説明

液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】液体の無駄な消費を抑制すると共に、高精度な液体の噴射を行うことができる液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】下地用又は重ね塗り用の第1液体を吐出する第1液体噴射ヘッド220Aと、第2液体を吐出する第2液体噴射ヘッド220Bと、を具備し、前記第1液体噴射ヘッド220Aには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する複数のノズル開口からなるノズル群が設けられており、前記第2液体噴射ヘッド220Bには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する1つのノズル開口が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射ヘッドユ
ニット及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置に代表される
液体噴射装置は、インク等の液体が貯留されたカートリッジやタンク等の貯留されたイン
クなどの液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを複数保持した液体噴射ヘッドユニ
ット(以下、ヘッドユニットとも言う)を有する。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置では、文字や画像等の印刷を行う下地として広範
囲に亘って背景や反応性インクを印刷することや、文字や画像等の印刷を行った後の重ね
塗り(コーティング)を広範囲に亘って印刷することが行われる(特許文献1〜3参照)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−285422号公報
【特許文献2】特開2004−314631号公報
【特許文献3】特開平10−76660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、下地や重ね塗りなどの広範囲に亘って印刷を行う際に、インク
の消費量をなるべく抑えたいという要望があった。
【0006】
また、文字や画像等の印刷では、被記録媒体にインク滴を高精度に着弾させて、印刷品
質の向上が望まれている。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録
ヘッドユニットだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液
体噴射ヘッドユニットにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体の無駄な消費を抑制すると共に、高精度な液体の
噴射を行うことができる液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、下地用又は重ね塗り用の第1液体を吐出する第1
液体噴射ヘッドと、第2液体を吐出する第2液体噴射ヘッドと、を具備し、前記第1液体
噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する複数のノズル開口から
なるノズル群が設けられており、前記第2液体噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各
圧力発生室毎に連通する1つのノズル開口が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘ
ッドユニットにある。
かかる態様では、第1液体噴射ヘッドによって下地用又は塗り重ね用の第1液体を吐出
させることで、第1液体の消費量を低減することができる。また、第2液体噴射ヘッドに
よって第2液体を吐出させることで、第2液体の被記録媒体への着弾位置を高精度にする
ことができる。
【0010】
ここで、前記第1液体噴射ヘッドに設けられた複数の前記ノズル群が等間隔で設けられ
ていると共に、各ノズル群を構成する前記ノズル開口が等間隔で設けられていることが好
ましい。これによれば、広範囲に亘って濃さ等のムラを抑制した第1液体の着弾を実現で
きる。
【0011】
また、前記第1液体噴射ヘッドが、前記第2液体噴射ヘッドによって吐出される液体の
被記録媒体への着弾位置を含む当該着弾位置よりも広い領域に液体を着弾させることが好
ましい。これにより、第1液体によって背景や反応性インクなどの下地やコーティングな
どの重ね塗りを行うことができると共に、第2液体によって文字や画像等の印刷を実現で
きる。
【0012】
また、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドが被記録媒体に対して相対
的に移動可能に設けられていると共に、前記被記録媒体に対する上流側及び下流側の少な
くとも一方に前記第1液体噴射ヘッドが配置されていることが好ましい。これによれば、
第1液体噴射ヘッドから噴射された第1液体と、第2液体噴射ヘッドから噴射された第2
液体との着弾位置を重ねることができる。
【0013】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特
徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体の無駄な消費を抑制すると共に、高精度な液体の噴射を行うこと
ができる液体噴射装置を実現できる。
【0014】
また、本発明の他の態様は、下地用又は重ね塗り用の第1液体を吐出する第1液体噴射
