成された水平導電部材46である。
【0072】
言い換えると、絶縁性構造部材40、断熱部材42、放熱部材44を圧電素子配設面24A側から順に積層させた構造を有する電気配線構造体45が圧電素子配設面24Aに接合され、この電気配線構造体45を貫通するように圧電素子26へ与える駆動信号が伝送される導電部材が形成される。該導電部材は垂直導電部材38と水平導電部材46とから構成されている。
【0073】
このように、電気配線構造体45を多層構造とし、各層の水平面に水平導電部材46を分散させることで、1つの水平面に形成される水平導電部材46の配置密度を低くすることができると共に1つの層に形成される垂直導電部材38を分散させることができ、垂直導電部材38及び水平導電部材46のパターンニングが容易になる。更に、ベアチップ50の入出力端子の位置に合わせて各層の水平面に形成される水平導電部材46をパターンニングするとより好ましい。
【0074】
なお、放熱部材44の断熱部材反対側面44Aには垂直導電部材38と電気的に直接接合される突起電極54が形成され、この突起電極54はベアチップ50の入出力端子と電気的に接合される。
【0075】
ここで、絶縁性構造部材40には、所定の絶縁性能及び所定の強度を持ったエポキシ樹脂などの絶縁材料を用いるとよい。また、絶縁性構造部材40には加圧板24や圧電素子26の変形を阻止しないように、圧電素子26が配設される領域には凹部40Cが形成される。
【0076】
断熱部材42には、エポキシ樹脂やガラスなどの材料が用いられ、スイッチングIC23から発生した熱をヘッド10の内部 (特に、圧力室14や共通液室16などのインク流路)に伝えないように設けられている。この断熱部材42の厚みは、単位時間あたりのインクの置換量と、常温からのインク温度上昇が所定の範囲内になるように、スイッチングIC23の発熱量等より決定される。なお、インクの温度上昇範囲は常温から5℃以内が好ましい。
【0077】
一方、スイッチングIC23が実装される放熱部材44は、アルミナなどのセラミックや金属材料などの熱伝導率が高い材料を用いることで所定の放熱性能が確保され、スイッチングIC23から発生した熱をヘッド10の外部へ効率よく逃がすことができる。放熱部材44に金属材料を用いる場合、垂直導電部材38及び水平導電部材46との絶縁を確保するために、垂直導電部材38及び水平導電部材46が形成される領域には所定の絶縁処理が施される。
【0078】
このように、垂直導電部材38及び水平導電部材46が形成される電気配線構造体45を多層化し、この多層構造に放熱層 (放熱部材44)及び断熱層(断熱部材42)を含むことで、ノズル配置領域(ノズルプレート30上のノズルが配置される領域を放熱部材44の断熱部材反対側面44Aに投影させた領域)にスイッチングIC23を実装することが可能になり、ヘッド10の小型化を実現することができる。
【0079】
また、スイッチングIC23を熱伝導率が高い放熱部材44に実装することで、スイッチングIC23の放熱効果を得ることができ、一方、インク流路に近い少なくとも1層を熱伝導率の低い断熱部材42で構成することで、スイッチングIC23の発熱に伴うインク流路内のインクの温度変動を低減し、吐出デバイスの吐出特性を安定に保つことができる。
【0080】
ここで、放熱部材44の熱伝導率α1 と断熱部材42の熱伝導率βとの関係は、次式〔数1〕を満たし、放熱部材44の熱伝導率α1 と絶縁性構造部材40の熱伝導率γとの関係は、次式〔数2〕を満たしている。
【0081】
〔数1〕
α1 >β
〔数2〕
α1 >γ
なお、断熱部材42の熱伝導率βと絶縁性構造部材40の熱伝導率γとの関係は、次式〔数3〕を満たす。
【0082】
〔数3〕
β≦γ
放熱部材44にセラミックを用いる場合の熱伝導率α1 は、次式〔数4〕に示すとおりである。
【0083】
〔数4〕
15(W/m・K)≦α1 ≦30(W/m・K)
また、放熱部材44にアルミナを用いる場合の熱伝導率α1 は、次式〔数5〕に示すとおりである。
【0084】
〔数5〕
α1 =17(W/m・K)
したがって、放熱部材44には15(W/m・K)以上の熱伝導率を有する材料が好適に用いられる。
【0085】
一方、断熱部材42にエポキシ樹脂を用いる場合の熱伝導率βは、次式〔数6〕に示すとおりである。
【0086】
〔数6〕
β=0.19(W/m・K)
また、断熱部材42にガラスを用いる場合の熱伝導率βは、次式〔数7〕に示すとおりである。
【0087】
〔数7〕
0.55≦β≦0.75(W/m・K)
したがって、断熱部材42には1(W/m・K)以下の熱伝導率を有する材料が好適な材料に用いられる。
【0088】
上記の如く構成された液体吐出ヘッド10は、圧力室14や共通液室16などの流路を構成する流路構造体内に配置される圧電素子26の個別電極28から圧電素子配設面24Aに引き出されたパッド22上には、鉛直方向(インクの吐出方向と反対方向)に垂直導電部材38が形成され、この垂直導電部材38は前記流路構造体のインク吐出方向と反対側に接合される絶縁性構造部材40を貫通し、更に、絶縁性構造部材40に積層される断熱部材42及び放熱部材44を貫通し、放熱部材44の断熱部材反対側面44Aに実装される水平導電部材46を介してスイッチングIC23と接合されるように構成される。したがって、高密度に配置された圧力室14に対応して設けられる圧電素子26(個別電極28)からスイッチングIC23への電気的接続を容易にすることが可能になる。
【0089】
また、スイッチングIC23から発生する熱をヘッド10の外部に放出させる放熱部材44にスイッチングIC23を実装し、スイッチングIC23と前記流路構造部材との間に断熱部材42を備え、スイッチングIC23から発生する熱をヘッド10内に伝えることなく外部に放熱するので、ヘッド10内のインクの温度変動を低減させ、好ましいインク吐出を実現することができる。
【0090】
なお、断熱部材42(断熱層)として複数の層(部材)を積層させた積層構造を有していてもよいし、垂直配線部材38及び水平配線部材46に絶縁被覆(絶縁処理)を施すことで、断熱部材42と絶縁性構造部材40とを兼用する態様も可能である。
