液体吐出装置
【課題】ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することが可能な液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】対向部材80の被支持面82の周縁80aから対向部材80の対向面81と垂直な方向において対向面81から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、曲り部92の対向面81から最も離隔した端部から被支持面82と平行な方向に延ばした第2仮想面と、対向部材80の被支持面82と、曲り部92の表面とで画成される隅部空間Eを減少させる補助部材95が、支持部材90に設けられている。
【解決手段】対向部材80の被支持面82の周縁80aから対向部材80の対向面81と垂直な方向において対向面81から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、曲り部92の対向面81から最も離隔した端部から被支持面82と平行な方向に延ばした第2仮想面と、対向部材80の被支持面82と、曲り部92の表面とで画成される隅部空間Eを減少させる補助部材95が、支持部材90に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、吐出面と対向し、吐出口から吐出された液体が付着する対向面を有する対向部材と、対向面に付着した液体を払拭するワイパとを備えた液体吐出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−232897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対向面に付着した液体の拭き取り性の向上を目的として、対向部材をガラス板等の硬質材料で形成し、この対向部材の対向面とは反対側の被支持面を、支持部材により支持する場合がある。本発明者は、鋭意研究した結果、この場合において、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したときに、対向面に付着していた液体の一部が、対向部材の被支持面と支持部材の角部とで形成される隅部に移動して溜まり、払拭が終了した後に、当該隅部に溜まっている液体が対向面に移動して残存してしまうという、知見を新たに得た。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することが可能な液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材とを備えた液体吐出装置であって、前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間を減少させる補助部材が、前記対向部材及び前記支持部材の少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、対向部材及び支持部材の少なくともいずれかに設けられた補助部材により、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、対向部材の被支持面と支持部材の角部の表面とで形成される隅部に溜まる液体の量を低減することができる。その結果、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において対向面に移動する当該隅部に溜まっている液体の量を低減できるので、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【0008】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲った角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材とを備えた液体吐出装置であって、前記対向部材の前記被支持面の周縁に接続され、且つ前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する方向に延設された補助部材を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、補助部材により、対向面に付着した液体を対向部材の被支持面と支持部材の角部とで形成される隅部に溜めることなく吐出面とは離隔する方向に移動させることができるので、対向面に残存する液体を低減することができる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置において、前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁に沿って延設されていてもよい。上記の構成によれば、平坦部が対向部材の被支持面を広範囲にわたり支持することができるので、対向部材の対向面の平面度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の液体吐出装置において、前記払拭方向は前記対向面の第1端部から第2端部に向かう方向であり、前記対向部材の前記被支持面の周縁は前記払拭方向及び前記払拭方向と直交する方向に延在しており、前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁のうち、前記払拭方向に延在する周縁に沿って延設されていてもよい。
【0012】
また、本発明の液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドは記録媒体に向けて液体を吐出して記録媒体に画像を記録するものであり、画像記録時に、前記吐出面と対向し、且つ、前記吐出面との間隔が前記吐出面と前記対向部材との間隔よりも小さい間隔となる対向位置に配置され、記録媒体を支持するプラテンと、前記プラテンを、前記対向位置と、前記吐出面と対向しない非対向位置との間において移動させるプラテン移動手段と、前記液体吐出ヘッド内の液体を前記吐出口から排出させる排出動作を行う液体排出手段と、前記支持部材を移動させることにより、前記対向部材を、記録時に配置される第1の位置、及び前記第1の位置と比べて前記吐出面との間隔が狭い第2の位置に移動させることが可能な対向部材移動手段とを更に備え、前記液体排出手段は、前記プラテン移動手段により前記プラテンが前記非対向位置に移動され、且つ、前記対向部材移動手段により前記対向部材が前記第2の位置に配置されている状態のときに、前記排出動作を行ってもよい。上記の構成によれば、液体排出手段の排出動作により、液体吐出ヘッドの吐出特性の維持・回復を図ることができる。また、液体排出手段の排出動作において吐出口から排出される液体は、画像記録時に記録媒体に接触することのない対向部材に付着することになるので、排出された液体により記録媒体が汚れることはない。またさらに、液体排出手段が排出動作を行う際には、吐出面と対向部材との間隔が狭くされているので、排出された液体が飛散することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドの周囲に配設され、前記対向部材に当接した際に、前記吐出面及び前記対向部材とともに、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から隔離する環状のキャップ手段とを更に備え、前記対向部材移動手段は、前記キャップ部材と前記対向部材とが当接可能となる当接位置に対向部材を移動させることが可能にされていてもよい。上記の構成によれば、吐出空間を外部空間から隔離することができるので、吐出口近傍の液体が蒸発して粘性が増加することを抑制できる。
【0014】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面と接し、前記対向部材よりも疎水性が高い疎水性部材と、前記疎水性部材を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記対向部材とは離隔する方向に曲った角部とを有する支持部材であって、前記対向面から前記被支持面に向かう方向に見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材及び前記疎水性部材の内側に位置する支持部材とを備えていることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、隅部に液体が溜まったとしても、対向部材と支持部材との間に介在された疎水性部材の疎水性により、隅部に溜まった液体が対向面に移動することを抑制することができる。その結果、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【0016】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間に貯留される液体を前記被支持面から離れる方向に排出する溝が設けられ、前記溝は、少なくともその一端が前記空間に接続され、且つ、前記被支持面から離れる方向に延設されていることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、隅部に液体が貯溜されたとしても、当該隅部に貯溜された液体は、溝を伝って被支持面から離れる方向に排出される。これにより、隅部に貯溜される液体の量を低減することができる。その結果、隅部から対向面に移動する液体の量を低減でき、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】プラテン、及び液体受け機構の動作を説明するための動作状況図である。
【図3】(a)は画像記録時のワイパユニット、及び液体受け機構の動作状況図であり、(b)はワイピング動作時のワイパユニット、及び液体受け機構の動作状況図であり、(c)は対向部材の対向面と垂直な方向から見たときの、ワイピング動作時におけるワイパユニット、及び液体受け機構の動作状況図である。
【図4】図1のプリンタの液体吐出ヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図5】(a)は図4の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図であり、(b)は図5(a)のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図6】図2(c)の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
【図7】液体受け機構の補助部材を説明するための説明図である。
【図8】図1に示す制御部の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示す制御部のメンテナンスに係る動作フロー図である。
【図10】(a)は本発明の第2実施形態における液体受け機構の説明図であり、(b)は本発明の第3実施形態における液体受け機構の説明図である。
【図11】(a)は本発明の第4実施形態における液体受け機構の説明図であり、(b)は図11(a)のA視図である。
【図12】(a)は本発明の第5実施形態における液体受け機構の説明図であり、(b)は図12(a)のB視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(第1実施形態)
先ず、図1を参照し、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0022】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部35が設けられている。筐体1aにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部35に向けて、図1に示す太矢印に沿って、記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0023】
筐体1aは、ヘッド(液体吐出ヘッド)10、用紙Pを搬送する搬送ユニット30、画像記録時にヘッド10の吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)において用紙Pを支持するプラテン40、用紙Pをガイドするガイドユニット25、ヘッド10に供給するブラックインクを貯留するカートリッジ(図示せず)、ワイパユニット55(図3参照)、メンテナンス時にヘッド10から吐出されたインクを受ける液体受け機構8、対向部材移動機構96(図8参照)、及び、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部100等を収容している。なお、カートリッジは、ヘッド10にチューブ(不図示)及びポンプ54(図8参照)を介して接続されている。
【0024】
ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド10の下面は、多数の吐出口108(図5参照)が開口した吐出面10aである。画像記録に際して、吐出口108からブラックのインクが吐出される。また、ヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aとプラテン40の上面との間に記録に適した所定の間隙が形成されるようヘッド10を保持している。ヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0025】
ヘッド10の周囲には環状のキャップ(キャップ手段)61が配設されている。キャップ61はヘッドホルダ3に取り付けられており、平面視でヘッド10の外周を取り囲む。キャップ61は、図6に示すように、ヘッドホルダ3に支持された弾性体62、及び、昇降可能な可動体63を含む。キャップ61の構成については後に詳述する。
【0026】
