説明

液体吐出装置、液体吐出方法、及び、印刷物

【課題】 光輝性インクを用いたインクジェット方式により、表面が平坦な画像を形成する。
【解決手段】 インクを吐出可能なヘッドと、前記ヘッドから印刷用媒体への前記インクの吐出を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置において、
前記ヘッドはカラーインクと光輝性インクの吐出が可能で、前記制御部は、前記カラーインクと前記光輝性インクとを前記印刷用媒体上に吐出する場合は、一方のインクと他方のインクとで同じ場所への吐出可能タイミングに時間差を設けると共に、同じ場所への前記一方のインクの吐出量の大小に応じて前記他方のインクの吐出量を調整し、両インクの吐出後に前記印刷用媒体上に前記両インクで形成されたインク面が平坦化するように前記両インクを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及び、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出して媒体上にインク滴(ドット)を着弾させることで記録を行う印刷装置が知られている。このような印刷装置では、一般的なカラーインク(例えばKCMYの各色インク)の他に、金属光沢を有する光輝性インク(例えば金属粒子やアルミ箔等を含むメタルインク)を用いて印刷が行われることがある。このような光輝性インクを用いたメタリック印刷では、該メタルインク中に含有される金属粒子の量の大小によって印刷物の金属光沢と色調とのバランスが変化するために、所望の色調で良好な金属光沢を有するメタリック印刷を実現することは難しかった。
これに対して、メタリック印刷において印刷形状が略網目状になるように画像を印刷し、その網目の大きさを変えることで、印刷物中に含まれる金属粒子の量を調整して、金属光沢を変化させる印刷方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−78204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、良好な色調のメタリック画像を印刷することができる。しかし、実際に印刷されるメタリック画像では、カラーインクドット及びメタルインクドットが多く形成される領域と少なく形成される領域とが存在する場合がある。そのため、印刷方法によってはメタリック画像の表面に部分的な凹凸が発生することがある。画像表面に凹凸が発生している場合、その部分で反射する光が散乱することにより、当該画像を視認する際に光沢感にムラが生じ、画質が劣化しているように見えることがある。
また、例えば商品券のようにメタリック印刷が多用される印刷物においては不正コピー防止のために、メタリック印刷部分で光が正反射することが望ましい。メタリック印刷部分で光が正反射することにより、コピー時において当該部分が黒色として複写されるので、商品券の偽造防止になるからである。したがって、光が散乱しにくいように、メタリック画像の表面は平坦であることが望ましい。
【0005】
本発明では、光輝性インクを用いたインクジェット方式により、表面が平坦な画像を形成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、インクを吐出可能なヘッドと、前記ヘッドから印刷用媒体への前記インクの吐出を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置において、
前記ヘッドはカラーインクと光輝性インクの吐出が可能で、前記制御部は、前記カラーインクと前記光輝性インクとを前記印刷用媒体上に吐出する場合は、一方のインクと他方のインクとで同じ場所への吐出可能タイミングに時間差を設けると共に、同じ場所への前記一方のインクの吐出量の大小に応じて前記他方のインクの吐出量を調整し、両インクの吐出後に前記印刷用媒体上に前記両インクで形成されたインク面が平坦化するように前記両インクを制御するものであることを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】印刷装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aは、本実施形態のプリンター1の構成を説明する図である。図2Bは、本実施形態のプリンター1の構成を説明する側面図である。
【図3】ヘッドの構造を説明するための断面図である。
【図4】ヘッドに設けられたノズルNzの説明図である。
【図5】第1実施形態におけるカラーインク及びメタルインクの吐出方法の概念について説明する図である。
【図6】第1実施形態におけるカラーレイヤーの処理のフローを示す図である。
【図7】第1実施形態におけるメタルレイヤーの処理のフローを示す図である。
【図8】画像をコピー(複写)する際の画像表面と反射光との関係を説明する図である。
【図9】第2実施形態におけるカラーインク及びメタルインクの吐出方法の概念について説明する図である。
【図10】画像の光沢感の調整について説明する図である。
【図11】第2実施形態におけるカラーレイヤーの処理のフローを示す図である。
【図12】第2実施形態におけるメタルレイヤーの処理のフローを示す図である。
【図13】第3実施形態のドット形成について説明する図である。
【図14】第3実施形態変形例のドット形成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
インクを吐出可能なヘッドと、前記ヘッドから印刷用媒体への前記インクの吐出を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置において、
前記ヘッドはカラーインクと光輝性インクの吐出が可能で、前記制御部は、前記カラーインクと前記光輝性インクとを前記印刷用媒体上に吐出する場合は、一方のインクと他方のインクとで同じ場所への吐出可能タイミングに時間差を設けると共に、同じ場所への前記一方のインクの吐出量の大小に応じて前記他方のインクの吐出量を調整し、両インクの吐出後に前記印刷用媒体上に前記両インクで形成されたインク面が平坦化するように前記両インクを制御するものであることを特徴とする液体吐出装置。
このような液体吐出装置によれば、光輝性インクを用いたインクジェット方式により、表面が平坦な画像を形成することができる。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記制御部は、同じ場所への吐出可能タイミングは、前記光輝性インクの吐出タイミングの方が前記カラーインクの吐出タイミングより先になるように、時間差を設けるものであることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、光沢ムラが少なく、かつ、不正コピー等をしにくい高画質なメタリック画像を形成することができる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記印刷用媒体上で、前記両インクの吐出場所によらず、前記両インクを合計した吐出量はほぼ同じであることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、任意の場所について、印刷用媒体から画像表面(インク面)までの高さが揃った平坦な画像を印刷することができる。
【0013】
かかる液体吐出装置であって、前記ヘッドは、更にクリアインクの吐出が可能であり、前記制御部は、前記カラーインクと前記光輝性インクとを前記印刷用媒体上に吐出する場合は、前記クリアインクを吐出後に吐出するよう制御することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、媒体に凹凸がある場合でも表面が平坦で光沢ムラの少ない画像を形成しやすくなる。
【0014】
かかる液体吐出装置であって、前記制御部は、前記印刷用媒体上に、前記クリアインクを吐出し、その上に前記カラーインクと前記光輝性インクの少なくとも一方を吐出し、更にその上に前記クリアインクを吐出するよう制御するものであることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、さらに光沢の強い画像を印刷することができる。
