説明

液体吐出装置、制御装置、及び、プログラム

【課題】圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間の低減と液漏れの防止とを共に実現する。
【解決手段】各圧力室に対向するアクチュエータは、互いに積層された第1及び第2圧電層からなる積層体を含む。第1圧電層において電極に挟まれた第1活性部は、電圧印加期間T1の前後、低電圧VL1に維持される。第2圧電層において電極に挟まれた第2活性部は、電圧印加期間T2の前後、低電圧VL2に維持される。また、第1活性部に対する電圧印加が開始される前の時点t1から時点t2の間、及び、第1活性部に対する電圧印加が終了した後の時点t5から時点t6の間、第2活性部は高電圧VH2に維持される。これにより、記録期間Tの開始時(時点t1から時点t2)及び終了時(時点t5から時点t6)、第1及び第2活性部を含むアクチュエータ全体の変形量が段階的に変化するような電圧の印加が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電型アクチュエータの駆動によりインク等の液体を吐出する液体吐出装置、圧電型アクチュエータの駆動を制御する制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット式プリンタにおいて、圧電素子を用いた圧電型アクチュエータの駆動により、ヘッドの吐出口からインクを吐出させる技術が知られている(特許文献1参照)。圧電型アクチュエータは、パルス電圧を含む駆動信号の印加により駆動し、ヘッドの圧力室の容積を増減させ、圧力室内のインクに吐出エネルギーを付与する。
【0003】
【特許文献1】特開2009−226676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電型アクチュエータは、電圧印加時間の増加に伴い、圧電性能が劣化する傾向にある。また、電圧印加時間の増加は、消費電力の増大にも繋がる。
【0005】
上記問題に鑑みて、電圧印加時間を低減するため、圧電型アクチュエータについて、記録時以外は低電圧(例えば0V)に維持し、記録時にパルス電圧を印加する(即ち、1の記録媒体に対する記録開始直前に0Vから正又は負の電圧に変化させ、1の記録媒体に対する記録終了直後に0Vに戻す)ことが考えられる。しかしこの場合、電圧の急激な変化により、圧力室の容積が急激に変化し、インク漏れ(吐出口から誤ってインクが吐出されること)が生じ得る。
【0006】
特許文献1には、これらの問題を軽減する手法について、何らの示唆もない。
【0007】
本発明の目的は、圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間の低減と液漏れの防止とを共に実現可能な、液体吐出装置、制御装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、液体を吐出する複数の吐出口と前記吐出口にそれぞれ接続する複数の圧力室とを含む液体流路が形成された流路形成体と、前記流路形成体の前記圧力室と対向して配置された第1圧電層及び第2圧電層を含む積層体を有し、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与する圧電型のアクチュエータであって、前記第1及び第2圧電層がそれぞれ前記圧力室と対向する部分に積層方向に関して電極に挟まれた第1及び第2活性部を有する、アクチュエータと、記録媒体に記録される画像に係る画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段であって、前記駆動信号は、前記第1活性部に印加される第1駆動信号、及び、前記第2活性部に印加される第2駆動信号を含む、駆動信号生成手段と、前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2活性部にそれぞれ印加する駆動信号印加手段とを備え、前記第1駆動信号は、時間幅を介した第1低電圧と第1高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、前記第2駆動信号は、時間幅を介した第2低電圧と第2高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、前記第1駆動信号の前記第1低電圧から前記第1高電圧への変化は、前記第2駆動信号の前記第2低電圧から前記第2高電圧への変化よりも、前記圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与し、前記駆動信号印加手段は、1の記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間の前後に、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持し、且つ、前記第2駆動信号を、前記電圧印加期間の前における前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の開始時点である第1時点よりも第1所定時間前の第2時点に前記第2低電圧から前記第2高電圧に変化させ、前記第2時点から前記第1時点まで前記第2高電圧に維持することを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第2観点によると、液体を吐出する複数の吐出口と前記吐出口にそれぞれ接続する複数の圧力室とを含む液体流路が形成された流路形成体と、前記流路形成体の前記圧力室と対向して配置された第1圧電層及び第2圧電層を含む積層体を有し、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与する圧電型のアクチュエータであって、前記第1及び第2圧電層がそれぞれ前記圧力室と対向する部分に積層方向に関して電極に挟まれた第1及び第2活性部を有する、アクチュエータと、を含む液体吐出装置に用いられる制御装置であって、記録媒体に記録される画像に係る画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段であって、前記駆動信号は、前記第1活性部に印加される第1駆動信号、及び、前記第2活性部に印加される第2駆動信号を含む、駆動信号生成手段と、前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2活性部にそれぞれ印加する駆動信号印加手段とを備え、前記第1駆動信号は、時間幅を介した第1低電圧と第1高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、前記第2駆動信号は、時間幅を介した第2低電圧と第2高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、前記第1駆動信号の前記第1低電圧から前記第1高電圧への変化は、前記第2駆動信号の前記第2低電圧から前記第2高電圧への変化よりも、前記圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与し、前記駆動信号印加手段は、1の記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間の前後に、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持し、且つ、前記第2駆動信号を、前記電圧印加期間の前における前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の開始時点である第1時点よりも第1所定時間前の第2時点に前記第2低電圧から前記第2高電圧に変化させ、前記第2時点から前記第1時点まで前記第2高電圧に維持することを特徴とする制御装置が提供される。