説明

液体散布装置

【課題】 切換弁の切換えによる散布停止時に、溶質源への散布液の逆流を防止する。
【解決手段】 溶媒源3の溶媒Wと溶質源4の溶質Sが合流する合流部9と、該合流部9から散布用ポンプ5の吸入口2へと連通する混合流路10と、前記散布用ポンプ5の吐出口6に連通する吐出流路18と、該吐出流路18に介装された切換弁19と、該切換弁19から前記混合流路10へと散布液Kを戻すための戻し流路23と、散布液Kの流量を検知する流量センサ20と、該流量センサ20から得られる信号に基づいて前記合流部9への前記溶質Sの繰り出し量を自動制御する制御装置17を備えている液体散布装置1において、前記混合流路9に対する前記戻し流路23の連結部24と前記合流部9との間に、該合流部9側への散布液Kの逆流を阻止する逆止弁11を介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農薬等の薬液(原液)を清水で希釈しながら散布する薬液散布装置として、特許文献1には、次のような構成のものが記載されている。すなわち、清水タンクと、薬液タンクと、散布用ポンプと、前記清水タンク内の清水と前記薬液タンク内の薬液の合流部と、該合流部から前記散布用ポンプの吸入口へと連通する混合流路と、前記散布用ポンプの吐出口に連通する吐出流路と、該吐出流路に介装された切換弁と、該切換弁から前記混合流路へと散布液を戻すための戻し流路と、散布液の流量を検知する流量センサと、該流量センサから得られる信号に基づいて前記合流部への前記薬液の繰り出し量を自動制御する制御装置を備えている薬液散布装置である。前記清水タンクから前記合流部へ至る清水流路には、前記清水タンクへの前記薬液の流入を阻止するために、逆止弁が介装されている。
【特許文献1】特開2004−216205号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、次のような不都合が生ずる場合がある。散布停止時には、前記切換弁の切換操作により、前記戻し流路を介して前記混合流路へと散布液が戻される。すると必然的に、それまで負圧となっていた前記混合流路が正圧となる。よって、前記薬液タンクから前記薬液を繰り出すための薬液繰り出し手段の態様によっては、前記混合流路の散布液が前記合流部を経由して前記薬液タンク側へと逆流してしまう場合がある。これを放置すると、前記薬液タンク内の薬液の濃度が変化してしまうので、散布液の正確な濃度制御ができなくなってしまう。
【0004】
また、前記切換弁の切換えによる散布停止時には、前記散布用ポンプから吐出される散布液が前記吐出流路→前記戻し流路→前記混合流路の順に循環するので、その循環時間が長いと、循環流路内の散布液の温度が上昇してしまう場合もある。これを放置すると、循環する薬液が高温となって、循環流路内のシール部材の能力を著しく低下させたり、ホースが軟化して抜け出す等により、薬液が漏出する虞を生ずる。また、高温の薬液が散布されれば、薬液の散布を受ける作物に被害が出るほか、薬液の種類によっては薬液が変質してしまう等の不都合もある。
【0005】
本発明は、前記の如き事情に鑑みてなされたもので、その第一の解決課題は、切換弁の切換えによる散布停止時に、溶質源への散布液の逆流を防止することである。
【0006】
また、本発明の第二の解決課題は、散布用ポンプの吐出側から吸入側へ戻される散布液の温度上昇を合理的な方法で防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第一の課題を解決するため、本発明に係る液体散布装置は、溶媒源と、溶質源と、散布用ポンプと、前記溶媒源の溶媒と前記溶質源の溶質が合流する合流部と、該合流部から前記散布用ポンプの吸入口へと連通する混合流路と、前記散布用ポンプの吐出口に連通する吐出流路と、該吐出流路に介装された切換弁と、該切換弁から前記混合流路へと散布液を戻すための戻し流路と、散布