説明

液体排出方法

【課題】ホース状部材の全長にわたって封入されている液体を効率よく迅速に排出することができる液体排出方法を提供する。
【解決手段】ホース状部材1の内部に溜まった液体を、ホース状部材1の一方の端部であり、液体の排出口11への戻りを規制する規制部12が設けられた排出口11から排出する液体排出方法である。ホース状部材1の両端部を閉口した状態で、ホース状部材1を水平軸心廻りにコイル状に巻設し、ホース状部材1の両端部20、21を開口させて、排出口11から液体を排出した後、排出口11が後退する方向にドラム状部材10を回転させて、排出口11から液体を連続的に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が封入されるホース状部材から液体を排出する液体排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホース状部材は一般的に可撓性を有し、内部に液体の流通路を有する。内部に液体が封入されたホース状部材の一例として、例えば、絶縁油が封入された地中送電線(OFケーブル:Oil-Filled Cable)がある。内部に絶縁油が封入されたOFケーブルは、保管の都合上、絶縁油を排出することが必要な場合があり、このようなOFケーブルから絶縁油を抜油するための器具が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の器具は、OFケーブルの端部に取付けるためのものである。この器具は、外部に開口するとともに、OFケーブルの内部(絶縁油の流路)と連通し得る油通路を有しており、OFケーブルの内部と油通路との連通及び非連通の切換を可能とする機構が設けられている。OFケーブルから絶縁油を抜油する際には、OFケーブルの内部と油通路とを連通状態として、油通路から外部に絶縁油を排出する。これにより、絶縁油を飛散させることなく、絶縁油を抜油することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−273212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホース状部材には、全長にわたって液体が封入されている場合があり、前記したOFケーブル内にも全長にわたって絶縁油が封入されている場合が多い。このように、一方の端部から他方の端部までに封入されている液体(OFケーブルの場合は絶縁油)の全部を、効率よく迅速に排出できる方法はなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ホース状部材の全長にわたって封入されている液体を効率よく迅速に排出することができる液体排出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体排出方法は、ホース状部材の内部に溜まった液体を、前記ホース状部材の一方の端部であり、液体の排出口への戻りを規制する規制部が設けられた排出口から排出する液体排出方法であって、前記ホース状部材の両端部を閉口した状態で、前記ホース状部材をドラム状部材の水平軸心廻りにコイル状に巻設し、前記ホース状部材の両端部を開口させて、前記排出口から液体を排出した後、前記排出口が後退する方向にドラム状部材を回転させて、排出口から液体を連続的に排出するものである。
【0008】
本発明の液体排出方法によれば、ホース状部材の両端部を開口させることにより、排出口近傍の絶縁油が一方の端部(排出口)から排出されて、排出口側の油面が所定位置となるとともに、他方の端部側の油面が下がり、所定位置となる。これにより、一方の端部は、開口端から所定長さの範囲が絶縁油の封入されない部位となるとともに、他方の端部も、開口端から所定長さの範囲が絶縁油の封入されない部位となって、両端部の油面が均衡した状態となる。この状態で排出口が後退する方向にドラム状部材が半回転したとき、一方の端部に絶縁油が封入され、これにより、他方の端部側の油面は、負圧により一方の端部側へ螺進する。さらに、排出口が後退する方向にドラム状部材が半回転したとき、排出口近傍の絶縁油が一方の端部(排出口)から排出されて、排出口側の油面が所定位置となるとともに、他方の端部側の油面は、負圧により一方の端部側へ螺進する。このようにしてドラム状部材の回転を繰り返すと、ホース状部材内の一方の端部から他方の端部に封入されている絶縁油を排出口から排出することができる。ここで、ホース状部材とは、ドラム状部材に巻設し得る可撓性を有し、内部に液体の流通路を有する中空のものをいう。また、ドラム状部材とは、ホース状部材が巻設される軸を有するものをいい、中空であっても中実であってもよい。
【0009】