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第3観点によると、液体を吐出する複数の吐出口と前記吐出口にそれぞれ接続する複数の圧力室とを含む液体流路が形成された流路形成体と、前記流路形成体の前記圧力室と対向して配置された第1圧電層及び第2圧電層を含む積層体を有し、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与する圧電型のアクチュエータであって、前記第1及び第2圧電層がそれぞれ前記圧力室と対向する部分に積層方向に関して電極に挟まれた第1及び第2活性部を有する、アクチュエータと、を含む液体吐出装置を、記録媒体に記録される画像に係る画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段であって、前記駆動信号は、前記第1活性部に印加される第1駆動信号、及び、前記第2活性部に印加される第2駆動信号を含む、駆動信号生成手段、並びに、前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2活性部にそれぞれ印加する駆動信号印加手段、として機能させ、前記第1駆動信号は、時間幅を介した第1低電圧と第1高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、前記第2駆動信号は、時間幅を介した第2低電圧と第2高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、前記第1駆動信号の前記第1低電圧から前記第1高電圧への変化は、前記第2駆動信号の前記第2低電圧から前記第2高電圧への変化よりも、前記圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与し、前記駆動信号印加手段は、1の記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間の前後に、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持し、且つ、前記第2駆動信号を、前記電圧印加期間の前における前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の開始時点である第1時点よりも第1所定時間前の第2時点に前記第2低電圧から前記第2高電圧に変化させ、前記第2時点から前記第1時点まで前記第2高電圧に維持することを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、第1及び第2駆動信号をそれぞれ、1の記録媒体に対する画像データに基づく電圧印加期間の前後に、第1及び第2低電圧に維持する。これにより、圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間を低減することができる。さらに、第2駆動信号を、第1活性部に係る電圧印加期間の開始時点よりも前の第2時点に、第2低電圧から第2高電圧に変化させ、且つ、第2時点から第1時点まで第2高電圧に維持する。これにより、第1及び第2活性部を含むアクチュエータ全体に対し、段階的な電圧の印加が行われるため、圧力室の容積の急激な変化を抑制することができ、液漏れを防止することができる。したがって、上記構成によれば、圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間の低減と液漏れの防止とを共に実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態に係るインクジェット式プリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】インクジェットヘッドの縦断面図である。
【図6】(a)は、アクチュエータユニットの部分断面図である。(b)は、アクチュエータユニットに含まれる表面電極を示す平面図である。(c)は、アクチュエータユニットに含まれる内部電極を示す平面図である。
【図7】記録指令に伴う表面電極及び内部電極の電圧変化を概略的に示すグラフである。
【図8】記録期間における表面電極及び内部電極の電圧変化を概略的に示すグラフである。
【図9】記録期間における表面電極及び内部電極それぞれの電圧変化を具体的に示すグラフであり、(a)は表面電極、(b)は内部電極の電圧変化を示す。
【図10】アクチュエータの駆動態様を示す、図4に対応する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0015】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBは、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成された空間である。空間Aでは、用紙Pの搬送と用紙Pへの画像の記録が行われる。空間Bでは、給紙に係る動作が行われる。空間Cには、インク供給源としてのインクカートリッジ40が収容されている。
【0016】
空間Aには、4つのインクジェットヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット(後述)等が配置されている。空間Aの上部には、これらの機構を含めたプリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る制御装置1pが配置されている。
【0017】
制御装置1pは、外部から供給された画像データに基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復維持動作(メンテナンス動作)等を制御する。
【0018】
制御装置1pは、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加えて、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(例えば画像データ)が一時的に記憶される。ASICでは、画像データの書き換え、並び替え等(信号処理や画像処理)が行われる。I/Fは、上位装置とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。制御装置1pの各機能部は、これらハードウェア構成とROM内のプログラムとの協働により構築されている。
【0019】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。4つのヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム3を介して筐体1aに支持されている。ヘッド10は、流路ユニット12、8つのアクチュエータユニット17(図2参照)、及びリザーバユニット11を含む。画像記録に際して、4つのヘッド10の下面(吐出面10a)からはそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。ヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0020】
搬送ユニット21は、図1に示すように、ベルトローラ6,7及び両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。
【0021】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン9は、4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド10の吐出面10aとの間に、画像記録に適した所定の間隙が形成される。