【0091】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて説明する。なお、第2実施形態中第1実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
図4は、マトリクス配置されたノズル12を有するヘッド100の構造例を示す平面透視図であり、図5はヘッド100の立体構造を示す断面図(図4中5−5線に沿う断面図)である。
【0093】
ヘッド100から吐出されたインクによってメディア上に形成されるドットの密度を高くする(ドットピッチを高密度化する)ためには、ヘッド100におけるノズル12のピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド100は、図4及び図5に示すように、各ノズル12及び各ノズル12に対応する圧力室14を千鳥でマトリクス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上ノズルピッチの高密度化を達成している。
【0094】
各ノズル12に対応して設けられる圧力室14は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル12と供給絞り18が設けられている。各圧力室14は供給絞り18を介して共通液室16と連通されている。
【0095】
かかる構造を有する多数のノズル12及び圧力室14などを主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってノズル12及び圧力室14など一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に投影されたノズルピッチPはd×cosθとなる。
【0096】
図4には、4行6列のマトリクス配置されたノズル12を有するヘッド100を示したが、ヘッド100には更に多くのノズル12を有していてもよい。
【0097】
即ち、主走査方向については、各ノズル12が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に投影されるノズル列が1インチあたり2400個(2400ノズル/インチ)に及ぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0098】
このようなマトリクス状に配列されたノズル12を有するヘッド100では、図1に示すように、放熱部材44の断熱部材反対側面44Aに投影させた各ノズル及び圧力室が配置されるノズル・圧力室領域110(2点破線で図示)内にスイッチングIC23を配置すると、該断熱部材反対側面44Aの電気接続パターン(水平導電部材46)が高密度になり、このような高密度の電気接続パターンを形成することは困難である。
【0099】
上記の問題点を解決するために、スイッチングIC23が実装される領域の直下(即ち、ノズル・圧力室領域110)にはノズル12を配置しないようなノズル配置が考えられるが、このようなノズル配置ではノズル12のピッチ誤差を拡大させてしまう恐れがある。
【0100】
したがって、図6に示すように、ヘッド100の構造体120の周囲領域(即ち、ノズル・圧力室領域110を除いた領域)にスイッチングIC23を配置することで、電気配線パターンを容易に形成することができる。
【0101】
更に、図7(a) に示すように、ヘッド100内のインク流路が形成される領域を断熱部材反対側面44Aに投影したインク流路範囲130にスイッチングIC23を実装しないように構成すると、スイッチングIC23から発生する熱によってインク流路内の温度上昇を抑制することができ、より好ましい。一般に、図7(a) に示すインク流路範囲130を駆動回路実装面に投影した面積は、図4、図6に示すノズル・圧力室領域110を駆動回路実装面に投影した面積に比べて大きくなっている。
【0102】
なお、図7(b) に示すように、スイッチングIC23が実装される駆動回路実装面を放熱部材44の断熱部材側面44Bとしてもよい。
【0103】
更にまた、図8及び図9に示すように、スイッチングIC23に放熱板140(駆動回路用放熱部材)を備えることで、スイッチングIC23から発生する熱をヘッド100の外部に効率よく逃がすことができ、この熱によるインク流路内のインクの温度上昇を抑制する効果を向上させることが可能になる。図9に示す放熱板140の断面形状が凹字形状を有する態様を示したが、放熱板140の放熱効果を高くするために、凹字形状の窪み部分等に突起や凹部などを設け、放熱板140の表面積を大きくする、更に放熱効果の向上が見込まれる。
【0104】
ここで、放熱板140には、熱伝導率が高いセラミックや金属材料が用いられる。放熱板140の熱伝導率α2 と絶縁性構造部材40の熱伝導率γとの関係は、次式〔数8〕を満たす。
【0105】
〔数8〕
α2 >γ
なお、放熱板140の熱伝導率α2 と放熱部材44の熱伝導率α1 との関係は、α2 =α1 でもよいし、α2 >α1 、α2 <α1 の何れでもよい。
【0106】
上記の如く構成されたヘッド100は、2次元状に配置されたノズル12を断熱部材反対側面44Aに投影したノズル・圧力室領域110の周囲(即ち、ヘッド構造体120の周囲領域)にスイッチングIC23を実装するので、電気配線パターンの配置密度を高密度にすることなく容易に配置することができる。好ましくは、スイッチングIC23はイ
ンク流路が配置される領域に対応するインク流路範囲130を避けて配置する態様であり、更に好ましくは、スイッチングIC23に放熱板140を備える態様である。
【0107】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドについて説明する。第3実施形態中、上述した第1及び第2の実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0108】
