説明

液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】気泡によるフィルターのチョークを抑制して、安定して液体を供給することができると共に、流路内の気泡の残留を抑制して液体供給性及び液体吐出特性の低下を抑制することができる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口が設けられたヘッド本体と、液体供給源からの液体を前記ヘッド本体に供給する供給部材3と、を具備し、前記供給部材3には、内部にフィルター32が設けられたフィルター室35と、該フィルター室35の前記フィルター32に相対向する天井36側に開口する供給口37を有し、当該フィルター室35に液体を供給する供給路38と、前記フィルター室35の前記天井36側に設けられて気泡を滞留させる気泡滞留部42と、を備え、前記フィルター32に対して前記供給口37が鉛直方向上側に設けられており、前記供給路38の前記天井36側で開口する供給口37の内径に対する前記天井36の最小幅の比率が、6.25以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例であるインクジェット式記録ヘッドでは、一般的に、インクが充填された液体貯留手段であるインクカートリッジから、このインクカートリッジに着脱可能に挿入されるか、又はこのインクカートリッジから伸びるチューブなどの供給管の先端に配されるインク供給体となるインク供給針、及びインクカートリッジが保持されるカートリッジケース等の供給部材に形成されたインク供給路を介してヘッド本体にインクが供給され、ヘッド本体に設けられた圧電素子等の圧力発生手段を駆動させることによりヘッド本体に供給されたインクがノズルから吐出される。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、気泡等によるドット抜け等の吐出不良を解決するために、インクカートリッジに挿入されるインク供給針とカートリッジケースとの間にインク内の気泡やゴミ等を除去するためのフィルターを設けたものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6730号公報
【特許文献2】特開平11−20186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルターの上流にフィルターに向かって開口面積が漸大するフィルター室を設けた場合、フィルター室に滞留した気泡が、フィルター上流からのインクによって押圧されて、フィルター面に当接し、気泡がフィルターを塞ぐことでフィルターの有効面積を減少させて流路抵抗が増大し、インク供給特性が低下してインク吐出特性に悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。また、ノズル開口から流路内のインクを吸引する吸引動作を行った際に、気泡がフィルターの一部を塞ぐと、インクの供給特性が低下し、インクジェット式記録ヘッド内の吸引動作によるクリーニングを正常に行うことができないという問題がある。また、吸引動作によって気泡がフィルターを通過してフィルターよりも下流の流路内に残留する虞があるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、気泡によるフィルターのチョークを抑制して、安定して液体を供給することができると共に、流路内の気泡の残留を抑制して液体供給性及び液体吐出特性の低下を抑制することができる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口が設けられたヘッド本体と、液体供給源からの液体を前記ヘッド本体に供給する供給部材と、を具備し、前記供給部材には、内部にフィルターが設けられたフィルター室と、該フィルター室の前記フィルターに相対向する天井側に開口する供給口を有し、当該フィルター室に液体を供給する供給路と、前記フィルター室の前記天井側に設けられて気泡を滞留させる気泡滞留部と、を備え、前記フィルターに対して前記供給口が鉛直方向上側に設けられており、前記供給路の前記天井側で開口する供給口の内径に対する前記天井の最小幅の比率が、6.25以上であることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、供給口の内径に対する天井の最小径を規定することにより、天井側に気泡が滞留する気体層を形成し、ノズル開口から液体を吸引する吸引動作時に、供給口から液体が気泡を貫き通ってフィルター室に供給させることができる。このため、気泡が液体の供給によってフィルター側に移動し、移動した気泡によってフィルターが覆われるのを抑制して、フィルターの有効面積の減少やヘッド本体内に気泡が入り込むことによる供給不良及び吐出不良を抑制することができる。
【0008】
ここで、前記天井の前記供給口から前記フィルター室の側壁に向かう角度が、鉛直方向に対して90度以上であることが好ましい。これによれば、天井側に気泡が滞留する気体層を形成し易くすることができる。
【0009】
また、前記供給口が、前記天井から前記フィルター側に突出して設けられた突出部の端面に開口することが好ましい。これによれば、突出部によって天井に滞留する気体層の供給口に相対向する領域が薄くなり、気体層を供給された液体で貫き易くすることができる。
【0010】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを複数具備することを特徴とする液体噴射ヘッドユニットにある。
かかる態様では、液体の供給不良や吐出不良を抑制した液体噴射ヘッドユニットを実現できる。
