液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
【課題】液体の溶媒によるリード電極とフレキシブル配線基板との接触不良が生じるまでの時間の長い液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を得ること。
【解決手段】インク導入路111,410に連通するインク導入口45からコンプライアンス基板40を伝わって、コンプライアンス基板40に形成された開口部47の内面48から保持孔113および貫通孔32に向かうインクの溶媒の流れは、開口部47の内面48を覆い、保護基板30と接触する固定板42によって妨げられ、保持孔113および貫通孔32へ漏れる量を減少できる。したがって、溶媒が保持孔113および貫通孔32へ漏れるまでの時間を稼ぐことができ、固定板42がコンプライアンス基板40の側面を覆わない構成と比較して、リード電極90とCOF基板210との接触不良が生じるまでの時間が長いインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【解決手段】インク導入路111,410に連通するインク導入口45からコンプライアンス基板40を伝わって、コンプライアンス基板40に形成された開口部47の内面48から保持孔113および貫通孔32に向かうインクの溶媒の流れは、開口部47の内面48を覆い、保護基板30と接触する固定板42によって妨げられ、保持孔113および貫通孔32へ漏れる量を減少できる。したがって、溶媒が保持孔113および貫通孔32へ漏れるまでの時間を稼ぐことができ、固定板42がコンプライアンス基板40の側面を覆わない構成と比較して、リード電極90とCOF基板210との接触不良が生じるまでの時間が長いインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドとして、例えば、ノズル開口が複数穿設されたノズルプレートが一方面に接合され、各ノズル開口にそれぞれ連通する複数の圧力発生室と各圧力発生室の共通インク室であるマニホールドとしてのリザーバーとを形成する流路形成基板を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
流路形成基板の他方面には弾性膜が形成され、弾性膜を挟んで圧力発生室に対向する位置には、圧力発生室内の圧力を変化させてノズル開口から液体を噴射させる圧力発生素子としての圧電素子が配置される。また、流路形成基板の他方面には、圧電素子を保護するための保護基板が設けられる。
【0003】
保護基板上には、封止膜、固定板および封止膜と固定板とを接着する貼合わせ接着剤を備えたコンプライアンス基板が配置され、コンプライアンス基板上には、保持部材としてケースヘッドが配置される。
ケースヘッドには、リザーバーに液体を導入する液体導入路としてのインク導入路が設けられている。また、コンプライアンス基板には、液体導入路とマニホールドとを連通する液体導入口としてのインク導入口が形成されている。ここで、導入される液体は、粘度調節等のために、溶質に応じた溶媒を含む。
【0004】
また、圧電素子にはリード電極が接続され、リード電極には、フレキシブル配線基板としてのCOF(Chip On Film)基板が、導電性粒子を潰して電気的接続を行なう異方性導電性接着剤、例えば、ACF(Anisotropic Condactive Film)、ACP(Anisotropic Condactive Paste)等により接続されている。フレキシブル配線基板は、保護基板内およびケースヘッド内を通され、圧電素子の駆動IC、さらには接続基板の端子を経由して、外部の制御部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液体の溶媒が、コンプライアンス基板に形成された液体導入口からコンプライアンス基板を伝わって、保護基板内に浸入しやすい。浸入した溶媒によって、圧電素子のリード電極とフレキシブル配線基板とを接続する異方性導電性接着剤に用いられる樹脂が分解または膨潤し、リード電極とフレキシブル配線基板との接触不良が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
液体を噴射するノズル開口に連通した圧力発生室が形成された流路形成基板と、前記圧力発生室毎に設けられた圧力発生素子と、前記圧力発生素子を覆う保護基板と、前記保護基板上に設けられ、固定板と封止膜とを有し、複数の前記圧力発生室と連通するマニホールドを、前記保護基板との間に形成するコンプライアンス基板と、前記圧力発生素子に形成された電極から引き出され、前記保護基板に形成された貫通孔に露出したリード電極と、前記保護基板上に設けられ、前記貫通孔につながる保持孔および液体を導入する液体導入路が形成された保持部材と、前記コンプライアンス基板に設けられ、前記液体導入路と前記マニホールドとに連通する液体導入口と、前記貫通孔および前記保持孔に対応して前記コンプライアンス基板に形成された開口部と、前記貫通孔、前記保持孔および前記開口部を通され、端部が前記リード電極に異方性導電性接着剤によって接続されたフレキシブル配線基板とを備え、前記開口部の内面は前記固定板によって覆われ、前記固定板と前記保護基板とが接触していることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【0009】
本適用例によれば、液体導入路に連通する液体導入口からコンプライアンス基板を構成する固定板と封止膜との間やコンプライアンス基板を伝わって、コンプライアンス基板に形成された開口部の内面から保持孔および貫通孔に向かう液体の溶媒の流れは、開口部の内面を覆い、保護基板と接触する固定板によって妨げられ、保持孔および貫通孔へ漏れる量が減少する。したがって、溶媒が保持孔および貫通孔へ漏れるまでの時間が稼げ、固定板がコンプライアンス基板の側面を覆わない構成と比較して、リード電極とフレキシブル配線基板との接触不良が生じるまでの時間が長い液体噴射ヘッドが得られる。
【0010】
[適用例2]
上記液体噴射ヘッドにおいて、前記固定板は金属板で、前記開口部は前記固定板から前記封止膜に向かう打抜きによって形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
この適用例では、固定板が延性を有する金属板なので、打抜きによって開口部を形成する際に、固定板で開口部の内面が覆われ、容易な製造方法で、前述の効果を達成できる液体噴射ヘッドが得られる。
【0011】
[適用例3]
上記液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0012】
前述の効果を達成できる液体噴射装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態におけるプリンターの概略構成を示す図。
【図2】インクジェット式記録ヘッドユニットの斜視図。
【図3】インクジェット式記録ヘッドユニットを示す分解斜視図。
【図4】インクジェット式記録ヘッドの部分分解斜視図。
【図5】インクジェット式記録ヘッドの部分分解断面斜視図。
【図6】インクジェット式記録ヘッドの部分平面図。
【図7】図6におけるA−A概略断面図。
【図8】インク導入口付近の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、実施形態にかかる液体噴射ヘッドが液体噴射装置としてのプリンター1000に搭載される場合を例に挙げて行う。
図1はプリンター1000の概略構成を示す図である。図1中、X方向は、キャリッジ2が移動する主走査方向を示し、Y方向は、記録媒体Pが移送される副走査方向を示している。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。
【0015】
図1に示すように、プリンター1000は、図1では直接図示していない複数のインクジェット式記録ヘッド1を備えた液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドユニット11と、キャリッジ2と、キャリッジ移動機構3と、プラテンローラー4と、インクカートリッジ5とを備えている。
【0016】
インクジェット式記録ヘッド1は、インクジェット式記録ヘッドユニット11の記録用紙等の記録媒体P側(図1中Z方向下面)に取付けられ、記録媒体Pの表面にインクを液滴として吐出する。