図10は、第3実施形態に係るヘッド200の立体構造を示す断面図である。図10に示すヘッド200は、第1及び第2実施形態に示すヘッド10、100と同様に、複数のキャビティプレートを積層させた積層構造を有し、加圧板24の圧力室14と反対側には共通液室16や不図示のインク供給系から共通液室16へインクを補給する補給口204などが形成される共通液室プレート202が積層され、更に、共通液室プレート202には、断熱部材42及び放熱部材44が積層される構造を有している。
【0109】
言い換えると、この共通液室プレート202は第1及び第2実施形態に示した絶縁性構造部材40として機能している。
【0110】
即ち、ヘッド200には、ノズル12と供給絞り18を有する圧力室14の天面を構成する加圧板24の圧力室14と反対側の面(圧電素子配設面24A)には圧電素子26が設けられ、圧電素子26の個別電極28から圧電素子配設面24Aに引き出されたパッド22の上には、パッド22と電気的に接合される垂直導電部材38を内部に有する絶縁性構造部材40が共通液室16を貫通するように配設されている。
【0111】
この垂直導電部材38のパッド22に接合される端の反対側の端部は、断熱部材42或いは放熱部材44に形成される水平導電部材46や、断熱部材反対側面44Aに実装されるスイッチングIC23に接合される。
【0112】
図10に示すヘッド200において、共通液室16内を貫通するように形成されている垂直導電部材38は、絶縁性構造部材40によって覆われる構造を有し、共通液室16に収容されているインクとの電気的絶縁性が確保されると共にインクから保護される。
【0113】
言い換えると、圧力室14ごとに個別電極28から引き出されて設けられたパッド22上に、垂直に柱のように立ち上がった垂直導電部材38及び絶縁性構造部材40は、断熱部材42、放熱部材44を有し、圧電素子26へ与える駆動信号を伝送する垂直導電部材38及び水平導電部材46が形成される電気配線構造体45を下から支え、共通液室16となる空間が形成されている。このように立ち上がった垂直導電部材38及び絶縁性構造部材40はその形状から、以降エレキ柱と呼ばれることがある。
【0114】
図10には、エレキ柱の一方の端部(上端部)の幅が、他方の端部(下端部)の幅よりも大きくなる略テーパ形状を有する態様を示したが、エレキ柱の形状はこれに限定されず、両端部間の全域にわたって略同一幅を持った形状でもよいし、略中央部の幅が両端部の幅より大きい(小さい)形状でもよい。
【0115】
この共通液室16は、各圧力室14が配設される全領域にわたって形成される1つの大きな空間となっており、圧力室配設面に対応する面形状を有している。この面状の共通液室16から各圧力室14に対応して加圧板24に設けられる供給絞り18を介して各圧力室14へインクが供給される。
【0116】
本例では、全圧力室14へインクを供給する1つの共通液室16を備える態様を示した
が、共通液室16は2以上の領域に分割されていてもよい。
【0117】
図10に示すようにヘッド200を構成すると、垂直導電部材38の配置を分散させることができると共に、水平導電部材46を複数の層に分散させることができるので、ノズル12及び圧力室14の配置に関わらずスイッチングIC23の実装位置やスイッチングIC23への電気配線パターンの配置上の制約が少なくなる。
【0118】
また、圧力室14の上側に短いインク流路(本例では、加圧板24の厚さ分の流路長を有する供給絞り18)を介して共通液室16と垂直方向に直結するように構成すると、圧力室14へインクを供給する供給側流路の流路抵抗小さくすることができ、高い吐出周波数のインク吐出に対応した高速リフィルが可能になる。したがって、一般的なインクの粘度よりも高い粘度を持ったインクでも、所定の吐出周波数を確保して安定した吐出を行うことができる。
【0119】
図11(a) 〜(f) には、樹脂の一体成形によって共通液室プレート202 (絶縁性構造部材40)を形成し、ヘッド200を製造する製造工程を示す。
【0120】
先ず、図11(a) に示すように、樹脂成形によって共通液室16を支持する絶縁性構造部材40を一体成形する。このときに、垂直導電部材38が形成される部分には貫通穴220が形成される。樹脂成形時にこの貫通穴220となる部分にピンを挿入し、成形後ピンを除去して貫通穴220を形成してもよいし、成形後にレーザ加工等によって貫通穴220を形成してもよい。
【0121】
次に、図11(b) に示すように、メッキ、導電性ペーストによって垂直導電部材38が貫通穴220内に形成され、絶縁性構造部材40の共通液室16と反対側の上面側には、パターンニングされた水平導電部材46が形成される。
【0122】
このようにして、絶縁性構造部材40に垂直導電部材38及び水平導電部材46が形成されると、図11(c) に示すように、絶縁性構造部材40の上面側には、予め垂直導電部材38及び水平導電部材46が形成された断熱部材42及び放熱部材44が積層される。
【0123】
これと同時に、電気的に接合される垂直導電部材38及び水平導電部材46は導電性接着剤やはんだによって接合される。
【0124】
その後、図11(d) に示すように、ベアチップ50(スイッチングIC23、図11(e)参照)の実装パターン及びバンプ52が形成され、図11(e) に示すように、ベアチップ50が所定の実装位置に実装される。
【0125】
このようにして構成された構造体には、図11(f) に示すように、ノズル12、圧力室14、加圧板24、圧電素子26が形成された流路構造体230の圧電素子配設面24Aに形成されたパッド22と、各パッド22に対応する垂直導電部材38と、を接合し、所定の絶縁処理が施され、ヘッド200が完成する。
【0126】
なお、本例では、圧電素子26ごとに垂直導電部材38を設ける態様を示したが、複数の圧電素子26に共通の垂直導電部材38を設けてもよい。また、垂直導電部材38は圧電素子26の駆動信号だけでなく、圧力室14に設けられているセンサ類から得られる信号を伝送してもよい。
【0127】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて説明する。
【0128】
