説明

液体噴射装置

【課題】放置用キャップがノズル形成面を覆っている状態であっても、放置用キャップの内部と外部(大気)とを連通することができる連通部を、液体噴射ヘッドの構造の複雑化と大型化を抑えつつ設けた液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】プリンター1は、ノズル16から液体としてのインクを噴射する記録ヘッド3を備え、プリンター1のインク噴射動作、すなわち印刷動作が停止している放置状態にあるときに、記録ヘッド3のノズル形成面4の周縁部を保護するカバー部材7に当接しノズル形成面4を覆う放置用キャップ2と、この放置用キャップ2がノズル形成面4を覆っている状態において、放置用キャップ2の内部と大気とを連通する連通部47とを備えることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置には、液体の噴射が長時間行われない状態である放置状態とされている間、液体噴射ヘッドのノズル形成面の保護と、ノズル内のインクの水分の蒸発を防ぐ目的で、ノズル形成面を覆う(封止する)ことができる、いわゆる放置用キャップが備えられているものがある。たとえば、特許文献1には、放置用キャップの開口縁をノズル形成面に当接してノズル形成面を覆うことで、ノズル形成面の保護とノズル内のインクの水分の蒸発を防ぐことができる構成を備えるインクジェットプリンターが開示されている。また、特許文献2には、放置用キャップのノズル形成面との当接部に、キャップ内部とキャップの外部(大気)とを連通する溝を形成した構成が開示されている。係る溝を設けることで、ノズル内のインクの水分の蒸発を抑えつつ、キャップ内部の圧力を大気に平衡させ、ノズル内に形成されているインクメニスカスの破壊を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−152813号公報
【特許文献2】特開平10−181033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクジェットプリンターにおいては、インク噴射時に飛散したインクが、ノズル形成面に付着することがある。そのため、放置用キャップの開口縁が当接する部分にインクが付着している場合には、放置用キャップに形成された上記溝内にインクが溜まり、キャップの内部と外部(大気)との連通が確保できなくなる虞がある。一方、たとえば、放置用キャップがノズル形成面に当接された状態で、キャップの内部と外部とを連通することができる構成をノズル形成面に設けることで、キャップの内部と外部とを連通させる構成も考えられる。しかしながら、ノズル形成面の上側部(液体噴射ヘッドの内部)には、ノズルやインク流路等が配置されている。したがって、ノズル形成面にキャップの内部と外部とを連通することができる構成を設けることとすると、いきおい、液体噴射ヘッドの構造が複雑化したり、あるいは、液体噴射ヘッドが大型化してしまうという問題が起こりやすい。
【0005】
そこで、本発明は、放置用キャップがノズル形成面を覆っている状態であっても、放置用キャップの内部と外部(大気)とを連通することができる連通部を、液体噴射ヘッドの構造の複雑化と大型化を抑えつつ設けた液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置であって、液体噴射装置の液体噴射動作が停止している放置状態にあるときに、液体噴射ヘッドのノズル形成面の周縁部を保護するカバー部材に当接し上記ノズル形成面を覆う放置用キャップと、放置用キャップがノズル形成面を覆っている状態において、放置用キャップの内部と大気とを連通する連通部とを備えることとする。
【0007】
このように液体噴射装置を構成することで、放置用キャップの内部と大気とを連通する連通部をカバー部材を利用して設けることができる。そのため、放置用キャップがノズル形成面を覆っている状態であっても、放置用キャップの内部と外部(大気)とを連通することができる連通部を、液体噴射ヘッドの構造の複雑化と大型化を抑えた構成で設けることができる。
【0008】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、連通部が、カバー部材と液体噴射ヘッドとの間に備えられることとしてもよい。
【0009】
このように液体噴射装置を構成することで、放置用キャップの内部と大気とを連通する連通部を簡単な構成で設けることができる。
