説明

液体噴射装置及び記録方法

【課題】周期的な特性を有するノズル列を用いてマルチパス法により記録する場合に、周期的な特性を分散させて記録品質を向上させる。
【解決手段】ノズル列7を有する液体吐出部2と、液体吐出部2を主走査方向に走査する走査部3と、被記録媒体9を副走査方向に搬送する搬送部4と、各部を制御する制御部5を備える液体噴射装置1であり、制御部5は、互いに搬送ピッチを異にする複数の周期搬送パターンFが重畳された搬送パターンF0を構成する搬送情報と、ノズル列7を搬送パターンに対応する複数のノズル群Mに分割する分割情報を有し、搬送情報に基づいて被記録媒体9を搬送する毎に、分割情報に基づいて異なるノズル群Mを選択し、同一の記録領域10を複数回走査することにより記録パターンを完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の記録領域を複数回走査して記録密度を向上させた液体噴射装置及びその記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字、図形を描画する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、チャンネルに充填したインクや液体材料をチャンネルに連通するノズルから吐出させる。インクの吐出の際には、液体噴射ヘッドや噴射した液体を記録する被記録媒体を移動させて、文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。近年、この種の装置として、被記録媒体の同一の領域を液体噴射ヘッドを複数回走査して液体噴射ヘッドによる記録ドットのつなぎ目を目立たなくする、或いは液体噴射ヘッドの各ノズルのばらつきを目立たなくするとともに記録密度を向上させた液体噴射装置が実用化されている。
【0003】
特許文献1には、電荷偏向型インクジェット記録装置を用いて被記録媒体である紙の同一の領域にヘッドを2回主走査して記録パターンを完成させる記録方法が記載されている。インクジェットヘッドは16段偏向で縦方向のマトリクス位置を決め、インクジェットヘッドの横方向の主走査によってマトリクスの横方向の位置を決める。まず1回目の主走査Aで16段分印写し、次に8段分紙送りし(副走査)、2回目の主走査Bを行う。従って、1回目と2回目の走査により8段分重複する。この重複した部分を1回目の主走査Aで印写するドットと、2回目の主走査Bで印写するドットに振り分ける。これにより、ドット間の全部又は一部が前の主走査または後の主走査とのつなぎ部分になるので、紙送りのばらつきやドット位置のばらつきの影響が一か所に集中することが無く、全範囲に分散され、行間のつなぎ目が目立たなくなり安定した画像が得られる、というものである。
【0004】
特許文献2には、インクを吐出するノズルの形成ばらつきに起因する記録画素の濃度むら、特に中間調の印字で目立つ濃度むらを防止することを目的としたインクジェット記録装置が記載されている。被記録媒体である紙の同一領域を複数回走査して記録画像を完成させる際に、紙の送り量を乱数で決定する。例えばノズル1〜8の8個が紙送り方向に配列した記録ヘッドを紙送り方向と直交する走査方向に走査して印字する場合は次のとおりである。まず第1走査で記録領域Aにノズル1、2、3により印字する。次にノズル4個分の紙送りを行った後に、第2走査で同じ記録領域Aにノズル5、6、7により印字して記録領域Aの記録を完成させるとともに、記録領域Bにノズル1、2、3、4により印字する。次にノズル1個分の紙送りを行った後に、第3走査で同じ記録領域Bにノズル2、3、4、5により印字して記録領域Bの記録を完成させるとともに、記録領域Cにノズル1により印字する。次に、ノズル7個分の紙送りを行った後に、第4走査で、同じ記録領域Cにノズル8により印字して記録領域Cの記録を完成させる。
【0005】
この印字方法においては、それぞれの走査後の紙送り量であるノズル4個分、ノズル1個分、ノズル7個分の紙送り量が乱数で決定される。各記録領域の間につなぎ部が発生するが、各記録領域の幅は乱数で決定されるのでそのつなぎ部の位置も乱数性を有し、つなぎスジが周期的に表れることが無い。また、各記録領域は様々な吐出ノズルの組み合わせで印字されるマルチパス記録法なので、吐出方向がヨレているノズルが組み合わされる場合はあるが、それが周期的に繰り返されることが無いので濃度むら等の画像の弊害になり難い、というものである。
【0006】
特許文献2には、上記のように紙送り量を乱数で決定することに加えて、同一記録領域を複数回走査して記録する際に、紙送り方向の記録とともに走査方向の記録において使用するノズルをランダムに選択する方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、被記録媒体の同一記録領域を複数回走査して記録するマルチパス記録法が記載されている。この場合も、走査毎に間引き率を設定したマスクパターンを用いて紙送り方向とともに走査方向においても使用するノズルをランダムに選択して記録画素を形成することが記載されている。
【0008】
特許文献4には、被記録媒体の同一記録領域を複数回走査して記録するマルチパス記録法が記載されている。例えばノズル密度が600dpiのノズル列を2列形成して1色を1200dpiの記録密度を可能とする記録ヘッドを使用して多色記録を行うと、記録画像の打ち込み順序差により記録画像の濃度が変化する。これは、記録画素の境界部分において後打ちインクが先打ちインクの下部に浸透することに起因している。そこで、打ち込み順序の異なる記録画素の境界部の長さを短くする。例えば、マスクパターンの最小単位を(2画素×2画素)のように複数画素を一単位とするマスクパターンを形成し、打ち込み順序の異なる記録画素の境界部分の長さを短くし、打ち込み順序差に起因する記録画素の濃度差を減少させる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60107975号公報
