液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーター
【課題】電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保することを課題とする。
【解決手段】液体を吐出するノズル21に連通した圧力室12と、該圧力室12の壁面の一部を構成する振動板50と、該振動板50上に設けられた圧電体素子3と、を有する液体噴射ヘッド(1)の圧電体素子3は、振動板50上に設けられた第1電極(60)と、該第1電極(60)上に設けられた圧電体70と、該圧電体70上に設けられた第2電極(80)と、を含んでいる。振動板50は、第1電極(60)側に酸化ジルコニウムの層(55)を有している。振動板50と前記第1電極(60)との界面に酸化鉛90が点在している。
【解決手段】液体を吐出するノズル21に連通した圧力室12と、該圧力室12の壁面の一部を構成する振動板50と、該振動板50上に設けられた圧電体素子3と、を有する液体噴射ヘッド(1)の圧電体素子3は、振動板50上に設けられた第1電極(60)と、該第1電極(60)上に設けられた圧電体70と、該圧電体70上に設けられた第2電極(80)と、を含んでいる。振動板50は、第1電極(60)側に酸化ジルコニウムの層(55)を有している。振動板50と前記第1電極(60)との界面に酸化鉛90が点在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板及び圧電体素子を有する液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッド等には、例えば、電気機械変換機能を有する結晶化圧電性セラミックスからなる圧電体膜を2つの電極で挟んだ圧電体素子を振動板に積層した圧電アクチュエーターが用いられる。このような液体噴射ヘッドには、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力室の一部を振動板で構成したインクジェット式記録ヘッドがある。インクジェット式記録ヘッドは、振動板を圧電体素子により変形させて圧力室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させる。
【0003】
特許文献1に記載の液体噴射ヘッドは、振動板に含まれる酸化ジルコニウム層上に圧電体素子が設けられている。この圧電体素子は、酸化ジルコニウム層上に下電極膜が設けられ、該下電極膜上に圧電体が設けられ、該圧電体上に上電極膜が設けられている。下電極膜は、酸化ジルコニウム層側から順に、白金を主成分とする第1層、チタンを主成分とする第2層、イリジウムを主成分とする第3層、が積層された構造とされている。第1層と第2層と第3層の膜厚比は、6〜7:3〜2:1とされている。下電極膜を形成するための白金層は、厚さが120〜130nmとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−60259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コストダウン目的で高価な白金の層を薄くすると、振動板と下電極との密着強度が低下し、液体噴射ヘッドの駆動により界面剥離が発生し、振動板に亀裂が発生する虞がある。
【0006】
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、液体を吐出するノズルに連通した圧力室と、該圧力室の壁面の一部を構成する振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している態様を有する。
また、本発明は、上記液体噴射ヘッドを含む液体噴射装置の態様を有する。
【0008】
さらに、本発明は、振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する圧電アクチュエーターであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している態様を有する。
【0009】
上述した態様では、第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有する振動板と第1電極との界面に点在する酸化鉛により振動板と第1電極との密着強度が確保される。従って、電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保することができる。
【0010】
ところで、上記酸化鉛の少なくとも一部が第1電極を貫通していると、第1電極と圧電体との密着強度も向上させることができる。
【0011】
上記酸化鉛の組成がPbOx(0.5≦x≦2)であると、振動板と電極との密着強度を確保した好適な液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0012】
上記第1電極が白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有していてもよい。この層の厚みは、110nm以下でもよい。このような薄い第1電極でも振動板との密着強度が確保されるので、コストダウンされた液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーターを提供することができる。
なお、酸化ジルコニウム層、酸化鉛、白金とチタンの少なくとも一方を含有する層、等は、これらの物質が含まれていればよく、不純物が含まれてもよいし、これらの物質以外の物質が一以上含まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(c)は圧電アクチュエーター2の要部を例示する断面図。
【図2】記録ヘッド1の構成の概略を例示する便宜上の分解斜視図。
【図3】(a)は記録ヘッド1を例示する平面図、(b)は記録ヘッド1を例示する断面図。
【図4】(a),(b)は下電極60の要部を例示する断面図。
【図5】(a),(b)は記録ヘッド1の要部を例示する断面図。
【図6】(a)〜(e)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図7】(a)〜(c)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図8】(a)〜(c)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図9】(a)〜(c)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図10】記録装置(液体噴射装置)200の構成の概略を例示する図。
【図11】圧電アクチュエーターサンプルの断面を分析した結果を示す図。
【図12】振動板と下電極との密着強度の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0015】
(1)液体噴射ヘッドの構成:
図1(a)〜(c)は本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドに含まれる圧電アクチュエーター2の要部を示す垂直断面図、図2は液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1を便宜上、分解した分解斜視図、図3(a)は記録ヘッド1の平面図、図3(b)は記録ヘッド1を図2のA1−A1の位置で断面視した垂直断面図、である。
【0016】
記録ヘッド1は、液体を吐出するノズル21に連通した圧力室12と、圧力室12の壁面の一部を構成する振動板50と、振動板50上に設けられた圧電体素子3と、を有している。振動板50及び圧電体素子3は、圧電アクチュエーター2を構成する。圧電体素子3は、振動板50上に設けられた下電極(第1電極)60と、下電極60上に設けられた圧電体70と、圧電体70上に設けられた上電極(第2電極)80と、を含んでいる。なお、本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、第1電極の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に第2電極が配置されることも、本発明に含まれる。
振動板50は、下電極60側に絶縁体膜(酸化ジルコニウムの層)55を有している。このような振動板50と下電極60との界面に酸化鉛90が点在し、薄い下電極60と振動板50との密着強度が確保されている。
【0017】
まず、図2,3を参照して、記録ヘッド1の構成を説明する。記録ヘッド1は、概略、ノズルプレート20、流路形成基板10、圧電体素子3等を設けた振動板50、コンプライアンス基板40等を設けた保護基板30、が順に積層された構造とされている。これらの各層は、接合されて積層されてもよいし、分離されない材料の表面を変性する等して一体に形成されてもよい。
【0018】
流路形成基板10には、結晶面方位が(110)面であるシリコン単結晶基板などを用いることができる。振動板50の一部を構成する弾性膜51は、例えば、結晶面方位が(110)面であるシリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化する等によって流路形成基板10と一体に形成され、二酸化シリコン(SiO2)等で構成することができる。弾性膜51の厚みは、弾性を示す限り特に限定されないが、約0.5〜2μm(例えば約1.0μm)とすることができる。
