説明

液体吐出装置

【課題】 液滴吐出ヘッドが搭載されたキャリッジの移動時の振動を抑制する。
【解決手段】インクジェットヘッド5及びサブタンクユニット4が搭載されたキャリッジは、左右方向に延びた駆動ベルト11により、ベルト取り付け部3aが引っ張られることで、左右方向に移動する。サブタンクユニット4には、インクカートリッジから供給されたインクが貯留される4つのインク貯留室34、44、54、64が設けられている。4つのインク貯留室34、44、54、64のうち、2つのインク貯留室34、44は、インクジェットヘッド3とともに、ベルト取り付け部3aよりも後方に配置されている。残り2つのインク貯留室54、64は、ベルト取り付け部3aよりも前方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、特許文献1には、ガイドレール(ガイド部材)に沿って走査方向に移動するキャリッジにインクジェットヘッドが搭載されており、キャリッジとともに走査方向に移動するインクジェットヘッドからインクを吐出することによって被記録媒体に印刷を行う、いわゆるシリアル式のインクジェットプリンタが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、キャリッジの外部に配置された4つインクカートリッジから供給された4色のインクが、チューブ、及び、キャリッジに搭載されたバッファタンクを経て、キャリッジに搭載されたインクジェットヘッドに供給される。インクジェットヘッドは、キャリッジの走査方向と交差する直交方向における一端部に配置されている。バッファタンクの、インクジェットヘッドのほぼ真上に位置する部分には、走査方向及び直交方向と直交する上下方向に沿って一列に配列され、上記4色のインクをそれぞれ貯留する4つの貯留部(液体貯留タンク)が設けられている。また、4つの貯留部の上側又は下側の壁はフィルムによって形成されており、バッファタンクにおいては、フィルムが変形することによって、内部のインクの圧力変動を抑制することも可能である。
【0004】
また、特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、キャリッジの前端部に、走査方向に延びた駆動ベルトが取り付けられており、キャリッジは、駆動ベルトに引っ張られることによって走査方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−155417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、キャリッジは、駆動ベルトが取り付けられた一端部が駆動ベルトに引っ張られることによって走査方向に移動する。一方、キャリッジには、駆動ベルトが取り付けられる一端部と直交方向において反対側の他端部に、重いインクジェットヘッド、及び、インクが貯留されることで重くなる貯留部が配置されているため、キャリッジの重心は、駆動ベルトに取り付けられている一端部から離れた位置に位置する。そのため、キャリッジを走査方向に移動させるときに駆動ベルトがキャリッジを引っ張る力によってキャリッジに付与されるモーメントが大きくなる。
【0007】
このとき、特許文献1に記載されているようなインクジェットプリンタにおいては、一般に、キャリッジがスムーズに移動できるように、キャリッジとガイドレールとの間に多少のガタがあるので、キャリッジに付与されるモーメントが大きくなると、キャリッジが移動時に揺動し、その結果、インクの着弾位置がずれて印刷品質が低下する虞がある。
【0008】
また、近年、特許文献1などに記載されているようなインクジェットプリンタにおいては、印刷の高速化や印刷品質の向上などの目的から、ノズルの数が多くなる傾向にある。ノズルの数が多くなると、その分、インクジェットヘッドが大型になり、これに対応して、インクジェットヘッドに十分なインクを供給することができるよう、貯留部も大型になる。したがって、キャリッジの重心は、駆動ベルトに取り付けられている一端部からさらに離れた位置に位置することとなり、上述したようなキャリッジの揺動はさらに大きくなる。
【0009】
本発明の目的は、キャリッジの移動時の揺動を抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドへ供給する液体を貯留する液体貯留タンクと、前記液体吐出ヘッドにより液体が吐出される被吐出媒体が搬送される搬送面に沿う第1方向に延びたガイド部材と、前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留タンクとを搭載し、前記ガイド部材に、前記第1方向に移動可能に支持されたキャリッジと、前記キャリッジが連結され、前記キャリッジを前記第1方向に移動させる移動機構と、を備え、前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留タンクとが、前記第1方向に交差するとともに前記搬送面に沿う第2方向に関して、前記キャリッジの前記移動機構に対する連結部を挟むように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によると、液体吐出ヘッドと液体貯留タンクとが、第2方向に関して、キャリッジの移動機構に対する連結部を挟むように配置されているため、キャリッジの重心が、第2方向に関して、キャリッジの連結部に近い位置に位置する。したがって、移動機構がキャリッジを引っ張る力によってキャリッジに付与されるモーメントが小さくなり、キャリッジの移動時の揺動を抑制することができる。
【0012】
第2の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記液体は複数種類の液体を含み、前記液体吐出ヘッドは、前記複数種類の液体を個別に吐出し、前記液体貯留タンクは前記複数種類の液体がそれぞれ貯留される複数の液体貯留タンクとして形成されており、前記複数の液体貯留タンクのうち一部の前記液体貯留タンクは、前記第2方向に関して、前記連結部よりも前記液体吐出ヘッド側に配置されており、前記複数の液体貯留タンクのうち残りの液体貯留タンクと、前記液体吐出ヘッドとが、前記第2方向に関して、前記連結部を挟むように配置されていることを特徴とする。
【0013】
液体貯留タンクを複数備えている場合、全ての液体貯留タンクを、第2方向に関して、連結部よりも液体吐出ヘッドと反対側に配置すると、全ての液体貯留タンクをまとめて配置するための比較的大きなスペースが必要となり、液体吐出装置の大型化につながる。
【0014】
しかしながら、本発明によると、一部の液体貯留タンクを、第2方向に関して、連結部よりも液体吐出ヘッド側に配置することにより、液体吐出ヘッド側の領域を有効利用して、複数の液体貯留タンクを効率よく配置することができ、その結果、液体吐出装置が大型化してしまうのを抑制することができる。
【0015】
第3の発明に係る液体吐出装置は、第2の発明に係る液体吐出装置において、前記複数種類の液体は、顔料インクと染料インクとを含み、前記複数の液体貯留タンクのうち、少なくとも前記顔料インクが貯留されている前記液体貯留タンクが、前記第2方向に関して、前記連結部よりも前記液体吐出ヘッド側に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、顔料インクが貯留された液体貯留タンクが、液体吐出ヘッドに近い位置に配置されるので、粘度の高い顔料インクが、液体貯留タンクから液体吐出ヘッドに供給されるまでの間に増粘してしまうのを抑制することができる。