【0022】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0023】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有し、給紙トレイ23が筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納する。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0024】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。記録指令に基づいて、制御装置1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ(図示せず)、搬送モータ等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面10aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が記録される。インクの吐出動作は、用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0025】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0026】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ40を有する。各カートリッジ40は、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド10にインクを供給する。
【0027】
次に、図2〜図5を参照し、ヘッド10の構成についてより詳細に説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0028】
図5に示すように、ヘッド10は、流路ユニット12、アクチュエータユニット17、リザーバユニット11、及び基板64が積層した積層体である。このうち、アクチュエータユニット17、リザーバユニット11、及び基板64が、流路ユニット12の上面12xとカバー65とにより形成される空間に、収容されている。当該空間内に、FPC(平型柔軟基板)50は、アクチュエータユニット17と基板64とを電気的に接続している。FPC50には、ドライバIC57が実装されている。
【0029】
カバー65は、図5に示すように、トップカバー65a及びアルミ製のサイドカバー65bを含む。カバー65は、下方に開口する箱であり、流路ユニット12の上面12xに固定されている。ドライバIC57は、サイドカバー65bの内面に当接し、カバー65bと熱的に結合している。なお、当該熱的結合を確実にするため、ドライバIC57は、リザーバユニット11の側面に固定された弾性部材(例えばスポンジ)58によってサイドカバー65b側に付勢されている。
【0030】
リザーバユニット11は、4枚の金属プレート11a〜11dを互いに接着した積層体である。リザーバユニット11の内部には、インク溜りのリザーバ72を含むインク流路が形成されている。当該インク流路の一端はチューブ等を介してカートリッジ40に接続し、他端は流路ユニット12に接続している。プレート11dの下面には、図5に示すように、凹凸が形成されており、凹部によってプレート11dと上面12xとの間に空間が形成されている。アクチュエータユニット17は、FPC50の上方に若干の間隙を残して、当該空間内で上面12xに固定されている。プレート11dには、インク流出流路73が形成されている。当該流路73は、プレート11dの下面の凸部の先端面(即ち、上面12xとの接合面)に開口している。
【0031】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図4参照)を互いに接着した積層体である。図2に示すように、流路ユニット12の上面12xには、インク流出流路73の開口73aに接続する開口12yが形成されている。流路ユニット12の内部には、開口12yから吐出口14aに繋がるインク流路が形成されている。当該インク流路は、図2、図3、及び図4に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別流路14を含む。
【0032】
圧力室16は、図3に示すように、それぞれ略菱形形状であり、上面12xでマトリクス状に配置されることで、平面視で略台形領域を占める計8つの圧力室群を構成している。吐出口14aも、圧力室16と同様、吐出面10aでマトリクス状に配置されることで、平面視で略台形領域を占める計8つの吐出口群を構成している。
【0033】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、圧力室群(吐出口群)の占める台形領域上に配置されている。
【0034】
FPC50は、アクチュエータユニット17毎に設けられており、対応するアクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有する。当該配線はそれぞれドライバIC57の出力端子と接続されている。FPC50は、制御装置1p(図1参照)による制御の下、基板64で調整されたデータをドライバIC57に伝達し、ドライバIC57で生成された各駆動信号(後に詳述)をアクチュエータユニット17の各電極に伝達する。駆動信号は、各電極に対し、選択的に印加される。
【0035】
次に、図6を参照し、アクチュエータユニット17の構成について説明する。
【0036】
アクチュエータユニット17は、図6(a)に示すように、2つの圧電層17a,17bの積層体、及び、当該積層体と流路ユニット12との間に配置された振動板17cを有する。圧電層17a,17b及び振動板17cは共に、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミック材料からなるシート状部材である。圧電層17a,17bは、これらの積層方向に沿って互いに同じ方向に分極されている。
【0037】
圧電層17a,17b及び振動板17cは、圧電層17a,17bの厚み方向から見て、同一のサイズ及び形状(1のアクチュエータユニット17を画定する台形形状)を有する。即ち、圧電層17a,17b及び振動板17cは1の圧力室群に含まれる多数の圧力室16に対向しつつこれらに跨って配置され、振動板17cが1の圧力室群に含まれる全ての圧力室16を封止している。振動板17cの厚みは、圧電層17aの厚みと圧電層17bの厚みとの和以上である。
【0038】
圧電層17aの上面には圧力室16にそれぞれ対応する多数の表面電極18、圧電層17aとその下側の圧電層17bとの間には内部電極19、圧電層17bとその下側の振動板17cとの間には共通電極20がそれぞれ形成されている。振動板17cの下面に電極は形成されていない。
【0039】
表面電極18は、圧力室16毎に設けられており、圧力室16と同様、複数の行及び複数の列を形成するようマトリクス状に配置されている。各表面電極18は、図6(b)に示すように、略菱形形状の主電極領域18a、主電極領域18aの一方の鋭角部から延出した延出部18b、及び、延出部18b上に形成されたランド18cを含む。主電極領域18aの形状は圧力室16と相似であり、サイズは圧力室16よりも一回り小さい。平面視で、主電極領域18aは、圧力室16内に配置されている。延出部18bは、圧力室16の外側領域まで延び、先端にランド18cが配置されている。ランド18cは、平面視で、円形の外形を有し、圧力室16とは対向していない。ランド18cは、圧電層17aの上面から50μm程の高さを有し、FPC50の配線の端子と電気的に接続されている。圧電層17aとFPC50とは、当該接続点以外で、略50μmの間隙を介して対向している。これにより、アクチュエータユニット17の自由な変形が確保される。
【0040】
