説明

液体噴射装置、及び、液体噴射方法

【課題】同一の画像を媒体に形成する画像形成処理を複数回実行する際に、画像形成に関
与するノズルの組み合わせについてのバリエーションを増やす。
【解決手段】列状に並んだ複数のノズルを備え、該ノズルから液体を噴射する噴射部と、
複数の前記ノズルが並ぶ方向と交差する搬送方向に、媒体を搬送する搬送部と、前記媒体
に画像を形成する画像形成処理を複数回実行する際に前記噴射部と前記搬送部を制御する
制御部であって、前記媒体の長手方向が前記搬送方向に沿った状態で前記搬送部に該媒体
を搬送させ、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が第1姿勢となるように前記噴射部に
液体を噴射させる第1処理と、前記媒体の長手方向が前記搬送方向に交差した状態で前記
搬送部に該媒体を搬送させ、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第1姿勢を90
度回転させた第2姿勢となるように前記噴射部に液体を噴射させる第2処理と、を前記画
像形成処理間に切り替えて行う制御部と、を有する液体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及び液体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターのようにインク等の液体を噴射して媒体に画像を形成する液
体噴射装置は、既に知られている。かかる液体噴射装置の中には、列状に並んだ複数のノ
ズルを備え、該ノズルから液体を噴射する噴射部と、複数のノズルが並ぶ方向と交差する
搬送方向に、媒体を搬送する搬送部と、媒体に画像を形成する画像形成処理を実行する際
に上記噴射部と搬送部を制御する制御部と、を有するものがある。
【0003】
ところで、液体噴射装置のユーザが、同じ画像を複数枚の同じ媒体に形成させるために
、上記液体噴射装置に対して複数回の画像形成処理の実行を要求する場合がある(例えば
、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−291159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同一の画像を媒体に形成する画像形成処理を複数回実行する場合、複数のノズルのうち
、画像形成に関与するノズル(すなわち、液体が噴射されるノズル)の組み合わせが一定
である。しかしながら、画像形成に関与するノズルの組み合わせが一定のままでは、画像
形成に関与しないノズルにおいて、その開口近傍にある液体が増粘することにより、目詰
まりが発生する虞がある。このため、同一の画像を媒体に形成する画像形成処理を複数回
実行する場合であっても、画像形成に関与するノズルの組み合わせについてのバリエーシ
ョンが多様であることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、同一の
画像を媒体に形成する画像形成処理を複数回実行する場合に、画像形成に関与するノズル
の組み合わせについてのバリエーションを増やすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、(A)列状に並んだ複数のノズルを備え
、該ノズルから液体を噴射する噴射部と、(B)複数の前記ノズルが並ぶ方向と交差する
搬送方向に、媒体を搬送する搬送部と、(C)前記媒体に画像を形成する画像形成処理を
複数回実行する際に前記噴射部と前記搬送部を制御する制御部であって、(c1)前記媒
体の長手方向が前記搬送方向に沿った状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、前記画像の
前記搬送方向に対する姿勢が第1姿勢となるように前記噴射部に液体を噴射させる第1処
理と、(c2)前記媒体の長手方向が前記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に該媒体
を搬送させ、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第1姿勢を90度回転させた第
2姿勢となるように前記噴射部に液体を噴射させる第2処理と、を前記画像形成処理間に
切り替えて行う制御部と、(D)を有することを特徴とする液体噴射装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンター1の構成要素を示すブロック図である。
【図2】プリンター1内部の構成を模式的に示した図である。
【図3】ノズル面31bを示した図である。
【図4】図4Aと図4Bは、転写位置において当接し合う転写ベルト41と用紙Pを示す図である。
【図5】参考例に係る印刷処理の流れを示した図である。
【図6】本実施形態における1ジョブのフローチャートである。
【図7】印刷画像データの説明図である。
【図8】図8Aは、第1処理にて形成される画像Xの、用紙Pの長手方向に対する姿勢についての説明図である。図8Bは、第1処理にて画像Xを用紙Pに形成するための印刷画像データを示す図である。図8Cは、第1姿勢のインク像を示す図である。
【図9】第1処理の手順を示す図である。
【図10】図10Aは、第2処理にて形成される画像Xの、用紙Pの長手方向に対する姿勢についての説明図である。図10Bは、第2処理にて画像Xを用紙Pに形成するための印刷画像データを示す図である。図10Cは、第2姿勢のインク像を示す図である。
【図11】第2処理の手順を示す図である。
【図12】図12A及び図12Bは、ワイパーユニット60により打ち捨てインクを払拭する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
先ず、(A)列状に並んだ複数のノズルを備え、該ノズルから液体を噴射する噴射部と
、(B)複数の前記ノズルが並ぶ方向と交差する搬送方向に、媒体を搬送する搬送部と、
(C)前記媒体に画像を形成する画像形成処理を複数回実行する際に前記噴射部と前記搬
送部を制御する制御部であって、(c1)前記媒体の長手方向が前記搬送方向に沿った状
態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が第1姿勢と
なるように前記噴射部に液体を噴射させる第1処理と、(c2)前記媒体の長手方向が前