【0017】
第4の発明に係る液体吐出装置は、第2または第3の発明に係る液体吐出装置において、前記複数種類の液体は、4種類の液体を含み、前記液体貯留タンクは、前記4種類の液体がそれぞれ貯留される4つの前記液体貯留タンクとして形成されており、前記4つの液体貯留タンクは、前記第2方向に関して、前記連結部の両側にまたがって延びる板状部材であって、前記連結部に対して前記液体吐出ヘッド側の部分、及び、前記液体吐出ヘッドと反対側の部分に、それぞれ、上下方向に互いに仕切られて形成されているとともに、前記板状部材の上面及び下面にそれぞれ開口する2つの空間が形成されたタンク本体と、前記タンク本体の上面及び下面空間の開口を塞ぐように前記タンク本体の上面及び下面にそれぞれ溶着されたフィルムとによって形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によると、フィルムが変形することにより、液体貯留タンク内の液体に圧力変動が生じるのを抑制することができる。また、タンク本体にフィルムを溶着する際に、タンク本体の別の部分が邪魔にならず、タンク本体に容易にフィルムを溶着することができる。
【0019】
第5の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記液体貯留タンクと、前記液体供給源とを接続する液体供給用チューブをさらに備え、前記キャリッジには、前記第2方向に関して、前記液体貯留タンクと前記液体吐出ヘッドとの間に、前記液体供給用チューブとの接続を行うためのチューブジョイントがさらに設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明によると、キャリッジは、第1方向に移動したときに、チューブジョイントが設けられた位置において、チューブにより移動方向と反対方向に引っ張られるが、チューブジョイントが、液体吐出ヘッドと液体貯留タンクとの間の、第2方向に関してベルト取り付け部に近い位置にあるため、チューブがキャリッジを引っ張る力によってキャリッジに付与されるモーメントが小さくなり、キャリッジの移動時の揺動を抑制することができる。
【0021】
また、チューブジョイントが第2方向に関してベルト取り付け部に近い位置に配置されているため、キャリッジにチューブジョイントを設けることによる、キャリッジの重心の第2方向へのずれを小さくすることができる。
【0022】
第6の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第5のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記キャリッジの外部に配置され、前記液体貯留タンクに前記液体を供給する液体供給源をさらに備え、前記液体貯留タンクは、前記液体供給源から供給された液体を前記液体吐出ヘッドへ供給する前に一時的に貯留するサブタンクであることを特徴とする。
【0023】
第7の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記液体貯留タンクは、前記キャリッジに着脱可能に搭載される液体カートリッジであることを特徴とする。
【0024】
第8の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第7のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記移動機構は、前記第1方向に延びているとともに、前記キャリッジが連結され、前記キャリッジを前記第1方向に移動させる駆動ベルトを含み、前記液体貯留タンクと前記液体吐出ヘッドとが、前記第2方向に関して、前記連結部を挟むように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、キャリッジの重心が、第2方向に関して連結部に近い位置にくることとなるため、移動機構がキャリッジを引っ張る力によってキャリッジに付与されるモーメントが小さくなり、キャリッジの移動時の揺動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のサブタンクユニット及びインクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】ブラックインクが流れる経路を示す、上方から見たサブタンクユニットの平面図であり、(a)が上面のインク流路、(b)が下面のインク流路の位置を示している。
【図4】イエローインクが流れる経路を示す、上方から見たサブタンクユニットの平面図であり、(a)が上面のインク流路、(b)が下面のインク流路の位置を示している。
【図5】シアンインクが流れる経路を示す、上方から見たサブタンクユニットの平面図であり、(a)が上面のインク流路、(b)が下面のインク流路の位置を示している。
【図6】マゼンタインクが流れる経路を示す、上方から見たサブタンクユニットの平面図であり、(a)が上面のインク流路、(b)が下面のインク流路の位置を示している。
【図7】本発明をオンキャリッジのプリンタに適用した実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下では、図1、図2などに示すように左右方向、前後方向及び上下方向を規定して説明を行う。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1は、2本のガイドレール2A、2B、キャリッジ3、サブタンクユニット4、インクジェットヘッド5、用紙搬送ローラ6、キャップユニット7、切り替え装置8、吸引ポンプ9、廃液タンク10などを備えている。
【0029】
2本のガイドレール2A、2B(ガイド部材)は、左右方向(第1方向)に延びている。キャリッジ3は、ガイドレール2A、2Bに、左右方向に移動自在に支持されている。また、キャリッジ3には、前後方向(第2方向)に関する略中央部に、ベルト取り付け部3a(連結部)が設けられており、ベルト取り付け部3aには、駆動ベルト11が取り付けられている。なお、インクジェットヘッド5がキャリッジ3の下部に搭載されている場合、ベルト取り付け部3aは、インクジェットヘッド5に近づけて、即ち、キャリッジ3の上下方向中央部よりも下方に設けるのが望ましい。
【0030】
駆動ベルト11は、ガイドレール2Bの左右方向に関する両端部にそれぞれ配置された2つのプーリ12に巻き掛けられた無端状のベルトであり、2つのプーリ12に巻き掛けられることによって左右方向に延びている。そして、図示しないモータなどによりプーリ12を両方向に回転させて駆動ベルト11を回転させると、キャリッジ3は、ベルト取り付け部3aにおいて駆動ベルト11に引っ張られて、左右方向に往復移動する。駆動ベルト11、プーリ12、及びプーリ12を回転駆動させるモータは、本発明の移動機構の一例である。
【0031】