搬送ユニット30は、搬送方向に関するプラテン40の両側に配置された搬送ニップローラ31、32等を有する。搬送ニップローラ31、32は、用紙Pを上下方向に挟持するように対向配置された一対のローラ部材をそれぞれ有しており、挟持した用紙Pが搬送方向に搬送されるように用紙Pに搬送力を付与する。用紙搬送方向上流側に配置された搬送ニップローラ31によって搬送力を付与された用紙Pは、プラテン40の上面に支持されつつ用紙搬送方向に搬送される。プラテン40の上面を通過した用紙Pは、搬送ニップローラ32によって搬送力を付与され、プラテン40からさらに用紙搬送方向下流側へと搬送される。
【0027】
プラテン40は、一対の扉部材41,42からなり、平面視で吐出面10aを挟み且つ吐出面10aに平行な一対の回転軸40aに開閉可能に支持されている。プラテン40は、プラテンモータ43(図8参照)による回転軸40aを中心とする回転によって、水平面に平行であり吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)、及び吐出面10aと対向しないで垂れ下がる非対向位置(図2(b),(c)参照)とを選択的に取り得る。プラテン40は、メンテナンス時は非対向位置を取り、画像記録時は対向位置を取る。プラテン40が対向位置に配置されたときには、吐出面とプラテン40との間隔は、吐出面10aと対向部材80との間隔よりも小さい間隔となる。対向位置に配置されたときにおいて、プラテン40における吐出面10aに対して対向する上面は、用紙Pを支持する支持面であり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面に、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン40は、樹脂により構成されている。
【0028】
ガイドユニット25は、搬送ユニット30を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、3つのガイド26a,26b,26c及び二対の送りローラ27を有する。当該上流側ガイド部は、給紙ユニット1cと搬送ユニット30とを繋ぐ。下流側ガイド部は、3つのガイド28a,28b,28c及び三対の送りローラ29を有する。当該下流側ガイド部は、搬送ユニット30と排紙部35とを繋ぐ。
【0029】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ(収容部)23及び給紙ローラ24を有する。このうち給紙トレイ23が筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、用紙Pを収容可能である。給紙ローラ24は、制御部100の制御により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット30による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、図1において水平方向に平行な方向である。また、主走査方向とは、図1において水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0030】
制御部100は、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいて、画像記録を行う。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。制御部100の搬送動作によって給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、ガイド26a,26b,26cによりガイドされ、且つ送りローラ対27によって挟持されつつ搬送ユニット30へと送られる。搬送ユニット30は、用紙Pをヘッド10とプラテン40との間に送り出す。搬送ユニット30によりヘッド10とプラテン40との間へ送られた用紙Pは、ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出口108からインクが吐出されて用紙P上にモノクロ画像が形成される。吐出口108からのインク吐出動作は、用紙センサ37からの検出信号に基づき、制御部100による制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド28a,28b,28cによりガイドされ且つ送りローラ対29によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口38から排紙部35へと排出される。
【0031】
また、制御部100は、ヘッド10のインク吐出特性の維持・回復のためのメンテナンスを行う。メンテナンスとしては、インクを吐出口108(図5参照)から排出させる排出動作、ワイピング動作、キャッピング動作等が含まれる。排出動作は、ポンプ54(図9参照)によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口108からインクを強制的に排出するパージ動作である。
【0032】
ワイピング動作は、ワイパユニット55により、液体受け機構8の後述の対向部材80の対向面81に付着した液体を払拭する動作であり、パージ動作後に行われる。
【0033】
キャッピング動作では、図6に示すように、キャップ61、吐出面10a、及び対向部材80により吐出空間S1が外部空間S2から隔離される。これにより、ヘッド10の吐出口108内のインクの乾燥が抑制される。なお、キャッピング動作は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
【0034】
液体受け機構8は、吐出面10aと対向する対向部材80、廃液トレイ85、対向部材80を支持する支持部材90、及び、補助部材95を含む。
【0035】
対向部材80は、図2、及び図3に示すように、長手方向を主走査方向、短手方向を副走査方向とする矩形状の平板部材であり、吐出面10aと対向する対向面81と、対向面81とは反対側の被支持面82とを有している。図3(c)に示すように、対向部材80の長手周縁80aは、主走査方向(ワイパユニット55の後述のワイパ56aの払拭方向)に沿って延在しており、対向部材80の短手周縁80bは副走査方向(ワイパユニット55の後述のワイパ56aの払拭方向と直交する方向)に沿って延在している。この対向部材80は、ガラス等の硬質材料から構成されている。なお、対向部材80は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有しており、パージ動作時において全吐出口108から排出されたインクを対向面81で受ける。
【0036】
廃液トレイ85は、対向部材80及び支持部材90の下方に配置されており、廃液タンク(図示せず)に連通している。また、廃液トレイ85は、主走査方向及び副走査方向に関して対向面81より一回り大きなサイズを有しており、ワイピング動作時において、対向部材80から垂れ落ちたインクを受容する。
【0037】
支持部材90は、金属の平板を曲げ加工により断面視逆U字状に湾曲させたものであり、対向部材80の被支持面82を支持する平板部(平坦部)91と、平板部91から連続し、吐出面10aとは離隔する方向に曲った二つの曲り部(角部)92とを有する。曲り部92は、副走査方向外方に凸に湾曲されている。支持部材90は、このように曲り部92を有することで、支持部材90全体の強度が向上されている。なお、曲り部92については、湾曲ではなく多角形に曲げ加工することで形成されていてもよい。
【0038】
また、支持部材90は、図2、及び図3(c)に示すように、対向部材80の対向面81と垂直な方向から見たときに、平板部91と曲り部92との境界93が対向部材80の内側に位置するように構成されている。また、2つの曲り部92は、対向部材80の被支持面82の長手周縁80aそれぞれに沿って延設されている。これにより、支持部材90の平板部91が対向部材80の被支持面82を広範囲にわたり支持することができるので、対向面81の平面度を向上させることができる。補助部材95については後述する。
【0039】
ワイパユニット55は、図3に示すように、ワイパ56a、これらを支持する基部56b、及び、ワイパ移動機構57を有している。ワイパ56aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、対向部材80の副走査方向幅より若干長い。基部56bは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、長手方向両端に円柱状の孔が形成されている。孔は、基部56bを主走査方向に貫通し、一方の孔の内面には雌ねじが形成されている。ワイパ移動機構57は、副走査方向に並んだ2つのガイド58と、2つのガイド58の一方に回転力を付与するワイパ駆動モータ59(図8参照)とから構成される。ガイド58は、ヘッド10よりも用紙搬送方向上流側において主査方向に沿って延設された丸棒であり、ワイパ駆動モータ59により回転力を付与されるガイド58の外周面には雄ネジが形成され、ねじ同士が螺合する関係で基部56bの孔に貫挿されている。他方のガイド58については外周面には雄ネジが形成されていない丸棒であり、内面には雌ねじが形成されていない基部56cの孔に貫挿されている。ワイパ駆動モータ59の正逆回転によって、基部56bがガイド58に沿って往復移動する。外周面に雄ネジが形成されていない他方のガイド58により基部56c回転止めが図られている。ワイピング動作においては、基部56bは、対向部材80が第2の位置(後述する)に移動するのを待った後、図中右方に移動される。これにより、ワイパ56aが対向面81に接触しながら、対向面81の主走査方向に関する図中左端部(第1端部)から図中右端部(第2端部)に向けて移動する。その結果、対向面81に付着したインクが払拭される。その後、基部56bは、対向部材80が第1の位置(後述する)に移動するのを待って、左方の待機位置に戻される。
【0040】
対向部材移動機構96は、制御部100による制御の下、対向部材80の昇降動作を行う。具体的には、対向部材移動機構96は、支持部材90を鉛直方向に昇降させることで、対向部材80を、第1の位置、第2の位置、及び当接位置に選択的に移動させる。
【0041】
ここで、第1の位置とは、図2(a)に示すように、画像記録時において対向部材80が配置される位置である。また、第2の位置とは、図2(b)に示すように、第1の位置よりも上方の位置であり、第1の位置と比べて吐出面10aとの間隔が狭い位置である。排出動作及びワイピング動作は、対向部材80が第2の位置に配置されているときに行われる。なお、対向部材80が第2の位置に配置されているときには、ヘッド10と対向部材80との間の空間を、ワイパユニット55が移動可能である(図3(b)参照)。
【0042】
また、当接位置とは、図2(c)に示すように、第2の位置よりも上方の位置である。対向部材80がこの当接位置に配置されている際において、キャップ61の可動体63を下降させると、当該キャップ61の先端61aと対向部材80とが当接されて、吐出空間S1を外部空間S2から隔離することができる(図8参照)
【0043】
次に、図4、及び図5を参照しつつ、ヘッド10について詳細に説明する。図5(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。ヘッド10は、図4に示すように、流路ユニット9の上面に8つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット9の下面が、吐出面10aである。流路ユニット9の内部にはインク流路が形成され、アクチュエータユニット21はこの流路内のインクに吐出エネルギーを付与する。
【0044】
流路ユニット9は、図5(b)に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図4に示すように、リザーバユニットに連通する計18個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図4〜図5に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。吐出面10aに形成された多数の吐出口108は、マトリクス状に配置されており、主走査方向(一方向)に関してこの方向の解像度である600dpiの間隔で配列されている。
【0045】
図4〜図5に示すように、リザーバユニットからインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る。
【0046】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図4に示すように、8つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
【0047】
次に、図4及び図6を参照し、ヘッドホルダ3、及びキャップ61の構成について説明する。ヘッドホルダ3は、金属等からなる枠状フレームであり、ヘッド10の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ3には、キャップ61が取り付けられている。ヘッドホルダ3とヘッド10との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ3とキャップ61との当接部は、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0048】
キャップ61の弾性体62は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド10を囲んでいる。弾性体62は、図6に示すように、基部62x、基部62xの下面から突出した突出部62a、ヘッドホルダ3に固定された固定部62c、及び、基部62xと固定部62cとを接続する接続部62dを含む。このうち、突出部62aは、断面が三角形である。また、固定部62cは断面がT字状である。固定部62cの上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ3に固定されている。接続部62dは、固定部62cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部62xの下側側面に接続している。接続部62dは、可動体63の昇降に伴って変形する。基部62xの上面には、凹部62bが形成されており、可動体63の下端と嵌合している。