キャリッジ移動機構3は、タイミングベルト6と、駆動プーリー7と、従動プーリー8と、モーター107とを備えている。タイミングベルト6には、キャリッジ2が係止されており、タイミングベルト6は、駆動プーリー7と従動プーリー8とに張設されている。駆動プーリー7は、モーター107の出力軸に接続されている。
モーター107が作動すると、キャリッジ2は、プリンター1000に架設されたガイドロッド9に案内されて、主走査方向であるX方向に往復移動する。プラテンローラー4は、モーター104から駆動力を受け、記録媒体Pを副走査方向であるY方向に移送する。
【0017】
インクカートリッジ5は、インクを貯留し、キャリッジ2に着脱可能に装着されている。インクカートリッジ5は、インクジェット式記録ヘッド1にインクを供給する。供給するインクが複数色の場合、インクカートリッジ5は複数個装着される。図1では、10個のインクカートリッジ5が装着されている。
【0018】
このように構成されたプリンター1000は、キャリッジ2をキャリッジ移動機構3によりX方向に往復移動させるとともに、記録媒体Pをプラテンローラー4によりY方向に移送させながら、キャリッジ2に取付けられたインクジェット式記録ヘッド1からインクを吐出することによって、記録媒体P上に画像等の記録を行うことができる。
【0019】
インクジェット式記録ヘッド1およびインクジェット式記録ヘッドユニット11について、図2および図3に基づいて説明する。
図2に、実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッドユニット11の斜視図を示した。また、図3(a)〜(c)は、インクジェット式記録ヘッドユニット11を示す分解斜視図である。
ここで、図3(c)では、インクジェット式記録ヘッド1を、組み込まれる前の状態で1個のみについて拡大して示している。実際には、5個のインクジェット式記録ヘッド1がインクジェット式記録ヘッドユニット11に組み込まれている。
【0020】
図2および図3において、1個のインクジェット式記録ヘッド1は、2種類のインクの吐出に対応しており、実施形態では5個のインクジェット式記録ヘッド1を用いて10色のインクを吐出する。
なお、インクジェット式記録ヘッドユニット11に組み込まれているインクジェット式記録ヘッド1の数は、吐出するインクの種類に応じ、5個に限らない。
【0021】
インクジェット式記録ヘッドユニット11は、ホルダー部材400と中継基板500とを備えている。
ホルダー部材400には、5個のインクジェット式記録ヘッド1に対応して10箇所に液体導入路としてのインク導入路410が形成されている。また、中継基板500にはインク導入路410を通すための孔510が形成されている。
中継基板500は、インク導入路410を孔510に通した状態で、ホルダー部材400の片側から、ホルダー部材400にはめ込まれている。
【0022】
図3(c)において、インクジェット式記録ヘッド1は、保持部材としてのケースヘッド110とフレキシブル配線基板としての一対のCOF(Chip On Film)基板210とを備えている。COF基板210は、複数の配線220および駆動回路200を備えている。
図2および図3において、インクジェット式記録ヘッド1は、中継基板500のはめ込まれた側とは反対側である記録媒体P側(図1中Z方向下面)から、ホルダー部材400に差し込まれている。ホルダー部材400には、開口部としてのスリット420が、差し込まれるインクジェット式記録ヘッド1に対応して5箇所に形成され、中継基板500には開口部としてのスリット520が5箇所に形成されている。一対のCOF基板210は、スリット420およびスリット520に通され、配線220は、中継基板500の端子530にそれぞれ接続されている。
【0023】
また、図3(c)において、ケースヘッド110には、インク導入路410と接続され、インクジェット式記録ヘッド1内にインクを導入する液体導入路としてのインク導入路111が形成されている。
【0024】
図4は、インクジェット式記録ヘッド1の部分分解斜視図であり、インクジェット式記録ヘッド1が、ホルダー部材400および中継基板500に組み込まれる前の状態を示している。図5は、インクジェット式記録ヘッド1の部分分解断面斜視図である。図5では、ケースヘッド110が省略されている。
また、図6は、インクジェット式記録ヘッド1の部分平面図、図7は、図6におけるA−A概略断面図であり、図2におけるインクジェット式記録ヘッドユニット11のA−A概略断面図である。
【0025】
図4、図5および図7において、インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とコンプライアンス基板40と駆動回路200が実装された一対のCOF基板210とを備えている。
流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とは、流路形成基板10をノズルプレート20と保護基板30とで挟むように積み重ねられ、保護基板30上には、コンプライアンス基板40が設けられている。
COF基板210は、第1の端部211と第1の端部211の反対に位置する第2の端部212とを備えている。図7において、COF基板210の第1の端部211は保護基板30に差し込まれ、第2の端部212は、中継基板500と接続されている。
【0026】
流路形成基板10は、例えば、面方位(110)のシリコン単結晶板からなる。その一方の面には、例えば、二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
なお、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板以外の材料、例えば、金属板やセラミック板などであってもよい。
【0027】
流路形成基板10には、隔壁によって区画された複数の圧力発生室12が、その幅方向に並設された列として2列設けられている。ここで、圧力発生室12は列間で対をなして設けられている。
また、各列の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通路13が形成され、連通路13と各圧力発生室12とが、圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。連通路13は、圧力発生室12の列毎に共通のインク室となるマニホールド100の一部を構成する。マニホールド100については後に詳しく述べる。
インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通路13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
なお、実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路14を形成してもよい。
【0028】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。実施形態では、流路形成基板10に圧力発生室12が並設された列を2列設けたため、1つのインクジェット式記録ヘッド1には、ノズル開口21の並設されたノズル列が2列設けられている。なお、ノズルプレート20は、例えばガラスセラミックス、シリコン単結晶基板またはステンレス鋼などからなる。
【0029】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、白金(Pt)などの金属やルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)などの金属酸化物からなる下電極60と、ペロブスカイト構造の圧電体層70と、Au、Irなどの金属からなる上電極80とが形成され、圧力発生素子としての圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極60、圧電体層70および上電極80を含む部分をいう。圧電素子300は、圧力発生室12に対応して対をなしている。
また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55および下電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0030】
