説明

液体吐出ヘッド

【課題】弾性体の位置ずれに起因した管と取付口との間の液漏れを抑制する。
【解決手段】取付口2xに、キャップ80及び弾性体90を含むジョイント70が装着されている。弾性体90は、キャップ80に支持された被支持部分91と、被支持部分91から管61の取付け方向に延出した筒状の延出部分92とを含む。管61を取付口2xに取り付ける際、延出部分92が径方向外側に撓む。キャップ80は、被支持部分91の外側面を径方向外側から支持する外壁としての大径部81と、被支持部分91の内側面を径方向内側から支持する内壁84と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッドにおいて、サブタンクに繋がる管(導入ニードル224)が取り付けられる取付口(インク導入部110)、ポンプを介してサブタンクに繋がる管(排出ニードル225)が取り付けられる取付口(インク排出部130)、インクが吐出される吐出口、及び、各取付口と吐出口とを接続する流路が形成された本体(インクジェットヘッド100a〜100d)を備え、取付口にジョイント(樹脂製のニードル受け部材111、及び、ニードル受け部材内に配置された可撓性の嵌め込み部材113)が装着されたものが知られている(特許文献1参照)。
特許文献1において、例えば、本体とサブタンクとの間でインクを循環させる場合、ポンプを駆動することで、インクがサブタンク、ポンプ、及び排出ニードル225を介して本体に流れ込み、さらに本体から導入ニードル224を介してサブタンクに戻る。
【0003】
【特許文献1】特開2010−228421号公報(図1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成において、管を取付口に取り付ける際、弾性体の延出部分(嵌め込み部材113の下部)は、管(ニードル224)の外周面に押され、径方向外側に撓む。このとき、弾性体の被支持部分(嵌め込み部材113において、部材111に支持されている上部)に、径方向内側に移動する方向の力が作用する。これにより、弾性体が、キャップ(部材111)や本体(導入部本体112)から脱落する等して、所定位置からずれてしまう場合がある。この場合、弾性体による液密作用が得られなくなり、管と取付口との間で液漏れが生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、弾性体の位置ずれに起因した管と取付口との間の液漏れを抑制することができる液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、内部に流路が形成された管が取り付けられる取付口、記録媒体に対して液体が吐出される吐出口、及び、前記取付口と前記吐出口とを接続する流路が形成された、本体と、前記取付口に装着されたジョイントであって、前記本体における前記取付口を画定する壁に取り付けられたキャップ、及び、前記キャップ内に配置され、前記取付口に取り付けられた前記管と前記取付口とを液密に接続する弾性体を含む、ジョイントと、を備え、前記弾性体は、前記キャップに支持された被支持部分と、前記被支持部分から前記管の前記取付口への取付け方向に延出した筒状の延出部分であって、前記取付口に取り付けられた前記管の外周面に密着する密着部を含み、前記管の前記取付口への取付け時及び前記取付口からの取外し時に径方向に撓む延出部分と、を有し、前記キャップは、前記被支持部分の外側面を前記径方向外側から支持する外壁と、前記被支持部分の内側面を前記径方向内側から支持する内壁と、を有することを特徴とする、液体吐出ヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、被支持部分の外側面及び内側面がそれぞれキャップの外壁及び内壁に支持されている。即ち、被支持部分は、径方向に関して、キャップによって拘束されている。そのため、管を取付口に取り付ける際、弾性体の延出部分が径方向外側に撓み、被支持部分に径方向内側に移動する方向の力が作用しても、被支持部分の移動が防止される。したがって、弾性体の位置ずれに起因した管と取付口との間の液漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドを含むプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】インクジェットヘッドとメインタンク及びサブタンクとの接続態様を示す側面図である。
【図3】インクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲まれた領域IVを示す拡大図である。
【図5】図4のV−V線に沿った部分断面図である。