【0049】
可動体63は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド10の外周を取り囲んでいる。可動体63は、弾性体62に支持されて、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体63は、複数のギア64と接続されている。制御部100による制御の下、昇降モータ60(図8参照)が駆動されると、ギア64が回転して可動体63が昇降する。このとき、基部62xも、共に昇降する。これにより、突出部62aの先端61aと吐出面10aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0050】
突出部62aは、対向部材80が当接位置(図2(c)参照)に配置されているときにおいて、可動体63の昇降に伴って、先端61aが対向部材80の対向面81に当接する当接位置(図6に示す位置)と、対向部材80の対向面81から離隔した離隔位置(図2(c)に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が、外部空間S2に対して隔離された封止状態となっている。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された開放状態となっている。
【0051】
次に、図7を参照して、液体受け機構8の補助部材95について説明する。補助部材95について説明するにあたり、まず、図7(a)に示すように、液体受け機構8が補助部材95を有していない場合における、ワイピング動作時のインクの流れについて説明する。
【0052】
制御部100の制御の下、ワイパ駆動モータ59が駆動されることでワイピング動作が開始されると、ワイパ56aが対向部材80の対向面81に接触しながら払拭方向(図3参照)に移動して、対向面81に付着したインクをワイパ56aにより掻き取る。掻き取られたインクは、ワイパ56aとともに払拭方向に移動して、対向部材80の払拭方向下流側の短手周縁80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。また、このワイパ56aの払拭方向の移動に際して、ワイパ56aの中央部からワイパ56aの長手方向のそれぞれの両端に向かうD1方向,D2方向にインクの流れが生じる。従って、ワイパ56aにより掻き取られたインクの一部は、対向部材80長手周縁80aから廃液トレイ85に向けて下方に移動することになる。インクが長手周縁80aから廃液トレイ85に向けて下方に移動する際に、その一部のインクは対向部材80の被支持面82を伝って、被支持面82と曲り部92の表面とで形成される隅部86に溜まる。このように隅部86にインクが溜まると、図7(b)に示すように、経時により被支持面82を伝って対向面81に移動する現象が生じる。その結果、ワイピング動作を行ったにも関わらず、対向面81にインクが残存する問題が生じる。対向面81にインクが残存すると、その後にキャッピング動作をしたときにキャップ61の弾性体62にインクが付着して汚れ、キャッピング機能低下につながる。
【0053】
そこで、本実施形態においては、金属(例えばSUS)からなる板状の補助部材95を支持部材90に設けることにより、ワイピング動作後に対向面81に残存するインクを低減する対策を採る。
【0054】
ここで、図7(c)に示すように、被支持面82の長手周縁80aから対向部材80の対向面81と垂直な方向において対向面81から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、曲り部92の対向面81から最も離隔した端部92aから被支持面82と平行な方向に延ばした第2仮想面と、対向部材80の被支持面82と、曲り部92の表面とで画成される空間を隅部空間Eとする。補助部材95は、図7(d)に示すように、この隅部空間Eを減少させて当該隅部空間E(隅部86)に溜まるインクの量が低減するよう、支持部材90の曲り部92に取り付けられている。なお、補助部材95の上面は被支持面82に当接され、補助部材95の副走査方向外側の側面は第1仮想面と一致されている。
【0055】
上記のように、支持部材90に対して隅部空間Eを減少させるよう補助部材95が取り付けられているので、ワイピング動作時において、ワイパ56aにより掻き取られたインクが、長手周縁80aから廃液トレイ85に向けて移動したとしても、補助部材95により隅部86(隅部空間E)に溜まるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する隅部86に溜まっているインクの量を低減できるので、対向面81に残存するインクの量を低減することができる。なお、補助部材95の上面は被支持面82に当接されていなくてもよいが、被支持面82に当接される構成の方が、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に残存するインクの量をより低減することができるので好ましい。同様に、補助部材95の副走査方向外側の側面は第1仮想面と一致されていなくてもよいが、側面は第1仮想面と一致されている構成の方が、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に残存するインクの量をより低減することができるので好ましい。
【0056】
次に、図8を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御部100は、搬送制御部141、画像データ記憶部142、ヘッド制御部143、及びメンテナンス制御部144を有している。
【0057】
搬送制御部141は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙ユニット1c、ガイドユニット25、及び、搬送ユニット30の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの記録指令に含まれる画像データを記憶する。
【0058】
ヘッド制御部143は、画像記録時において、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、搬送される用紙Pに向けてインクが吐出されるようヘッド10を制御する。
【0059】
メンテナンス制御部144は、排出動作(パージ動作)、ワイピング動作、及び、キャッピング動作等のメンテナンスにおいて、対向部材移動機構96、プラテンモータ43、ポンプ54、ワイパ駆動モータ59、及び、昇降モータ60を制御する。
【0060】
次に、パージ動作の後にキャッピング動作が行われるメンテナンスの一例について、図9を参照しつつ、以下に説明する。なお、図9の動作フローの開始時における状態は、画像記録が行われた直後の状態である。即ち、図2(a)に示すように、対向部材80は第1の位置に配置されており、プラテン40は対向位置に配置されている。
【0061】
まず、制御部100が、パージ指令を受信する(S1)。メンテナンス制御部144は、プラテンモータ43を制御して、プラテン40を非対向位置に回転させる(S2)。その後、メンテナンス制御部144は、対向部材移動機構96を制御して、図2(b)に示すように、対向部材80を第2の位置に移動させる(S3)。
【0062】
次に、メンテナンス制御部144は、パージ動作を行うべく、ポンプ54を制御し、ヘッド10のすべての吐出口108から対向部材80にインクを排出させる(S4)。このようにパージ動作において排出されるインクは、画像記録時に用紙Pに接触することのない対向部材80に付着することになるので、排出されたインクにより用紙Pが汚れることはない。またさらに、パージ動作の際には、対向部材80が第2の位置に移動されており、吐出面10aと対向部材80との間隔が狭くされているので、排出されたインクが飛散することを防止することができる。なお、本実施形態におけるパージ動作は、ポンプ54が駆動され、カートリッジ内の所定量のインクがヘッド10に強制的に送液されて、吐出口108からインクが排出される。
【0063】
次に、メンテナンス制御部144は、ワイピング動作を行うべく、ワイパ駆動モータ59を制御して、図3(b)に示すように、対向面81に付着したインクをワイパ56aで払拭する(S5)。ワイパ56aで払拭されたインクは、対向部材80の周縁80a,80bから下方に移動する。このとき、上述したように、支持部材90に補助部材95が取り付けられているので、対向面81から下方に移動したインクの大部分は、対向部材80から垂れ落ちて廃液トレイ85に受容され、廃液タンクに排出されることになる。その結果、ワイピング動作後において、対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0064】
続けて、制御部100は、キャッピング指令を受信する(S6)。このとき、図2(b)に示すように、プラテン40は非対向位置にあり、対向部材80は第2の位置にある。メンテナンス制御部144は、対向部材移動機構96を制御して、図2(c)に示すように、対向部材80を当接位置に移動させる(S7)。その後、メンテナンス制御部144は、キャッピング動作を行うべく、昇降モータ60を制御して、可動体63を下降させ、キャップ61の先端61aを対向部材80に当接させる(S8)。これにより、吐出空間S1は、吐出面10a、対向部材80及びキャップ61により外部空間S2から隔離されることになる。これにより、吐出口108近傍のインクが蒸発して粘性が増加することを抑制できる。こうして、パージ動作後のキャッピング動作が完了する。なお、パージ動作及びキャッピング動作が単独で行われてもよい。ここで、支持部材90に補助部材95が取り付けられているので、対向面81に残存するインクが低減でき、キャップ61の弾性体62にインクが付着して汚れ、キャッピング機能が低下することを防止できる。
【0065】
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、支持部材90に設けられた補助部材95により、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭したとき、対向部材80の被支持面82と曲り部92の表面とで形成される隅部86(隅部空間E)に溜まるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する当該隅部86に溜まっているインクの量を低減できるので、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0066】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について、図10(a)を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における液体受け機構8においては、隅部空間Eを減少させる補助部材95が支持部材90に設けられていたが、第2実施形態の液体受け機構208においては、対向部材80の被支持面82の長手周縁80aに接続された補助部材195が設けられている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0067】
補助部材195は、第1実施形態の補助部材95と同様、金属(例えばSUS)等からなる直方体形状の部材である。補助部材195は、図10(a)に示すように、被支持面82の長手周縁80aに接続され、且つ対向部材80の対向面81と垂直な方向において対向面81から離隔する方向に延設されている。また、補助部材195の上面は、対向面81と同一面上にされている。
【0068】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の対向面81、及び補助部材195の上面を移動した後、補助部材195の副走査方向外側の側面に沿って、下方に移動することになる。即ち、対向面81に付着したインクを隅部86に溜めることなく、廃液トレイ85に受容させることができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する当該隅部86に溜まっているインクの量を低減できるので、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。なお、補助部材195の上面は、対向面81よりも下方に位置されていてもよい。
【0069】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について、図10(b)を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における液体受け機構8においては、隅部空間Eを減少させる補助部材95が支持部材90に設けられていたが、第3実施形態の液体受け機構308においては、支持部材90と対向部材80との間に、対向部材80よりも疎水性の高い疎水性部材295が介在されている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0070】
疎水性部材295は、ABS樹脂等の疎水性の高い材料からなり、図10(b)に示すように、主走査方向及び副走査方向に関して対向部材80と同じサイズを有している。また、疎水性部材295は対向面81に接している。
【0071】
支持部材90の平板部(平坦部)91は、疎水性部材295を支持する。また、支持部材90は、対向面81から被支持面82に向かう方向に見たときに、平板部91と曲り部(角部)92との境界93が対向部材及び疎水性部材295の内側に位置するようにされている。