液の流量を検知する流量センサと、該流量センサから得られる信号に基づいて前記合流部への前記溶質の繰り出し量を自動制御する制御装置を備えている液体散布装置であって、前記混合流路に対する前記戻し流路の連結部と前記合流部との間に、該合流部側への散布液の逆流を阻止する逆止弁が介装されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明においては、前記散布用ポンプが作動することにより、前記溶媒源の溶媒と前記溶質源の溶質とが前記散布用ポンプに吸入され、溶媒と溶質が混合された状態で、前記散布用ポンプから散布液として吐出される。該散布液の流量は、前記流量センサで検知される。そして、前記溶質源からの溶質の繰り出し量は、前記制御装置により、前記流量センサで検知された前記散布液の流量に応じて、例えば、該散布液の濃度が所定の濃度となるように制御される。
【0009】
また、本発明によれば、散布を停止させるために前記切換弁を切換えると、前記散布用ポンプで吐出される散布液が、前記吐出流路、前記戻し流路及び前記混合流路を介して、前記散布用ポンプの吸入側へと戻される。この時必然的に、それまで負圧であった前記混合流路が、前記逆止弁より下流側で正圧となるが、該逆止弁が前記合流部側への散布液の逆流を阻止するので、前記溶媒源と前記溶質源のいずれにも、前記散布液が混入してしまうことはない。
【0010】
なお、本発明では、前記従来のものとは異なり、前記溶媒源から前記合流部へと連通する溶媒流路には、逆止弁は配設されない。また、散布を停止すると、前記溶質源からの溶質の繰り出しも停止するが、この時、前記合流部へと連通する溶質流路内には溶質が残留する。このため、前記溶媒源内における溶媒の液面と前記溶質源との高さ位置関係によっては、前記溶質流路内に残った前記溶媒よりも比重の大きい溶質が、前記溶媒源へと流入してしまうことも予測される。
【0011】
そこで、これを防止するため、好適な実施の一形態として、前記溶媒流路を前記溶媒源の底部から前記合流部へと連通させ、前記溶媒流路の容積よりも前記溶質流路の容積を小さくすることもできる(請求項2)。このようにすれば、前記溶媒源内の溶媒の残量が少なくなり、その液面が前記底部付近まで下がった場合でも、前記溶質流路の残留溶質が前記溶媒源へと流入してしまうことはない。
【0012】
また、前記溶質流路の残留溶質の前記溶媒源への流入を防止するため、前記溶質流路の内径を、溶質の粘性に応じてその流動を抑制するように小さくすることもできる(請求項3)。このようにすれば、前記溶質の非繰り出し時に、前記溶質流路の残留溶質が前記溶媒源へ流入することがない。前記溶質流路内に溶媒層を生ずることもないので、散布再開直後であっても、散布液の濃度制御に悪影響が及ぶこともない。なお、この場合、前記溶質流路の縮径により前記溶質の円滑な繰り出しに悪影響が及ぶ虞がある場合には、溶質流路数の増加によって対応すればよい。
【0013】
前記溶媒流路の容積よりも前記溶質流路の容積を小さくするについては、前記溶質源の配設位置に大きな自由度を持たせることができるように前記溶質流路の長さを長くし、その分だけ該溶質流路の径を小さくすると好適である(請求項4)。この場合、前記溶質流路の本数を増やす等により、個々の溶質流路の内径を前記溶質の流動を抑制できる径にまで小さくしておけば、確実性が増してより一層好適である。
【0014】
前記第二の課題を解決するため、好適な実施の一形態として、前記戻し流路を介して前記混合流路に戻される散布液をその流路の外側から冷却する冷却手段を備えることもできる(請求項5)。このようにすれば、前記散布用ポンプの吐出側から吸入側へ戻される散布液の温度上昇が防止される。また、前記散布液は、その流路の外側から冷却されるので、構成を簡易にできて合理的である。
【0015】