【図6】(a)は、取付口近傍を示す部分断面図である。(b)は、図6(a)の一点鎖線で囲まれた領域VIBを示す拡大図である。(c)は、ジョイントの分解断面図である。(d)は、取付口に装着されたジョイントを示す部分側面図である。(e)は、取付口に装着されたジョイントのキャップを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッド10を含むインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。空間A及びBには、給紙ユニット1bから排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。
【0012】
空間Aには、4つのヘッド10、搬送ユニット21、ガイドユニット、コントローラ1p等が配置されている。
【0013】
搬送ユニット21は、ベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン9は、4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド10の下面(吐出面10a)との間に、記録に適した所定の間隙が形成される。
【0014】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(図4及び図5参照)が開口した吐出面10aである。記録(画像形成)に際して、4つのヘッド10の吐出面10aからそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが吐出される。4つのヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。
【0015】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。上流側ガイド部は、給紙ユニット1bと搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。下流側ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0016】
給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ23が、筐体1aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0017】
コントローラ1pは、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。
コントローラ1pは、外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された画像データに基づいて、用紙P上に画像が形成されるよう、記録に係る準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインクの吐出動作等を制御する。
【0018】
コントローラ1pは、外部装置から受信した記録指令に基づいて、給紙ローラ25用の給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ(図示せず)、搬送モータ、ヘッド10等を駆動する。
給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、ヘッド10から各色のインクが吐出されることにより、用紙P上にカラー画像が形成される。インクの吐出動作は、用紙Pの先端を検知する用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0019】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0020】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、トレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのメインタンク39を有する。
【0021】
次に、図2を参照し、ヘッド10の構成、ヘッド10とメインタンク39及びサブタンク50との接続態様等について説明する。
【0022】
ヘッド10は、図2に示すように、上から順に、フィルタユニット2、リザーバユニット11、及び流路ユニット12を含む。ユニット2,11,12は、内部にそれぞれインク流路が形成されており、各インク流路が連通するよう互いに固定されている。本実施形態では、ユニット2,11,12の積層体が「本体」に該当する。
フィルタユニット2は、例えば樹脂からなる一体成型品であり、フィルタを内在している。リザーバユニット11のインク流路は、フィルタユニット2から供給されたインクを一時的に貯留するリザーバを含む。流路ユニット12のインク流路は、吐出口14aを先端に有する。
【0023】