流路形成基板10には、他方の面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力室(圧力発生室)12と細幅のインク供給路14と太幅の連通路15からなる複数の液体流路と、各連通路15に繋がる共通の液体流路である連通部13とが形成される。液体流路(12,14,15)は、圧力室12の短手方向である幅方向D1へ並べられている。連通部13は、各圧力室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する。各インク供給路14は、流路の幅を片側から絞ることにより、圧力室12の断面積よりも小さい断面積とされる。むろん、流路の幅を両側から絞ってインクインク供給路を形成してもよいし、流路の厚さ方向から絞ることによりインク供給路を形成してもよい。各連通路15は、インク供給路14の断面積よりも大きい断面積とされ、例えば、圧力室12と同じ断面積とされる。
【0019】
ノズルプレート20は、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼、等を用いることができ、流路形成基板10の開口面側に固着される。この固着には、接着剤、熱溶着フィルム、等を用いることができる。ノズルプレート20には、各圧力室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されている。従って、圧力室12は、液体を吐出するノズル21に連通している。
【0020】
一方、弾性膜51上には、該弾性膜51とともに振動板50を構成する絶縁体膜55が積層されている。絶縁体膜55は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む層で構成することができる。すなわち、振動板50は、下電極60側に酸化ジルコニウム層を有していることになる。この酸化ジルコニウム層は、主成分が酸化ジルコニウムであればよく、モル比でジルコニウムよりも少ない物質が含まれてもよい。ここで、主成分は、含まれる成分の中で最もモル比の多い成分とする。絶縁体膜55の厚みは、弾性を示す限り特に限定されないが、約0.2〜0.8μm(例えば約0.4μm)とすることができる。
振動板50は、圧力室12の下電極60側の壁面を構成する。
【0021】
振動板50上には、圧電体素子3が設けられている。
絶縁体膜55上には、白金(Pt)とチタン(Ti)の少なくとも一方を含有する層を有する下電極(第1電極)60が積層されている。図1(a)等に示すように、振動板50と下電極60との界面には、酸化鉛90が点在している。下電極60及び酸化鉛90の詳細は、後述する。
【0022】
下電極60上には、圧電体70が積層されている。圧電体70には、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)といった強誘電体、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、といった金属酸化物を添加したもの、等のペロブスカイト構造を有する材料を用いることができる。このような材料には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)、等が含まれる。圧電体70の厚みは、電気機械変換作用を示す範囲で特に限定されないが、約0.5〜2μm(例えば約1.1μm)とすることができる。好ましくは、製造工程でクラックが発生しない程度に圧電体70の厚さを抑え、十分な変位特性を示す程度に圧電体70を厚くするとよい。
【0023】
圧電体70上には、上電極(第2電極)80が積層されている。上電極80を構成する金属は、イリジウム(Ir)、金(Au)、白金、等を用いることができ、これらの金属を主成分としてモル比で少ない別の金属が含まれてもよい。上電極80の厚みは、特に限定されないが、約0.05〜0.2μm(例えば約0.1μm)とすることができる。
一般的には、圧電体素子3の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体70を圧力室12毎にパターニングして圧電体素子3を構成する。パターニングされた何れか一方の電極及び圧電体70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部4という。図2,3に示す圧電体素子3は、下電極60を共通電極とし、上電極80を個別電極としている。各上電極80には、インク供給路14側の端部近傍から絶縁体膜55上へ延びたリード電極122が接続されている。リード電極122には、例えば、金等を用いることができる。
【0024】
圧電体素子3を設けた振動板50上には、保護基板30が接着剤35を介して接合されている。保護基板30には、例えば、シリコン単結晶基板、ガラス、セラミックス材料、等を用いることができる。好ましくは、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板等を用いるとよい。保護基板30は、リザーバ部31及び貫通孔33が厚み方向に貫通し、圧電体素子3に対向する領域に圧電体素子保持部32が設けられている。リザーバ部31は、連通部13とともにリザーバ100を構成し、圧力室の幅方向D1に亘って形成されている。圧電体素子保持部32は、圧電体素子3の運動を阻害しない程度の空間を有する。この空間は、密封されていても、密封されていなくてもよい。貫通孔33内には、各圧電体素子3から引き出されたリード電極122の端部近傍が露出する。
保護基板30上には、並設された圧電体素子3を駆動するための駆動回路120が固定されている。駆動回路120には、回路基板、半導体集積回路(IC)、等を用いることができる。駆動回路120とリード電極122とは、接続配線121を介して電気的に接続されている。接続配線121には、ボンディングワイヤといった導電性ワイヤ等を用いることができる。
【0025】
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42を有するコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、厚み6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)といった剛性が低く可撓性を有する材料等が用いられ、リザーバ部31の一方の面を封止する。固定板42は、例えば、厚み30μmのステンレス鋼(SUS)といった金属等の硬質の材料が用いられ、リザーバ100に対向する領域が開口部43とされている。従って、リザーバ100の一方の面は、封止膜41のみで封止されている。
【0026】
本記録ヘッド1は、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル21に至るまで内部をインクで満たす。駆動回路120からの記録信号に従い、圧力室12毎に下電極60と上電極80との間に電圧を印加すると、圧電体70、下電極60及び振動板50の変形によりノズル21からインク滴が吐出する。
【0027】
図4(a)は、振動板50との界面に酸化鉛90が点在した下電極60の要部を例示した垂直断面図である。下電極60を構成する金属には、白金、チタン、イリジウム、等を用いることができる。構成金属は、酸化物といった化合物の状態でもよいし、化合していない状態でもよく、合金の状態でもよいし、単独の金属の状態でもよく、これらの金属を主成分としてモル比で少ない別の金属が含まれてもよい。下電極60の材料は、白金、白金と酸化チタンとの混合物、これらの物質を主要成分としてモル比で少ない別の物質を含む材料、等を例示することができる。ここで、主要成分は、モル比合計が他の含有成分のモル比よりも多いような一以上の対象成分とする。前述のような材料の下電極60は、白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有していることになる。この場合の下電極60の厚みT1は、導電性を示す限り特に限定されず、約0.1〜0.5μmとしてもよいが、高価な金属を減らす観点から110nm以下としてもよい。厚みT1の下限は、下電極60が層状に形成される厚みとすることができ、例えば約5nmとすることができる。
【0028】
また、図4(b)に例示するように、下電極60を二層以上の構造としてもよい。振動板側の第一層65の成分は、白金、白金と酸化チタンとの混合物、これらの物質を主要成分としてモル比で少ない別の物質を含む成分、等を例示することができる。このような第一層65は、白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有していることになる。圧電体70側の第二層66の成分は、イリジウム、イリジウムを主成分としてモル比で少ない別の物質を含む成分、等を例示することができる。
上記第一層65の厚みT1は、導電性を示す限り特に限定されず、約0.1〜0.5μmとしてもよいが、高価な金属を減らす観点から110nm以下としてもよい。厚みT1の下限は、第一層65が層状に形成される厚みとすることができ、例えば約5nmとすることができる。上記第二層66の厚みは、特に限定されないが、約5〜20nm(例えば約10nm)とすることができる。
【0029】
下電極が白金とチタンを含む場合、白金(Pt)とチタン(Ti)の存在比は、例えば、白金を70〜93重量%、チタンを7〜30重量%とすることができる。白金を70重量%以上にすると下電極の導電性が特に良好になるので好ましく、チタンを7重量%以上にすると絶縁体膜と下電極との密着性が向上するので好ましい。
【0030】