【0010】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、カバー部材は、キャリッジの液体噴射ヘッドの取り付け面からノズル形成面の周縁部に亘って液体噴射ヘッドを覆うこととしてもよい。
【0011】
このように液体噴射装置を構成することで、連通部の延長化を図ることができる。連通部の延長化を図ることで、連通部を、放置用キャップの内部と大気との連通を確保しながらも、放置用キャップ内の水分を含んだ空気がより流れ難いものとすることができ、ノズル内のインクの水分の蒸発を効果的に抑えることができる。
【0012】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、連通部が、カバー部材と放置用キャップとの当接部に備えられることとしてもよい。
【0013】
このように液体噴射装置を構成することで、放置用キャップの内部と大気とを連通する連通部を簡単な構成で設けることができる。
【0014】
上記発明に加えて、液体噴射装置は、吸引ポンプと、吸引ポンプに接続され、ノズル形成面を覆っている状態で吸引ポンプの吸引力によりキャップの内部に負圧が発生させられる封止用キャップとを備えることとしてもよい。
【0015】
このように液体噴射装置を構成することで、放置用キャップによりノズル形成面を覆い、ノズル形成面の保護とノズル内のインクの水分の蒸発を防ぐことに加えて、ノズルに対してクリーニング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンターの全体的な概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す放置用キャップにより記録ヘッドのノズル形成面を封止している状態を前方から見た図である。
【図3】キャリッジに取り付けられた記録ヘッドを下方から見た構成を示す図である。
【図4】上段(A)は、記録ヘッドの外観形状を示す斜視図である。下段(B)は、カバー部材の構成を示す斜視図である。
【図5】記録ヘッドにカバー部材が装着された状態を示す図である。
【図6】封止用キャップ昇降機構の概略の構成を示す図である。
【図7】放置用キャップ昇降機構の概略の構成を示す図である。
【図8】連通部の他構成を示す図である。
【図9】インクジェットプリンターの変形例1の要部の側面図である。
【図10】インクジェットプリンターの変形例1の要部の底面図である。
【図11】インクジェットプリンターの変形例2の要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の液体噴射装置の実施の形態に係るインクジェットプリンター(以下、単に、プリンターと記載する。)1について、図面を参照しながら説明をする。図1は、プリンター1の全体的な概略構成を示す斜視図である。以下の説明では、図1に示す矢印X方向を前方、矢印Y方向を左方、矢印Z方向を上方として説明を行うこととする。図2は、放置用キャップ2により記録ヘッド3のノズル形成面4を封止している状態を前方から見た図である。図3は、キャリッジ5に取り付けられた記録ヘッド3を下方から見た構成を示す図である。図4の上段(A)は、記録ヘッド3の外観形状を示す斜視図である。下段(B)は、カバー部材7の構成を示す斜視図である。図5は、記録ヘッド3にカバー部材7が装着された状態を示す図である。
【0018】
(プリンター1の全体構成)
プリンター1は、上部にインクカートリッジ8が搭載され、下面に液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド3が取り付けられたキャリッジ5を備えている。キャリッジ5は、タイミングベルト9を介してキャリッジモーター10に接続され、ガイドバー12に案内されて記録媒体としての記録用紙Pの主走査方向(左右方向)に往復移動される。インクカートリッジ8には、液体としてのインクが貯留され、インクカートリッジ8から記録ヘッド3に対しインクが供給される。キャリッジ5の移動により記録ヘッド3を主走査に移動すると共に、記録用紙Pを副走査方向(主走査方向に直交する方向)前方に移動させながら、記録ヘッド3から記録用紙Pの上面にインク滴を噴射させることで、記録用紙Pに画像や文字が印刷される。図1に示すように、記録用紙Pが搬送される範囲の右側には、非印刷領域13が設けられている。そして、この非印刷領域13には、記録ヘッド3に対してクリーニング処理を行うクリーニング機構14と、記録ヘッド3のノズル形成面4を覆い保護することができるノズル保護機構15が配置されている。