内部電極19は、図6(c)に示すように、圧力室16にそれぞれ対向する多数の個別電極19a、及び、個別電極19a同士を互いに接続する多数の接続電極19bを含む。各個別電極19aの形状は、圧電層17a,17bの積層方向から見て、圧力室16と相似であり、サイズは圧力室16よりも一回り大きい。個別電極19aは、平面視で、圧力室16を内包している。1のアクチュエータユニット17に形成された内部電極19の全ての個別電極19aは、接続電極19bによって互いに接続されているため、同一電位に保持される。
【0041】
共通電極20は、1のアクチュエータユニット17に対応する全圧力室16に共通の電極であり、振動板17cの全面に亘って形成されている。
【0042】
圧電層17aの上面には、表面電極用ランド18cに加え、内部電極用ランド(図示せず)及び共通電極用ランド(図示せず)が形成されている。内部電極用ランドは、圧電層17aのスルーホールを介して内部電極19と電気的に接続され、共通電極用ランドは、圧電層17a,17bを貫通するスルーホールを介して共通電極20と電気的に接続されている。圧電層17aの上面において、内部電極用ランドは台形の各辺の略中央に、共通電極用ランドは台形の各角部付近に、それぞれ配置されている。各ランドは、FPC50の端子と接続されている。このうち、共通電極用ランドは接地された配線と、内部電極用ランドはドライバIC57の出力端子から延びた配線と、それぞれ接続されている。
【0043】
圧電層17aは電極18,19に挟まれた部分に第1活性部18xを有する。圧電層17bは電極19,20に挟まれた部分に第2活性部19xを有する。各活性部18x,19xは、d31、d33、d15から選らばれる少なくとも1つの振動モード(本実施形態ではd31)で変位する。振動板17cにおける活性部18x,19xに対向する部分は、電極に挟まれていない非活性部である。即ち、アクチュエータユニット17は、圧力室16毎に、第1及び第2活性部18x,19xと1の非活性部とを積層したユニモルフタイプの、圧電型アクチュエータを含む。各圧電型アクチュエータは独立して変形可能である。アクチュエータユニット17は、圧電型アクチュエータの変形により、圧力室16内のインクにエネルギーを付与する。
【0044】
例えば第1活性部18xのみに分極方向と同じ方向の電界が印加された場合、第1活性部18xは圧電横効果により面方向に収縮するが、第2活性部19x及び非活性部は自発的には変形しない。このとき両者間(第1活性部18xと、第2活性部19x及び非活性部との間)に歪み差が生じることで、アクチュエータユニット17における圧力室16に対向する部分(圧電型アクチュエータ)が全体として圧力室16に向かって凸となるよう変形し、圧力室16内のインクに吐出エネルギーが付与される。
【0045】
次に、図7を参照し、記録指令に伴う活性部18x,19xに印加される電圧の変化について、説明する。
【0046】
共通電極20の電位は、常に接地電位(0V)に保持される。表面電極18の電位は、第1活性部18xに第1低電圧VL1(例えば0V)又は第1高電圧VH1(例えば30V)が印加されるように変化し、内部電極19の電位は、第2活性部19xに第2低電圧VL2(例えば0V)又は第2高電圧VH2(例えば15V(=VH1*1/2))が印加されるように変化する。図7では、互いに異なる第1及び第2高電圧VH1,VH2を同じ値の電圧として示している。また、図7に斜線で示す部分(記録期間T及び予備吐出期間)では、各活性部18x、19xに印加される電圧がパルス状に変化するが、図7では当該電圧変化の図示を省略している(記録期間Tにおける各活性部18x、19xの電圧変化は図8及び図9に示されている)。
【0047】
図7に示すように、活性部18x、19xに印加される電圧は、記録期間T(1の用紙Pに対する画像データに基づく電圧印加期間)及び予備吐出期間(吐出口14aのインク吐出性能の回復維持動作期間)を除く期間(即ち、予備吐出期間以前のキャッピング期間、アンキャッピング及び用紙Pの繰り出しが行われる期間、用紙反転に係る期間、新たな用紙Pの繰り出しに係る期間等)、低電圧VL1,VL2に維持される。
【0048】
記録指令の受信後、先ず、予備吐出が行われる。予備吐出とは、例えばプリンタ1の電源の投入時や、ヘッド10による記録動作(画像データに基づいて吐出口14aからインクを吐出させること)が所定期間以上行われなかった後に記録動作を再開する直前に行われる、インク吐出性能の回復維持動作であって、アクチュエータユニット17の駆動により吐出口14aからインクが吐出される。予備吐出を行うことにより、吐出口14a内の増粘インクを排出すると共に、吐出口14aに形成されたメニスカスを再生することができる。予備吐出の際、吐出面10aはキャップ(図示せず)で覆われており、キャップ内にインクが排出される。
【0049】
予備吐出が行われた後、キャップが吐出面10aと対向しない待機位置へと移動し(アンキャッピング)、吐出面10aがワイパで払拭され、さらに用紙Pの繰り出しが行われる。そして、当該用紙Pの記録領域が吐出面10aに対向するタイミングに応じて、当該用紙Pに対する画像データに基づく電圧印加が開始される(この記録期間Tにおける各活性部18x、19xの電圧変化の詳細については、図8及び図9を参照して後に説明する)。両面記録の場合、用紙Pの表面に係る記録期間Tの終了後、当該用紙Pが反転され、当該用紙Pの裏面への画像記録が行われる。また、2以上の用紙Pに対する連続記録が行われる場合、1の用紙Pに対する記録期間Tの終了後、新たな用紙Pの繰り出しが行われ、当該新たな用紙Pに対する画像記録が行われる。
【0050】
次に、図8及び図9を参照し、記録期間T及びその前後において活性部18x、19xに印加される電圧の変化について、説明する。図8では、活性部18xに対する電圧変化を実線S1、活性部19xに対する電圧変化を点線S2で示す。また、図8では斜線で示す部分における各活性部18x、19xに対する電圧変化を省略している。この電圧変化は、図9に具体的に示されている。
【0051】
記録期間Tは、1の用紙Pに対する画像形成に必要な一連の電圧印加期間で、前段部(Ta1)、途中部(T1)、及び後段部(Ta2)の3つに分けられる。前段部(Ta1)では、アクチュエータが、休止状態から、画像データに基づいて駆動可能な状態(スタンバイ状態)となるまでの期間である。途中部(T1)は、アクチュエータが、画像データに基づいて駆動された状態(プリント状態)にある期間である。記録周期T0毎に、インクが用紙Pに向けて吐出される。後段部(Ta2)は、アクチュエータが、プリント状態から、休止状態に戻るまでの期間である。なお、記録期間Tは、活性部19xへの電圧の印加開始時点から印加終了時点までの期間T2に等しい。
【0052】
前段部(Ta1)は、図8に示すように、第1所定時間Ta1(時点t1から時点t2までの時間)に対応する期間である。活性部19xに印加される電圧(活性部19xを挟む内部電極−共通電極間の電位差)が、時点t1で第2低電圧VL2から第2高電圧VH2に上昇し、時点t2で第2高電圧VH2から第2低電圧VL2に戻る。時点t2は、活性部18xに印加される電圧(活性部18xを挟む表面電極−内部電極間の電位差)が、第1低電圧VL1から第1高電圧VH1に上昇する時点でもある。これにより、アクチュエータは、休止状態からスタンバイ状態に移行する。
【0053】
途中部(T1)では、画像データから生成された第1及び第2駆動信号に基づいて、両活性部18x、19xに駆動電圧が印加される。この間、アクチュエータは記録周期T0毎に選択的に駆動され、用紙P上に画像が形成される。本実施形態では、時点t2から期間XA(例えば、50〜100μsec:図9参照)後の時点t3が、実際の画像形成動作(インク吐出動作)の開始時点である。前段部(Ta1)の終了時点である時点t2に、流路内(特に、圧力室16内)に多少の圧力変動が残っていたとしても、期間XA経過後には、圧力変動のない状態となる。途中部(T1)は、画像形成動作終了時点である時点t5まで続く。このように、途中部(T1)は、スタンバイ状態の継続期間(時点t2から時点t3)と画像形成期間(時点t3から時点t5)とで構成されている。
【0054】