サブタンクユニット4は、キャリッジ3に搭載されている。サブタンクユニット4の上面には、チューブジョイント14が設けられており、キャリッジ3の外部に設けられた4つのインクカートリッジ15(液体供給源)に接続された4本のチューブ16が、チューブジョイント14に接続されることによって、サブタンクユニット4とインクカートリッジ15とが接続されている。また、サブタンクユニット4の上面には、インクジェットヘッド5を制御するための、コンデンサ等の電子部品110も設けられている。なお、電子部品110は、キャリッジ3のベルト取り付け部3aよりも後方(インクジェットヘッド5に近い側)に設けられている。
【0032】
4つのインクカートリッジ15には、左側に配置されているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが、それぞれ貯留されており、インクカートリッジ15内に貯留されたこれら4色のインクは、チューブ16を介してサブタンクユニット4に供給される。ここで、これら4色のインクのうち、ブラックインクは顔料インクであり、3色(イエロー、シアン、マゼンタ)のカラーインクは染料インクである。
【0033】
また、サブタンクユニット4には、インクカートリッジ15から供給されたインクに混入した気泡を排出するための後述する排気バルブ17が設けられている。
【0034】
インクジェットヘッド5は、サブタンクユニット4の後端部に取り付けられ、ヘッドユニット100を構成している。また、インクジェットヘッド5はサブタンクユニット4の後端部に取り付けられることにより、キャリッジ3のベルト取り付け部3aよりも後方の部分に搭載されている。インクジェットヘッド5には、サブタンクユニット4から上記4色のインクが供給され、インクジェットヘッド5は、その下面に形成された複数のノズル25から、上記4色のインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル25は、それぞれが前後方向に延びているとともに、左右方向に配列された4つのノズル列26を形成しており、各ノズル列26を構成する複数のノズル25からは、右側に配置されたものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出する。
【0035】
用紙搬送ローラ6は、記録用紙P(被吐出媒体)を、前方に搬送する。このとき、記録用紙Pは左右方向及び前後方向と平行な水平な搬送面Cに沿って搬送される。言い換えれば、キャリッジ3が移動する左右方向は、記録用紙Pの搬送面Cに沿う方向である。また、前後方向は、キャリッジの移動方向と直交(交差)するとともに、記録用紙Pの搬送面Cに沿う方向である。
【0036】
そして、プリンタ1においては、用紙搬送ローラ6により前方に搬送される記録用紙Pにキャリッジ3とともに左右方向に往復移動するインクジェットヘッド5からインクを吐出することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0037】
キャップユニット7は、キャリッジ3よりも下方における、右方にほぼ最大限移動された状態のキャリッジ3と対向する位置に配置されており、上下方向に昇降可能である。また、キャップユニット7は、2つのノズルキャップ7a、7b及び排気キャップ7cを備えている。
【0038】
ノズルキャップ7aは、キャリッジ3とキャップユニット7とが対向した状態で、ブラックインクを吐出する図1の最も右側のノズル列26を構成するノズル25と対向している。ノズルキャップ7bは、キャリッジ3とキャップユニット7とが対向した状態で、3色のカラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する図1の左側3つのノズル列26を構成するノズル25と対向している。排気キャップ7cは、キャリッジ3とキャップユニット7とが対向した状態で、排気バルブ17と対向している。
【0039】
そして、キャリッジ3とキャップユニット7とが対向した状態でキャップユニット7を上昇させると、ノズルキャップ7a、7bにより、それぞれ、ブラックインクを吐出するノズル25及び3色のカラーインクを吐出するノズル25が覆われるとともに、排気キャップ7cが排気バルブ17に接続される。排気キャップ7cが排気バルブ17に接続されると、排気バルブ17が開き、サブタンクユニット4内の空気を排出可能な状態となる。
【0040】
切り替え装置8は、チューブ18a、18b、18cを介して、ノズルキャップ7a、7b及び排気キャップ7cと接続されているとともに、チューブ19を介して吸引ポンプ9に接続されている。切り替え装置8は、ノズルキャップ7a、7b及び排気キャップ7cのいずれかを選択的に吸引ポンプ9に接続させる。吸引ポンプ9は、チューブ20を介して廃液タンク10に接続されている。
【0041】
そして、プリンタ1においては、ノズル25がノズルキャップ7a、7bに覆われ、排気バルブ17が排気キャップ7cに接続された状態で、ノズルキャップ7a、7b及び排気キャップ7cのいずれが選択的に接続された吸引ポンプ9を駆動することにより、ノズル25からインクジェットヘッド5内のブラックインクを排出させるブラックインクパージ、ノズル25からインクジェットヘッド5内の3色のカラーインクを排出させるカラーインクパージ、及び、排気バルブ17からサブタンクユニット4内の空気を排出させる排気パージのいずれかを選択的に行うことができる。また、排出されたインクなどは、廃液タンク10に貯留される。
【0042】
次に、サブタンクユニット4の構造、及び、サブタンクユニット4、インクジェットヘッド5、及び、駆動ベルト11の位置関係について、図2〜図6を用いて説明する。なお、図3〜図6では、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが流れる経路にハッチングを付している。また、図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)では、後述するフィルム22b、22dの位置を太線で示しているとともに、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)では、後述するフィルム22a、22cの位置を太線で示している。また、図3〜図6では、インクジェットヘッド5、ベルト取り付け部3a、駆動ベルト11及びチューブジョイント14の位置を二点鎖線で示している。
【0043】
サブタンクユニット4は、図2〜図6に示すように、サブタンクユニット本体21と4枚のフィルム22a〜22dとを備えている。サブタンクユニット本体21(タンク本体)は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなり、ベルト取り付け部3aの前後両側にまたがって延びる板状部材である。また、サブタンクユニット本体21の上面及び下面には、それぞれ、後述するインク貯留室34、44、54、64などのインク流路の内部空間を形成する溝や、上面の溝と下面の溝とを連通させるための貫通孔などが形成されている。フィルム22a〜22dは、サブタンクユニット本体21の上面及び下面に溶着されており、後述するように、サブタンクユニット本体21の上面及び下面に形成された溝の開口を塞いでいる。
【0044】
次に、サブタンクユニット4に形成されたインク流路の構成について説明する。サブタンクユニット本体21の上面のチューブジョイント14が配置された部分には、前後方向に沿って配列された4つのインク供給部31、41、51、61が設けられており、チューブ16を介してインクカートリッジ15から供給されたブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクは、それぞれ、インク供給部31、41、51、61からサブタンクユニット4に供給される。