記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、前記画像の前記搬送方向に
対する姿勢が前記第1姿勢を90度回転させた第2姿勢となるように前記噴射部に液体を
噴射させる第2処理と、を前記画像形成処理間に切り替えて行う制御部と、(D)を有す
る液体噴射装置。第1処理において画像形成に関与するノズルの組み合わせと、第2処理
において画像形成に関与するノズルの組み合わせは、異なる可能性が高い。したがって、
同一の画像を媒体に形成する画像形成処理を複数回実行する場合に第1処理及び第2処理
を切り替えれば、画像形成に関与するノズルの組み合わせのバリエーションが増えること
になる。
【0011】
また、前記第1処理及び前記第2処理のうちのいずれか一方の処理が前記画像形成処理
として行われる際に液体が噴射される前記ノズル、の数が所定数よりも多い場合、前記制
御部は、前記画像形成処理を複数回実行する間に前記いずれか一方の処理のみを行い、前
記数が前記所定数よりも少ない場合、前記制御部は、前記画像形成処理を複数回実行する
間に前記第1処理及び前記第2処理を交互に行うこととしても良い。上記の液体噴射装置
であれば、1回の画像形成処理において画像形成に関与するノズルの数に応じて、合理的
に画像形成処理を複数回実行することが可能になる。
【0012】
また、上記の液体噴射装置において、前記噴射部が噴射した液体を着弾させる着弾面を
有し、該着弾面上に形成された転写前の前記画像を前記媒体に転写する転写ベルトと、周
面に前記転写ベルトを掛けて該転写ベルトを支持し、複数の前記ノズルが並ぶ方向に沿う
軸を中心に回転する回転ローラーとを有し、前記制御部は、前記回転ローラーの回転に伴
って回転している前記転写ベルトの前記着弾面を前記媒体に当接させることにより、該転
写ベルトに転写前の前記画像を転写させ、前記第1処理では、前記媒体の長手方向が前記
搬送方向に沿った状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、転写前の前記画像の前記搬送方
向に対する姿勢が前記第1姿勢となるように前記噴射部に前記着弾面に向けて液体を噴射
させ、転写後の前記画像の、前記媒体の長手方向に対する姿勢が所定の姿勢となるように
前記転写ベルトに転写前の前記画像を前記媒体に転写させ、前記第2処理では、前記媒体
の長手方向が前記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、転写前の前
記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第2姿勢となるように前記噴射部に前記着弾面
に向けて液体を噴射させ、転写後の前記画像の、前記媒体の長手方向に対する姿勢が前記
所定の姿勢となるように前記転写ベルトに転写前の前記画像を前記媒体に転写させること
としても良い。上記の液体噴射装置であれば、第1処理及び第2処理を画像形成処理間に
切り替えて行ったとしても、転写後の画像の、媒体の長手方向に対する姿勢は同じ姿勢と
なるので、画像形成に関与するノズルの組み合わせのバリエーションを増やしつつ、同一
の画像を媒体に形成する画像形成処理を複数回実行することが可能になる。
【0013】
さらに、(A)列状に並んだ複数のノズルを備えた噴射部に、該ノズルから液体を噴射
させることと、(B)搬送部に、複数の前記ノズルが並ぶ方向と交差する搬送方向に、媒
体を搬送させることと、(C)前記媒体に画像を形成する画像形成処理を複数回実行する
際に前記噴射部と前記搬送部を制御し、(c1)前記媒体の長手方向が前記搬送方向に沿
った状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が第1
姿勢となるように前記噴射部に液体を噴射させる第1処理と、(c2)前記媒体の長手方
向が前記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、前記画像の前記搬送
方向に対する姿勢が前記第1姿勢を90度回転させた第2姿勢となるように前記噴射部に
液体を噴射させる第2処理と、を前記画像形成処理間に切り替えて行うことと、(D)を
有する液体噴射方法も実現される。かかる液体噴射方法によれば、同一の画像を媒体に形
成する画像形成処理を複数回実行する際に、画像形成に関与するノズルの組み合わせにつ
いてのバリエーションが増えることになる。
【0014】
===本実施形態の液体噴射装置===
本発明の液体噴射装置について説明するために、以下では、インクジェットプリンター
(以下、プリンター1)を一例に挙げて説明する。プリンター1は、液体の一例としての
インクを用いて紙やフィルムシート等の媒体に画像を形成する装置であり、プリンター1
によりインクを噴射させて媒体に画像を形成する画像形成方法は、液体噴射方法の一例に
相当する。インクについては、水性インク及び油性インクのいずれであっても良い。以下
、プリンター1の構成について説明する。なお、以下では、媒体の一例としてのA4サイ
ズの単票紙(以下、用紙P)に画像を形成するプリンター1の構成について説明する。
【0015】
<<プリンターの構成>>
図1は、プリンター1の構成要素を示すブロック図である。図2は、プリンター1内部
の構成を模式的に示した図である。プリンター1は、図1に示すように、コントローラー
10と、給紙ユニット20と、ヘッドユニット30と、転写ユニット40と、搬送ユニッ
ト50と、ワイパーユニット60とを有する。
【0016】
コントローラー10は、制御部の一例であり、ホストコンピューターHCから送信され
る印刷データを受信し、ユニット制御回路11を介して上記各ユニット20〜60を制御
する。コントローラー10は、印刷データに基づいて上記各ユニット20〜60を制御し
て当該印刷データに応じた画像を用紙Pに形成する画像形成処理(以下、印刷処理)を行
う。換言すると、コントローラー10は、印刷処理を実行する際にヘッドユニット30や
搬送ユニット50等を制御する。なお、プリンター1内の状況は検出器群70に監視され
、その検出結果に基づいてコントローラー10は各ユニット20〜60を制御する。
【0017】
給紙ユニット20は、トレイ21(図2参照)に収容された用紙Pをピックアップして
プリンター1内に給紙するものである。本実施形態では、図2に示すように2つのトレイ