【0019】
記録ヘッド3は、図2から図5に示すように、インクカートリッジ8からインクの供給を受けてインク滴を噴射するヘッド本体6と、ノズル16が形成されるノズルプレート17等を備える。ノズルプレート17は、ヘッド本体6の下面に備えられている。記録ヘッド3は、ノズルプレート17のノズル形成面4が記録用紙Pと対向するようにキャリッジ5に対して取り付けられている。
【0020】
記録ヘッド3には、ノズル形成面4の周縁部からヘッド本体6の側面18に亘って記録ヘッド3を覆うカバー部材7が取り付けられている。カバー部材7は、矩形状の開口部19が形成される底板部20と、この底板部20の周囲に立設される側板部21とを有し、全体として枠形を呈している。カバー部材7は、底板部20がノズル形成面4に対して対向するように、また、側板部21がヘッド本体6の側面18に沿うようにヘッド本体6に対して装着される(図5参照)。
【0021】
カバー部材7が記録ヘッド3に対して上述のように装着された状態において、開口部19の内側にノズル16(図3、図4(A)参照)が位置することができるように、開口部19の形状および大きさが設定されている。したがって、開口部19を介して、ノズル16から記録用紙Pに対してインクを噴射することができる。また、カバー部材7が記録ヘッド3に装着されることで、印刷時にノズル形成面4と記録用紙Pとの間に底板部20が配置されることになる。これにより、印刷時にノズル形成面4が記録用紙Pに接触することが防止され、記録用紙Pに汚れが付着してしまうや、メニスカスの破壊等を防止することができる。
【0022】
(クリーニング機構14の構成と動作)
クリーニング機構14は、図1に示すように、記録ヘッド3のノズル16(図3参照)を大気から遮断することができる封止用キャップ22と、封止用キャップ昇降機構23(図6参照)と、ポンプユニットとしての吸引ポンプ(チューブポンプ)24と、廃液タンク25と、ワイピング手段としてのワイパー26等を備える。封止用キャップ22は、上方に開口部27を有する有底の箱体を呈している。封止用キャップ22のキャップ内と吸引ポンプ24とは連通し、吸引ポンプ24により封止用キャップ22の内部に負圧を発生させることができる。クリーニング機構14は、記録ヘッド3のノズル16からインクを噴射させることによりノズル16の目詰まりを解消させるいわゆるフラッシング(空噴射)と、ノズル16内に有るインクを吸引する吸引動作と、ノズル形成面4に付着しているインクを払拭するワイピングと言った、いわゆるクリーニング処理を記録ヘッド3に対して行うことができる。
【0023】
プリンター1は、印刷動作中の所定時間毎に、記録ヘッド3を非印刷領域13に移動させ、クリーニング機構14によりフラッシングを実行する。フラッシングの実行では、先ず、記録ヘッド3を非印刷領域13に移動させ、封止用キャップ22の直上に位置させる。そして、封止用キャップ昇降機構23(図6参照)により封止用キャップ22を上昇させ、封止用キャップ22の開口部27の周縁部、すなわち封止用キャップ22の上端縁28をノズル形成面4に当接させる。封止用キャップ昇降機構23は、駆動モーター29による駆動により封止用キャップ22の昇降を行うことができるように構成されている。駆動モーター29の駆動力は、ピニオンギア30とラックギア31を介して封止用キャップ22側に伝達させる。なお、封止用キャップ昇降機構23は、封止用キャップ22の下方に配置されるもので、図1においては、図示外の構成となっている。
【0024】
図3に示すように、底板部20の開口部19を囲む内周縁部32とノズル16が形成されるノズル形成領域33と間には、封止用キャップ22の上端縁28が当接することができる当接領域34が設けられている。つまり、封止用キャップ22は、封止用キャップ昇降機構23により上昇させられ、上端縁28が当接領域34に当接させられる。封止用キャップ22の上端縁28が当接領域34に当接させた状態では、ノズル16は封止用キャップ22内に封止された状態となり、封止用キャップ22の外側の大気から遮断された状態となる。
【0025】