後段部(Ta2)は、図8に示すように、時点t5から続く第2所定時間Ta2に対応する期間である。活性部18xに印加される電圧は、時点t5で第1低電圧VL1に変化し、この値が期間終了時点t6まで維持される。一方、活性部19xに印加される電圧は、この間、第2高電圧VH2に維持され、時点t6で第2低電圧VL2に変化する。時点t6で、表面電極18および内部電極19の電位は、共通電極20と同じになる。この状態は、次の記録期間Tの開始時点まで継続される。
【0055】
なお、第1及び第2所定時間Ta1,Ta2としては、3AL以上であって、1記録周期T0以下に設定されると良い。本実施形態では、20〜50μsecである。ここで、ALは個別流路14内のインクの固有振動周期の1/2であって、個別流路14の流路長をl、インク中の圧力波の速度をvとすると、l/vとして表される時間である。
【0056】
制御装置1pは、記録指令に含まれる画像データに基づいて第1及び第2駆動信号を生成する。第1及び第2駆動信号に基づいて印加される電圧は、図9に示すように、それぞれ記録周期T0(用紙Pに記録される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙Pがヘッド10に対して相対移動するのに要する時間)毎に、時間幅を介した低電圧VL1,VL2と高電圧VH1,VH2との間の電圧変化により構成される、1以上の矩形状のパルス電圧を含む。
【0057】
本実施形態では、各活性部18x,19xがd31の振動モードで変位することを前提とし、アクチュエータの駆動方式として、吐出口14aからのインク吐出前に圧力室16内へのインク補給を行う、所謂「引き打ち方式」を採用している。
【0058】
引き打ち方式では、圧力室16へのインクの補給に続いて、1のインク滴の吐出が行われる。例えば、スタンバイ状態の継続期間(途中部(T1)の最初の一定期間:時点t2から時点t3)では、アクチュエータユニット17の全アクチュエータが、圧力室16の容積をV1とした状態に保持されている。このとき、図10(a)に示すように、アクチュエータは圧力室16に向かって凸に変形している。この状態は、第1活性部18xに第1高電圧VH1が印加され、第2活性部に第2低電圧VL2が印加されることで実現される。時点t3(記録周期T0の始まりの時点)で各駆動信号が供給されると、第1活性部18xに第1低電圧VL1が印加され、各電極の電位が共通電極20と同じになる。このとき、アクチュエータの変形が解かれ、図10(b)に示すように、平坦な状態に戻る。圧力室16の容積がV1から、これより大きいV2に変化するので、副マニホールド流路13aから圧力室16へのインク補給が始まる。補給用インクが圧力室16に到達した時点(図9(a)の時点t4)で、第1活性部18xに第1高電圧VH1を再び印加する。このとき、図10(c)に示すように、アクチュエータは圧力室16に向かって凸に変形する。圧力室16の容積の減少(V2→V1)に伴って、アクチュエータからインクにエネルギーが付与され、1のインク滴が吐出口14aから吐出される。
【0059】
その後、このような圧力室16内へのインク補給と吐出口14aからのインク吐出とを含む一連の動作が、時点t3以後、記録周期T0毎に、吐出されるインク滴の数と同じ回数だけ繰り返される。なお、図9(a)の期間XA,XB,XCにおけるアクチュエータの変形状態は、図10(a),(b),(c)に示す各状態対応する。
【0060】
図9に示すように、記録周期T0は、時系列的に、インク吐出が行われる前半部(最大パルス長T01)と、メニスカス振動が行われる後半部(最大パルス長T01が終了した後の残り時間T02)とに区分される。
【0061】
前半部では、インクの吐出に寄与するパルス電圧が第1活性部18xに印加され、吐出口14aからインク滴が吐出される。この間、内部電極19及び共通電極20の電位を0Vに維持しつつ、表面電極18にパルス電圧を印加する。図9では、最初の記録周期T0の前半部では3滴、2番目の記録周期T0の前半部では2滴のインクが吐出される。前半部では、この他、0又は1滴のインク吐出に対応するパルス電圧が第1活性部18xに印加されることがある。
【0062】
後半部(Ta2)では、メニスカス振動に寄与するパルス電圧が第2活性部19xに印加され、吐出口14aにおいてインクが吐出されることなくメニスカスが振動する。この間、活性部19xでは、図9に示すように、3つのパルス電圧が印加される。このパルス電圧は、第2高電圧VH2のパルス高を有し、前半部(Ta1)で活性部18xに印加されるパルス電圧よりもパルス幅が狭い。活性部19xは、3つの目のパルス電圧の印加後、第2低電圧VL2に保持される。一方、活性部18xでは、活性部19xに3つのパルス電圧が印加される期間、第1低電圧VL1に保持されている。3つめのパルス電圧の印加後、活性部19xに第2低電圧VL2が印加されるとき、活性部18xに第1高電圧VH1が印加される。活性部18xの第1高電圧VH1及び活性部19xの第2低電圧VL2は、次の記録周期T0の開始時点まで保持される。なお、記録期間Tにおける最後の記録周期T0(後段部(Ta2)に繋がる記録周期T0)の終了時点t5では、活性部18xに印加される電圧が第1高電圧VH1から第1低電圧VL1に変更され、活性部19xに印加される電圧が第2低電圧VL2から第2高電圧VH2に変更される。
【0063】
このように、表面電極18(第1活性部18x)に印加される第1駆動信号は、これのみで吐出口14aからインクを吐出させることが可能な吐出駆動信号である。内部電極19(第2活性部19x)に印加される第2駆動信号は、所定の電圧に増幅しても、これのみでは吐出口14aからインクを吐出させることが不可能であり、吐出口14aからインクを吐出させない範囲で吐出口14aに形成されたメニスカスを振動させる不吐出駆動信号である。即ち、第1駆動信号の第1低電圧VL1から第1高電圧VH1への変化は、第2駆動信号の第2低電圧VL2から第2高電圧VH2への変化よりも、圧力室16内のインクに大きなエネルギーを付与する。
【0064】
以上に述べた本実施形態に係るプリンタ1、制御装置1p、及びプログラムによると、1の用紙Pに対して画像を形成するとき、少なくとも記録期間Tの前後で、活性部18x,19xに印加される電圧を第1及び第2低電圧VL1,VL2に維持する。特に、活性部18xに対して印加される電圧は、期間T1(記録期間Tの途中部(T1)の期間)の前後で、第1低電圧VL1である。これにより、圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間を低減できる。
さらに、期間T1の前後において、活性部19xに印加される電圧が、第2高電圧VH2に維持されている。このとき、活性部19xが圧電層の積層方向に関して略中央部に配置されており、第2高電圧VH2が第1高電圧VH1より小さいことを考えると、アクチュエータ全体の変形量は、第1高電圧VH1が活性部18xに印加されてインクを吐出する場合より小さい。例えば、休止状態からスタンバイ状態へと変化するとき、アクチュエータは、前段部(Ta1)での中間的な変形状態を経る。そのため、アクチュエータの変形が段階的となり、吐出口14aからインクが漏れることはない。途中部(T1)から後段部(Ta2)を経て休止状態に移行するときにも同様であって、吐出口14aからインクが漏れることはない。
【0065】
しかも、段階的な電圧の印加を行うにあたり、互いに積層された2つの圧電層17a,17bを用いたことで、1の圧電層を用いる場合に比べて、電圧制御が容易である。
【0066】