【0015】
また、インクを吐出可能なヘッドと、前記ヘッドから印刷用媒体への前記インクの吐出を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置の液体吐出方法において、カラーインクと光輝性インクのいずれか一方の吐出をする工程、前記カラーインクと前記光輝性インクのいずれか一方の吐出量に対応し、同じ吐出場所における他方のインク非吐出又は前記一方の吐出量に応じた前記他方のインク吐出をする工程、を有することを特徴とする液体吐出方法が明らかとなる。
【0016】
また、印刷用媒体上のカラーインクと光輝性インクを用いた画像が形成された印刷物において、前記カラーインクと前記光輝性インクとは積層された箇所を有すると共に、前記カラーインクと光輝性インクとからなる画像形成面がほぼ平坦であることを特徴とする印刷物が明らかとなる。
【0017】
===基本的構成===
発明を実施するための液体吐出装置の一形態として、インク等の液体を媒体に吐出することによって画像を印刷する印刷装置がある。本実施形態では、インクジェットプリンター(プリンター1)を例に挙げて説明する。
【0018】
<プリンター1の構成>
図1は、印刷装置の全体構成を示すブロック図である。
プリンター1は、紙・布・フィルム等の印刷用媒体(以下、単に媒体とも呼ぶ)に文字や画像を印刷する印刷装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0019】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
【0020】
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、当該印刷させる画像に応じたデータを生成し、プリンター1に出力する。したがって、コンピューター110は印刷装置の制御部であるとも言える。
【0021】
プリンター1は、搬送ユニット20と、キャリッジユニット30と、ヘッドユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、を有する。コントローラー60は、印刷録装置制御部であるコンピューター110から受信した記録データに基づいて各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0022】
<搬送ユニット20>
図2Aは、本実施形態のプリンター1の構成を説明する図である。図2Bは、本実施形態のプリンター1の構成を説明する側面図である。
搬送ユニット20は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。ここで、搬送方向はキャリッジの移動方向と交差する方向である。搬送ユニット20は、給紙ローラー21と、搬送モーター22と、搬送ローラー23と、プラテン24と、排紙ローラー25とを有する(図2A及び図2B)。
給紙ローラー21は、紙挿入口に挿入された紙Sをプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー23は、給紙ローラー21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター22によって駆動される。搬送モーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。プラテン24は、印刷中の紙Sを、紙Sの裏側から支持する部材である。排紙ローラー25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0023】
<キャリッジユニット30>
キャリッジユニット30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジ31を所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモーター32(CRモーターとも言う)とを有する(図2A及び図2B)。
キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター32によって駆動される。キャリッジモーター32の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。また、キャリッジ31は、画像を印刷する液体(インク)を収容するカートリッジを着脱可能に保持している。
【0024】
<ヘッドユニット40>
ヘッドユニット40は、紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられ、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0025】
図3は、ヘッド41の構造を示した断面図である。ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース411はピエゾ素子群PZTを収納し、ケース411の下面に流路ユニット412が接合されている。流路ユニット412は、流路形成板412aと、弾性板412bと、ノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412fとなる貫通口、インク供給路412gとなる溝部が形成されている。弾性板412bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412hを有する。そして、アイランド部412hの周囲には弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室412fを介して、各ノズルNzに対応した圧力室412dに供給される。ノズルプレート412cはノズルNzが形成されたプレートである。
【0026】
ピエゾ素子群PZTは、櫛歯状の複数のピエゾ素子(駆動素子)を有し、ノズルNzに対応する数分だけ設けられている。ヘッド制御部HCなどが実装された配線基板(不図示)によって、ピエゾ素子に駆動信号COMが印加されると、駆動信号COMの電位に応じてピエゾ素子は上下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412hは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部412h周辺の弾性膜412iが変形し、圧力室412d内の圧力が上昇・下降することにより、ノズルからインク滴が吐出される。
【0027】
図4は、ヘッド41の下面に設けられたノズルNzの説明図である。ノズル面では、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kとからなるカラーインクノズル列、及び、光輝性インク(例えば、後述するメタルインク)を吐出するメタルインクノズル列Meが形成されている。また、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びメタル(Me)以外の色のインクを吐出するノズル列を備えていてもよい。例えば、クリア(CL)やホワイト(W)のインクを吐出するノズル列や、があってもよい。
なお、ヘッド41は、カラーインク吐出部、光輝性インク吐出部、クリアインク吐出部等が一体化されていても、それぞれ別体であってもよい。あるいは、任意のいずれかが別体で残りが一体であってもよい。
【0028】
図4に示されるようにカラー(KCMY)およびメタル(Me)の各ノズル列では、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルNzが搬送方向に所定間隔Dにて並ぶことにより構成されている。各ノズル列は、#1〜#180の180個のノズルNzをそれぞれ備える。なお、各ノズル列における実際のノズル数は180個には限られず、例えばノズル数が90個であったり360個であったりしてもよい。また、図4において、各ノズル列は移動方向に沿って並列に並んでいるが、搬送方向に沿って縦列に並ぶような構成とすることもできる。また、KCMY−Meの各色についてそれぞれ1列ずつのノズル列を有するのではなく、各色についてそれぞれ複数のノズル列を有するような構成であってもよい。