【特許文献2】特開平7−52465号公報
【特許文献3】特開平7−52390号公報
【特許文献4】特開2001−63014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
記録ドットの基本解像度は液体吐出部に形成したノズル列のノズルピッチにより決まるが、マルチパス記録法を用いて実際の被記録媒体に記録する記録ドットの解像度を向上させることができる。例えば、基本解像度を有する記録ドットのドット間にマルチパス記録法により液体吐出部を複数回走査して複数の記録ドットを形成し、解像度を複数倍に向上させることができる。しかし、このように記録パターンを形成するとノズル列が持つ周期的な特性が増幅されて記録品質が低下してしまうことがある。以下、具体的に説明する。
【0011】
液体吐出部は、インク等の液体を加圧する圧力室と、各圧力室に連通するノズルが形成されたノズルプレートを備えている。ノズルプレートには多数のノズルが形成されている。この多数のノズルに周期的な性質、例えば液滴の吐出速度、吐出量、或いは吐出方向に周期的なばらつきが形成される場合がある。
【0012】
図9は、液体吐出部50のノズル列52の長さLを2πとしたときに、各位置のノズル51から吐出される液体、例えばインクの吐出量の誤差の一例を表している。図9において横軸がノズル51の位置であり、縦軸が吐出量の誤差である。吐出量は2π/8=0.25πの周期を持って変化する。このような周期性は、例えばノズル列52の長さLの1/8を一単位として複数ノズルをレーザー光等により一括形成し、これを8回繰り返してノズル列52を形成する場合などに表れる。
【0013】
図10は、吐出量の誤差が0.25πの周期性を有する液体吐出部50を用いて被記録媒体54の同一の記録領域55に記録パターンを形成するマルチパス記録法を説明するための図である。本例は、隣接するノズル51により形成される記録ドットのドット間に他のパスにより記録ドットを記録して、ノズル列52のノズルピッチの8倍の解像度を達成する。液体吐出部50に形成したノズル列52は、第1ノズル群M1〜第8ノズル群M8の8つのノズル群に分割されている。図10(a)に示すように、液体吐出部50の第1ノズル群M1を第1走査して(S1)被記録媒体54の記録領域55に記録する。例えば、図10(b)に示すように、第1ノズル群M1の第1ノズルと第2ノズルにより記録ドットD11とD12が記録される。つまり、記録ドットD11とD12の間隔は、ノズル列52で隣り合うノズル51のノズルピッチに等しい。次に、被記録媒体54を概ね第1ノズル群M1の幅の送り量を搬送し、第2ノズル群M2を第2走査して(S2)同一の記録領域55に第1走査において記録した記録ドットD11とD12のドット間に記録ドットD21を形成する。これを第8ノズル群M8の第8走査S8まで繰り返す。従って、図10(b)に示すように、記録ドットD11とD12の間に、第2走査S2から第8走査S8による記録ドットD21〜D81が記録される。
【0014】
図10(c)は、記録領域55に記録される液体の吐出量の誤差を表し、横軸が記録媒体54の記録位置であり、縦軸が各位置のノズル51から吐出された液体の吐出量の誤差を表す。実線56はノズル列52が本来有している吐出量の誤差の周期性を表し、破線57はマルチパス記録法により記録領域55に吐出された吐出量の誤差を表す。その結果、ノズル列52が有する周期的な特徴が8倍に増幅されて記録領域55に記録される。これは、液体吐出部50がもともと有している周期的特性が増幅されたことを表し、記録パターンに周期性が強調された結果、記録品質が低下した。
【0015】
特許文献1にはマルチパス記録法の原理的な発明が記載されているが、上記のような液体吐出部の特性に周期性がある場合、ノズル列の分割数に応じてその周期性が強調され、記録パターンの品質低下として表れる。
【0016】
特許文献2の記録法では紙送り量を乱数に基づいてランダムに設定している。しかし、上記例ではノズルピッチにより決まる記録ドットのドット間に他の走査により記録ドットを記録する。そのため、引用文献2のように紙送り量を乱数化してもノズル列が有している周期性が分散されない。仮に、第2〜第8ノズル群M2〜M8の1番目の記録ドットD21〜D81以外の記録ドットを、紙送り量を乱数化して第1走査の記録ドットD11とD12の間に記録する場合を想定すると、液体吐出部50の走査回数が増化し、記録領域55の記録パターンを完成するのに多大の時間を要することになる。
【0017】
また、引用文献3、4の記録法では同一領域を記録するノズルをランダムに選択している。この方式を上記例に適用しようとすると、例えば記録ドットD21の位置に記録する場合に、第2〜第8ノズル群M2〜M8のいずれかを複数回走査してどれか一つのノズル群のノズルをランダムに選択する必要がある。従って、上記特許文献2の場合と同様に、記録領域55の記録パターンを完成するのに多大の時間を要することになる。
【0018】
本発明は、マルチパス記録法による高密度記録を迅速に行うことができ、且つ液体吐出部の有する周期的な特性を分散させて目立たなくすることができる液体噴射装置及びその記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の液体吐出装置は、複数のノズルにより構成されるノズル列を有する液体吐出部と、前記液体吐出部を主走査方向に走査する走査部と、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する搬送部と、前記液体吐出部と前記走査部と前記搬送部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、互いに搬送ピッチを異にする複数の周期搬送パターンが重畳された搬送パターンを構成する搬送情報と、前記ノズル列を前記搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を有し、前記搬送情報に基づいて前記被記録媒体を搬送する毎に、前記分割情報に基づいていずれか一又は複数のノズル群を選択して前記液体吐出部を走査し、同一の記録領域を異なるノズル群により複数回記録して記録パターンを完成させることとした。