第1及び第2駆動信号の役割は互いに異なり、第1駆動信号はこれのみで吐出口14aからインクを吐出させることが可能な吐出駆動信号であり、第2駆動信号はメニスカスを振動させる不吐出駆動信号である。即ち、圧電層17a,17bの役割が互いに異なっている。このように、1のアクチュエータに、記録用とメニスカス振動用とに役割分担された2つの圧電層17a,17bを設けたことで、1の圧電層を記録及びメニスカス振動の両方に用いる場合に比べ、記録用の圧電層17aへの電圧印加時間を低減することができる。そのため、記録用の圧電層17aの圧電性能の劣化が抑制される。つまり、アクチュエータの圧電性能の劣化を抑制しつつ、メニスカスの状態を維持して記録品質を良好に保つことが可能である。しかも、メニスカス振動用の圧電層17bを利用してインク漏れ防止を図っているため、非常に効率的である。
【0067】
最外層であって変形効率の良い圧電層17aを記録用としたことで、記録に係る吐出が効率よく行われ、記録品質の向上が実現される。
【0068】
アクチュエータの駆動方式を引き打ち方式とした場合においても、インク漏れを防止しつつ、圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間の低減を実現することができる。
【0069】
記録期間T及び予備吐出期間を除く期間、各活性部18x,19xに印加される電圧をそれぞれ低電圧VL1,VL2に維持する(即ち、図7に示すように、各電極18,19は、記録期間T及び予備吐出期間を除く期間、低電圧VL1,VL2に維持される)。
これにより、圧電型アクチュエータに対する電圧印加時間をより確実に低減することができる。
【0070】
第1及び第2駆動信号に含まれるパルス電圧が矩形状であり、パルス電圧が複雑な形状(例えば、段階的に電位を上昇又は下降させる段部を含む形状)の場合と比較して、制御が容易である。
【0071】
第1及び第2駆動信号がそれぞれ示す電位が2値(即ち、第1駆動信号は第1低電圧VL1と第1高電圧VH1の2値、第2駆動信号は第2低電圧VL2と第2高電圧VH2との2値)であり、2値を超える場合の不都合(電源の数を増やすといった構造的・経済的な不都合や、制御が困難になるといった制御的な不都合)を回避することができる。
【0072】
圧電層17a,17bは、2以上の圧力室16に跨って配置されている。これにより、圧電層17a,17bからなる積層体について、製造や耐久性の面で有効である。また、表面電極18及び内部電極19を印刷法等で形成することができ、電極の高密度配置を容易に実現可能である。
【0073】
アクチュエータユニット17は振動板17cを有する。これにより、アクチュエータユニット17の各アクチュエータは、振動板17cを用いたユニモルフ型、バイモルフ型、マルチモルフ型等の変形を実現可能である。さらに、圧電層17a,17bからなる積層体と流路ユニット12との間に振動板17cを介在したことで、各活性部18x,19xへの電圧印加時に圧力室16内のインクの成分が移行すること(マイグレーション)による短絡等の電気的不具合を防止することができる。
【0074】
アクチュエータユニット17に含まれる電極のうち圧力室16に最も近い共通電極20が接地電極である。当該電極20が電気的に接地されていない場合、圧力室16内のインクと当該電極20との間に電位差が生じ、圧力室16内のインクの成分の移行(マイグレーション)による短絡が生じ得るが、本実施形態によればこのような問題を回避することができる。
【0075】
さらに、共通電極20が振動板17cの全面に亘って延在していることから、漏れ電界に起因した電気的不具合(例えば、圧力室16内のインクの成分の電気浸透による電気的短絡)が防止される。
【0076】
圧電層17a,17bが積層方向に沿って互いに逆方向に分極されている場合、圧電層17a,17bを同じ方向に変位させるには、圧電層17a,17bの間及び圧力室16に最も近い位置にそれぞれ接地電極を設ける必要がある。ここで、圧力室16に最も近い位置に配置された接地電極は、圧力室16内のインクに及ぼす電界を遮断する機能を有する。しかし、接地電極は剛体であるため、上記のように接地電極を2つ設けた場合、アクチュエータの変形が阻害され得る。これに対し、本実施形態によれば、圧電層17a,17bが積層方向に沿って互いに同じ方向に分極されているため、接地電極である共通電極20を圧力室16に最も近い位置にのみ設ければよく、アクチュエータの変形効率の悪化を抑制することができる。
【0077】
本実施形態では、活性部19xに印加される電圧を、第1活性部18xに係る電圧印加期間T1の終了時点t5から時点t6まで第2高電圧VH2に維持し、時点t6に第2高電圧VH2から第2低電圧VL2に変化させる(即ち、図8に示すように、内部電極19を、時点t5から時点t6まで第2高電圧VH2に維持し、時点t6に第2高電圧VH2から第2低電圧VL2に変化させる)。このように、記録期間Tの開始時(時点t1から時点t2)のみでなく終了時(時点t5から時点t6)においても、第1及び第2活性部18x,19xを含むアクチュエータ全体の変形量が段階的に変化するような電圧の印加が行われ、圧力室16の容積の急激な変化によるインク漏れを防止することができる。
【0078】
第1及び第2低電圧VL1,VL2の値が共に0Vであり、第2高電圧VH2の値が第1高電圧VH1の値の1/2である。このため、電圧制御が容易である。
【0079】
第2活性部19xのそれぞれを構成する個別電極19aが、接続電極19bによって、互いに電気的に接続されている。これにより、内部電極19に対する配線構造や信号供給構成が簡素化される。また、信号供給に係る処理時間が短縮されるため、高速記録を実現可能である。さらに、複数の第2活性部19xにおいて、同じ態様で電圧印加が行われるため、アクチュエータ間における圧電性能の劣化のバラツキを抑制することができる。
【0080】
続いて、本発明の液体吐出装置の別の実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。
【0081】
本実施形態に係るプリンタは、内部電極19の構成のみ、上述のプリンタ1と異なる。即ち、本実施形態において、内部電極19の個別電極19aは、接続電極19bによって互いに電気的に接続されておらず、表面電極18と同様、圧力室16毎に独立して形成されている。したがって、本実施形態では、各個別電極19aに対して個別の配線が設けられており、複数の個別電極19a(第2活性部19x)に対する印加電圧の値が個別に決定される。ここで、各個別電極19aに対する印加電圧の値を、各アクチュエータに対する電圧印加時間を考慮して設定することで、アクチュエータ間における圧電性能の劣化のバラツキを抑制することができる。
【0082】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0083】
第1及び第2低電圧並びに第1及び第2高低電圧の値は、第1低電圧から第1高電圧への変化が第2低電圧から第2高電圧への変化よりも圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与する限りは、例えば圧電層や電極の厚みや配置を考慮し、それぞれ任意に設定してよい。例えば、第1及び第2低電圧の値は0Vではなく正又は負の値であってもよい。ここで、第2低電圧から第2高電圧への変化に伴うエネルギーが、第1低電圧から第1高電圧への変化に伴うエネルギーの略1/2となるのが好ましい。
【0084】
活性部18x、19xに印加される電圧をそれぞれ第1及び第2低電圧に維持する期間は、記録期間T及び回復維持動作を除く期間に限定されない。ここで、回復維持動作は、上記の予備吐出に限定されず、アクチュエータの駆動によるメニスカス振動動作であってもよい。例えば、記録期間Tの直前に、当該メニスカス振動動作を行ってもよい。
【0085】
第1及び第2所定時間は、それぞれ任意に設定してよい。また、時点t2から時点t5における電圧変化は、図9の例に限定されず、任意に変更可能である。例えば、アクチュエータの駆動方式として後述の押し打ち方式を採用した場合、時点t2に、記録周期T0が開始し、このときのパルス電圧の立上りのタイミングでインクが吐出口14aから吐出されてよい。またこの場合、期間T1の最初(時点t2から所定時間(例えば10μsec))及び/又は最後(時点t5より所定時間前から時点t5までの間)、活性部18xに印加される電圧を第1高電圧VH1に維持し、メニスカスを安定させてよい。
