説明

液体吐出装置

【課題】 共通流路の上流側と下流側での装置全体の温度ばらつきを小さくすることで、全てのノズルから吐出される液体の吐出特性のばらつきを小さくする。
【解決手段】 プリンタ1は、流路ユニット22の上面に圧電アクチュエータ23が配置され、その上面にドライバIC25が実装されたCOF24が配置されている。COF24は、圧電アクチュエータ23の上流側端部及び下流側端部からそれぞれ引き出されている。そして、圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されたCOF24の部分において、ドライバIC25aとの接続位置から圧電アクチュエータ23の上流側から離れ出す位置までの長さは、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されたCOF24の部分において、ドライバIC25bとの接続位置から圧電アクチュエータ23の下流側から離れ出す位置までの長さよりも短くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルから液体を吐出させるために、一端が液体供給口に連通する共通流路を有し、この共通流路から複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路が分岐した流路構成の流路ユニットを有する液体吐出装置が知られている。
【0003】
上述したような液体吐出装置としては、例えば、用紙などの記録媒体に対してインクを吐出するインクジェットヘッドが知られている。このようなインクジェットヘッドには、種々の構成のものがあるが、一例としては、一端がインク供給口と連通する共通流路と共通流路から分岐し、ノズルに連通する圧力室を含む複数の個別流路とを有する流路ユニット、流路ユニットに接続され、各圧力室内のインクに圧力を付与する圧電素子を有する圧電アクチュエータ、圧電アクチュエータに信号を供給するドライバIC(信号供給手段)、及び、ドライバICが実装され、圧電アクチュエータと接続される配線部材、を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、配線部材に形成された配線の引き回しを容易にするために、圧電アクチュエータに信号を供給するドライバICを実装した配線部材を、圧電アクチュエータの2位置から引き出すことがある(例えば、特許文献2参照)。このとき、ノズルの配列方向と共通流路の延在方向は平行となっており、配線部材は、ノズルの配列方向に沿って引き出すことが望ましい。
【0005】
これは、仮に、ノズル間隔が狭いノズル列がノズルの配列方向と直交する方向に複数並んで配置されている場合には、両側のノズル列に挟まれたノズル列に対応する圧電素子に対して、両側のノズル列の狭いノズル間を通して配線を接続するのは困難である。そのため、配線はノズルの配列方向に沿って引き回して、配線部材はノズルの配列方向に沿ってそれぞれ引き出すのが好ましい。そして、この場合、配線部材の、圧電アクチュエータから引き出される2つの位置までの長さが同じになる位置にドライバICを実装するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−208304号公報(図2)
【特許文献2】特開2003−53940号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ドライバICは、圧電アクチュエータに信号を供給する際に発熱する。そして、ドライバICの発熱量は、ノズルの数及びそれに対応する圧電素子が増大することで、信号の供給量が増大するため、さらに増大する。そして、ドライバICで発生した熱は、配線部材の2つの引き出された部分を介して圧電アクチュエータや流路ユニットに入熱する。
【0008】
このとき、配線部材の、ドライバICから圧電アクチュエータの引き出された2つの位置までの長さが同じであると、ドライバICから配線部材の2つの引き出された部分を介して圧電アクチュエータや流路ユニットのノズル配列方向の両側に同じ熱量がそれぞれ伝わる。すると、流路ユニットの共通流路内のインクや圧電アクチュエータの圧電素子は、ノズル配列方向の両側で最も温度が高く、中央にいくにつれて温度は低くなる。ここで、流路ユニットの供給口からインクが供給されると、共通流路の上流側における圧電素子はインクにより熱量が奪われ冷却されるが、次第にインクの温度が上昇し、周囲の共通流路内のインクと同じ温度になり、共通流路の下流側における圧電素子はインクにより冷却されなくなる。すると、共通流路内のインクや圧電素子に、共通流路の上流側と下流側で温度ばらつきが生じてしまい、共通流路の上流側と下流側でインクの粘度が異なったり、圧電素子ごとで温度が異なったりして、インクに付与する吐出エネルギーがばらつき、インクの吐出特性がばらついてしまう。これは、圧電アクチュエータを有する液体吐出装置に限らず、様々な液体に圧力を付与するアクチュエータを有する液体吐出装置についても同様である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、共通流路の上流側と下流側での装置全体の温度ばらつきを小さくして、全てのノズルから吐出される液体の吐出特性のばらつきを小さくした液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体吐出装置は、液体供給口と、一端が前記液体供給口に連通する共通流路と、前記共通流路から分岐するとともに液体を吐出するノズルを有する複数の個別流路と、を含む流路ユニットと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を前記個別流路内の液体に対して付与する圧力付与手段と、前記圧力付与手段を駆動するための信号を供給する信号供給手段と、前記圧力付与手段に対して互いに異なる第1の位置及び第2の位置に接続されるとともに、これら第1の位置及び第2の位置からそれぞれ引き出されており、且つ、前記信号供給手段とも接続される配線手段と、を備えており、前記第1の位置は、前記第2の位置よりも前記共通流路の上流側に位置しており、前記配線手段の、前記信号供給手段との接続位置から前記第1の位置までの長さは、前記接続位置から前記第2の位置までの長さよりも短い。
【0011】