【0029】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び光学センサ54等が含まれる(図2A及び図2B)。
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラー23の回転量を検出する。紙検出センサ53は、給紙中の紙Sの先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、対向する位置の紙Sの有無を検出し、例えば、移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサ54は、状況に応じて、紙Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0030】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する(図1)。
インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して搬送ユニット20等の各ユニットを制御する。
【0031】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピューター110からインターフェイス部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御することにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0032】
給紙処理は、印刷すべき紙をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラー60は、給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラー23まで送る。続いて、搬送ローラー23を回転させ、給紙ローラー21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。
【0033】
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクを断続的に吐出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャリッジ31を移動方向に移動させ、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド41からインクを吐出させる。吐出されたインク滴が紙上に着弾すると、紙上にドットが形成され、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットラインが形成される。
【0034】
搬送処理は、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラー60は、搬送ローラー23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
【0035】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙に印刷する。そして、印刷すべきデータがなくなると、排紙ローラー25を回転させてその紙を排紙する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
次の紙に印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0036】
プリンター1の印刷動作には、移動方向(走査方向)の右側(ホームポジションとする)から左側へ移動する往路時にノズルからインク滴を吐出させ、ヘッド41が移動方向の左側から右側へ移動する復路時にはノズルからインク滴を吐出させない「単方向印刷」と、往路時及び復路時にノズルからインク滴を吐出させる「双方向印刷」とがある。本実施形態で説明する印刷方法は「単方向印刷」及び「双方向印刷」のいずれの印刷動作にも対応可能である。
【0037】
<印刷に用いられる光輝性インクについて>
本実施形態では、光を反射することによって光沢を発する光輝性インクを用いて印刷を行うことで、画像に光沢感を持たせる。光輝性インクとして、銀粒子やアルミ粒子等の金属粒子を含有するメタルインクについて説明する。
【0038】
アルミ粒子を含むメタルインクは、印刷面に明るい金属光沢を得ることができるが、アルミ粒子は酸化しやすいため、時間経過と共に印刷面が白化するおそれがある。一方、銀粒子を含有するメタルインクは、アルミ粒子を含有するインクと比べて金属光沢の色が暗くなりやすくコストが高いという問題があるが、酸化しにくく安定性に優れるという性質を有する。印刷時に使用するメタルインクは、印刷の用途に応じて選択することができるが、本明細書の各実施形態では銀粒子を含有するメタルインクを用いた印刷について説明する。
【0039】
メタルインクの溶媒としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水が用いられる。金属粒子の分散の妨げにならない程度であれば、水中にイオン等が存在していてもよい。また、必要に応じて、界面活性剤、多価アルコール、pH調整剤、樹脂類、色材等を含有していてもよい。
【0040】
本実施形態のインク組成物に含まれる銀粒子は、銀を主成分とする粒子である。銀粒子は、例えば、副成分として、他の金属、酸素、炭素等を含んでもよい。銀粒子における銀の純度としては、例えば、80%以上とすることができる。銀粒子は、銀と他の金属との合金であってもよい。また、インク組成物中の銀粒子は、コロイド(粒子コロイド)の状態で存在していてもよい。銀粒子がコロイド状態で分散している場合は、さらに分散性が良好となり、例えばインク組成物の保存安定性の向上に寄与することができる。
【0041】
銀粒子の粒径加積曲線における粒径d90は、50nm以上1μm以下である。ここで、粒径加積曲線とは、インク組成物等の液体に分散された銀粒子について、粒子の直径、及び当該粒子の存在数を求めることができる測定を行った結果を、統計的に処理して得られる曲線の一種である。本明細書における粒径加積曲線は、粒子の直径を横軸にとり、粒子の質量(粒子を球と見なしたときの体積、粒子の密度、及び粒子数の積)について、直径の小さい粒子から大きい粒子に向かって積算した値(積分値)を縦軸にとったものである。そして、粒径d90とは、粒径加積曲線において、縦軸を規格化(測定された粒子の総質量を1と)したときに、縦軸の値が90%(0.90)となるときの、横軸の値すなわち粒子の直径のことをいう。なお、この場合の銀粒子の直径とは、銀粒子そのものの直径であってもよいし、銀粒子がコロイド状で分散している場合には、当該粒子コロイドの直径であってもよい。
【0042】
銀粒子の粒径加積曲線は、例えば、動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置を使用することによって求めることができる。動的光散乱法は、分散している銀粒子にレーザー光を照射し、その散乱光を光子検出器で観測するものである。一般に分散している銀粒子は、通常ブラウン運動をしている。銀粒子の運動の速度は、粒子直径の大きな粒子ほど大きく、粒子直径の小さな粒子ほど小さい。ブラウン運動をしている銀粒子にレーザー光を照射すると、散乱光において、各銀粒子のブラウン運動に対応した揺らぎが観測される。この揺らぎを測定し、光子相関法等により自己相関関数を求め、キュムラント法及びヒストグラム法解析等を用いることで銀粒子の直径や、直径に対応した銀粒子の頻度(個数)を求めることができる。特にサブミクロンサイズの銀粒子を含む試料に対しては、動的光散乱法が適しており、動的光散乱法により比較的容易に粒径加積曲線を得ることができる。動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置としては、例えば、ナノトラックUPA−EX150(日機装株式会社製)、ELSZ−2、DLS−8000(以上、大塚電子株式会社製)、LB−550(株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