そして、ノズル16が封止用キャップ22内に封止された状態で、印刷とは関係のない駆動信号を記録ヘッド3に印加し、インク滴の空噴射を行うフラッシングが行われる。このフラッシングにより、ノズル内で増粘したインクがノズル外に排出される。排出された廃インクは、吸引ポンプ24を介して廃液タンク25に排出される。なお、封止用キャップ22内にインク吸収材を備える構成としてもよい。封止用キャップ22内にインク吸収材を備えることで、フラッシングされたインクがインク吸収材に捕捉され、封止用キャップ22内でのインクの飛散を防止でき、ノズル形成面4への廃インクの付着を防止できる。また、廃インクは、インク吸収材に捕捉されているため、封止用キャップ22をノズル形成面4から離間させる際に、封止用キャップ22から廃インクがこぼれたり飛散してしまうことを防止できる。
【0026】
クリーニング機構14による吸引動作は次のように行われる。吸引動作においてもフラッシングと同様に、封止用キャップ22が、その上端縁28をノズル形成面4(当接領域34)に当接させ、ノズル16が封止用キャップ22の内側に封止させられる。そして、吸引ポンプ24により封止用キャップ22内部に負圧を発生させ、ノズル16内に在るインクを、封止用キャップ22内に吸引排出させる。この吸引動作により、フラッシングと同様に、ノズル16内に在る増粘したインクをノズル外に排出することができる。
【0027】
封止用キャップ22の上端縁28は、ウレタンゴムやシリコンゴム等により構成され、当接領域34に当接したときに、全周に亘ってノズルプレート17に密着することができるように構成されている。したがって、上端縁28をノズルプレート17に当接させ、封止用キャップ22内に負圧を発生させたときに、上端縁28とノズルプレート17との当接部からの空気の流入を防止できる。これにより、封止用キャップ22内に、ノズル16内のインクを吸引するのに必要な負圧を確実に発生させることができる。
【0028】
ワイピングの実行は次のように行われる。先ず、図示を省略するワイパー昇降機構により、ワイパー26を、記録ヘッド3の移動経路に位置させる。そして、記録ヘッド3を主走査方向に移動することで、ノズル形成面4をワイパー26に摺接させる。これによりノズル形成面4に付着しているインクをワイパー26により払拭する。
【0029】
(ノズル保護機構15の構成と動作)
ノズル保護機構15は、放置用キャップ2と、放置用キャップ昇降機構35(図7参照)等を備える。このノズル保護機構15は、プリンター1が放置状態とされる際に、ノズル形成面4を放置用キャップ2で覆う機能を有する。プリンター1が放置状態になっている間、ノズル形成面4を放置用キャップ2で覆うことで、ノズル16内に在るインクの水分の蒸発が抑えられ、インクの増粘が防止される。また、ノズル形成面4への塵埃等の異物の付着も防止できる。
【0030】
なお、放置状態とは、コンピュータ等からプリンター1に対して出された印刷指令に基づく印刷動作が終了した後、次の印刷動作が行われるまでの間の印刷動作が行われない状態を言う。具体的には、たとえば、印刷動作が終了した後、プリンター1の電源スイッチがオフされ、プリンター1が非通電となっている状態は放置状態である。また、電源がオンされている場合であっても、印刷動作が終了した後、新たな印刷指令がプリンター1に対して行われるまでの間の印刷動作が行われない状態は放置状態である。この放置状態の間に、ノズル16が長時間に亘って外気に晒されると、ノズル16内に在るインクの水分が蒸発し、インクが増粘しノズル16に詰まりを生じてしまう等の問題が発生する。かかる問題の発生を防止するために、プリンター1は、ノズル保護機構15を備え、放置状態において、ノズル形成面4を放置用キャップ2で覆い、ノズル16内に在るインクの水分の蒸発を抑え、インクの増粘を防止したり、ノズル形成面4への異物の付着を防止することができるように構成されている。
【0031】
プリンター1は、放置状態になるのに先立って、記録ヘッド3を非印刷領域13に移動し、そして、放置用キャップ2の直上に位置させる。そして、放置用キャップ昇降機構35(図7参照)により放置用キャップ2を上昇させ、放置用キャップ2をカバー部材7の底板部20に当接させる。この封止用キャップ昇降機構35は、駆動モーター36による駆動により封止用キャップ22の昇降を行うことができるように構成されている。駆動モーター36の駆動力は、ピニオンギア37とラックギア38を介して放置用キャップ2側に伝達させる。なお、封止用キャップ昇降機構23は、封止用キャップ22の下方に配置されるもので、図1においては、図示外の構成となっている。
【0032】