【0020】
また、前記複数の周期搬送パターンの数をn(nは2以上の整数)とし、前記複数のノズル群の副走査方向における幅をr0とし、前記複数の周期搬送パターンの搬送ピッチをそれぞれP1、P2、・・・、Pnとしたときに、k1=r0/P1、k2=r0/P2、・・・、kn=r0/Pnにおけるk1、k2、・・・、knが1を除く略整数値であり、且つ、互いに素の関係を有することとした。
【0021】
また、前記nが2であることとした。
【0022】
また、前記搬送パターンの最小の搬送長が概ねrd=r0/(2×k1×k2)であることとした。
【0023】
また、前記複数のノズル群の数が8であり、前記k1が略3であり、前記k2が略5であることとした。
【0024】
また、前記k1、k2、・・・、knを加算した加算値をkmとしたときに、前記搬送部は、搬送ピッチが略r0/kmである第二の搬送パターンを構成する第二の搬送情報と、幅の等しいkm個のノズル群に分割する第二の分割情報を有し、前記搬送情報及び前記分割情報を前記第二の搬送情報及び前記第二の分割情報に切り換えて前記各部を制御することとした。
【0025】
また、前記制御部は、前記搬送パターンと異なる第三の搬送パターンを構成する第三の搬送情報と、前記ノズル列を前記第三の搬送パターンに対応する前記複数のノズル群に分割する第三の分割情報を有し、前記搬送情報及び前記分割情報を前記第三の搬送情報及び前記第三の分割情報に切り換えて前記液体吐出部と前記走査部と前記搬送部とを制御することとした。
【0026】
また、前記複数のノズルから吐出される液体の吐出特性が副走査方向における位置に関して周期性を有し、前記吐出特性の一周期の長さが前記複数の周期搬送パターンのいずれの搬送ピッチとも異なることとした。
【0027】
また、前記複数の周期搬送パターンの数をn(nは2以上の整数)とし、前記複数のノズル群の副走査方向における幅をr0とし、前記複数の周期搬送パターンの搬送ピッチをそれぞれP1、P2、・・・、Pnとしたときに、k1=r0/P1、k2=r0/P2、・・・、kn=r0/Pnにおけるk1、k2、・・・、knが1を除く略整数値であり、且つ、前記k1、k2、・・・、knを加算した加算値をkmとしたときに、前記吐出特性の一周期の長さが略r0/kmであることとした。
【0028】
本発明の記録方法は、ノズル列を有する液体吐出部と、前記液体吐出部を主走査方向に走査する走査部と、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する搬送部と、前記液体吐出部と前記走査部と前記搬送部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部が、搬送ピッチの異なる周期搬送パターンが複数重畳された搬送パターンを有する搬送情報と、前記ノズル列を前記搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を設定する設定ステップと、前記搬送部が前記搬送情報に基づいて前記被記録媒体を搬送する搬送ステップと、前記走査部が前記液体吐出部を走査するとともに、前記分割情報に基づいて選択されるノズル群から液体を吐出して記録する走査ステップと、を備えることとした。
記録方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明の液体吐出装置は、ノズル列を有する液体吐出部と、液体吐出部を主走査方向に走査する走査部と、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する搬送部と、上記各部を制御する制御部と、を備える。制御部は、互いに搬送ピッチを異にする複数の周期搬送パターンが重畳された搬送パターンを構成する搬送情報と、ノズル列を前記搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を有している。そして、搬送情報に基づいて被記録媒体を搬送する毎に、分割情報に基づいてノズル群を選択して液体吐出部を走査し、同一の記録領域を異なるノズル群により複数回記録して記録パターンを完成させる。これにより、液体噴射部が有している液体吐出特性の周期性を分散させた高密度の記録を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射装置の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る記録方法を表すフローチャートである。
【図3】本発明の第一実施形態に係る記録方法の説明図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る液体噴射装置により記録した記録ドット列を表す。
【図5】本発明の第一実施形態に係る液体噴射装置により記録した被記録媒体の記録位置に対する吐出量の誤差を表すグラフである。
【図6】本発明の第二実施形態に係る液体噴射装置の構成を示す概念図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る液体噴射装置により記録した被記録媒体の記録位置に対する吐出量の誤差を表すグラフである。
【図8】本発明の第三実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図9】従来公知の液体吐出部のノズル位置に対する吐出量の誤差を表す図である。