【0043】
<印刷画像について>
本実施形態において印刷対象となる画像(原画像)は、メタルインク(Me)によって印刷されるメタリック画像部分と、カラーインク(KCMY)によって印刷されるカラー画像部分とから構成される。なお、このカラー画像部分はRGBの3色で表現され、印刷時にはKCMYの4色のカラーインクによって印刷される。なお、上述したようにカラーインクとして、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)以外の色、例えば、クリア(CL)やホワイト(W)を用いて印刷を行ってもよい。
本実施形態では、説明のため、メタリック画像が形成される階層(メタルレイヤー)とカラー画像が形成される階層(カラーレイヤー)との2種類の階層に原画像を分けて考えるものとする。
【0044】
===第1実施形態===
<第1実施形態のドット形成について>
第1実施形態では、メタルインク(光輝性インク)及びカラーインクを用いて画像の印刷を行う。その際、メタルインクによって媒体上に形成されるメタルインクドットの媒体表面からの高さ、及び、カラーインクによって媒体上に形成されるカラーインクドットの媒体表面からの高さが揃うようにする。すなわち、メタルインクとカラーインクとの両インクが吐出された後に媒体上に形成される画像の表面(インク面若しくは画像形成面とも言う)が平坦になるように、吐出されるインクの量が制御される。
【0045】
印刷時の具体的な処理を説明する前に、第1実施形態の概要について説明する。図5は、第1実施形態におけるカラーインク及びメタルインクの吐出方法の概念について説明する図である。説明のため、カラーインクとしてはシアン(C)1色のみを用いて印刷を行うものとする。図5Aは、カラーレイヤーにおける所定の領域中で、カラーインクドットが形成される画素を示す。図5Bは、メタルレイヤーにおける図5Aと同じ領域中で、メタルインクドットが形成される画素を示す。図5Cは、図5A及び図5Bを重ね合わせた状態を示す。なお、図の破線で囲まれる1マス分の領域が1画素を表している。
【0046】
まず、プリンタードライバーは、カラー画像を印刷するための画像データにしたがって、媒体中の所定の場所(例えば、図5Aに示される4×4の画素領域)にカラーインク(シアン(C)インク)ドットを吐出するためのデータを生成する。図5Aで示されるカラーレイヤーでは、黒丸で示される画素にシアン(C)インクドットが吐出される。この状態では、ドットが形成される画素と形成されない画素とが隣り合って存在するため、画像表面(インク面)に凹凸が発生する。例えば、図5AのA−A断面では、左から1番目と3番目の画素にはインクドットが形成されているが、左から2番目と4番目の画素にはインクドットが形成されない。したがって、A−A断面の太線部で示されるように、画像表面は凹凸を有する形状となる。なお、図の「画像表面」は、媒体上にインクドットが形成されてから所定時間が経過した後、ドットが潰れて平坦化した状態における画像の表面を表している。つまり、図5AのA−A断面に示されるドットの形状は、インクが着弾した時点のドットの状態を模式的に表したものであり、その後、ドットが自重により潰れることで隣接するドットとの間が埋まり、図に示されるような平坦な部分を有する画像表面が形成される。
【0047】
画像表面に凹凸が生じている場合、当該画像表面に入射した光は様々な方向に散乱して反射するため、画像表面に光沢のムラが発生しているように見える。
【0048】
そこで、プリンタードライバーは、その場所(図5Aに示される4×4の画素領域)中でカラーインク(シアン(C)インク)ドットが形成されていない画素にメタルインク(Me)ドットを吐出するためのデータを生成する。図5Bで示されるメタルレイヤーでは、白丸で示される画素にメタルインクドットが形成される。
【0049】
そして、カラーレイヤー(図5A)とメタルレイヤー(図5B)とを重ね合わせた状態が図5Cのように表される。図5Cでは、4×4の画素領域の全ての画素に、カラーインクドット(黒丸)またはメタルインクドット(白丸)が形成されている。すなわち、全ての画素がインクドットで埋められることになるため、図5Aにおいて発生していた画像表面の凹凸が平坦化される。例えば、図5CのB−B断面では、左から1番目と3番目の画素にカラーインクドット(黒丸)が形成され、2番目と4番目の画素にメタルインクドット(白丸)が形成される。したがって、所定時間経過後の画像表面はB−B断面の太線部で示されるように平面状になりやすい。平面に入射した光はほぼ正反射するため、画像表面に光沢ムラが発生しにくくなる。
【0050】
なお、上述の図5Cでは、全ての画素にインクドットが形成される例について説明したが、インクドットは、ほぼ全ての画素に形成されていれば画像表面を平坦にすることができる。したがって、必ずしも全ての画素にインクドットが形成されている必要はない。
【0051】
<印刷処理>
続いて、第1実施形態における具体的な印刷処理の方法について説明する。印刷処理は、カラーレイヤーについての処理と、メタルレイヤーについての処理とが行なわれ、最終的に印刷対象画像の印刷データが生成される。
印刷開始に先んじて、まずコンピューター110とプリンター1とが接続され(図1参照)、プリンター1に同梱されているCD−ROMに記憶されたプリンタードライバー(若しくは、プリンター製造会社のホームページからダウンロードしたプリンタードライバー)が、コンピューター110にインストールされる。このプリンタードライバーは、図6の各処理をコンピューターに実行させるためのコードを備えている。
【0052】
プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから原画像のデータを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンター1に出力する。原画像のデータを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理、などを行う。なお、プリンタードライバーをプリンター1にインストールして、各種処理をプリンター側で行ってもよい。
以下に、プリンタードライバーが行う各種処理の詳細について説明する。
【0053】
(カラーレイヤーの処理)
図6に、第1実施形態におけるカラーレイヤーの処理のフローを示す。カラーレイヤーの処理はS101〜S105の各工程を実行することによって行われる。各工程は、プリンタードライバーからの指令に基づいて実行される。
ユーザーがアプリケーションプログラム上から印刷を指示して印刷が開始されると、プリンタードライバーが呼び出され、印刷対象となる画像データ(原画像データ)をアプリケーションプログラムから受け取り(S101)、その画像データに対して解像度変換処理(S102)が行われる。
【0054】
解像度変換処理(S102)とは、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される各階調(例えば256階調)のデータから構成される。
【0055】
次に、プリンタードライバーは、色変換処理を行う(S103)。色変換処理とは、プリンター1のインク色の色空間に合わせて画像データを変換する処理である。ここでは、RGB色空間の画像データが、KCMY色空間の画像データに変換される。この色変換処理は、RGBデータの階調値とKCMYデータの階調値とを対応づけた3D−LUTに基づいて行われる。これにより、KCMY色空間の画像データが得られる。なお、色変換処理後の画素データは、KCMY色空間により表される256階調の8ビットデータである。
【0056】