一般的には、圧電素子300のいずれか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体層70を各圧力発生室12にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされたいずれか一方の電極および圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。
なお、実施形態では、下電極60を圧電素子300の共通電極とし、上電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。いずれの場合においても、圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。
【0031】
また、圧電素子300の個別電極である各上電極80には、絶縁体膜55上まで延設された、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。リード電極90は、圧電素子300に対応して対をなしている。リード電極90は、一端部が上電極80に接続されていると共に、他端部側が、並設された圧電素子300の列と列との間に引き出され、延設されている。
【0032】
また、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31を有する保護基板30が、接着剤35等によって接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に配置されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部31は、密封されていても、密封されていなくてもよい。また、圧電素子保持部31は、各圧電素子300に独立して設けてもよく、複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにしてもよい。実施形態では、圧電素子保持部31を複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにした。
【0033】
さらに、保護基板30上の圧電素子保持部31に相対向する領域には、複数の個別流路の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部が設けられている。実施形態では、マニホールド100の一部は、保護基板30と流路形成基板10との接合面とは反対側の面に設けられた凹部で形成されている。
保護基板30の流路形成基板10との反対は凹部で開口しており、開口は、コンプライアンス基板40によって封止されている。なお、マニホールド100は、複数の個別流路の短手方向(幅方向)に亘って連続して設けられている。
【0034】
また、マニホールド100は、圧力発生室12の長手方向で保護基板30の両端部近傍まで設けられており、マニホールド100の一端部側は、個別流路の端部に相対向する領域まで設けられている。このようにマニホールド100を圧電素子保持部31の上方(平面視した際に圧電素子保持部31と重なる領域)に設けることで、マニホールド100を、圧力発生室12の長手方向における外側に拡幅する必要がなく、インクジェット式記録ヘッド1の圧力発生室12の長手方向の幅を小さくして小型化することができる。
【0035】
保護基板30には、個別流路である連通路13の端部に一端が連通すると共に、マニホールド100の一部を構成する厚さ方向に貫通した貫通孔である供給部101が設けられている。供給部101は、実施形態では、複数の個別流路である連通路13に亘って1つ設けられている。そして、インクは、供給部101を介して各個別流路である連通路13、インク供給路14および圧力発生室12に供給される。すなわち、実施形態では、供給部101もマニホールド100の一部として機能する。
なお、実施形態では、流路形成基板10にマニホールド100となる連通路13を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10の連通路13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド100としてもよい。
【0036】
また、保護基板30の略中央部、すなわち、一対の圧力発生室12の対向する領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔32が形成されている。さらに、貫通孔32の中心には仕切り部33が設けられている。
延設されたリード電極90は、上電極80に接続されている端部とは反対の他端部側が、貫通孔32の底部に露出している。貫通孔32に露出したリード電極90は、貫通孔32に挿入されたCOF基板210に形成された配線220と第1の端部211で電気的に接続されている。接続は、例えば、異方性導電性接着剤としてのACP600を用いて行なわれている。
ACP600を用いることで、複数のリード電極90を1つのCOF基板210に接続することができるため、ワイヤーボンディングによって各リード電極90と順次接続するのに比べて作業時間を短縮することができ、コストを低減することができる。
COF基板210は可撓性のある基板であり、リード電極90と接続される第1の端部211は略L字型に曲げられている。第1の端部211は対向する圧電素子300に向けて配置されている。COF基板210に実装された駆動回路200によって、各圧電素子300は駆動する。
【0037】
保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いている。
【0038】
コンプライアンス基板40は、封止膜41および固定板42を備えている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料、例えば、厚さが数μm程度のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム等からなる。また、固定板42は、例えば、厚さが数十μm程度のステンレス鋼(SUS)などの金属などの硬質の材料からなる。
図7において、封止膜41と固定板42とは、貼り合わせ接着剤700によって接着されている。
【0039】
固定板42は、保護基板30のマニホールド100の周囲に亘って設けられており、マニホールド100に相対向する領域は厚さ方向に完全に除去された固定板開口部43となっている。
また、図5および図6において、固定板42には、固定板開口部43側に突出する突出部44が設けられており、この突出部44には、厚さ方向に貫通してインクが貯留された図1に示したインクカートリッジ5からのインクをマニホールド100に供給するための液体導入口としてのインク導入口45が設けられている。
図4、図5および図6において、実施形態では、突出部44を、供給部101とは反対側で、マニホールド100に相対向する領域まで突出させるように設けた。このため、インク導入口45は、保護基板30に設けられた供給部101とは圧力発生室12の長手方向における反対側の端部に設けられている。このように、インク導入口45を保護基板30の供給部101とは反対側の端部に設けることによって、図1に示したインクカートリッジ5から導入されたインクの動圧による影響が、供給部101を介して圧力発生室12に及ぶのを低減することができる。
【0040】
また、固定板42の固定板開口部43によって、マニホールド100の一方面は、可撓性を有する封止膜41および貼り合わせ接着剤700で封止された撓み変形可能な可撓部46となっている。ここで、可撓部46は、封止膜41のみで構成されていてもよい。
実施形態では、可撓部46は、マニホールド100に相対向する領域の保護基板30の供給部101に相対向する領域と、マニホールド100に相対向する領域の固定板42のインク導入口45の周囲とに設けられており、可撓部46は、これらの供給部101に相対向する領域とインク導入口45の周囲とに亘って連続して設けられている。このように、可撓部46を供給部101に相対向する領域とインク導入口45の周囲とに亘って連続して設けることで、可撓部46を広い面積で形成することができ、マニホールド100内のコンプライアンスを増大させて、圧力変動の悪影響によるクロストークの発生を確実に低減させることができる。
【0041】
また、図4、図5および図6において、コンプライアンス基板40には、貫通孔32に対応して開口部47が形成されている。