ヘッドと、第2液体を吐出する第2液体噴射ヘッドと、を具備し、前記第1液体噴射ヘッ
ドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する複数のノズル開口からなるノズ
ル群が設けられており、前記第2液体噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生
室毎に連通する1つのノズル開口が設けられていることを特徴とする液体噴射装置にある

かかる態様では、液体の無駄な消費を抑制すると共に、高精度な液体の噴射を行うこと
ができる液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【図2】実施形態1に係るヘッドユニットの分解斜視図である。
【図3】実施形態1に係るヘッドユニットの組立斜視図である。
【図4】実施形態1に係るヘッドユニットの要部断面図である。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッド及びヘッドケースの要部断面図である。
【図7】実施形態1に係る記録ヘッド及びヘッドケースの要部断面図である。
【図8】実施形態1に係る記録ヘッド及びヘッドケースの要部断面図である。
【図9】実施形態1に係るインク重量とドット径との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装
置の概略斜視図である。
【0017】
図1に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数のインクジェット式記録ヘッド
を有するインクジェット式記録ヘッドユニット200(以下、ヘッドユニット200とも
言う)は、インク供給手段を構成するインクカートリッジ1A、1Bが着脱可能に設けら
れ、このヘッドユニット200を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられた
キャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
【0018】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を
介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット200を搭載したキャリッジ3
はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプ
ラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の被記録
媒体Sがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。なお、本実施形態に
おいては、ヘッドユニット200を搭載したキャリッジ3の移動方向を主走査方向、被記
録媒体Sの搬送方向を副走査方向と称する。
【0019】
ここで、インクジェット式記録装置Iに搭載される液体噴射ヘッドユニットの一例であ
るインクジェット式記録ヘッドユニット200について詳細に説明する。なお、図2は、
本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドユニットを示す分解斜視図であり
、図3は、インクジェット式記録ヘッドユニットの組立斜視図であり、図4は、インクジ
ェット式記録ヘッドユニットの要部断面図である。
【0020】
図示するように、ヘッドユニット200を構成する保持部材であるカートリッジケース
210は、インク供給手段であるインクカートリッジ(図1参照)がそれぞれ装着される
カートリッジ装着部211を有する。例えば、本実施形態では、インクカートリッジ1A
(図1参照)は、下地用又は重ね塗り用の第1液体が充填され、インクカートリッジ1B
は、ブラック及び3色のカラーインク等の文字又は画像用の第2液体が充填されている。
また、カートリッジケース210のカートリッジ装着部211とは反対側の面には、図4
に示すように、一端が各カートリッジ装着部211に開口し、他端がカートリッジ装着部
211とは反対面側に開口する複数のインク連通路212が設けられている。さらに、カ
ートリッジ装着部211のインク連通路212の開口部分には、インクカートリッジのイ
ンク供給口に挿入されるインク供給針213が、インク内の気泡や異物を除去するために
インク連通路212内に形成されたフィルタ214を介して固定されている。
【0021】
カートリッジケース210のカートリッジ装着部211とは反対面側には、複数のイン
クジェット式記録ヘッド220がヘッドケース230を介して固定されている。本実施形
態では、図2に示すように、1つのカートリッジケース210に対して、5個のインクジ
ェット式記録ヘッド220が設けられ、ヘッドケース230は各インクジェット式記録ヘ
ッド220に対応してそれぞれ独立して設けられている。
【0022】
ここで、カートリッジケース210に固定されるインクジェット式記録ヘッド220(
以下、ヘッド220とも言う)としては、第1液体を吐出する第1液体噴射ヘッドである
第1インクジェット式記録ヘッド220A(以下、第1ヘッド220Aとも言う)と、第
2液体を吐出する第2液体噴射ヘッドである第2インクジェット式記録ヘッド220B(
以下、第2ヘッド220Bとも言う)と、が設けられている。
【0023】
そして、第2ヘッド220Bから吐出される第2液体は、文字や画像等を印刷するイン
クであり、例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色のインクが挙げられる
。本実施形態では、第2ヘッド220Bは、第2液体の色毎に、すなわち、4個設けられ