図1(a)及び図4(a)に例示する圧電アクチュエーター2は、絶縁体膜55と下電極60との界面に点在する酸化鉛90が下電極60側に存在している。後で詳述するが、図11に示すEDX(エネルギー分散X線分光法;energy dispersive X-ray spectrometry)による分析により、絶縁体膜と下電極との界面における酸化鉛の点在が確認されている。また、図12に示す密着強度の測定結果から、絶縁体膜と下電極との界面に酸化鉛が存在しない場合には白金の膜厚が薄くなるほど密着強度が低下するにもかかわらず、絶縁体膜と下電極との界面に酸化鉛が点在する場合には白金の膜厚がさらに薄くても密着強度が高いことが確認されている。点在する酸化鉛が振動板と下電極との密着強度を向上させるのは、鉛が比較的酸化しやすく、加熱時に鉛が酸化という反応をすることによって振動板と下電極とを密着させるためと推測される。このように、点在する酸化鉛90により振動板50と下電極60との密着強度が確保されるので、下電極60の金属、特に白金を少なくしても振動板50と下電極60との密着強度が確保される。
【0031】
酸化鉛90には、下電極60の途中まで入り込んだ酸化鉛91と、下電極60を貫通した酸化鉛92とが含まれる。酸化鉛91,92は図1(a)に示すように混在していてもよいし、図1(b)に示すように主に酸化鉛91の状態で存在してもよいし、図1(c)に示すように主に酸化鉛92の状態で存在してもよい。図4(b)に示すように下電極60が二層以上の構造である場合、酸化鉛90には、第一層65の途中まで入り込んだ酸化鉛91aと、第一層65を貫通して第二層66の途中まで入り込んだ酸化鉛91bと、第一層65及び第二層66を貫通した酸化鉛92とが含まれる。
酸化鉛90の少なくとも一部が下電極60を貫通していると、下電極60と圧電体70との密着強度も向上する。
【0032】
酸化鉛90の組成は、PbOx(xは0.5以上2以下の数)が好ましい。これにより、振動板50と下電極60との密着強度が確保された好適な圧電アクチュエーター2が得られる。
なお、分析により検出される酸化鉛90の領域は、酸化鉛が含まれていればよく、酸化鉛が主成分であると好ましい。酸化鉛90の領域には、酸化チタン等、酸化鉛とは異なる物質が含まれてもよい。主成分が酸化鉛である領域にモル比で酸化鉛よりも少ない物質が一以上含まれてもよい。酸化チタンが含まれる場合、酸化鉛及び酸化チタンが主要成分であると好ましい。主要成分が酸化鉛及び酸化チタンである領域にモル比で少ない別の物質が一以上含まれてもよい。
【0033】
上述した記録ヘッドは、下電極を共通電極とし上電極を個別電極とした共通下電極構造とされてもよいし、上電極を共通電極とし下電極を個別電極とした共通上電極構造とされてもよいし、下電極及び上電極を共通電極とし両電極間に個別電極を設けた構造とされてもよい。
【0034】
図5(a)は、共通下電極構造の記録ヘッド1の要部を圧力室12の幅方向D1に沿った垂直断面で切断して示している。この記録ヘッド1は、共通の絶縁体膜55上に共通の下電極60が積層され、圧力室12毎に圧電体70が下電極60上に積層され、各圧電体70上に個別の上電極80が積層され、下電極60上並びに各圧電体70及び各下電極60の縁部に例えば絶縁体の保護膜85が形成されている。絶縁体膜55と下電極60との界面には、酸化鉛90が点在している。
図5(b)は、共通上電極構造の記録ヘッド1の要部を圧力室12の幅方向D1に沿った垂直断面で切断して示している。この記録ヘッド1は、圧力室12毎に下電極60が共通の絶縁体膜55上に積層され、各下電極60上及び各下電極60の周辺の絶縁体膜55上に個別の圧電体70が積層され、各圧電体70上及び圧電体70で覆われていない部分の絶縁体膜55上に共通の上電極80が積層されている。絶縁体膜55と下電極60との界面には、酸化鉛90が点在している。
【0035】
(2)液体噴射ヘッドの製造方法:
次に、図6〜9を参照して、記録ヘッドの製造方法を例示する。図6〜9は、圧力室12の長手方向D2に沿った垂直断面図であり、図示の倍率は判り易くするため適宜変えている。まず、図6(a)に示すように、例えば膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、表面に二酸化シリコン層(弾性膜51)を形成する。次いで、図6(b)に示すように、弾性膜51上に酸化ジルコニウム(ZrO2)の層(絶縁体膜55)を形成する。例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を弾性膜51上に形成した後にジルコニウム層を約500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより、酸化ジルコニウム層を形成することができる。
【0036】
次いで、図6(c)に示すように、焼成後に点在する酸化鉛90を形成するための薄い鉛(Pb)層95を絶縁体膜55上に形成する。鉛層95の厚みは、例えば、約5nm以下とすることができ、1nm程度でもよい。鉛層95は、DC(直流)マグネトロンスパッタリング法といったスパッタリング法等によって形成することができる。層の厚みは、DCマグネトロンスパッタ装置といったスパッタ装置の印加電圧やスパッタ処理時間を変えることにより調整することができる。例えば、スパッタ処理時間を長くすると層を厚くすることができ、スパッタ処理時間を短くすると層を薄くすることができる。
なお、この段階で熱酸化して絶縁体膜55上に酸化鉛を形成してもよい。
【0037】
次いで、図6(d)に示すように、絶縁体膜55上に焼成前の下電極60を形成する。例えば、厚み110nm以下の白金(Pt)層、白金とチタン(Ti)を含有する厚み110nm以下の層、又は、これらの層を第一層65として約5〜20nmのイリジウム(Ir)層を形成すればよい。或いは、厚み約20〜40nmのチタン層を形成した後に90nm以下の白金層をチタン層上に形成したり、さらに、約5〜20nmのイリジウム層を白金層上に形成したり、さらに、約3.5〜5.5nm(例えば約4nm)の種チタン層を下電極60上に形成したりしてもよい。チタン層は、絶縁体膜55と下電極60との密着力を高める性質を示す。イリジウム層は、焼成時にチタンが圧電体に拡散するのを防止する性質を示す。種チタン層は、焼成時に圧電体70の結晶化を促進させるシードとして機能し、焼成後には圧電体70内に拡散する。
上述した各層は、DCマグネトロンスパッタリング法といったスパッタリング法等によって形成することができる。各層の厚みは、スパッタ装置の印加電圧やスパッタ処理時間を変えることにより調整することができる。
【0038】
次いで、下電極60上に圧電体70を形成する。ゾル−ゲル法の場合、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を構成する金属の有機物を分散媒に分散したゾルを塗布し乾燥してゲル化し、さらに焼成してペロブスカイト型酸化物の結晶を形成することにより、圧電体70が得られる。まず、図6(e)に示すように、焼成前の下電極60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を形成することになる。すなわち、焼成前の下電極60が形成された流路形成基板10上にゾルを塗布し(塗布工程)、例えば約170〜180℃に加熱し約8〜30分保持して乾燥し(乾燥工程)、例えば約300〜400℃に加熱して約10〜30分保持して脱脂する(脱脂工程)。脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えばNO2、CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥用及び脱脂用の加熱装置には、ホットプレート、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置、等を用いることができる。次いで、脱脂後の圧電体前駆体膜71を約550〜800℃(例えば680℃)に加熱し約5〜30分間焼成して結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。焼成時の加熱方法は特に限定されないが、RTA(Rapid Thermal Annealing)法等を用いて、昇温レートを比較的速くすることが好ましい。RTA法には、RTP装置等を用いることができる。
【0039】
上述した工程により鉛層95や下電極60が加熱されると、鉛は酸化して酸化鉛90が絶縁体膜55と下電極60との界面に点在する。これにより、振動板50と下電極60との密着性が向上する。下電極60にチタンが含まれる場合、チタンが酸化して酸化鉛と白金の混合物になる。
なお、PZTの代わりに、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT、といったリラクサ強誘電体を用いてもよい。ゾル−ゲル法の代わりに、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、スパッタリング法、水熱法、等を用いてもよい。
【0040】
次いで、図7(a)に示すように、下電極60上に圧電体膜72の1層目を形成した段階で、下電極60及び1層目の圧電体膜72をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。これにより、2層目の圧電体膜72を形成する際に、下電極60及び1層目の圧電体膜72が形成された部分とそれ以外の部分との境界近傍において、下地の違いによる2層目の圧電体膜72の結晶成長への悪影響を小さくすることができる。パターニング後、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返し、図7(b)に示すように複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体70を形成する。圧電体前駆体膜71及び圧電体膜72の1層当たりの膜厚は、特に限定されないが、例えば、約0.1μmとすることができる。
なお、焼成工程を減らすために、塗布工程と乾燥工程と脱脂工程の組合せを複数回行った後に焼成工程を行ってもよい。これらの工程の組合せを複数回行ってもよい。