放置用キャップ2は、上方に開口部39を有する有底の箱体を呈している。放置用キャップ2は上昇させられると、図2に示すように、開口部39の周縁部、すなわち放置用キャップ2の上端縁40が底板部20に当接する。つまり、図3に示すように、放置用キャップ2は、上端縁40が、底板部20の当接部41に当接する。当接部41は、開口部19を囲むように位置している。したがって、放置用キャップ2が上昇し上端縁40が底板部20に当接した状態では、ノズル形成面4は、放置用キャップ2により放置用キャップ2の外部の大気から遮断された状態で覆われる。このように、放置用キャップ2を底板部20に当接させ、ノズル形成面4を大気から遮断するように覆うことで、ノズル内のインクの水分の蒸発を抑え、インクの増粘を防止することができる。また、ノズル形成面4への異物の付着を防止することができる。
【0033】
放置用キャップ2の上端縁40は、ウレタンゴムやシリコンゴム等により構成され、当接部41に当接したときに、全周に亘って底板部20に密着することができるように構成されている。また、放置用キャップ2は、開口部27を除いて放置用キャップ2の外部に繋がる隙間が無いように構成されている。したがって、上端縁40と底板部20の当接部41との間の空気の出入りが防止され、放置用キャップ2内の湿度変化が少ないものとなっている。
【0034】
ところで、カバー部材7は、上述したように、側板部21がヘッド本体6の側面18に沿うように、また、底板部20がノズル形成面4に対向するように、ヘッド本体6に装着されている。そして、カバー部材7は、ヘッド本体6から脱落しないように、ヘッド本体6に対して接着剤により固定されている。カバー部材7とヘッド本体6との接着は、ノズル形成面4と底板部20との間、およびヘッド本体6の側面18と側板部21との間において行われるが、たとえば、図5に示すように、非接着部42,43を除く部分に接着剤による固定部が形成されるように接着剤が塗布される。非接着部42は、側面18と側板部21との間に形成される部分であり、非接着部43は、ノズル形成面4と底板部20との間に形成される部分である。
【0035】
カバー部材7の側板部21の互いに対向するもの同士の間隔D1,D2(図4(B)参照)は、カバー部材7をヘッド本体6に装着したときに、側板部21とヘッド本体6の側面18との間に僅かな隙間ができるように設定されている。つまり、側板部21と側面18との間に形成される隙間に接着剤が入り込むことで、接着剤を介して側板部21が側面18に対して固定される。これに対し、非接着部42には接着剤が塗布されていないため、側面18と側板部21との間には、側面18と側板部21との間に接着層の厚み分の間隔を有する空間44が形成されることになる。また、底板部20も接着剤を介してノズル形成面4に固定されている。これに対し、非接着部43には接着剤が塗布されていない。したがって、ノズル形成面4と底板部20との間にも、ノズル形成面4と底板部20との間に接着層の厚み分の間隔を有する空間45が形成されることになる。
【0036】
非接着部42は、側板部21の幅方向(上下方向)に亘って形成されている。また、非接着部43は、底板部20の幅方向(底板部20が側板部21に接続する部分と内周縁部32とを結ぶ方向)に亘って形成されている。そして、非接着部42と非接着部43とは、非接着部42の底板部20側の端部と、非接着部43の側板部21側の端部とが一致するように配置されている。つまり、非接着部42に形成される空間44と非接着部43に形成される空間45とは連通している。したがって、空間44および空間45により、カバー部材7とヘッド本体6との間を通って開口部19と側板部21の上端縁46の上側の空間とを連通することができる連通部47が構成される。
【0037】
このように連通部47を備えることで、放置用キャップ2によりノズル形成面4を覆った状態であっても、放置用キャップ2の内部の空気の圧力と、放置用キャップ2の外部の大気の圧力とを平衡させることができる。つまり、プリンター1の周囲の気温の変化等により放置用キャップ2内の空気の温度が変化しても、キャップ内部の空気の圧力を大気圧に保持することができる。そのため、キャップ内の圧力の変化により、ノズル16に形成されたインクのメニスカスが破壊されてしまうことを防止できる。また、連通部47は、放置用キャップ2の内部と大気との連通を確保しながら、放置用キャップ2内の水分を含んだ空気が流れ難い細さに形成されている。したがって、ノズル16内のインクの水分の蒸発が抑えられ、インクの増粘を防ぐことができる。連通部47の太さや数は、放置用キャップ2内の水分を含んだ空気の流れ難さと、放置用キャップ2の内部と大気との連通の確保状態とに応じて適宜に設定する。