ている。
【0024】
これに対して、第1ヘッド220Aから吐出される第1液体は、例えば、第1液体の背
景や第2液体と反応する反応性インクなどの第2液体の下地となる下地用のインクや、第
2液体に重ね塗りするコーティングなどの重ね塗り用のインクなどである。なお、下地用
のインクの例としては白インク、重ね塗り用のインクの例としてはクリアインク等が挙げ
られる。本実施形態では、背景用のインクを吐出する第1ヘッド220Aを1つ設けるよ
うにした。
【0025】
ここで、カートリッジケース210に搭載される本実施形態のインクジェット式記録ヘ
ッド220及びヘッドケース230について説明する。図5は、インクジェット式記録ヘ
ッド(第1ヘッド)及びヘッドケースの分解斜視図であり、図6及び図7は、インクジェ
ット式記録ヘッド(第1ヘッド)及びヘッドケースの断面図であり、図8は、インクジェ
ット式記録ヘッド(第2ヘッド)及びヘッドケースの断面図である。
【0026】
まず、第1ヘッド220Aについて詳細に説明する。図示するように、第1ヘッド22
0Aを構成する流路形成基板10は、本実施形態では、シリコン単結晶基板やガラス基板
等からなり、その一方面には二酸化シリコンや酸化ジルコニウムなどが単体または積層さ
れた弾性膜50が形成されている。この流路形成基板10には、一方の面とは反対側の面
となる他方面側から異方性エッチングすることにより、圧力発生室12が形成されている
。そして、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複
数のノズル開口21Aが並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力
発生室12の並設方向、又は第1の方向と称する。また、流路形成基板10には、圧力発
生室12が第1の方向に並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。
この圧力発生室12が第1の方向に沿って形成された圧力発生室12の列が複数列設され
た列設方向を、以降、第2の方向と称する。
【0027】
また、圧力発生室12の第2の方向の片側には、後述するマニホールド形成基板30に
設けられるマニホールド部31と連通し、各圧力発生室12の共通のインク室となるマニ
ホールド100を構成する連通部13が形成されている。また、連通部13は、インク供
給路14を介して各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。
【0028】
また、流路形成基板10の弾性膜50とは反対の他方面側には、各圧力発生室12のイ
ンク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21Aが穿設されたノズルプレート20
が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
【0029】
ここで、ノズルプレート20には、1つの圧力発生室12に対して2つ以上のノズル開
口21Aが連通して設けられている。本実施形態では、1つの圧力発生室12に対して2
つのノズル開口21Aを設けるようにした。また、1つの圧力発生室12に対して設けら
れた複数のノズル開口21Aをノズル群と称する。
【0030】
この1つの圧力発生室12に連通する2つのノズル開口21Aは、圧力発生室12の並
設方向である第1の方向に沿って並設されている。
【0031】
そして、図7に示すように、ノズル群を構成するノズル開口21Aの間隔dは、各ノ
ズル群において等間隔となるように設けられている。また、互いに隣り合うノズル群の間
隔dも等間隔となるように配置されている。
【0032】
このような各圧力発生室12に対して設けられた2つのノズル開口21Aからは、共通
して連通する1つの圧力発生室12内の圧力変動によってインク滴が吐出される。
【0033】
ここで、インク重量と、インク滴が被記録媒体に着弾したドット径(インク滴の直径)
とは、図9に示すように、インク重量を半分にしたインク滴を吐出させた場合であっても
、ドット径は元のドット径の半分ではなく、半分よりも大きなドット径となる。
【0034】
これは、インク滴の体積(重量)は径の3乗で表され、インク滴が被記録媒体に着弾し
たドット径は、径の2乗で表されるため、インク滴の体積(重量)が半分になっても面積
は半分まで減少しないからである。したがって、被記録媒体Sの同じ面積をドットで埋め
る際に、インク重量の大きなインク滴で埋める場合と、インク重量の小さなインク滴で埋
める場合とで、インク重量の小さなインク滴で埋める場合の方がインク重量の大きなイン
ク滴で埋める場合に比べてインクの総使用量(インク消費量)を少なくすることができる

【0035】
このため、本実施形態では、印字や印刷などの印刷領域よりも広い領域に印刷する下地
用や重ね塗り用のインク(第1液体)を第1ヘッド220Aから吐出させることで、下地
用や重ね塗り用のインクの消費量を低減することができる。また、ノズル群を構成するノ
ズル開口21Aの間隔dを、各ノズル群において等間隔となるように設け、且つ互いに
隣り合うノズル群の間隔dを等間隔となるように配置することで、ノズル開口21Aの
並設方向(第1の方向)での着弾位置ズレを抑制して、第1液体の濃さ等のムラを低減す
ることができる。
【0036】
一方、図6に示すように、流路形成基板10の開口面とは反対側には、弾性膜50上に
、金属からなる第1電極60と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料からなる
圧電体層70と、金属からなる第2電極80とを順次積層することで形成された圧電アク