【0041】
圧電体70を形成した後、図7(c)に示すように、上電極80を流路形成基板10の全面に形成する。例えば、スパッタリング法等によって約0.05〜0.2μmのイリジウム層、金(Au)層、又は、白金層を形成すればよい。次いで、図8(a)に示すように、圧電体70及び上電極80を各圧力室12に対向する領域にパターニングして圧電体素子3を形成する。次いで、図8(b)に示すように、リード電極122を形成する。例えば、流路形成基板10の全面に亘って金層を形成した後にレジスト等からなるマスクパターンを介して圧電体素子3毎にパターニングすることにより、リード電極122が設けられる。次いで、図8(c)に示すように、リザーバ部31や圧電体素子保持部32等を予め形成した保護基板用ウェハ130を流路形成基板10上に例えば接着剤35によって接合する。保護基板用ウェハ130には、例えば、約400μmの厚さを有するシリコン単結晶基板を用いることができる。
【0042】
次いで、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚み(例えば約70μm)にする。次いで、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。マスク膜53には、窒化シリコン(SiN)等を用いることができる。次いで、図9(c)に示すように、KOH等のアルカリ溶液を用いて流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、液体流路(12〜15)を形成する。
【0043】
その後、流路形成基板用ウェハ110の圧力室12が開口する面側のマスク膜53を除去し、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の周縁部の不要部分を例えばダイシングにより切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズルプレート20を接合し、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を図2に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。
以上により、記録ヘッド1が製造される。なお、上述した製造方法以外の製造方法でも、振動板50と下電極60との界面に酸化鉛90を点在させることができる。
【0044】
(3)液体噴射装置の構成:
図10は、記録ヘッド1を有する記録装置(液体噴射装置)200の外観を示している。記録ヘッド1は、記録ヘッドユニットの一部としてインクジェット式記録装置等に搭載される。図10に示す記録装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、記録ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シートS1は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され記録ヘッド1から吐出するインクにより印刷がなされる。
【0045】
(4)実施例:
以下、実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0046】
[実施例]
絶縁体膜55側から順に厚み20nmのチタン層及び厚み30nmの白金層を有する焼成前の下電極60を形成し、圧電体70にPZTを用いて、酸化ジルコニウム層と下電極60との界面に酸化鉛90を点在させた圧電アクチュエーターサンプルを形成した。
【0047】
図11は、実施例のサンプルの断面をEDXにより分析した結果を示している。図11中、左側は走査電子顕微鏡の走査画面、右側は鉛の存在マップ、中央はチタンの存在マップ、「ZrO2」は絶縁体膜、「BE」は下電極、「PZT」は圧電体、を示している。鉛の存在マップでは、鉛の存在箇所が濃くなっている。チタンの存在マップでは、チタンの存在箇所が濃くなっている。図11に示すように、酸化鉛は、絶縁体膜と下電極との界面に点在している。図11に示される酸化鉛の領域は、下電極を貫通し、酸化鉛よりも少ない酸化チタンが含まれている。
【0048】
[比較例]
絶縁体膜55側から順に厚み20nmのチタン層及び図12に示される厚みの白金層を有する焼成前の下電極60を形成し、圧電体70にPZTを用いて、酸化ジルコニウム層と下電極60との界面に酸化鉛が存在しない圧電アクチュエーターサンプルを形成した。
【0049】
[評価方法]
実施例及び比較例のサンプルについて、それぞれ、下電極上から圧電体を剥がし、1cm角に切断して、振動板に対する下電極の密着強度をセバスチャン法により測定した。セバスチャン法は、所定の治具を層表面に貼り付けて引っ張り試験を行って剥がれる時の強度を測定する方法である。この強度が大きいほど密着性が大きいことになる。
【0050】
[試験結果]
図12は、上述した評価方法により振動板と下電極との密着強度を測定した結果を示している。ここで、横軸は白金層の厚み(単位nm)、縦軸は密着強度(単位kg/cm2)であり、白金とチタンを含有する層の厚みT1は横軸の厚みに20nmを加えた厚みになる。図12に示すように、振動板と下電極との界面に酸化鉛が存在しない場合には厚みT1が薄くなるほど密着強度が低下するにもかかわらず、振動板と下電極との界面に酸化鉛が点在する場合には厚みT1がさらに薄くても密着強度が高い。このように、振動板と下電極との界面に酸化鉛が点在することにより、密着強度が向上している。
【0051】
なお、厚みT1を110nm以下の範囲で50nm以外にしても、界面に酸化鉛が点在する下電極と振動板との密着強度は、界面に酸化鉛が点在していない厚み150nmの下電極と振動板との密着強度と同等以上になる。従って、下電極の厚みT1が110nm以下と薄くても振動板と電極との密着強度を確保することができる。
【0052】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、液体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)、これらに顔料や金属粒子といった固形粒子が分散した液状体、等の流体が含まれる。インクや液晶等は、液体の代表的な例である。なお、液体噴射ヘッドには、粉体や気体を吐出するものも含まれる。液体噴射ヘッドの具体例は、プリンター等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーやFED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、等が挙げられる。
【0053】
上述した実施形態では圧力室毎に個別の圧電体を設けているが、複数の圧力室に共通の圧電体を設け圧力室毎に個別電極を設けることも可能である。
上述した実施形態では流路形成基板にリザーバの一部を形成しているが、流路形成基板とは別の部材にリザーバを形成することも可能である。
上述した実施形態では圧電体素子の上側を圧電体素子保持部で覆っているが、圧電体素子の上側を大気に開放することも可能である。
上述した実施形態では振動板を隔てて圧電体素子の反対側に圧力室を設けたが、圧電体素子側に圧力室を設けることも可能である。例えば、固定した振動板間及び圧電体素子間で囲まれた空間を形成すれば、この空間を圧力室とすることができる。
【0054】
本発明を適用可能な圧電アクチュエーターは、液体噴射ヘッドに設ける以外にも、超音波発信機といった超音波デバイス、超音波モーター、強誘電体メモリー、等に設けることが可能である。また、圧電アクチュエーターに電圧検出手段を接続することにより機械電気変換機能を発揮させることができるので、圧電アクチュエーターには、圧力センサー、角速度センサー、超音波センサー、圧電発電素子、等が含まれる。
【0055】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保する技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…圧電アクチュエーター、3…圧電体素子、10…流路形成基板、12…圧力室、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…保護基板、40…コンプライアンス基板、50…振動板、51…弾性膜(振動板の一部)、55…絶縁体膜(振動板の一部)、60…下電極(第1電極)、65…第一層、66…第二層、70…圧電体、71…圧電体前駆体膜、72…圧電体膜、80…上電極(第2電極)、85…保護膜、90,91,91a,91b,92…酸化鉛、95…鉛層、100…リザーバ、200…記録装置(液体噴射装置)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板及び圧電体素子を有する液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッド等には、例えば、電気機械変換機能を有する結晶化圧電性セラミックスからなる圧電体膜を2つの電極で挟んだ圧電体素子を振動板に積層した圧電アクチュエーターが用いられる。このような液体噴射ヘッドには、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力室の一部を振動板で構成したインクジェット式記録ヘッドがある。インクジェット式記録ヘッドは、振動板を圧電体素子により変形させて圧力室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させる。
【0003】