図12は、第4実施形態に係るヘッド300である。ヘッド300は、上述した第1〜第3実施形態で示したヘッド10、100、200と同一構成のヘッドモジュールを千鳥に複数個並べ、メディアの印字可能幅(吐出可能幅)の全幅に対応する長さを持ったフルライン型ヘッドとなるように構成されている。
【0129】
図12に示すヘッド300は、同一構成から成り、メディアの吐出可能幅よりも短い長さを持った5つのヘッドモジュール302(302-1〜302-5)を千鳥配列させた構造を有している。
【0130】
各ヘッドモジュール302には、それぞれが有する圧電素子26(ノズル12)の数に対応したスイッチングIC23が搭載される。本例では、512個(或いは256個)の圧電素子26を駆動可能なスイッチングIC23を複数備えて、各ヘッドモジュール302が有する圧電素子26に対応している。
【0131】
言い換えると、1つのヘッドモジュール302に搭載することができるスイッチングIC23が対応可能な数のノズル12を備えるように、ヘッドモジュール302のサイズ(ノズル数)が決められている。
【0132】
図12に示すように、フルライン型ヘッド300を複数のヘッドモジュール302から構成することで、スイッチングIC23を実装することができる領域を拡大することができ、更に、パージや吸引などのメンテナンス動作をヘッドモジュールごとに実行することができる。また、故障の際にもヘッドモジュール単位で交換することができるので、メンテナンス性の向上が見込まれる。
【0133】
なお、スイッチングIC23は、放熱部材44の断熱部材反対側面44A(ヘッドモジュール302の上面側)に実装されてもよいし、断熱部材側面44B(裏面側)に実装されてもよい。
【0134】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
次に、上述した第1〜第4実施形態に係る液体吐出ヘッド10(100、200、300)を適用したインクジェット記録装置について説明する。
【0135】
図13は本発明に係る液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を搭載したインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置400は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数の印字ヘッド412K,412C,412M,412Yを有する印字部402と、各印字ヘッド(記録ヘッド)412K,412C,412M,412Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部404と、被記録媒体たる記録紙416を供給する給紙部418と、記録紙416のカールを除去するデカール処理部420と、前記印字部412のインク吐出面に対向して配置され、記録紙416の平面性を保持しながら記録紙416を搬送する吸着ベルト搬送部422と、印字部412による印字結果を読み取る印字検出部424と、印画済みの記録紙416(プリント物)を外部に排紙する排紙部426と、を備えている。
【0136】
インク貯蔵/装填部414は、各ヘッド412K,412C,412M,412Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド412K,412C,412M,412Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部414は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0137】
図13では、給紙部418の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0138】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図13のように、裁断用のカッター428が設けられており、該カッター428によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター428は、記録紙416の搬送路幅以上の長さを有する固定刃428Aと、該固定刃428Aに沿って移動する丸刃428Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃428Aが設けられ、搬送路をはさんで印字面側に丸刃428Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター428は不要である。
【0139】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をカセットに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0140】
給紙部418から送り出される記録紙416はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部420においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム430で記録紙416に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0141】
デカール処理された記録紙416は、吸着ベルト搬送部422へと送られる。吸着ベルト搬送部422は、ローラ431、432間に無端状のベルト433が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部412のノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0142】
ベルト433は、記録紙416の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図13に示したとおり、ローラ431、432間に掛け渡されたベルト433の内側において印字部412のノズル面に対向する位置には吸着チャンバ434が設けられており、この吸着チャンバ434をファン435で吸引して負圧にすることによって記録紙416がベルト433上に吸着保持される。
