説明

液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置

【課題】適切に封止機能が保たれた背圧制御ユニットを備える噴射ヘッド、及び上記噴射ヘッドを備える液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するヘッド本体と、前記ヘッド本体が固定された背圧制御ユニットと、を具備し、前記背圧制御ユニットは、前記ヘッド本体に面するベース部と、前記ベース部に面する流路部材と、前記流路部材を保持する保持部を内部に設け前記ベース部と外周部で当接するカバー部と、を含み、前記ベース部と前記カバー部とは、同カバー部の外周に設けられたシール部材を挟んだ状態で、複数のねじ部材によって固定されている構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に複数の部材を積層させて液体が流れる流路を形成する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター等の液体噴射装置は、インク等の液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えている。この液体噴射ヘッドは、液体が噴射されるノズル開口と、このノズル開口に連通する流路に対して液体を供給するバルブユニット(背圧制御ユニットとも記載する。)を備えるものがある。この背圧制御ユニットは、液体を噴射するための圧力を生じさせる圧力室を備え、トナーから供給された液体をこの圧力室の圧力変化に応じてノズル開口側へ供給する機能を備える。
【0003】
また、背圧制御ユニットの一例として、上記した流路や圧力室を、複数の部材を積層して構成するものがある。例えば、各部材の積層表面に流路や圧力室として機能する溝等を形成し、各部品を積層した際、各溝が合わさることで流路や圧力室が形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の部品を積層して構成する背圧制御ユニットでは、部品同士が合わさる部位が精度よく形成されている必要がある。例えば、第1の部品と第2の部品を積層させて流路を形成する場合、各部品の当接面に凹凸が存在すると、この凹凸により生じる隙間により流路が密閉されず、流路を流れる液体が外部に洩れ出る場合も想定される。このような場合、背圧制御ユニット内で液体が適切に流れず、印字不良等を引き起こす原因となる。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、適切に封止機能が保たれた背圧制御ユニットを備える噴射ヘッド、及び上記噴射ヘッドを備える液体噴射装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、液体を噴射するヘッド本体と、前記ヘッド本体が固定された背圧制御ユニットと、を具備し、前記背圧制御ユニットは、前記ヘッド本体に面するベース部と、前記ベース部に面する流路部材と、前記流路部材を保持する保持部を内部に設け前記ベース部と外周部で当接するカバー部と、を含み、前記ベース部と前記カバー部とは、同カバー部の外周に設けられたシール部材を挟んだ状態で、複数のねじ部材によって固定されている構成としてある。
【0008】
上記のように構成された発明では、背圧制御ユニットは、ヘッド本体に面するベース部と、ベース部に面する流路部材と、ベース部と外周部で当接するよう積層されて流路部材を保持する保持部を内部に設けるカバー部とを含んで構成されている。また、ベース部とカバー部とは、同カバー部の外周に設けられたシール部材を挟んだ状態で、複数のねじ部材によって固定されているため、このシール部材によって背圧制御ユニットの外周を適切に封止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】流路部材の分解斜視図である。
【図3】背圧制御ユニットの断面図である。
【図4】背圧制御ユニット20の要部分解斜視図である。
【図5】第1シール部34の一部を拡大して示す図である。
【図6】液体噴射装置の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.インクジェット式記録ヘッドについて:
2.背圧制御ユニットについて:
3.液体噴射装置について:
【0011】
1.インクジェット式記録ヘッドについて:
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。また、図2は、流路部材の分解斜視図である。そして、図3は、背圧制御ユニットの断面図である。さらに、図4は、背圧制御ユニット20の要部分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド10は、背圧制御ユニット20と、背圧制御ユニット20の底面に設けられた回路基板60と、回路基板60の背圧制御ユニット20とは反対側に設けられたヘッドケース70と、ヘッドケース70に固定された複数のヘッド本体80と、を具備して構成されている。
【0013】