特許文献1に記載の液体噴射ヘッドは、振動板に含まれる酸化ジルコニウム層上に圧電体素子が設けられている。この圧電体素子は、酸化ジルコニウム層上に下電極膜が設けられ、該下電極膜上に圧電体が設けられ、該圧電体上に上電極膜が設けられている。下電極膜は、酸化ジルコニウム層側から順に、白金を主成分とする第1層、チタンを主成分とする第2層、イリジウムを主成分とする第3層、が積層された構造とされている。第1層と第2層と第3層の膜厚比は、6〜7:3〜2:1とされている。下電極膜を形成するための白金層は、厚さが120〜130nmとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−60259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コストダウン目的で高価な白金の層を薄くすると、振動板と下電極との密着強度が低下し、液体噴射ヘッドの駆動により界面剥離が発生し、振動板に亀裂が発生する虞がある。
【0006】
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、液体を吐出するノズルに連通した圧力室と、該圧力室の壁面の一部を構成する振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している態様を有する。
また、本発明は、上記液体噴射ヘッドを含む液体噴射装置の態様を有する。
【0008】
さらに、本発明は、振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する圧電アクチュエーターであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している態様を有する。
【0009】
上述した態様では、第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有する振動板と第1電極との界面に点在する酸化鉛により振動板と第1電極との密着強度が確保される。従って、電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保することができる。
【0010】
ところで、上記酸化鉛の少なくとも一部が第1電極を貫通していると、第1電極と圧電体との密着強度も向上させることができる。
【0011】
上記酸化鉛の組成がPbOx(0.5≦x≦2)であると、振動板と電極との密着強度を確保した好適な液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0012】
上記第1電極が白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有していてもよい。この層の厚みは、110nm以下でもよい。このような薄い第1電極でも振動板との密着強度が確保されるので、コストダウンされた液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、圧電アクチュエーターを提供することができる。
なお、酸化ジルコニウム層、酸化鉛、白金とチタンの少なくとも一方を含有する層、等は、これらの物質が含まれていればよく、不純物が含まれてもよいし、これらの物質以外の物質が一以上含まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(c)は圧電アクチュエーター2の要部を例示する断面図。
【図2】記録ヘッド1の構成の概略を例示する便宜上の分解斜視図。
【図3】(a)は記録ヘッド1を例示する平面図、(b)は記録ヘッド1を例示する断面図。
【図4】(a),(b)は下電極60の要部を例示する断面図。
【図5】(a),(b)は記録ヘッド1の要部を例示する断面図。
【図6】(a)〜(e)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図7】(a)〜(c)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図8】(a)〜(c)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図9】(a)〜(c)は記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図。
【図10】記録装置(液体噴射装置)200の構成の概略を例示する図。
【図11】圧電アクチュエーターサンプルの断面を分析した結果を示す図。
【図12】振動板と下電極との密着強度の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0015】
(1)液体噴射ヘッドの構成:
図1(a)〜(c)は本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドに含まれる圧電アクチュエーター2の要部を示す垂直断面図、図2は液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1を便宜上、分解した分解斜視図、図3(a)は記録ヘッド1の平面図、図3(b)は記録ヘッド1を図2のA1−A1の位置で断面視した垂直断面図、である。
【0016】
記録ヘッド1は、液体を吐出するノズル21に連通した圧力室12と、圧力室12の壁面の一部を構成する振動板50と、振動板50上に設けられた圧電体素子3と、を有している。振動板50及び圧電体素子3は、圧電アクチュエーター2を構成する。圧電体素子3は、振動板50上に設けられた下電極(第1電極)60と、下電極60上に設けられた圧電体70と、圧電体70上に設けられた上電極(第2電極)80と、を含んでいる。なお、本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、第1電極の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に第2電極が配置されることも、本発明に含まれる。
振動板50は、下電極60側に絶縁体膜(酸化ジルコニウムの層)55を有している。このような振動板50と下電極60との界面に酸化鉛90が点在し、薄い下電極60と振動板50との密着強度が確保されている。
【0017】
まず、図2,3を参照して、記録ヘッド1の構成を説明する。記録ヘッド1は、概略、ノズルプレート20、流路形成基板10、圧電体素子3等を設けた振動板50、コンプライアンス基板40等を設けた保護基板30、が順に積層された構造とされている。これらの各層は、接合されて積層されてもよいし、分離されない材料の表面を変性する等して一体に形成されてもよい。
【0018】
流路形成基板10には、結晶面方位が(110)面であるシリコン単結晶基板などを用いることができる。振動板50の一部を構成する弾性膜51は、例えば、結晶面方位が(110)面であるシリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化する等によって流路形成基板10と一体に形成され、二酸化シリコン(SiO2)等で構成することができる。弾性膜51の厚みは、弾性を示す限り特に限定されないが、約0.5〜2μm(例えば約1.0μm)とすることができる。
流路形成基板10には、他方の面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力室(圧力発生室)12と細幅のインク供給路14と太幅の連通路15からなる複数の液体流路と、各連通路15に繋がる共通の液体流路である連通部13とが形成される。液体流路(12,14,15)は、圧力室12の短手方向である幅方向D1へ並べられている。連通部13は、各圧力室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する。各インク供給路14は、流路の幅を片側から絞ることにより、圧力室12の断面積よりも小さい断面積とされる。むろん、流路の幅を両側から絞ってインクインク供給路を形成してもよいし、流路の厚さ方向から絞ることによりインク供給路を形成してもよい。各連通路15は、インク供給路14の断面積よりも大きい断面積とされ、例えば、圧力室12と同じ断面積とされる。
【0019】
ノズルプレート20は、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼、等を用いることができ、流路形成基板10の開口面側に固着される。この固着には、接着剤、熱溶着フィルム、等を用いることができる。ノズルプレート20には、各圧力室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されている。従って、圧力室12は、液体を吐出するノズル21に連通している。
【0020】
一方、弾性膜51上には、該弾性膜51とともに振動板50を構成する絶縁体膜55が積層されている。絶縁体膜55は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む層で構成することができる。すなわち、振動板50は、下電極60側に酸化ジルコニウム層を有していることになる。この酸化ジルコニウム層は、主成分が酸化ジルコニウムであればよく、モル比でジルコニウムよりも少ない物質が含まれてもよい。ここで、主成分は、含まれる成分の中で最もモル比の多い成分とする。絶縁体膜55の厚みは、弾性を示す限り特に限定されないが、約0.2〜0.8μm(例えば約0.4μm)とすることができる。
振動板50は、圧力室12の下電極60側の壁面を構成する。
【0021】
振動板50上には、圧電体素子3が設けられている。
絶縁体膜55上には、白金(Pt)とチタン(Ti)の少なくとも一方を含有する層を有する下電極(第1電極)60が積層されている。図1(a)等に示すように、振動板50と下電極60との界面には、酸化鉛90が点在している。下電極60及び酸化鉛90の詳細は、後述する。
【0022】
