説明

液体検査装置

【課題】容器内の液面の高さが変動しても、一の容器内の液体が他の容器内の液体へと混入するのを防止でき、かつ容器内の液体に異物が混入するのを防止できる液体検査装置を提供する。
【解決手段】複数のピペットチップ101と、複数のダクト103と、ファン106と、吸収部材107と、制御部200とを有する。ダクト103は、ピペットチップ101及びピペットチップ101に対応した容器の内部を、他のピペットチップ101及び他の容器の内部から遮蔽する。ピペットチップ101はダクト103に対して相対的に移動可能に構成されている。ファン106は、ダクト103内に連通しており、ダクト103の内部に圧力を印加する。制御部200は、少なくともピペットチップ101の吐出動作時には、ダクト103を移動させて容器に当接させ、かつファン106を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピペットによる溶液操作を行なう際に使用される被検査物質が不用意に混じることを防ぐ液体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DNA検査の工程は手操作で行われていて大変な労力がかかっており調整ミスを起こす可能性があり、熟練を要する作業となっている。こうした課題を解決すべく、特許文献1は、生体試料から核酸を抽出してから検出するまでのプロセスを一貫して行なう自動装置を開示している。この自動装置は分注機、加温機、保冷室、検出器、搬送機、コントローラなどからなり、搬送機によって容器を分注機、加温機、保冷室、検出器間を移動させる構成となっている。
【0003】
特許文献1に記載されているような核酸を扱う自動装置において、複数の検査対象を同時に扱う場合、互いの核酸が不用意に混合しないように注意しなければならない。
【0004】
この自動装置に構成されたサンプル、試薬類を分注する分注機については以下のような課題がある。
【0005】
分注機に取り付けられるピペットチップの中に吸引した溶液を別の容器に吐出する際に、以下のように溶液が大気中に浮遊することがある。
・吐出したときにピペットチップ先端もしくは液面に形成された泡がつぶれたものや主滴からちぎれた溶液
・吐出したときにピペットチップ先端からミスト状になった溶液
・ピペットチップから吐出された溶液がすでに収容されている液面もしくは容器内壁にぶつかって跳ねた溶液
また、複数の溶液を1つの容器内で攪拌する際に、以下のように溶液が大気中に浮遊することがある。
・攪拌により液面からミスト状になった溶液
・攪拌により液面に形成された泡がつぶれて飛散した溶液
さらには、容器の中の溶液中にピペットチップを突入、脱出させるときに液面で生じる液滴、ミストや、ピペットチップが容器の中に突入するときに押しのけた体積分の空気が容器開口方向へ移動し、その中のミストが外部に飛散して浮遊する可能性がある。
【0006】
こうした浮遊物が隣接する別の容器に混入したり、装置内に浮遊したりして次の分析、検査に用いられる容器に混入する可能性がある。こういった浮遊物の中に核酸が含まれていた場合、増幅を行なう容器に隣接する容器からの浮遊物が混入すると、本来あるはずのない核酸まで指数的に増やしてしまい、検査結果の正確性を著しく低下させる。
【0007】
こういった課題を解決する方法が特許文献2,3に開示されている。
【特許文献1】特開平7−107999号公報
【特許文献2】特開平2−31165号公報
【特許文献3】特開2006−158335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2には吐出時に霧状になった試料が周囲に飛散して操作者への二次感染してしまうことが課題として記載されている。これを防ぐために特許文献2では分注手段近傍に気体吸引手段を設けている。具体的には吸引手段であるダクトが、プローブ(ピペットチップ)の液体吐出口からやや離れた位置であって、かつ吐出方向の斜め上方から霧状気体を吸引可能な位置に配置されている。
【0009】
この構成の課題はプローブとダクトの配置が限定的になっていることにある。容器が細くて深い場合、溶液を吐出するにはプローブを容器の内部まで突入させる必要がある。これを対処するには容器にぶつからないようにダクトを配置してプローブ先端とダクトの距離を離す必要があるが、ダクトが容器に遮られて吸引力の作用が小さくなってしまい霧状試料を十分に回収できない可能性がある。