背圧制御ユニット20は、外部のインクが貯留されたインクタンクなどの液体貯留手段からのインクをヘッド本体80に供給するものであり、中空状の箱状部材からなるカバー30と、カバー30の内部に設けられた流路部材40と、を具備して構成されている。そのため、液体貯留手段から供給されたインクは、カバー30の接続口(後述)を通じてカバー30及び流路部材40により構成される流路に導かれ、供給口(後述)を通じてヘッド本体80に供給される。
【0014】
ヘッドケース70は、背圧制御ユニット20の底面に固定されて、回路基板60を保持する。また、回路基板60は、外部配線が接続されるコネクターが上向きとなるように配置される。このような回路基板60は、複数のヘッド本体80に共通して接続されるものを用いることができる。
【0015】
ヘッド本体80は、背圧制御ユニット20の供給口(後述)が形成された底面に取り付けられ、この供給口からインクの供給を受ける。ヘッド本体80は、特に図示しないがノズル開口が並設された列が2列以上設けられており、各背圧制御ユニット20から供給された各種インクを各ノズル列から吐出可能に設けられている。
【0016】
また、ヘッド本体80内には、特に図示していないが、ノズル開口に連通する圧力発生室と圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とが設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって圧力発生室の容積を変化させて圧力変化を生じさせて、ノズル開口からインク滴を吐出させるものや、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口からインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0017】
2.背圧制御ユニットについて:
以下、本実施形態に係る背圧制御ユニット20についてより詳細に説明を行う。
図1に示すように、本実施形態に係る背圧制御ユニット20のカバー30は、ベース部31とカバー部32とで構成された分割構造であり、ベース部31と、カバー部32との間に流路部材40を収容するよう配置した状態で、カバー部32側から貫通させたねじ部材Sc(図示せず)で、同カバー部とベース部31とを固定して背圧制御ユニット20が組み立てられる。
【0018】
ベース部31は、カバー部32と対向する側に開口する凹形状を有する第1保持部311と、第1保持部311の一端部側に設けられて厚さ方向に貫通する配線挿通孔312が設けられた支持部313と、を具備して構成されている。また、第1保持部311は、底面316と、この底面の外周から厚み方向に延設して同底面を画成する第1壁部315と、第1壁部315と一体で構成されねじ部品Scのねじ部と螺合する雌ねじが内部に形成されたボス部317と、を備えて構成されている。さらに、ベース部31の第1保持部311の底面316には、厚さ方向に貫通してヘッド本体にインクを供給する複数の供給口314が設けられている。本実施形態では、ベース部31の底面に7個の供給口314を設けて構成されている。
【0019】
カバー部32は、図1及び図4に示すように、ベース部31の第1保持部311を覆う大きさを有し、ベース部31の第1保持部311に相対向してベース部31側に開口する凹形状を有する第2保持部321を備える形状である。また、第2保持部321は、底面325と、この底面325の外周で厚み方向に延設して同底面325を画成する第2壁部322と、同第2壁部322と一体で形成されてねじ部品Scのねじ部が貫通する貫通穴を備えるボス部326と、を備えて構成されている。
【0020】
そして、図3に示すように、ベース部31とカバー部32とは、第1保持部311と第2保持部321とを相対向させた状態でねじ部品Scを用いて固定されることで、内部に第1保持部311と第2保持部321とによって画成された空間である保持部33が形成される。さらに、保持部33には、ゴムやエラストマー等からなるシール部(後記する第1シール部34、第2シール部35、第3シール部36)を保持している。
【0021】
また、カバー部32には、第2保持部321の底面に連通して厚さ方向に貫通する開口部323が設けられている。開ロ部323は、カバー部32の外周面で開口すると共に、第2保持部321の底面に設けられて、第2保持部321の側面を画成する第2壁部322よりも低く突出した突起部324に開口して設けられている。
【0022】
流路部材40は、図2及び図3に示すように、ベース部31側に設けられた第1流路部材41と、第1流路部材41上に設けられた第2流路部材42と、第2流路部材42上に設けられた圧力室形成部材43と、圧力室形成部材43上に設けられた保護板44と、が積層されて構成されている。
【0023】
これら第1流路部材41、第2流路部材42、圧力室形成部材43及び保護板44のそれぞれは、樹脂材料や金属材料等からなる板状部材で形成されている。そして、これらの第1流路部材41、第2流路部材42、圧力室形成部材43及び保護板44は、積層された状態で、保持部33内に保持される。
【0024】
このような流路部材40を構成する第1流路部材41、第2流路部材42及び圧力室形成部材43には、外部のインクが貯留された液体貯留手段からのインクをヘッド本体80に供給する液体流路50が設けられている。
【0025】