以下に、開口部47の内面48付近の様子を詳しく説明する。図8に、インク導入口45付近の拡大断面図を示した。
図8において、開口部47の内面48は、コンプライアンス基板40を形成する固定板42によって覆われている。また、固定板42は保護基板30と接触している。具体的には、固定板42は、開口部47で封止膜41に向かって曲がり、固定板42の端部が保護基板30と接している。
【0042】
コンプライアンス基板40の開口部47を形成する加工方法として、固定板42側から金型のダイ、パンチ等で打抜き加工を行なうと、金属材料からなる固定板42は、延性によって打抜き方向に向かって垂れる。このとき、貼り合わせ接着剤700も一緒に垂れる。垂れた部分は、開口部47の内面48を覆う。また、垂れることによって封止膜41および固定板42と貼り合わせ接着剤700との界面の端は、保護基板30に向かって曲がり、保護基板30に接触することで、保護基板30によって塞がれる。
【0043】
図7において、コンプライアンス基板40上には、ケースヘッド110が設けられている。ケースヘッド110には、図1に示したインクカートリッジ5のインクをマニホールド100に供給するインク導入路111が設けられている。
また、ケースヘッド110には、固定板開口部43に対向する領域に凹部112が形成され、固定板開口部43のたわみ変形が適宜行われるようになっている。
さらに、ケースヘッド110には、保護基板30に設けられた貫通孔32と連通する保持孔113が設けられている。
【0044】
COF基板210の第1の端部211は、保持孔113および貫通孔32内に挿通されて、第1の端部211の配線220がリード電極90と接続されている。
なお、COF基板210は、貫通孔32および保持孔113に充填されたモールド剤で支持してもよい。
【0045】
また、図8において、ケースヘッド110は凸部114を備え、凸部114と保護基板30とで、開口部47を取り囲むコンプライアンス基板40の領域が挟まれている。さらに、凸部114は、インク導入口45を取り囲むように形成され、凸部114と固定板42は接着剤120で接着されている。
ケースヘッド110の材料としては、例えば、PPSが主成分の樹脂材料、金属材料等が挙げられる。
【0046】
図7において、COF基板210の第1の端部211とは反対側に位置する第2の端部212は、ホルダー部材400のスリット420および中継基板500のスリット520に通され、第2の端部212の配線220が中継基板500の端子530に接合されている。
【0047】
インクジェット式記録ヘッド1では、図1に示したインクカートリッジ5からインクを取り込み、インク導入路410、インク導入路111およびインク導入口45を通して、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路200からの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極60と上電極80との間に電圧が印加される。電圧の印加によって、弾性膜50および圧電体層70がたわみ変形し、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインクが吐出する。インクの溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等を用いることができる。
【0048】
駆動信号は、例えば、駆動電源信号等の駆動ICを駆動させるための駆動系信号のほか、シリアル信号(SI)等の各種制御系信号を含み、配線は、それぞれの信号が供給される複数の配線で構成される。
【0049】
このような実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)インク導入路111,410に連通するインク導入口45からコンプライアンス基板40を構成する固定板42と封止膜41との間やコンプライアンス基板40を伝わって、コンプライアンス基板40に形成された開口部47の内面48から保持孔113および貫通孔32に向かうインクの溶媒の流れは、開口部47の内面48を覆い、保護基板30と接触する固定板42によって妨げられ、保持孔113および貫通孔32へ漏れる量を減少できる。したがって、溶媒が保持孔113および貫通孔32へ漏れるまでの時間を稼ぐことができ、固定板42がコンプライアンス基板40の側面を覆わない構成と比較して、リード電極90とCOF基板210との接触不良が生じるまでの時間が長いインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0050】
(2)固定板42が延性を有する金属板なので、打抜きによって開口部47を形成する際に、固定板42で開口部47の内面48が覆われ、容易な製造方法で、前述の効果を達成できるインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0051】
(3)前述の効果を達成できるプリンター1000を得ることができる。
【0052】
以上、実施形態を説明したが、上述したものに限定されるものではない。
例えば、実施形態では、複数のインクジェット式記録ヘッド1を備えたインクジェット式記録ヘッドユニット11について説明したが、一つのインクジェット式記録ヘッド1を備えたものであってもよい。
また、フレキシブル配線基板はCOF基板210に限らず、駆動回路が実装されていないフレキシブル基板であってもよい。
【0053】
さらに、上述した実施形態では、コンプライアンス基板40に1つの可撓部46を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、固定板42に複数の固定板開口部43を設けることで、複数の可撓部46を設けるようにしてもよい。
【0054】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドユニットを、また液体噴射装置の一例としてプリンターを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1…インクジェット式記録ヘッド、2…キャリッジ、3…キャリッジ移動機構、4…プラテンローラー、5…インクカートリッジ、6…タイミングベルト、7…駆動プーリー、8…従動プーリー、9…ガイドロッド、10…流路形成基板、11…液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドユニット、12…圧力発生室、13…連通路、14…インク供給路、20…ノズルプレート、21…ノズル開口、30…保護基板、31…圧電素子保持部、32…貫通孔、33…仕切り部、35,120…接着剤、40…コンプライアンス基板、41…封止膜、42…固定板、43…固定板開口部、44…突出部、45…液体導入口としてのインク導入口、46…可撓部、47…開口部、48…開口部の内面、50…弾性膜、55…絶縁体膜、60…下電極、70…圧電体層、80…上電極、90…リード電極、100…マニホールド、101…供給部、104,107…モーター、110…保持部材としてのケースヘッド、111,410…液体導入路としてのインク導入路、112…凹部、113…保持孔、114…凸部、200…駆動回路、210…フレキシブル配線基板としてのCOF基板、211…第1の端部、212…第2の端部、220…配線、300…圧力発生素子としての圧電素子、400…ホルダー部材、420,520…スリット、500…中継基板、510…孔、530…端子、600…異方性導電性接着剤としてのACP、700…貼り合わせ接着剤、1000…液体噴射装置としてのプリンター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドとして、例えば、ノズル開口が複数穿設されたノズルプレートが一方面に接合され、各ノズル開口にそれぞれ連通する複数の圧力発生室と各圧力発生室の共通インク室であるマニホールドとしてのリザーバーとを形成する流路形成基板を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
流路形成基板の他方面には弾性膜が形成され、弾性膜を挟んで圧力発生室に対向する位置には、圧力発生室内の圧力を変化させてノズル開口から液体を噴射させる圧力発生素子としての圧電素子が配置される。また、流路形成基板の他方面には、圧電素子を保護するための保護基板が設けられる。
【0003】