【0045】
ブラックインクが供給されるインク供給部31は、図3(a)、(b)に示すように、貫通孔32aを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路33aと接続されている。インク流路33aは、インク供給部31との接続部分から左方に延びているとともに、その途中で後方に折れ曲がっている。また、インク流路33aの貫通孔32aと反対側の端部は、貫通孔32bを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路33bと接続されている。
【0046】
インク流路33bは、インク流路33aとの接続部分から後方に延びているとともに、後述するインク貯留室44を避けるように、途中で左方に折れ曲がり、さらに、後方に折れ曲がっている。また、インク流路33bの貫通孔32bと反対側の端部は、貫通孔32cを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク貯留室34に接続されている。
【0047】
インク貯留室34(液体貯留タンク)は、インクジェットヘッド5のほぼ真上に配置されており、ベルト取り付け部3aよりも後方に位置している(第2方向に関して、ベルト取り付け部3aよりもインクジェットヘッド5側に配置されている)。また、インク貯留室34は、左右方向及び前後方向に延びた略矩形の平面形状を有しており、インク流路33bは、インク貯留室34の左前端部に接続されている。また、インク貯留室34の右後端部は、貫通孔32dを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路33cに接続されている。また、インク貯留室34内には、貫通孔32cから貫通孔32dに向かって方向に互いに平行に延びた2つのインク案内部34aが設けられており、貫通孔32cからインク貯留室34内に流れ込んだブラックインクは、インク案内部34aにより貫通孔32dに向けて案内される。
【0048】
インク流路33cは、インク貯留室34との接続部分から後方及び右方に分かれて延びている。また、インク流路33cの上記後方に分かれて延びた部分の先端部は、貫通孔32eを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク供給流路35に接続されている。インク供給流路35は、インク流路33cとの接続部分から下方に延びており、その下端部がインクジェットヘッド5に接続されている。
【0049】
一方、インク流路33cの上記右方に分かれて延びた部分の先端部は、貫通孔32fを介して、サブタンクユニット本体21の下面に設けられた排気バルブ17に接続されている。
【0050】
イエローインクが供給されるインク供給部41は、図4(a)、(b)に示すように、貫通孔42aを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路43aと接続されている。インク流路43aは、インク流路33aを避けつつ、インク供給部41との接続部分から後方に延びている。また、インク流路43aの貫通孔42aと反対側の端部は、貫通孔42bを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路43bと接続されている。
【0051】
インク流路43bは、インク流路43aとの接続部分から後方に延びており、貫通孔42aと反対側の端部が、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク貯留室44(液体貯留タンク)に接続されている。
【0052】
インク貯留室44は、インク貯留室34のほぼ真上に配置されており、上下方向(第3方向)にインク貯留室34と互いに仕切られて配列されている。これにより、インク貯留室44は、インク貯留室34と同様、ベルト取り付け部3aよりも後方に位置している(第2方向に関して、ベルト取り付け部3aよりもインクジェットヘッド5側に配置されている)。また、インク貯留室44は、左右方向及び前後方向に延びた略矩形の平面形状を有しており、インク流路43bは、インク貯留室44の右前端部に接続されている。また、インク貯留室44の左後端部は、貫通孔42cを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路43cに接続されている。また、インク貯留室44内には、インク流路43bとの接続部分から貫通孔42cに向かう方向に互いに平行に延びた2つのインク案内部44aが設けられており、インク流路43bからインク貯留室44に流れ込んだイエローインクは、インク案内部44aにより貫通孔42cに向けて案内される。
【0053】
インク流路43cは、途中で折れ曲がりつつ、インク貯留室44との接続部分から右後方に延びている。インク流路43cの貫通孔42cと反対側の端部は、貫通孔42dを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路43dに接続されている。
【0054】
インク流路43dは、インク流路43cとの接続部分から後方及び右方に分かれて延びている。インク流路43dの上記後方に分かれて延びた部分は、インク流路33cの上記後方に分かれて延びた部分の左方に位置しており、その先端部が、貫通孔42eを介して、サブタンクユニット本体21の下面に、インク供給流路35の左方に隣接して形成されたインク供給流路45に接続されている。インク供給流路45は、インク流路43dとの接続部分から下方に延びており、その下端部がインクジェットヘッド5に接続されている。
【0055】
一方、インク流路43dの上記右方に分かれて延びた部分は、インク流路33cの上記右方に分かれて延びた部分の前方に位置しており、その先端部が、貫通孔42fを介して、サブタンクユニット本体21の下面に設けられた排気バルブ17に接続されている。
【0056】
シアンインクが供給されるインク供給部51は、図5(a)、(b)に示すように、貫通孔52aを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路53aと接続されている。インク流路53aは、インク供給部51との接続部分から右前方に延びている。また、インク流路53aの貫通孔52aと反対側の端部は、貫通孔52bを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路53bと接続されている。
【0057】
インク流路53bは、インク流路53aとの接続部分から前方に延びている。また、インク流路53bの貫通孔52aと反対側の端部は、貫通孔52cを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク貯留室54(液体貯留タンク)に接続されている。
【0058】