色変換処理(S103)の後、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理を行う(S104)。ハーフトーン処理とは、高階調数のデータを、プリンター1が形成可能な低階調数のデータに変換する処理である。ここでは、256階調の印刷画像データが、2階調を示す1ビットデータに変換されるものとする。ハーフトーン処理方法としてディザ法・誤差拡散法などが知られており、本実施形態もこのようなハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理されたデータは、記録解像度(例えば720×720dpi)と同等の解像度である。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素ごと1ビットの画素データが対応しており、この画素データは各画素でのドット形成状況(ドットの有無)を示すデータ(図5Aに相当するデータ)になる。
【0057】
次に、プリンタードライバーは、ラスタライズ処理を行う(S105)。ラスタライズ処理は、印刷画像データ上の画素データの並び順を、プリンター1に転送すべきデータ順に変更する処理である。例えば、各ノズル列のノズルの並び順に応じて、画素データを並び替える。その後、プリンタードライバーは、プリンター1を制御するための制御データを画素データに付加することによってカラー画像の印刷データを生成し、その印刷データをプリンター1に送信する。
【0058】
(メタルレイヤーの処理)
図7に、第1実施形態におけるメタルレイヤーの処理のフローを示す。メタルレイヤーの処理はS151〜S154の各工程を実行することによって行われる。各工程は、プリンタードライバーからの指令に基づいて実行される。
【0059】
メタルレイヤーの処理では、はじめにプリンタードライバーによって、上述のS104の工程でハーフトーン処理された後のカラーレイヤーの画素データ(図5Aに相当するデータ)が取得される(S151)。当該カラーレイヤーの画素データに基づいてメタルインクを吐出するための印刷データが生成される。
【0060】
カラーレイヤーの画素データが取得された後、当該画素データで示されるカラーインクが吐出される画素以外の画素が選択される(S152)。すなわち、上述の図5Bに相当するような画素データが生成され、メタルインク(光輝性インク)を吐出するべき画素が決定される。具体的には、カラーレイヤーの画素データにおいて、各画素の階調値が調べられる。上述の例のようにカラー画像の画素データが1ビットデータとして表される場合には、階調値[1]の画素には所定量のカラーインクが吐出され、それぞれ同じ大きさのカラーインクドットが形成される。一方、階調値[0]の画素にはカラーインクが吐出されないため、カラーインクドットが形成されない。プリンタードライバーは階調値[0]の画素を検出し、当該画素をメタルインク吐出画素として決定する。
【0061】
そして、各画素に吐出されるカラーインク及びメタルインクの合計量がほぼ等量となるように、画素毎のメタルインクの吐出量が決定される(S153)。本実施形態では、カラーレイヤーの階調値[0]で表される画素に対して、階調値[1]でメタルインクを吐出させるようなデータが生成される。これにより、各画素には階調値[1]でカラーインクドットまたはメタルインクドットが形成される。すなわち、画像を構成する全ての画素を同じ大きさのカラーインクドットまたはメタルインクドットによって埋めるような画素データが生成される。言い換えると、画素毎に吐出されるインクの合計量に対して、カラーインクの吐出量が相対的に少ない画素(本実施形態においてはカラーインクの吐出量がゼロの画素)ではメタルインクが多く吐出される。逆に、カラーインクの吐出量が相対的に多い画素ではメタルインクが少なく吐出される(本実施形態においてはメタルインクの吐出量がゼロとなる)ようなデータが生成される。これによって表面が平坦な画像が形成される
その後、プリンタードライバーは、上述のS105と同様にラスタライズ処理を行う(S154)。そして、画素データに制御データが付加され、メタリック画像の印刷データとしてプリンター1に送信される。なお、メタルレイヤーの処理においては、カラーレイヤーの処理で行なわれたような色変換処理(S103)は行わなくてもよい。メタルインク色(Me)はカラーインク(KCMY)の組み合わせでは表現することができないため、特色として扱われるためである。
【0062】
プリンター1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的に、プリンター1のコントローラー60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20などを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御してヘッド41に備えられた各ノズルからカラーインク及びメタルインクを吐出させる。
【0063】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態では、各画素に吐出されるインク量の合計に対して、カラーインクの吐出量が相対的に少ない画素ほどメタルインクが多く吐出される。逆に、カラーインクの吐出量が相対的に多い画素ほどメタルインクが少なく吐出される。つまり、ある場所(所定の領域)に対する一方のインクの吐出量の大小に応じて、同じ場所(領域)への他方のインクの吐出量を調整する。言い換えると、画像を構成する各領域に吐出されるカラーインクの量とメタルインク(光輝性インク)の量との合計が、吐出場所によらずそれぞれほぼ等しくなるように制御を行なう。これにより、形成される画像の表面(インク面、画像形成面)が平坦になり、画像表面に入射する光が正反射しやすくなるため、光沢ムラの少ない高画質な画像を形成することができる。
【0064】
また、画像表面で光が正反射することにより、不正コピーを防止することができる。図8に、画像をコピー(複写)する際の画像表面と反射光との関係を説明する図を示す。一般的なコピー機を用いて画像のコピーを行なう場合、画像の法線方向に対して所定の角度(例えば45度)に光源を設置しておき、当該光源を用いて入射角が一定となるように画像表面に光を照射する。そして、画像の法線方向に対して0度の位置に受光部を設けておき、画像表面で0度の方向に反射した光を受光する。受光した光はRGBの成分毎に強さが測定されることにより、その部分における色を再現することができる。
【0065】
図8Aは、図5AのA−A断面のように、表面が凹凸を有する画像(一般的な画像)をコピーする場合の概念図である。この場合、光源から照射される光(入射光)は画像表面で反射するが、表面に凹凸が発生しているため、反射光は散乱する。この散乱した反射光のうち、画像の法線方向に対して0度の方向に反射した光のみが受光部で検出される。これにより、当該部分における色が再現される。
【0066】
一方、図8Bは、図5CのB−B断面のように、表面が平坦な画像(いわゆる鏡面のような光沢を有する画像)をコピーする場合の概念図である。この場合、入射光は画像表面でほぼ正反射するため、例えば45度の角度で入射した光は45度の角度で反射する。つまり、画像表面が平坦であれば、入射光のうち法線方向に反射する成分は非常に少なくなる。したがって、受光部において光が検出されにくくなるため、コピー画像において当該部分は黒色として再現される。
【0067】
このことから、メタリック印刷が多用される商品券等においては、メタリック印刷部分を平坦にすることにより、当該部分を正確に再現することができなくなるため、不正コピー等の偽造を防止しやすいという効果がある。
【0068】
===第2実施形態===
第1実施形態では、同じ画素にカラーインクドットとメタルインクドットが形成されることがない場合、すなわち、カラーインクが吐出されない画素にメタルインクを吐出する例について説明した。これに対して、第2実施形態では、同じ画素にカラーインクドットとメタルインクドットとが重ねて形成される場合について説明する。この場合、一方のインクと他方のインクとで同じ場所(画素)への吐出可能タイミングには時間差を設け、一方のインクドットの上に他方のインクドットが重ねて形成されるようにする。
そして、本実施形態では、所定の場所(画素)への一方のインクの吐出量の大小に応じて、同じ場所(画素)への他方のインクの吐出量を調整し、両インクの吐出後に媒体上に形成される画像の表面(インク面)を平坦化させる。
なお、画像の印刷に用いる印刷装置の基本的構成は、第1実施形態のプリンター1と同様である。
【0069】
<第2実施形態のドット形成について>