チュエーター300が形成されている。このような圧電アクチュエーター300が形成さ
れた流路形成基板10上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホー
ルド部31を有するマニホールド形成基板30が接合されている。このマニホールド部3
1は、本実施形態では、マニホールド形成基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12
の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通さ
れて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0037】
また、マニホールド形成基板30の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、
圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32
が設けられている。
【0038】
さらに、マニホールド形成基板30上には、各圧電アクチュエーター300を駆動する
ための駆動IC110が設けられている。この駆動IC110の各端子は、図示しないボ
ンディングワイヤ等を介して各圧電アクチュエーター300の個別電極から引き出された
引き出し配線(図示なし)と接続されている。そして、駆動IC110の各端子には、図
2に示すような、フレキシブルプリントケーブル(FPC)等の外部配線111を介して
外部と接続され、外部から外部配線111を介して印刷信号等の各種信号を受け取るよう
になっている。
【0039】
また、このようなマニホールド形成基板30上には、コンプライアンス基板40が接合
されている。コンプライアンス基板40のマニホールド100に対向する領域には、マニ
ホールド100にインクを供給するためのインク導入口44が厚さ方向に貫通することで
形成されている。また、コンプライアンス基板40のマニホールド100に対向する領域
のインク導入口44以外の領域は、厚さ方向に薄く形成された可撓部43となっており、
マニホールド100は、可撓部43により封止されている。この可撓部43により、マニ
ホールド100内にコンプライアンスを与えている。
【0040】
このように、本実施形態の第1ヘッド220Aは、ノズルプレート20、流路形成基板
10、マニホールド形成基板30及びコンプライアンス基板40の4つの基板で構成され
ている。そして、このような第1ヘッド220Aのコンプライアンス基板40上には、イ
ンク導入口44に連通すると共にカートリッジケース210のインク連通路212に連通
して、カートリッジケース210からのインクをインク導入口44に供給するインク供給
連通路231が設けられたヘッドケース230が設けられている。このヘッドケース23
0には、可撓部43に対向する領域に凹部232が形成され、可撓部43の撓み変形が適
宜行われるようになっている。また、ヘッドケース230には、マニホールド形成基板3
0上に設けられた駆動IC110に対向する領域に厚さ方向に貫通した駆動IC保持部2
33が設けられており、外部配線111は、駆動IC保持部233を挿通して駆動IC1
10と接続されている。
【0041】
このような本実施形態の第1ヘッド220Aは、インクカートリッジからのインクをイ
ンク連通路212及びインク供給連通路231を介してインク導入口44から取り込み、
マニホールド100からノズル開口21Aに至るまで内部をインクで満たした後、駆動I
C110からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの圧電アクチュエー
ター300に電圧を印加し、弾性膜50及び圧電アクチュエーター300をたわみ変形さ
せることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21Aからインク滴が吐
出する。
【0042】
なお、このような第1ヘッド220Aを構成する各部材及びヘッドケース230には、
組立時に各部材を位置決めするためのピンが挿入されるピン挿入孔234が角部の2箇所
に設けられている。そして、ピン挿入孔234にピンを挿入して各部材の相対的な位置決
めを行いながら部材同士を接合することで、第1ヘッド220A及びヘッドケース230
が一体的に形成される。
【0043】
次に、第2ヘッド220Bについて図8を参照して説明する。第2ヘッド220Bは、
ノズルプレート20Bに、各圧力発生室12に対して1つのノズル開口21Bが設けられ
ている以外、上述した第1ヘッド220Aと同様である。
【0044】
すなわち、第2ヘッド220Bには、第1の方向に並設された圧力発生室12の列が、
第2の方向に2列設けられており、各圧力発生室12に連通するノズル開口21Bが設け
られている。
【0045】
これら第1ヘッド220A及び第2ヘッド220Bは、図2に示すように、カートリッ
ジケース210に固定されている。詳しくは、第2ヘッド220Bは、第2の方向に所定
の間隔で4つ固定されている。また、第1ヘッド220Aは、第2ヘッド220Bが第2
の方向に並設された並設方向の片側に1つ固定されている。
【0046】
このようにカートリッジケース210にヘッドケース230を介して保持された5つの
ヘッド220(1つの第1ヘッド220Aと4つの第2ヘッド220B)のノズル開口2
1A、21Bが開口する液体噴射面側には、カバーヘッド240が設けられている。カバ
ーヘッド240は、ノズル開口21を露出する開口部241を具備する。このようなカバ
ーヘッド240は、図3に示すように、フランジ部242がカートリッジケース210に
固定される。
【0047】