前記冷却手段としては、前記流路の少なくとも一部を放熱効率の良好な素材又は構成とし、その外側にそれ自体周知の空冷式冷却ユニットを設けることもできるが、さらに合理的な実施の一形態として、次のような構成を採用することもできる。
【0016】
すなわち、前記溶媒源を清水タンクとし、前記冷却手段を、前記戻し流路の少なくとも一部を構成し且つ前記清水タンク内の清水に漬かるように配設されて前記混合流路へと連通する熱交換用タンク内配管とする(請求項6)。この場合、前記清水タンク内の清水により、前記熱交換用タンク内配管を流れる散布液が冷却される。前記空冷式冷却ユニットのような特別な装置を用いず、前記溶媒源内の溶媒を用いて冷却するので、構成の合理性が高い。加えて、一般に、前記戻し流路を介して前記混合流路に戻される散布液に比べると、前記清水タンク内の清水の方がはるかに大量であるので、冷却効率がきわめて良好となる。さらに、清水で冷却されるので、他の種類の液体で冷却する場合に比べて、前記熱交換用タンク内配管が腐蝕等しにくく、耐久性も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る液体散布装置の、制御回路を含む配管図である。図示は省略しているが、前記液体散布装置の具体例としては、農用トラクタ等の走行機体に搭載されて圃場内を移動しながら防除液や液肥等を散布するブームスプレーヤや、果樹園内を走行しながら送風及び薬剤散布を行うスピードスプレーヤ等を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0019】
図1において、本実施の形態に係る液体散布装置1は、その吸入口2が溶媒源3と溶質源4に連通された散布用ポンプ5を備えている。該散布用ポンプ5の吐出口6は、散布ノズル部7に連通している。そして、前記散布用ポンプ5の作動により、前記溶媒源3内の溶媒Wと前記溶質源4内の溶質Sとが混合されながら吸入され、散布液Kとなって前記散布ノズル部7から散布される。前記液体散布装置1は、図示しない適宜の走行機体に搭載され、圃場内を移動しながら散布を行うことができる。
【0020】
前記溶媒源3は、本実施の形態では、溶媒としての清水Wを貯留する清水タンクとされている。該清水タンク3は、その底部3aに接続された清水流路8を介して合流部9に連通し、該合流部9は、混合流路10を介して前記散布用ポンプ5の前記吸入口2に連通している。前記混合流路10には、前記合流部9側への散布液Kの逆流を阻止する逆止弁11が介装されている。
【0021】
一方、前記溶質源4は、本実施の形態では、溶質としての防除用薬液Sを貯留する薬液タンクとされている。該薬液タンク4は、溶質ポンプ12と薬液流路13を介して前記合流部9に連通している。前記薬液タンク4内の薬液Sは、前記薬液ポンプ12の作動によって前記薬液流路13に繰り出され、前記合流部9へと流入する。そして、該合流部9で前記清水タンク3内の清水Wと前記薬液Sとが所定比率で混合・希釈されて、散布液Kとなる。前記合流部9及び前記混合流路10においては、前記散布用ポンプ5の大きな吸入圧により、必然的に、前記清水Wと前記薬液Sとが強制的な混合攪拌作用を受けることになる。よって、前記散布液Kの濃度に偏りは生じない。
【0022】
前記薬液Sは、例えば、薬液の原液であってもよいし、その原液を、散布液Kより高濃度に予め水で希釈したものであってもよい。さらに、粉粒状の薬剤を水に溶かして、散布液より高濃度となるように濃度設定したものであってもよい。このため、前記薬液タンク4内には、攪拌手段としての攪拌翼14が配設されている。該攪拌翼14は、攪拌モータ15によって回転駆動される。前記薬液Sとして、薬液原液や粉粒状薬剤等の原溶質を、散布液より高濃度となるように予め溶媒で希釈した予備希釈液を用いれば、水との均質混合がより確実となるほか、前記薬液ポンプ12として、最小繰り出し量の大きな、したがって安価なものを採用できるので好適である。
【0023】