本発明の液体吐出装置によると、配線手段の、信号供給手段との接続位置から第1の位置までの長さは、接続位置から第2の位置までの長さよりも短い。そのため、信号供給手段で発生した熱は、共通流路の下流側に比べて上流側に多く伝わり、共通流路の下流側に比べて上流側が熱くなる。ここで、液体供給口から供給された液体は、共通流路の上流側において最も冷却効果が高く、下流側に向かうにつれて冷却効果が小さくなる。そのため、共通流路の上流側と下流側での、液体の冷却効果の違いに対して入熱量を異ならせることで、装置全体の温度ばらつきは小さくなる。これにより、全てのノズルから吐出される液体の吐出特性のばらつきを小さくすることができる。
【0012】
また、前記配線手段は、前記第1の位置から前記共通流路の上流側に引き出されるとともに、前記第2の位置から前記共通流路の下流側に引き出され、且つ、これらの2つの引き出し部分が連結して、1つの環を形成する単一の第1配線部材であり、前記信号供給手段は、前記第1配線部材における環の外側を向く面に2つ設けられており、2つの前記信号供給手段の前記第1配線部材と反対側の面に共通に接触する放熱部材をさらに備えており、前記2つの信号供給手段のうち、前記共通流路の下流側に位置する前記信号供給手段は、前記共通流路の上流側に片寄って配置されており、前記2つの信号供給手段に対応する位置において、前記放熱部材を前記信号供給手段に押し付けて密着させながら、前記信号供給手段及び前記放熱部材をそれぞれ保持する第1保持部材と、前記放熱部材の前記共通流路の下流側端部を保持する第2保持部材と、をさらに備えていることが好ましい。第1保持部材は信号供給手段に対応する位置に設けられているため、信号供給手段が共通流路の上流側に片寄って配置されると、第1保持部材も共通流路の上流側に片寄って配置され、放熱部材の下流側は第1保持部材で保持されない。これによると、共通流路の上流側に位置する放熱部材は第1保持部材で保持され、下流側に位置する放熱部材は第2保持部材で支持されることになり、放熱部材の配線部材に対する平行度を保つことができる。
【0013】
さらに、前記環内に配置された基台をさらに備えており、前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、前記基台から突出しており、前記放熱部材は、前記第2保持部材に保持される領域において、折り曲げられて重なっており、前記第1保持部材は、前記基台との間で、前記放熱部材を前記信号供給手段に押し付けて密着させながら、前記信号供給手段及び前記放熱部材を把持しており、前記第2保持部材は、前記基台との間で、前記放熱部材の重なった領域を把持していることが好ましい。これによると、第2保持部材は信号供給手段と放熱部材を把持することはできない。そこで、信号供給手段の代わりに放熱部材の重なりを増やして、放熱部材の放熱面積を大きくするとともに厚みを確保し、放熱部材の配線部材に対する平行度を保ちながら、第2保持部材で放熱部材を把持することができる。
【0014】
また、前記配線手段は、前記第1の位置から前記共通流路の上流側に引き出されるとともに、前記第2の位置から前記共通流路の下流側に引き出され、且つ、これら2つの引き出し部分が連結して、1つの環を形成する単一の第1配線部材であり、前記信号供給手段は、前記第1配線部材における環の外側を向く面に2つ設けられており、前記2つの信号供給手段の前記第1配線部材と反対側の面に共通に接触する放熱部材をさらに備えており、前記2つの信号供給手段は、前記第1配線部材の引き出された2つの端部近傍に接続され、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ方向に関する中心線に対して線対称な位置から前記共通流路の上流側に片寄って配置されており、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ方向に関する中心線に対して線対称な位置において前記放熱部材をそれぞれ保持する2つの第3保持部材と、前記第1配線部材の引き出された2つの端部に接続され、環の周方向と交差する方向に引き出された第2配線部材と、をさらに備えており、前記第3保持部材は、前記交差する方向から見て、前記2つの信号供給手段に挟まれており、前記第2配線部材は、前記第3保持部材を避けた位置にあってもよい。これによると、第2配線部材が第3保持部材と干渉するのを防止することができる。
【0015】
このとき、前記第2配線部材は、前記第3保持部材を避けて曲がっていることが好ましい。
【0016】
また、前記第2配線部材は、前記第3保持部材と重なる位置に開口が形成されていてもよい。これによると、第2配線部材をまっすぐ引き出すことができる。
【0017】
本発明の液体吐出装置は、液体供給口と、一端が前記液体供給口に連通する共通流路と、前記共通流路から分岐するとともに液体を吐出するノズルを有する複数の個別流路と、を含む流路ユニットと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を前記個別流路内の液体に対して付与する圧力付与手段と、前記圧力付与手段を駆動するための信号を供給する信号供給手段と、前記圧力付与手段に対して互いに異なる第1の位置及び第2の位置に接続されるとともに、これら第1の位置及び第2の位置からそれぞれ引き出されており、且つ、前記信号供給手段とも接続される配線手段と、前記信号供給手段に接触し、前記配線部材に沿って延在する放熱部材と、を備えており、前記第1の位置は、前記第2の位置よりも前記共通流路の上流側に位置しており、前記放熱部材の、前記信号供給手段との接続位置から前記第1の位置までの前記配線手段に沿った長さは、前記接続位置から前記第2の位置までの前記配線手段に沿った長さよりも長い。
【0018】
本発明の液体吐出装置によると、放熱部材は、接続位置から第2の位置までよりも接続位置から第1の位置までにおいて、配線手段に沿って長く延在している。したがって、信号供給手段で発生した熱は、共通流路の下流側に比べて上流側に多く伝わり、共通流路の下流側に比べて上流側が熱くなる。ここで、液体供給口から供給された液体は、共通流路の上流側において最も冷却効果が高く、下流側に向かうにつれて冷却効果が小さくなる。そのため、共通流路の上流側と下流側での、液体の冷却効果の違いに対して入熱量を異ならせることで、装置全体の温度ばらつきは小さくなる。これにより、全てのノズルから吐出される液体の吐出特性のばらつきを小さくすることができる。
【0019】