【0086】
記録周期T0内の後半部でメニスカス振動動作を行わなくてもよい。この場合、活性部19xの電圧は、時点t3から時点t5直前まで、0Vに維持されてよい。
【0087】
記録期間Tの終了時(時点t5から時点t6)は、段階的な電圧の印加を行わなくてもよい。例えば図9において、時点t5に各活性部18x,19xに印加される電圧を0Vとしてよい。
【0088】
第1及び第2駆動信号に含まれるパルス電圧は、矩形状に限定されず、例えば、段階的に電位を上昇又は下降させる段部を含む形状であってもよい。また、第1及び第2駆動信号がそれぞれ示す電位が2値であることには限定されない。
【0089】
アクチュエータの駆動方式は、引き打ち方式に限定されない。例えば、各活性部18x,19xがd33の振動モードで変位することを前提とし、アクチュエータの駆動方式として、所謂「押し打ち方式」を採用してもよい。この場合、期間T1の最初に放電時間を設ける必要はなく、パルス電圧の立上りのタイミングでインクが吐出口14aから吐出され、パルス電圧の立下りのタイミングでインクが圧力室16に補給される。
【0090】
第1圧電層が最外層であることに限定されない。例えば、第1圧電層を中間の圧電層17b、第2圧電層を最外層の圧電層17aとしてもよい。
【0091】
第2圧電層は、メニスカス振動用に限定されない。
【0092】
圧電層17a,17bが積層方向に沿って互いに逆方向に分極されてもよい。
【0093】
その他、アクチュエータに含まれる圧電層及び電極の配置や形状、さらにアクチュエータの変形形式は、上述の実施形態に限定されず、様々に変更可能である。
【0094】
例えば、上述の実施形態では、振動板17cの厚みが圧電層17aの厚みと圧電層17bの厚みとの和以上であり、記録用の圧電層17aの厚みとメニスカス振動用の圧電層17bの厚みとが互いに同じである。しかしながら、これに限定されず、アクチュエータに含まれる各圧電層の厚みは、適宜設定可能である。例えば、振動板17cの厚みが圧電層17aの厚みと圧電層17bの厚みとの和より小さくてもよいし、また、記録用の圧電層17aの厚みがメニスカス振動用の圧電層17bの厚みより大きくてもよい。
【0095】
アクチュエータの変形形式は、ユニモルフ型に限定されず、モノモルフ型、バイモルフ型、マルチモルフ型、モノモルフ型等であってもよい。
【0096】
アクチュエータユニット17において、圧電層17aの上層にさらに圧電層を積層したり、圧電層17a,17bの間に1又は複数の圧電層を介在させたりしてよい。また、振動板17cを省略してよい。
【0097】
上述の実施形態では、2以上の圧力室からなる圧力室群に対応するアクチュエータユニット17を例示したが、本発明に係るアクチュエータは、これに限定されない。例えば、第1及び第2圧電層からなる積層体が、圧力室毎に個別に設けられてもよい。
【0098】
本発明に係る液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、本発明に係る液体吐出装置は、インク以外の液体を吐出してもよい。
【0099】
記録期間Tにおける前段部(Ta1)の終了時点である時点t2において、流路内に残る圧力変動が、インクの吐出性能に殆ど影響しない程度であれば、これに続くスタンバイ状態の継続期間(期間XA:時点t2から時点t3)を経ることなく、時点t2の後直ちに引き打ち動作又は押し打ち動作に移行してもよい。
【0100】
記録媒体は、記録可能な媒体である限りは、用紙Pに限定されず、布等であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
1p 制御装置(駆動信号生成手段,駆動信号印加手段)
12 流路ユニット(流路形成体)
14 個別流路(液体流路)
14a 吐出口
16 圧力室
17 アクチュエータユニット(アクチュエータ)
17a 圧電層(第1圧電層)
17b 圧電層(第2圧電層)
17c 振動板
18 表面電極
18x 第1活性部
19 内部電極
19x 第2活性部
20 共通電極(接地電極)
P 用紙(記録媒体)
T1 第1活性部に係る電圧印加期間
T2 第2活性部に係る電圧印加期間
Ta1 第1所定時間
Ta2 第2所定時間
VH1 第1高電圧
VH2 第2高電圧
VL1 第1低電圧
VL2 第2低電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の吐出口と前記吐出口にそれぞれ接続する複数の圧力室とを含む液体流路が形成された流路形成体と、
前記流路形成体の前記圧力室と対向して配置された第1圧電層及び第2圧電層を含む積層体を有し、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与する圧電型のアクチュエータであって、前記第1及び第2圧電層がそれぞれ前記圧力室と対向する部分に積層方向に関して電極に挟まれた第1及び第2活性部を有する、アクチュエータと、
記録媒体に記録される画像に係る画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段であって、前記駆動信号は、前記第1活性部に印加される第1駆動信号、及び、前記第2活性部に印加される第2駆動信号を含む、駆動信号生成手段と、
前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2活性部にそれぞれ印加する駆動信号印加手段とを備え、
前記第1駆動信号は、時間幅を介した第1低電圧と第1高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、
前記第2駆動信号は、時間幅を介した第2低電圧と第2高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、
前記第1駆動信号の前記第1低電圧から前記第1高電圧への変化は、前記第2駆動信号の前記第2低電圧から前記第2高電圧への変化よりも、前記圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与し、
前記駆動信号印加手段は、1の記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間の前後に、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持し、且つ、前記第2駆動信号を、前記電圧印加期間の前における前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の開始時点である第1時点よりも第1所定時間前の第2時点に前記第2低電圧から前記第2高電圧に変化させ、前記第2時点から前記第1時点まで前記第2高電圧に維持することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1駆動信号が、これのみで前記吐出口から液体を吐出させることが可能な吐出駆動信号であり、