フィルタユニット2の長手方向一端には、アタッチメント60が取り付けられている。フィルタユニット2は、アタッチメント60及び弾性管41,42を介して、サブタンク50と接続されている。
なお、フィルタユニット2におけるアタッチメント60が取り付けられた部分の構成については、後に詳述する。
【0024】
メインタンク39及びサブタンク50は、共にインクを貯留し、弾性管43を介して接続されている。メインタンク39内のインクは適宜サブタンク50に補給される。サブタンク50は、筐体1a内の適宜の位置に配置されている。
【0025】
サブタンク50の上面には、4つの突出部50a,50b,50c,50dが設けられている。各突出部50a〜50dは、円筒形状であり、サブタンク50の内部空間と外部空間とを連通している。突出部50a〜50dのうち、3つの突出部50b〜50dにはそれぞれ管41,42,43が装着されているが、突出部50aには管が装着されない。突出部50aを介してサブタンク50の内部空間と外部空間(大気)とが連通し、サブタンク50内にあるインク中の気泡が除去される。
【0026】
サブタンク50の下面には、ポンプ50Pが一体的に固定されている。
コントローラ1p(図1参照)は、パージ時に、ポンプ50P及び各管41,42,43に設けられた弁を制御し、ポンプ50Pの駆動によりサブタンク50内のインクをフィルタユニット2に供給する。このとき、ポンプ50Pは、サブタンク50内のインクを吸い込み、突出部50bに排出する。
本実施形態において、パージは、ノズルパージ(ヘッド10のインク流路内のインクに圧力を付与することにより全吐出口14aからインクを排出させる動作)、及び、循環パージ(フィルタユニット2にインクを導入し、フィルタユニット2内においてフィルタよりもインクの流れ方向上流側に蓄積した気泡等の異物を、インクと共にサブタンク50に排出する動作)を含む。ノズルパージによって、吐出口14a内の増粘したインクが排出され、ヘッド10の吐出性能が回復する。循環パージによって、フィルタの目詰まり解消又は防止が実現される。ノズルパージ時には、上記のとおり、サブタンク50内のインクがフィルタユニット2から流路ユニット2に圧送される。循環パージ時には、上記のとおり、サブタンク50内のインクが管41を介してフィルタユニット2に圧送され、さらに、フィルタユニット2から管42を介してサブタンク50に異物混じりのインクが排出される。
【0027】
次に、図3〜図5を参照し、ヘッド10の構成についてより詳細に説明する。なお、図4では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0028】
図3に示すように、流路ユニット12の上面12xには、8つのアクチュエータユニット17が固定されている。各アクチュエータユニット17にはFPC(平型柔軟基板)19が接合されている(図5参照)。
【0029】
リザーバユニット11(図2参照)は、その下面に凹凸(図示せず)が形成されている。凸部は、上面12xにおいてアクチュエータユニット17を避けて接着されている。図3に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域は、凸部の接着領域である。凹部は、上面12x、アクチュエータユニット17の表面、及びFPC19の表面と、若干の隙間を介して対向している。凸部の先端面には、リザーバに接続した流路が開口している。当該開口は、対向する各開口12yと接続している。
【0030】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図5参照)を互いに積層した積層体である。流路ユニット12のインク流路は、図3〜図5に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、吐出口14a毎の個別流路14を含む。個別流路14は、図5に示すように、副マニホールド流路13aの出口から、流路抵抗調整用の絞りであるアパーチャ15、及び、圧力室16を介して、吐出口14aに至る。圧力室16は、上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域に露出されている。吐出面10aにおける各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aが配置されている。
【0031】
アクチュエータユニット17は、図3に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、上面12xにおいて千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図4に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。