また、前記配線手段は、前記第1の位置から前記共通流路の上流側に引き出されるとともに、前記第2の位置から前記共通流路の下流側に引き出され、且つ、これら2つの引き出し部分が連結して、1つの環を形成する単一の配線部材であり、前記信号供給手段は、前記配線部材における環の外側に向く面に2つ設けられており、前記放熱部材は、前記2つの信号供給手段に共通に接触していることが好ましい。これによると、2つの信号供給手段の温度を同等にでき、2つの信号供給手段の温度ばらつきを小さくすることができる。
【0020】
さらに、前記液体供給口及び前記共通流路は、前記配線手段の延在方向と直交する方向に複数並んで配置されており、複数の前記液体供給口には、それぞれ異なる種類の液体が供給され、前記信号供給手段は、矩形状をしており、その長手方向が前記直交する方向に対して傾いて配置されていることが好ましい。これによると、液体の種類に応じて、各共通流路への信号供給手段で発生した熱の伝わる量を変えることができる。
【発明の効果】
【0021】
共通流路の上流側と下流側での装置全体の温度ばらつきを小さくことで、全てのノズルから吐出される液体の吐出特性のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るプリンタの概略平面図である。
【図2】第1実施形態に係るサブタンク及びインクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】サブタンク及びインクジェットヘッドの正面図である。
【図4】インクジェットヘッドの説明図であり、(a)はインクジェットヘッドの平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図5】ヒートシンクを取り外したときのインクジェットヘッドの平面図である。
【図6】第2実施形態に係るサブタンク及びインクジェットヘッドの斜視図である。
【図7】ドライバICとフックの位置が対応していないときのFPCの引き回しを説明する図であり、(a)はサブタンク及びインクジェットヘッドの正面図であり、(b)はヒートシンクを取り外したときのインクジェットヘッドの平面図である。
【図8】変形例1におけるヒートシンクを取り外したときのインクジェットヘッドの平面図である。
【図9】変更例2におけるサブタンク及びインクジェットヘッドの正面図である。
【図10】変形例3におけるヒートシンクを取り外したときのインクジェットヘッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、記録用紙に対してノズルからインクを吐出する、液体吐出装置の一種であるインクジェットヘッドに本発明を適用した一例である。まず、インクジェットヘッドを備えたプリンタの概略構成について説明する。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4、4本のチューブ5、4つのインクカートリッジ6などを有している。
【0024】
キャリッジ2は、走査方向(図1の左右方向)に往復移動する。サブタンク3はキャリッジ2に取り付けられており、その下面にインクジェットヘッド4が取り付けられている。つまり、キャリッジ2が走査方向に往復移動するのにともない、サブタンク3及びインクジェットヘッド4も走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド4は、サブタンク3から供給されたインクをその下面に形成された複数のノズル10から吐出する。
【0025】
チューブ5は、合成樹脂などの可撓性を有する材料からなり、一端がサブタンク3に接続されているとともに、他端がインクカートリッジ6に接続されている。4つのインクカートリッジ6には、例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクがそれぞれ充填されている。インクカートリッジ6内のインクは、チューブ5を介してサブタンク3に供給される。
【0026】
そして、プリンタ1は、図示しない搬送ローラなどにより、紙送り方向(図1の下方)に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4のノズル10からインクを吐出することにより、記録用紙Pに画像や文字などを記録する。
【0027】
次に、サブタンク3について説明する。図2及び図3に示すように、サブタンク3は、4つのチューブ接続口11と、4つのインク供給流路13などを有している。4つのチューブ接続口11は、サブタンク3の紙送り方向の一方側(図2の右側)に形成され、紙送り方向に沿って配列されている。チューブ接続口11には、インクカートリッジ6に接続されたチューブ5(図1参照)が接続され、インクカートリッジ6内のインクは、チューブ5を介してチューブ接続口11からサブタンク3内に導入される。
【0028】
4つのインク供給流路13は、走査方向に沿って配列されており、一端がチューブ接続口11に接続され、紙送り方向に延在し、途中で屈曲して鉛直方向に延在している。インク供給流路13の下端(チューブ接続口11とは接続されていない端部)は、インクジェットヘッド4の後述するフレーム21の開口21aに接続されている。
【0029】
ここで、インク供給流路13は、鉛直方向に延びている部分において、下方に向かってインクを供給するため、インク中の空気が上方に移動して上端部に溜まる。これにより、インク中の空気がインクから分離され、インクだけがインクジェットヘッド4に供給される。なお、インク供給流路13の上端部に溜まった空気は図示しない排気流路から外部に排出される。
【0030】
次に、インクジェットヘッド4について説明する。図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド4は、フレーム21、流路ユニット22、圧電アクチュエータ23(圧力付与手段)、COF24(配線手段:第1配線部材)、ドライバIC25(信号供給手段)、連結部材26、ヒートシンク29(放熱部材)及びFPC30(第2配線部材)を有している。
【0031】
フレーム21は、略矩形の板状をしており、サブタンク3の下方に配置されている。フレーム21には、4つのインク供給流路13の鉛直方向に延在した部分と対向する部分に4つの開口21aが走査方向に並んで形成されている。4つの開口21aには、4つのインク供給流路13の下端が接続されている。また、フレーム21には、インク供給流路13の紙送り方向に延在する部分と対向する部分に、略矩形の貫通孔21bが形成されている。
【0032】