このようなカバーヘッド240は、ヘッド220の液体噴射面に接合されていても、ま
た接合されていなくてもよい。なお、カバーヘッド240としては、例えば、ステンレス
鋼などの金属材料が挙げられ、金属板をプレス加工により形成してもよく、成形により形
成するようにしてもよい。また、カバーヘッド240を導電性の金属材料とすることで、
接地することができる。また、カバーヘッド240とノズルプレート20とを導通させる
ことで、カバーヘッド240を介してノズルプレート20を接地することもできる。
【0048】
このようなヘッドユニット200は、上述したインクジェット式記録装置Iに、ヘッド
220の並設方向である第2の方向が、キャリッジ3の移動方向となるように搭載される
。そして、第1ヘッド220Aによって第1液体である下地用又は重ね塗り用のインクが
印刷され、第2ヘッド220Bによって第2液体である文字又は画像等用のインクが印刷
される。このとき、第1ヘッド220Aが印刷する印刷領域は、第2ヘッド220Bが印
刷する印刷領域を含み且つ第2ヘッド220Bが印刷する印刷領域よりも広い領域となる
。そして、このような下地や重ね塗りは、背景や反応性インク、トップコートなどである
ため、一定の範囲の全てを埋めるように印刷される。このような広い領域に1つの圧力発
生室12に対して複数のノズル開口21Aが設けられた第1ヘッド220Aからインク滴
を吐出させて印刷することで、下地や重ね塗りのインク消費量を低減することができる。
【0049】
ちなみに、第1ヘッド220Aでは、1つの圧力発生室12に圧力変化を生じさせると
、常に2つのノズル開口21Aからインク滴が吐出されるため、インク滴が着弾したドッ
ト形状としては、2つのドットが連なった形状となる。また、2つのノズル開口21Aか
ら同時に微小なインク滴を吐出させると、2つのインク滴は飛翔時に気流の影響や静電気
力(クーロン力)等によって互いに離反する方向などに飛翔し、着弾位置がずれてしまう
虞がある。このため、第1ヘッド220Aによって文字や画像等の印刷を行う場合、形状
に制限が生じると共に着弾位置の精度が低下してしまう虞がある。本実施形態では、第2
液体である文字や画像等のインクを1つの圧力発生室12に対して1つのノズル開口21
Bが設けられた第2ヘッド220Bによって印刷することで、文字や画像の形状に制限を
無くして、高精度な着弾位置によって高品質な印刷を行うことができる。
【0050】
なお、ヘッドユニット200をインクジェット式記録装置Iに搭載した際に、第1ヘッ
ド220Aをキャリッジ3の移動方向の上流側に配置すれば、第1ヘッド220Aで下地
を印刷した直後に、第2ヘッド220Bで文字や画像を印刷することができる。逆に、第
1ヘッド220Aをキャリッジ3の移動方向の下流側に配置すれば、第2ヘッド220B
で文字や画像等を印刷した後、第1ヘッド220Aによってコーティング等のインクを重
ね塗りすることができる。もちろん、キャリッジ3は第2の方向(主走査方向)に往復で
移動するため、往路と復路とでは上流と下流との関係は逆転する。したがって、往復で印
刷させるか、往路で印刷させるか、復路で印刷させるかなどの印刷方法によって第1ヘッ
ド220Aの第2ヘッド220Bに対する位置を適宜決定すればよい。もちろん、キャリ
ッジ3の往復で先に第1ヘッド220Aからインク滴を吐出させて下地の印刷を行った後
、紙送りを行わずにキャリッジ3の往復を再度行って、第2ヘッド220Bからインク滴
を吐出させて文字又は画像等の印刷を行うようにしてもよい。この場合には、第1ヘッド
220Aと第2ヘッド220Bとの相対位置は何れの配置であっても問題ない。また、重
ね塗りについてもキャリッジ3の往復を繰り返すことで、第1ヘッド220Aと第2ヘッ
ド220Bとの配置の制限はなくなる。
【0051】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに
限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、ヘッドユニット200に1
つの第1ヘッド220Aを設けるようにしたが、特にこれに限定されず、2つ以上の第1
ヘッド220Aを設けるようにしてもよい。これにより、下地用のインクと、重ね塗り用
のインクとの両方を同時に印刷することが可能となる。
【0052】
また、上述した実施形態1では、1つのヘッドユニット200に第1ヘッド220Aと
第2ヘッド220Bとを搭載するようにしたが、特にこれに限定されず、第1ヘッド22
0Aのみが搭載されたヘッドユニットと、第2ヘッド220Bのみが搭載されたヘッドユ
ニットとの2つ以上のヘッドユニットをインクジェット式記録装置に設けるようにしても
よい。
【0053】
さらに、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手
段として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定さ
れず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチ
ュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動
型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧
力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口
から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によっ
て振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーター
などを使用することができる。
【0054】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、ヘッドユニット200がキャリッジ
3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば
、ヘッドユニット200又はインクジェット式記録ヘッド220が固定されて、被記録媒
体Sを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適
用することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドを有する液体噴射ヘッドユニットの
一例としてインクジェット式記録ヘッドを有するインクジェット式記録ヘッドユニットを
、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明
は、広く液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク
以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドユニットや液体噴射装置にも勿論適用することがで
きる。その他の液体噴射ヘッドユニットに保持される液体噴射ヘッドとしては、例えば、
プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラ
ーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界
放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造
に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴
射ヘッドユニットや液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1A、1B インクカートリッジ
、 3 キャリッジ、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレ
ート、 21A、21B ノズル開口、 30 マニホールド形成基板、 40 コンプ
ライアンス基板、 50 弾性膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2
電極、 200 インクジェット式記録ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、
210 カートリッジケース、 220 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド
)、 220A 第1インクジェット式記録ヘッド(第1液体噴射ヘッド)、 220B
第2インクジェット式記録ヘッド(第2液体噴射ヘッド)、 300 圧電アクチュエ
ーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地用又は重ね塗り用の第1液体を吐出する第1液体噴射ヘッドと、第2液体を吐出す
る第2液体噴射ヘッドと、を具備し、
前記第1液体噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する複数の
ノズル開口からなるノズル群が設けられており、
前記第2液体噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する1つの
ノズル開口が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記第1液体噴射ヘッドに設けられた複数の前記ノズル群が等間隔で設けられていると
共に、各ノズル群を構成する前記ノズル開口が等間隔で設けられていることを特徴とする
請求項1記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記第1液体噴射ヘッドが、前記第2液体噴射ヘッドによって吐出される液体の被記録
媒体への着弾位置を含む当該着弾位置よりも広い領域に液体を着弾させることを特徴とす
る請求項1又は2記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドが被記録媒体に対して相対的に移
動可能に設けられていると共に、前記被記録媒体に対する上流側及び下流側の少なくとも
一方に前記第1液体噴射ヘッドが配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか
一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とす
る液体噴射装置。
【請求項6】
下地用又は重ね塗り用の第1液体を吐出する第1液体噴射ヘッドと、第2液体を吐出す
る第2液体噴射ヘッドと、を具備し、
前記第1液体噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する複数の
ノズル開口からなるノズル群が設けられており、
前記第2液体噴射ヘッドには、複数の圧力発生室と、各圧力発生室毎に連通する1つの
ノズル開口が設けられていることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−250492(P2012−250492A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126157(P2011−126157)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】