具体的には、液体流路50は、図3に示すように、液体貯留手段に一端側が接続されたチューブ等の管状部材である供給管(図示なし)の他端部が接続される接続口51を有する導入路52と、導入路52からのインクが供給されるチャンバー53と、チャンバー53からのインクをヘッド本体80に供給する供給路54と、を具備する。
【0026】
ここで、接続口51は、第2流路部材42の上面にカバー部32の開口部323内に開口して設けられたものである。このような接続口51は、複数のインクに対応して複数個設けられている。本実施形態では、接続口51を7個設けるようにした(図1及び図2参照)。
【0027】
このような接続口51を有する導入路52は、第2流路部材42や第1流路部材41を貫通する流路や、第2流路部材42と第1流路部材41との間の流路や、第1流路部材41とベース部31との間の流路などで構成されている。本実施形態の導入路52は、図3(a)に示す第1導入路55と、図3(b)に示す第2導入路56との2つの経路を具備する。
【0028】
第1導入路55は、図3(a)に示すように、第2流路部材42と第1流路部材41とを厚さ方向に貫通した第1導入流路551と、第1流路部材41の底面に凹部状に形成されて第1導入流路551に一端部が連通する第2導入流路552と、第2導入流路552の他端部側に連通して第1流路部材41を貫通して設けられた第3導入流路553と、第1流路部材41と第2流路部材42との問に設けられて第3導入流路553に連通する第1フィルター室554と、第1フィルター室554に連通して第2流路部材42を貫通して設けられた第4導入流路555と、を具備する。
【0029】
第2導入路56は、図3(b)に示すように、接続口51に連通して第2流路部材42を厚さ方向に貫通した第5導入流路561と、第1流路部材41と第2流路部材42との間に設けられた凹形状を有する第6導入流路562と、第6導入流路562に連通する第1フィルター室563と、第1フィルター室563に連通して第2流路部材42を厚さ方向に貫通して設けられた第7導入流路564と、を具備する。
【0030】
すなわち、第1導入路55は、第1流路部材41とベース部31との間を通過してチャンバー53に達する。これに対して、第2導入路56は第1流路部材41とベース部31との間を通過することなく、第1流路部材41と第2流路部材42との間を通過して、チャンバー53に達する。
【0031】
また、第1導入路55及び第2導入路56のそれぞれの途中に設けられた第1フィルター室554、563には、インク中に含まれるゴミや気泡等の異物を除去するフィルター57が設けられている。ここで、第1導入路55の途中の第1フィルター室554には、第3導入流路553と第4導入流路555とが、第1フィルター室554のフィルター57を挟んだ両側にそれぞれ連通している。これにより、第3導入流路553から供給されたインクはフィルター57を通過して第4導入流路555に供給される。
【0032】
同様に、第2導入路56の途中に設けられた第1フィルター室563には、第6導入流路562と第7導入流路564とがフィルター57を挟んだ両側にそれぞれ連通している。これにより、第6導入流路562から供給されたインクはフィルター57を通過して第7導入流路564に供給される。
【0033】
このように、第1導入流路551〜第4導入流路555で構成される第1導入路55と、第5導入流路561〜第7導入流路564で構成される第2導入路56との2種類の導入路52を設けることで、図中下向きにインクが流れる導入路52から図中上向きにインクが流れる導入路52への接続に使用する第2導入流路552と第6導入流路562とを第1流路部材41とベース部31との間と、第1流路部材41と第2流路部材42との間との異なる位置に配置することができる。これにより、第2導入流路552と第6導入流路562を設ける面積を狭くすることができるため、背圧制御ユニット20を小型化することができる。なお、これらの各導入路52は、圧力室形成部材43に設けられた各チャンバー53に連通する。
【0034】
チャンバー53は、板状部材である圧力室形成部材43の第2流路部材42とは反対側に開口する凹形状を有する。また、チャンバー53は、長手方向の一端部側の底面で導入路52に連通し、他端部側の底面で供給路54と連通している。
【0035】
このようなチャンバー53は、圧力室形成部材43の開ロ面に設けられたフィルム部材45によって封止されている。ここで、フィルム部材45は、可撓性を有する薄膜状のフィルムであり、圧力室形成部材43の表面に熱溶着等によって固定されている。また、フィルム部材45は、チャンバー53内にドーム状に撓んだ状態となるように加圧成形されている。
【0036】
さらに、圧力室形成部材43のチャンバー53内には、フィルム部材45側に配置された弾性板46が設けられている。弾性板46は、一端部側が圧力室形成部材43の表面側に固定された状態でチャンバー53内に突出して設けられており、その先端はチャンバー53内で自由端となっている。本実施形態では、図2に示すように、弾性板46を固定端側で複数の弾性板46が共通する共通部46aと、チャンバー53内に突出するスリット46bによって分割された弾性部46cと、で構成されたいわゆる櫛歯形状を有するものとした。
【0037】