インク貯留室54は、ベルト取り付け部3aよりも前方に位置している(第2方向に関して、ベルト取り付け部3aよりもインクジェットヘッド5と反対側に配置されている)。また、インク貯留室54は、左右方向及び前後方向に延びた略矩形の平面形状を有しており、インク流路53bは、インク貯留室54の右前端部に接続されている。また、インク貯留室54の左後端部は、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路53cに接続されている。また、インク貯留室54内には、貫通孔52cからインク流路53cとの接続部分に向かう方向に互いに平行に延びた2つのインク案内部54aが設けられており、貫通孔52cからインク貯留室54に流れ込んだシアンインクは、インク案内部54aによりインク流路53cに向けて案内される。
【0059】
インク流路53cは、インク貯留室54との接続部分から後方に延びている。また、インク流路53cのインク貯留室54と反対側の端部は、貫通孔52dを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路53dに接続されている。
【0060】
インク流路53dは、インク流路33bを避けるように、途中で折れ曲がりつつ、インク流路53cとの接続部分から後方に延びているとともに、インク流路33bを避けるように、途中で左方に折れ曲がり、さらに、後方に折れ曲がっている。また、インク流路53dの貫通孔52dと反対側の端部は、貫通孔52eを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路53eに接続されている。
【0061】
インク流路53eは、インク貯留室34を避けるように、途中で折れ曲がりつつ、インク流路53dとの接続部分から後方に延びている。また、インク流路53eの貫通孔52eと反対側の端部は、貫通孔52fを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路53fに接続されている。
【0062】
インク流路53fは、インク流路53eとの接続部分から後方及び右方に分かれて延びている。インク流路53fの上記後方に分かれて延びた部分は、インク流路43dの後方に分かれて延びた部分の左方に位置しており、その先端部が、貫通孔52gを介して、サブタンクユニット本体21の下面に、インク供給流路45の左方に隣接して形成されたインク供給流路55に接続されている。インク供給流路55は、インク流路53fとの接続部分から下方に延びており、その下端部がインクジェットヘッド5に接続されている。
【0063】
一方、インク流路53fの上記右方に分かれて延びた部分は、インク流路43dの上記右方に分かれて延びた部分の前方に位置しており、その先端部が、貫通孔52hを介して、サブタンクユニット本体21の下面に設けられた排気バルブ17に接続されている。
【0064】
マゼンタインクが供給されるインク供給部61は、図6(a)、(b)に示すように、貫通孔62aを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路63aと接続されている。
【0065】
インク流路63aは、インク供給部61との接続部分から右前方に延びている。また、インク流路63aの貫通孔62aと反対側の端部は、貫通孔62bを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク貯留室64(液体貯留タンク)と接続されている。
【0066】
インク貯留室64は、インク貯留室54のほぼ真上に配置されており、上下方向にインク貯留室54と互いに仕切られて配列されている。これにより、インク貯留室64は、インク貯留室54と同様、ベルト取り付け部3aよりも前方に位置している(第2方向に関して、ベルト取り付け部3aよりもインクジェットヘッド5と反対側に配置されている)。また、インク貯留室64は、左右方向及び前後方向に延びた略矩形の平面形状を有しており、貫通孔62bは、インク貯留室64の右後端部に接続されている。また、インク貯留室64の左前端部は、貫通孔62cを介して、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路63bに接続されている。また、インク貯留室64内には、貫通孔62bから貫通孔62cに向かう方向に互いに平行に延びた2つのインク案内部64aが設けられており、貫通孔62bからインク貯留室64に流れ込んだマゼンタインクは、インク案内部64aにより貫通孔62cに向けて案内される。
【0067】
インク流路63bは、インク貯留室54及びインク流路53cの左方を、インク貯留室64との接続部分から後方に延びている。インク流路63bの貫通孔62cと反対側の端部は、貫通孔62dを介して、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路63cに接続されている。
【0068】
インク流路63cは、インク貯留室44を避けるように、インク流路63bとの接続部分から左方に延びているとともに、途中で後方に折れ曲がっている。また、インク流路63cは、インク貯留室44の後方に位置する部分において、後方及び右方に分かれて延びている。
【0069】
インク流路63cの上記後方に分かれて延びた部分は、インク流路53fの上記後方に分かれて延びた部分の左方に位置しており、その先端部は、貫通孔62eを介して、サブタンクユニット本体21の下面に、インク供給流路55の左方に隣接して形成されたインク供給流路65に接続されている。インク供給流路65は、インク流路63cとの接続部分から下方に延びており、その下端部がインクジェットヘッド5に接続されている。
【0070】
一方、インク流路63cの上記右方に延びた部分は、インク流路53fの上記右方に延びた部分の前方に位置しており、その先端部が、貫通孔62fを介して、サブタンクユニット本体21の下面に設けられた排気バルブ17に接続されている。
【0071】
次に、サブタンクユニット本体21に溶着されるフィルム22a〜22dについて説明する。フィルム22aは、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路43c、53e及びインク貯留室34の内部空間を形成する溝の開口を塞ぐように、サブタンクユニット本体21の下面に溶着されている。
【0072】
フィルム22bは、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路33b、33c、43b、43d、53d、53f、63c及びインク貯留室44の内部空間を形成する溝の開口を塞ぐように、サブタンクユニット本体21の上面に溶着されている。
【0073】
フィルム22cは、サブタンクユニット本体21の下面に形成されたインク流路33a、43a、53a、53c、63a、63b及びインク貯留室54の内部空間を形成する溝の開口を塞ぐように、サブタンクユニット本体21の下面に溶着されている。
【0074】
フィルム22dは、サブタンクユニット本体21の上面に形成されたインク流路53b及びインク貯留室64の内部空間を形成する溝の開口を塞ぐように、サブタンクユニット本体21の上面に溶着されている。
【0075】
そして、サブタンクユニット4においては、このようにサブタンクユニット本体21にフィルム22a〜22dが溶着されることにより、インク貯留室34の下側(インク貯留室44と反対側)の開口、インク貯留室44の上側(インク貯留室34と反対側)の開口、インク貯留室54の下側(インク貯留室64と反対側)の開口、及び、インク貯留室64の上側(インク貯留室54と反対側)の開口が、それぞれ、フィルム22a〜22dによって塞がれており、フィルム22a〜22dが、インク貯留室34、44、54、64の壁を形成している。