【0010】
そこで、吸引力を上げる、すなわちファンなどの圧力発生手段を大型化するか、あるいは駆動力を向上させるといった対策が必要になるが装置の動作音が大きくなってしまうという課題を生じることとなる。
【0011】
また、本発明者が吐出時のピペットチップ先端周辺の様子を観察したところ、吐出した主滴からちぎれたと思われる10μm程度の液滴が約100mm/秒の初速で吐出方向にほぼ垂直な方向、すなわちほぼ水平方向に飛ぶ様子が見られた。
【0012】
こうした液滴は360°いずれの方向にも飛ぶ可能性があり、これを回収するにはダクトをピペットチップ全周囲に配置しなければならず、隣接する容器間のピッチが大きくなり、装置も大型化してしまう。
【0013】
また、特許文献1に開示された装置は、外部への液滴の飛散をカバーで防ぎながら、そのカバー内はダクトから吸引して回収しようとしているが、装置内の部品の形状、配置などによっては気流が所望の方向に形成されていない可能性がある。
【0014】
特に複数の検体、すなわち混ざり合ってはいけない検体を隣接した位置関係で処理する装置においては吸引したときに霧状試料がダクトに到達する前に近接する他検体のプローブに付着してしまう可能性がある。他検体のプローブに霧状試料が付着した状態で再度容器内にプローブを突入させると他検体が容器内で混ざってしまい不必要な反応がはじまる可能性が大きい。
【0015】
さらにはカバー内の広範囲を吸引するには吸引力を高めて大量の空気を吸引するため、吸引空気に含まれる装置内外のホコリ、異物の量も増加することになり、そのホコリ、異物がプローブおよび容器周辺を通過する際に付着してしまう可能性もある。こうしたホコリ、異物が溶液内に混入してしまうと反応を阻害するという別の課題を生じることとなる。
【0016】
特許文献3には分注口から液体を吐出したときの飛沫を処理する方法が記載されているが、以下のような課題がある。
【0017】
吸引口および噴出口が液体を操作するチップと一体に形成されているため、汎用のピペットチップを使えずランニングコストがかかる。また、吸引口および噴出口が液体を操作するチップと一体に形成されているため、市販されているPCRプレートのような細くて深い容器の中でピペッティングすることは困難である。細い容器に対応するためにこのチップ全体を細くすると、飛沫処理性能が低下し、処理し切れなかった飛沫が容器外部へ飛散してしまう。
【0018】
また、吸引口および噴出口と分注口が高さ方向で近接しているので、分注口を溶液内に突入させて吐出や吸引する際に、その突入深さによっては吸引口、噴出口が液面と接してしまう可能性がある。その結果、吸引口に膜が形成されて、それが破れてミストになったり、噴出口付近で余計なミストを発生させたりする可能性がある。
【0019】
こうしたことが発生しないように分注口と吸引口、噴出口の高さ関係を決めればよいが、分注口と液面高さの関係が相対的に変動する場合に対応できない。例えば1つの容器に対して、収容される液量が複数設定されている場合、その液内にチップを挿入して溶液を操作するには、一番高い液面に対しても吸引口、噴出口が接しないように分注口との位置関係を決めなければならない。そうすると液内にチップを挿入しないで操作するときには吸引口、噴出口が液面から遠くなってしまい、先に書いたような分注口付近から略水平方向に飛んでいく液滴を処理することが非常に困難になる。
【0020】
特許文献2及び特許文献3に開示された装置における共通の課題は、細い容器の中にチップを挿入したり、液中にチップを挿入したりして溶液を扱う際の飛沫処理能力に限界がある点といえる。言い換えれば、特許文献2及び特許文献3に開示された装置は、液面とチップ先端の位置関係をある範囲に限定して使用することが前提となっている。
【0021】
そこで、本発明は、容器内の液面の高さが変動しても、一の容器内の液体が他の容器内の液体へと混入するのを防止でき、かつ容器内の液体に異物が混入するのを防止できる液体検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため本発明の液体検査装置は、容器内への液体の吐出及び容器内に保持された液体の吸引を行う複数の液体吐出吸引手段と、