【0072】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の周縁80a,80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。このとき、疎水性部材295の下面を伝って、疎水性部材295と対向部材80の曲り部92の表面とで形成される隅部286に向けて移動するインクの流れが生じるが、その一部のインクは、疎水性部材295の疎水性により隅部286に至る前に、疎水性部材295から廃液トレイ85に向けて垂れ落ちることになるため、隅部286に溜まるインクは少なくなる。また、この隅部286に溜まるインクは、疎水性部材295の疎水性により、この隅部286に溜まったインクが対向面81に移動することが抑制される。その結果として、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する当該隅部86に溜まっているインクの量を低減でき、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0073】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態について、図11を参照しつつ説明する。第4実施形態において上記第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における液体受け機構8においては、隅部空間Eを減少させる補助部材95が支持部材90に設けられていたが、第4実施形態の液体受け機構408においては、隅部空間Eに貯溜したインクを対向部材80の被支持面82から離れる方向に排出させる溝401が支持部材90に延設されている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0074】
本実施形態において、支持部材90の曲り部(角部)92の副走査方向外側の側面には、その上部から下端(曲り部92の対向面81から最も離隔した端部)まで延びる凹溝状の溝401が、主走査方向に関して等間隔に複数延設されている。この溝401は、図11(a)に示すように、隅部空間Eに接続されている。また。各溝401の深さは、溝401に接したインクを、毛細管現象により曲り部92の下端(溝401の下端)まで移動させ、且つ、廃液トレイ85に受容させることができる深さに形成されている。
【0075】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の周縁80a,80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。このとき、一部のインクは被支持面82を伝って、隅部86(隅部空間E)に移動し、当該隅部86に貯溜される。このように隅部86に貯溜されたインクは、毛細管現象により溝401内に入り込み、さらに溝401を伝って下方(被支持面82から離れる方向)に移動する。そして、溝401の下端において、廃液トレイ85に向けて垂れ落ちて排出されることになる。これにより、隅部86に貯溜されるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において、当該隅部86から対向面81に移動するインクの量を低減でき、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0076】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図12を参照しつつ説明する。第5実施形態において上記第1実施形態と異なる点は、第5実施形態における液体受け機構508においては、補助部材95と曲り部(角部)92との間に溝501が形成されるように補助部材95が支持部材90に対して取り付けられている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0077】
本実施形態においては、各補助部材95は、曲り部92との間に溝501が形成されるように、円筒状の固定具502を介して、支持部材90に固定されている。固定具502は、主走査方向に関して等間隔に複数配列されており、各固定具502は、その一端が補助部材95の鉛直方向に関する中間位置に接続され、その他端は曲り部92に接続されている。また、本実施形態においては、補助部材95の上面と、被支持面82との間には隙間が形成されている。
【0078】
溝501は、補助部材95と曲り部92とで形成された隙間であり、図12(a)に示すように隅部86に接続されており、且つ、被支持面82から離れる方向に延びている。この溝501の溝幅(補助部材95の副走査方向内側の側面と曲り部92との間隔)は、溝501に接したインクを、毛細管現象により溝501の下端まで移動させ、且つ、廃液トレイ85に受容させることができる溝幅にされている。
【0079】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の周縁80a,80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。このとき、大部分のインクは、補助部材95の副走査方向外側の側面を伝って廃液トレイ85に受容されることになるが、一部のインクは、補助部材95の上面と被支持面82との間の隙間を通って隅部86(隅部空間E)に貯溜されることになる。このように隅部86に貯溜されたインクは、毛細管現象により溝501を伝って下方(被支持面82から離れる方向)に移動する。そして、溝501の下端において、廃液トレイ85に向けて垂れ落ちて排出されることになる。これにより、隅部86に貯溜されるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において、当該隅部86から対向面81に移動するインクの量を低減でき、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、キャップ61の先端61aが昇降可能にされていたが、これに限定されない。例えば、キャップ61の先端61aが移動不能にヘッドホルダに固定され、キャップ61の先端61aの吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、対向部材80が当接位置に配置されたとき、キャップ61の先端61aと対向部材80が当接されるように構成されていればよい。
【0081】
また、上述の第1実施形態においては、補助部材95は、金属(例えばSUS)からなる部材であるが、隅部空間Eを減少させることができるものであるのなら、特にこれに限定されるものではなく、例えば、樹脂(例えばPOM樹脂やABS樹脂)等からなる部材でもよい。また、補助部材95が隅部空間Eの全空間を埋めるよう設けられていてもよい。また、上述の第1実施形態においては、補助部材95は支持部材90に設けられているが、対向部材80に設けられていてもよいし、支持部材90及び対向部材80の両方に設けられていてもよい。
【0082】
また、上述の各実施形態においては、支持部材90は、対向部材80の長手周縁80a各々に沿って延設された2つの曲り部(角部)92を有する構成にされているが、特にこれに限定されるものではなく、長手周縁80aの何れか一方に沿って延設された一つの曲り部(角部)のみ有する構成にされていてもよい。また、ワイパ56aの払拭方向下流側の短手周縁80bに沿って曲り部(角部)が構成されていてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態においては、メンテナンス制御部144は、排出動作としてパージ動作を行うようにされているが、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10のアクチュエータを駆動して、吐出口108からインクを排出させるフラッシング動作であってもよい。
【0084】
また、上述の実施形態においては、ワイピング動作として対向部材80の対向面81に付着したインクの払拭のみ行われる構成にされているが、吐出面10aに付着したインクを払拭するワイパを設けて、吐出面10aに付着したインクの払拭も行われるようにされていてもよい。この場合、吐出面10aの払拭時に、インクが対向部材80に移動することを考慮して、吐出面10aに付着したインクの払拭を行った後、対向面81に付着したインクの払拭が行われるように構成されていることが好ましい。
【0085】
また、上述の実施形態においては、支持部材90が平板部91及び曲り部92を有する板部材により構成されているが、支持部材90は板部材により構成されていなくてもよい。例えば、削り出し加工等により成形された平坦部と角部を有する金属のブロックにより支持部材90を構成してもよいし、樹脂材料により成形して構成してもよい。
【0086】
また、隅部空間Eに貯留されるインクを被支持面82から離れる方向に排出する溝は、溝の少なくとも一端が隅部空間Eに接続され、且つ、被支持面82から離れる方向に延設されており、隅部空間Eに貯溜されたインクを、毛細管現象により被支持面82から離れる方向に移動させることができるものであれば、上述の第4及び第5実施形態に限られるものではない。
【0087】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
10 ヘッド(液体吐出ヘッド)
80 対向部材
81 対向面
82 被支持面
90 支持部材
91 平板部(平坦部)
92 曲り部(角部)
95,195 補助部材
295 疎水性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、吐出面と対向し、吐出口から吐出された液体が付着する対向面を有する対向部材と、対向面に付着した液体を払拭するワイパとを備えた液体吐出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−232897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対向面に付着した液体の拭き取り性の向上を目的として、対向部材をガラス板等の硬質材料で形成し、この対向部材の対向面とは反対側の被支持面を、支持部材により支持する場合がある。本発明者は、鋭意研究した結果、この場合において、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したときに、対向面に付着していた液体の一部が、対向部材の被支持面と支持部材の角部とで形成される隅部に移動して溜まり、払拭が終了した後に、当該隅部に溜まっている液体が対向面に移動して残存してしまうという、知見を新たに得た。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することが可能な液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材とを備えた液体吐出装置であって、前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間を減少させる補助部材が、前記対向部材及び前記支持部材の少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、対向部材及び支持部材の少なくともいずれかに設けられた補助部材により、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、対向部材の被支持面と支持部材の角部の表面とで形成される隅部に溜まる液体の量を低減することができる。その結果、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において対向面に移動する当該隅部に溜まっている液体の量を低減できるので、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【0008】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲った角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材とを備えた液体吐出装置であって、前記対向部材の前記被支持面の周縁に接続され、且つ前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する方向に延設された補助部材を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、補助部材により、対向面に付着した液体を対向部材の被支持面と支持部材の角部とで形成される隅部に溜めることなく吐出面とは離隔する方向に移動させることができるので、対向面に残存する液体を低減することができる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置において、前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁に沿って延設されていてもよい。上記の構成によれば、平坦部が対向部材の被支持面を広範囲にわたり支持することができるので、対向部材の対向面の平面度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の液体吐出装置において、前記払拭方向は前記対向面の第1端部から第2端部に向かう方向であり、前記対向部材の前記被支持面の周縁は前記払拭方向及び前記払拭方向と直交する方向に延在しており、前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁のうち、前記払拭方向に延在する周縁に沿って延設されていてもよい。
【0012】