【図10】従来公知のマルチパス記録法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射装置1の構成を示す概念図である。液体噴射装置1は、液体吐出部2と走査部3と搬送部4とこれら各部を制御する制御部5を備えている。液体吐出部2は、Y方向の副走査方向に配列する複数のノズル6からなるノズル列7を有している。走査部3は液体吐出部2をX方向の主走査方向に走査する。搬送部4は被記録媒体9を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する。
【0032】
制御部5は、互いに搬送ピッチの異なる複数の周期搬送パターンが重畳された搬送パターンを構成する搬送情報と、ノズル列7を当該搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を有している。本第一実施形態においては、搬送パターンF0は、搬送長r1〜r5により構成され、搬送ピッチP1の第1周期搬送パターンF1と搬送ピッチP2の第2周期搬送パターンF2が重畳された構造を有している。ノズル列7は副走査方向であるY方向に配列し、第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5に5分割されている。液体吐出部2の副走査方向であるY方向におけるノズル列7の幅、つまり第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5の副走査方向における幅をr0とする。第1〜第5ノズル群M1〜M5のそれぞれの幅は、概ね搬送長r1〜r5のそれぞれの長さを有している。従って、制御部5が有する搬送情報は、例えば搬送パターンF0の搬送回数や搬送長r1〜r5のデータであり、分割情報は、ノズル列7を分割する分割数や第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5を構成するノズル6を特定するための情報である。
【0033】
制御部5は、搬送情報に基づいて搬送部4を制御して被記録媒体9を副走査方向に順次搬送する。制御部5は、搬送情報に基づいて被記録媒体9を搬送する毎に、分割情報に基づいて第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5から一つ又は複数のノズル群を選択し、走査部3を制御して液体吐出部2を主走査方向に走査し記録する。このように、記録領域10に異なるノズル群により複数回記録して記録パターンを完成させる。
【0034】
図2及び図3を用いて本発明の液体噴射装置1の記録方法を具体的に説明する。図2は本発明に係る記録方法を表すフローチャートであり、図3は被記録媒体9を搬送しながら幅r0の領域を複数のノズル群により記録する方法の説明図である。まず、設定ステップST1において、制御部5は搬送情報と分割情報を設定する。搬送情報は搬送長r1〜r5の5個のデータからなる。分割情報は搬送長r1〜r5に対応する第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5のノズル位置のデータからなる。次に、搬送ステップST2において、制御部5の搬送情報に基づいて搬送部4は被記録媒体9を副走査方向に搬送長r1の距離を搬送する。次に、走査ステップST3において、制御部5は分割情報に基づいて第1ノズル群M1を選択し、走査部3は液体吐出部2を主走査方向に走査して、記録領域Raに液体を吐出して記録する第1走査S1を行う。次に、判定ステップST4において、制御部5は、記録が終了したか否かを判定し、記録が終了いていないと判定したときは(NO)、搬送ステップST2及び走査ステップST3を繰り返す。制御部5は、記録が終了したと判定したときは(YES)終了する。
【0035】
制御部5は記録が終了していないと判定したときは(判定ステップST4においてNO)、搬送部4は紙面である被記録媒体9を略搬送長r2の距離を搬送する(搬送ステップST2)。次に、制御部5が第2ノズル群M2を追加して選択し、走査部3が液体吐出部2を主走査方向に走査して、記録領域RaとRbに記録する第2走査S2を行う(走査ステップST3)。これにより、記録領域Raは2回記録され、記録領域Rbは1回記録される。次に、制御部5は記録が終了していないと判定し(判定ステップST4においてNO)、搬送部4は被記録媒体9を略搬送長r3の距離を搬送する(搬送ステップST2)。次に、制御部5が第3ノズル群M3を追加して選択し、走査部3が液体吐出部2を主走査方向に走査して、記録領域Ra〜Rcに記録する第3走査S3を行う(走査ステップST3)。これにより、記録領域Raは3回記録され、記録領域Rbは2回記録され、記録領域Rcは1回記録される。次に、制御部5は記録が終了していないと判定し(判定ステップST4においてNO)、搬送部4は被記録媒体9を略搬送長r4の距離を搬送する(搬送ステップST2)。次に、制御部5が第4ノズル群M4を追加して選択し、走査部3が液体吐出部2を主走査方向に走査して、記録領域Ra〜Rdに記録する第4走査S4を行う(走査ステップST3)。これにより、記録領域Raは4回記録され、記録領域Rbは3回記録され、記録領域Rcは2回記録され、記録領域Rdは1回記録される。次に、制御部5は記録が終了していないと判定し(判定ステップST4においてNO)、搬送部4は被記録媒体9を略搬送長r5の距離を搬送する(搬送ステップST2)。次に、制御部5が第5ノズル群M5を追加して選択し、走査部3が液体吐出部2を主走査方向に走査して、記録領域Ra〜Reに記録する第5走査S5を行う(走査ステップST3)。これにより、記録領域Raは5回記録され、記録領域Rbは4回記録され、記録領域Rcは3回記録され、記録領域Rdは2回記録され、記録領域Reは1回記録される。記録領域Raは第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5により5回記録され、記録パターンが完成する。
【0036】