図9は、第2実施形態におけるカラーインク及びメタルインクの吐出方法の概念について説明する図である。説明のため、カラーインクとしてはシアン(C)1色のみを用いて印刷を行うものとする。図9Aは、カラーレイヤーにおける所定の領域中で、カラーインクドットが形成される画素を示す。図9Bは、メタルレイヤーにおける図9Aと同じ領域中で、メタルインクドットが形成される画素を示す。図9Cは、図9A及び図9Bを重ね合わせた状態を示す。なお、図の1マス分の領域が1画素を表している。また、「画像表面」は、図5で説明したように、所定時間経過後の平坦化した画像表面を表している。
【0070】
第2実施形態でも、プリンタードライバーは、カラー画像を印刷するための画像データにしたがって、媒体中の所定の領域(図9Aに示される4×4の画素領域)にカラーインク(シアン(C)インク)ドットを吐出するためのデータを生成する。ここでは、小ドット、中ドット、大ドット、ドットなしの4階調でカラーインクドットが形成されるものとする。画素毎に形成されるドットの大きさ(媒体表面からドット上端までの高さ)が異なるため、画像表面には凹凸が発生する。例えば、図9AのA−A断面では、左の画素から順に、大ドット、ドットなし、小ドット、中ドットが形成される。したがって、所定時間経過後の画像表面はA−A断面の太線部で示されるように凹凸を有する形状となり、上述の様に反射光が散乱しやすくなることから、画像には光沢ムラが発生しやすくなる。
【0071】
そこで、第2実施形態では各画素に吐出されるカラーインクドットとメタルインクドットとを重ね合わせた時の合計の高さが同程度となるように、画素毎にメタルインクドットの吐出量が決定される。すなわち、画素毎に打ち込まれるインクの合計量がほぼ等しくなるようにメタルインクの吐出量が調整される。言い換えると、カラーインクドットの吐出量が相対的に多い画素ではメタルインクドットの吐出量を少なくし、逆にカラーインクドットの吐出量が相対的に少ない画素ではメタルインクドットの吐出量を多くするように、メタルインクの吐出量が決定される。
【0072】
具体的には、図9Bのメタルレイヤーに示されるように、図9Aでカラーインクドットが形成されていない画素には特大のメタルインクドットが形成される。また、カラーインクの小ドットが形成される画素にはメタルインクの大ドットが形成され、カラーインクの中ドットが形成される画素にはメタルインクの中ドットが形成され、カラーインクの大ドットが形成される画素にはメタルインクの小ドットが形成される。
【0073】
そして、カラーレイヤー(図9A)とメタルレイヤー(図9B)とを重ね合わせた状態が図9Cのように表される。図9Cでは、4×4の画素領域の全てについて、それぞれインクドットが形成されている。各画素に形成されるカラーインクドット、及び/または、メタルインクドットによって媒体から画像表面までの高さが一定となる。これにより、図9Aにおいて発生していた画像表面の凹凸が平坦化される。例えば、図9CのB−B断面では、左側から一番目の画素にはカラーインクの大ドット及びメタルインクの小ドットが形成される。また、左側から二番目の画素にはカラーインクドットが形成されず、メタルインクの特大ドットが形成される。また、左側から三番目の画素にはカラーインクの小ドット及びメタルインクの大ドットが形成される。また、左側から四番目の画素にはカラーインクの中ドット及びメタルインクの中ドットが形成される。なお、インクドットは、第1実施形態と同様に、ほぼ全ての画素に形成される。
【0074】
このように、画素毎に吐出されるインクの合計量がそれぞれほぼ等しくなるようにすることで媒体表面から画像表面までの高さを揃える。したがって、画像表面はB−B断面の太線部で示されるように平面状となる。平面に入射した光はほぼ正反射するため、画像表面に光沢ムラが発生しにくくなる。
【0075】
なお、本実施形態では、印刷データにしたがってインクを吐出する際に、メタルインク(光輝性インク)の吐出タイミングがカラーインクの吐出タイミングよりも先になるように制御される。もしメタルインクの方が後に吐出されると、カラーインクドットの上にメタルインクドットが形成されることになるため、カラーインクによる画像が見えにくくなってしまうからである。
【0076】
また、本実施形態では、各画素に形成されるメタルインクドットの大きさを変更することで、画像全体の光沢感を調整することが可能である。図10は、画像の光沢感の調整について説明する図である。
【0077】
図10Aは図9CのB−B断面に相当する図である。画像表面が平坦であるため、入射光が正反射しやすく、光沢ムラが少ない画像が印刷される。ただし、画像表面において入射光の一部が吸収されるため、反射光の強さは入射光よりも弱くなる。
【0078】
一方、図10Bは、各画素にそれぞれ吐出されるメタルインクの量を図10Aよりも増加させた場合を表す図である。図10Aの場合と同様に、各画素におけるメタルインクとカラーインクとの合計吐出量を調整することによって画像表面を平坦に形成することができるため、入射光は正反射しやすくなり、光沢ムラの発生を抑制することができる。さらに、図10Bでは画像を形成するメタルインクの量が図10Aの場合よりも多くなっている。すなわち、媒体上に存在する金属粒子の量も増えている。したがって、画像表面に入射した光はより反射しやすくなる。画像を構成するインクドット中に含有される金属粒子の量が増えることにより、画像表面において吸収されずに反射する光の量が多くなるからである。これにより、反射光の強さが図10Aの場合よりも強くなり、より光沢の強い画像を印刷することができる。
【0079】
このように、メタルインクの吐出量を調整することで、光沢ムラが少なく、かつ、所望の光沢感を有する画像を形成することができる。また、画像表面が平坦に形成されるため、カラーコピー等を行なう際に該メタリック印刷部分が黒く再現されるので、不正コピーを抑制することができる。
【0080】
<印刷処理>
第2実施形態における具体的な印刷処理の方法について説明する。印刷処理は、カラーレイヤーについての処理と、メタルレイヤーについての処理とが行なわれ、最終的に印刷対象画像の印刷データが生成される。
【0081】
(カラーレイヤーの処理)
図11に、第2実施形態におけるカラーレイヤーの処理のフローを示す。カラーレイヤーの処理はS201〜S205の各工程を実行することによって行われる。各工程は、プリンタードライバーからの指令に基づいて実行される。
印刷が開始されると、プリンタードラーバーは、印刷対象となる画像データ(原画像データ)をアプリケーションプログラムから受け取り(S201)、解像度変換処理(S202)が行なわれる。解像度変換処理は第1実施形態のS102と同様である。続いて、色変換処理により、RGB色空間の画像データが、KCMY色空間の画像データに変換される(S203)。色変換処理も第1実施形態のS103と同様であり、色変換処理後の画素データは、KCMY色空間により表される256階調の8ビットデータで表される。
【0082】
次に、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理を行う(S204)。ここでは、ハーフトーン処理によって256階調の印刷画像データが、4階調を示す2ビットデータに変換されるものとする。本実施形態において、ハーフトーン処理後の画像データは、画素ごとに2ビットの画素データが対応しており、この画素データは各画素でのドット形成状況を示すデータになる(図9Aに相当する画素データ)。例えば、画素データが[11]の画素ではカラーの大ドットが形成され、[10]の画素ではカラーの中ドットが形成され、[01]の画素ではカラーの小ドットが形成され、[00]の画素ではドットが形成されない。
【0083】
ハーフトーン処理の後、プリンタードライバーはラスタライズ処理を行う(S205)。その後、プリンター1を制御するための制御データを画素データに付加することによって印刷データを生成し、その印刷データをプリンター1に送信する。
【0084】
(メタルレイヤーの処理)
図12に、第2実施形態におけるメタルレイヤーの処理のフローを示す。メタルレイヤーの処理はS251〜S255の各工程を実行することによって行われる。各工程は、プリンタードライバーからの指令に基づいて実行される。