また、本発明の他の液体排出方法は、ホース状部材の内部に溜まった液体を、前記ホース状部材の一方の端部である排出口から排出する液体排出方法であって、前記ホース状部材の両端部を閉口した状態で、前記ホース状部材の他方の端部がドラム状部材の水平軸心を通る水平面よりも上方に配置されるとともに、ホース状部材の一方の端部がドラム状部材の水平軸心上に配置されるように、前記ホース状部材をドラム状部材の水平軸心廻りにコイル状に巻設し、前記ホース状部材の両端部を開口させて、前記排出口から液体を排出した後、前記排出口が後退する方向に前記ドラム状部材を回転させて、排出口から液体を連続的に排出するものである。
【0010】
前記ホース状部材は地中ケーブルであり、前記液体は前記地中ケーブルの内部に溜まった絶縁油とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体排出方法は、ドラム状部材の回転を繰り返すと、ホース状部材内の一方の端部から他方の端部に封入されている絶縁油を排出口から排出することができるため、簡単な方法で効率よく迅速にホース状部材から絶縁油を排出することができる。また、前記排出口に規制部を設けると、一旦排出口から排出された絶縁油がホース状部材へ戻るのを規制することができて、排出効率を一層向上させることができる。
【0012】
前記ホース状部材の両端部を、一方がドラム状部材の水平軸心を通る水平面よりも上方、他方がドラム状部材の水平軸心上に開口するものとすると、絶縁油を排出口から効果的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液体排出方法にて地中ケーブルから絶縁油を抜油する方法を示す概念図である。
【図2】本発明の液体排出方法にて抜油される地中ケーブルの断面図である。
【図3】本発明の液体排出方法にて抜油される地中ケーブルを搬送車上のドラム状部材に巻設した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の液体排出方法にて抜油される地中ケーブルをドラム状部材に巻設した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の液体排出方法にて抜油される地中ケーブルの一方の端部に取付られる規制部の断面図である。
【図6】本発明の液体排出方法にて抜油される地中ケーブルをドラム状部材に巻設した状態を示す側面図である。
【図7】本発明の液体排出方法にて抜油される地中ケーブルを他のドラム状部材に巻設した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本実施形態では、ホース状部材を地中ケーブルとし、液体は地中ケーブルの内部に溜まった絶縁油とする。
【0015】
本発明の液体排出方法は、地中ケーブル1の内部に溜まった絶縁油を、前記地中ケーブル1の一方の端部20である排出口11から排出するものである。地中ケーブル1は、その内部に絶縁油が封入されたいわゆるOFケーブルである。OFケーブルは、図2に示すように、亜鉛メッキ鋼板からなる鋼帯をスパイラル状に巻き付けて、波付け加工を施したパイプ状のらせん帯2と、このらせん帯2の外周には銅線等の導体3と、この導体3上にはカーボン紙を巻回してなる内部半導電層4が設けられ、この内部半導電層4上には絶縁体5が設けられている。この絶縁体5上には、外部半導電層6が設けられる。この外部半導電層6上にはアルミニウムからなるアルミシース7が被覆され、更にポリ塩化ビニル等からなるビニルシース8が設けられている。前記らせん帯2の内部空間に、絶縁油の油通路9が形成される。
【0016】
地中に敷設された前記地中ケーブル1を撤去する際には、引き抜き力を加えながら地上に待機させた撤去車50上に設置したドラム状部材10(図3参照)に巻取る方法で行うのが一般的である。図4は、ドラム状部材10に地中ケーブル1を巻き取った後の状態を示しており、地中ケーブル1は、ドラム状部材10の軸方向中心(水平軸心O廻り)にコイル状に巻設されている。
【0017】
このとき、地中ケーブル1の両端部20、21は閉口されて、絶縁油が流出するのが規制されている。地中ケーブル1の一方の端部20(絶縁油の排出口11となる側)は、図5に示すように、絶縁油の排出口11への戻りを規制する規制部12が設けられている。この規制部12は、排出口11の先端部に設けられるコネクタ13と、コネクタ13に取付けられる貯留部14と、貯留部14の先端部に設けられるコック部15とから構成されている。コネクタ13は、排出口11先端の外径部を覆う大径部16と、大径部16から縮径するテーパ部17と、テーパ部17の先端部に設けられる小径部18とから構成されている。排出口11から流出した絶縁油は、テーパ部17にて案内されて、小径部18を介して排出される。この小径部18は、絶縁油の排出口側への戻りを防止する逆止弁として作用する。貯留部14は、例えば塩化ビニルシート等の軟質合成樹脂シートを巻設することにより構成している。これにより、絶縁油が飛散するのを防止することができる。コック部15はひねり部19を備え、このひねり部19を回すことによって絶縁油を排出するための液導路が形成され、ひねり部19を元の位置に戻すことによって、絶縁油の排出が規制される。