以降は、被記録媒体9を略搬送長r1の距離を搬送し、第1ノズル群M1を非選択として記録領域Rb〜Reに記録する(第6走査S6)。次に、被記録媒体9を略搬送長r2の距離を搬送し、第2ノズル群M2を非選択として記録領域Rc〜Reに記録する(第7走査S7)。次に、被記録媒体9を略搬送長r3の距離を搬送し、第3ノズル群M3を非選択として記録領域Rd、Reに記録する(第8走査S8)。次に被記録媒体9を搬送長r4の距離を搬送し、第4ノズル群M4を非選択として記録領域Reを記録して(第9走査S9)、幅r0への記録を完成する。各記録領域Ra〜Reはそれぞれ5回記録される。
【0037】
図4は、上記のように同一の記録領域を5回走査して記録した記録ドット列を表す。実際は、この記録ドット列が主走査方向に並んで記録されている。記録領域Raを例として説明すると、第1走査S1において第1記録ドットD11、D12・・・が記録され、第2走査S2において第2記録ドットD21、D22・・・が記録され、第3走査S3において第3記録ドットD31、D32・・・が記録され、第4走査S4において第4記録ドットD41・・・が記録され、第5走査S5において第5記録ドットD51・・・が記録される。各走査において記録される記録ドットのドット間隔、例えばD11とD12の間隔やD21とD22の間隔は、隣接するノズル6の間隔、即ちノズルピッチNPにより定まる。つまり、各走査において記録する記録ドットは他の走査において記録されたノズルピッチNPにより定まる記録ドット間に位置する。従って、記録パターンの解像度が向上する。本第一実施形態の場合は、同一の記録領域を5回重ねて走査して5倍の解像度を実現する。
【0038】
第1ノズル群M1〜第5ノズル群M5の各幅は搬送パターンF0の各搬送長と略等しい。より具体的には、搬送長r2を、第2ノズル群M2の幅からNP/5の値を差し引いた距離とする。搬送長r2を第2ノズル群M2の幅と一致させると、第1ノズル群M1により記録した記録ドットD11に重畳して記録ドットD21を記録することになる。そこで、搬送長r2からNp/5を差し引くことにより、図4に示すように第1ノズル群M1により記録した記録ドットD11に重ならないように第2ノズル群M2により記録ドットD21を記録することができる。搬送長r3、r4、r5も同様に第3、第4、第5ノズル群M3、M4、M5の各幅のそれぞれからNP/5の値を差し引いた距離とする。その結果、同一の記録領域に複数回重ねて記録する際に、各記録ドットの間隔を等しく配列することができる。
【0039】
なお、記録ドットの配列順序やドット間の距離は図4に示すものに限定されない。記録位置の順序やドット間距離を変更してもよい。例えば、第2走査S2において記録する記録ドットの位置をD11とD12の間であってD21以外の位置としてもよいし、各記録ドットのドット間距離やドットの大きさを変えてもよい。また各記録ドットを重ねて記録してもよい。本発明は、ノズルピッチNPを単位として記録される記録ドットの特性ばらつきを低減、又は分散させるものであり、ノズルピッチNP内の記録ドットの配列や配置を対象としていない。
【0040】
図5は、被記録媒体の記録位置と吐出される液体の吐出量の誤差を表すグラフである。横軸が被記録媒体9の記録位置であり縦軸が吐出される液体の吐出量の誤差である。液体吐出部2が、ノズル位置に対してグラフ15の吐出量の誤差を有する場合に、グラフ16が本発明の搬送パターンF0に基づいて記録した吐出量の誤差の積算値を表し、グラフ17が従来の搬送パターンにより記録した吐出量の誤差の積算値を表す。グラフ16は、第1ノズル群M1の吐出量の誤差(グラフ21)と、第2ノズル群M2の吐出量の誤差(グラフ20)と、第3ノズル群M3の吐出量の誤差(グラフ19)と、第4ノズル群M4の吐出量の誤差(グラフ18)と、第5ノズル群M5の吐出量の誤差(グラフ15)を積算して得た。本発明の搬送パターンF0によれば、第1周期搬送パターンF1と第2周期搬送パターンF2を重畳したことにより吐出量の誤差の周期的な変化が相殺されて吐出量の誤差がほぼ一定の0となる。これに対して各搬送長を略r0/5の均等に分割した従来の搬送パターンによれば、1回の走査では目立たなかった吐出量の分布が積算され、増幅されて目立つようになり、記録品質が低下した。
【0041】
次に、第一実施形態における搬送パターンF0を図1を参照して説明する。搬送パターンF0は第1周期搬送パターンF1と第2周期搬送パターンF2を重畳して構成した5個の搬送長を有する。ここで、第1周期搬送パターンF1は幅r0を3分割した略r0/3(=k1)の搬送ピッチP1を有し、第2周期搬送パターンF2は幅r0を2分割した略r0/2(=k2)の搬送ピッチP2を有している。そして、第1周期搬送パターンF1の搬送点1-1、1-2、1-3、・・・と第2周期搬送パターンF2の搬送点2-1、2-2、2-3、・・・が重ならないように重畳する。また、搬送パターンF0の最小の搬送長を概ねrd=(P1×P2)/(2×r0)=r0/(2×k1×k2)=r0/12に設定した。本第一実施形態においては、最小の搬送長は搬送長r2とr4である。これにより、液体吐出部2がもともと有している周期的な特性ばらつき、例えば液体吐出量の誤差を複数回の走査により相殺して最小に低減させることができる。更に、同一の記録領域を5回の走査により記録パターンを完成させることができる。言い変えると、液体吐出部2の幅r0を9回の走査により記録パターンを完成させることができるので、ノズル群をランダムに選択する場合と比較して迅速に記録することができる。なお、第一実施形態において、各搬送長r1、r2、r3、r4、r5は、それぞれ概ねr0/4、r0/12、r0/3、r0/12、r0/4である。
【0042】