【0085】
メタルレイヤーの処理では、まず、上述のS204においてハーフトーン処理された後のカラーレイヤーの画素データが取得される(S251)。
取得されたカラーレイヤーの画素データから、各画素についてカラーインクの吐出量が算出される(S252)。上述のように、カラーレイヤーの画素データは、ハーフトーン処理によって2ビットのデータとして表されている。したがって、各画素について色毎のインク吐出量が4種類のデータで表され、このデータから画素毎のカラーインク吐出量が算出される。
【0086】
続いて、印刷される画像の光沢度が設定される(S253)。光沢度の設定は、不図示のユーザーインターフェースを介して、ユーザー自身によって設定される。例えば、強・中・弱の3段階の光沢度が設定されており、その中からユーザーが所望の光沢度を選択することによって、印刷画像における反射光の強さが設定される。なお、光沢度の設定は他のタイミング(例えば印刷開始時)に行われるのであってもよい。
【0087】
次に、S252で算出された各画素のカラーインク吐出量、及び、S253で設定された光沢度に基づいて、各画素に吐出されるメタルインクの量が決定される(S254)。メタルインクの吐出量は上述のように、各画素におけるカラーインクの吐出量とメタルインクの吐出量との合計量が同程度となるように、画素毎に調整される。つまり、カラーインクの吐出量が相対的に少ない画素ではメタルインクが多く吐出され、カラーインクの吐出量が相対的に多い画素ではメタルインクが少なく吐出される。例えば、カラーレイヤーにおける階調値が[00]の画素(カラーインクが吐出されない画素)におけるメタルインクの吐出量をAとする。この場合、プリンタードライバーは、カラーレイヤーにおける階調値が[01]の画素(カラーインクの小ドットが吐出される画素)におけるメタルインクの吐出量を0.7Aとし、カラーレイヤーにおける階調値が[11]の画素(カラーインクの大ドットが吐出される画素)におけるメタルインクの吐出量は0.2Aとする等、画素毎にカラーインクの吐出量に応じてメタルインクの吐出量が決定される。
【0088】
また、設定された光沢度によって、画素毎に吐出されるメタルインクの量が調整される。例えば、光沢度が「中」と設定された時のメタルインク吐出量をA´とすると、光沢度が「強」と設定された場合にはメタルインク吐出量を1.5A´とし、光沢度が「弱」と設定された場合にはメタルインク吐出量を0.5A´とする等、画素毎にメタルインクの吐出量を増減させることにより、印刷画像の光沢度の強さを調整する。
【0089】
なお、カラーレイヤーの画素データに対応したメタルインク吐出量のデータのテーブルを、あらかじめメモリー63に記憶しておき、当該テーブルデータにしたがって画素毎のメタルインク吐出量が決定されるような方法としてもよい。
【0090】
その後、プリンタードライバーは、ラスタライズ処理を行い(S255)、画素データに制御データが付加され、印刷データとしてプリンター1に送信される。
【0091】
プリンター1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的に、プリンター1のコントローラー60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20などを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御してヘッド41に備えられた各ノズルからカラーインク及びメタルインクを吐出させる。印刷の際には、まずメタルインクドットが先に吐出され、次にカラーインクドットが吐出される。
【0092】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態では、画素毎に形成されるカラーインクドットとメタルインクドットとの合計の高さがほぼ等しくなるように、メタルインクの吐出量を調整することにより、形成される画像の表面を平坦にする。これにより、画像表面における光沢ムラが目立ちにくい高画質なメタリック画像を形成することができる。その際、各画素におけるメタルインクの吐出量を変更して媒体上に存在する金属粒子量を増減させることによって、画像全体の光沢度を調整することができる。
【0093】
===第3実施形態===
上述の各実施形態では、媒体上に直接カラーインクドット若しくはメタルインクドットを吐出させていた。一方、第3実施形態では、媒体に透明なクリアインク(CL)を吐出して、平坦なクリア層を形成する。そして、当該クリア層の上にカラーインクドットやメタルインクドットを形成させることにより、表面が平坦な画像を印刷する。
【0094】
<第3実施形態のドット形成について>
図13に、第3実施形態のドット形成について説明する図を示す。実際に印刷を行う場合、印刷を行う媒体の表面に凹凸が発生している(平坦ではない)場合がある。図13Aは、表面に凹凸が発生している媒体を用いて画像を印刷したときの画像表面の断面の状態を表している。図のように、媒体の表面に凹凸が発生している場合、当該媒体に着弾するドットは、その凹凸にしたがって画像表面を形成する。上述の実施形態で説明したように、画素毎に吐出されるドットの量がそれぞれ同程度となるように調整される場合、媒体の凹部分に着弾したドットが形成する画像表面は高さが低くなり、媒体の凸部分に着弾したドットが形成する画像表面は高さが高くなる。また、媒体表面に凹凸があることにより、メタルインクドット(図の白丸)が理想的な着弾位置(画素)からずれて着弾するおそれがある。結果として画像表面が平坦ではなくなり、光沢ムラが発生しやすくなる。
【0095】
このような場合に、媒体の表面の凹凸を検出し、その凹凸形状に対応して画素毎にインクの吐出量を調整することは非常に難しい。そこで、メタルインク及びカラーインクを吐出する前に、媒体表面の(画像が形成される領域の)全体にわたってクリアインクを吐出してクリア層を形成する。そして、形成されたクリア層の上にメタルインクドット及びカラーインクドットを形成させることで、印刷画像の表面を平坦な状態にする。なお、クリアインクとは、色材を含まないか、含んでいても少量の、一般的に「クリアインク」と呼ばれる透明なインクである。
【0096】
図13Bは、クリア層を形成した後に、画像を印刷したときの画像表面の断面の状態を表している。図のようにクリア層を形成することにより、平坦な表面(クリア層)の上にメタルインクとカラーインクとの少なくとも一方が吐出されることになるので、上述の各実施形態と同様に、画像表面も平坦に形成される。また、メタルインクドット(カラーインクドット)は平坦クリア層の表面に着弾するため、理想的な着弾位置(画素)からずれる可能性が低くなり、また、媒体の種類や性質によらずメタルインクドットを定着させやすくなる。つまり、本実施形態においてクリア層は、媒体表面をレベリング(平坦化)するとともに、画像を形成する際の下地層としての機能も有する。
【0097】
なお、下地層としての機能を考慮すると、当該下地層をクリアインク以外のインク(例えば白インク)等を用いて形成することも可能である。しかし、クリア層が透明なクリアインクで形成されることにより、クリア層自体でも光を正反射させやすくなるため、不正コピーを防止しやすくなる。
【0098】
<印刷装置、印刷処理について>
第3実施形態で用いられる印刷装置の構成は、ヘッド部以外はプリンター1と同様である。本実施形態では、ヘッド部41にクリアインク(CL)を吐出するCLノズル列が設けられる(不図示)。クリアインクノズル列(CL)の構成は、他のノズル列と同様である(図4参照)。また、クリアインクノズル列(CL)の配置は任意であるが、図4でメタルインクノズル列(Me)の隣、またはブラックインクノズル列(K)の外側に配置されることが望ましい。
【0099】