流路ユニット22は、図2〜4に示すように、フレーム21とほぼ同じ大きさの略矩形のプレートを複数枚積層して構成されており、その上面がフレーム21の下面に接合されている。流路ユニット22は、その上面に開口する4つのインク供給口22aと、4つのインク供給口22aにそれぞれ連通する4つのマニホールド22b(共通流路)と、4つのマニホールド22bから分岐する複数の個別流路22dと、複数の個別流路22dにそれぞれ連通する複数のノズル10と、を有している。
【0033】
インク供給口22aは、走査方向に4つ並べて配置されており、フレーム21の開口21aと接続されている。マニホールド22bは、一端がインク供給口22aと連通しており、紙送り方向へ延在している。個別流路22dは、マニホールド22bから複数分岐しており、圧力室22cを介してノズル10に連通している。各マニホールド22bの側方(図4(a)の右側)には、紙送り方向に配列された複数のノズル10で構成されたノズル列24が対応して配置されている。
【0034】
サブタンク3から供給されたインクは、フレーム21の開口21a及びインク供給口22aを介してマニホールド22bに流れ込み、圧力室22cを含む個別流路22dを通過してノズル10に至る。なお、本実施形態においては、マニホールド22bを流れるインクの方向から、マニホールド22bのインク供給口22aと連通する一端側を紙送り方向に沿ったインク供給方向の上流側とし、他端側をインク供給方向の下流側として、以下説明する。例えば、圧電アクチュエータ23の上流側とは、平面視でマニホールド22bの上流側と重なる圧電アクチュエータ23の位置を指す。また、上流側の個別電極23cとは、圧電アクチュエータ23の上流側に位置する個別電極23cを指す。
【0035】
圧電アクチュエータ23は、図3及び図4(b)に示すように、流路ユニット22の上面における、フレーム21の貫通孔21bから露出した部分に配置されている。圧電アクチュエータ23は、流路ユニット22に形成された複数の圧力室22cを覆うように流路ユニット22の上面に配置された金属板からなる振動板23aと、この振動板23aの上面に、複数の圧力室22cと対向するように配置された圧電層23bと、圧電層23bの上面に、複数の圧力室22cとそれぞれ対向するように配置された複数の個別電極23cと、を有している。
【0036】
圧電アクチュエータ23は、振動板23aをグランド電位として、ある個別電極23cに対して、ドライバIC25から所定の駆動電位が付与されたときに、振動板23aの圧力室22cを覆う部分が圧力室22c側に凸となるように変形することで、圧力室22c内のインクに圧力を付与する。そして、インクジェットヘッド4は、圧電アクチュエータ23により圧力室22c内のインクに圧力が付与されることにより、この圧力室22cに連通するノズル10からインクを吐出する。
【0037】
圧電アクチュエータ23の上面には、1枚のCOF24が配置されている。COF24には、複数のランド及び複数のランドからそれぞれ引き回された複数の配線(ともに図示せず)が形成されている。そして、COF24の複数のランドは圧電アクチュエータ23の複数の個別電極23cとそれぞれ対応する位置に形成されており、COF24が圧電アクチュエータ23の上面に配置されることで、ランドと個別電極23cとは電気的に接続される。
【0038】
また、COF24は、圧電アクチュエータ23の紙送り方向両端部、すなわち、上流側端部及び下流側端部からそれぞれ引き出されて、流路ユニット22に対して同じ方向である上方にそれぞれ折り曲げられて、1つの環を形成している。そして、COF24のそれぞれ折り返されて流路ユニット22の表面と平行な2つの部分の上面(環の外側に向く面)には、圧電アクチュエータ23を駆動するための信号を供給するドライバIC25a、25bがそれぞれ実装されている。つまり、ドライバIC25a、25bは、COF24の引き出されたそれぞれの端部近傍に実装されている。ドライバIC25は、走査方向に長尺な矩形状をしており、COF24を介して圧電アクチュエータ23の個別電極23cに駆動信号を供給する。
【0039】
ここで、COF24の圧電アクチュエータ23から引き出されている方向が、圧電アクチュエータ23の上流側及び下流側である理由について説明する。COF24に形成されている配線の数は、高速印刷及び高解像度印刷の要求に応え、ノズル10の数(個別電極23cの数)が増大するのにともない増大する。さらに、高速印刷及び高解像度印刷の要求に応え、ノズル10の数は増大するだけでなく、ノズル配列方向に沿って隣接する2つのノズル10の間隔も狭くなる。すると、配列方向に沿って隣接する2つのノズル10間を通して多数の配線を引き回すのは困難となってしまうことから、ノズル10間に比べて隙間の大きな隣接する2列のノズル列24間を通して多数の配線を引き回す。そうすると、これらの配線は紙送り方向に沿って引き回されているため、そのままドライバIC25まで引き回そうとすると、COF24は圧電アクチュエータ23の上流側及び下流側からそれぞれ引き出すのが望ましい。
【0040】
また、本実施形態のように、ドライバIC25が2つあると、ドライバIC25ごとで供給電圧や電圧印加タイミングなどの特性が若干異なることがある。すると、例えば、あるノズル列24に属する複数のノズル10にそれぞれ対応する複数の個別電極23cに、1つのドライバIC25ではなく、2つのドライバIC25のいずれかを割り振って信号を供給していると、割り振られたドライバIC25ごとでノズル10からのインクの吐出特性が異なってしまう。そこで、ノズル列24ごとに信号を供給するドライバIC25を統一する。つまり、4列のノズル列24のうち、2列のノズル列24に対応する複数の個別電極23cには一方のドライバIC25aから信号を供給し、残りの2列のノズル列24に対応する複数の個別電極23cには他方のドライバIC25bから信号を供給する。すると、ノズル列24に対応する複数の配線ごとに引き回す方向が同じとなるため、これらの配線はノズル配列方向に直交する方向に向かって引き回すよりも、ノズル配列方向(紙送り方向)に沿って引き回す方が容易である。そうすると、これらの配線はそのままドライバIC25まで引き回そうとすると、COF24は圧電アクチュエータ23の上流側及び下流側からそれぞれ引き出すのが望ましい。
【0041】