21が備えられており、一方のトレイ21には縦置き状態で用紙Pが収容されており、他
方のトレイ21には横置き状態で用紙Pが収容されている。そして、給紙ユニット20は
、縦置き状態でトレイ21内に収容された用紙Pを縦置き状態のまま給紙し、横置き状態
でトレイ21内に収容された用紙Pを横置き状態のまま給紙する。
【0018】
ヘッドユニット30は、噴射部の一例であり、図2に図示されたヘッド31を備えてい
る。このヘッド31は、固定位置に固定された状態で、ノズルNzからインクを噴射する
ものである。本実施形態のヘッド31は長尺体であり、その長手方向は図2において紙面
を貫く方向に沿っている。ヘッド31の下部には、複数のノズルNz(以下、ノズル群と
も言う)が形成されたノズルプレート31aが備えられている。当該ノズル群は、ヘッド
31の長手方向に沿って列状に並んでいる。つまり、ノズルプレート31aの下面(以下
、ノズル面31b)を見ると、図3に示すように、ノズルNzの開口が複数形成され、当
該複数の開口が列状に並んでいる。図3は、ノズル面31bを示した図である。なお、図
を簡略化するため、図2には単一のヘッド31のみ図示されているが、例えば、YMCK
4色のカラーインクによりカラー画像を形成することが可能なプリンター1では、インク
色別のヘッド31(すなわち、4個のヘッド31)が備えられていることになる。
【0019】
転写ユニット40は、図2に図示された転写ベルト41の外周面41a上に形成された
インク像、を用紙Pに転写するものである。転写ユニット40は、同図に示すように、転
写ベルト41と、回転ローラー42と、押し付けローラー43とを有する。
【0020】
転写ベルト41は、無端ベルトであり、その外周面41aをヘッド31のノズル面31
bに対向させている。転写ベルト41は、着断面としての外周面41aに、ヘッド31が
ノズルNzから噴射したインクを着弾させる。そして、転写ベルト41は、外周面41a
に着弾したインクにより構成されるインク像を用紙Pに転写する。ここで、インク像とは
、最終的に用紙Pに形成される画像の転写前の像である(すなわち、転写前の画像に相当
する)。なお、転写ベルト41の幅(ヘッド31の長手方向に沿う方向における長さ)は
、用紙Pの長手方向長さよりも僅かに長くなっている。
【0021】
回転ローラー42は、周面に転写ベルト41を掛けて該転写ベルト41を回転自在に支
持し、ヘッド31の長手方向(すなわち、複数のノズルNzが並ぶ方向)に沿う軸を中心
に回転する。本実施形態では、複数(具体的には3つ)の回転ローラー42が、それぞれ
、逆三角形の頂点位置に配置されている(図2参照)。そして、各回転ローラー42が同
期しながら回転することに伴い、転写ベルト41が回転方向(図2参照)に回転する。
【0022】
押し付けローラー43は、転写ベルト41がインク像を用紙Pに転写するために、該転
写ベルト41の外周面41aに前記用紙Pを押し付けるものである。この押し付けローラ
ー43は、複数の回転ローラー42中、最も下側に位置する回転ローラー42の直下に位
置し、転写ベルト41(具体的には、最も下側に位置する回転ローラー42の周面に掛け
られている部分)とともに用紙Pを挟み込む。用紙Pの、転写ベルト41及び押し付けロ
ーラー43により挟まれた部分は、該押し付けローラー43からの押圧力によって転写ベ
ルト41の外周面41aに当接する。この際に、転写ベルト41の外周面41aのうち、
用紙Pと当接する部分に付着したインク(インク像の一部)が、用紙Pに転写される。
【0023】
以上のように転写ユニット40では、回転ローラー42の回転に伴って回転している転
写ベルト41が、その外周面41aを用紙Pに当接させることにより、外周面41a上に
形成されたインク像を該用紙Pに転写する。用紙Pに転写されたインク像は、転写後の画
像に相当し、該用紙Pに定着する。
【0024】
搬送ユニット50は、搬送部の一例であり、給紙ユニット20によりプリンター1内に
給紙された用紙Pを搬送方向に搬送するものである。本実施形態の搬送方向は、ヘッド3
1の長手方向(すなわち、複数のノズルNzが並ぶ方向)と交差する方向である。搬送ユ
ニット50は、周面を用紙Pに摺刷させながら回転する搬送ローラー51(図2参照)に
より、用紙Pが転写位置を通過するように該媒体Sを搬送すると共に、該転写位置を通過
した媒体Sを排紙口1a(図2参照)に向けて更に搬送する。ここで、転写位置とは、用
紙Pの搬送経路中、転写ユニット40がインク像を用紙Pに転写する位置であり、具体的
には、用紙Pが転写ベルト41及び押し付けローラー43の間に挟み込まれる位置である

【0025】
そして、本実施形態の搬送ユニット50は、縦置き状態で給紙された用紙Pを縦置き状
態のまま搬送し、横置き状態で給紙された用紙Pを横置き状態のまま搬送する。用紙Pを
縦置き状態で搬送するとは、用紙Pの長手方向が搬送方向に沿った状態で該用紙Pを搬送
方向に搬送することであり、用紙Pを横置き状態で搬送するとは、用紙Pの長手方向が搬
送方向に交差した状態で該用紙Pを搬送方向に搬送することである。なお、用紙Pが横置
き状態で搬送される際、図4Aに示すように、転写位置では、転写ベルト41の外周面4
1aがその幅方向(ヘッド31の長手方向と沿う方向)における両端部付近まで用紙Pと
当接する。一方、用紙Pが縦置き状態で搬送される際、図4Bに示すように、転写位置で
は、転写ベルト41の外周面41aがその幅方向中央部で用紙Pと当接する。図4Aと図
4Bは、転写位置において当接し合う転写ベルト41と用紙Pを示す図である。
【0026】
ワイパーユニット60は、搬送ユニット50が縦置き状態で用紙Pを搬送する際にヘッ
ド31がノズル群中、該ヘッド31の長手方向において両端側に配置されたノズルNzか
ら転写ベルト41の外周面41aに向けて打ち捨てた打ち捨てインクを、上記外周面41
aから払拭するものである。ワイパーユニット60は、ワイパー61とワイパー駆動機構
62を有する(図2参照)。ワイパー61は、転写ベルト41の回転方向において転写位
置よりも下流側の位置で、該転写ベルト41の外周面41aの幅方向両端部と当接する。
ワイパー駆動機構62は、搬送ユニット50が縦置き状態で用紙Pを搬送する際にはワイ
パー61が転写ベルト41の外周面41aと当接し、搬送ユニット50が横置き状態で用
紙Pを搬送する際にはワイパー61が転写ベルト41の外周面41aから離間するように
、ワイパー61を移動させる。
【0027】