前記薬液ポンプ12としては、液体を少量ずつ量的正確さをもって送出することができるポンプを使用する。例えば、それ自体周知のチューブポンプ、特に、ローラーチューブポンプ等のバルブレスポンプを用いることができる。前記ローラーチューブポンプは、例えば、側面一方が壁とされた弾力性のあるチューブを備え、前記壁の部分を電動モータ16で駆動されるローラーが押しつぶしながら転がることにより、前記チューブ内の液を押し出す。該ローラーチューブポンプによれば、前記ローラーの転がり速度を制御することで、前記合流部への薬液Sの供給量を制御することができる。前記薬液ポンプ12の作動は、マイクロコンピュータを含む制御装置17によって自動制御される。
【0024】
なお、前記薬液タンク4と前記清水タンク3の容量比は、前記薬液Sの希釈倍率に応じて適宜に決定すればよいが、前記薬液タンク4の容量は、前記清水タンク3の容量に比べてはるかに小さくて済む(例えば、1/100)。このため、第一の利点として、前記薬液タンク4への薬液Sの注入作業が容易となる。第二の利点として、散布作業終了時に前記薬液タンク4内に薬液が残っても、少量なのでその取り扱いが容易である。第三の利点として、使用後の前記薬液タンク4の洗浄作業が容易となる。
【0025】
前記散布用ポンプ5の前記吐出口6は、吐出流路18を介して前記散布ノズル部7に連通している。前記吐出流路18には、上流側から順に、切換弁としての三方コック19と流量センサ20が介装されている。該流量センサ20は、前記散布ノズル部7へ向けて圧送される散布液Kの流量を検知し、その検知信号を前記制御装置17へと提供する。そして該制御装置17は、前記信号に基づいて、例えば、散布液Kの濃度が予め入力した所定の濃度(希釈倍率)に維持されるように、前記薬液ポンプ4の作動を制御する。
【0026】
前記三方コック19の二つの切換流出口21,22の内の一方21は、前記散布ノズル部7に連通しているが、他方の切換流出口22は、戻し流路23を介して前記混合流路10に連通している。したがって、散布作業中に散布を一時的に停止したい場合等には、前記走行機体の運転者が操縦席で前記三方コック19を操作して前記戻し流路23側へと流路を切り換えることにより、前記散布用ポンプ5を無負荷運転させることができる。
【0027】
本実施の形態では、前記戻し流路23は、前記逆止弁11の下流側で前記混合流路10に連通している。すなわち、前記逆止弁11は、前記混合流路10に対する前記戻し流路23の連結部24と前記合流部9との間に介装されている。したがって、前記散布用ポンプ5の吐出側から吸入側へと戻される散布液Kが前記合流部9へと逆流することはない。よって、散布液Kが前記清水タンク3内に逆流するようなことはない。また、前記薬液ポンプ12として、チューブポンプのようなバルブレスポンプを用いている場合でも、前記散布液Kが前記薬液タンク4の薬液Sに混入してしまう心配もない。
【0028】
ところで、前記三方コック19を切換えて散布を停止すると、前記流量センサ20からの信号により前記薬液ポンプ12の作動も停止されるが、この時、前記合流部9へと延びる前記薬液流路13内には薬液Sが残留する。このため、前記清水タンク3内における清水Wの液面と前記薬液ポンプ12の高さ位置関係によっては、前記薬液流路13内に残った薬液Sが、前記清水流路8を逆流して前記清水タンク3内へと混入してしまうことも予測される。
【0029】
そこで、これを防止するため、本実施の形態では、前記清水流路8を前記清水タンク3の底部3aから前記合流部9へと連通させ、前記清水流路8の容積よりも前記薬液流路13の容積を小さくしている。このようにすれば、前記清水タンク3内の清水Wの残量が少なくなり、その液面レベルが前記底部3a付近まで下がった場合でも、前記薬液流路13の残留薬液は、前記清水流路8を満たすだけの容量がないので、前記清水タンク3へと流入してしまうことはない。
【0030】