このようにして、COF24は、圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されているとともに、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されている。このとき、圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されている部分のCOF24の長さは、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されている部分のCOF24の長さよりも短くなっている。なお、本実施形態においては、圧電アクチュエータ23の上流側から離れ出すCOF24の位置を第1の位置とし、圧電アクチュエータ23の下流側から離れ出すCOF24の位置を第2の位置とする。
【0042】
つまり、圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されたCOF24の部分において、ドライバIC25aとの接続位置から第1の位置までの長さは、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されたCOF24の部分において、ドライバIC25bとの接続位置から第2の位置までの長さよりも短くなっている。これにより、2つのドライバIC25は、第1の位置と第2の位置を結ぶ方向の中心線(後述するヒートシンク29の紙送り方向の中心線)に対して対称な位置からマニホールド22bの上流側に片寄って配置されている。
【0043】
そして、COF24の圧電アクチュエータ23と接続された部分の上面には、連結部材26が配置されている。連結部材26は、ヒートシンク29をドライバIC25に押し付けて密着させながら、ドライバIC25とヒートシンク29をそれぞれ保持しつつ、インクジェットヘッド4とヒートシンク29とを連結するためのものである。また、連結部材26は、COF24によって形成された環内に配置された基台31及び基台31の縁部から上方に突出した6つのフック32(第1保持部材及び第2保持部材)を有している。基台31は、圧電アクチュエータ23とほぼ同じ外形の略矩形の平面形状を有しており、COF24の圧電アクチュエータ23と接続された部分の上面に接合されている。これにより、基台31は、インクジェットヘッド4に対して固定される。
【0044】
6つのフック32は、図3及び図5に示すように、基台31の走査方向両側にそれぞれ3つずつ紙送り方向に関してそれぞれ重なる位置に配置されており、2つのドライバIC25とそれぞれ走査方向に沿って重なる位置に4箇所と、基台31の下流側端部近傍に2箇所の計6箇所に配置されている。これによると、マニホールド22aの上流側に位置するヒートシンク29は4箇所のフック32で保持され、下流側に位置するヒートシンク29は2箇所のフック32で保持されることとなり、ヒートシンク29のCOF24に対する平行度を保つことができる。なお、本実施形態においては、ドライバIC25に対応した4箇所のフック32が本発明における第1保持部材に相当し、基台31の下流側端部近傍の2箇所のフック32が本発明における第2保持部材に相当する。また、フック32は、立設部32a及び係合ツメ32bを有している。立設部32aは、基台31から立設しており、ヒートシンク29よりも上方まで延びている。係合ツメ32bは、立設部32aの上端部近傍の部分における内側の側面から突出して形成されている。
【0045】
さらに、基台31の上面のCOF24を介してドライバIC25と対向する部分には、スポンジ28が配置されている。スポンジ28は、COF24を介してドライバIC25を下方から支持している。また、2つのドライバIC25の上方(インクジェットヘッド4と反対側)には、2つのドライバIC25とそれぞれ密着するようにヒートシンク29が配置されている。ヒートシンク29は、ドライバIC25とほぼ同じ厚みの金属など熱導電性の高い材料からなる板状部材であり、基台31の上流側端部から下流側端部まで延在し、基台31の下流側端部よりもさらに下流側において下方に折り曲げられて、折り返された部分は下流側のドライバIC25bよりも下流側の位置まで延在している。
【0046】
このとき、ヒートシンク29は、係合ツメ32bにより下方に押し付けられ、これにともなって、ヒートシンク29の下方に配置されたドライバIC25及びスポンジ28が下方に押し付けられることになる。一方、下方に押し付けられたスポンジ28には、基台31に支持されることによる上向きの反発力が生じる。スポンジ28は、この反発力によりドライバIC25を上方に(ヒートシンク29に向かって)付勢する。
【0047】
これにより、ドライバIC25とヒートシンク29とは、係合ツメ32b及びスポンジ28により互いに近づく方向に付勢されることとなり、フック32により保持されることになるとともに、ドライバIC25とヒートシンク29との密着性が高くなる。したがって、ドライバIC25において発生した熱が、効率よくヒートシンク29に逃がされる。また、2箇所のフック32は、ドライバIC25とヒートシンク29を把持することができないが、ドライバIC25の代わりにヒートシンク29の重なりを増やして、ヒートシンク29の放熱面積を大きくするとともに厚みを確保し、ヒートシンク29のCOF25に対する平行度を保ちながら、2箇所のフック32でヒートシンク29を把持することができる。
【0048】
ここで、仮に、ヒートシンク29が折り曲げられずに紙送り方向に沿って延在しているだけであると、基台31の最も下流側近傍に配置された2つのフック32は、ヒートシンク29を係合ツメ32bにより下方に押し付けたとしても、下方にドライバIC25がないため、ヒートシンク29を保持(把持)できない。そこで、ヒートシンク29を折り曲げて、上下方向に重なった領域を形成することで、ドライバIC25の代わりに厚みを確保できる。そして、このヒートシンク29の重なった領域を当該2つのフック32に対応する位置に配置することで、2つのフック32によりヒートシンク29の上下方向に重なった領域を保持することができる。このとき、ヒートシンク29の表面積は、折り曲げられて延在している部分、すなわち上下方向に重なっている部分の表面積だけ大きくなるため、放熱効率が向上する。
【0049】