下電極60上には、圧電体70が積層されている。圧電体70には、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)といった強誘電体、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、といった金属酸化物を添加したもの、等のペロブスカイト構造を有する材料を用いることができる。このような材料には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)、等が含まれる。圧電体70の厚みは、電気機械変換作用を示す範囲で特に限定されないが、約0.5〜2μm(例えば約1.1μm)とすることができる。好ましくは、製造工程でクラックが発生しない程度に圧電体70の厚さを抑え、十分な変位特性を示す程度に圧電体70を厚くするとよい。
【0023】
圧電体70上には、上電極(第2電極)80が積層されている。上電極80を構成する金属は、イリジウム(Ir)、金(Au)、白金、等を用いることができ、これらの金属を主成分としてモル比で少ない別の金属が含まれてもよい。上電極80の厚みは、特に限定されないが、約0.05〜0.2μm(例えば約0.1μm)とすることができる。
一般的には、圧電体素子3の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体70を圧力室12毎にパターニングして圧電体素子3を構成する。パターニングされた何れか一方の電極及び圧電体70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部4という。図2,3に示す圧電体素子3は、下電極60を共通電極とし、上電極80を個別電極としている。各上電極80には、インク供給路14側の端部近傍から絶縁体膜55上へ延びたリード電極122が接続されている。リード電極122には、例えば、金等を用いることができる。
【0024】
圧電体素子3を設けた振動板50上には、保護基板30が接着剤35を介して接合されている。保護基板30には、例えば、シリコン単結晶基板、ガラス、セラミックス材料、等を用いることができる。好ましくは、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板等を用いるとよい。保護基板30は、リザーバ部31及び貫通孔33が厚み方向に貫通し、圧電体素子3に対向する領域に圧電体素子保持部32が設けられている。リザーバ部31は、連通部13とともにリザーバ100を構成し、圧力室の幅方向D1に亘って形成されている。圧電体素子保持部32は、圧電体素子3の運動を阻害しない程度の空間を有する。この空間は、密封されていても、密封されていなくてもよい。貫通孔33内には、各圧電体素子3から引き出されたリード電極122の端部近傍が露出する。
保護基板30上には、並設された圧電体素子3を駆動するための駆動回路120が固定されている。駆動回路120には、回路基板、半導体集積回路(IC)、等を用いることができる。駆動回路120とリード電極122とは、接続配線121を介して電気的に接続されている。接続配線121には、ボンディングワイヤといった導電性ワイヤ等を用いることができる。
【0025】
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42を有するコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、厚み6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)といった剛性が低く可撓性を有する材料等が用いられ、リザーバ部31の一方の面を封止する。固定板42は、例えば、厚み30μmのステンレス鋼(SUS)といった金属等の硬質の材料が用いられ、リザーバ100に対向する領域が開口部43とされている。従って、リザーバ100の一方の面は、封止膜41のみで封止されている。
【0026】
本記録ヘッド1は、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル21に至るまで内部をインクで満たす。駆動回路120からの記録信号に従い、圧力室12毎に下電極60と上電極80との間に電圧を印加すると、圧電体70、下電極60及び振動板50の変形によりノズル21からインク滴が吐出する。
【0027】
図4(a)は、振動板50との界面に酸化鉛90が点在した下電極60の要部を例示した垂直断面図である。下電極60を構成する金属には、白金、チタン、イリジウム、等を用いることができる。構成金属は、酸化物といった化合物の状態でもよいし、化合していない状態でもよく、合金の状態でもよいし、単独の金属の状態でもよく、これらの金属を主成分としてモル比で少ない別の金属が含まれてもよい。下電極60の材料は、白金、白金と酸化チタンとの混合物、これらの物質を主要成分としてモル比で少ない別の物質を含む材料、等を例示することができる。ここで、主要成分は、モル比合計が他の含有成分のモル比よりも多いような一以上の対象成分とする。前述のような材料の下電極60は、白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有していることになる。この場合の下電極60の厚みT1は、導電性を示す限り特に限定されず、約0.1〜0.5μmとしてもよいが、高価な金属を減らす観点から110nm以下としてもよい。厚みT1の下限は、下電極60が層状に形成される厚みとすることができ、例えば約5nmとすることができる。
【0028】
また、図4(b)に例示するように、下電極60を二層以上の構造としてもよい。振動板側の第一層65の成分は、白金、白金と酸化チタンとの混合物、これらの物質を主要成分としてモル比で少ない別の物質を含む成分、等を例示することができる。このような第一層65は、白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有していることになる。圧電体70側の第二層66の成分は、イリジウム、イリジウムを主成分としてモル比で少ない別の物質を含む成分、等を例示することができる。
上記第一層65の厚みT1は、導電性を示す限り特に限定されず、約0.1〜0.5μmとしてもよいが、高価な金属を減らす観点から110nm以下としてもよい。厚みT1の下限は、第一層65が層状に形成される厚みとすることができ、例えば約5nmとすることができる。上記第二層66の厚みは、特に限定されないが、約5〜20nm(例えば約10nm)とすることができる。
【0029】
下電極が白金とチタンを含む場合、白金(Pt)とチタン(Ti)の存在比は、例えば、白金を70〜93重量%、チタンを7〜30重量%とすることができる。白金を70重量%以上にすると下電極の導電性が特に良好になるので好ましく、チタンを7重量%以上にすると絶縁体膜と下電極との密着性が向上するので好ましい。
【0030】
図1(a)及び図4(a)に例示する圧電アクチュエーター2は、絶縁体膜55と下電極60との界面に点在する酸化鉛90が下電極60側に存在している。後で詳述するが、図11に示すEDX(エネルギー分散X線分光法;energy dispersive X-ray spectrometry)による分析により、絶縁体膜と下電極との界面における酸化鉛の点在が確認されている。また、図12に示す密着強度の測定結果から、絶縁体膜と下電極との界面に酸化鉛が存在しない場合には白金の膜厚が薄くなるほど密着強度が低下するにもかかわらず、絶縁体膜と下電極との界面に酸化鉛が点在する場合には白金の膜厚がさらに薄くても密着強度が高いことが確認されている。点在する酸化鉛が振動板と下電極との密着強度を向上させるのは、鉛が比較的酸化しやすく、加熱時に鉛が酸化という反応をすることによって振動板と下電極とを密着させるためと推測される。このように、点在する酸化鉛90により振動板50と下電極60との密着強度が確保されるので、下電極60の金属、特に白金を少なくしても振動板50と下電極60との密着強度が確保される。
【0031】
酸化鉛90には、下電極60の途中まで入り込んだ酸化鉛91と、下電極60を貫通した酸化鉛92とが含まれる。酸化鉛91,92は図1(a)に示すように混在していてもよいし、図1(b)に示すように主に酸化鉛91の状態で存在してもよいし、図1(c)に示すように主に酸化鉛92の状態で存在してもよい。図4(b)に示すように下電極60が二層以上の構造である場合、酸化鉛90には、第一層65の途中まで入り込んだ酸化鉛91aと、第一層65を貫通して第二層66の途中まで入り込んだ酸化鉛91bと、第一層65及び第二層66を貫通した酸化鉛92とが含まれる。
酸化鉛90の少なくとも一部が下電極60を貫通していると、下電極60と圧電体70との密着強度も向上する。
【0032】
酸化鉛90の組成は、PbOx(xは0.5以上2以下の数)が好ましい。これにより、振動板50と下電極60との密着強度が確保された好適な圧電アクチュエーター2が得られる。
なお、分析により検出される酸化鉛90の領域は、酸化鉛が含まれていればよく、酸化鉛が主成分であると好ましい。酸化鉛90の領域には、酸化チタン等、酸化鉛とは異なる物質が含まれてもよい。主成分が酸化鉛である領域にモル比で酸化鉛よりも少ない物質が一以上含まれてもよい。酸化チタンが含まれる場合、酸化鉛及び酸化チタンが主要成分であると好ましい。主要成分が酸化鉛及び酸化チタンである領域にモル比で少ない別の物質が一以上含まれてもよい。
【0033】
上述した記録ヘッドは、下電極を共通電極とし上電極を個別電極とした共通下電極構造とされてもよいし、上電極を共通電極とし下電極を個別電極とした共通上電極構造とされてもよいし、下電極及び上電極を共通電極とし両電極間に個別電極を設けた構造とされてもよい。
【0034】