<<印刷処理の参考例>>
プリンター1が実行する印刷処理の参考例について、図5を参照しながら説明する。図
5は、参考例に係る印刷処理の流れを示した図である。
【0028】
参考例に係る印刷処理は、図5に示すように、コントローラー10がホストコンピュー
ターHCから印刷データを受信するところから始まる(S001)。そして、コントロー
ラー10は、受信した印刷データ中の各種コマンドの内容を解析し、プリンター1の各ユ
ニット20〜60を制御する。なお、印刷データには、2つのトレイ21のうち、いずれ
のトレイ21内から用紙Pを給紙するのかを示すデータが含まれている。つまり、印刷デ
ータ中には、縦置き状態及び横置き状態のうち、いずれの状態で搬送される用紙Pに画像
を形成するのかを示すデータが含まれている。
【0029】
次に、コントローラー10は、上記データに基づいて、給紙ユニット20にトレイ21
内の用紙Pをプリンター1内に給紙させる(S002)。その後、コントローラー10は
、各回転ローラー42を回転させて転写ベルト41を回転させ(S003)、プリンター
1内に給紙された用紙Pを搬送ユニット50に搬送させる(S004)。この際、搬送ユ
ニット50は、縦置き状態で給紙された用紙Pを縦置き状態のまま搬送し、横置き状態で
給紙された用紙Pを横置き状態のまま搬送する。
【0030】
一方、コントローラー10は、前記印刷データに応じて、ヘッドユニット30にインク
を転写ベルト41の外周面41aに向けて噴射させる(S005)。これにより、転写ベ
ルト41の外周面41aにインクが着弾し、当該インクが前記外周面41a上でドットを
形成する。なお、一回のインク噴射動作により、転写ベルト41の幅方向に列をなして並
ぶ複数のドット(ドット列)が一度に形成される。そして、転写ベルト41が回転してい
る間にインク噴射動作が繰り返されることにより、転写ベルト41の回転方向に沿って複
数のドット列が順次形成されていき、最終的には転写ベルト41の外周面41a上に、前
記印刷データに応じたインク像が形成される。
【0031】
そして、搬送ユニット50の搬送動作により、用紙Pが転写位置に向かって搬送方向下
流側へ移動する一方で、転写ベルト41の回転により、該転写ベルト41の外周面41a
上に形成されたインク像が、該転写ベルト41の回転方向において転写位置に向けて移動
する。その後、コントローラー10は、転写位置にて、回転している転写ベルト41の外
周面41aを用紙Pに当接させることにより、該転写ベルト41にインク像を転写させる
(S006)。転写されたインク像は、最終的な画像として用紙Pに定着される。この結
果、用紙Pに画像が形成されることになる。
【0032】
そして、コントローラー10は、画像が形成された用紙Pを搬送ユニット50に引き続
き搬送させる。やがて用紙Pは不図示の排紙機構により排紙口1aを通じてプリンター1
外に排出される(S007)。その後、コントローラー10は、印刷処理を続行するか否
かの判断を行う。コントローラー10は、次の用紙Pに印刷を行うのであれば、上記一連
の動作を繰り返して再度印刷処理を行い、次の用紙Pに印刷を行わないのであれば、印刷
処理の実行を終了する。
【0033】
<<参考例における課題>>
プリンター1のユーザは、複数枚の用紙Pに同一の画像を形成させるために、複数回の
印刷処理の実行をプリンター1に対して要求する場合がある。以下、同一の画像を複数枚
の用紙Pに形成させる印刷処理を複数回実行するプロセスをジョブと呼ぶ。上記参考例の
場合、1回のジョブ(1ジョブとも言う)で、同一の画像が同一の姿勢(例えば、用紙P
の長手方向に対する姿勢)で複数枚の用紙Pに形成されるように、上述した一連の動作が
同一の要領で繰り返し行われる。すなわち、参考例に係る1ジョブでは、同一のトレイ2
1から用紙Pが給紙され、かつ、ヘッド31に形成されたノズル群のうち、画像形成に関
与するノズルNz(すなわち、インクが噴射されるノズルNz)の組み合わせも一定であ
る。
【0034】
しかしながら、画像形成に関与するノズルNzの組み合わせが一定のままでは、1ジョ
ブの間、画像形成に関与しないノズルNzからインクが噴射されないことになる。インク
が噴射されないノズルNzでは、その開口近傍にあるインクが放置され続けるために増粘
し、これに起因して目詰まりが発生する虞がある。
【0035】
このような課題に対し、本実施形態では、同一の画像を同一の姿勢で複数枚の用紙Pに
形成する場合に、画像形成に関与するノズルNzの組み合わせのバリエーションを増やす
ことが可能である。次項より、本実施形態の画像形成方法について説明する。
【0036】
===本実施形態の画像形成方法===
以下、本実施形態の画像形成方法を説明するために、本実施形態において同一の画像を
同一の姿勢で複数枚の用紙Pに形成するプロセス(すなわち、1ジョブ)の流れについて
説明する。
【0037】
1ジョブの開始にあたり、コントローラー10は、図6に示すように、ホストコンピュ
ーターHCから印刷データを受信し(S011)、当該印刷データの解析を行う。図6は
、本実施形態における1ジョブのフローチャートである。印刷データには、前述したよう
に、いずれのトレイ21内から用紙Pを給紙するのかを示すデータが含まれている。また
、印刷データには、1ジョブ中における印刷処理の実施回数を示すデータが含まれている
。さらに、印刷データには、1回の印刷処理において画像形成に関与するノズルNzの組
み合わせを示すデータ(以下、印刷画像データ)が含まれている。
【0038】
印刷画像データについて、図7を参照しながら説明する。図7は、印刷画像データの説
明図である。なお、説明を分かり易くするため、図7以降に図示するノズルの数について
は実際のノズル数よりも少なくなっている。
【0039】
印刷画像データは、ホストコンピューターHCにインストールされたプリンタドライバ
ーにより、アプリケーションプログラムの実行により得られた画像データから生成される
。具体的には、プリンタドライバーが画像データに対して解像度変換処理、ハーフトーン
処理、及び、ラスタライズ処理等の処理を施すことにより、印刷画像データが生成される
。この印刷画像データは、図7に示すように、複数の印刷画素データにより構成されてい
る。各印刷画素データは、用紙Pに仮想的に定められた単位領域と対応している。単位領
域は、方眼升目状の仮想領域であり、用紙Pの長手方向及び短手方向に並ぶことにより画