また、本発明の液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドは記録媒体に向けて液体を吐出して記録媒体に画像を記録するものであり、画像記録時に、前記吐出面と対向し、且つ、前記吐出面との間隔が前記吐出面と前記対向部材との間隔よりも小さい間隔となる対向位置に配置され、記録媒体を支持するプラテンと、前記プラテンを、前記対向位置と、前記吐出面と対向しない非対向位置との間において移動させるプラテン移動手段と、前記液体吐出ヘッド内の液体を前記吐出口から排出させる排出動作を行う液体排出手段と、前記支持部材を移動させることにより、前記対向部材を、記録時に配置される第1の位置、及び前記第1の位置と比べて前記吐出面との間隔が狭い第2の位置に移動させることが可能な対向部材移動手段とを更に備え、前記液体排出手段は、前記プラテン移動手段により前記プラテンが前記非対向位置に移動され、且つ、前記対向部材移動手段により前記対向部材が前記第2の位置に配置されている状態のときに、前記排出動作を行ってもよい。上記の構成によれば、液体排出手段の排出動作により、液体吐出ヘッドの吐出特性の維持・回復を図ることができる。また、液体排出手段の排出動作において吐出口から排出される液体は、画像記録時に記録媒体に接触することのない対向部材に付着することになるので、排出された液体により記録媒体が汚れることはない。またさらに、液体排出手段が排出動作を行う際には、吐出面と対向部材との間隔が狭くされているので、排出された液体が飛散することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドの周囲に配設され、前記対向部材に当接した際に、前記吐出面及び前記対向部材とともに、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から隔離する環状のキャップ手段とを更に備え、前記対向部材移動手段は、前記キャップ部材と前記対向部材とが当接可能となる当接位置に対向部材を移動させることが可能にされていてもよい。上記の構成によれば、吐出空間を外部空間から隔離することができるので、吐出口近傍の液体が蒸発して粘性が増加することを抑制できる。
【0014】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面と接し、前記対向部材よりも疎水性が高い疎水性部材と、前記疎水性部材を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記対向部材とは離隔する方向に曲った角部とを有する支持部材であって、前記対向面から前記被支持面に向かう方向に見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材及び前記疎水性部材の内側に位置する支持部材とを備えていることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、隅部に液体が溜まったとしても、対向部材と支持部材との間に介在された疎水性部材の疎水性により、隅部に溜まった液体が対向面に移動することを抑制することができる。その結果、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【0016】
また、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間に貯留される液体を前記被支持面から離れる方向に排出する溝が設けられ、前記溝は、少なくともその一端が前記空間に接続され、且つ、前記被支持面から離れる方向に延設されていることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭したとき、隅部に液体が貯溜されたとしても、当該隅部に貯溜された液体は、溝を伝って被支持面から離れる方向に排出される。これにより、隅部に貯溜される液体の量を低減することができる。その結果、隅部から対向面に移動する液体の量を低減でき、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ワイパで対向部材の対向面に付着した液体を払拭した後において、当該対向面に残存する液体を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】プラテン、及び液体受け機構の動作を説明するための動作状況図である。
【図3】(a)は画像記録時のワイパユニット、及び液体受け機構の動作状況図であり、(b)はワイピング動作時のワイパユニット、及び液体受け機構の動作状況図であり、(c)は対向部材の対向面と垂直な方向から見たときの、ワイピング動作時におけるワイパユニット、及び液体受け機構の動作状況図である。
【図4】図1のプリンタの液体吐出ヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図5】(a)は図4の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図であり、(b)は図5(a)のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図6】図2(c)の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
【図7】液体受け機構の補助部材を説明するための説明図である。
【図8】図1に示す制御部の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示す制御部のメンテナンスに係る動作フロー図である。
【図10】(a)は本発明の第2実施形態における液体受け機構の説明図であり、(b)は本発明の第3実施形態における液体受け機構の説明図である。
【図11】(a)は本発明の第4実施形態における液体受け機構の説明図であり、(b)は図11(a)のA視図である。
【図12】(a)は本発明の第5実施形態における液体受け機構の説明図であり、(b)は図12(a)のB視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(第1実施形態)
先ず、図1を参照し、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0022】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部35が設けられている。筐体1aにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部35に向けて、図1に示す太矢印に沿って、記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0023】
筐体1aは、ヘッド(液体吐出ヘッド)10、用紙Pを搬送する搬送ユニット30、画像記録時にヘッド10の吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)において用紙Pを支持するプラテン40、用紙Pをガイドするガイドユニット25、ヘッド10に供給するブラックインクを貯留するカートリッジ(図示せず)、ワイパユニット55(図3参照)、メンテナンス時にヘッド10から吐出されたインクを受ける液体受け機構8、対向部材移動機構96(図8参照)、及び、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部100等を収容している。なお、カートリッジは、ヘッド10にチューブ(不図示)及びポンプ54(図8参照)を介して接続されている。
【0024】
ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド10の下面は、多数の吐出口108(図5参照)が開口した吐出面10aである。画像記録に際して、吐出口108からブラックのインクが吐出される。また、ヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aとプラテン40の上面との間に記録に適した所定の間隙が形成されるようヘッド10を保持している。ヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0025】
ヘッド10の周囲には環状のキャップ(キャップ手段)61が配設されている。キャップ61はヘッドホルダ3に取り付けられており、平面視でヘッド10の外周を取り囲む。キャップ61は、図6に示すように、ヘッドホルダ3に支持された弾性体62、及び、昇降可能な可動体63を含む。キャップ61の構成については後に詳述する。
【0026】
搬送ユニット30は、搬送方向に関するプラテン40の両側に配置された搬送ニップローラ31、32等を有する。搬送ニップローラ31、32は、用紙Pを上下方向に挟持するように対向配置された一対のローラ部材をそれぞれ有しており、挟持した用紙Pが搬送方向に搬送されるように用紙Pに搬送力を付与する。用紙搬送方向上流側に配置された搬送ニップローラ31によって搬送力を付与された用紙Pは、プラテン40の上面に支持されつつ用紙搬送方向に搬送される。プラテン40の上面を通過した用紙Pは、搬送ニップローラ32によって搬送力を付与され、プラテン40からさらに用紙搬送方向下流側へと搬送される。
【0027】
プラテン40は、一対の扉部材41,42からなり、平面視で吐出面10aを挟み且つ吐出面10aに平行な一対の回転軸40aに開閉可能に支持されている。プラテン40は、プラテンモータ43(図8参照)による回転軸40aを中心とする回転によって、水平面に平行であり吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)、及び吐出面10aと対向しないで垂れ下がる非対向位置(図2(b),(c)参照)とを選択的に取り得る。プラテン40は、メンテナンス時は非対向位置を取り、画像記録時は対向位置を取る。プラテン40が対向位置に配置されたときには、吐出面とプラテン40との間隔は、吐出面10aと対向部材80との間隔よりも小さい間隔となる。対向位置に配置されたときにおいて、プラテン40における吐出面10aに対して対向する上面は、用紙Pを支持する支持面であり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面に、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン40は、樹脂により構成されている。
【0028】
ガイドユニット25は、搬送ユニット30を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、3つのガイド26a,26b,26c及び二対の送りローラ27を有する。当該上流側ガイド部は、給紙ユニット1cと搬送ユニット30とを繋ぐ。下流側ガイド部は、3つのガイド28a,28b,28c及び三対の送りローラ29を有する。当該下流側ガイド部は、搬送ユニット30と排紙部35とを繋ぐ。
【0029】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ(収容部)23及び給紙ローラ24を有する。このうち給紙トレイ23が筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、用紙Pを収容可能である。給紙ローラ24は、制御部100の制御により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット30による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、図1において水平方向に平行な方向である。また、主走査方向とは、図1において水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0030】
制御部100は、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいて、画像記録を行う。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。制御部100の搬送動作によって給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、ガイド26a,26b,26cによりガイドされ、且つ送りローラ対27によって挟持されつつ搬送ユニット30へと送られる。搬送ユニット30は、用紙Pをヘッド10とプラテン40との間に送り出す。搬送ユニット30によりヘッド10とプラテン40との間へ送られた用紙Pは、ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出口108からインクが吐出されて用紙P上にモノクロ画像が形成される。吐出口108からのインク吐出動作は、用紙センサ37からの検出信号に基づき、制御部100による制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド28a,28b,28cによりガイドされ且つ送りローラ対29によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口38から排紙部35へと排出される。
【0031】
また、制御部100は、ヘッド10のインク吐出特性の維持・回復のためのメンテナンスを行う。メンテナンスとしては、インクを吐出口108(図5参照)から排出させる排出動作、ワイピング動作、キャッピング動作等が含まれる。排出動作は、ポンプ54(図9参照)によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口108からインクを強制的に排出するパージ動作である。
【0032】
ワイピング動作は、ワイパユニット55により、液体受け機構8の後述の対向部材80の対向面81に付着した液体を払拭する動作であり、パージ動作後に行われる。
【0033】