図5(a)は、共通下電極構造の記録ヘッド1の要部を圧力室12の幅方向D1に沿った垂直断面で切断して示している。この記録ヘッド1は、共通の絶縁体膜55上に共通の下電極60が積層され、圧力室12毎に圧電体70が下電極60上に積層され、各圧電体70上に個別の上電極80が積層され、下電極60上並びに各圧電体70及び各下電極60の縁部に例えば絶縁体の保護膜85が形成されている。絶縁体膜55と下電極60との界面には、酸化鉛90が点在している。
図5(b)は、共通上電極構造の記録ヘッド1の要部を圧力室12の幅方向D1に沿った垂直断面で切断して示している。この記録ヘッド1は、圧力室12毎に下電極60が共通の絶縁体膜55上に積層され、各下電極60上及び各下電極60の周辺の絶縁体膜55上に個別の圧電体70が積層され、各圧電体70上及び圧電体70で覆われていない部分の絶縁体膜55上に共通の上電極80が積層されている。絶縁体膜55と下電極60との界面には、酸化鉛90が点在している。
【0035】
(2)液体噴射ヘッドの製造方法:
次に、図6〜9を参照して、記録ヘッドの製造方法を例示する。図6〜9は、圧力室12の長手方向D2に沿った垂直断面図であり、図示の倍率は判り易くするため適宜変えている。まず、図6(a)に示すように、例えば膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、表面に二酸化シリコン層(弾性膜51)を形成する。次いで、図6(b)に示すように、弾性膜51上に酸化ジルコニウム(ZrO2)の層(絶縁体膜55)を形成する。例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を弾性膜51上に形成した後にジルコニウム層を約500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより、酸化ジルコニウム層を形成することができる。
【0036】
次いで、図6(c)に示すように、焼成後に点在する酸化鉛90を形成するための薄い鉛(Pb)層95を絶縁体膜55上に形成する。鉛層95の厚みは、例えば、約5nm以下とすることができ、1nm程度でもよい。鉛層95は、DC(直流)マグネトロンスパッタリング法といったスパッタリング法等によって形成することができる。層の厚みは、DCマグネトロンスパッタ装置といったスパッタ装置の印加電圧やスパッタ処理時間を変えることにより調整することができる。例えば、スパッタ処理時間を長くすると層を厚くすることができ、スパッタ処理時間を短くすると層を薄くすることができる。
なお、この段階で熱酸化して絶縁体膜55上に酸化鉛を形成してもよい。
【0037】
次いで、図6(d)に示すように、絶縁体膜55上に焼成前の下電極60を形成する。例えば、厚み110nm以下の白金(Pt)層、白金とチタン(Ti)を含有する厚み110nm以下の層、又は、これらの層を第一層65として約5〜20nmのイリジウム(Ir)層を形成すればよい。或いは、厚み約20〜40nmのチタン層を形成した後に90nm以下の白金層をチタン層上に形成したり、さらに、約5〜20nmのイリジウム層を白金層上に形成したり、さらに、約3.5〜5.5nm(例えば約4nm)の種チタン層を下電極60上に形成したりしてもよい。チタン層は、絶縁体膜55と下電極60との密着力を高める性質を示す。イリジウム層は、焼成時にチタンが圧電体に拡散するのを防止する性質を示す。種チタン層は、焼成時に圧電体70の結晶化を促進させるシードとして機能し、焼成後には圧電体70内に拡散する。
上述した各層は、DCマグネトロンスパッタリング法といったスパッタリング法等によって形成することができる。各層の厚みは、スパッタ装置の印加電圧やスパッタ処理時間を変えることにより調整することができる。
【0038】
次いで、下電極60上に圧電体70を形成する。ゾル−ゲル法の場合、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を構成する金属の有機物を分散媒に分散したゾルを塗布し乾燥してゲル化し、さらに焼成してペロブスカイト型酸化物の結晶を形成することにより、圧電体70が得られる。まず、図6(e)に示すように、焼成前の下電極60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を形成することになる。すなわち、焼成前の下電極60が形成された流路形成基板10上にゾルを塗布し(塗布工程)、例えば約170〜180℃に加熱し約8〜30分保持して乾燥し(乾燥工程)、例えば約300〜400℃に加熱して約10〜30分保持して脱脂する(脱脂工程)。脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えばNO2、CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥用及び脱脂用の加熱装置には、ホットプレート、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置、等を用いることができる。次いで、脱脂後の圧電体前駆体膜71を約550〜800℃(例えば680℃)に加熱し約5〜30分間焼成して結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。焼成時の加熱方法は特に限定されないが、RTA(Rapid Thermal Annealing)法等を用いて、昇温レートを比較的速くすることが好ましい。RTA法には、RTP装置等を用いることができる。
【0039】
上述した工程により鉛層95や下電極60が加熱されると、鉛は酸化して酸化鉛90が絶縁体膜55と下電極60との界面に点在する。これにより、振動板50と下電極60との密着性が向上する。下電極60にチタンが含まれる場合、チタンが酸化して酸化鉛と白金の混合物になる。
なお、PZTの代わりに、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT、といったリラクサ強誘電体を用いてもよい。ゾル−ゲル法の代わりに、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、スパッタリング法、水熱法、等を用いてもよい。
【0040】
次いで、図7(a)に示すように、下電極60上に圧電体膜72の1層目を形成した段階で、下電極60及び1層目の圧電体膜72をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。これにより、2層目の圧電体膜72を形成する際に、下電極60及び1層目の圧電体膜72が形成された部分とそれ以外の部分との境界近傍において、下地の違いによる2層目の圧電体膜72の結晶成長への悪影響を小さくすることができる。パターニング後、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返し、図7(b)に示すように複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体70を形成する。圧電体前駆体膜71及び圧電体膜72の1層当たりの膜厚は、特に限定されないが、例えば、約0.1μmとすることができる。
なお、焼成工程を減らすために、塗布工程と乾燥工程と脱脂工程の組合せを複数回行った後に焼成工程を行ってもよい。これらの工程の組合せを複数回行ってもよい。
【0041】
圧電体70を形成した後、図7(c)に示すように、上電極80を流路形成基板10の全面に形成する。例えば、スパッタリング法等によって約0.05〜0.2μmのイリジウム層、金(Au)層、又は、白金層を形成すればよい。次いで、図8(a)に示すように、圧電体70及び上電極80を各圧力室12に対向する領域にパターニングして圧電体素子3を形成する。次いで、図8(b)に示すように、リード電極122を形成する。例えば、流路形成基板10の全面に亘って金層を形成した後にレジスト等からなるマスクパターンを介して圧電体素子3毎にパターニングすることにより、リード電極122が設けられる。次いで、図8(c)に示すように、リザーバ部31や圧電体素子保持部32等を予め形成した保護基板用ウェハ130を流路形成基板10上に例えば接着剤35によって接合する。保護基板用ウェハ130には、例えば、約400μmの厚さを有するシリコン単結晶基板を用いることができる。
【0042】
次いで、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚み(例えば約70μm)にする。次いで、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。マスク膜53には、窒化シリコン(SiN)等を用いることができる。次いで、図9(c)に示すように、KOH等のアルカリ溶液を用いて流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、液体流路(12〜15)を形成する。
【0043】
その後、流路形成基板用ウェハ110の圧力室12が開口する面側のマスク膜53を除去し、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の周縁部の不要部分を例えばダイシングにより切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズルプレート20を接合し、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を図2に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。
以上により、記録ヘッド1が製造される。なお、上述した製造方法以外の製造方法でも、振動板50と下電極60との界面に酸化鉛90を点在させることができる。