【0038】
また、連通部47は、カバー部材7とヘッド本体6との間に設けられている。すなわち、連通部47は、その一部がカバー部材7に面するもので、カバー部材7を利用した構成となっている。そのため、連通部47は、ヘッド本体6の内部に連通部を設ける構成に比べて、簡単な構成で、しかもヘッド本体6の大型化が抑えられた構成で設けられている。
【0039】
なお、連通部47は、図8に示すように、カバー部材7のヘッド本体6側に溝48を形成し、カバー部材7をヘッド本体6に装着したときに、ヘッド本体6の側面18と側板部21との間、そして、ノズル形成面4と底板部20との間に形成される空間を連通部47として構成することもできる。この場合にも、連通部47は、その一部がカバー部材7に面するもので、カバー部材7を利用した構成となっている。そのため、連通部47は、ヘッド本体6の内部に連通部を設ける構成に比べて、簡単な構成で、しかもヘッド本体6の大型化が抑えられた構成で設けられている。
【0040】
(変形例1)
上述のカバー部材7に換えて、図9および図10に示すカバー部材50としてもよい。このカバー部材50は、側板部21の上端に、ヘッド本体6の側面18から離れる方向に延設されるフランジ状部51を有し、キャリッジ5の記録ヘッド3の取り付け面5Aからノズル形成面4の周縁部に亘って記録ヘッド3を覆うことができるように構成されている。このようにカバー部材50を構成することで、連通部47は、底板部20のノズル形成面4との間に形成される部分と、側板部21とヘッド本体6の側面18との間に形成される部分とに加えて、フランジ状部51とキャリッジ5との間にも連通部47A(図10参照)を形成することができる。つまり、連通部47の延長化を図ることができる。これにより、連通部47を、放置用キャップ2の内部と大気とを連通を確保しながらも、放置用キャップ2内の水分を含んだ空気がより流れ難いものとすることができ、ノズル16内のインクの水分の蒸発を効果的に抑えることができる。連通部47Aは、フランジ状部51とキャリッジ5との間において、連通部47Aに当たる部分を除き、フランジ状部51とキャリッジ5とを接着剤により接着する接着層を形成し、接着層が形成されていない空間部分を連通部47Aとして形成されている。
【0041】
(変形例2)
上述のヘッド本体6とカバー部材7との間に形成される連通部47に換えて、底板部20と放置用キャップ2の上端縁40との間に、放置用キャップ2の内部と大気とを連通する連通部を形成してもよい。たとえば、図11に示すように、カバー部材7の底板部20の放置用キャップ2が当接する側の面に、開口部19から側板部21の外側に抜ける溝55を形成し、放置用キャップ2が底板部20に当接されたときに、底板部20と放置用キャップ2の上端縁40との間に形成される空間を、連通部として構成してもよい。また、放置用キャップ2の上端部40に、キャップの内側から外側に抜ける溝を形成し、放置用キャップ2を底板部20に当接した際に、底板部20と放置用キャップ2の上端縁40との間に形成される空間を、連通部として構成してもよい。このように、溝55により形成される連通部は、その一部がカバー部材7に面するもので、カバー部材7を利用した構成となっている。そのため、溝55により形成される連通部は、ヘッド本体6の内部に連通部を設ける構成に比べて、簡単な構成で、しかもヘッド本体6の大型化が抑えられた構成で設けられている。なお、溝55を蛇行させる構成としてもよい。溝55を蛇行させることで、放置用キャップ2の内部と大気とを連通を確保しながらも、放置用キャップ2内の水分を含んだ空気がより流れ難いものとすることができ、ノズル16内のインクの水分の蒸発を効果的に抑えることができる。
【0042】
(変形例3)
上述の実施の形態に示すプリンター1は、クリーニング機構14を備えるが、クリーニング機構14を備えない構成としてもよい。この場合、放置用キャップ2をカバー部材7に当接させる構成のプリンター1においては、底板部20の開口部19を囲む内周縁部32とノズル16との間に、封止用キャップ22の上端縁28が当接することができる当接領域34を設ける必要がないため、記録ヘッド3の小型化を図ることができる。
【0043】
(実施の形態の主な効果)