保護基板上には、封止膜、固定板および封止膜と固定板とを接着する貼合わせ接着剤を備えたコンプライアンス基板が配置され、コンプライアンス基板上には、保持部材としてケースヘッドが配置される。
ケースヘッドには、リザーバーに液体を導入する液体導入路としてのインク導入路が設けられている。また、コンプライアンス基板には、液体導入路とマニホールドとを連通する液体導入口としてのインク導入口が形成されている。ここで、導入される液体は、粘度調節等のために、溶質に応じた溶媒を含む。
【0004】
また、圧電素子にはリード電極が接続され、リード電極には、フレキシブル配線基板としてのCOF(Chip On Film)基板が、導電性粒子を潰して電気的接続を行なう異方性導電性接着剤、例えば、ACF(Anisotropic Condactive Film)、ACP(Anisotropic Condactive Paste)等により接続されている。フレキシブル配線基板は、保護基板内およびケースヘッド内を通され、圧電素子の駆動IC、さらには接続基板の端子を経由して、外部の制御部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液体の溶媒が、コンプライアンス基板に形成された液体導入口からコンプライアンス基板を伝わって、保護基板内に浸入しやすい。浸入した溶媒によって、圧電素子のリード電極とフレキシブル配線基板とを接続する異方性導電性接着剤に用いられる樹脂が分解または膨潤し、リード電極とフレキシブル配線基板との接触不良が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
液体を噴射するノズル開口に連通した圧力発生室が形成された流路形成基板と、前記圧力発生室毎に設けられた圧力発生素子と、前記圧力発生素子を覆う保護基板と、前記保護基板上に設けられ、固定板と封止膜とを有し、複数の前記圧力発生室と連通するマニホールドを、前記保護基板との間に形成するコンプライアンス基板と、前記圧力発生素子に形成された電極から引き出され、前記保護基板に形成された貫通孔に露出したリード電極と、前記保護基板上に設けられ、前記貫通孔につながる保持孔および液体を導入する液体導入路が形成された保持部材と、前記コンプライアンス基板に設けられ、前記液体導入路と前記マニホールドとに連通する液体導入口と、前記貫通孔および前記保持孔に対応して前記コンプライアンス基板に形成された開口部と、前記貫通孔、前記保持孔および前記開口部を通され、端部が前記リード電極に異方性導電性接着剤によって接続されたフレキシブル配線基板とを備え、前記開口部の内面は前記固定板によって覆われ、前記固定板と前記保護基板とが接触していることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【0009】
本適用例によれば、液体導入路に連通する液体導入口からコンプライアンス基板を構成する固定板と封止膜との間やコンプライアンス基板を伝わって、コンプライアンス基板に形成された開口部の内面から保持孔および貫通孔に向かう液体の溶媒の流れは、開口部の内面を覆い、保護基板と接触する固定板によって妨げられ、保持孔および貫通孔へ漏れる量が減少する。したがって、溶媒が保持孔および貫通孔へ漏れるまでの時間が稼げ、固定板がコンプライアンス基板の側面を覆わない構成と比較して、リード電極とフレキシブル配線基板との接触不良が生じるまでの時間が長い液体噴射ヘッドが得られる。
【0010】
[適用例2]
上記液体噴射ヘッドにおいて、前記固定板は金属板で、前記開口部は前記固定板から前記封止膜に向かう打抜きによって形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
この適用例では、固定板が延性を有する金属板なので、打抜きによって開口部を形成する際に、固定板で開口部の内面が覆われ、容易な製造方法で、前述の効果を達成できる液体噴射ヘッドが得られる。
【0011】
[適用例3]
上記液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0012】
前述の効果を達成できる液体噴射装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態におけるプリンターの概略構成を示す図。
【図2】インクジェット式記録ヘッドユニットの斜視図。
【図3】インクジェット式記録ヘッドユニットを示す分解斜視図。
【図4】インクジェット式記録ヘッドの部分分解斜視図。
【図5】インクジェット式記録ヘッドの部分分解断面斜視図。
【図6】インクジェット式記録ヘッドの部分平面図。
【図7】図6におけるA−A概略断面図。
【図8】インク導入口付近の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、実施形態にかかる液体噴射ヘッドが液体噴射装置としてのプリンター1000に搭載される場合を例に挙げて行う。
図1はプリンター1000の概略構成を示す図である。図1中、X方向は、キャリッジ2が移動する主走査方向を示し、Y方向は、記録媒体Pが移送される副走査方向を示している。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。
【0015】
図1に示すように、プリンター1000は、図1では直接図示していない複数のインクジェット式記録ヘッド1を備えた液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドユニット11と、キャリッジ2と、キャリッジ移動機構3と、プラテンローラー4と、インクカートリッジ5とを備えている。
【0016】
インクジェット式記録ヘッド1は、インクジェット式記録ヘッドユニット11の記録用紙等の記録媒体P側(図1中Z方向下面)に取付けられ、記録媒体Pの表面にインクを液滴として吐出する。
キャリッジ移動機構3は、タイミングベルト6と、駆動プーリー7と、従動プーリー8と、モーター107とを備えている。タイミングベルト6には、キャリッジ2が係止されており、タイミングベルト6は、駆動プーリー7と従動プーリー8とに張設されている。駆動プーリー7は、モーター107の出力軸に接続されている。
モーター107が作動すると、キャリッジ2は、プリンター1000に架設されたガイドロッド9に案内されて、主走査方向であるX方向に往復移動する。プラテンローラー4は、モーター104から駆動力を受け、記録媒体Pを副走査方向であるY方向に移送する。
【0017】
インクカートリッジ5は、インクを貯留し、キャリッジ2に着脱可能に装着されている。インクカートリッジ5は、インクジェット式記録ヘッド1にインクを供給する。供給するインクが複数色の場合、インクカートリッジ5は複数個装着される。図1では、10個のインクカートリッジ5が装着されている。
【0018】
このように構成されたプリンター1000は、キャリッジ2をキャリッジ移動機構3によりX方向に往復移動させるとともに、記録媒体Pをプラテンローラー4によりY方向に移送させながら、キャリッジ2に取付けられたインクジェット式記録ヘッド1からインクを吐出することによって、記録媒体P上に画像等の記録を行うことができる。
【0019】
インクジェット式記録ヘッド1およびインクジェット式記録ヘッドユニット11について、図2および図3に基づいて説明する。
図2に、実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッドユニット11の斜視図を示した。また、図3(a)〜(c)は、インクジェット式記録ヘッドユニット11を示す分解斜視図である。
ここで、図3(c)では、インクジェット式記録ヘッド1を、組み込まれる前の状態で1個のみについて拡大して示している。実際には、5個のインクジェット式記録ヘッド1がインクジェット式記録ヘッドユニット11に組み込まれている。
【0020】
図2および図3において、1個のインクジェット式記録ヘッド1は、2種類のインクの吐出に対応しており、実施形態では5個のインクジェット式記録ヘッド1を用いて10色のインクを吐出する。
なお、インクジェット式記録ヘッドユニット11に組み込まれているインクジェット式記録ヘッド1の数は、吐出するインクの種類に応じ、5個に限らない。
【0021】
インクジェット式記録ヘッドユニット11は、ホルダー部材400と中継基板500とを備えている。