上記第一実施形態においては、2種類の第1及び第2周期搬送パターンF1、F2から液体吐出部2の幅r0を5分割する搬送パターンF0を構成したが、本発明はこれに限定されない。一般に、周期搬送パターンFの数をn(nは2以上の整数)とし、副走査方向における幅をr0とし、周期搬送パターンの搬送ピッチをP1、P2、・・・、Pnとし、k1=r0/P1、k2=r0/P2・・・、kn=r0/Pnとしたときに、k1、k2・・、knは1を除く略整数値とし、且つ、互いに素の関係とする。k1、k2・・・、knを略整数値としたので、周期搬送パターンFを複数重畳した搬送パターンF0も幅r0を単位として周期的に構成することができる。これにより、ノズル列7を一定幅のノズル群に固定し、搬送情報や分割情報の情報量を縮小することができる。また、k1、・・・、knを互いに素としたので液体吐出部2の周期的な特性ばらつきを効果的に分散させて平均化することができる。
【0043】
また、周期搬送パターンFを2つの周期搬送パターンにより重畳して構成する場合に、最小の搬送長を概ねrd=r0/(2×k1×k2)とすることにより、液体吐出量の誤差(ばらつき)を相殺し、目立たなくすることができる。なお、一般的に周期搬送パターンFの数をnとしたときの最小の搬送長は概ねrd=r0/(n×k1×・・・×kn)とすればよい。
【0044】
また、制御部5は、複数の搬送パターンF0を構成する複数の搬送情報と、これらの搬送情報に対応する複数の分割情報を備えるように構成することができる。そして、制御部5が、搬送情報及びこれに対応する分割情報を切り替えて液体吐出部2、走査部3及び搬送部4を制御するように液体噴射装置1を構成することができる。
【0045】
例えば、k1、・・・、knを加算し加算値をkmとしたときに、制御部5は、搬送ピッチが略r0/kmである第二の搬送パターンを構成する第二の搬送情報と、ノズル長が等しいkm個のノズル群に分割する第二の分割情報を備える。そして、制御部5は、n個の周期搬送パターンFが重畳された搬送パターンF0を構成する搬送情報とこれに対応する分割情報を、上記第二の搬送情報と第二の分割情報に切り替えて液体吐出部2、走査部3及び搬送部4を制御する。また、上記第二の搬送情報や第二の分割情報の他に、液体吐出部2のノズル特性の周期性を分散させる第三の搬送情報及びこれに対応する第三の分割情報をあらかじめ記憶しておく。そして、実際の液体吐出部2の周期的特性に応じていずれかの搬送情報や分割情報を適宜選択し、周期的な吐出特性が重畳されない液体噴射装置1を構成することができる。
【0046】
なお、本第一実施形態の場合は、ノズルから吐出される液体の吐出量の誤差は図5のグラフ15に示す周期性を有している。即ち、吐出量の誤差の一周期の長さはr0/5であり、第1周期搬送パターンF1や第2周期搬送パターンF2のいずれの搬送ピッチとも異なる長さを有している。また、k1=3、k2=2から、km=k1+k2=5となり、誤差の1周期の長さはr0/km=km/5となる。一般的に、ノズル6から吐出される吐出量誤差の一周期の長さをLcとしたときに、複数のノズル群の副走査方向における幅をr0とし、Lc=r0/km、即ちkm=r0/Lcとなるように正数kmを定める。その上で、周期搬送パターンの数をn(nは2以上の整数)とし、各周期搬送パターンの搬送ピッチをP1、・・・、Pnとして、k1=r0/P1、・・・、kn=r0/Pnにおけるk1、・・・、knの加算値がkmとなるように各周期搬送パターンを選定すればよい。
【0047】
(第二実施形態)
図6は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射装置1の構成を示す概念図である。液体噴射装置1は、液体吐出部2、走査部3、搬送部4及びこれら各部を制御する制御部5を備えている。図6では走査部3、搬送部4及び制御部5を省略した。制御部5は、第1周期搬送パターンF1と第2周期搬送パターンF2を重畳して合成した搬送パターンF0を構成する搬送情報と、この搬送パターンF0の各搬送長r1〜r8に対応する第1ノズル群M1〜第8ノズル群M8に分割する分割情報を有している。
【0048】
液体吐出部2は、一般的には複数の周期成分が重なった吐出特性を有している。そこで吐出特性を実際に検査し、この検査結果をフーリエ変換等により周波数解析を行って吐出特性の周期性を特定する。以下、このように特定された吐出特性が図9に示される記録位置に対する吐出量の誤差であるとして、第1周期搬送パターンF1と第2周期搬送パターンF2を選択し、これらを重畳した搬送パターンF0について説明する。
【0049】
第1周期搬送パターンF1は、一定の搬送ピッチP1を有し、k1=r0/P1は略5である。即ち、第1周期搬送パターンF1はノズル列7を5分割する周期性を有している。第2周期搬送パターンF2は、一定の搬送ピッチP2を有し、k2=r0/P2は略3である。即ち、第2周期搬送パターンF2はノズル列7を3分割する周期性を有している。従って、k1とk2は互いに素の関係を有している。搬送パターンF0の最小の搬送長は概ね、rd=r0/(2×k1×k2)=r0/30であり、搬送長r2とr7が該当する。
【0050】
液体噴射装置1は、図2に示すフローチャートに従って記録する。以下、被記録媒体9の記録領域10に記録する記録方法を説明する。制御部5は、上記のとおり、搬送情報と分割情報を設定する(設定ステップST1)。次に、搬送部4は被記録媒体9を搬送長r1の距離を副走査方向に搬送する(搬送ステップST2)。次に、制御部5は第1ノズル群M1を選択し、走査部3が液体吐出部2を副走査方向に走査して、第1ノズル群M1により記録領域10に記録する(走査ステップST3)。次に、搬送部4は被記録媒体9を略搬送長r2の距離を副走査方向に搬送し(搬送ステップST2)、制御部5は第2ノズル群M2を追加して選択し、走査部3が液体吐出部を副走査方向に走査して、第1ノズル群M1と第2ノズル群M2により記録領域10に記録する(走査ステップST3)。以降、搬送長r8まで順次搬送し、搬送毎に対応するノズル群を追加して選択し、液体吐出部2を走査して、記録領域10に8回記録して記録パターンを完成する。
【0051】