各アクチュエータユニット17は、図示を省略するが、振動板、共通電極、圧電層、及び個別電極が順に積層した積層体である。上記各部材のうち、圧電層、振動板、及び共通電極は、アクチュエータユニット17の外形を画定するサイズの台形形状を有する。個別電極は、各圧力室16に対向配置されており、上面12xにおける圧力室16の開口と略相似形状で且つこれよりも一回り小さいサイズを有する。振動板は、上面12xにおける圧力室16の開口を覆っている。個別電極は、圧電層の上面に、当該アクチュエータユニット17に覆われる圧力室16の数と同じ数だけ形成されている。アクチュエータユニット17の個別電極に対向する部分は、それぞれが独立した圧電式アクチュエータとして機能する。
【0032】
FPC19は、アクチュエータユニット17毎に設けられており、アクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有する。当該配線はそれぞれドライバICの出力端子と接続されている。FPC19は、途中部にドライバICが実装されていると共に、一端がアクチュエータユニット17、他端がヘッド10の制御基板(リザーバユニット11上方に配置。図示略)にそれぞれ固定されている。FPC19は、コントローラ1p(図1参照)による制御の下、制御基板が出力した各種駆動信号をドライバICに伝達し、ドライバICが生成した信号をアクチュエータユニット17に伝達する。
【0033】
次に、図6を参照し、フィルタユニット2におけるアタッチメント60(図2参照)が取り付けられた部分の構成について説明する。
なお、アタッチメント60は、2つの管41,42にそれぞれ対応する2つの管61を有している。同様に、フィルタユニット2は2つの取付口2xを有し、各取付口2xに管61が取り付けられている。図6では、2つの取付口2xの一方及びこれに取り付けられた管61のみを示す。
また、図6(a)〜(d)において、紙面下向きの方向が管61の取付口2xへの取付け方向、紙面上向きの方向が取付口2xからの管61の取外し方向、紙面左右方向が後述の延出部分92の径方向である。
【0034】
フィルタユニット2の上面には、2つの突起2aが設けられている。
突起2aは、円筒状であり、フィルタユニット2の上面から上方(取外し方向。以下同じ。)に突出している。突起2a内に、取付口2xが形成されている。フィルタユニット2のインク流路は、取付口2xを介して、外部空間と連通している。
【0035】
アタッチメント60の内部には、2つの管61が設けられている。
管61は、樹脂等の剛性材料からなる。管61は、水平方向に延在する水平部と水平部から鉛直方向下方に延在する鉛直部とからなるL字状であり、水平部の一端及び鉛直部の下端にそれぞれ開口を有する(図6(a)には、1の管61の鉛直部の下端が示されている)。
2つの管61の一方は、水平部の一端が管41と連結し、鉛直部の下端が一方の取付口2xに取り付けられている。他方は、水平部の一端が管42と連結し、鉛直部の下端が他方の取付口2xに取り付けられている。
【0036】
各取付口2xには、ジョイント70が装着されている。ジョイント70は、樹脂等の剛性材料からなるキャップ80、及び、ゴム等の弾性材料からなる弾性体90を含む。
ジョイント70は、ヘッド10の一構成部品として、キャップ80及び弾性体90が図6(a)に示すように互いに組み付けられた状態で、取付口2xに装着され、フィルタユニット2に固定されている。
【0037】
キャップ80は、共に円筒状の大径部81及び小径部82と、大径部81及び小径部82を接続する接続部83と、小径部82から下方(取付け方向。以下同じ)に延出した円筒状の内壁84と、を有する。
【0038】
小径部82は、内径及び外径が共に大径部81よりも小さく、大径部81に対して上方に配置されている。小径部82の内径は、管61の外径よりも一回り大きい。大径部81は、突起2aの外径と略同じ内径を有し、突起2aの外周面を覆っている。接続部83は、水平方向に延在した平面視で環状の部分であり、大径部81の上端と小径部82の下端とを接続している。大径部81の厚みは、内壁84の厚みと略同じであり、小径部82の厚みよりも小さい。
【0039】
大径部81の壁には、図6(d),(e)に示すように、一対の貫通孔81p、及び、一対の長孔81sが形成されている。長孔81sは、大径部81の壁を貫通し、大径部81の下端まで延在している。これら貫通孔81p及び長孔81sは、平面視で、キャップ80の中心軸Oから放射状に延び且つ互いに90度の角度をなす線上に、交互に配置されている。一対の貫通孔81p及び一対の長孔81sはそれぞれ径方向に対向している。
突起2aの外周面には、一対の突出部2p、及び、一対の位置決め片2qが形成されている。位置決め片2qは、突起2aの基端から突出部2pよりも上方に延在している。位置決め片2q及び突出部2pは、共に突起2aの外周面から外側に突出し、それぞれ孔81p,81sに対応する位置に配置されている。