【0143】
ベルト433が巻かれているローラ431、432の少なくとも一方にモータ(図13中不図示、図15に符号488として図示)の動力が伝達されることにより、ベルト433は図13上の時計回り方向に駆動され、ベルト433上に保持された記録紙416は図13の左から右へと搬送される。
【0144】
縁無しプリント等を印字するとベルト433上にもインクが付着するので、ベルト433の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部436の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0145】
なお、吸着ベルト搬送部422に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0146】
吸着ベルト搬送部422により形成される用紙搬送路上において印字部412の上流側には、加熱ファン440が設けられている。加熱ファン440は、印字前の記録紙416に加熱空気を吹き付け、記録紙416を加熱する。印字直前に記録紙416を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0147】
印字部412の各印字ヘッド412K,412C,412M,412Yは、当該インクジェット記録装置400が対象とする記録紙416の最大紙幅(必要印字幅)に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの被記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型の印字ヘッドとなっている(図14参照)。
【0148】
印字ヘッド412K,412C,412M,412Yは、記録紙416の送り方向(副走査方向)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれの印字ヘッド412K,412C,412M,412Yが記録紙416の送り方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0149】
吸着ベルト搬送部422により記録紙416を搬送しつつ各ヘッド412K,412C,412M,412Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙416上にカラー画像を形成し得る。
【0150】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型の印字ヘッド412K,412C,412M,412Yを色別に設ける構成によれば、記録紙送り方向について記録紙416と印字部412を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙416の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0151】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0152】
印字部412の後段には後乾燥部442が設けられている。後乾燥部442は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0153】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0154】
後乾燥部442の後段には、加熱・加圧部444が設けられている。加熱・加圧部444は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面の凹凸形状を有する加圧ローラ445で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0155】
こうして生成されたプリント物は排紙部426から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置400では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排紙部426A、426Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、ロール紙を用いる構成では、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、不図示のカッター(第2のカッター)によってテスト印字の部分を切り離す。該第2のカッターは、排紙部426の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。第2のカッターの構造は前述した第1のカッターと同様であり、固定刃と丸刃とから構成される。
【0156】
また、図13には示さないが、本画像の排紙部426Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0157】
〔制御系の説明〕
図15はインクジェット記録装置400のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置400は、通信インターフェイス470、システムコントローラ472、画像メモリ474、モータドライバ476、ヒータドライバ478、プリント制御部480、画像バッファメモリ482、ヘッドドライバ484等を備えている。
【0158】
通信インターフェイス470は、ホストコンピュータ486から送られてくる画像データを受信するインターフェイス部である。通信インターフェイス470にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェイスやセントロニクスなどのパラレルインターフェイスを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ486から送出された画像データは通信インターフェイス470を介してインクジェット記録装置400に取り込まれ、一旦画像メモリ474に記憶される。