更に、本実施の形態では、清水より比重の大きい前記薬液流路13の残留薬液が、前記薬液ポンプ12の停止中に自重で流動して前記清水流路8内の清水と置換わることを抑制できるように(抑止できる程度にまで)、前記薬液流路13の内径を小さくしている。これにより、前記薬液流路13の残留薬液の前記清水タンク3への流入阻止が確実なものとされている。
【0031】
なお、前記薬液流路13の断面積の減少分は、薬液流路の本数を増やして前記合流部9に並列に接続することで補うことができる。例えば、内径9mmの単一チューブポンプに代えて、内径6.5mmの二連チューブポンプを用いれば、所要の性能を得ることができる。
【0032】
前記清水流路8の容積よりも前記薬液流路13の容積を小さくするについては、該薬液流路13の長さを長くし、その分だけ該溶質流路13の径を小さくすると好適である。このようにすれば、前記薬液タンク4及び前記薬液ポンプ12の配設位置に大きな自由度を持たせることができ、それらのレイアウトの幅が広がるからである。この場合、前記薬液流路13の内径の小ささが適当であれば、前記薬液ポンプ12の停止時における前記薬液流路13内の残留薬液の前記清水流路8側への流動も抑制できる。
【0033】
前記液体散布装置1は、前記吐出流路18における前記流量センサ20の上流側に調量流路25を備えている。該調量流路25は、前記吐出流路18から分岐して前記混合流路23へと連通している。前記調量流路25には、電動式等の調量弁26が介装されている。図示例では、前記調量流路25を前記戻し流路23に連通させているが、前記逆止弁11の下流側で前記混合流路10に直接連結してもよいことは勿論である。
【0034】
前記液体散布装置1は、前記流量センサ20に加えて、単位面積当たりの散布量を常に均一にするために必要なデータを検知する種々のセンサ27を備えている。例えば、車速センサや散布幅検知センサ等である。これらのセンサ27の検知信号は、前記制御装置17へと提供される。そして該制御装置17は、前記各信号に基づき、前記液体散布装置1の移動速度や散布幅等の変化に応じて散布流量を変化させ、単位面積当たりの散布量が常に均一となるように前記調量弁26の調量値を制御する。
【0035】
前記液体散布装置1において、前記散布ノズル部7からの散布を停止するために前記三方コック19を操作して前記戻し流路23側へと流路を切換えると、前記散布用ポンプ5から吐出される散布液Kの全量が前記混合流路10へと戻されて循環する。この散布液Kの循環時間が長いと、循環流路内の散布液Kの温度が上昇してしまう場合もある。これを放置すると、循環する薬液が高温となって、循環流路内のシール部材の能力を著しく低下させたり、ホースが軟化して抜け出す等により、薬液が漏出する虞を生ずる。また、高温の薬液が散布されれば、散布を受ける作物に被害が出る場合があるほか、薬液の種類によっては薬液が変質してしまう等の不都合もある。
【0036】
そこで、前記戻し流路23を介して前記混合流路10に戻される散布液Kをその流路の外側から冷却する冷却手段を設けると好適である。該冷却手段としては、図示してはいないが、前記戻し流路23の少なくとも一部を放熱効率の良好な素材又は構成とし、その外側にそれ自体周知の空冷式冷却ユニットを設けることができる。このようにすれば、循環する散布液を簡単且つ合理的に冷却することができる。
【0037】
前記冷却手段のさらに合理的な実施の一形態として、次のような構成を採用することもできる。
【0038】
すなわち、前記冷却手段として、前記戻し流路23の少なくとも一部を、放熱効率の良好な素材又は構成の熱交換用流路27とする。そして、該熱交換用流路27を、前記清水タンク3内の清水Wに漬かるように配設して、熱交換用タンク内配管28とする。具体的には、前記熱交換用流路27を前記清水タンク3内の底部3a付近に配設する。この場合、前記清水タンク3内の清水Wにより、前記熱交換用タンク内配管28を流れる散布液Kが冷却される。前記空冷式冷却ユニットのような特別な装置を用いず、前記清水タンク3内の清水Wを用いて冷却するので、構成の合理性がより高い。加えて、前記戻し流路23を介して前記混合流路10に戻される散布液Kに比べると、前記清水タンク3内の清水Wの方がはるかに大量であるので、冷却効率がきわめて良好となる。さらに、清水Wで冷却されるので、他の種類の液体で冷却する場合に比べて、前記熱交換用タンク内配管28が腐蝕等しにくく、耐久性も良好となる。