液体吐出吸引手段及び液体吐出吸引手段に対応した容器の内部を、他の液体吐出吸引手段及び他の容器の内部から遮蔽する複数の遮蔽手段と、
遮蔽手段内に連通しており、遮蔽手段の内部に圧力を印加する圧力発生手段と、
遮蔽手段の内側に配置された、異物及び液体を捕捉する吸収部材と、を有し、
液体吐出吸引手段及び遮蔽手段は、容器に対して移動可能に構成されているとともに、液体吐出吸引手段は遮蔽手段に対して相対的に移動可能に構成されており、
液体吐出吸引手段の吐出動作及び吸引動作、液体吐出吸引手段及び遮蔽手段の移動動作、及び圧力発生手段の駆動を制御する制御部をさらに有し、
制御部は、少なくとも液体吐出吸引手段の吐出動作時には、遮蔽手段を移動させて容器に当接させ、かつ圧力発生手段を駆動する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、容器内の液面の高さが変動しても、一の容器内の液体が他の容器内の液体へと混入するのを防止でき、かつ容器内の液体に異物が混入するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施例)
図1に本実施例のDNA検査装置の概略図を示す。
【0025】
DNA検査装置1は、抽出部2と、増幅部3と、ハイブリダイゼーション部4と、検出部5と、制御部200と、記憶部201とを有する。抽出部2は生体試料からDNAを抽出し、増幅部3はDNAを増幅させ、ハイブリダイゼーション部4は増幅したDNAをプローブDNAと結合させ、検出部5は、プローブDNAと結合したかどうか検出する。
【0026】
制御部200は、後述する液体吐出吸引手段、圧力発生手段、遮蔽部の各駆動制御の他、フィルタの目詰まり検査における各動作の制御を行う。記憶部201は、本装置のシーケンス制御に必要な情報が記憶保持されている。記憶部201には、例えば、後述する容器内の液面高さ、溶液量、吐出、吸引される溶液量等に応じた液体吐出吸引手段の配置、及び液体吐出吸引手段の吸引動作、吐出動作あるいは移動動作といった動作条件や、圧力発生手段の動作条件が記憶保持されている。
【0027】
また、DNA検査装置1は、PCRプレート(不図示)を搬送する搬送部(不図示)、溶液を供給、吐出するピペット部6、ピペット搬送部、ピペットチップ保持部、使用済みピペットチップを収容するピペット廃却部などを有する。
【0028】
ピペット部6はリードスクリュを利用したピペット搬送部により矢印7のように上下前後左右に移動可能に構成されており抽出、増幅、ハイブリの工程間で溶液を移動させる。
【0029】
図2はピペット部6の詳細構造を示す断面図である。
【0030】
本実施例で説明するDNA検査装置は同時に3検体の検査を実施することが可能であり、ピペット部6は3本のピペットチップ101を取り付け可能に構成されている。
【0031】
液体吐出吸引手段であるピペットチップ101は、使い捨てであり、液体を吐出吸引する。
【0032】
液体操作手段であるピペットチップ取付部102は、内部にシリンダが上下動可能に構成されており、先端にピペットチップ101を着脱可能に保持する。また、ピペットチップ101はダクト103に対して相対的に移動可能に構成されている。
【0033】
ダクト103は、ピペットチップ101周辺を覆うように形成された中空円形の部材である。すなわち、ダクト103は、ピペットチップ101及びこれに対応する容器(例えば、図8参照)の内部を、他のピペットチップ101及び容器の内部から遮蔽するものである。ダクト103の材質は特に限定はなく周囲から異物が混入しない構成であれば金属、樹脂いずれでもよい。
【0034】
フィルタ部材104は、微細な孔を有し、空気は通過させるが異物あるいは液体は捕捉して保持する機能を有する。フィルタ部材104は、ダクト103の側壁面に形成された開口部に取り付けられており、ピペットチップ101側の端部近傍に配置されている。
【0035】
図2を参照すると、フィルタ部材104は、ピペットチップ101の背後に配置された例が示されているが、手前側に配置されていてもよい。また、ピペットチップ101の背後及び手前側の双方に配置されていてもよい。フィルタ部材104は空気を通過させながら、ホコリや飛散した核酸を捕捉し、保持する機能を果たすような孔径、密度で構成されている。この機能を果たすものであれば材質や構造に限定はなく発泡体、繊維を束ねたもの、メンブレン状のものなどから選択すればよい。
