説明

液体噴射装置

【課題】キャップ内に発生する負圧によって該キャップの周壁が内側に倒れることを抑制しつつ、液体噴射ヘッドに対するキャップの密着性を確保することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンターは、ノズル形成面19aに形成されたノズル21からインクを噴射する記録ヘッド19と、該記録ヘッド19に対してノズル21を囲うように当接して該記録ヘッド19との間で密閉空間26を形成するキャップ24とを備える。キャップ24は、その周壁31における少なくとも先端部が可撓性材料によって構成され、記録ヘッド19は、密閉空間26の形成時にキャップ24の周壁31の先端部に対して周壁31の内側から当接することによりキャップ24の周壁31が内側に倒れることを規制する凸部22を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット式プリンターなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射ヘッドから液体を噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)が広く知られている。このプリンターは、インク(液体)を収容するインクカートリッジから記録ヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを供給し、そのインクを記録ヘッドのノズルから記録用紙に噴射することにより印刷を行うようになっている。
【0003】
こうしたプリンターでは、インクの噴射不良を低減するために、インクを噴射するノズルを囲うようにして記録ヘッドにキャップを当接して閉空間を形成した状態で、該キャップ内を吸引ポンプにより吸引することで、ノズルから増粘したインクや気泡などを強制的に排出させる、いわゆるクリーニングが適宜行われる。
【0004】
こうしたキャップは、記録ヘッドとの密着性を確保するべく、通常、周壁の先端部(キャップと当接する部分)をゴムなどの可撓性材料によって形成されているため、吸引ポンプによって閉空間を吸引する際に該閉空間に発生する負圧によって周壁の先端部が内側に弾性変形して倒れてしまうという問題があった。このため、従来は、キャップの周壁の内部に硬質の合成樹脂からなる補強リブを埋設することで、キャップの周壁の先端部が閉空間に発生する負圧によって内側に倒れることを抑制することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−105615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のプリンターでは、キャップの周壁の内部に補強リブを埋設しているため、キャップの周壁の先端部が内側へ倒れることを抑制できるものの、補強リブによってキャップの周壁の先端部の柔軟性が阻害されて記録ヘッドに対する密着性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、キャップ内に発生する負圧によって該キャップの周壁が内側に倒れることを抑制しつつ、液体噴射ヘッドに対するキャップの密着性を確保することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、ノズル形成面に形成されたノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドに対して前記ノズルを囲うように当接して該液体噴射ヘッドとの間で閉空間を形成するキャップとを備えた液体噴射装置であって、前記キャップは、その周壁における少なくとも先端部が可撓性材料によって構成され、前記液体噴射ヘッドは、前記閉空間の形成時に前記キャップの周壁の先端部に対して前記周壁の内側から当接することにより前記キャップの周壁が内側に倒れることを規制する規制部を有している。
【0009】
通常、液体噴射ヘッドとの密着性を確保するため、キャップの周壁を可撓性材料によって構成すると、液体噴射ヘッドのクリーニングにおいて、キャップと液体噴射ヘッドとで閉空間を形成した状態で該閉空間に負圧を発生させた場合に、該負圧(大気圧との差圧)によってキャップの周壁が内側に倒れてしまう。この点、この発明によれば、キャップと液体噴射ヘッドとで閉空間を形成した状態で、該閉空間に負圧を発生させて液体噴射ヘッドのクリーニングを行っても、規制部によってキャップの周壁が内側に倒れることが規制される。すなわち、従来とは異なり、キャップの周壁の内部に補強リブを埋設しなくても、キャップの周壁が閉空間に発生した負圧によって内側に倒れることが抑制される。したがって、キャップ内に発生する負圧によって該キャップの周壁が内側に倒れることを抑制しつつ、液体噴射ヘッドに対するキャップの密着性を確保することが可能となる。
【0010】
本発明の液体噴射装置において、前記規制部は、前記ノズル形成面と垂直な垂直面を有している。
この発明によれば、キャップ内に発生する負圧によってキャップの周壁の先端部が規制部の垂直面に押し付けられるため、キャップの周壁が内側に倒れる力をキャップと液体噴射ヘッドとの密着力に転換することが可能となる。
【0011】
本発明の液体噴射装置において、前記規制部は、前記ノズル形成面に前記ノズルを囲うように設けられた凸部である。
この発明によれば、キャップの周壁が閉空間に発生した負圧によって内側に倒れることを簡単な構成で確実に規制することが可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記キャップの周壁は、内側に傾斜している。