キャッピング動作では、図6に示すように、キャップ61、吐出面10a、及び対向部材80により吐出空間S1が外部空間S2から隔離される。これにより、ヘッド10の吐出口108内のインクの乾燥が抑制される。なお、キャッピング動作は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
【0034】
液体受け機構8は、吐出面10aと対向する対向部材80、廃液トレイ85、対向部材80を支持する支持部材90、及び、補助部材95を含む。
【0035】
対向部材80は、図2、及び図3に示すように、長手方向を主走査方向、短手方向を副走査方向とする矩形状の平板部材であり、吐出面10aと対向する対向面81と、対向面81とは反対側の被支持面82とを有している。図3(c)に示すように、対向部材80の長手周縁80aは、主走査方向(ワイパユニット55の後述のワイパ56aの払拭方向)に沿って延在しており、対向部材80の短手周縁80bは副走査方向(ワイパユニット55の後述のワイパ56aの払拭方向と直交する方向)に沿って延在している。この対向部材80は、ガラス等の硬質材料から構成されている。なお、対向部材80は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有しており、パージ動作時において全吐出口108から排出されたインクを対向面81で受ける。
【0036】
廃液トレイ85は、対向部材80及び支持部材90の下方に配置されており、廃液タンク(図示せず)に連通している。また、廃液トレイ85は、主走査方向及び副走査方向に関して対向面81より一回り大きなサイズを有しており、ワイピング動作時において、対向部材80から垂れ落ちたインクを受容する。
【0037】
支持部材90は、金属の平板を曲げ加工により断面視逆U字状に湾曲させたものであり、対向部材80の被支持面82を支持する平板部(平坦部)91と、平板部91から連続し、吐出面10aとは離隔する方向に曲った二つの曲り部(角部)92とを有する。曲り部92は、副走査方向外方に凸に湾曲されている。支持部材90は、このように曲り部92を有することで、支持部材90全体の強度が向上されている。なお、曲り部92については、湾曲ではなく多角形に曲げ加工することで形成されていてもよい。
【0038】
また、支持部材90は、図2、及び図3(c)に示すように、対向部材80の対向面81と垂直な方向から見たときに、平板部91と曲り部92との境界93が対向部材80の内側に位置するように構成されている。また、2つの曲り部92は、対向部材80の被支持面82の長手周縁80aそれぞれに沿って延設されている。これにより、支持部材90の平板部91が対向部材80の被支持面82を広範囲にわたり支持することができるので、対向面81の平面度を向上させることができる。補助部材95については後述する。
【0039】
ワイパユニット55は、図3に示すように、ワイパ56a、これらを支持する基部56b、及び、ワイパ移動機構57を有している。ワイパ56aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、対向部材80の副走査方向幅より若干長い。基部56bは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、長手方向両端に円柱状の孔が形成されている。孔は、基部56bを主走査方向に貫通し、一方の孔の内面には雌ねじが形成されている。ワイパ移動機構57は、副走査方向に並んだ2つのガイド58と、2つのガイド58の一方に回転力を付与するワイパ駆動モータ59(図8参照)とから構成される。ガイド58は、ヘッド10よりも用紙搬送方向上流側において主査方向に沿って延設された丸棒であり、ワイパ駆動モータ59により回転力を付与されるガイド58の外周面には雄ネジが形成され、ねじ同士が螺合する関係で基部56bの孔に貫挿されている。他方のガイド58については外周面には雄ネジが形成されていない丸棒であり、内面には雌ねじが形成されていない基部56cの孔に貫挿されている。ワイパ駆動モータ59の正逆回転によって、基部56bがガイド58に沿って往復移動する。外周面に雄ネジが形成されていない他方のガイド58により基部56c回転止めが図られている。ワイピング動作においては、基部56bは、対向部材80が第2の位置(後述する)に移動するのを待った後、図中右方に移動される。これにより、ワイパ56aが対向面81に接触しながら、対向面81の主走査方向に関する図中左端部(第1端部)から図中右端部(第2端部)に向けて移動する。その結果、対向面81に付着したインクが払拭される。その後、基部56bは、対向部材80が第1の位置(後述する)に移動するのを待って、左方の待機位置に戻される。
【0040】
対向部材移動機構96は、制御部100による制御の下、対向部材80の昇降動作を行う。具体的には、対向部材移動機構96は、支持部材90を鉛直方向に昇降させることで、対向部材80を、第1の位置、第2の位置、及び当接位置に選択的に移動させる。
【0041】
ここで、第1の位置とは、図2(a)に示すように、画像記録時において対向部材80が配置される位置である。また、第2の位置とは、図2(b)に示すように、第1の位置よりも上方の位置であり、第1の位置と比べて吐出面10aとの間隔が狭い位置である。排出動作及びワイピング動作は、対向部材80が第2の位置に配置されているときに行われる。なお、対向部材80が第2の位置に配置されているときには、ヘッド10と対向部材80との間の空間を、ワイパユニット55が移動可能である(図3(b)参照)。
【0042】
また、当接位置とは、図2(c)に示すように、第2の位置よりも上方の位置である。対向部材80がこの当接位置に配置されている際において、キャップ61の可動体63を下降させると、当該キャップ61の先端61aと対向部材80とが当接されて、吐出空間S1を外部空間S2から隔離することができる(図8参照)
【0043】
次に、図4、及び図5を参照しつつ、ヘッド10について詳細に説明する。図5(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。ヘッド10は、図4に示すように、流路ユニット9の上面に8つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット9の下面が、吐出面10aである。流路ユニット9の内部にはインク流路が形成され、アクチュエータユニット21はこの流路内のインクに吐出エネルギーを付与する。
【0044】
流路ユニット9は、図5(b)に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図4に示すように、リザーバユニットに連通する計18個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図4〜図5に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。吐出面10aに形成された多数の吐出口108は、マトリクス状に配置されており、主走査方向(一方向)に関してこの方向の解像度である600dpiの間隔で配列されている。
【0045】
図4〜図5に示すように、リザーバユニットからインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る。
【0046】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図4に示すように、8つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
【0047】
次に、図4及び図6を参照し、ヘッドホルダ3、及びキャップ61の構成について説明する。ヘッドホルダ3は、金属等からなる枠状フレームであり、ヘッド10の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ3には、キャップ61が取り付けられている。ヘッドホルダ3とヘッド10との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ3とキャップ61との当接部は、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0048】
キャップ61の弾性体62は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド10を囲んでいる。弾性体62は、図6に示すように、基部62x、基部62xの下面から突出した突出部62a、ヘッドホルダ3に固定された固定部62c、及び、基部62xと固定部62cとを接続する接続部62dを含む。このうち、突出部62aは、断面が三角形である。また、固定部62cは断面がT字状である。固定部62cの上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ3に固定されている。接続部62dは、固定部62cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部62xの下側側面に接続している。接続部62dは、可動体63の昇降に伴って変形する。基部62xの上面には、凹部62bが形成されており、可動体63の下端と嵌合している。
【0049】
可動体63は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド10の外周を取り囲んでいる。可動体63は、弾性体62に支持されて、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体63は、複数のギア64と接続されている。制御部100による制御の下、昇降モータ60(図8参照)が駆動されると、ギア64が回転して可動体63が昇降する。このとき、基部62xも、共に昇降する。これにより、突出部62aの先端61aと吐出面10aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0050】
突出部62aは、対向部材80が当接位置(図2(c)参照)に配置されているときにおいて、可動体63の昇降に伴って、先端61aが対向部材80の対向面81に当接する当接位置(図6に示す位置)と、対向部材80の対向面81から離隔した離隔位置(図2(c)に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が、外部空間S2に対して隔離された封止状態となっている。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された開放状態となっている。
【0051】
次に、図7を参照して、液体受け機構8の補助部材95について説明する。補助部材95について説明するにあたり、まず、図7(a)に示すように、液体受け機構8が補助部材95を有していない場合における、ワイピング動作時のインクの流れについて説明する。
【0052】
制御部100の制御の下、ワイパ駆動モータ59が駆動されることでワイピング動作が開始されると、ワイパ56aが対向部材80の対向面81に接触しながら払拭方向(図3参照)に移動して、対向面81に付着したインクをワイパ56aにより掻き取る。掻き取られたインクは、ワイパ56aとともに払拭方向に移動して、対向部材80の払拭方向下流側の短手周縁80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。また、このワイパ56aの払拭方向の移動に際して、ワイパ56aの中央部からワイパ56aの長手方向のそれぞれの両端に向かうD1方向,D2方向にインクの流れが生じる。従って、ワイパ56aにより掻き取られたインクの一部は、対向部材80長手周縁80aから廃液トレイ85に向けて下方に移動することになる。インクが長手周縁80aから廃液トレイ85に向けて下方に移動する際に、その一部のインクは対向部材80の被支持面82を伝って、被支持面82と曲り部92の表面とで形成される隅部86に溜まる。このように隅部86にインクが溜まると、図7(b)に示すように、経時により被支持面82を伝って対向面81に移動する現象が生じる。その結果、ワイピング動作を行ったにも関わらず、対向面81にインクが残存する問題が生じる。対向面81にインクが残存すると、その後にキャッピング動作をしたときにキャップ61の弾性体62にインクが付着して汚れ、キャッピング機能低下につながる。
【0053】
そこで、本実施形態においては、金属(例えばSUS)からなる板状の補助部材95を支持部材90に設けることにより、ワイピング動作後に対向面81に残存するインクを低減する対策を採る。
【0054】
ここで、図7(c)に示すように、被支持面82の長手周縁80aから対向部材80の対向面81と垂直な方向において対向面81から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、曲り部92の対向面81から最も離隔した端部92aから被支持面82と平行な方向に延ばした第2仮想面と、対向部材80の被支持面82と、曲り部92の表面とで画成される空間を隅部空間Eとする。補助部材95は、図7(d)に示すように、この隅部空間Eを減少させて当該隅部空間E(隅部86)に溜まるインクの量が低減するよう、支持部材90の曲り部92に取り付けられている。なお、補助部材95の上面は被支持面82に当接され、補助部材95の副走査方向外側の側面は第1仮想面と一致されている。
【0055】
上記のように、支持部材90に対して隅部空間Eを減少させるよう補助部材95が取り付けられているので、ワイピング動作時において、ワイパ56aにより掻き取られたインクが、長手周縁80aから廃液トレイ85に向けて移動したとしても、補助部材95により隅部86(隅部空間E)に溜まるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する隅部86に溜まっているインクの量を低減できるので、対向面81に残存するインクの量を低減することができる。なお、補助部材95の上面は被支持面82に当接されていなくてもよいが、被支持面82に当接される構成の方が、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に残存するインクの量をより低減することができるので好ましい。同様に、補助部材95の副走査方向外側の側面は第1仮想面と一致されていなくてもよいが、側面は第1仮想面と一致されている構成の方が、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に残存するインクの量をより低減することができるので好ましい。