【0011】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニット又は液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、液体の供給不良や吐出不良を抑制した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図2】実施形態1に係る供給部材の断面図である。
【図3】実施形態1に係る供給部材のインク及び気泡の挙動を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係る供給部材のインク及び気泡の挙動を示す断面図である。
【図5】実施形態2に係る供給部材の断面図である。
【図6】実施形態3に係る供給部材の断面図である。
【図7】他の実施形態に係る供給部材の断面図である。
【図8】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図2は、供給部材の断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、インクを吐出するヘッド本体2と、ヘッド本体2に貯留部(図示なし)からのインクを供給する供給部材3と、を具備する。
【0015】
ヘッド本体2は、縦振動型の圧電素子を有するタイプであり、ヘッド本体2を構成する流路基板11には、複数の圧力発生室12が並設され、流路基板11の両側は、各圧力発生室12に対応してノズル開口13を有するノズルプレート14と、振動板15とにより封止されている。また、流路基板11には、各圧力発生室12毎にそれぞれインク供給口16を介して連通されて複数の圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド17が形成されており、マニホールド17にインクが供給される。
【0016】
振動板15の圧力発生室12とは反対側には、各圧力発生室12に対応する領域にそれぞれ圧電素子18の先端が当接されて設けられている。これらの圧電素子18は、圧電材料19と、電極形成材料20及び21とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層され、振動に寄与しない不活性領域が固定基板22に固着されている。なお、固定基板22と、振動板15、流路基板11及びノズルプレート14とは、ヘッドケース23を介して一体的に固定されている。
【0017】
また、ヘッドケース23には、供給部材3が接続されると共にマニホールド17に接続された導入路24が設けられている。インクカートリッジやインクタンク等の液体供給源(図示なし)からのインクは、供給部材3と導入路24とを介してマニホールド17に供給され、インク供給口16を介して各圧力発生室12に分配される。実際には、圧電素子18に電圧を印加することにより圧電素子18を収縮させる。これにより、振動板15が圧電素子18と共に変形されて(図中上方向に引き上げられて)圧力発生室12の容積が広げられ、圧力発生室12内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口13に至るまで内部をインクで満たした後、記録ヘッド駆動回路からの記録信号に従い、圧電素子18の電極形成材料20及び21に印加していた電圧を解除すると、圧電素子18が伸張されて元の状態に戻る。これにより、振動板15も変位して元の状態に戻るため圧力発生室12が収縮され、内部圧力が高まりノズル開口13からインク滴が吐出される。すなわち、本実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として縦振動型の圧電素子18が設けられている。
【0018】
供給部材3は、図2に示すように、ヘッド本体2側に設けられた第1供給部材30と、図示しない貯留部に接続された第2供給部材31と、第1供給部材30と第2供給部材31との間に挟持されたフィルター32と、を具備する。
【0019】
供給部材3の内部には、インクが流れる流路である供給部材流路34が設けられており、フィルター32は、供給部材流路34を横断して設けられている。
【0020】
このようなフィルター32としては、例えば、金属を細かく編み込むことで複数の微細孔が形成されたシート状のものや、複数の貫通孔が形成された1枚の金属板や樹脂板などの板状部材、不織布等を用いることができる。このフィルター32により、供給部材3内を流れるインク内の気泡や異物が除去される。
【0021】
供給部材3の内部に設けられた供給部材流路34は、フィルター32を保持する空間であるフィルター室35と、フィルター室35の上流側のフィルター32に相対向する面である天井36に開口する供給口37を有する供給路38と、フィルター室35の底面に開口する導入連通路39と、を具備する。
【0022】
また、フィルター室35は、フィルター32によって区画されることで、上流側(供給路38側)に上流フィルター室40と、フィルター32の下流側(導入連通路39側)に設けられた下流フィルター室41と、を具備する。
【0023】
上流フィルター室40には、液体導入源からのインクが供給路38を介して供給される。また、フィルター32を通過したインクは、下流フィルター室41に貯留されて導入連通路39を介してヘッド本体2に供給される。
【0024】
供給路38は、一端がフィルター室35の天井36、すなわち、上流フィルター室40のフィルター32に相対向する面に開口する供給口37を有し、他端が図示しないインクカートリッジやインクタンク等の液体供給源に連通して設けられている。
【0025】
導入連通路39は、一端がフィルター室35の底面、すなわち、下流フィルター室41のフィルター32に相対向する面に開口すると共に、他端がヘッド本体2の導入路24に連通する。
【0026】