【0018】
図6に示すように、コック部15の先端部は、さらにホース等からなる配管22に連結されている。後述するようにドラム状部材10が水平軸心O廻りに回転することにより、コック部15と配管22との連結場所、連結角度が変化するため、これらの連結は、例えば、図示省略の可動式管継手を介して連結するのが望ましい。さらに、配管22の先には絶縁油を貯留する油受け部23が設けられている。これにより、排出口11から排出された絶縁油は、規制部12及び配管22を介して油受け部23に貯留することができる。
【0019】
地中ケーブル1の他方の端部21には、塩化ビニルシート等の軟質合成樹脂シートが巻設されており、エアによる通気が可能とされている。
【0020】
図6に示すように、地中ケーブル1の一方の端部20(排出口11)は、ドラム状部材10の水平軸心Oを通る水平面Hよりも下方に向かって開口(開口方向が下向き)するものであるとともに、地中ケーブル1の他方の端部21が、ドラム状部材10の水平軸心Oを通る水平面Hよりも上方に向かって開口(開口方向が上向き)するように巻設されている。
【0021】
地中ケーブル1の両端部20、21は、図4の仮想線で示すように紐状部材24が連結されており、この紐状部材24が夫々ドラム状部材10の軸方向両端部の鍔部25に固定されている。これにより、地中ケーブル1の両端部20、21はその位置が固定されて、後述するようにドラム状部材10が回転しても、位置を維持することができる。
【0022】
次に、地中ケーブル1に封入された絶縁油を排出する方法について図1を参照して説明する。図1において(a1)〜(e1)は、地中ケーブル1が巻設されたドラム状部材10を径方向から見た図であり、(a2)〜(e2)は、地中ケーブル1が巻設された状態を、地中ケーブル1の一方の端部20側から軸方向に見た図である。まず、初期状態では図1(a1)に示すように、地中ケーブル1の両端部20、21は閉口しており、図1(a2)に示すように、一方の端部20は下向き、他方の端部21は上向きとなっている。
【0023】
この状態から、図1(b1)に示すように、地中ケーブル1の一方の端部20を開口するとともに、地中ケーブル1の他方の端部21を開口してエアによる通気が可能な状態とする。これにより、図1(b2)に示すように、排出口近傍の絶縁油が一方の端部20(排出口11)から排出されて、排出口側の油面S1が所定位置となるとともに、他方の端部側の油面S2が下がり、所定位置となる。これにより、一方の端部20は、開口端から所定長さの範囲が絶縁油の封入されない部位となるとともに、他方の端部21も、開口端から所定長さの範囲が絶縁油の封入されない部位となって、両端部20、21の油面S1、S2が均衡した状態となる。
【0024】
この状態で、搬送車50の回転機構(図示省略)を駆動して、ドラム状部材10を搬送車上で回転させる(例えば、1回転で20秒)。すなわち、図1(b2)の矢印に示すように、排出口11が後退する方向にドラム状部材10が半回転したとき、図1(c2)に示すように、一方の端部20に絶縁油が封入され、これにより、図1(c1)に示すように、他方の端部側の油面S2は、負圧により一方の端部側へ螺進する。
【0025】
さらに、排出口11が後退する方向にドラム状部材10が半回転したとき、図1(d2)に示すように、排出口近傍の絶縁油が一方の端部20(排出口11)から排出されて、排出口側の油面S1が所定位置となるとともに、図1(d1)に示すように、他方の端部側の油面S2は、負圧により一方の端部側へ螺進する。
【0026】
さらに、排出口11が後退する方向にドラム状部材10を回転させると、前記したように排出口11から絶縁油を連続的に排出することができる。すなわち、一方の端部側では、半回転ごとに、絶縁油の排出による絶縁油の封入されない部位の形成と、この部位への絶縁油の封入とが繰り返し行われる。一方、他方の端部側では、油面S2が一方の端部側へ螺進していく。
【0027】
このようにして排出口11が後退する方向へドラム状部材10の回転を繰り返すと、図1(e1)(e2)に示すように、地中ケーブル内に封入されている全ての絶縁油が、排出口11から排出することができる。
【0028】