【0056】
次に、図8を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御部100は、搬送制御部141、画像データ記憶部142、ヘッド制御部143、及びメンテナンス制御部144を有している。
【0057】
搬送制御部141は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙ユニット1c、ガイドユニット25、及び、搬送ユニット30の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの記録指令に含まれる画像データを記憶する。
【0058】
ヘッド制御部143は、画像記録時において、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、搬送される用紙Pに向けてインクが吐出されるようヘッド10を制御する。
【0059】
メンテナンス制御部144は、排出動作(パージ動作)、ワイピング動作、及び、キャッピング動作等のメンテナンスにおいて、対向部材移動機構96、プラテンモータ43、ポンプ54、ワイパ駆動モータ59、及び、昇降モータ60を制御する。
【0060】
次に、パージ動作の後にキャッピング動作が行われるメンテナンスの一例について、図9を参照しつつ、以下に説明する。なお、図9の動作フローの開始時における状態は、画像記録が行われた直後の状態である。即ち、図2(a)に示すように、対向部材80は第1の位置に配置されており、プラテン40は対向位置に配置されている。
【0061】
まず、制御部100が、パージ指令を受信する(S1)。メンテナンス制御部144は、プラテンモータ43を制御して、プラテン40を非対向位置に回転させる(S2)。その後、メンテナンス制御部144は、対向部材移動機構96を制御して、図2(b)に示すように、対向部材80を第2の位置に移動させる(S3)。
【0062】
次に、メンテナンス制御部144は、パージ動作を行うべく、ポンプ54を制御し、ヘッド10のすべての吐出口108から対向部材80にインクを排出させる(S4)。このようにパージ動作において排出されるインクは、画像記録時に用紙Pに接触することのない対向部材80に付着することになるので、排出されたインクにより用紙Pが汚れることはない。またさらに、パージ動作の際には、対向部材80が第2の位置に移動されており、吐出面10aと対向部材80との間隔が狭くされているので、排出されたインクが飛散することを防止することができる。なお、本実施形態におけるパージ動作は、ポンプ54が駆動され、カートリッジ内の所定量のインクがヘッド10に強制的に送液されて、吐出口108からインクが排出される。
【0063】
次に、メンテナンス制御部144は、ワイピング動作を行うべく、ワイパ駆動モータ59を制御して、図3(b)に示すように、対向面81に付着したインクをワイパ56aで払拭する(S5)。ワイパ56aで払拭されたインクは、対向部材80の周縁80a,80bから下方に移動する。このとき、上述したように、支持部材90に補助部材95が取り付けられているので、対向面81から下方に移動したインクの大部分は、対向部材80から垂れ落ちて廃液トレイ85に受容され、廃液タンクに排出されることになる。その結果、ワイピング動作後において、対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0064】
続けて、制御部100は、キャッピング指令を受信する(S6)。このとき、図2(b)に示すように、プラテン40は非対向位置にあり、対向部材80は第2の位置にある。メンテナンス制御部144は、対向部材移動機構96を制御して、図2(c)に示すように、対向部材80を当接位置に移動させる(S7)。その後、メンテナンス制御部144は、キャッピング動作を行うべく、昇降モータ60を制御して、可動体63を下降させ、キャップ61の先端61aを対向部材80に当接させる(S8)。これにより、吐出空間S1は、吐出面10a、対向部材80及びキャップ61により外部空間S2から隔離されることになる。これにより、吐出口108近傍のインクが蒸発して粘性が増加することを抑制できる。こうして、パージ動作後のキャッピング動作が完了する。なお、パージ動作及びキャッピング動作が単独で行われてもよい。ここで、支持部材90に補助部材95が取り付けられているので、対向面81に残存するインクが低減でき、キャップ61の弾性体62にインクが付着して汚れ、キャッピング機能が低下することを防止できる。
【0065】
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、支持部材90に設けられた補助部材95により、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭したとき、対向部材80の被支持面82と曲り部92の表面とで形成される隅部86(隅部空間E)に溜まるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する当該隅部86に溜まっているインクの量を低減できるので、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0066】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について、図10(a)を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における液体受け機構8においては、隅部空間Eを減少させる補助部材95が支持部材90に設けられていたが、第2実施形態の液体受け機構208においては、対向部材80の被支持面82の長手周縁80aに接続された補助部材195が設けられている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0067】
補助部材195は、第1実施形態の補助部材95と同様、金属(例えばSUS)等からなる直方体形状の部材である。補助部材195は、図10(a)に示すように、被支持面82の長手周縁80aに接続され、且つ対向部材80の対向面81と垂直な方向において対向面81から離隔する方向に延設されている。また、補助部材195の上面は、対向面81と同一面上にされている。
【0068】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の対向面81、及び補助部材195の上面を移動した後、補助部材195の副走査方向外側の側面に沿って、下方に移動することになる。即ち、対向面81に付着したインクを隅部86に溜めることなく、廃液トレイ85に受容させることができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する当該隅部86に溜まっているインクの量を低減できるので、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。なお、補助部材195の上面は、対向面81よりも下方に位置されていてもよい。
【0069】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について、図10(b)を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における液体受け機構8においては、隅部空間Eを減少させる補助部材95が支持部材90に設けられていたが、第3実施形態の液体受け機構308においては、支持部材90と対向部材80との間に、対向部材80よりも疎水性の高い疎水性部材295が介在されている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0070】
疎水性部材295は、ABS樹脂等の疎水性の高い材料からなり、図10(b)に示すように、主走査方向及び副走査方向に関して対向部材80と同じサイズを有している。また、疎水性部材295は対向面81に接している。
【0071】
支持部材90の平板部(平坦部)91は、疎水性部材295を支持する。また、支持部材90は、対向面81から被支持面82に向かう方向に見たときに、平板部91と曲り部(角部)92との境界93が対向部材及び疎水性部材295の内側に位置するようにされている。
【0072】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の周縁80a,80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。このとき、疎水性部材295の下面を伝って、疎水性部材295と対向部材80の曲り部92の表面とで形成される隅部286に向けて移動するインクの流れが生じるが、その一部のインクは、疎水性部材295の疎水性により隅部286に至る前に、疎水性部材295から廃液トレイ85に向けて垂れ落ちることになるため、隅部286に溜まるインクは少なくなる。また、この隅部286に溜まるインクは、疎水性部材295の疎水性により、この隅部286に溜まったインクが対向面81に移動することが抑制される。その結果として、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において対向面81に移動する当該隅部86に溜まっているインクの量を低減でき、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0073】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態について、図11を参照しつつ説明する。第4実施形態において上記第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における液体受け機構8においては、隅部空間Eを減少させる補助部材95が支持部材90に設けられていたが、第4実施形態の液体受け機構408においては、隅部空間Eに貯溜したインクを対向部材80の被支持面82から離れる方向に排出させる溝401が支持部材90に延設されている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0074】
本実施形態において、支持部材90の曲り部(角部)92の副走査方向外側の側面には、その上部から下端(曲り部92の対向面81から最も離隔した端部)まで延びる凹溝状の溝401が、主走査方向に関して等間隔に複数延設されている。この溝401は、図11(a)に示すように、隅部空間Eに接続されている。また。各溝401の深さは、溝401に接したインクを、毛細管現象により曲り部92の下端(溝401の下端)まで移動させ、且つ、廃液トレイ85に受容させることができる深さに形成されている。
【0075】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の周縁80a,80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。このとき、一部のインクは被支持面82を伝って、隅部86(隅部空間E)に移動し、当該隅部86に貯溜される。このように隅部86に貯溜されたインクは、毛細管現象により溝401内に入り込み、さらに溝401を伝って下方(被支持面82から離れる方向)に移動する。そして、溝401の下端において、廃液トレイ85に向けて垂れ落ちて排出されることになる。これにより、隅部86に貯溜されるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において、当該隅部86から対向面81に移動するインクの量を低減でき、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0076】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図12を参照しつつ説明する。第5実施形態において上記第1実施形態と異なる点は、第5実施形態における液体受け機構508においては、補助部材95と曲り部(角部)92との間に溝501が形成されるように補助部材95が支持部材90に対して取り付けられている点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0077】
本実施形態においては、各補助部材95は、曲り部92との間に溝501が形成されるように、円筒状の固定具502を介して、支持部材90に固定されている。固定具502は、主走査方向に関して等間隔に複数配列されており、各固定具502は、その一端が補助部材95の鉛直方向に関する中間位置に接続され、その他端は曲り部92に接続されている。また、本実施形態においては、補助部材95の上面と、被支持面82との間には隙間が形成されている。
【0078】
溝501は、補助部材95と曲り部92とで形成された隙間であり、図12(a)に示すように隅部86に接続されており、且つ、被支持面82から離れる方向に延びている。この溝501の溝幅(補助部材95の副走査方向内側の側面と曲り部92との間隔)は、溝501に接したインクを、毛細管現象により溝501の下端まで移動させ、且つ、廃液トレイ85に受容させることができる溝幅にされている。
【0079】