さらに、仮に、基台31の下流側端部近傍に配置された2つのフック32がなく、ドライバIC25を保持するための4つのフック32だけでヒートシンク29とドライバIC25を保持すると、下流側においてヒートシンク29のCOF24に対する平行度を保つことが困難となり、ヒートシンク29の上流側と下流側で放熱量がばらついてしまう。そこで、基台31の下流側端部近傍に2つのフック32を設けることで、ヒートシンク29を片寄りなく保持することができ、ヒートシンク29のCOF24に対する平行度を保つことができ、ヒートシンク29の上流側と下流側でばらつくことなく均一に放熱することができる。
【0050】
図3及び図5に示すように、COF24の折り返された2つの端部は、走査方向に延在したFPC30(第2配線部材)と接続されている。FPC30は、ドライバIC25に電力や制御信号を供給する図示しない制御基板と電気的に接続されている。
【0051】
ここで、ドライバIC25が発生した熱は、COF24の上流側の引き出された部分と下流側の引き出された部分を介して圧電アクチュエータ23及び流路ユニット22に伝わる。このとき、COF24の上流側の引き出された部分におけるドライバIC25aとの接続位置から第1の位置までの長さは、COF24の下流側の引き出された部分におけるドライバIC25bとの接続位置から第2の位置までの長さよりも短くなっている。そのため、ドライバIC25で発生した熱は、圧電アクチュエータ23及び流路ユニット22の下流側に比べて上流側に多く伝わり、圧電アクチュエータ23及び流路ユニット22は下流側に比べて上流側が熱くなる。
【0052】
ここで、インク供給口22aから供給されたインクは、上流側において最も冷却効果が高く、下流側に向かうにつれて冷却効果が小さくなる。そのため、インクの冷却効果の違いに対して入熱量を異ならせることで、圧電アクチュエータ23や流路ユニット22のマニホールド22bの上流側と下流側での温度ばらつきは小さくなる。具体的には、圧電アクチュエータ23の温度ばらつきが小さくなることで、振動板23aの全ての圧力室22cを覆う部分の変形量のばらつきが小さくなり、全ての圧力室22cに対して同等な圧力エネルギーを付与することができる。また、流路ユニット22のマニホールド22bや個別流路22d内のインクの温度や粘度のばらつきを小さくすることができる。したがって、全てのノズル10から吐出されるインクの吐出特性のばらつきを小さくすることができる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態とは、COF24の上流側及び下流側へそれぞれ引き出されている長さ、ヒートシンク29の配置位置、及び、基台31に形成されたフック32の位置が異なっているだけで、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。なお、第1実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
【0054】
図6に示すように、圧電アクチュエータ23の上面には、COF124が配置されている。圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されている部分のCOF124の長さは、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されている部分のCOF124の長さよりも長くなっている。そして、圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されたCOF124の部分におけるドライバIC25aとの接続位置から第1の位置までの長さは、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されたCOF124の部分におけるドライバIC25bとの接続位置から第2の位置までの長さよりも短くなっている。
【0055】
また、2つのドライバIC25の上方には、2つのドライバIC25とそれぞれ密着するようにヒートシンク129が配置されている。ヒートシンク129は、基台31の下流側端部から上流側端部まで延在し、さらに基台31の上流側部においてCOF124に沿って下方に屈曲している。つまり、ヒートシンク129の、ドライバIC25aとの接続位置から第1の位置までのCOF124に沿った長さは、ドライバIC25bとの接続位置から第2の位置までのCOF124に沿った長さよりも長くなっている。フック32は、ドライバIC25の位置に対応して配置されている。
【0056】
ここで、仮に、ヒートシンク129が設けられていないとすると、ドライバIC25で発生した熱は、上流側に比べて下流側に多く伝わり、上流側に比べて下流側が熱くなる。さらに、インク供給口22aから供給されたインクによって、マニホールド22bの上流側は下流側に比べて冷却されるため、圧電アクチュエータ23や流路ユニット22のマニホールド22bは、上流側に比べて下流側が熱く、温度ばらつきが生じてしまう。
【0057】
そこで、ヒートシンク129の、ドライバIC25aとの接続位置から第1の位置までのCOF124に沿った長さは、ドライバIC25bとの接続位置から第2の位置までのCOF124に沿った長さよりも長くなっていることで、2つのドライバIC25a、25bで発生してヒートシンク129に伝わった熱は、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されたCOF124の部分よりも上流側から引き出されたCOF124の部分に多く伝わり、圧電アクチュエータ23及び流路ユニット22は下流側に比べて上流側が熱くなる。
【0058】
ここで、インク供給口22aから供給されたインクは、上流側において最も冷却効果が高く、下流側に向かうにつれて冷却効果が小さくなる。そのため、圧電アクチュエータ23や流路ユニット22のマニホールド22bの上流側と下流側での温度ばらつきは小さくなる。したがって、第1実施形態と異なり、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されたCOF124の部分に上流側から引き出されたCOF124の部分よりも多くの熱が伝わるようなドライバIC25の配置であっても、ヒートシンク129の、ドライバIC25aとの接続位置から第1の位置までのCOF124に沿った長さを、ドライバIC25bとの接続位置から第2の位置までのCOF124に沿った長さよりも長くすることで、全てのノズル10から吐出されるインクの吐出特性のばらつきを小さくすることができる。
【0059】