【0159】
画像メモリ474は、通信インターフェイス470を介して入力された画像を一旦記憶する記憶手段であり、システムコントローラ472を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ474は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0160】
システムコントローラ472は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置400の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ472は、通信インターフェイス470、画像メモリ474、モータドライバ476、ヒータドライバ478等の各部を制御し、ホストコンピュータ486との間の通信制御、画像メモリ474の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ488やヒータ489を制御する制御信号を生成する。
【0161】
モータドライバ476は、システムコントローラ472からの指示にしたがってモータ488を駆動するドライバである。ヒータドライバ478は、システムコントローラ472からの指示にしたがって後乾燥部442等のヒータ489を駆動するドライバである。
【0162】
プリント制御部480は、システムコントローラ472の制御に従い、画像メモリ474内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データをヘッドドライバ484に供給する制御部である。プリント制御部480において所要の信号処理が施され、ヘッドドライバ484を介して印字ヘッド412K,412C,412M,412Yのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。
【0163】
プリント制御部480には画像バッファメモリ482が備えられており、プリント制御部480における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ482に一時的に格納される。なお、図15において画像バッファメモリ482はプリント制御部480に付随する態様で示されているが、画像メモリ474と兼用することも可能である。また、プリント制御部480とシステムコントローラ472とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0164】
ヘッドドライバ484はプリント制御部480から与えられる印字データに基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号によって各色のヘッド412K,412C,412M,412Yの圧電素子を駆動する。ヘッドドライバ484にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0165】
印刷すべき画像のデータ(記録紙416のサイズに応じて該画像のサイズ、解像度が変換された画像のデータ)は、通信インターフェイス470を介して外部から入力され、画像メモリ474に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが画像メモリ474に記憶される。
【0166】
画像メモリ474に蓄えられた画像データは、システムコントローラ472を介してプリント制御部480に送られ、該プリント制御部480においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部480は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部480で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ482に蓄えられる。
【0167】
プログラム格納部490には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ472の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部490はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェイスを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
【0168】
なお、プログラム格納部490は動作パラメータ(システムパラメータ)等の不図示の記録手段(メモリ)と兼用してもよい。
【0169】
印字検出部424は、図13で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙416に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部480に提供する。
【0170】
プリント制御部480は、必要に応じて印字検出部424から得られる情報に基づいて印字ヘッド412K,412C,412M,412Yに対する各種補正を行う。
【0171】
なお、図13に示した例では、印字検出部424が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
【0172】
本例では、印字ヘッドに備えられるノズルからインクを吐出させて、記録紙416上に画像を形成するインクジェット記録装置400を示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、処理液、薬液、水などの液体を被吐出媒体上に吐出させるディスペンサ等の液体吐出装置に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図2】図1中、2−2線に沿う断面図
【図3】図2に示す液体吐出ヘッドの詳細構造を説明する図
【図4】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図5】図4中、5−5線に沿う断面図