【0044】
(3)液体噴射装置の構成:
図10は、記録ヘッド1を有する記録装置(液体噴射装置)200の外観を示している。記録ヘッド1は、記録ヘッドユニットの一部としてインクジェット式記録装置等に搭載される。図10に示す記録装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、記録ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シートS1は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され記録ヘッド1から吐出するインクにより印刷がなされる。
【0045】
(4)実施例:
以下、実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0046】
[実施例]
絶縁体膜55側から順に厚み20nmのチタン層及び厚み30nmの白金層を有する焼成前の下電極60を形成し、圧電体70にPZTを用いて、酸化ジルコニウム層と下電極60との界面に酸化鉛90を点在させた圧電アクチュエーターサンプルを形成した。
【0047】
図11は、実施例のサンプルの断面をEDXにより分析した結果を示している。図11中、左側は走査電子顕微鏡の走査画面、右側は鉛の存在マップ、中央はチタンの存在マップ、「ZrO2」は絶縁体膜、「BE」は下電極、「PZT」は圧電体、を示している。鉛の存在マップでは、鉛の存在箇所が濃くなっている。チタンの存在マップでは、チタンの存在箇所が濃くなっている。図11に示すように、酸化鉛は、絶縁体膜と下電極との界面に点在している。図11に示される酸化鉛の領域は、下電極を貫通し、酸化鉛よりも少ない酸化チタンが含まれている。
【0048】
[比較例]
絶縁体膜55側から順に厚み20nmのチタン層及び図12に示される厚みの白金層を有する焼成前の下電極60を形成し、圧電体70にPZTを用いて、酸化ジルコニウム層と下電極60との界面に酸化鉛が存在しない圧電アクチュエーターサンプルを形成した。
【0049】
[評価方法]
実施例及び比較例のサンプルについて、それぞれ、下電極上から圧電体を剥がし、1cm角に切断して、振動板に対する下電極の密着強度をセバスチャン法により測定した。セバスチャン法は、所定の治具を層表面に貼り付けて引っ張り試験を行って剥がれる時の強度を測定する方法である。この強度が大きいほど密着性が大きいことになる。
【0050】
[試験結果]
図12は、上述した評価方法により振動板と下電極との密着強度を測定した結果を示している。ここで、横軸は白金層の厚み(単位nm)、縦軸は密着強度(単位kg/cm2)であり、白金とチタンを含有する層の厚みT1は横軸の厚みに20nmを加えた厚みになる。図12に示すように、振動板と下電極との界面に酸化鉛が存在しない場合には厚みT1が薄くなるほど密着強度が低下するにもかかわらず、振動板と下電極との界面に酸化鉛が点在する場合には厚みT1がさらに薄くても密着強度が高い。このように、振動板と下電極との界面に酸化鉛が点在することにより、密着強度が向上している。
【0051】
なお、厚みT1を110nm以下の範囲で50nm以外にしても、界面に酸化鉛が点在する下電極と振動板との密着強度は、界面に酸化鉛が点在していない厚み150nmの下電極と振動板との密着強度と同等以上になる。従って、下電極の厚みT1が110nm以下と薄くても振動板と電極との密着強度を確保することができる。
【0052】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、液体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)、これらに顔料や金属粒子といった固形粒子が分散した液状体、等の流体が含まれる。インクや液晶等は、液体の代表的な例である。なお、液体噴射ヘッドには、粉体や気体を吐出するものも含まれる。液体噴射ヘッドの具体例は、プリンター等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーやFED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、等が挙げられる。
【0053】
上述した実施形態では圧力室毎に個別の圧電体を設けているが、複数の圧力室に共通の圧電体を設け圧力室毎に個別電極を設けることも可能である。
上述した実施形態では流路形成基板にリザーバの一部を形成しているが、流路形成基板とは別の部材にリザーバを形成することも可能である。
上述した実施形態では圧電体素子の上側を圧電体素子保持部で覆っているが、圧電体素子の上側を大気に開放することも可能である。
上述した実施形態では振動板を隔てて圧電体素子の反対側に圧力室を設けたが、圧電体素子側に圧力室を設けることも可能である。例えば、固定した振動板間及び圧電体素子間で囲まれた空間を形成すれば、この空間を圧力室とすることができる。
【0054】
本発明を適用可能な圧電アクチュエーターは、液体噴射ヘッドに設ける以外にも、超音波発信機といった超音波デバイス、超音波モーター、強誘電体メモリー、等に設けることが可能である。また、圧電アクチュエーターに電圧検出手段を接続することにより機械電気変換機能を発揮させることができるので、圧電アクチュエーターには、圧力センサー、角速度センサー、超音波センサー、圧電発電素子、等が含まれる。
【0055】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、電極を薄くしても振動板と電極との密着強度を確保する技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…圧電アクチュエーター、3…圧電体素子、10…流路形成基板、12…圧力室、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…保護基板、40…コンプライアンス基板、50…振動板、51…弾性膜(振動板の一部)、55…絶縁体膜(振動板の一部)、60…下電極(第1電極)、65…第一層、66…第二層、70…圧電体、71…圧電体前駆体膜、72…圧電体膜、80…上電極(第2電極)、85…保護膜、90,91,91a,91b,92…酸化鉛、95…鉛層、100…リザーバ、200…記録装置(液体噴射装置)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに連通した圧力室と、該圧力室の壁面の一部を構成する振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している、液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記酸化鉛の少なくとも一部が前記第1電極を貫通した、請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記酸化鉛の組成がPbOx(0.5≦x≦2)である、請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1電極が白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有し、該層の厚みが110nm以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを含む液体噴射装置。
【請求項6】
振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する圧電アクチュエーターであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している、圧電アクチュエーター。
【請求項1】
液体を吐出するノズルに連通した圧力室と、該圧力室の壁面の一部を構成する振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している、液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記酸化鉛の少なくとも一部が前記第1電極を貫通した、請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記酸化鉛の組成がPbOx(0.5≦x≦2)である、請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1電極が白金とチタンの少なくとも一方を含有する層を有し、該層の厚みが110nm以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを含む液体噴射装置。
【請求項6】
振動板と、該振動板上に設けられた圧電体素子と、を有する圧電アクチュエーターであって、
前記圧電体素子は、前記振動板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた圧電体と、該圧電体上に設けられた第2電極と、を含み、
前記振動板は、前記第1電極側に酸化ジルコニウムの層を有し、
前記振動板と前記第1電極との界面に酸化鉛が点在している、圧電アクチュエーター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【公開番号】特開2013−67132(P2013−67132A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208670(P2011−208670)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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