【0076】
また、このようなサブタンクユニット4においては、インク供給部31から供給されたブラックインクは、インク流路33a、33b、インク貯留室34、インク流路33c及びインク供給流路35を経てインクジェットヘッド5に供給される。また、インク供給部41から供給されたイエローインクは、インク流路43a、43b、インク貯留室44、インク流路43c、43d及びインク供給流路45を経てインクジェットヘッド5に供給される。また、インク供給部51から供給されたシアンインクは、インク流路53a、53b、インク貯留室54、インク流路53c〜53f及びインク供給流路55を経てインクジェットヘッド5に供給される。また、インク供給部61から供給されたマゼンタインクは、インク流路63a、インク貯留室64、インク流路63b、63c及びインク供給流路65を経てインクジェットヘッド5に供給される。
【0077】
これにより、インク貯留室34、44、54、64には、対応する色のインクが貯留されることとなり、これにより、多数のノズル25から一斉にインクを吐出するような場合、インクカートリッジ15からのインクの供給が追いつかず、インクの吐出不良が生じるいわゆるアンダーリフィルが生じるのを防止することができる。
【0078】
また、このとき、略矩形の平面形状を有するインク貯留室34、44、54、64内のインクは、インク案内部34a、44a、54a、64aに案内されることで、上記略矩形の対角線方向に流れるため、インク貯留室34、44、54、64内に流れ込んだインクは、インク貯留室34、44、54、64の角部などに滞留せずスムーズに流れる。したがって、インク貯留室34、44、54、64の角部などに、サブタンクユニット4内にインクとともに流れ込んだ空気などが溜まるのを防止することができる。
【0079】
さらに、本実施の形態では、サブタンクユニット本体21の上面におけるインク貯留室64の右方、及び、サブタンクユニット本体21の下面におけるインク貯留室54の左方に、それぞれ、インク流路53b及びインク流路63bが隣接して配置されている。したがって、インク貯留室54の側方(左方又は右方)にのみインク流路が形成されている場合や、インク貯留室64の側方(左方又は右方)にのみインク流路が形成されている場合などとは異なり、平面視でのインク貯留室54の面積とインク貯留室64の面積とがほぼ等しくなり、インク貯留室54、64において均等に内部のインクの圧力変動を抑制することができる。
【0080】
そして、本実施の形態では、インク流路53b、63の両方を含むインク流路が形成されていることから、インク貯留室54において右前方から左後方に向かってインクが流れるとともに、インク貯留室64において右後方から左前方に向かってインクが流れる。すなわち、平面視でインクがインク貯留室54を流れる方向と、インクがインク貯留室64を流れる方向とが交差している。
【0081】
また、本実施の形態では、インク貯留室34において、左前方から右後方に向かってインクが流れるとともに、インク貯留室44において右前方から左後方に向かってインクが流れるようになっており、平面視で、インクがインク貯留室34を流れる方向と、インクがインク貯留室44を流れる方向とが交差している。したがって、上下に配列されたインク貯留室34、44を、互いに干渉しない、左右方向に関して互いに離隔した位置において、それぞれ、下流側のインク流路と接続することができる。
【0082】
また、フィルム22a〜22dのインク貯留室34、44、54、64の壁となる部分が変形することにより、キャリッジ3の往復移動したときなどに、サブタンクユニット4内を流れるインクに圧力変動が生じるのを抑制することができる。
【0083】
また、インク供給流路35、45、55、65は、それぞれ上下方向に延びているため、サブタンクユニット4内にインクとともに空気が流れ込んだとしても、流れ込んだ空気は、インク供給流路35、45、55、65の上端部に留まり、インク供給流路35、45、55、65の下方に配置されたインクジェットヘッド5に空気が流れ込むのが防止される。
【0084】
さらに、インク供給流路35、45、55、65と接続されたインク流路33c、43d、53f、63cが排気バルブ17に接続されているため、上述の排気パージにより、インク供給流路35、45、55、65に溜まった空気を、排気バルブ17からサブタンクユニット4の外部に排出させることができる。
【0085】
そして、以上に説明したような、キャリッジ3、サブタンクユニット4、インクジェットヘッド5などを備えたプリンタ1においては、インクジェットヘッド5、及び、4つのインク貯留室34、44、54、64のうち2つのインク貯留室34、44が、ベルト取り付け部3aよりも後方に配置されており、残り2つのインク貯留室54、64が、ベルト取り付け部3aの前方に配置されている。すなわち、比較的重いインクジェットヘッド5と、内部にインクが貯留されることで重くなる4つのインク貯留室34、44、54、64のうち2つのインク貯留室54、64とが、前後方向に関してベルト取り付け部3aを挟むように配置されている。
【0086】
したがって、サブタンクユニット4やインクジェットヘッド5が搭載されたキャリッジ3の重心が、前後方向に関して、インクジェットヘッド5とインク貯留室54、64との間の、ベルト取り付け部3aに近づく。したがって、駆動ベルト11がキャリッジ3を引っ張る力によってキャリッジ3に付与されるモーメントが小さくなり、キャリッジ3の左右方向に移動する際の揺動を抑制することができる。
【0087】
また、実施の形態では、インク貯留室54、64を、仮に、特許文献1に記載されているのと同様にして、インク貯留室34、44の下方に配置するとした場合に比べて、インク貯留室54、64が上方にくるため、その分キャリッジ3の重心も上方にくる。したがって、インクジェットヘッド5が大型化して重くなったとしても、上下方向に関するキャリッジ3の重心がベルト取り付け部3aから下方に離れるのを抑制することができる。
【0088】
また、キャリッジ3は、左右方向に往復移動したときに、チューブジョイント14が設けられた部分において、チューブ16により左右方向に引っ張られるが、本実施の形態では、チューブジョイント14が、前後方向に関してインクジェットヘッド5とインク貯留室54、64との間に設けられているため、前後方向に関するキャリッジ3の重心に近い部分がチューブ16に引っ張られることとなる。したがって、チューブ16がキャリッジ3を引っ張る力によってキャリッジ3に付与されるモーメントが小さくなり、キャリッジ3の左右方向に移動する際の揺動を抑制することができる。
【0089】
また、チューブジョイント14が、前後方向に関してキャリッジ3の重心に近い位置に設けられることとなるため、チューブジョイント14が設けられることで、キャリッジ3の重心が前方又は後方にずれるのを抑えることができる。
【0090】
また、本実施の形態とは異なり、4つのインク貯留室34、44、54、64を全て、ベルト取り付け部3aよりも前方に配置することも考えられるが、この場合には、ベルト取り付け部3aの前方に4つのインク貯留室34、44、54、64をまとめて配置するための広いスペースが必要となり、キャリッジ3の大型化につながる。