なお、地中ケーブル1の油通路9内の絶縁油を排出した後に、地中ケーブル1をしばらく(例えば、数日)放置して、前記した方法を再度行うのが望ましい。絶縁油は、油通路9よりも外径に染み込んでいることが多く、油通路9内の絶縁油が排出すれば、外径側に染み込んだ絶縁油が油通路9に漏れ出てくることがある。このため、前記のような方法を、所定の放置期間を挟んで繰り返し行うことにより、地中ケーブル1に含まれている絶縁油を残存させることなく、ほぼ全ての絶縁油を排出することができる。
【0029】
本発明の液体排出方法は、ドラム状部材10の回転を繰り返すと、地中ケーブル内の一方の端部20から他方の端部21に封入されている絶縁油を排出口11から排出することができるため、簡単な方法で効率よく迅速に地中ケーブル1から絶縁油を排出することができる。
【0030】
排出口11に規制部12を設けると、一旦排出口11から排出された絶縁油が地中ケーブル1へ戻るのを規制することができて、排出効率を一層向上させることができる。
【0031】
地中ケーブル1の両端部20、21を、一方がドラム状部材10の水平軸心Oを通る水平面Hよりも上方、他方が下方に開口するものとすると、絶縁油を排出口11から効果的に排出することができる。
【0032】
図7に示すように、地中ケーブル1の一方の端部20(排出口11)は、ドラム状部材10の水平軸心O上に開口(開口方向が下向き)するものであってもよい。すなわち、ドラム状部材10の軸方向端部に、地中ケーブル1の軸方向端面(鍔部25)に開口する孔部(図示省略)を設ける。この孔部に、地中ケーブル1の一方の端部20を挿入して、その開口部を水平軸心O上に開口させる。この開口部の直下に図示省略の油受け部を配設すれば、地中ケーブル1の一方の端部20から排出された絶縁油を貯留することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、ドラム状部材10を回転させる際、搬送車50を使用することなく、アンダーローラ等の他の回転機構を使用してもよい。ドラム状部材10の径、すなわち、地中ケーブル1の巻径は種々の長さ寸法とすることができる。ホース状部材としては、地中ケーブルに替えて種々のもの(例えば、家庭用に使用するホース等)とすることができる。また、地中ケーブル1の巻数も種々設定することができる。貯留部14は、の軟質合成樹脂シートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シートを使用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ホース状部材(地中ケーブル)
10 ドラム状部材
11 排出口
12 規制部
20 一方の端部
21 他方の端部
O 水平軸心
H 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース状部材の内部に溜まった液体を、前記ホース状部材の一方の端部であり、液体の排出口への戻りを規制する規制部が設けられた排出口から排出する液体排出方法であって、
前記ホース状部材の両端部を閉口した状態で、前記ホース状部材をドラム状部材の水平軸心廻りにコイル状に巻設し、
前記ホース状部材の両端部を開口させて、前記排出口から液体を排出した後、
前記排出口が後退する方向にドラム状部材を回転させて、排出口から液体を連続的に排出することを特徴とする液体排出方法。
【請求項2】
ホース状部材の内部に溜まった液体を、前記ホース状部材の一方の端部である排出口から排出する液体排出方法であって、
前記ホース状部材の両端部を閉口した状態で、前記ホース状部材の他方の端部がドラム状部材の水平軸心を通る水平面よりも上方に配置されるとともに、ホース状部材の一方の端部がドラム状部材の水平軸心上に配置されるように、前記ホース状部材をドラム状部材の水平軸心廻りにコイル状に巻設し、
前記ホース状部材の両端部を開口させて、前記排出口から液体を排出した後、
前記排出口が後退する方向に前記ドラム状部材を回転させて、排出口から液体を連続的に排出することを特徴とする液体排出方法。
【請求項3】
前記ホース状部材は地中ケーブルであり、前記液体は前記地中ケーブルの内部に溜まった絶縁油であることを特徴とする請求項1又は請求項2の液体排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−39760(P2012−39760A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177793(P2010−177793)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】