【0036】
なお、フィルタ部材104の位置は図2のような端部近傍に限らず、後述する飛沫処理の際に効果的に空気を出し入れできる位置(高さ)および面積および個数で配置されるものであってもよい。
【0037】
また、弾性体105はダクト103の先端部に固定されており、ダクト103が最下点にあるときに不図示の容器に隙間なく密着しフィルタ部材104以外に空気の連通路が形成されないようにしている。
【0038】
図2は図1のピペット部6を構成する主要部材である。131はピペット部6のベース板である。
【0039】
132はベース板131に固定された支持板で、モータ133が固定されており、モータ133はタイミングベルト134を介してリードスクリュ135を駆動する。136は3つのピペットチップ取付部102が接続されたピペット保持具であり、リードスクリュ135の回転によって上下に駆動される。
【0040】
137はピペット保治具136に固定されたピストンモータ保持板で、モータ138が固定されており、モータ138はタイミングベルト139を介してリードスクリュ140を駆動する。141は先端にピペット取付部102内部を上下動するピストンをそなえたピストン軸、142は3本のピストン軸141を接続されたピストン軸保持具であり、リードスクリュ140の回転によって上下に駆動される。
【0041】
不図示の駆動手段によってピペットチップ101、ピペットチップ取付部102とダクト103が一体的にベース板131に対して上下方向に移動可能である。また、リードスクリュ135によってピペットチップ101、ピペットチップ取付部102がダクト103に対して相対的に上下可能に構成されている。
【0042】
143はゴム材料で構成されたシール部材で、ダクト103の内壁に保持されておりピペットチップ取付部102がダクト103に対して上下に動くときにすき間を密閉し、空気が通過しないように構成されている。
【0043】
107はダクト103の内壁に内部に配置され、空気は通過させてミスト状になった溶液を吸収、保持する吸収部材でありフィルタ部材104と同じものである。
【0044】
この吸収部材107を介してダクト103から上方に流路144が伸びてバッファ空間127に接続されており、バッファ空間127の上には圧力発生手段であるファン106が配置されている。これにより、ダクト103内とファン106とは連通していることとなる。ファン106は、ダクト103内に正圧あるいは負圧を印加することができる。ファン106により発生した圧力でピペットチップ101先端周辺でミスト状になった溶液を動かす。3本のダクト103がそれぞれの吸収部材107、流路144を経由し、3本の流路144がバッファ空間127で集合する構成となっている。
【0045】
本実施例で取り扱う3つの検体は各溶液を個別に取り扱う必要があり、検査データの正確性を確保するためには特に核酸を含む溶液同士が異検体間で混じり合うことは絶対に避けなければならない。
【0046】
ダクト103はピペットチップ101ごとにそなえられている。ピペットチップ101が最下点にあるときにフィルタ部材104を除く容器との間に形成される密閉空間は、ダクト103によってピペットチップ101ごとに分離されており異検体が混じらないようになっている。
【0047】
また、容器における隣接検体間どうしの距離が短く、ファン106を駆動したときに隣接検体間で気流が干渉する可能性があるときは、図2のようにフィルタ部材104が隣接ダクト間で対向しない位置関係に配置すればよい。
【0048】
もしくはフィルタ部材104の周辺から外部に向けて隣接容器間を遮蔽する方向にのばしたガイド部材を形成し、隣接ダクト間の気流の相互影響を大幅に低減すればよい。図3(a)はガイド部材を備えた構成を示す正面図であり、図3(b)はその側面図である。図中、126はフィルタ部材104の周囲を覆うように形成された隣接ダクトとの間の気流の干渉を低減させるガイド部材である。
【0049】
図4にPCRプレート8を示す。プラスチック製の市販品で、8×12個の試料管が9mmピッチで構成されている。各ウェルの先端(底)部9は後述する金属ブロックと嵌合可能な形状になっている。ウェルの開口部10は開放状態でもよいし、外部からの異物混入を防ぎたい場合はアルミなどのフィルム材を接着し密閉しておいて、試料管に溶液を充填する前に穴あけ手段でフィルム部分を破ってもよい。