上述のように本実施の形態に係る液体噴射装置としてのプリンター1は、ノズル16から液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッドである記録ヘッド3を備え、プリンター1のインク噴射動作、すなわち印刷動作が停止している放置状態にあるときに、記録ヘッド3のノズル形成面4の周縁部を保護するカバー部材7に当接しノズル形成面4を覆う放置用キャップ2と、この放置用キャップ2がノズル形成面4を覆っている状態において、放置用キャップ2の内部と大気とを連通する連通部47とを備えることとする。
【0044】
このようにプリンター1を構成することで、放置用キャップ2の内部と大気とを連通する連通部47を、カバー部材7を利用して設けることができる。そのため、放置用キャップ2がノズル形成面4を覆っている状態であっても、放置用キャップ2の内部と大気とを連通することができる連通部47を、液体噴射ヘッド3の構造の複雑化と大型化を抑えた構成で設けることができる。
【0045】
また、プリンター1においては、連通部47が、カバー部材7と記録ヘッド3との間に備えられている。
【0046】
このようにプリンター1を構成することで、放置用キャップ2の内部と大気とを連通する連通部47を簡単な構成で設けることができる。
【0047】
また、プリンター1においては、カバー部材7が、キャリッジ5の記録ヘッド3の取り付け面からノズル形成面4の周縁部に亘って記録ヘッド3を覆う構成としてもよい。
【0048】
このようにプリンター1を構成することで、連通部47の延長化を図ることができる。連通部47の延長化を図ることで、連通部47を、放置用キャップ2の内部と大気とを連通を確保しながらも、放置用キャップ2内の水分を含んだ空気がより流れ難いものとすることができ、ノズル16内のインクの水分の蒸発を効果的に抑えることができる。
【0049】
また、プリンター1においては、連通部47が、カバー部材7と放置用キャップ2との当接部41に備えられることとしてもよい。
【0050】
このようにプリンター1を構成することで、放置用キャップ2の内部と大気とを連通する連通部47を簡単な構成で設けることができる。
【0051】
また、プリンター1は、吸引ポンプ24と、吸引ポンプ24に接続され、ノズル形成面4を覆っている状態で吸引ポンプ24の吸引力によりキャップの内部に負圧が発生させられる封止用キャップ22とを備えることとしてもよい。
【0052】
このようにプリンター1を構成することで、放置用キャップ2によりノズル形成面4を覆い、ノズル形成面4の保護とノズル16内のインクの水分の蒸発を防ぐことに加えて、ノズル16に対してクリーニング処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 … プリンター(液体噴射装置) 2 … 放置用キャップ 3 … 記録ヘッド(液体噴射ヘッド) 4 … ノズル形成面 5 … キャリッジ 5A … 取り付け面 7 … カバー部材 16 … ノズル 22 … 封止用キャップ 24 … 吸引ポンプ 46 … 連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置であって、
上記液体噴射装置の液体噴射動作が停止している放置状態にあるときに、上記液体噴射ヘッドのノズル形成面の周縁部を保護するカバー部材に当接し上記ノズル形成面を覆う放置用キャップと、
上記放置用キャップが上記ノズル形成面を覆っている状態において、上記放置用キャップの内部と大気とを連通する連通部と、
を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記連通部は、前記カバー部材と前記液体噴射ヘッドとの間に備えられる、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記カバー部材は、キャリッジの前記液体噴射ヘッドの取り付け面からノズル形成面の周縁部に亘って前記液体噴射ヘッドを覆う、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記連通部は、前記カバー部材と前記放置用キャップとの当接部に備えられる、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体噴射装置であって、
吸引ポンプと、
上記吸引ポンプに接続され、前記ノズル形成面を覆っている状態で上記吸引ポンプの吸引力によりキャップの内部に負圧が発生させられる封止用キャップとを備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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