【図6】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの構造例を示す斜視図
【図7】図6に示すインク流路範囲を説明する図
【図8】図6に示す液体吐出ヘッドの一態様を示す斜視図
【図9】図8中、5(9)−5(9)線に沿う断面図
【図10】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの構造例を示す断面図
【図11】図10に示す液体吐出ヘッドの製造工程を説明する図
【図12】本発明の第4実施形態に係るヘッドの構造を示す平面図
【図13】本発明に係る液体吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の全体構成図
【図14】図13に示したインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図15】図13に示したインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【符号の説明】
【0174】
10,100,200,300,412K,412C,412M,412Y…液体吐出ヘッド、12…ノズル、14…圧力室、16…共通液室、18…供給絞り、23…スイッチングIC、26…圧電素子、28…個別電極、36…パッド、38…垂直導電部材、40…絶縁性構造部材、42…断熱部材、44…放熱部材、46…水平導電部材、50…ベアチップ、52…突起電極、140…放熱板、302…ヘッドモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出媒体上に液体を吐出させる2次元状に並べられた複数の吐出孔と、
前記複数の吐出孔に対応して設けられ、前記吐出孔から吐出させる液体が収容される複数の圧力室と、
前記複数の圧力室へ液体を供給する共通液室と、
前記圧力室を構成する壁のうち前記吐出孔が形成される壁と対向する壁に設けられ、駆動信号が入力される個別電極を有する圧電素子と、
前記圧電素子が有する前記個別電極から取り出され、該個別電極と電気的に接合される取出電極と、
前記圧力室を構成する壁の前記液体の吐出方向と反対側の面に接合される構造部材と、
前記構造部材の大気に接する面に実装され、前記圧電素子へ与える駆動信号が生成される駆動回路と、
を備え、
前記構造部材は、2以上の部材を積層させた積層構造を有し、少なくとも大気に接する最外層は放熱部材で構成されると共に、少なくとも1層以上の断熱部材を有し、
前記構造部材を形成する部材は、前記圧電素子が取り付けられる面に対して略垂直方向に形成される垂直導電部材及び該垂直導電部材と略直交方向に形成される水平導電部材のうち少なくとも前記垂直導電部材を含み、一方の端が前記取出電極に接合され他方の端が前記駆動回路に接合される導電部材を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記構造部材は、前記圧力室を構成する壁の前記液体の吐出方向と反対側の面に接合される絶縁性構造部材を有することを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記駆動回路は、1以上のICに集積化された構造を有し、
前記ICは、前記放熱部材の該駆動回路が実装される面にフリップチップ実装されることを特徴とする請求項1又は2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記放熱部材の熱伝導率α1 と、前記断熱部材の熱伝導率βと、の関係は、次式
α1 >β
を満たすことを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記断熱部材は、熱硬化型エポキシ樹脂或いは熱硬化型エポキシ樹脂に無機微粒子を含有させた部材を含むことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記駆動回路は、駆動回路用放熱部材を具備することを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記駆動回路用放熱部材の熱伝導率α2 と前記断熱部材の熱伝導率βとの関係は、次式
α2 >β
を満たすことを特徴とする請求項6記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記共通液室及び前記圧電素子は、前記圧力室の液体吐出方向と反対側に設けられ、
前記導電部材は前記圧電素子が配設される面から立ち上がり前記共通液室を貫通するように設けられ、一方の端が前記取出電極と接合され、他方の端が前記駆動回路に接合されることを特徴とする請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記駆動回路は、前記放熱部材上に接する領域のうち、前記圧力室又は前記共通液室の非配設領域に対応する領域に配設されることを特徴とする請求項1乃至8のうち何れか1
項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記被吐出媒体の液体吐出可能幅の全幅に対応する長さにわたって前記吐出孔が並べられる構造を有することを特徴とする請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記被吐出媒体の液体吐出可能幅の全幅に満たない長さにわたって前記吐出孔が並べられる吐出孔列を有する液体吐出ヘッドモジュールを、前記被吐出媒体の幅方向に複数並べた構造を有することを特徴とする請求項10記載の液体吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−289963(P2006−289963A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69850(P2006−69850)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】