説明

液体容器の注出具

【課題】液体を注出する際の余液回収溝からの液溢れを防止する。
【解決手段】内容液を注出するために液体容器1を傾けた状態で、注出筒13の上側縁部となる部位に、注出筒13の基端側から先端側に沿って設けられたスリット14と、注出筒13の下側先端縁となる部位に形成された注出部13aと、を設け、内容液を注出するために液体容器1を傾けた状態で、スリット14の基端部13bが、注出部13aと注出孔17の上縁とを結ぶ直線よりも上方に位置するように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤等の液体容器の口部に設けられる注出具に係り、特に、内容液を注出筒の先端から注ぐ際に垂れた液を外筒壁を越えて外側にこぼすことなく、容器本体の内部に回収することのできる液垂れ防止機能を備えた液体容器の注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤等の液体容器の口部に設けられる液垂れ防止機能を備えた注出具として、内容液を注ぎ出す注出筒(スパウト羽とも呼ばれる部分)の周囲に、注出の際に注出筒の先端から垂れた液体を回収する余液回収溝(液回収溝)を形成するように外筒壁を形成し、外筒壁の内側の余液回収溝内に垂れた液体を、注出筒に設けたスリットや注出筒の基端が結合された仕切壁の注出孔を通して、液体容器の内部に再び戻すようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の注出具は、合成樹脂の成形品よりなるもので、液体容器の円筒状の口部にネジ込み装着される嵌合筒部と、嵌合筒部の上端に液体容器の口部を閉止するように設けられると共に貫通した注出孔を有する仕切壁と、仕切壁に注出孔の周囲を取囲みつつ、注出方向に突設された注出筒(スパウト羽とも呼ばれる)と、注出筒の外側に環状の余液回収溝を形成する円筒状の外筒壁とを備えている。また、注出筒には、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態で、上側となる部位に、注出筒の基端側から先端側に沿ってスリットが設けられている。
【0004】
特許文献1の注出具は、液体容器本体を持つなどして、液体容器を傾かせると、液体容器の口部に装着した注出具の先端から、内容液が注出される。また、液体容器を正立させた際に、スリットを介して、余液回収溝に回収された液体が注出筒の内側に導かれ、仕切壁に形成された注出孔を通して液体容器の内部へ戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−253450号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の注出具では、仕切壁に設けられた注出孔が、注出筒の外側の余液回収溝まで開口しているため、液体容器内が内容液で満たされている場合には、液体容器を傾けて注出する際に、内容液がスリットから余液回収溝に溢れ出してしまい、外筒壁の先端からこぼれることがあった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、注出時のスリットからの液体の溢れ出しを防いで、注出筒から確実に注ぎ出せるようにした液体容器の注出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態で、スリットの基端部が、注出部と注出孔の上縁とを結ぶ直線よりも上方に位置するので、注出時のスリットからの液体の溢れ出しを確実に防ぐことができて、注出筒の注出部からのみ注ぎ出すことができる。
【0009】
即ち、本発明は、液体容器の口部を閉止するように設けられた仕切壁と、液体容器の口部を通じて内部と外部とを連通するように仕切壁を貫通する注出孔と、注出孔の周囲を取囲むように仕切壁に液体容器の注出方向に突設された注出筒と、注出筒の外径側に環状の余液回収溝を形成しつつ、仕切壁の周縁から液体容器の注出方向に突出する外筒壁と、を備え、液体容器の口部に配設される液体容器の注出具であって、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態で、注出筒の上側縁部となる部位に、注出筒の基端側から先端側に沿って設けられたスリットと、注出筒の下側先端縁となる部位に形成された注出部と、を備え、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態で、スリットの基端部が、注出部と注出孔の上縁とを結ぶ直線よりも上方に位置する液体容器の注出具を提供する。
【0010】
また、注出孔が、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態で、注出筒内側の下側縁部近傍となる仕切壁の部位に主孔と、主孔よりも上方となる仕切壁の部位に補助孔と、からなるため、補助孔を空気置換口として用いるので、脈動を防いでスムーズな注出を実現することができる。
【0011】
さらに、仕切壁に液体容器の注出方向後方に凹む凹壁部が設けられ、凹壁部の最深部に補助孔が設けられているため、余液回収溝からスリットを通して液体が容器内部に戻る際の流れを円滑にし、仕切壁上での無用な液体の広がりを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態で、スリットの基端部が、注出部と注出孔の上縁とを結ぶ直線よりも上方に位置するので、注出時のスリットからの液体の溢れ出しを確実に防ぐことができて、注出筒から確実に注ぎ出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の注出具を装着した液体容器を示す図で、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態を示しており、(a)は注出具の拡大断面図、(b)は液体容器の全体を示す図である。