この構成において、メンテナンス制御部144によりワイピング動作を実行されると、ワイパ56aにより掻き取られて、D1方向,D2方向に流れるインクは、対向部材80の周縁80a,80bから廃液トレイ85に向けて下方に移動する。このとき、大部分のインクは、補助部材95の副走査方向外側の側面を伝って廃液トレイ85に受容されることになるが、一部のインクは、補助部材95の上面と被支持面82との間の隙間を通って隅部86(隅部空間E)に貯溜されることになる。このように隅部86に貯溜されたインクは、毛細管現象により溝501を伝って下方(被支持面82から離れる方向)に移動する。そして、溝501の下端において、廃液トレイ85に向けて垂れ落ちて排出されることになる。これにより、隅部86に貯溜されるインクの量を低減することができる。その結果、ワイパ56aで対向部材80の対向面81に付着したインクを払拭した後において、当該隅部86から対向面81に移動するインクの量を低減でき、当該対向面81に残存するインクを低減することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、キャップ61の先端61aが昇降可能にされていたが、これに限定されない。例えば、キャップ61の先端61aが移動不能にヘッドホルダに固定され、キャップ61の先端61aの吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、対向部材80が当接位置に配置されたとき、キャップ61の先端61aと対向部材80が当接されるように構成されていればよい。
【0081】
また、上述の第1実施形態においては、補助部材95は、金属(例えばSUS)からなる部材であるが、隅部空間Eを減少させることができるものであるのなら、特にこれに限定されるものではなく、例えば、樹脂(例えばPOM樹脂やABS樹脂)等からなる部材でもよい。また、補助部材95が隅部空間Eの全空間を埋めるよう設けられていてもよい。また、上述の第1実施形態においては、補助部材95は支持部材90に設けられているが、対向部材80に設けられていてもよいし、支持部材90及び対向部材80の両方に設けられていてもよい。
【0082】
また、上述の各実施形態においては、支持部材90は、対向部材80の長手周縁80a各々に沿って延設された2つの曲り部(角部)92を有する構成にされているが、特にこれに限定されるものではなく、長手周縁80aの何れか一方に沿って延設された一つの曲り部(角部)のみ有する構成にされていてもよい。また、ワイパ56aの払拭方向下流側の短手周縁80bに沿って曲り部(角部)が構成されていてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態においては、メンテナンス制御部144は、排出動作としてパージ動作を行うようにされているが、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10のアクチュエータを駆動して、吐出口108からインクを排出させるフラッシング動作であってもよい。
【0084】
また、上述の実施形態においては、ワイピング動作として対向部材80の対向面81に付着したインクの払拭のみ行われる構成にされているが、吐出面10aに付着したインクを払拭するワイパを設けて、吐出面10aに付着したインクの払拭も行われるようにされていてもよい。この場合、吐出面10aの払拭時に、インクが対向部材80に移動することを考慮して、吐出面10aに付着したインクの払拭を行った後、対向面81に付着したインクの払拭が行われるように構成されていることが好ましい。
【0085】
また、上述の実施形態においては、支持部材90が平板部91及び曲り部92を有する板部材により構成されているが、支持部材90は板部材により構成されていなくてもよい。例えば、削り出し加工等により成形された平坦部と角部を有する金属のブロックにより支持部材90を構成してもよいし、樹脂材料により成形して構成してもよい。
【0086】
また、隅部空間Eに貯留されるインクを被支持面82から離れる方向に排出する溝は、溝の少なくとも一端が隅部空間Eに接続され、且つ、被支持面82から離れる方向に延設されており、隅部空間Eに貯溜されたインクを、毛細管現象により被支持面82から離れる方向に移動させることができるものであれば、上述の第4及び第5実施形態に限られるものではない。
【0087】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
10 ヘッド(液体吐出ヘッド)
80 対向部材
81 対向面
82 被支持面
90 支持部材
91 平板部(平坦部)
92 曲り部(角部)
95,195 補助部材
295 疎水性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、
前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間を減少させる補助部材が、前記対向部材及び前記支持部材の少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲った角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、
前記対向部材の前記被支持面の周縁に接続され、且つ前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する方向に延設された補助部材を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁に沿って延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記払拭方向は前記対向面の第1端部から第2端部に向かう方向であり、
前記対向部材の前記被支持面の周縁は前記払拭方向及び前記払拭方向と直交する方向に延在しており、
前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁のうち、前記払拭方向に延在する周縁に沿って延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは記録媒体に向けて液体を吐出して記録媒体に画像を記録するものであり、
画像記録時に、前記吐出面と対向し、且つ、前記吐出面との間隔が前記吐出面と前記対向部材との間隔よりも小さい間隔となる対向位置に配置され、記録媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンを、前記対向位置と、前記吐出面と対向しない非対向位置との間において移動させるプラテン移動手段と、
前記液体吐出ヘッド内の液体を前記吐出口から排出させる排出動作を行う液体排出手段と、
前記支持部材を移動させることにより、前記対向部材を、記録時に配置される第1の位置、及び前記第1の位置と比べて前記吐出面との間隔が狭い第2の位置に移動させることが可能な対向部材移動手段と
を更に備え、
前記液体排出手段は、前記プラテン移動手段により前記プラテンが前記非対向位置に移動され、且つ、前記対向部材移動手段により前記対向部材が前記第2の位置に配置されている状態のときに、前記排出動作を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドの周囲に配設され、前記対向部材に当接した際に、前記吐出面及び前記対向部材とともに、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から隔離する環状のキャップ手段と
を更に備え、
前記対向部材移動手段は、前記キャップ部材と前記対向部材とが当接可能となる当接位置に対向部材を移動させることが可能にされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面と接し、前記対向部材よりも疎水性が高い疎水性部材と、
前記疎水性部材を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記対向部材とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向面から前記被支持面に向かう方向に見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材及び前記疎水性部材の内側に位置する支持部材と
を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、
前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間に貯留される液体を前記被支持面から離れる方向に排出する溝が設けられ、
前記溝は、少なくともその一端が前記空間に接続され、且つ、前記被支持面から離れる方向に延設されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項1】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、
前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間を減少させる補助部材が、前記対向部材及び前記支持部材の少なくともいずれかに設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲った角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、
前記対向部材の前記被支持面の周縁に接続され、且つ前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する方向に延設された補助部材を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁に沿って延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記払拭方向は前記対向面の第1端部から第2端部に向かう方向であり、
前記対向部材の前記被支持面の周縁は前記払拭方向及び前記払拭方向と直交する方向に延在しており、
前記角部は、前記対向部材の前記被支持面の周縁のうち、前記払拭方向に延在する周縁に沿って延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは記録媒体に向けて液体を吐出して記録媒体に画像を記録するものであり、
画像記録時に、前記吐出面と対向し、且つ、前記吐出面との間隔が前記吐出面と前記対向部材との間隔よりも小さい間隔となる対向位置に配置され、記録媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンを、前記対向位置と、前記吐出面と対向しない非対向位置との間において移動させるプラテン移動手段と、
前記液体吐出ヘッド内の液体を前記吐出口から排出させる排出動作を行う液体排出手段と、
前記支持部材を移動させることにより、前記対向部材を、記録時に配置される第1の位置、及び前記第1の位置と比べて前記吐出面との間隔が狭い第2の位置に移動させることが可能な対向部材移動手段と
を更に備え、
前記液体排出手段は、前記プラテン移動手段により前記プラテンが前記非対向位置に移動され、且つ、前記対向部材移動手段により前記対向部材が前記第2の位置に配置されている状態のときに、前記排出動作を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドの周囲に配設され、前記対向部材に当接した際に、前記吐出面及び前記対向部材とともに、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から隔離する環状のキャップ手段と
を更に備え、
前記対向部材移動手段は、前記キャップ部材と前記対向部材とが当接可能となる当接位置に対向部材を移動させることが可能にされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面と接し、前記対向部材よりも疎水性が高い疎水性部材と、
前記疎水性部材を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記対向部材とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向面から前記被支持面に向かう方向に見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材及び前記疎水性部材の内側に位置する支持部材と
を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する対向面と前記対向面とは反対側の被支持面とを有する平板状の対向部材と、
前記対向面に付着した液体を所定の払拭方向で払拭するワイパと、
前記被支持面を支持する平坦部と、前記平坦部から連続し、前記吐出面とは離隔する方向に曲がった角部とを有する支持部材であって、前記対向部材の前記対向面と垂直な方向から見たときに、前記平坦部と前記角部との境界が前記対向部材の内側に位置する支持部材と
を備えた液体吐出装置であって、
前記被支持面の周縁から前記対向部材の前記対向面と垂直な方向において前記対向面から離隔する向きに延ばした第1仮想面と、前記角部の前記対向面から最も離隔した端部から前記被支持面と平行な方向に延ばした第2仮想面と、前記対向部材の被支持面と、前記角部の表面とで画成される空間に貯留される液体を前記被支持面から離れる方向に排出する溝が設けられ、
前記溝は、少なくともその一端が前記空間に接続され、且つ、前記被支持面から離れる方向に延設されていることを特徴とする液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−95021(P2013−95021A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238631(P2011−238631)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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