位置決め片2qが長孔81s、突出部2pが貫通孔81pにそれぞれ挿入されることで、キャップ80が突起2aに対して移動不能に固定されている。
【0040】
内壁84は、大径部81よりも径方向内側に配置されている。内壁84の内周面は、小径部82の内周面と連続している。
図6(a)に示すように、内壁84、大径部81、及び接続部83で画定される環状の空間に、弾性体90の被支持部分91が配置されている。
【0041】
弾性体90は、キャップ80内に配置されており、キャップ80に支持された環状の被支持部分91と、被支持部分91から下方に延出した略円筒状の延出部分92と、を有する。
【0042】
被支持部分91は、外側面が大径部81によって径方向外側から支持され、内側面が内壁84によって径方向内側から支持されている。これら外側面及び内側面は、全周に亘って、大径部81及び内壁84のそれぞれに支持されている。
被支持部分91はさらに、接続部83及び突起2aの先端2a1によって、上方及び下方からそれぞれ支持されている。
【0043】
先端2a1は、図6(a)に示すように、上方に向けて先細の形状を有する。
先端2a1の頂部2a1tは、内壁84よりも径方向外側(内壁84よりも大径部81の近く)に位置している。また、図6(b)に示すように、頂部2a1tは径方向内側に偏心している(即ち、突起2aを、頂部2a1tを挟んで径方向外側の外側部分と径方向内側の内側部分とに分けた場合、外側部分の厚みt1が内側部分の厚みt2よりも大きい)。さらに、先端2a1の外側傾斜面(頂部2a1tを挟んで径方向外側に配置され且つ取付け方向に対して傾斜した面)2a1xは、内側傾斜面(頂部2a1tを挟んで径方向内側に配置され且つ取付け方向に対して傾斜した面)2a1yよりも、取付け方向に対する傾斜角度が大きい(即ち、外側傾斜面2a1xの傾斜角度θ1が内側傾斜面2a1yの傾斜角度θ2よりも大きい)。
【0044】
延出部分92は、円筒状の密着部92a、及び、円錐台筒状の非密着部92bを有する。
密着部92aは、鉛直方向(取付け方向と平行)に延在し、取付口2xに取り付けられた管61の外周面に密着している。
非密着部92bは、被支持部分91から密着部92aに向けて先細状に傾斜して延在し、取付口2xに取り付けられた管61の外周面から離隔している。非密着部92bは、密着部92aに対して上方に配置されており、密着部92aと被支持部分91とを接続している。
【0045】
図6(c)に示すように、管61が取付口2xに取り付けられておらず、管61が密着部92aと接触していない状態において、密着部92aの内径(D−2α)は、管61の下端近傍の外径(D)よりも小さい。
管61は、取付口2xへの取付け時、その外周面を密着部92aの内周面に摺接させながら、弾性体90を貫挿する。このとき、被支持部分91は固定されたままであるが、延出部分92は、径方向外側に撓み、拡径する。これにより、密着部92aの内径は、管61の取付け前に比べ、中心軸Oを挟んで径方向両側にαずつ、計2α分だけ大きくなる((D−2α)からDになる。図6(a),(c)参照)。管61は、図6(a)に示すように、その下端が密着部92aの下端よりも下方に到達するまで、挿入される。
管61は、取付口2xからの取外し時、その外周面を密着部92aの内周面に摺接させながら、弾性体90から引き抜かれる。このとき、被支持部分91は固定されたままであるが、延出部分92は径方向内側に撓み、元の状態に戻る。これにより、密着部92aの内径は、管61の取付け時に比べ、中心軸Oを挟んで径方向両側にαずつ、計2α分だけ小さくなる(Dから(D−2α)に戻る)。
【0046】
延出部分92と延出部分92よりも径方向外側にある部材(突起2a)との間に、空間が確保されている。これにより、上記のような延出部分92の径方向の撓みが可能となっている。
【0047】
このように、弾性体90は、取付口2xに取り付けられた管61の外周面に密着する密着部92aを含み、管61と取付口2xとを液密に接続する。
なお、管61は、取付口2xへの取付け時及び取付口2xからの取外し時共に、密着部92aとのみ接触し、他の部分(キャップ80、弾性体90の密着部92a以外の部分、突起2a等)とは接触しない。
弾性体90は、非密着部92bが他の部位に比べて外力に対して容易に変形・変位する形態となっている。外力としては、管61の取付け又は取外し時における管61と密着部92aとの間の摩擦力があるが、非密着部92bの変形・変位によって外力を吸収する(弱める)ことができる。一方、密着部92bの管61に対する液密性は、密着部92aが拡径したときの反力としての管61を締め付ける力で決まり、拡径量2αで十分な液密性が得られるように弾性体90の材料や拡径量が設定されている。本実施形態では、非密着部92bの液密性への寄与はほとんど無い。