ホルダー部材400には、5個のインクジェット式記録ヘッド1に対応して10箇所に液体導入路としてのインク導入路410が形成されている。また、中継基板500にはインク導入路410を通すための孔510が形成されている。
中継基板500は、インク導入路410を孔510に通した状態で、ホルダー部材400の片側から、ホルダー部材400にはめ込まれている。
【0022】
図3(c)において、インクジェット式記録ヘッド1は、保持部材としてのケースヘッド110とフレキシブル配線基板としての一対のCOF(Chip On Film)基板210とを備えている。COF基板210は、複数の配線220および駆動回路200を備えている。
図2および図3において、インクジェット式記録ヘッド1は、中継基板500のはめ込まれた側とは反対側である記録媒体P側(図1中Z方向下面)から、ホルダー部材400に差し込まれている。ホルダー部材400には、開口部としてのスリット420が、差し込まれるインクジェット式記録ヘッド1に対応して5箇所に形成され、中継基板500には開口部としてのスリット520が5箇所に形成されている。一対のCOF基板210は、スリット420およびスリット520に通され、配線220は、中継基板500の端子530にそれぞれ接続されている。
【0023】
また、図3(c)において、ケースヘッド110には、インク導入路410と接続され、インクジェット式記録ヘッド1内にインクを導入する液体導入路としてのインク導入路111が形成されている。
【0024】
図4は、インクジェット式記録ヘッド1の部分分解斜視図であり、インクジェット式記録ヘッド1が、ホルダー部材400および中継基板500に組み込まれる前の状態を示している。図5は、インクジェット式記録ヘッド1の部分分解断面斜視図である。図5では、ケースヘッド110が省略されている。
また、図6は、インクジェット式記録ヘッド1の部分平面図、図7は、図6におけるA−A概略断面図であり、図2におけるインクジェット式記録ヘッドユニット11のA−A概略断面図である。
【0025】
図4、図5および図7において、インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とコンプライアンス基板40と駆動回路200が実装された一対のCOF基板210とを備えている。
流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とは、流路形成基板10をノズルプレート20と保護基板30とで挟むように積み重ねられ、保護基板30上には、コンプライアンス基板40が設けられている。
COF基板210は、第1の端部211と第1の端部211の反対に位置する第2の端部212とを備えている。図7において、COF基板210の第1の端部211は保護基板30に差し込まれ、第2の端部212は、中継基板500と接続されている。
【0026】
流路形成基板10は、例えば、面方位(110)のシリコン単結晶板からなる。その一方の面には、例えば、二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
なお、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板以外の材料、例えば、金属板やセラミック板などであってもよい。
【0027】
流路形成基板10には、隔壁によって区画された複数の圧力発生室12が、その幅方向に並設された列として2列設けられている。ここで、圧力発生室12は列間で対をなして設けられている。
また、各列の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通路13が形成され、連通路13と各圧力発生室12とが、圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。連通路13は、圧力発生室12の列毎に共通のインク室となるマニホールド100の一部を構成する。マニホールド100については後に詳しく述べる。
インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通路13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
なお、実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路14を形成してもよい。
【0028】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。実施形態では、流路形成基板10に圧力発生室12が並設された列を2列設けたため、1つのインクジェット式記録ヘッド1には、ノズル開口21の並設されたノズル列が2列設けられている。なお、ノズルプレート20は、例えばガラスセラミックス、シリコン単結晶基板またはステンレス鋼などからなる。
【0029】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、白金(Pt)などの金属やルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)などの金属酸化物からなる下電極60と、ペロブスカイト構造の圧電体層70と、Au、Irなどの金属からなる上電極80とが形成され、圧力発生素子としての圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極60、圧電体層70および上電極80を含む部分をいう。圧電素子300は、圧力発生室12に対応して対をなしている。
また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55および下電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0030】
一般的には、圧電素子300のいずれか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体層70を各圧力発生室12にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされたいずれか一方の電極および圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。
なお、実施形態では、下電極60を圧電素子300の共通電極とし、上電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。いずれの場合においても、圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。
【0031】
また、圧電素子300の個別電極である各上電極80には、絶縁体膜55上まで延設された、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。リード電極90は、圧電素子300に対応して対をなしている。リード電極90は、一端部が上電極80に接続されていると共に、他端部側が、並設された圧電素子300の列と列との間に引き出され、延設されている。
【0032】
また、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31を有する保護基板30が、接着剤35等によって接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に配置されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部31は、密封されていても、密封されていなくてもよい。また、圧電素子保持部31は、各圧電素子300に独立して設けてもよく、複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにしてもよい。実施形態では、圧電素子保持部31を複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにした。
【0033】
さらに、保護基板30上の圧電素子保持部31に相対向する領域には、複数の個別流路の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部が設けられている。実施形態では、マニホールド100の一部は、保護基板30と流路形成基板10との接合面とは反対側の面に設けられた凹部で形成されている。