供給路54は、第2流路部材42を厚さ方向に貫通して設けられた第2フィルター室541と、第2フィルター室541に連通して第1流路部材41を貫通して設けられた第1供給流路542と、第1流路部材41とベース部31との問に設けられた第2供給流路543と、を有する。すなわち、チャンバー53からのインクは、第2フィルター室541と、第1供給流路542と、第2供給流路543とを介してベース部31に設けられた供給口314に供給される。
【0038】
また、第2フィルター室541には、上述した第1フィルター室554と同様にインクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するためのフィルター57が設けられている。すなわち、チャンバー53からのインクは、フィルター57を通過して第1供給流路542と第2供給流路543とを介してヘッド本体80に供給される。
【0039】
また、保護板44の圧力室形成部材43側の面には、各チャンバー53に相対向してフィルム部材45の変形を許容する空間である凹形状を有するフィルム保持部58が設けられている。さらに、フィルム保持部58の雰囲気を大気開放する外部に連通した大気開放路59が設けられている。そのため、フィルム部材45のチャンバー53とは反対側のフィルム保持部58を大気開放路59によって大気開放することで、チャンバー53内部の圧力と大気圧との差圧でフィルム部材45を変形させることができる。これにより、大気開放路59に拡散抵抗を付与して、フィルム部材45からの水分蒸発を抑制することができる。
【0040】
また、導入路52とチャンバー53との間には、両者の連通状態を開閉する弁体100が備えられており、この弁体100の開閉によりチャンバー53内部は一定の圧力に保たれている。
【0041】
また、カバー部32には、ゴム、エラストマー等の弾性部材からなる第1シール部(シール部材)34、第2シール部35、第3シール部36が互いに分離した状態で設けられている。本実施形態では、第2シール部35及び第3シール部36は、カバー部32と共に2色成形によって一体的に形成されている。即ち、カバー部32を樹脂材料を成形することで形成した後、カバー部32の所定の位置にゴム材料を成形することで、両者を一体的に形成している。
【0042】
第1シール部34は、ベース部31の第1壁部315の先端面とカバー部32の第2壁部322の先端面との外周の継ぎ目を封止して、保持部33内のインクが外部に流出するのを抑制するためのものである。
【0043】
第2シール部35は、カバー部32の大気開放路59に相対向する位置に設けられたものであり、大気開放路59のカバー部32側の開口を封止する。
【0044】
第3シール部36は、上述した開ロ部323が設けられた突起部324の保護板44側の面に、開口部323の周囲に亘って設けられたものである。この第3シール部36は、流路部材40の接続口51の周囲でカバー部32との隙間を封止するためのものである。この第3シール部36によって、開口部323に固定されることで、接続口51に接続された供給管の着脱時などに漏れたインクが保持部33内に流入するのを抑制することができると共に、保持部33内のインクが接続口51の周囲のカバー部32との隙間から漏れ出るのを抑制することができる。
【0045】
ところで、ベース部31とカバー部32との外周を封止する第1シール部34において、第1シール部34を形成する部材の反力が強すぎると、ベース部31とカバー部32との封止が適切に行われない場合がある。即ち、第1シール部34は、ベース部31とカバー部32とに挟まれた際、同第1シール部34が変形することで両者の隙間を封止する。一方で、第1シール部34は、ベース部31とカバー部32との外周を封止するようその大きさが規定されるため、第1シール部34におけるベース部31(カバー部32)と当接する面積が大きくなると、部材の反力が強くなりすぎ、ベース部31とカバー部32とで挟まれた際、適切に変形を起こさない場合がある。そのため、本実施形態では、第1シール部34において、ベース部31と当接する周縁部を工夫することにより、第1シール部34の封止効果を高めている。
【0046】
以下、図5を参照して、第1シール部34における封止機能を説明する。図6は、第1シール部34の一部を拡大して示す図である。図5(a)に示すように、第1シール部34は、ベース部31と当接する側の当接面34aが平面であり、且つ、カバー部32と当接する側の当接面34bが同カバー部32の当接面に対して対称な傾斜状となるよう成形されている。即ち、第1シール部34のベース部31と当接する当接面34aは、同ベース部31の当接面に対して略平行となる面により構成されている。一方、第1シール部34のカバー部32と当接する当接面34bは、中央の峰34b1を構成する領域から両裾にかけて鋭角な傾斜がつけられており、各傾斜は峰34b1を構成する領域の中央線(図中点線で示す領域)を基準として略線対称となる形状(傾斜部)を備えている。
【0047】
そのため、ベース部31をカバー部32に組み付ける際、ベース部31とカバー部32とで第1シール部34を挟みこむことで、図5(b)に示すように同第1シール部34の当接面34bの峰34b1に略垂直な力(図中、矢印方向)が加えられる。ここで、当接面34bは峰34b1により荷重を受けるため、当接面34b側の変形を容易に生じさせ易くすることができる。そのため、加えられた荷重により当接面34bの峰34b1が荷重方向で潰れを起こし、ベース部31とカバー部32の境界の封止効果を高める。また、この状態でベース部31とカバー部32とは、ねじ部材Scにより固定されるため、第1シール部34はベース部31側の当接面34bの峰34b1を変形させた状態で保持され、ベース部31とカバー部32との外周の封止を適切に行うことができる。