前記第2駆動信号が、これのみでは前記吐出口から液体を吐出させることが不可能であり、前記吐出口から液体を吐出させない範囲で前記吐出口に形成されたメニスカスを振動させる不吐出駆動信号であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1圧電層が、前記積層体に含まれる圧電層のうち前記圧力室から最も離隔した最外層であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記アクチュエータの駆動方式が引き打ち方式であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記駆動信号印加手段は、記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間及び前記吐出口の液体吐出性能の回復維持動作期間を除く期間、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1及び第2駆動信号に含まれる前記パルス電圧が矩形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1及び第2駆動信号がそれぞれ示す電位が2値であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1及び第2圧電層が、2以上の前記圧力室に跨って配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記アクチュエータが、前記積層体と前記流路形成体との間において前記圧力室を封止するよう配置された振動板をさらに有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記アクチュエータに含まれる電極のうち前記圧力室に最も近い電極が接地電極であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記接地電極が、当該接地電極が形成された表面の全体に亘って延在していることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記第1及び第2圧電層が、前記積層方向に沿って互いに同じ方向に分極されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記駆動信号印加手段は、前記第2駆動信号を、前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の終了時点である第3時点から当該第3時点よりも第2所定時間後の第4時点まで前記第2高電圧に維持し、前記第4時点に前記第2高電圧から前記第2低電圧に変化させることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記第1及び第2低電圧の値が共に0Vであり、
前記第2高電圧の値が前記第1高電圧の値の1/2であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記第2圧電層の表面に形成された、2以上の前記第2活性部のそれぞれを構成する電極が、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記第2圧電層の表面に形成された、2以上の前記第2活性部のそれぞれを構成する電極が、互いに電気的に接続されておらず、
前記駆動信号生成手段は、前記2以上の第2活性部のそれぞれに対応する2以上の前記アクチュエータにおいて、1の記録媒体に対する前記電圧印加期間での変形量が均一化されるよう、前記2以上の第2活性部のそれぞれに印加される電圧の値を決定することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
液体を吐出する複数の吐出口と前記吐出口にそれぞれ接続する複数の圧力室とを含む液体流路が形成された流路形成体と、前記流路形成体の前記圧力室と対向して配置された第1圧電層及び第2圧電層を含む積層体を有し、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与する圧電型のアクチュエータであって、前記第1及び第2圧電層がそれぞれ前記圧力室と対向する部分に積層方向に関して電極に挟まれた第1及び第2活性部を有する、アクチュエータと、を含む液体吐出装置に用いられる制御装置であって、
記録媒体に記録される画像に係る画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段であって、前記駆動信号は、前記第1活性部に印加される第1駆動信号、及び、前記第2活性部に印加される第2駆動信号を含む、駆動信号生成手段と、
前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2活性部にそれぞれ印加する駆動信号印加手段とを備え、
前記第1駆動信号は、時間幅を介した第1低電圧と第1高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、
前記第2駆動信号は、時間幅を介した第2低電圧と第2高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、
前記第1駆動信号の前記第1低電圧から前記第1高電圧への変化は、前記第2駆動信号の前記第2低電圧から前記第2高電圧への変化よりも、前記圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与し、
前記駆動信号印加手段は、1の記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間の前後に、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持し、且つ、前記第2駆動信号を、前記電圧印加期間の前における前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の開始時点である第1時点よりも第1所定時間前の第2時点に前記第2低電圧から前記第2高電圧に変化させ、前記第2時点から前記第1時点まで前記第2高電圧に維持することを特徴とする制御装置。
【請求項18】
液体を吐出する複数の吐出口と前記吐出口にそれぞれ接続する複数の圧力室とを含む液体流路が形成された流路形成体と、前記流路形成体の前記圧力室と対向して配置された第1圧電層及び第2圧電層を含む積層体を有し、前記圧力室内の液体にエネルギーを付与する圧電型のアクチュエータであって、前記第1及び第2圧電層がそれぞれ前記圧力室と対向する部分に積層方向に関して電極に挟まれた第1及び第2活性部を有する、アクチュエータと、を含む液体吐出装置を、
記録媒体に記録される画像に係る画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段であって、前記駆動信号は、前記第1活性部に印加される第1駆動信号、及び、前記第2活性部に印加される第2駆動信号を含む、駆動信号生成手段、並びに、
前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2活性部にそれぞれ印加する駆動信号印加手段、として機能させ、
前記第1駆動信号は、時間幅を介した第1低電圧と第1高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、
前記第2駆動信号は、時間幅を介した第2低電圧と第2高電圧との間の電圧変化により構成される、1以上のパルス電圧を含み、
前記第1駆動信号の前記第1低電圧から前記第1高電圧への変化は、前記第2駆動信号の前記第2低電圧から前記第2高電圧への変化よりも、前記圧力室内の液体に大きなエネルギーを付与し、
前記駆動信号印加手段は、1の記録媒体に対する前記画像データに基づく電圧印加期間の前後に、前記第1及び第2駆動信号をそれぞれ前記第1及び第2低電圧に維持し、且つ、前記第2駆動信号を、前記電圧印加期間の前における前記第1活性部に係る前記電圧印加期間の開始時点である第1時点よりも第1所定時間前の第2時点に前記第2低電圧から前記第2高電圧に変化させ、前記第2時点から前記第1時点まで前記第2高電圧に維持することを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−959(P2012−959A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140946(P2010−140946)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】