保護基板30の流路形成基板10との反対は凹部で開口しており、開口は、コンプライアンス基板40によって封止されている。なお、マニホールド100は、複数の個別流路の短手方向(幅方向)に亘って連続して設けられている。
【0034】
また、マニホールド100は、圧力発生室12の長手方向で保護基板30の両端部近傍まで設けられており、マニホールド100の一端部側は、個別流路の端部に相対向する領域まで設けられている。このようにマニホールド100を圧電素子保持部31の上方(平面視した際に圧電素子保持部31と重なる領域)に設けることで、マニホールド100を、圧力発生室12の長手方向における外側に拡幅する必要がなく、インクジェット式記録ヘッド1の圧力発生室12の長手方向の幅を小さくして小型化することができる。
【0035】
保護基板30には、個別流路である連通路13の端部に一端が連通すると共に、マニホールド100の一部を構成する厚さ方向に貫通した貫通孔である供給部101が設けられている。供給部101は、実施形態では、複数の個別流路である連通路13に亘って1つ設けられている。そして、インクは、供給部101を介して各個別流路である連通路13、インク供給路14および圧力発生室12に供給される。すなわち、実施形態では、供給部101もマニホールド100の一部として機能する。
なお、実施形態では、流路形成基板10にマニホールド100となる連通路13を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、流路形成基板10の連通路13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド100としてもよい。
【0036】
また、保護基板30の略中央部、すなわち、一対の圧力発生室12の対向する領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔32が形成されている。さらに、貫通孔32の中心には仕切り部33が設けられている。
延設されたリード電極90は、上電極80に接続されている端部とは反対の他端部側が、貫通孔32の底部に露出している。貫通孔32に露出したリード電極90は、貫通孔32に挿入されたCOF基板210に形成された配線220と第1の端部211で電気的に接続されている。接続は、例えば、異方性導電性接着剤としてのACP600を用いて行なわれている。
ACP600を用いることで、複数のリード電極90を1つのCOF基板210に接続することができるため、ワイヤーボンディングによって各リード電極90と順次接続するのに比べて作業時間を短縮することができ、コストを低減することができる。
COF基板210は可撓性のある基板であり、リード電極90と接続される第1の端部211は略L字型に曲げられている。第1の端部211は対向する圧電素子300に向けて配置されている。COF基板210に実装された駆動回路200によって、各圧電素子300は駆動する。
【0037】
保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いている。
【0038】
コンプライアンス基板40は、封止膜41および固定板42を備えている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料、例えば、厚さが数μm程度のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム等からなる。また、固定板42は、例えば、厚さが数十μm程度のステンレス鋼(SUS)などの金属などの硬質の材料からなる。
図7において、封止膜41と固定板42とは、貼り合わせ接着剤700によって接着されている。
【0039】
固定板42は、保護基板30のマニホールド100の周囲に亘って設けられており、マニホールド100に相対向する領域は厚さ方向に完全に除去された固定板開口部43となっている。
また、図5および図6において、固定板42には、固定板開口部43側に突出する突出部44が設けられており、この突出部44には、厚さ方向に貫通してインクが貯留された図1に示したインクカートリッジ5からのインクをマニホールド100に供給するための液体導入口としてのインク導入口45が設けられている。
図4、図5および図6において、実施形態では、突出部44を、供給部101とは反対側で、マニホールド100に相対向する領域まで突出させるように設けた。このため、インク導入口45は、保護基板30に設けられた供給部101とは圧力発生室12の長手方向における反対側の端部に設けられている。このように、インク導入口45を保護基板30の供給部101とは反対側の端部に設けることによって、図1に示したインクカートリッジ5から導入されたインクの動圧による影響が、供給部101を介して圧力発生室12に及ぶのを低減することができる。
【0040】
また、固定板42の固定板開口部43によって、マニホールド100の一方面は、可撓性を有する封止膜41および貼り合わせ接着剤700で封止された撓み変形可能な可撓部46となっている。ここで、可撓部46は、封止膜41のみで構成されていてもよい。
実施形態では、可撓部46は、マニホールド100に相対向する領域の保護基板30の供給部101に相対向する領域と、マニホールド100に相対向する領域の固定板42のインク導入口45の周囲とに設けられており、可撓部46は、これらの供給部101に相対向する領域とインク導入口45の周囲とに亘って連続して設けられている。このように、可撓部46を供給部101に相対向する領域とインク導入口45の周囲とに亘って連続して設けることで、可撓部46を広い面積で形成することができ、マニホールド100内のコンプライアンスを増大させて、圧力変動の悪影響によるクロストークの発生を確実に低減させることができる。
【0041】
また、図4、図5および図6において、コンプライアンス基板40には、貫通孔32に対応して開口部47が形成されている。
以下に、開口部47の内面48付近の様子を詳しく説明する。図8に、インク導入口45付近の拡大断面図を示した。
図8において、開口部47の内面48は、コンプライアンス基板40を形成する固定板42によって覆われている。また、固定板42は保護基板30と接触している。具体的には、固定板42は、開口部47で封止膜41に向かって曲がり、固定板42の端部が保護基板30と接している。
【0042】
コンプライアンス基板40の開口部47を形成する加工方法として、固定板42側から金型のダイ、パンチ等で打抜き加工を行なうと、金属材料からなる固定板42は、延性によって打抜き方向に向かって垂れる。このとき、貼り合わせ接着剤700も一緒に垂れる。垂れた部分は、開口部47の内面48を覆う。また、垂れることによって封止膜41および固定板42と貼り合わせ接着剤700との界面の端は、保護基板30に向かって曲がり、保護基板30に接触することで、保護基板30によって塞がれる。
【0043】
図7において、コンプライアンス基板40上には、ケースヘッド110が設けられている。ケースヘッド110には、図1に示したインクカートリッジ5のインクをマニホールド100に供給するインク導入路111が設けられている。
また、ケースヘッド110には、固定板開口部43に対向する領域に凹部112が形成され、固定板開口部43のたわみ変形が適宜行われるようになっている。
さらに、ケースヘッド110には、保護基板30に設けられた貫通孔32と連通する保持孔113が設けられている。
【0044】
COF基板210の第1の端部211は、保持孔113および貫通孔32内に挿通されて、第1の端部211の配線220がリード電極90と接続されている。
なお、COF基板210は、貫通孔32および保持孔113に充填されたモールド剤で支持してもよい。
【0045】
また、図8において、ケースヘッド110は凸部114を備え、凸部114と保護基板30とで、開口部47を取り囲むコンプライアンス基板40の領域が挟まれている。さらに、凸部114は、インク導入口45を取り囲むように形成され、凸部114と固定板42は接着剤120で接着されている。
ケースヘッド110の材料としては、例えば、PPSが主成分の樹脂材料、金属材料等が挙げられる。
【0046】
図7において、COF基板210の第1の端部211とは反対側に位置する第2の端部212は、ホルダー部材400のスリット420および中継基板500のスリット520に通され、第2の端部212の配線220が中継基板500の端子530に接合されている。
【0047】