像形成領域を形成する。印刷画素データは、対応する単位領域におけるドット形成の有無
(ドットが転写されるか否か)を示すと共に、当該ドットがノズル群中のどのノズルNz
から噴射されるインクにより形成されるのかを示す。つまり、図7において黒丸が形成さ
れた印刷画素データ、と対応する単位領域にはドットが形成され、当該ドットは、前記黒
丸が形成された印刷画素データと対応するノズルNzから噴射されるインク、によって形
成される。
【0040】
そして、コントローラー10は、印刷データを解析する中で、当該印刷データに基づい
て印刷処理を1回行う際にインクが噴射されるノズルNzの数(画像形成に関与するノズ
ルNzの数)を評価する(S012)。以下、縦置き状態でトレイ21に収容された用紙
Pを給紙して該用紙Pに画像Xを形成する印刷処理をn回繰り返すジョブ、を行うための
印刷データを受信した場合を具体例に挙げて説明する。なお、当該印刷データに基づいて
実行されるジョブでは、用紙Pの長手方向に対する画像Xの姿勢が所定の姿勢(図8Aに
図示した姿勢)となるように、縦置き状態で搬送される用紙Pに該画像Xを形成する処理
が行われ、以下、当該処理を第1処理とも言う。図8Aは、第1処理にて形成される画像
Xの、用紙Pの長手方向に対する姿勢についての説明図である。
【0041】
コントローラー10は、受信した印刷データ中の印刷画像データを基に、第1処理が印
刷処理として行われる際にインクが噴射されるノズルNzの数を評価する。ここで、第1
処理にて画像Xを用紙Pに形成するための印刷画像データが図8Bに図示されたものであ
るとすると、コントローラー10は、ノズル群のうち、4つのノズルNz(すなわち、図
8B中、黒丸が形成された印刷画素データに対応するノズルNzであり、具体的には#3
、#5、#7、#9のノズルNz)が画像形成に関与すると評価する。図8Bは、第1処
理にて画像Xを用紙Pに形成するための印刷画像データを示す図である。
【0042】
そして、コントローラー10は、第1処理において画像形成に関与するノズルNzの数
が所定数よりも多いか否かを判断する(S013)。ここで、所定数とは、画像形成に関
与するノズルNzの数について予め設定された数であり、ノズルNzの目詰まりを軽減す
る上で適当な数に設定される。
【0043】
第1処理において画像形成に関与するノズルNzの数が所定数よりも多い場合(S01
3でYes)、コントローラー10は、1ジョブ中、印刷処理としての第1処理のみをn
回行う。すなわち、用紙Pの長手方向に対する画像Xの姿勢が所定の姿勢となるように該
画像Xを用紙Pに形成する印刷処理をn回実行する間に第1処理のみを行う(S014)

【0044】
第1処理の手順について説明すると、図9に示すように、コントローラー10は、縦置
き状態でトレイ21に収容された用紙Pを給紙ユニット20に給紙させ(S021)、搬
送ユニット50に該用紙Pを縦置き状態のまま搬送させる(S022)。図9は、第1処
理の手順を示す図である。次に、コントローラー10は、第1姿勢のインク像(転写前の
画像X)が転写ベルト41の外周面41a上に形成されるように、ヘッドユニット30に
前記外周面41aに向けてインクを噴射させる(S023)。ここで、第1姿勢とは、転
写ベルト41の幅方向と交差する方向(換言すると、搬送方向)に対するインク像の姿勢
の一形態である。なお、本具体例の第1姿勢は、図8Cに示すように、用紙Pの長手方向
と沿う搬送方向に対して前述の所定の姿勢(図8A参照)と同様の姿勢になっている。図
8Cは、第1姿勢のインク像を示す図であり、同図には、転写ベルト41との位置関係を
示すために用紙Pが破線にて図示されている。
【0045】
その後、コントローラー10は、転写位置にて転写ベルト41の外周面41aを縦置き
状態の用紙Pに当接させることにより、該転写ベルト41にインク像を用紙Pに転写させ
る(S024)。この際、用紙Pの長手方向が搬送方向に沿っており、該搬送方向に対す
るインク像の姿勢が前述の第1姿勢となっている。したがって、用紙Pに転写されたイン
ク像(転写後の画像X)の、該用紙Pの長手方向に対する姿勢が所定の姿勢となる。
【0046】
以上のように、第1処理では、用紙Pの長手方向が搬送方向に沿った状態で該用紙Pを
搬送し、インク像の搬送方向に対する姿勢が第1姿勢となるように(換言すると、画像X
の搬送方向に対する姿勢が第1姿勢となるように)転写ベルト41の外周面41aに向け
てインクを噴射し、転写されたインク像の、用紙Pの長手方向に対する姿勢が所定の姿勢
となるように(換言すると、画像Xの、用紙Pの長手方向に対する姿勢が所定の姿勢とな
るように)インク像を該用紙Pに転写する。
【0047】
第1処理において画像形成に関与するノズルNzの数が所定数よりも少ない場合(S0
13でNo)、コントローラー10は、ホストコンピューターHCに対して、横置き状態
でトレイ21に収容された用紙Pを給紙して該用紙Pに画像Xを形成する印刷処理をn回
繰り返すジョブ、を行うための印刷データ(以下、他の印刷データ)の生成を要求する(
S015)。他の印刷データに基づいて実行されるジョブでは、用紙Pの長手方向に対す
る画像Xの姿勢が所定の姿勢となるように(図10A参照)、横置き状態で搬送される用
紙Pに該画像Xを形成する処理が実行され、以下、当該処理を第2処理とも言う。図10
Aは、第2処理にて形成される画像Xの、用紙Pの長手方向に対する姿勢についての説明
図である。なお、他の印刷データについては、コントローラー10が当初受信した印刷デ
ータ(印刷処理としての第1処理をn回繰り返すジョブを行うための印刷データ)からプ
リンター1側で生成されることとしても良い。
【0048】
コントローラー10は、他の印刷データを受信すると(S016)、当該他の印刷デー
タ中の印刷画像データ(以下、他の印刷画像データ)を基に、第2処理が印刷処理として
行われる際にインクが噴射されるノズルNzの数を評価する(S017)。ここで、他の
印刷画像データが図10Bに図示されたものであるとすると、コントローラー10は、ノ
ズル群のうち、4つのノズルNz(すなわち、図10B中、黒丸が形成された印刷画素デ
ータに対応するノズルNzであり、具体的には#2、#4、#7、#10のノズルNz)
が画像形成に関与すると評価する。図10Bは、第2処理にて画像Xを用紙Pに形成する
ための印刷画像データ(他の印刷画像データ)を示す図である。