【0050】
図5は増幅部3の構成を示す概略図である。
【0051】
PCRプレートが嵌合する金属ブロック11は、アルミや銅合金などの熱伝導性の良い金属により構成され96個のウェル(穴部)が破線のように形成されている。
【0052】
金属ブロック11の下部には金属ブロックを加熱するペルチェ素子12が配置されており、その接触面を完全に密着させて熱を確実に伝えるためのグリス(不図示)が塗布されている。グリス以外で同様な効果を得るものとして熱伝導性の良いシート材料もある。
【0053】
ペルチェ素子12の下部には増幅部の構成部品が配置されたベース板13があり、ベース板13は開口14、15を備えた中空構造になっており、開口14、15に接続された不図示の配管を介して冷却水が流れる構造となっている。金属ブロック11の温度を下げるときにこの冷却水によってペルチェ素子12の下面の冷却が促進される。
【0054】
PCRプレート8の上部にはアルミや銅合金などの高熱伝導性の金属により構成された加熱板16が配置されている。加熱板16の上部にはペルチェ素子17が配置されており、その接触面を完全に密着させて熱を確実に伝えるためのグリス(不図示)が塗布されている。
【0055】
ペルチェ素子17の上部には金属材料で形成された冷却ブロック18が、上記と同様に接触面にグリスを介して固定されている。ペルチェ素子17の上面から放熱するときにこの冷却ブロック18によって冷却を促進させる。
【0056】
冷却ブロック18は開口19、20を備えた中空構造になっており、その開口19、20に接続された不図示の配管を介して冷却水が流れる構造となっている。
【0057】
加熱板16、ペルチェ素子17、冷却ブロック18が一つのユニット(天板ユニット21)として構成されており、この天板ユニット21が不図示の駆動手段により、移動可能に構成されている。
【0058】
使用者がPCRプレート8を増幅部にセットするときは天板ユニット21が退避位置にあってセット作業を妨げない状態となり、増幅時は加熱位置にあってPCRプレート8を上部から加熱する。
【0059】
図6はPCRプレート8と金属ブロック11が嵌合した状態を示す側面図である。天板ユニット21の加熱板16に対して、PCRプレート8及び金属ブロック11が不図示の駆動機構により図面下方より上昇して押圧されることによりPCRプレート8の先端部9と金属ブロック11の嵌合部分が密着する構成である。
【0060】
次に本実施例のDNA検査装置の動作について説明する。
【0061】
まず、この装置の抽出、増幅、ハイブリの各工程ユニットにそれぞれ試薬が充填された容器をセットする。抽出部2では血液、尿などの生体試料がセットされて公知の手段によりDNAを含む溶液が得られる。抽出が終了するまでに増幅部3にはPCRプレート8がセットされている。
【0062】
この核酸溶液をピペット部6に取り付けたピペットチップ101(図2参照)で吸引して増幅部3に移動させる。このときピペットチップ101は抽出部2で使用したものから新しいものに交換される。
【0063】
ピペットチップ101の取り付けは、ピペット部6が不図示のピペットチップ保持部まで移動して行われる。制御部200は、ピペット部6をピペットチップ保持部におけるピペットチップ取付部102とピペットチップ101とが対向する位置で停止させる。ここからピペット部6を下降させてピペットチップ101を圧入するが、この間にファン106を駆動してダクト103を経由して周囲の空気を吸引してもよい。これによってピペットチップ101を取り付ける前に周囲の空気をきれいな状態にできる。ピペットチップ101を取り付けて所定時間経過後にファンを停止する。
【0064】
図7及び図8は抽出容器にピペット操作をしている状態を示す図である。
【0065】
ピペット部6は、ピペットチップ101を取り付けたら核酸溶液が入った抽出容器の開口に向かって移動する。図中、108は抽出容器であり、制御部200は、抽出容器108の開口部よりも大きい内径をもつダクト103先端の弾性部材105を抽出容器108の開口部に接するまで下降させて停止させる。図7は弾性部材105が抽出容器108の開口部に当接して停止した状態を示している。