【0048】
3.液体噴射装置について:
以下、本実施形態に係る液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置の構成を説明する。
図6は、液体噴射装置の一例を示す概略斜視図である。ここで、図6では、液体噴射装置の一例として、インクジェット式記録装置1を例に説明を行う。本実施形態のインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ2に搭載されている。そして、インクジェット式記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ2は、装置本体7に取り付けられたキャリッジ軸2aに軸方向で移動自在に設けられている。
【0049】
また、装置本体7には、インクが貯留されたタンクからなる貯留手段3が設けられており、貯留手段3からのインクは、キャリッジ2に搭載されたインクジェット式記録ヘッド10(背圧制御ユニット20)に供給管4を介して供給される。
【0050】
そして、駆動モーター8の駆動力が図示しない複数の醤車およびタイミングベルト8aを介してキャリッジ2に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ2はキャリッジ軸2aに沿って移動される。一方、装置本体7にはキャリッジ軸2aに沿ってプラテン9が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン9に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0051】
このようなインクジェット式記録装置1では、キャリッジ2がキャリッジ軸2aに沿って移動されると共にインクジェット式記録ヘッド10のヘッド本体80によってインクが吐出されて記録シートSに印刷される。
【0052】
また、上述したインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ2に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が装置本体7に固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、ライン式記録装置であってもよい。
【0053】
なお、上記した例では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド10を、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置1を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…インクジェット式記録装置、10…インクジェット式記録ヘッド、20…背圧制御ユニット、30…カバー、31…ベース部、32…カバー部、33…保持部、34…第1シール部、35…第2シール部、36…第3シール部、40…流路部材、41…第1流路部材、42…第2流路部材、43…圧力室形成部材、44…保護板、45…フィルム部材、46…弾性板、50…液体流路、51…接続口、52…導入路、53…チャンバー、54…供給路、55…第1導入路、56…第2導入路、57…フィルター、58…フィルム保持部、59…大気開放路、60…回路基板、70…ヘッドケース、80…ヘッド本体、100…弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッド本体と、
前記ヘッド本体が固定された背圧制御ユニットと、を具備し、
前記背圧制御ユニットは、前記ヘッド本体に面するベース部と、前記ベース部に面する流路部材と、前記流路部材を保持する保持部を内部に設け前記ベース部と外周部で当接するカバー部と、を含み、
前記ベース部と前記カバー部とは、同カバー部の外周に設けられたシール部材を挟んだ状態で、複数のねじ部材によって固定されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記流路部材には、前記カバー部側に開口する溝状の経路と、液体の供給通路となる供給管が接続される接続口と、前記接続口に連通してヘッド本体に液体を供給する液体流路と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記シール部材は弾性部材により構成され、前記シール部材の断面は、前記ベース部と当接する側の面が平面であり、且つ、前記カバー部と当接する側の面が同カバー部の当接面に対して対称な傾斜部を有していることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218195(P2012−218195A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83356(P2011−83356)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】