なお、各搬送長r1〜r8は各第1ノズル群M1〜第8ノズル群M8のそれぞれの幅にほぼ一致する。搬送長r2以降の実際の搬送長は、各ノズル群の幅からノズルピッチNP/8の距離を差し引いた距離とする。これにより、各走査において記録する記録ドットを副走査方向に均等間隔で配列させ、記録パターンの分解能を向上させることができる。なお、第二実施形態において、各搬送長はr1、r2、r3、r4、r5、r6、r7、r8は、それぞれ概ねr0/6、r0/30、r0/5、r0/10、r0/10、r0/5、r0/30、r0/6である。また、ノズルから吐出される液体の吐出量誤差の一周期の長さLcはr0/8=r0/km=r0/(k1+k2)である。
【0052】
図7は、被記録媒体の記録位置と吐出された液体の吐出量の誤差を表す。横軸が被記録媒体9の位置であり、縦軸が吐出量の誤差である。横軸は、ノズル列7の幅を2πとした時の位置を表し、搬送幅r1〜r8に分割されている。液体吐出部2は、そのノズル列7の幅をr0としたときにr0/8の周期で変化する吐出特性を有している(図10(c)に示すグラフ56)。図7に示される各曲線は各走査において吐出する吐出量の誤差を表し、各グラフに示される吐出量の誤差を積算すると吐出量の誤差がほぼ0となるグラフ22が得られる。その結果、液体吐出部2がもともと有していた周期的ばらつきを相殺して最小に低減させることができる。
【0053】
なお、以上の第一及び第二実施形態において液体吐出部2の吐出特性としてノズル6から吐出される液体の吐出量の誤差を例として説明してきたが、本発明は液体の吐出量の誤差を低減させることに限定されない。例えば、複数のノズル6の吐出方向が周期的に偏向する場合にも、本発明の構成を採用することにより吐出方向の偏向が分散して平均化され、記録品質が向上する。例えば、液体吐出部2の複数のノズル6から吐出される液体の吐出方向が主走査方向に周期的に偏向する場合に、従来法では偏向の位相が揃うので記録ドットが副走査方向に波打つうねりが観察される。これに対して本発明の構成にすれば、吐出の偏向方向がノズルピッチ単位で平均化され、記録ドットのうねりが解消して記録品質が向上する。また、複数のノズル6から吐出される液体の吐出方向が副走査方向に周期的に偏向する場合にも、同様に、吐出の偏向方向がノズルピッチ単位で平均化される。その結果、従来法では副走査方向に縞状の記録ドットの濃淡が現れるのに対して、本発明の構成にすればこの縞状の濃淡が解消し、記録品質が向上する。
【0054】
即ち、液体吐出部2の複数のノズル6から吐出される液体の吐出特性が複数のノズル6の副走査方向における位置に関して周期性を有している場合に、上記吐出特性の一周期の長さと異なる搬送ピッチを有し、かつ、互いに搬送ピッチを異にする複数の周期搬送パターンを重畳して搬送パターンを構成する。これにより、液体吐出部2が有している吐出特性の周期性を分散させて、高品質で高密度の記録を迅速に行うことができる。更に、複数の周期搬送パターンの数をnとし、複数のノズル群の副走査方向における幅をr0とし、複数の周期搬送パターンの搬送ピッチをそれぞれP1、P2、・・・、Pnとしたときに、k1=r0/P1、k2=r0/P2、・・・、kn=r0/Pnにおけるk1、k2、・・・、knが1を除く略整数値であり、且つ、k1、k2、・・・、knを加算した加算値をkmとしたときに、吐出特性の一周期の長さを略r0/kmの関係とする。これにより、吐出特性の周期性を効果的に解消させ記録品質を向上させることができる。加えて、k1、k2、・・・、knを互いに素の関係とすれば吐出特性の周期性を一層効果的に解消させることができる。
【0055】
(第三実施形態)
図8は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射装置1の模式的な斜視図である。液体噴射装置1は、液体吐出部2、2’を往復走査する走査部3と、液体吐出部2、2’に液体を供給する液体供給管33、33’と、液体供給管33、33’に液体を供給する液体タンク31、31’と、紙等の被記録媒体9を副走査方向に搬送する搬送部4と、液体吐出部2、2’、走査部3、搬送部4を制御する図示しない制御部5を備えている。制御部5は、互いに搬送ピッチを異にする複数の周期搬送パターンが重畳された搬送パターンを構成する搬送情報と、ノズル列を搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を有している。
【0056】
液体噴射装置1は、紙等の被記録媒体9を副走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42からなる搬送部4と、被記録媒体9に液体を吐出する液体吐出部2、2’と、液体タンク31、31’に貯留した液体を液体供給管33、33’に押圧して供給するポンプ32、32’と、液体吐出部2、2’を副走査方向と交差する主走査方向に走査する走査部3を備えている。
【0057】
一対の搬送手段41、42は主走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体9を副走査方向に搬送する。走査部3は、主走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット38と、キャリッジユニット38を連結し主走査方向に移動させる無端ベルト39と、この無端ベルト39を図示しないプーリを介して周回させるモータ40を備えている。
【0058】
キャリッジユニット38は、複数の液体吐出部2、2’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク31、31’は対応する色の液体を貯留し、ポンプ32、32’、液体供給管33、33’を介して液体吐出部2、2’に供給する。各液体吐出部2、2’は駆動電圧に応じて各色の液滴を吐出する。制御部が、液体吐出部2、2’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット38を駆動するモータ40の回転及び被記録媒体9の搬送位置を制御することにより、被記録媒体9上に任意のパターンを記録することできる。