【0039】
なお、前記冷却手段の適用対象は、図1の構成の散布装置には限定されず、背景技術の項に例示した特許文献1に記載されている構成の散布装置にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液体散布装置の、制御回路を含む配管図である。
【符号の説明】
【0041】
1 液体散布装置
2 吸入口
3 溶媒源(清水タンク)
3a 清水タンクの底部
4 溶質源(薬液タンク)
5 散布用ポンプ
6 吐出口
8 溶媒流路(清水流路)
9 合流部
10 混合流路
11 逆止弁
13 溶質流路(薬液流路)
17 制御装置
18 吐出流路
19 切換弁(三方コック)
20 流量センサ
23 戻し流路
24 連結部
28 冷却手段(熱交換用タンク内配管)
K 散布液
S 溶質(薬液)
W 溶媒(清水、冷却手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒源(3)と、溶質源(4)と、散布用ポンプ(5)と、前記溶媒源(3)の溶媒(W)と前記溶質源(4)の溶質(S)が合流する合流部(9)と、該合流部(9)から前記散布用ポンプ(5)の吸入口(2)へと連通する混合流路(10)と、前記散布用ポンプ(5)の吐出口(6)に連通する吐出流路(18)と、該吐出流路(18)に介装された切換弁(19)と、該切換弁(19)から前記混合流路(10)へと散布液(K)を戻すための戻し流路(23)と、散布液(K)の流量を検知する流量センサ(20)と、該流量センサ(20)から得られる信号に基づいて前記合流部(9)への前記溶質(S)の繰り出し量を自動制御する制御装置(17)を備えている液体散布装置(1)であって、前記混合流路(9)に対する前記戻し流路(23)の連結部(24)と前記合流部(9)との間に、該合流部(9)側への散布液(K)の逆流を阻止する逆止弁(11)が介装されている、液体散布装置。
【請求項2】
前記合流部(9)へと連通する単一又は複数の溶質流路(13)と、前記溶媒源(3)の底部(3a)から前記合流部(9)へと連通する溶媒流路(8)を備え、該溶媒流路(8)の容積よりも前記溶質流路(13)の容積が小さくされている、請求項1に記載の液体散布装置。
【請求項3】
前記合流部(9)へと連通する単一又は複数の溶質流路(13)と、前記溶媒源(3)の底部(3a)から前記合流部(9)へと連通する溶媒流路(8)を備え、前記単一又は複数の溶質流路(13)の内径が、溶質(S)の流動を抑制できるように小さくされている、請求項1又は2に記載の液体散布装置。
【請求項4】
前記溶質源(4)の配設位置に大きな自由度を持たせることができるように前記単一又は複数の溶質流路(13)の長さを長くし、その分だけ該溶質流路(13)の径を小さくしてある、請求項2又は3に記載の液体散布装置。
【請求項5】
前記戻し流路(23)を介して前記混合流路(10)に戻される散布液(K)をその流路の外側から冷却する冷却手段(W,28)を備えている、請求項1,2,3又は4に記載の液体散布装置。
【請求項6】
前記溶媒源が清水タンク(3)であり、前記冷却手段が、前記戻し流路(23)の少なくとも一部を構成し且つ前記清水タンク(3)内の清水(W)に漬かるように配設されて前記混合流路(10)へと連通する熱交換用タンク内配管(28)を備えている、請求項5に記載の液体散布装置。

【図1】
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