このような供給部材3は、フィルター32に対して供給口37が鉛直方向上側に位置するように配置される。すなわち、フィルター室35を構成する上流フィルター室40が鉛直方向上側に位置し、下流フィルター室41が鉛直方向下側に位置するように配置される。本実施形態では、フィルター32が水平方向に位置し、且つフィルター室35を画成する側壁の面方向が鉛直方向と一致するように供給部材3を配置している。
【0027】
そして、このような供給部材3の供給路38の天井36側で開口する供給口37の内径dに対する天井36の最小幅dの比率(天井36の最小幅d2/供給口37の内径d)が、6.25以上である。本実施形態では、供給口37の内径dは1.6mm以下が好ましく、天井36の最小幅dは10mm以上が好適である。なお、本実施形態のように、上流フィルター室40が鉛直方向に同一幅で設けられている場合には、天井36の幅(最小幅d)に亘ってフィルター32を設けるため、天井36の最小幅dとは、フィルター32が気泡や異物をトラップするための有効面積の最小幅と同等となる。本実施形態では、供給口37の内径dを1.6mmとし、天井36を10mm×13.6mmとすることで、両者の比率を6.25とし、また、フィルター32として10.2mm×13.8mmの長方形状のものを用いた。
【0028】
このように供給口37の内径dと、天井36の最小幅dとを規定することにより、フィルター室35の天井36側は、気泡が滞留する気泡溜り部42となる。
【0029】
また、フィルター室35の天井36は、供給口37からフィルター室35の側壁に向かう角度θが、鉛直方向に対して90度以上となっている。本実施形態では、天井36の供給口37からフィルター室35の側壁に向かう領域の角度θを90度とした。なお、本実施形態では、フィルター室35は、側壁が鉛直方向に沿って設けられているため、側壁と天井36との角度は90度となっている。すなわち、本実施形態のように、フィルター室35の側壁が鉛直方向に沿って設けられている場合、天井36の供給口37からフィルター室35の側壁に向かう領域の角度θを90度以上とすることで、側壁と天井36との角度が90度以下となる。
【0030】
ここで、このような供給部材3のインク及び気泡の挙動について説明する。なお、図3〜図4は、供給部材の気泡の挙動を示す断面図である。
【0031】
図3(a)に示すように、インクAが供給部材3に供給されると、インクに含まれる気泡Bが浮力によって鉛直方向上側に移動し、フィルター室35(上流フィルター室40)の天井36側に滞留することで気体の層C(気体層C)が形成される。本実施形態では、この気体層Cが形成される領域を空気溜り部42としている。
【0032】
そして、ヘッド本体2のノズル開口13からインクを吐出すると、図3(b)に示すように、液体供給源(図示なし)からのインクは、供給口37からフィルター室35の内壁面(天井36及び側面)を伝ってフィルター室35に供給され、フィルター32を通過してヘッド本体2に供給される。
【0033】
また、ヘッド本体2のノズル開口13からインクを吸引する吸引動作を行う。具体的には、例えば、キャップ部材(図示なし)でノズル開口13を覆い、キャップ部材の内部を負圧にすることで、ノズル開口13からヘッド本体2内のインクを吸引する。この吸引動作を行うと、図4(a)に示すように、インクAはフィルター室35に供給口37から真下(フィルター32)に向かって気体層Cを貫き通って供給される。すなわち、フィルター室35の気泡溜り部42に滞留した気泡B(気体層C)をインクAの流れでフィルター32側に移動させることなく、インクAの供給を気体層Cを貫いて行うことができる。このようにフィルター室35に気体層Cを貫いてインクAが供給されるようにするためには、上述したように供給口37の内径d、天井36の最小幅d及び天井36の鉛直方向に対する角度θを規定している。すなわち、供給口37の内径を1.6mmよりも大きくすると、フィルター室35に供給されるインクが気泡(気体層C)を押圧する面積が広くなると共に、流速が小さくなって気泡(気体層C)がフィルター32側に移動してしまう。このように気泡(気体層C)がフィルター32側に移動すると、移動した気泡(気体層C)によってフィルター32が覆われて、フィルター32の有効面積を減少させると共に、フィルター32を通過した気泡がヘッド本体2内に滞留し、供給不良や吐出不良などの不具合が発生する。また、天井36の最小幅が10mmよりも小さいと、気泡溜まり部42の面積も小さくなり、滞留する気泡が小さくなって、供給口37から供給されたインクによって気泡がフィルター32側に移動してしまう。すなわち、(天井36の最小幅d)/(供給口37の内径d)≧6.25とすることで、フィルター室35の気泡溜り部42に滞留した気泡B(気体層C)をインクAの流れでフィルター32側に移動させることなく、インクAの供給を気体層Cを貫いて行うことができる。なお、本実施形態の供給口37の内径d及び天井36の最小幅dの比率の規定は、インクの粘度が3cSt以下の場合である。
【0034】
また、フィルター室35の天井36の供給口37からフィルター室35の側壁に向かう角度が、鉛直方向に対して90度以上とすることで、天井36側の気泡溜り部42に気泡(気体層C)が滞留し易く、天井36側に滞留した気泡(気体層C)がフィルター32を覆うのを抑制している。
【0035】
なお、フィルター室35(上流フィルター室40)に滞留した気泡(気体層C)は、そのままでは、インクに含まれる気泡Bによって徐々に成長し、フィルター32をチョークしてしまうため、気体層Cが所定の大きさとなったときは、気体層Cの気泡を排出する必要がある。気泡の排出方法は、特に限定されないが、例えば、図4(b)に示すように、供給路38を閉口した状態で、ノズル開口13から吸引を行う、いわゆるチョーククリーニングを行うことで、空気溜り部42に滞留した気泡(気体層C)をフィルター32を通過させて、インクと共にノズル開口13から排出することができる。