この発明によれば、キャップの周壁を液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接させて閉空間を形成する際に、該キャップの周壁の先端部がノズル形成面上を規制部に向かって滑動しやすくなる。このため、キャップの周壁の先端部を規制部に容易に当接させることが可能となる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、前記キャップの周壁は、外側に膨らむように湾曲している。
この発明によれば、キャップの周壁の先端部が規制部に当接した状態でキャップ内に発生する負圧によってキャップの周壁が内側に引かれると、キャップの周壁を真っ直ぐにしようとする力が働く。このため、キャップの周壁の先端部の規制部に対する密着力を高めることが可能となる。
【0014】
本発明の液体噴射装置において、前記キャップの周壁における基端部は硬質材料によって構成されている。
この発明によれば、キャップ内に負圧が発生してもキャップの周壁における基端部が内側に倒れることがないので、キャップにおける底壁と周壁の基端部とで該キャップ内に液体を収容するための所定の領域を確保でき、周壁の部分的な倒れによる大気のリークも防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】同プリンターのメンテナンス機構を示す断面模式図。
【図3】実施形態において、キャップの先端部が記録ヘッドのノズル形成面に当接したときの状態を示す要部拡大断面模式図。
【図4】実施形態において、キャップの先端部が記録ヘッドの凸部の垂直面に当接したときの状態を示す要部拡大断面模式図。
【図5】変更例において、キャップの先端部が記録ヘッドの凹部の垂直面に当接したときの状態を示す要部拡大断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0017】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿ってプラテン13が延設されている。プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により記録用紙Pが後方側から給送されるようになっている。
【0018】
フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、該ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。すなわち、キャリッジ16には左右方向に貫通するように支持孔16aが形成されており、該支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、キャリッジ16がガイド軸15によって左右方向に往復移動可能に支持されている。
【0019】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリー17a及び従動プーリー17bが回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されており、これら一対のプーリー17a,17b間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモーター18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動されるようになっている。
【0020】
図1及び図2に示すように、キャリッジ16の下面側には液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられており、該記録ヘッド19の下面で構成されるノズル形成面19aには該記録ヘッド19に備えられた複数のノズル21が開口している。また、ノズル形成面19a上には各ノズル21を囲うように四角枠状をなす規制部としての凸部22が設けられている。そして、凸部22の外周面はノズル形成面19aと垂直な垂直面22aとされている。
【0021】
一方、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対して液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ20が着脱可能に装着されている。そして、インクカートリッジ20内のインクは、記録ヘッド19に備えられた圧電素子(図示略)の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19の各ノズル21からプラテン13上に給送された記録用紙Pに噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0022】
なお、フレーム12内の右端部に位置する記録用紙Pと対応しないホームポジション領域(非印刷領域)には、非印刷時に記録ヘッド19のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構23が設けられている。
【0023】
次に、メンテナンス機構23について詳述する。
図2に示すように、メンテナンス機構23は、有底四角箱状をなすキャップ24と、該キャップ24を昇降するための昇降装置25とを備えている。そして、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態で、キャップ24を昇降装置25によって上昇させると、該キャップ24が各ノズル21を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接して該記録ヘッド19との間で閉空間としての密閉空間26を形成するようになっている。