【0049】
そして、コントローラー10は、第2処理において画像形成に関与するノズルNzの数
が所定数よりも多いか否かを判断する(S018)。画像形成に関与するノズルNzの数
が所定数よりも多い場合(S018でYes)、コントローラー10は、1ジョブ中、印
刷処理としての第2処理のみをn回繰り返して行う。すなわち、用紙Pの長手方向に対す
る画像Xの姿勢が所定の姿勢となるように該画像Xを用紙Pに形成する印刷処理をn回実
行する間に第2処理のみを行う(S019)。
【0050】
第2処理の手順について説明すると、図11に示すように、コントローラー10は、横
置き状態でトレイ21に収容された用紙Pを給紙ユニット20に給紙させ(S031)、
搬送ユニット50に該用紙Pを横置き状態のまま搬送させる(S032)。図11は、第
2処理の手順を示す図である。次に、コントローラー10は、第2姿勢のインク像(転写
前の画像X)が転写ベルト41の外周面41a上に形成されるように、ヘッドユニット3
0に前記外周面41aに向けてインクを噴射させる(S033)。ここで、第2姿勢とは
、転写ベルト41の幅方向と交差する方向(搬送方向)に対するインク像の姿勢のうち、
前述の第1姿勢を90度回転させた姿勢である。本具体例の第2姿勢は、図10Cに示す
ように、用紙Pの長手方向と交差する搬送方向に対して前述の所定の姿勢(図8A参照)
を90度回転させた姿勢になっている。図10Cは、第2姿勢のインク像を示す図である

【0051】
その後、コントローラー10は、転写位置にて転写ベルト41の外周面41aを横置き
状態の用紙Pに当接させることにより、該転写ベルト41にインク像を用紙Pに転写させ
る(S034)。この際、用紙Pの長手方向が搬送方向に交差し、該搬送方向に対するイ
ンク像の姿勢が第2姿勢となっているので、用紙Pに転写されたインク像(転写後の画像
X)の、該用紙Pの長手方向に対する姿勢は所定の姿勢となる。
【0052】
以上のように、第2処理では、用紙Pの長手方向が搬送方向に交差した状態で該用紙P
を搬送し、インク像の搬送方向に対する姿勢が第2姿勢となるように(換言すると、画像
Xの搬送方向に対する姿勢が第2姿勢となるように)転写ベルト41の外周面41aに向
けてインクを噴射し、転写されたインク像の、用紙Pの長手方向に対する姿勢が所定の姿
勢となるように(換言すると、画像Xの、用紙Pの長手方向に対する姿勢が所定の姿勢と
なるように)インク像を該用紙Pに転写する。
【0053】
以上までに説明してきたように、本実施形態では、第1処理及び第2処理のうちのいず
れか一方の処理が印刷処理として行われる際にインクが噴射されるノズルNz、の数が所
定数よりも多い場合、コントローラー10は、1ジョブ中に(すなわち、画像Xを用紙P
に形成する印刷処理を複数回実行する際に)、前記いずれか一方の処理のみを行う。
【0054】
一方、上記数が所定数よりも少ない場合(S018でNo)、コントローラー10は、
1ジョブ中に第1処理及び第2処理を、それぞれn/2回ずつ交互に行う(S020)。
つまり、本実施形態のコントローラー10は、1ジョブにおいて、第1処理及び第2処理
を印刷処理間に切り替えて交互に行うことが可能である。この結果、本具体例では、第1
処理において画像形成に関与するノズルNzの数が4であり、第2処理における当該数が
4であるのに対し、第1処理及び第2処理を切り替えて行う場合の当該数は7となる。
【0055】
以上のように1ジョブ中に第1処理及び第2処理を切り替えて行えば、第1処理におい
て画像形成に関与するノズルNzの組み合わせと、第2処理において画像形成に関与する
ノズルNzの組み合わせとが互いに異なる可能性が高いので(図8B及び図10B参照)
、当該組み合わせのバリエーションが増えることになる。この結果、1ジョブを通してイ
ンクが噴射されないノズルNzの数、を少なくすることが可能となり、以って、ノズルN
zの目詰まりを軽減することが可能になる。なお、ノズルNzの目詰まりを防止するため
にフラッシングや吸引クリーニングによりノズルNzからインクを強制的に噴射させて該
インクを排出する処理、が行われるプリンター1においては、1ジョブを通してインクが
噴射されないノズルNzの数、が少なくなることにより、上記のインク排出処理の実施回
数を減らすことができ、以ってインクの排出量を削減することが可能になる。
【0056】
また、前述したように、第1処理及び第2処理のうちのいずれか一方の処理において画
像形成に関与するノズルNz、の数が所定数よりも多い場合、1ジョブ中に前記いずれか
一方の処理のみを行うことにより、ノズルNzの目詰まりを軽減する上で適当な数のノズ
ルNzを画像形成に関与させた上で、効率良く(具体的には、第1処理と第2処理とを切
替える手間を要することなく)1ジョブを実行することが可能になる。一方、上記数が所
定数よりも少ない場合には、1ジョブ中に第1処理と第2処理とを切り替えて行い、画像
形成に関与するノズルNzの数を増やす。以上のように本実施形態では、1回の印刷処理
において画像形成に関与するノズルNzの数、に応じて合理的に1ジョブを実行すること
が可能である。
【0057】
ところで、画像の種類によっては、ノズル群中、第1処理及び第2処理のいずれの処理
においてもインクが噴射されないノズルNzが存在する場合がある。このようなノズルN
zは、ノズル群において最も端側に位置する可能性が高い(本具体例では、#1のノズル
Nzが該当する)。一方、転写ベルト41の外周面41aのうち、最も端側に位置するノ
ズルNzと対向する部分(以下、対向部分)については、第1処理時、すなわち、転写位
置を縦置き状態の用紙Pが通過する際、該用紙Pと当接しない(接触しない)。そこで、
コントローラー10は、1ジョブにおいて第1処理を画像形成処理として行う際に、最も
端側に位置するノズルNzから前記対向部分に向けてインクを打ち捨てさせる動作を、ヘ
ッドユニット30に実施させる。かかる動作により、最も端側に位置するノズルNzの目
詰まりを抑制することが可能になる。
【0058】
一方、最も端側に位置するノズルNzから打ち捨てられた打ち捨てインクは、前記対向
部分に着弾するので、第1処理の際には用紙Pに転写されずに該対向部分に残留すること
になる。そこで、コントローラー10は、第1処理を行う際、転写ベルト41の回転方向
において転写位置よりも下流側の位置で、前記対向部分に着弾した打ち捨てインクを前述