【0048】
管61の取付口2xへの取付作業は、アタッチメント60(図2参照)ごと行われる。即ち、ジョイント70が装着されたフィルタユニット2の上方に、管61を具備するアタッチメント60を配置し、当該アタッチメント60を下方に移動してフィルタユニット2の上面に押し当てる。これにより、2つの管61が、対応する取付口2xに同時に取り付けられる。
なお、当該取付作業の際、管61は管41,42と連結されていてもよいし、管41,42と連結されていなくてもよい。後者の場合、取付作業の後、管41,42を管61に連結すればよい。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態に係るヘッド10によると、被支持部分91の外側面及び内側面がそれぞれキャップ80の大径部81及び内壁84に支持されている。即ち、被支持部分91は、径方向に関して、キャップ80によって拘束されている。そのため、管61を取付口2xに取り付ける際、弾性体90の延出部分92が径方向外側に撓み、被支持部分91に径方向内側に移動する方向の力が作用しても、被支持部分91の移動が防止される。したがって、弾性体90の位置ずれに起因した管61と取付口2xとの間のインク漏れを抑制することができる。
【0050】
非密着部92bの取付け方向の長さLが、密着部92aの径方向に関する管61の取付け時の変位量(中心軸Oに対して径方向の一方向に関する変位量:α)よりも大きい(図6(a)参照)。
非密着部92bの取付け方向の長さLが短いほど、延出部分92の管61に対する締付け力が大きくなり、管61を取り外す際に大きな力が必要となる。そこで、上記のように、非密着部92bの取付け方向の長さLを、密着部92aの径方向に関する管61の取付け時の変位量よりも大きくする。これにより、延出部分92の管61に対する締付け力を低減し、管61を比較的小さな力で容易に取り外すことができる。
【0051】
頂部2a1tが径方向内側に偏心している(図6(b)参照)。
これにより、先端2a1における径方向に沿った断面が、頂部2a1tを通る鉛直線に関して非対称となり、先端2a1は取外し方向から径方向内側に傾斜した方向に被支持部分91を支持することとなる。そして先端2a1の径方向内側には内壁84があることから、弾性体90は先端2a1と内壁84とによって確実に支持される。
また、上記構成の場合、頂部2a1tが偏心しておらず、先端2a1における径方向に沿った断面が頂部2a1tを通る鉛直線に関して対称である場合に比べ、延出部分92と先端2a1近傍との間の空間をより大きくすることができる。即ち、延出部分92の撓み空間を効果的に確保することができる。また、この場合、撓み空間を確保するために流路(管61における取付口2x近傍の径)を狭める必要がなく、管61における取付口2x近傍の流路抵抗を維持したまま、ジョイントを小型化することができる。しかもこの場合、ヘッド10内のインク流路に正圧が付加された際に、上記空間に圧力が加わり、密着部92aが径方向内側に押圧されることで、密着部92aが管61により密着する。これにより、液密性が向上し、インク漏れがより確実に防止される。
【0052】
先端2a1において、外側傾斜面2a1xの傾斜角度θ1が内側傾斜面2a1yの傾斜角度θ2よりも大きい(図6(b)参照)。
上記構成により、先端2a1が、取外し方向から径方向内側により傾斜した方向に、被支持部分91を支持することとなる。これにより、弾性体90が先端2a1と内壁84とによってより一層確実に支持され、弾性体90の位置ずれ防止効果をより確実に得ることができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0054】
突起については、例えば下記のように変更可能である。
・突起の先端における外側傾斜面及び内側傾斜面の傾斜角度は、互いに同じであってもよいし、内側傾斜面の傾斜角度の方が外側傾斜面の傾斜角度より大きくてもよい。
・突起の先端の頂部は、径方向内側に偏心することに限定されず、径方向外側に偏心してもよいし、径方向に偏心せずに突起の壁の径方向中央に位置してもよい。また、先端における径方向に沿った断面が、頂部を通り且つ取付け方向に沿った直線に関して対称であってよい。
・突出部2p、位置決め片2q等を省略してよい。
・突起の先端は先細り形状でなくてもよい。
・突起は弾性体の被支持部分を支持しなくてもよい。
・突起が形成されなくてもよい。(例えば、フィルタユニット2の上壁が取付口となる開口を有し、当該開口の周縁から突起が突出していなくてもよい。この場合、フィルタユニット2の上壁が、「本体における取付口を画定する壁」に該当する。)
【0055】
キャップについては、例えば下記のように変更可能である。
・内壁は、環状であることに限定されず、例えば被支持部の径方向内側面の一部を支持してもよい。