【図2】同注出具の正面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態の注出具を装着した液体容器を示す図で、内部の液体を注出するために液体容器を傾けた状態を示しており、(a)は注出具の拡大断面図、(b)は液体容器の全体を示す図である。なお、液体容器1の取手部3を持つなどして、液体容器1の垂直線Lが水平線となす角度が注出角度θまで液体容器1を傾かせると、液体容器1の口部2に装着した注出具10の先端から、満タン状態の内容液が注出される。
【0016】
この実施形態の注出具10は、合成樹脂の成形品よりなるもので、液体容器1の円筒状の口部2にネジ込み装着される嵌合筒部11と、嵌合筒部11の上端に液体容器1の口部2を閉止するように設けられると共に貫通した2つの注出孔15,17を有する仕切壁12と、これら2つの注出孔15,17の周囲を取囲むように仕切壁12に液体容器の注出方向に突設された注出筒(スパウト羽とも呼ばれる)13と、注出筒13の外側に環状の余液回収溝19を形成しつつ、注出筒13を取囲み、且つ注出筒13に仕切壁12で結合された円筒状の外筒壁18と、内容液を注出するために液体容器1を傾けた状態で、上側となる注出筒13の部位に、注出筒13の基端側(注出筒13が途切れている側、すなわち注出方向と反対の側)から先端側(注出方向の側)に沿って、注出筒13の下側先端縁となる部位に形成された注出部13aの反対側(最上側)に設けられるスリット14と、を有している。
【0017】
また、スリット14の両側壁を構成する注出筒13の側縁は、その仕切壁12側となる基端部13bが仕切壁12から延設されており、基端部13b,13b間に位置する仕切壁12の部位には、注出筒13の内側が液体容器の注出方向後方、すなわち液体容器1を床面に置いた状態で下方に一段低くなる段部20が設けられている。そして、段部20を上縁として、仕切壁12には液体容器の注出方向後方に凹んだ局部的な凹壁部16が設けられている。
【0018】
仕切壁12に2つ形成されている注出孔15,17は、内容液を注出するために液体容器1を傾けた状態で、上下に位置するように配置されている。内容液を注出するために液体容器1を傾けた状態で、下側に位置する主孔15は、液体が流出する主たる注出孔であり、円形に形成されている。もう一方の注出孔である補助孔17は、液体容器1を傾けて内容液を注出する際に、主孔15よりも上側となる凹壁部16の最深部に配置され、上下方向に縦長のスロット形状に形成されている。そして、液体容器1を傾け、主孔15から液体が流出する際に、補助孔17は脈動を抑制するために空気の流通を可能にする空気置換口として機能する。また、液体を注出後、液体容器1を正立させた状態で、余液回収溝19に回収された液体は、スリット14を介して、注出筒13の内側に導入され、凹壁部16内に集められて、補助孔17から液体容器1の内部へと戻される。
【0019】
スリット14の仕切壁12側となる基端部13b,13bは、内容液を注出するために液体容器1を傾けた状態で、注出部13aと補助孔17の上縁とを結ぶ直線Mよりも所定距離Hだけ上方に位置するように設定されている。
【0020】
上記実施形態によれば、スリット14の基端部13b,13bを、注出部13aと注出孔17の上縁とを結ぶ直線Mよりも上方に位置するように設定することで、内容液を注出する際に、スリット14から注出筒13外側の余液回収溝19側への液体の溢れ出しを確実に防ぐことができて、注出筒13の注出部13aから確実に注ぎ出すことができる。
【0021】
また、仕切壁12に設けた2つの注出孔15,17の内の上方に位置する補助孔17を空気置換口として縦長のスリット状に形成してあるので、脈動を防いでスムーズな注出を実現することができる。また、補助孔17を仕切壁12に設けた局部的な凹壁部16の最深部に配置しているので、余液回収溝19からスリット14を通して液体が容器内部に戻る際の流れを円滑にすることができて、仕切壁12上での無用な液体の広がりを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、上述した例以外の界面活性剤を含んだ洗剤、柔軟剤、漂白剤等の種々の液体を収容する液体容器に適用することで、顕著な有用性を発揮できる。
【符号の説明】
【0023】
1 液体容器
2 口部
10 注出具
12 仕切壁
13 注出筒
13b スリットの基端部
14 スリット
15 主孔(注出孔)
16 凹壁部
17 補助孔(注出孔)
18 外筒壁
19 余液回収溝
M 注出部と補助孔の上縁とを結ぶ直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器の口部を閉止するように設けられた仕切壁と、
該液体容器の該口部を通じて内部と外部とを連通するように該仕切壁を貫通する注出孔と、
該注出孔の周囲を取囲むように該仕切壁に該液体容器の注出方向に突設された注出筒と、
該注出筒の外径側に環状の余液回収溝を形成しつつ、該仕切壁の周縁から該液体容器の注出方向に突出する外筒壁と、
を備え、該液体容器の該口部に配設される液体容器の注出具であって、
内容液を注出するために前記液体容器を傾けた状態で、
前記注出筒の上側縁部となる部位に、該注出筒の基端側から先端側に沿って設けられたスリットと、
該注出筒の下側先端縁となる部位に形成された注出部と、
を備え、
内容液を注出するために該液体容器を傾けた状態で、
該スリットの基端部が、該注出部と前記注出孔の上縁とを結ぶ直線よりも上方に位置する液体容器の注出具。
【請求項2】
前記注出孔が、
内容液を注出するために該液体容器を傾けた状態で、
前記注出筒内側の下側縁部近傍となる仕切壁の部位に、主孔と、
該主孔よりも上方となる仕切壁の部位に、補助孔と、
からなる請求項1に記載の液体容器の注出具。
【請求項3】
前記仕切壁に前記液体容器の注出方向後方に凹む凹壁部が設けられ、
該凹壁部の最深部に前記補助孔が設けられている請求項2に記載の液体容器の注出具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178415(P2011−178415A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42939(P2010−42939)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】