【0036】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係る供給部材の断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0037】
図5に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1を構成する供給部材3Aは、第1供給部材30と、第2供給部材31Aと、フィルター32と、を具備する。
【0038】
また、供給部材3Aには、上流フィルター室40A及び下流フィルター室41で構成されるフィルター室35Aと、供給路38と、導入連通路39と、が設けられている。
【0039】
そして、フィルター室35Aのフィルター32に相対向する面には、フィルター室35に突出して設けられた突出部43が設けられており、この突出部43の突出した端面44に供給路38の供給口37Aが開口する。
【0040】
この突出部43によって、本実施形態のフィルター室35Aの天井36Aは、突出部43の端面44と、突出部43とフィルター室35Aの側壁との間の面45とで構成される。
【0041】
そして、この天井36Aについても、フィルター室35Aの天井36Aの供給口37Aから側壁に向かう鉛直方向に対する角度が90度以上となっている。ちなみに、天井36Aを構成する端面44と面45との間には、鉛直方向に沿って設けられた面(段差面)が形成されているが、この段差面は、供給口37Aから側壁に向かって鉛直方向に対して180度で形成されていることになり、90度以上という規定の範囲に含まれるものである。
【0042】
また、本実施形態の気泡溜り部42Aは、気泡が初期状態では、突出部43とフィルター室35Aの側壁との間の領域となり、気泡が大きく成長した場合には、突出部43の端面44に相対向する領域を含む天井36A全体となる。
【0043】
すなわち、気泡が成長していない初期状態では、図5に示すように、気泡Dが天井36Aの突出部43の周囲に滞留する。そして、気泡Dが成長することで突出部43の下に連続した気泡の層(気体層)が形成される。ただし、突出部43が存在することから、突出部43の下の気泡は比較的厚さが薄くなり、供給口37Aから供給されたインクが貫き易くなっている。
【0044】
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3に係る供給部材の断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0045】
図6に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1を構成する供給部材3Bは、第1供給部材30と、第2供給部材31Bと、フィルター32と、を具備する。
【0046】
また、供給部材3Bには、上流フィルター室40B及び下流フィルター室41で構成されるフィルター室35Bと、供給口37を有する供給路38と、導入連通路39と、が設けられている。
【0047】
そして、フィルター室35Bのフィルター32に相対向する面である天井36Bは、供給口37からフィルター室35Bの側壁に向かう鉛直方向に対する角度θ′が90度よりも大きくなっている。
【0048】
また、本実施形態の気泡溜り部42Bは、気泡が初期状態では、フィルター室35Bの天井36Bと側壁との角部の領域となり、気泡が大きく成長した場合には、フィルター室35Bの天井36Bに相対向した領域全てとなる。
【0049】
すなわち、気泡が成長していない初期状態では、図6に示すように、気泡Dが天井36Bの側壁との角部に滞留する。そして、気泡Dが成長することで供給口37の下に連続した気泡の層(気体層)が形成される。ただし、供給口37の開口縁部が鋭角となっていることから、供給口37の下の気泡(気体層)は比較的厚さが薄くなり、供給口37から供給されたインクが貫き易くなっている。
【0050】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0051】
例えば、上述した各実施形態では、フィルター室35〜35Bの側壁が鉛直方向に沿うように供給部材3〜3Bを配置するようにしたが、フィルター32に対して供給口37、37Aが鉛直方向上側に配置されていれば、特にこれに限定されるものではない。ここで、供給部材の他の配置について図7を参照して説明する。なお、図7は、他の実施形態に係る供給部材を示す断面図である。
【0052】
図7に示すように、供給部材3Cは、第1供給部材30Aと、第2供給部材31Cと、フィルター32と、を具備する。
【0053】
また、供給部材3Cには、上流フィルター室40C及び下流フィルター室41Aで構成されるフィルター室35Cと、供給口37を有する供給路38と、導入連通路39と、が設けられている。
【0054】
フィルター室35Cの側壁は、鉛直方向に対して傾斜して設けられている。そして、フィルター室35Cのフィルター32に相対向する面である天井36Cは、供給口37からフィルター室35Cの側壁に向かう鉛直方向に対する角度θが90度以上、本実施形態では、90度となっている。このような構成の供給部材3Cでは、インクに含まれる気泡が天井36C側に滞留して気体層Cが形成されるが、天井36Cが鉛直方向に対して水平に設けられているため、気体層Cが天井36Cの全面に亘って形成される。これにより、供給口37から供給されたインクが気体層Cを貫き通って供給される。
【0055】
また、上述した各実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、縦振動型の圧電素子18を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、圧力発生室に対して下電極と圧電体層と上電極とを順次積層形成した撓み振動型の圧電素子などを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0056】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図8は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0057】