・外壁は、環状であることに限定されず、例えば被支持部の径方向外側面の一部を支持してもよい。
・キャップの材料について、上述の実施形態では樹脂等の剛性材料を例示したが、これに限定されない(例えばキャップは、弾性体と同様の弾性材料からなってもよい)。
【0056】
弾性体については、例えば下記のように変更可能である。
・非密着部の取付け方向の長さは、密着部の径方向に関する管の取付け時の変位量と同じ又はこれより小さくてもよい。
【0057】
管については、例えば下記のように変更可能である。
・管の他端(取付口に取り付けられる一端とは反対側の端部)が接続される対象として、上述の実施形態ではサブタンク50を例示したが、これに限定されない。
・管の材料や形状は、特に限定されない。
・上述の実施形態の管61は、アタッチメント60の内部(ケース等の内部)に配置されているが、アタッチメント(ケース等)を省略してもよい。
【0058】
本発明の液体吐出ヘッドは、本体及びジョイントのみならず、管又は管を具備するアタッチメントを含む形態で、製品として提供可能である。
【0059】
本体に設けられた取付口の数は、1以上の任意の数であってよい。ジョイントは、取付口に対応する数だけ設けられる。
【0060】
本発明の液体吐出ヘッドは、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、インク以外の液体を吐出するものであってもよい。
【0061】
記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0062】
1 インクジェット式プリンタ
2a 突起
2a1 先端
2a1t 頂部
2a1x 外側傾斜面
2a1y 内側傾斜面
2x 取付口
10 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
14a 吐出口
61 管
70 ジョイント
80 キャップ
81 大径部(外壁)
84 内壁
90 弾性体
91 被支持部分
92 延出部分
92a 密着部
92b 非密着部
P 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成された管が取り付けられる取付口、記録媒体に対して液体が吐出される吐出口、及び、前記取付口と前記吐出口とを接続する流路が形成された、本体と、
前記取付口に装着されたジョイントであって、前記本体における前記取付口を画定する壁に取り付けられたキャップ、及び、前記キャップ内に配置され、前記取付口に取り付けられた前記管と前記取付口とを液密に接続する弾性体を含む、ジョイントと、を備え、
前記弾性体は、前記キャップに支持された被支持部分と、前記被支持部分から前記管の前記取付口への取付け方向に延出した筒状の延出部分であって、前記取付口に取り付けられた前記管の外周面に密着する密着部を含み、前記管の前記取付口への取付け時及び前記取付口からの取外し時に径方向に撓む延出部分と、を有し、
前記キャップは、前記被支持部分の外側面を前記径方向外側から支持する外壁と、前記被支持部分の内側面を前記径方向内側から支持する内壁と、を有することを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記延出部分は、前記取付け方向と平行に延在した前記密着部と、前記取付口に取り付けられた前記管の外周面から離隔し、前記被支持部分から前記密着部に向けて先細状に傾斜して延在した非密着部と、を有し、
前記非密着部の前記取付け方向の長さが、前記密着部の前記径方向に関する前記管の取付け時の変位量よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記本体における前記取付口を画定する壁が、前記管の前記取付口からの取外し方向に突出し且つ先端において前記キャップと共に前記被支持部分を支持する突起を有し、
前記先端は、前記内壁よりも前記径方向外側に位置し、前記径方向内側に偏心した頂部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記先端は、前記頂部と、前記頂部を挟んで前記径方向外側及び内側にそれぞれ配置され且つ前記取付け方向に対して傾斜した外側傾斜面及び内側傾斜面と、を含み、
前記外側傾斜面の方が、前記内側傾斜面よりも、前記取付け方向に対する傾斜角度が大きいことを特徴とする、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131181(P2012−131181A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286816(P2010−286816)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】