印刷処理は、基本的に第2実施形態(図11、図12)と同様である。ただし、本実施形態では、カラーインク及びメタルインクを吐出するための印刷データの他に、印刷領域の全体にクリアインクを吐出するようなデータがプリンタードライバーによって生成される。クリアインクを吐出するデータとしては、例えば、印刷領域の全ての画素にクリアインクの大ドットを形成するようなデータが生成される。全ての画素にクリアインクの大ドットを形成することにより隣接するクリアインク同士が合流しやすくなり、媒体全面がレベリングされ平坦なクリア層(図13B参照)が形成される。なお、図13Bに示されるような表面が平坦なクリア層を形成することができるのであれば、必ずしも全ての画素にクリアインクを吐出する必要は無いく、所定の画素にクリアインクを吐出するのであっても良い。例えば1画素間隔でクリアインクの大ドットを形成するような画素データが生成されるのであっても良い。
【0100】
<変形例>
クリアインクを用いて印刷を行う場合、画像の下地としてだけではなく、画像の上側表面をコーティングするためにクリアインクを用いてもよい。図14に、第3実施形態変形例のドット形成について説明する図を示す。
まず上述の第3実施形態と同様に、媒体の上にクリアインクを吐出して、媒体表面の凹凸をレベリングする第1のクリア層を形成する。その後、第1のクリア層の上にメタルインク及び/またはカラーインクを吐出してメタリック画像を形成させる。変形例では、その上にさらにクリアインクを吐出して、表面が平坦な第2のクリア層を形成する。プリンタードライバーは、第1のクリア層を形成するためのデータと同様に、第2のクリア層を形成するためのデータを生成し、所定の画素にクリアインクを吐出させる。
第1のクリア層の上に形成されることによって表面が平坦に形成されたメタリック画像の上に、さらに第2のクリアの層を設けることにより、より光を正反射させやすくすることができる。
【0101】
<第3実施形態の効果>
第3実施形態では媒体上にクリアインクを吐出してクリア層を形成し、当該クリア層の上に、画素毎の高さが揃うようにメタルインクドット及びクリアインクドットを形成させる。媒体表面に凹凸がある場合でもクリア層によって凹凸がレベリングされるため、表面が平坦な画像を印刷しやすくなる。これにより、媒体の状態によらずに、光沢ムラが少なく不正コピー等を行いにくい画像を印刷することができる。また、形成される画像の上にさらにクリアインクの層を形成することにより、さらに光沢度の高い画像を印刷することができる。
【0102】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンターを説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0103】
<液体吐出装置について>
前述の実施形態では、液体吐出装置の一例として画像を形成する印刷装置(インクジェットプリンター)が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用してもよい。
【0104】
<使用するインクについて>
前述の実施形態では、カラーインクとしてブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクを使用して記録する例が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、ホワイト(W)等、KCMY以外のカラーインクを用いて記録を行ってもよい。
また、メタルインクとして銀粒子やアルミ粒子を含有するインクの例が説明されていたが、印刷時に金属光沢を再現できるものであれば、銅や金等の他の粒子を含有するインクを使用することも可能である。
【0105】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、液体を吐出させるための動作を行う素子としてピエゾ素子PZTを例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエーターを用いてもよい。
【0106】
<他の印刷装置について>
前述の実施形態では、ヘッド41をキャリッジとともに移動させるタイプのプリンター1を例に挙げて説明したが、プリンターはヘッドが固定された、いわゆるラインプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 プリンター
20 搬送ユニット、21 給紙ローラー、22 搬送モーター、23 搬送ローラー、
24 プラテン、25 排紙ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモーター、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、411 ケース、412 流路ユニット、
412a 流路形成板、412b 弾性板、412c ノズルプレート、
412d 圧力室、412e ノズル連通口、412f 共通インク室、
412g インク供給路、412h アイランド部、412i 弾性膜、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、63 メモリー、
64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能なヘッドと、
前記ヘッドから印刷用媒体への前記インクの吐出を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置において、
前記ヘッドはカラーインクと光輝性インクの吐出が可能で、
前記制御部は、前記カラーインクと前記光輝性インクとを前記印刷用媒体上に吐出する場合は、一方のインクと他方のインクとで同じ場所への吐出可能タイミングに時間差を設けると共に、同じ場所への前記一方のインクの吐出量の大小に応じて前記他方のインクの吐出量を調整し、両インクの吐出後に前記印刷用媒体上に前記両インクで形成されたインク面が平坦化するように前記両インクを制御するものであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、同じ場所への吐出可能タイミングは、前記光輝性インクの吐出タイミングの方が前記カラーインクの吐出タイミングより先になるように、時間差を設けるものであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出装置であって、
前記印刷用媒体上で、前記両インクの吐出場所によらず、前記両インクを合計した吐出量はほぼ同じであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドは、更にクリアインクの吐出が可能であり、
前記制御部は、前記カラーインクと前記光輝性インクとを前記印刷用媒体上に吐出する場合は、前記クリアインクを吐出後に吐出するよう制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記印刷用媒体上に、前記クリアインクを吐出し、その上に前記カラーインクと前記光輝性インクの少なくとも一方を吐出し、更にその上に前記クリアインクを吐出するよう制御するものであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
インクを吐出可能なヘッドと、
前記ヘッドから印刷用媒体への前記インクの吐出を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置の液体吐出方法において、
カラーインクと光輝性インクのいずれか一方の吐出をする工程、
前記カラーインクと前記光輝性インクのいずれか一方の吐出量に対応し、同じ吐出場所における他方のインク非吐出又は前記一方の吐出量に応じた前記他方のインク吐出をする工程、
を有することを特徴とする液体吐出方法。
【請求項7】
印刷用媒体上のカラーインクと光輝性インクを用いた画像が形成された印刷物において、
前記カラーインクと前記光輝性インクとは積層された箇所を有すると共に、前記カラーインクと光輝性インクとからなる画像形成面がほぼ平坦であることを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−103461(P2013−103461A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250383(P2011−250383)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】