なお、このヒートシンク129の配置は、圧電アクチュエータ23の下流側から引き出されたCOF124の部分に上流側から引き出されたCOF124の部分よりも多くの熱が伝わるようにドライバIC25が配置されている場合に限らず、第1実施形態にように、圧電アクチュエータ23の上流側から引き出されたCOF124の部分に下流側から引き出されたCOF124の部分よりも多くの熱が伝わるようにドライバIC25が配置されている場合についても適用することができる。つまり、ドライバIC25の位置は第2実施形態の位置に限られず、任意の位置であってもよく、このヒートシンク129の配置を適用することで、本発明の効果を奏することができる。
【0060】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0061】
本実施形態においては、フック32はドライバIC25の位置に対応して配置されていたが、ドライバIC25の位置によらず任意の位置に配置されてもよい。例えば、図7(a)、(b)に示すように、フック32(第3保持部材)は、基台31の走査方向両側において、紙送り方向の中心線に対して線対称な位置に配置されてもよい。そして、フック32は、走査方向から見て、2つのドライバIC25に挟まれている。このとき、COF24の折り返された2つの端部にFPC130を接続して、このFPC130を走査方向に沿って引き出そうとすると、フック32に接触してしまう。そこで、FPC130は、フック32を避けるように折れ曲がって延在している。また、図8に示すように、FPC230のフック32と重なる位置に開口230aを設けて、この開口230aにフック32を挿通して、FPC230は走査方向に沿って引き出してもよい。これによると、基台31の任意の位置にフック32を配置しても、FPCがフックと干渉することがない。
【0062】
また、本実施形態においては、COF24にドライバIC25は2つ設けられていたが、ドライバIC25は1つでもよい。例えば、図9に示すように、COF224の2つの端部が圧電アクチュエータ23の紙送り方向に関する中央近傍に配置され、COF224は、圧電アクチュエータ23の上面において環状を形成する。そして、ドライバIC25は、COF224のドライバIC25との接続位置から圧電アクチュエータ23の上流側からの引き出し位置(第1の位置)までの長さが、COF224のドライバIC25との接続位置から圧電アクチュエータ23の下流側からの引き出し位置(第2の位置)までの長さよりも短くなるように、COF224に配置する。つまり、ドライバIC25は、圧電アクチュエータ23の紙送り方向に関する中心線よりも上流側に位置する。フック32は、基台31の上流側端部、下流側端部、及びドライバIC25に対応する位置に配置する。基台31の上流側端部及び下流側端部に位置するフック32は、ヒートシンク229の上下方向に重なった部分を保持している。これにより、第1実施形態と同様に、圧電アクチュエータ23や流路ユニット22のマニホールド22bの上流側と下流側での温度ばらつきは小さくなる。したがって、全てのノズル10から吐出されるインクの吐出特性のばらつきを小さくすることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、ドライバIC25は、長手方向が4つのインク供給口22aの配列方向と平行に走査方向に沿うように配置されていたが、例えば、図10に示すように、ドライバIC25の長手方向が紙送り方向に傾いて配置されてもよい。これにより、ドライバIC25から各インク供給口22aに対応するマニホールド22bまでの長さがそれぞれ異なるため、ドライバIC25から発生した熱の伝わり方が各マニホールド22bで異なることとなる。図10の最も上方に位置する、ドライバIC25までの長さが最も長いインク供給口22aには、ブラックのインクが供給され、残りの3つのインク供給口22aには、下方にいくにつれて順にイエロー、シアン、マゼンダのインクが供給される。このとき、ブラックインクは、他の3色のインクに比べて目立ちやすい。そのため、ブラックインクを吐出する複数のノズル10に対応するマニホールド22bへ伝わる熱量を小さくして、ブラックインクを吐出する複数のノズル10に対する吐出特性への熱の影響を小さくしたい。そこで、ドライバIC25を走査方向から紙送り方向に傾けることで、圧電アクチュエータ23やマニホールド22bの上流側と下流側での温度ばらつきを小さくした上で、ドライバIC25から各マニホールド22bまでの長さを異ならせて、熱の伝わる量をインクの種類に応じてマニホールド22bごとで変えることができる。
【0064】
さらに、本実施形態においては、COFは上方に折り曲げられた後、互いにその端部が近づく方向に折り返されて環状を形成していたが、環を形成する必要はなく、例えば、COFは上方に折り曲げられた後、互いに遠ざかる方向に折り返されていてもよい。このとき、ドライバICは、COFの2つの端部近傍にそれぞれ設けられる。そして、ヒートシンクは、2つのドライバICに共通に接触するように設けられてもよいし、2つのドライバICに別個に接触するように2つ設けられてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、ドライバIC25の下方にスポンジ28が配置されていたが、スポンジ28の代わりに他の弾性部材が配置されていてもよい。また、ドライバIC25とヒートシンク29とが十分に密着するのであれば、ドライバIC25の下方にスポンジ28などの弾性部材は配置されていなくてもよい。
【0066】
以上、本実施形態として、圧力室内のインクに圧力を付与してノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の適用対象は、このようなインクジェットヘッドに限られるものではなく、様々な分野で使用される液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
10 ノズル
22 流路ユニット
22a インク供給口
22b マニホールド
22d 個別流路
23 圧電アクチュエータ
24 COF
25 ドライバIC
29 ヒートシンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給口と、一端が前記液体供給口に連通する共通流路と、前記共通流路から分岐するとともに液体を吐出するノズルを有する複数の個別流路と、を含む流路ユニットと、
前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を前記個別流路内の液体に対して付与する圧力付与手段と、