【0024】
キャップ24は底壁30と周壁31とを備えており、底壁30と周壁31の基端部31aとは共に硬質の合成樹脂材料(硬質材料)によって構成されている。また、周壁31における基端部31aよりも先端側(上側)の部位はエラストマーなどの可撓性材料によって構成されたリップ部31bとされている。図2及び図3に示すように、リップ部31bは、外側が膨らむように湾曲しており、全体的に内側に傾斜している。そして、リップ部31bの先端(上端)の開口部は、凸部22全体を囲うことができる程度の大きさに設定されている。なお、リップ部31bにおいて、4つのコーナー部は、他の部位に比べて肉厚が薄くなっている。
【0025】
図2に示すように、キャップ24の底壁30における中央部からは突部32が下方に向かって突設されており、該突部32内にはキャップ24内からインクを排出するための排出路32aが上下方向に貫通するように形成されている。突部32には可撓性を有する排出チューブ33の基端側(上流側)が接続され、該排出チューブ33の他端側(下流側)は直方体状をなす廃インクタンク34内に挿入されている。
【0026】
キャップ24と廃インクタンク34との間における排出チューブ33の中間部には、キャップ24側から廃インクタンク34側へ向かってキャップ24内を吸引するためのチューブポンプ35が設けられている。なお、廃インクタンク34内には、該廃インクタンク34内に排出されたインクを吸収して保持する廃インク吸収材36が収容されている。
【0027】
次に、記録ヘッド19のクリーニングを行う際のメンテナンス機構23の作用について説明する。
さて、記録ヘッド19のクリーニングを行う場合には、まず、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態で、キャップ24を上昇させる。すると、図3に示すように、まず、キャップ24のリップ部31bの先端部が凸部22を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接する。そして、図4に示すように、さらにキャップ24を上昇させると、リップ部31bは、内側に傾斜しているため、ノズル形成面19a上を内側に向かって滑りながら倒れて凸部22の垂直面22aに先端部が当接する。
【0028】
これにより、キャップ24が各ノズル21を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接した状態(キャッピング状態)となり、キャップ24と記録ヘッド19のノズル形成面19aとで密閉空間26が形成される。続いて、チューブポンプ35を駆動すると、キャップ24内(密閉空間26)が吸引されて該キャップ24内に負圧が発生する。この負圧の発生(キャップ24内外の圧力差)により、リップ部31bが内側に引かれるため、リップ部31bの先端部が凸部22の垂直面22aに押し付けられる。
【0029】
加えて、リップ部31bは、外側に膨らむように湾曲しているため、負圧によって内側に引かれることで、リップ部31bには該リップ部31bを真っ直ぐにしようとする力が働く。このため、リップ部31bの先端部が凸部22の垂直面22a及びノズル形成面19aに強く押し付けられる。したがって、垂直面22a及びノズル形成面19aに対するリップ部31bの先端部の密着力(シール性)は、飛躍的に高まる。
【0030】
さらに、このとき、リップ部31bの各コーナー部は、該リップ部31bにおける他の部位よりも肉薄であるため、該他の部位よりも柔軟性に富んでいる。このため、リップ部31bは、各コーナー部においても、垂直面22a及びノズル形成面19aに対するシール性が確保される。
【0031】
そして、このようにキャップ24内(密閉空間26)の密閉性が高められた状態の下での該キャップ24内の負圧により、各ノズル21から増粘したインクが気泡等とともに吸引されてキャップ24内に排出される。キャップ24内に排出されたインクは、チューブポンプ35により排出路32a及び排出チューブ33を介して廃インクタンク34内に排出される。
【0032】
なお、キャップ24における底壁30と周壁31の基端部31aとは共に硬質の合成樹脂材料によって構成されているため、キャップ24内に負圧が発生してもキャップ24の周壁31の基端部31aは内側に倒れることがない。したがって、キャップ24における底壁30と周壁31の基端部31aとで形成されるキャップ24内の所定領域は、各ノズル21から排出されたインクを収容するための領域として確保される。
【0033】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)キャップ24と記録ヘッド19のノズル形成面19aとで密閉空間26を形成した状態で、該密閉空間26に負圧を発生させて記録ヘッド19のクリーニングを行っても、キャップ24の周壁31のリップ部31bの先端部が凸部22の垂直面22aに当接することによって、該リップ部31bが内側に倒れることを規制することができる。すなわち、従来とは異なり、キャップ24の周壁31におけるリップ部31bの内部に補強リブを埋設しなくても、該リップ部31bが密閉空間26に発生した負圧によって内側に倒れることを抑制することができる。したがって、キャップ24内に発生する負圧によって該キャップ24における周壁31のリップ部31bが内側に倒れることを抑制しつつ、記録ヘッド19に対するキャップ24(リップ部31b)の密着性を確保することができる。