【0059】
具体的には、制御部5は、搬送情報に基づいて搬送部4により被記録媒体9を搬送する毎に、分割情報に基づいて液体吐出部2のノズル群を選定するとともに走査部3を走査して、同一の記録領域に複数回記録して記録パターンを完成させる。これにより、液体吐出部が有している液体吐出特性の周期性を分散させ又は相殺して、高密度の記録を迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 液体噴射装置
2 液体吐出部
3 走査部
4 搬送部
5 制御部
6 ノズル
7 ノズル列
9 被記録媒体
10 記録領域
M1 第1ノズル群、M2 第2ノズル群、M3 第3ノズル群、M4 第4ノズル群、M5 第5ノズル群
ST1 設定ステップ、ST2 搬送ステップ、ST3 走査ステップ、ST4 判定ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルにより構成されるノズル列を有する液体吐出部と、
前記液体吐出部を主走査方向に走査する走査部と、
被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する搬送部と、
前記液体吐出部と前記走査部と前記搬送部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
互いに搬送ピッチを異にする複数の周期搬送パターンが重畳された搬送パターンを構成する搬送情報と、前記ノズル列を前記搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を有し、
前記搬送情報に基づいて前記被記録媒体を搬送する毎に、前記分割情報に基づいていずれか一又は複数のノズル群を選択して前記液体吐出部を走査し、同一の記録領域を異なるノズル群により複数回記録して記録パターンを完成させる液体噴射装置。
【請求項2】
前記複数の周期搬送パターンの数をn(nは2以上の整数)とし、前記複数のノズル群の副走査方向における幅をr0とし、前記複数の周期搬送パターンの搬送ピッチをそれぞれP1、P2、・・・、Pnとしたときに、k1=r0/P1、k2=r0/P2、・・・、kn=r0/Pnにおけるk1、k2、・・・、knが1を除く略整数値であり、且つ、互いに素の関係を有する請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記nが2である請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記搬送パターンの最小の搬送長が概ねrd=r0/(2×k1×k2)である請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記複数のノズル群の数が8であり、前記k1が略3であり、前記k2が略5である請求項2〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記k1、k2、・・・、knを加算した加算値をkmとしたときに、
前記搬送部は、搬送ピッチが略r0/kmである第二の搬送パターンを構成する第二の搬送情報と、幅の等しいkm個のノズル群に分割する第二の分割情報を有し、前記搬送情報及び前記分割情報を前記第二の搬送情報及び前記第二の分割情報に切り換えて前記各部を制御する請求項2〜5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記搬送パターンと異なる第三の搬送パターンを構成する第三の搬送情報と、前記ノズル列を前記第三の搬送パターンに対応する前記複数のノズル群に分割する第三の分割情報を有し、前記搬送情報及び前記分割情報を前記第三の搬送情報及び前記第三の分割情報に切り換えて前記液体吐出部と前記走査部と前記搬送部とを制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記複数のノズルから吐出される液体の吐出特性が副走査方向における位置に関して周期性を有し、前記吐出特性の一周期の長さが前記複数の周期搬送パターンのいずれの搬送ピッチとも異なる請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記複数の周期搬送パターンの数をn(nは2以上の整数)とし、前記複数のノズル群の副走査方向における幅をr0とし、前記複数の周期搬送パターンの搬送ピッチをそれぞれP1、P2、・・・、Pnとしたときに、k1=r0/P1、k2=r0/P2、・・・、kn=r0/Pnにおけるk1、k2、・・・、knが1を除く略整数値であり、且つ、前記k1、k2、・・・、knを加算した加算値をkmとしたときに、前記吐出特性の一周期の長さが略r0/kmである請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
ノズル列を有する液体吐出部と、前記液体吐出部を主走査方向に走査する走査部と、被記録媒体を主走査方向と交差する副走査方向に搬送する搬送部と、前記液体吐出部と前記走査部と前記搬送部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、搬送ピッチの異なる周期搬送パターンが複数重畳された搬送パターンを有する搬送情報と、前記ノズル列を前記搬送パターンに対応する複数のノズル群に分割する分割情報を設定する設定ステップと、
前記搬送部が前記搬送情報に基づいて前記被記録媒体を搬送する搬送ステップと、
前記走査部が前記液体吐出部を走査するとともに、前記分割情報に基づいて選択されるノズル群から液体を吐出して記録する走査ステップと、を備える記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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