図8に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数のインクジェット式記録ヘッド1を有するインクジェット式記録ヘッドユニット101(以下、ヘッドユニット101とも言う)は、インク供給手段を構成するカートリッジ102A及び102Bが着脱可能に設けられ、このヘッドユニット101を搭載したキャリッジ103は、装置本体104に取り付けられたキャリッジ軸105に軸方向移動自在に設けられている。このヘッドユニット101は、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0058】
そして、駆動モーター106の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト107を介してキャリッジ103に伝達されることで、ヘッドユニット101を搭載したキャリッジ103はキャリッジ軸105に沿って移動される。一方、装置本体104にはキャリッジ軸105に沿ってプラテン108が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン108に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0059】
さらに、インクジェット式記録装置Iの非印刷領域には、記録ヘッド1のノズル開口13から流路内のインクや気泡等を吸引する吸引手段110が設けられている。
【0060】
吸引手段110は、記録ヘッド1のノズル開口13を覆うキャップ部材111と、キャップ部材111にチューブ112を介して接続された例えば真空ポンプ等の吸引装置113とを具備する。
【0061】
このような構成の吸引手段110は、キャップ部材111を記録ヘッド1の吐出面に当接させて、吸引装置113に吸引動作を行わせることでキャップ部材111の内部を負圧として、ノズル開口13から流路内のインクを気泡と共に吸引してクリーニングを行う。また、印刷休止中には、キャップ部材111によってノズル開口13を封止することによりノズル開口13の乾燥を抑制するようにしてもよい。
【0062】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド1(ヘッドユニット101)がキャリッジ103に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0063】
また、上述した例では、複数の記録ヘッド1を有するヘッドユニット101をインクジェット式記録装置Iに搭載するようにしたが、ヘッドユニット101には、それぞれ1つの記録ヘッド1が搭載されていてもよく、また、単数又は複数の記録ヘッド1が直接インクジェット式記録装置Iに搭載されていてもよい。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0065】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 2 ヘッド本体、 3、3A、3B、3C 供給部材、 11 流路基板、 13 ノズル開口、 17 マニホールド、 18 圧電素子、 30、30A 第1供給部材、 31、31A、31B、31C 第2供給部材、 32 フィルター、 35、35A、35B、35C フィルター室、 36、36A、36B、36C 天井、 37、37A 供給口、 101 インクジェット式記録ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 110 吸引手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口が設けられたヘッド本体と、
液体供給源からの液体を前記ヘッド本体に供給する供給部材と、を具備し、
前記供給部材には、内部にフィルターが設けられたフィルター室と、該フィルター室の前記フィルターに相対向する天井側に開口する供給口を有し、当該フィルター室に液体を供給する供給路と、前記フィルター室の前記天井側に設けられて気泡を滞留させる気泡滞留部と、を備え、
前記フィルターに対して前記供給口が鉛直方向上側に設けられており、
前記供給路の前記天井側で開口する供給口の内径に対する前記天井の最小幅の比率が、6.25以上であることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記天井の前記供給口から前記フィルター室の側壁に向かう角度が、鉛直方向に対して90度以上であることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記供給口が、前記天井から前記フィルター側に突出して設けられた突出部の端面に開口することを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを複数具備することを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項4記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212897(P2011−212897A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81518(P2010−81518)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】