のワイパーユニット60に払拭させる。
【0059】
具体的に説明すると、コントローラー10は、第1処理の開始にあたり、図12Aに示
すようにワイパー駆動機構62によりワイパー61を転写ベルト41の外周面41aとの
当接位置へ移動させる。図12A及び図12Bは、ワイパーユニット60により打ち捨て
インクを払拭する様子を示す図である。当接位置においてワイパー61は、図12Bに示
すように、転写ベルト41の外周面41aの対向部分と当接する。そして、当該対向部分
に着弾した打ち捨てインクは、転写ベルト41の回転によって転写位置を通過した後に上
記当接位置に到達すると、ワイパー61によりワイピングされる。これにより、前記対向
部分に着弾した打ち捨てインクが該対向部分から払拭されることになる。なお、第1処理
の実施中、ワイパー61は当接位置に位置し続ける一方で、第2処理の実施時には、転写
ベルト41の外周面41aから離間した離間位置に位置する。すなわち、ワイパー駆動機
構62は、1ジョブ中における第1処理から第2処理への切り替えの際にワイパー61を
当接位置から離間位置に移動させ、第2処理から第1処理への切り替えの際にワイパー6
1を離間位置から当接位置に移動させる。
【0060】
===その他の実施形態===
以上、上記実施の形態に基づき、本発明に係る液体噴射装置及び液体噴射方法について
説明した。ただし、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのもので
あり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、
改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0061】
また、上記実施形態では、転写ベルト41及び回転ローラー42を備えた転写ユニット
40、を有する構成のプリンター1について説明した。すなわち、上記実施形態では、ヘ
ッドユニット30が噴射するインクを回転状態の転写ベルト41の外周面41aに着弾さ
せて前記外周面41a上にインク像を形成した後に、外周面41aを用紙Pに当接させて
前記インク像を該用紙Pに転写する場合について説明した。かかる場合、1ジョブにおい
て第1処理及び第2処理を切り替えて行ったとしても、転写されたインク像(転写後の画
像)の、用紙Pの長手方向に対する姿勢は同じ姿勢となるので、画像形成に関与するノズ
ルNzの組み合わせのバリエーションを増やしつつ、同一の画像を用紙Pに形成する印刷
処理を複数回実行することが可能になる。但し、転写ユニット40が備えられていない構
成、つまり、ヘッドユニット30が用紙Pに向けて直接インクを噴射する構成のプリンタ
ー1にも本発明を適用することが可能である。具体的に説明すると、第1処理では、用紙
Pを縦置き状態で搬送し、該用紙Pにインクを直に着弾させて形成される画像の、搬送方
向に対する姿勢が第1姿勢となるようにインクを噴射すれば良い。第2処理では、用紙P
を横置き状態で搬送し、該用紙Pにインクを直接着弾させて形成される画像の、搬送方向
に対する姿勢が第2姿勢となるようにインクを噴射すれば良い。かかる第1処理及び第2
処理を1ジョブ中に切り替えて行えば、上記実施形態と同様の効果を奏することになる。
【0062】
また、上記実施形態では、コントローラー10が、ホストコンピューターHCから受信
した印刷データ中の印刷画像データを基に、第1処理や第2処理中にインクが噴射される
ノズルNz(画像形成に関与するノズルNz)の数を評価することとした。当該評価につ
いては、ホストコンピューターHC側で行うこととしても良い。また、当該評価がホスト
コンピューターHC側で行われる場合、上記印刷画像データの代わりに、アプリケーショ
ンプログラムの実行により得られた画像データを用いることとしても良い。画像データは
、複数の画素データからなり、各画素データは画素の階調値を示すデータである。つまり
、印刷処理中にインクが噴射されるノズルNzの数を、当該印刷処理において形成される
画像の画像データ(階調値データ)を基に評価することとしても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、第1処理や第2処理中にインクが噴射されるノズルNzの数
を評価することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、第1処理や第2処理
においてノズル群中のノズルNzからインクが噴射される頻度(噴射回数)をノズルNz
毎に評価することとしても良い。そして、第1処理及び第2処理のいずれか一方の処理が
印刷処理として行われる際の各ノズルNzのインク噴射頻度が所定頻度よりも多い場合、
1ジョブにおいて前記いずれか一方の処理のみを行い、当該各ノズルNzのインク噴射頻
度が所定頻度よりも少ない場合、1ジョブにおいて第1処理及び第2処理を交互に行うこ
ととしても良い。なお、上記所定頻度については、ノズルNz別に異なる頻度が設定され
ても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、長尺状のヘッド31を備えるヘッドユニット30について説
明したが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット30が、長尺状のヘ
ッド31の代わりに、搬送方向と交差する方向に千鳥状に並んだ複数のヘッド31を備え
、複数のヘッド31の各々が固定位置にてインクを噴射するものであっても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、液体の一例としてのインクを噴射するプリンター1について
説明したが、これに限定されるものではない。増粘する液体である限り、インク以外の他
の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような液状体
を含む)であっても良い。このような液体を噴射する液体噴射装置であれば、例えば、液
晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレ
イの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体
を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射