前記圧力付与手段を駆動するための信号を供給する信号供給手段と、
前記圧力付与手段に対して互いに異なる第1の位置及び第2の位置に接続されるとともに、これら第1の位置及び第2の位置からそれぞれ引き出されており、且つ、前記信号供給手段とも接続される配線手段と、を備えており、
前記第1の位置は、前記第2の位置よりも前記共通流路の上流側に位置しており、
前記配線手段の、前記信号供給手段との接続位置から前記第1の位置までの長さは、前記接続位置から前記第2の位置までの長さよりも短いことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記配線手段は、前記第1の位置から前記共通流路の上流側に引き出されるとともに、前記第2の位置から前記共通流路の下流側に引き出され、且つ、これらの2つの引き出し部分が連結して、1つの環を形成する単一の第1配線部材であり、
前記信号供給手段は、前記第1配線部材における環の外側を向く面に2つ設けられており、
2つの前記信号供給手段の前記第1配線部材と反対側の面に共通に接触する放熱部材をさらに備えており、
前記2つの信号供給手段のうち、前記共通流路の下流側に位置する前記信号供給手段は、前記共通流路の上流側に片寄って配置されており、
前記2つの信号供給手段に対応する位置において、前記放熱部材を前記信号供給手段に押し付けて密着させながら、前記信号供給手段及び前記放熱部材をそれぞれ保持する第1保持部材と、
前記放熱部材の前記共通流路の下流側端部を保持する第2保持部材と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記環内に配置された基台をさらに備えており、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、前記基台から突出しており、
前記放熱部材は、前記第2保持部材に保持される領域において、折り曲げられて重なっており、
前記第1保持部材は、前記基台との間で、前記放熱部材を前記信号供給手段に押し付けて密着させながら、前記信号供給手段及び前記放熱部材を把持しており、
前記第2保持部材は、前記基台との間で、前記放熱部材の重なった領域を把持していることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記配線手段は、前記第1の位置から前記共通流路の上流側に引き出されるとともに、前記第2の位置から前記共通流路の下流側に引き出され、且つ、これら2つの引き出し部分が連結して、1つの環を形成する単一の第1配線部材であり、
前記信号供給手段は、前記第1配線部材における環の外側を向く面に2つ設けられており、
前記2つの信号供給手段の前記第1配線部材と反対側の面に共通に接触する放熱部材をさらに備えており、
前記2つの信号供給手段は、前記第1配線部材の引き出された2つの端部近傍に接続され、前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ方向に関する中心線に対して線対称な位置から前記共通流路の上流側に片寄って配置されており、
前記第1の位置と前記第2の位置を結ぶ方向に関する中心線に対して線対称な位置において前記放熱部材をそれぞれ保持する2つの第3保持部材と、
前記第1配線部材の引き出された2つの端部に接続され、環の周方向と交差する方向に引き出された第2配線部材と、をさらに備えており、
前記第3保持部材は、前記交差する方向から見て、前記2つの信号供給手段に挟まれており、
前記第2配線部材は、前記第3保持部材を避けた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2配線部材は、前記第3保持部材を避けて曲がっていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第2配線部材は、前記第3保持部材と重なる位置に開口が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体供給口と、一端が前記液体供給口に連通する共通流路と、前記共通流路から分岐するとともに液体を吐出するノズルを有する複数の個別流路と、を含む流路ユニットと、
前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を前記個別流路内の液体に対して付与する圧力付与手段と、
前記圧力付与手段を駆動するための信号を供給する信号供給手段と、
前記圧力付与手段に対して互いに異なる第1の位置及び第2の位置に接続されるとともに、これら第1の位置及び第2の位置からそれぞれ引き出されており、且つ、前記信号供給手段とも接続される配線手段と、
前記信号供給手段に接触し、前記配線部材に沿って延在する放熱部材と、を備えており、
前記第1の位置は、前記第2の位置よりも前記共通流路の上流側に位置しており、
前記放熱部材の、前記信号供給手段との接続位置から前記第1の位置までの前記配線手段に沿った長さは、前記接続位置から前記第2の位置までの前記配線手段に沿った長さよりも長いことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
前記配線手段は、前記第1の位置から前記共通流路の上流側に引き出されるとともに、前記第2の位置から前記共通流路の下流側に引き出され、且つ、これら2つの引き出し部分が連結して、1つの環を形成する単一の配線部材であり、
前記信号供給手段は、前記配線部材における環の外側に向く面に2つ設けられており、
前記放熱部材は、前記2つの信号供給手段に共通に接触していることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体供給口及び前記共通流路は、前記配線手段の延在方向と直交する方向に複数並んで配置されており、
複数の前記液体供給口には、それぞれ異なる種類の液体が供給され、
前記信号供給手段は、矩形状をしており、その長手方向が前記直交する方向に対して傾いて配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73261(P2011−73261A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226641(P2009−226641)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】