【0091】
そこで、本実施の形態では、4つのインク貯留室34、44、54、64の全てをベルト取り付け部3aよりも前方に配置するのではなく、2つのインク貯留室54、64だけをベルト取り付け部3aよりも前方に配置し、残りの2つのインク貯留室34、44については、インクジェットヘッド5とともにベルト取り付け部3aよりも後方に配置している。これにより、キャリッジ3のベルト取り付け部3aよりも後方のスペースを有効利用して、4つのインク貯留室34、44、54、64を配置することができ、インク貯留室をベルト取り付け部3aよりも前方に配置することによるキャリッジ3の大型化を抑えることができる。
【0092】
また、本実施の形態では、ベルト取り付け部3aの前後両側にまたがって延びたサブタンクユニット本体21の、ベルト取り付け部3aよりも後方の部分、及び、ベルト取り付け部3aよりも前方の部分に、それぞれ、2つのインク貯留室34、44の内部空間を形成する溝及び2つのインク貯留室54、64の内部空間を形成する溝が、上下に仕切られて形成されており、インク貯留室34、44、54、64の内部空間を形成する溝が、全て、他のインク流路の内部空間を形成する溝とともに、サブタンクユニット本体21の上面及び下面において開口している。
【0093】
したがって、サブタンクユニット本体21の上面及び下面にフィルム22a〜22dを溶着するだけで、インク貯留室34、44、54、64及びその他のインク流路の内部空間を形成する溝の開口を全て塞ぐことができる。すなわち、サブタンクユニット本体21にフィルム22a〜22dを溶着する際に、サブタンクユニット本体21の別の部分が邪魔になることがない。これにより、サブタンクユニット4の製造が簡単になる。
【0094】
また、インク供給部51、61から、インク貯留室54、64に向けて一旦前方に延びているとともに、インク貯留室54、64からインクジェットヘッド5に向けて後方に延びたインク流路は、インク供給部31、41からそのまま後方に延びて、インク貯留室34、44を経てインクジェットヘッド5に至るインク流路に比べて、インク流路の長さが長い。
【0095】
そのため、本実施の形態では、ベルト取り付け部3aよりも前方に配置されたインク貯留室54、64を含む、長さの長いインク流路に、粘度の低い染料インクである3色のカラーインクのうちの2色が流れるようにするとともに、ベルト取り付け部3aよりも後方に配置されたインク貯留室34、44を含む、長さの短いインク流路に、粘度の高い顔料インクであるブラックインクと、残り1色のカラーインクとが流れるようにしている。これにより、サブタンクユニット4に供給された粘度の高い顔料インクが、インクジェットヘッド5に供給されるまでの間に増粘するのを防止することができる。
【0096】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0097】
上述の実施の形態では、チューブジョイント14が前後方向に関して、インクジェットヘッド5と、インク貯留室54、64との間に設けられていたが、これには限られない。チューブジョイント14は、例えば、インク貯留室54、64よりも前方など、キャリッジ3の、前後方向に関する、インクジェットヘッド5とインク貯留室54、64との間以外の部分に設けられていてもよい。
【0098】
また、上述の実施の形態では、粘度の高い顔料インクであるブラックインクが、ベルト取り付け部3aよりも後方に配置されたインク貯留室34を含む長さの短いインク流路を流れるようにしていたが、これには限られない。すなわち、顔料インクであるブラックインクが、ベルト取り付け部3aよりも前方に配置されたインク貯留室54、64のいずれかを含むインク流路を流れるようにしてもよい。
【0099】
また、上述の実施の形態では、サブタンクユニット本体21にフィルム22a〜22dが溶着されることによってサブタンクユニット4が形成されており、これにより、2つのインク貯留室34、44が、ベルト取り付け部3aの後方に、上下に互いに仕切られて配置されているとともに、2つのインク貯留室54、64が、ベルト取り付け部3aの前方に、上下に互いに仕切られて配置されていたが、これには限られない。
【0100】
さらに、このように上下に互いに仕切られて配置されたインク貯留室34、44、54、64のうち、下側に配置されたインク貯留室34、54の下側の壁が、サブタンクユニット本体21の下面に溶着されたフィルム22a、22cにより形成されているとともに、上側に配置されたインク貯留室44、64の下側の壁が、サブタンクユニット本体21の上面に溶着されたフィルム22b、22dにより形成されていたが、これにも限られない。
【0101】
例えば、インク貯留室34とインク貯留室44、及び、インク貯留室54とインク貯留室64が、左右方向など上下方向以外の方向に配列されていてもよい。また、インク貯留室34、44、54、64の壁の一部は、溶着されたフィルムによって形成されていなくてもよく、例えば、サブタンクユニット4全体が、サブタンクユニット本体21と同じ合成樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0102】
また、インクジェットヘッド5の重量、インクが貯留された状態でのインク貯留室34、44、54、64の重量などを考慮して、4つのインク貯留室34、44、54、64のうちの1つ又は3つを、ベルト取り付け部3aよりも前方に配置し、残りをベルト取り付け部3aよりも後方に配置してもよい。
【0103】
さらには、4つのインク貯留室のうち一部のインク貯留室を、ベルト取り付け部3aよりも後方(前後方向に関するインクジェットヘッド5側)に配置することにも限られず、4つのインク貯留室を全てベルト取り付け部3aよりも前方に配置してもよい。
【0104】
上述の実施の形態では、インク貯留室54及びインク貯留室64と、インクジェットヘッド5とが、前後方向に関してベルト取り付け部3aを挟むように配置されているとともに、電子部品110や排気バルブ17は、ベルト取り付け部3aよりも後方(インクジェットヘッド5に近い側)に配置されていたが、これに限られない。例えば、インクジェットヘッド5がベルト取り付け部3aよりも後方に位置する場合、インクジェットヘッドの重量に応じて、インク貯留室54及びインク貯留室64、電子部品110、並びに排気バルブ17のうち少なくとも一つを、ベルト取り付け部3aよりも前方に配置することにより、キャリッジ3の重心をベルト取り付け部3aに近づけてもよい。
【0105】
また、上述の実施の形態では、インクジェットヘッド5が4色のインクを吐出するものであり、これに対応して、サブタンクユニット4にインク貯留室が4つ設けられていたが、これには限られない。すなわち、インクジェットヘッド5が、2色、3色、又は5色以上のインクを吐出するものであり、サブタンクユニット4に、吐出するインクの種類と同じ数のインク貯留室が設けられていてもよい。
【0106】
さらには、インクジェットヘッド5が、例えばブラックインクなど1色のインクのみを吐出するものであり、サブタンクユニット4のベルト取り付け部3aよりも前方の部分に、1つのインク貯留室が設けられていることによって、インクジェットヘッド5と当該インク貯留室とが、前後方向にベルト取り付け部3aを挟むように配置されていてもよい。
【0107】