装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であっても良
い。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線
硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするた
めに酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する液体噴
射装置であっても良い。以上のうちのいずれの液体噴射装置にも本発明を適用することが
可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 プリンター、1a 排紙口、10 コントローラー、11 ユニット制御回路、2
0 給紙ユニット、21 トレイ、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、31a ノズ
ルプレート、31b ノズル面、40 転写ユニット、41 転写ベルト、41a 外周
面、42 回転ローラー、43 押し付けローラー、50 搬送ユニット、51 搬送ロ
ーラー、60 ワイパーユニット、61 ワイパー、62 ワイパー駆動機構、70 検
出器群、HC ホストコンピューター、Nz ノズル、P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に並んだ複数のノズルを備え、該ノズルから液体を噴射する噴射部と、
複数の前記ノズルが並ぶ方向と交差する搬送方向に、媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体に画像を形成する画像形成処理を複数回実行する際に前記噴射部と前記搬送部
を制御する制御部であって、
前記媒体の長手方向が前記搬送方向に沿った状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、
前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が第1姿勢となるように前記噴射部に液体を噴射さ
せる第1処理と、
前記媒体の長手方向が前記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ
、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第1姿勢を90度回転させた第2姿勢とな
るように前記噴射部に液体を噴射させる第2処理と、
を前記画像形成処理間に切り替えて行う制御部と、
を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記第1処理及び前記第2処理のうちのいずれか一方の処理が前記画像形成処理として
行われる際に液体が噴射される前記ノズル、の数が所定数よりも多い場合、前記制御部は
、前記画像形成処理を複数回実行する間に前記いずれか一方の処理のみを行い、
前記数が前記所定数よりも少ない場合、前記制御部は、前記画像形成処理を複数回実行
する間に前記第1処理及び前記第2処理を交互に行うことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の液体噴射装置において、
前記噴射部が噴射した液体を着弾させる着弾面を有し、該着弾面上に形成された転写前
の前記画像を前記媒体に転写する転写ベルトと、
周面に前記転写ベルトを掛けて該転写ベルトを支持し、複数の前記ノズルが並ぶ方向に
沿う軸を中心に回転する回転ローラーとを有し、
前記制御部は、前記回転ローラーの回転に伴って回転している前記転写ベルトの前記着
弾面を前記媒体に当接させることにより、該転写ベルトに転写前の前記画像を転写させ、
前記第1処理では、前記媒体の長手方向が前記搬送方向に沿った状態で前記搬送部に該
媒体を搬送させ、転写前の前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第1姿勢となるよ
うに前記噴射部に前記着弾面に向けて液体を噴射させ、転写後の前記画像の、前記媒体の
長手方向に対する姿勢が所定の姿勢となるように前記転写ベルトに転写前の前記画像を前
記媒体に転写させ、
前記第2処理では、前記媒体の長手方向が前記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に
該媒体を搬送させ、転写前の前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第2姿勢となる
ように前記噴射部に前記着弾面に向けて液体を噴射させ、転写後の前記画像の、前記媒体
の長手方向に対する姿勢が前記所定の姿勢となるように前記転写ベルトに転写前の前記画
像を前記媒体に転写させることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
列状に並んだ複数のノズルを備えた噴射部に、該ノズルから液体を噴射させることと、
搬送部に、複数の前記ノズルが並ぶ方向と交差する搬送方向に、媒体を搬送させること
と、
前記媒体に画像を形成する画像形成処理を複数回実行する際に前記噴射部と前記搬送部
を制御し、
前記媒体の長手方向が前記搬送方向に沿った状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ、
前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が第1姿勢となるように前記噴射部に液体を噴射さ
せる第1処理と、
前記媒体の長手方向が前記搬送方向に交差した状態で前記搬送部に該媒体を搬送させ
、前記画像の前記搬送方向に対する姿勢が前記第1姿勢を90度回転させた第2姿勢とな
るように前記噴射部に液体を噴射させる第2処理と、
を前記画像形成処理間に切り替えて行うことと、
を有することを特徴とする液体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−201897(P2010−201897A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53059(P2009−53059)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】