インクジェット式記録ヘッド1では、図1に示したインクカートリッジ5からインクを取り込み、インク導入路410、インク導入路111およびインク導入口45を通して、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路200からの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極60と上電極80との間に電圧が印加される。電圧の印加によって、弾性膜50および圧電体層70がたわみ変形し、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインクが吐出する。インクの溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等を用いることができる。
【0048】
駆動信号は、例えば、駆動電源信号等の駆動ICを駆動させるための駆動系信号のほか、シリアル信号(SI)等の各種制御系信号を含み、配線は、それぞれの信号が供給される複数の配線で構成される。
【0049】
このような実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)インク導入路111,410に連通するインク導入口45からコンプライアンス基板40を構成する固定板42と封止膜41との間やコンプライアンス基板40を伝わって、コンプライアンス基板40に形成された開口部47の内面48から保持孔113および貫通孔32に向かうインクの溶媒の流れは、開口部47の内面48を覆い、保護基板30と接触する固定板42によって妨げられ、保持孔113および貫通孔32へ漏れる量を減少できる。したがって、溶媒が保持孔113および貫通孔32へ漏れるまでの時間を稼ぐことができ、固定板42がコンプライアンス基板40の側面を覆わない構成と比較して、リード電極90とCOF基板210との接触不良が生じるまでの時間が長いインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0050】
(2)固定板42が延性を有する金属板なので、打抜きによって開口部47を形成する際に、固定板42で開口部47の内面48が覆われ、容易な製造方法で、前述の効果を達成できるインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0051】
(3)前述の効果を達成できるプリンター1000を得ることができる。
【0052】
以上、実施形態を説明したが、上述したものに限定されるものではない。
例えば、実施形態では、複数のインクジェット式記録ヘッド1を備えたインクジェット式記録ヘッドユニット11について説明したが、一つのインクジェット式記録ヘッド1を備えたものであってもよい。
また、フレキシブル配線基板はCOF基板210に限らず、駆動回路が実装されていないフレキシブル基板であってもよい。
【0053】
さらに、上述した実施形態では、コンプライアンス基板40に1つの可撓部46を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、固定板42に複数の固定板開口部43を設けることで、複数の可撓部46を設けるようにしてもよい。
【0054】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドユニットを、また液体噴射装置の一例としてプリンターを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1…インクジェット式記録ヘッド、2…キャリッジ、3…キャリッジ移動機構、4…プラテンローラー、5…インクカートリッジ、6…タイミングベルト、7…駆動プーリー、8…従動プーリー、9…ガイドロッド、10…流路形成基板、11…液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドユニット、12…圧力発生室、13…連通路、14…インク供給路、20…ノズルプレート、21…ノズル開口、30…保護基板、31…圧電素子保持部、32…貫通孔、33…仕切り部、35,120…接着剤、40…コンプライアンス基板、41…封止膜、42…固定板、43…固定板開口部、44…突出部、45…液体導入口としてのインク導入口、46…可撓部、47…開口部、48…開口部の内面、50…弾性膜、55…絶縁体膜、60…下電極、70…圧電体層、80…上電極、90…リード電極、100…マニホールド、101…供給部、104,107…モーター、110…保持部材としてのケースヘッド、111,410…液体導入路としてのインク導入路、112…凹部、113…保持孔、114…凸部、200…駆動回路、210…フレキシブル配線基板としてのCOF基板、211…第1の端部、212…第2の端部、220…配線、300…圧力発生素子としての圧電素子、400…ホルダー部材、420,520…スリット、500…中継基板、510…孔、530…端子、600…異方性導電性接着剤としてのACP、700…貼り合わせ接着剤、1000…液体噴射装置としてのプリンター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通した圧力発生室が形成された流路形成基板と、
前記圧力発生室毎に設けられた圧力発生素子と、
前記圧力発生素子を覆う保護基板と、
前記保護基板上に設けられ、固定板と封止膜とを有し、複数の前記圧力発生室と連通するマニホールドを、前記保護基板との間に形成するコンプライアンス基板と、
前記圧力発生素子に形成された電極から引き出され、前記保護基板に形成された貫通孔に露出したリード電極と、
前記保護基板上に設けられ、前記貫通孔につながる保持孔および液体を導入する液体導入路が形成された保持部材と、
前記コンプライアンス基板に設けられ、前記液体導入路と前記マニホールドとに連通する液体導入口と、
前記貫通孔および前記保持孔に対応して前記コンプライアンス基板に形成された開口部と、
前記貫通孔、前記保持孔および前記開口部を通され、端部が前記リード電極に異方性導電性接着剤によって接続されたフレキシブル配線基板とを備え、
前記開口部の内面は前記固定板によって覆われ、前記固定板と前記保護基板とが接触している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記固定板は金属板で、前記開口部は前記固定板から前記封止膜に向かう打抜きによって形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッドを備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通した圧力発生室が形成された流路形成基板と、
前記圧力発生室毎に設けられた圧力発生素子と、
前記圧力発生素子を覆う保護基板と、
前記保護基板上に設けられ、固定板と封止膜とを有し、複数の前記圧力発生室と連通するマニホールドを、前記保護基板との間に形成するコンプライアンス基板と、
前記圧力発生素子に形成された電極から引き出され、前記保護基板に形成された貫通孔に露出したリード電極と、
前記保護基板上に設けられ、前記貫通孔につながる保持孔および液体を導入する液体導入路が形成された保持部材と、
前記コンプライアンス基板に設けられ、前記液体導入路と前記マニホールドとに連通する液体導入口と、
前記貫通孔および前記保持孔に対応して前記コンプライアンス基板に形成された開口部と、
前記貫通孔、前記保持孔および前記開口部を通され、端部が前記リード電極に異方性導電性接着剤によって接続されたフレキシブル配線基板とを備え、
前記開口部の内面は前記固定板によって覆われ、前記固定板と前記保護基板とが接触している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記固定板は金属板で、前記開口部は前記固定板から前記封止膜に向かう打抜きによって形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッドを備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−187795(P2012−187795A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52629(P2011−52629)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]