また、上述の実施の形態では、インクジェットヘッド5とインク貯留室54、64とが、キャリッジの移動方向である左右方向と直交する前後方向に関して、ベルト取り付け部3aを挟むように配置されていたが、これには限られない。インクジェットヘッド5とインク貯留室54、64とは、平面視で左右方向及び前後方向に対して傾斜した方向に関して、ベルト取り付け部3aを挟むように配置されていてもよい。すなわち、インクジェットヘッド5とインク貯留室54、64とは、キャリッジの移動方向(第1方向)と交差するとともに、記録用紙Pが搬送される搬送面Cに沿う、前後方向以外の方向(第2方向)に関して、ベルト取り付け部3aを挟むように配置されていてもよい。
【0108】
また、以上では、キャリッジ3の外部に配置されたインクカートリッジ15とサブタンクユニット4とがチューブ16によって接続されており、インクカートリッジ15に貯留されたインクが、チューブ16を介してサブタンクユニット4に供給されたが、これには限られない。
【0109】
例えば、キャリッジの外部にインク供給源を備えたインク供給ステーションが設けられており、インクジェットヘッドからインクを吐出していないときに、キャリッジを移動させてサブタンクユニットをインク供給ステーションに連結することによって、インク供給源からサブタンクユニットにインクを供給して、インク貯留室にインクを貯留させる、いわゆるステーション供給式のインクジェットヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。あるいは、図7に示すように、キャリッジ3に対してインクカートリッジ136(液体カートリッジの一例)が着脱可能に搭載され、キャリッジ3に搭載されたインクカートリッジ134からインクジェットヘッド5に各色のインクが供給される、いわゆるオンキャリッジタイプのプリンタに本発明を適用することも可能である。この場合、キャリッジ3のインクカートリッジ取り付け部134aとインクジェットヘッド5とが前後方向に関してキャリッジ3のベルト取り付け部3aを挟むように、インクカートリッジ取り付け部を配置すればよい。そして、インクカートリッジ取り付け部にインクカートリッジを取り付けることにより、キャリッジ3の重心をベルト取り付け部3aに近づけることができる。
【0110】
上述の実施の形態、及び変形例では、駆動ベルト11にキャリッジ3が取り付けられていたが、これには限られない。キャリッジ3を取り付けることができ、プーリ12と噛み合いプーリ12の回転駆動によりキャリッジ3を左右方向に往復移動させることができればよく、例えばワイヤ等で代用してもよい。
【0111】
また、以上では、インクを吐出するインクジェットヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えた、プリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 プリンタ
2A、2B ガイドレール
3 キャリッジ
3a ベルト取り付け部
5 インクジェットヘッド
11 駆動ベルト
14 チューブジョイント
16 チューブ
21 サブタンクユニット本体
22a〜22d フィルム
34、44、54、64 インク貯留室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドへ供給する液体を貯留する液体貯留タンクと、
前記液体吐出ヘッドにより液体が吐出される被吐出媒体が搬送される搬送面に沿う第1方向に延びたガイド部材と、
前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留タンクとを搭載し、前記ガイド部材に、前記第1方向に移動可能に支持されたキャリッジと、
前記キャリッジが連結され、前記キャリッジを前記第1方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留タンクとが、前記第1方向に交差するとともに前記搬送面に沿う第2方向に関して、前記キャリッジの前記移動機構に対する連結部を挟むように配置されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体は複数種類の液体を含み、
前記液体吐出ヘッドは、前記複数種類の液体を個別に吐出し、
前記液体貯留タンクは前記複数種類の液体がそれぞれ貯留される複数の液体貯留タンクとして形成されており、
前記複数の液体貯留タンクのうち一部の前記液体貯留タンクは、前記第2方向に関して、前記連結部よりも前記液体吐出ヘッド側に配置されており、
前記複数の液体貯留タンクのうち残りの液体貯留タンクと、前記液体吐出ヘッドとが、前記第2方向に関して、前記連結部を挟むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記複数種類の液体は、顔料インクと染料インクとを含み、
前記複数の液体貯留タンクのうち、少なくとも前記顔料インクが貯留されている前記液体貯留タンクが、前記第2方向に関して、前記連結部よりも前記液体吐出ヘッド側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記複数種類の液体は、4種類の液体を含み、
前記液体貯留タンクは、前記4種類の液体がそれぞれ貯留される4つの前記液体貯留タンクとして形成されており、
前記4つの液体貯留タンクは、
前記第2方向に関して、前記連結部の両側にまたがって延びる板状部材であって、前記連結部に対して前記液体吐出ヘッド側の部分、及び、前記液体吐出ヘッドと反対側の部分に、それぞれ、上下方向に互いに仕切られて形成されているとともに、前記板状部材の上面及び下面にそれぞれ開口する2つの空間が形成されたタンク本体と、
前記タンク本体の上面及び下面空間の開口を塞ぐように前記タンク本体の上面及び下面にそれぞれ溶着されたフィルムとによって形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体貯留タンクと、前記液体供給源とを接続する液体供給用チューブをさらに備え、
前記キャリッジには、前記第2方向に関して、前記液体貯留タンクと前記液体吐出ヘッドとの間に、前記液体供給用チューブとの接続を行うためのチューブジョイントがさらに設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記キャリッジの外部に配置され、前記液体貯留タンクに前記液体を供給する液体供給源をさらに備え、
前記液体貯留タンクは、前記液体供給源から供給された液体を前記液体吐出ヘッドへ供給する前に一時的に貯留するサブタンクであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体貯留タンクは、前記キャリッジに着脱可能に搭載される液体カートリッジであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記第1方向に延びているとともに、前記キャリッジが連結され、前記キャリッジを前記第1方向に移動させる駆動ベルトを含み、
前記液体貯留タンクと前記液体吐出ヘッドとが、前記第2方向に関して、前記連結部を挟むように配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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