【0034】
(2)凸部22はノズル形成面19aと垂直な垂直面22aを有しているため、キャップ24内に発生する負圧によってキャップ24の周壁31におけるリップ部31bの先端部が内側に倒れて凸部22の垂直面22aに押し付けられる。このため、キャップ24内の負圧によってリップ部31bが内側に倒れる力をキャップ24と記録ヘッド19との密着力に転換することができる。したがって、キャップ24の記録ヘッド19に対する密着性(シール性)を高めることができる。
【0035】
(3)キャップ24の周壁31におけるリップ部31bは内側に傾斜しているため、キャップ24を記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接させて密閉空間26を形成する際に、該キャップ24の周壁31におけるリップ部31bの先端部がノズル形成面19a上を凸部22に向かって滑動しやすくすることができる。この結果、キャップ24の周壁31におけるリップ部31bの先端部を凸部22の垂直面22aに容易に当接させることができる。
【0036】
(4)キャップ24の周壁31におけるリップ部31bは外側に膨らむように湾曲している。このため、リップ部31bの先端部が凸部22の垂直面22aに当接した状態でキャップ24内に負圧を発生させると、該負圧によってリップ部31bが内側に引かれるため、リップ部31bには該リップ部31bを真っ直ぐにしようとする力が働く。この結果、リップ部31bの先端部が凸部22の垂直面22aに強く押し付けられるので、凸部22の垂直面22aに対するリップ部31bの先端部の密着力を高めることができる。
【0037】
(5)キャップ24の周壁31における基端部31aは硬質の合成樹脂材料によって構成されているため、キャップ24内に負圧が発生しても該キャップ24の周壁31における基端部31aが内側に倒れないようにすることができる。したがって、キャップ24における底壁30と周壁31の基端部31aとで該キャップ24内に各ノズル21から排出されたインクを収容するための所定の領域を確保することができ、周壁31の部分的な倒れによる大気のリークも防ぐことができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0038】
・図5に示すように、凸部22の代わりに凹部40を規制部としてノズル形成面19aに設けるようにしてもよい。この場合、凹部40の内側面がキャップ24のリップ部31bの先端部が当接する垂直面40aとして機能する。
【0039】
・凸部22の代わりにノズル形成面19aに対して垂直な垂直面を有する段差を規制部としてノズル形成面19aに設けるようにしてもよい。
・キャップ24の周壁31全体を可撓性材料によって構成してもよい。すなわち、キャップ24の周壁31全体をリップ部31bとしてもよい。
【0040】
・キャップ24のリップ部31bは、必ずしも内側に傾斜させる必要はない。
・キャップ24のリップ部31bは、必ずしも湾曲させる必要はない。
・凸部22の外周面は必ずしもノズル形成面19aと垂直にする必要はない。
【0041】
・凸部22を円形枠状にするとともにキャップ24を有底円形箱状にしてもよい。このようにすれば、キャップ24及び凸部22にコーナー部が形成されないので、凸部22に対するキャップ24の密着性(シール性)を向上させることができる。
【0042】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、19a…ノズル形成面、21…ノズル、22…規制部としての凸部、22a,40a…垂直面、24…キャップ、26…閉空間としての密閉空間、31…周壁、31a…周壁31の基端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル形成面に形成されたノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドに対して前記ノズルを囲うように当接して該液体噴射ヘッドとの間で閉空間を形成するキャップとを備えた液体噴射装置であって、
前記キャップは、その周壁における少なくとも先端部が可撓性材料によって構成され、
前記液体噴射ヘッドは、前記閉空間の形成時に前記キャップの周壁の先端部に対して前記周壁の内側から当接することにより前記キャップの周壁が内側に倒れることを規制する規制部を有していることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記ノズル形成面と垂直な垂直面を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記ノズル形成面に前記ノズルを囲うように設けられた凸部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップの周壁は、内側に傾斜していることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記キャップの周壁は、外側に膨らむように湾曲していることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記キャップの周壁における基端部は硬質材料によって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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