【0066】
この動作の中で弾性部材105が抽出容器108に接する直前から制御部200はファン106を駆動して空気の吸引を開始し、周囲の空気中のホコリや異物を抽出容器108内に押し込まないようにする。このときの駆動は極めて弱く行なうのでダクト103内部に周囲のホコリや異物を吸引することはほとんどない。
【0067】
なお、フィルタ部材104を介して十分空気が排気されて抽出容器108に空気を押し込まないような速度でダクト103を下降させることが可能であれば、ダクト103が下降しきってからファン106を駆動してもよい。
【0068】
図8は、図7の状態からピペットチップ101だけを下降させて核酸溶液109を吸引できる高さに到達して停止した状態を示す。下降しきる前からファンを弱く駆動していた場合、この時点からファン106の駆動を変更し流量を多くしてミストを確実に処理する。弾性部材105が抽出容器108の開口部に弾性変形して接しているため、ダクト103と抽出容器108の接触部はすき間がない。このため、制御部200がファン106を駆動するとフィルタ部材104を経由して外部の空気が矢印110のようにダクト103内に入ってくる。
【0069】
溶液109を吸引したら、ピペットチップ101を上昇させてダクト103内まで戻す。制御部200は、この間も継続してファン106を駆動させる。
【0070】
このようにダクト103を下げてからピペットチップ101を下降させるので、抽出容器108内の浮遊ミストがピペットチップ101に押しのけられて上昇してきても外部には漏れずに処理できる。
【0071】
ファン106を駆動するとフィルタ部材104を介して外部の空気がダクト103内へと供給される。しかしながら外部に存在する、反応を阻害するホコリや異物、検査結果に影響を与えるような浮遊核酸はフィルタ部材104によって除去されるため、ダクト103内に進入しない。したがってピペットチップ101の外周部にホコリや異物が付着することはない。また、ダクト103内に上昇気流が発生しているので、ピペットチップ101が溶液109に突入する際に液面で飛沫が発生してもこの上昇気流によってダクト103内を上昇し、吸収部材107に吸収される。その後、制御部200は、所定時間ファンを駆動し停止してからダクト103とピペットチップ101を一体的に上昇させる。
【0072】
次に増幅部にセットした容器に吸引した核酸溶液を移動させる動作について説明する。
【0073】
まず、制御部200は、ピペットチップ101およびダクト103を一体的に増幅容器上の所定位置まで移動させる。その後、制御部200は、ダクト103を、その先端の弾性部材105が増幅容器開口面に接するまで下降させて停止させる。増幅容器は抽出容器と同様、その開口部がダクト103よりも小さく形成されている。次に制御部200は、ピペットチップ101だけを下降させて核酸溶液を吐出する高さまで到達したら停止させる。
【0074】
ここまでのピペットチップ101、ダクト103およびファン106の動作は抽出容器から吸引するときと同じである。ただし吐出では吸引よりも大きな液滴が高い初速で飛ぶ傾向があるのでファン106の流量を吸引時よりも多くして処理する。増幅容器には増幅反応に用いる試薬があらかじめ充填されており、そこにピペットチップ101内の溶液を吐出する。
【0075】
ピペットチップ101内の溶液をすべて吐出したら反応容器内の試薬と、吐出した核酸溶液を均一に混合するために攪拌動作を行なう。攪拌では吐出よりも小さな液滴がゆっくり浮遊する傾向があるのでファン106の流量を吐出時よりも少なくして処理する。制御部200は、ピペットチップ101だけを吐出高さからさらに下降させて溶液中に突入させて攪拌位置まで移動させる。攪拌位置に到達したら、制御部200は、ピペットチップ101による溶液の吸引と吐出を任意回数繰り返して溶液を混合する。攪拌が終了したら制御部200は、ピペットチップ101を上昇させてダクト103内に収容させる。この間も継続してファン106は駆動されている。
【0076】
ファン106を駆動することでフィルタ部材104を介して外部の空気がダクト103内へと供給される。しかしながら外部からのホコリや異物はフィルタ部材104によって除去されてダクト103内に進入しないのでピペットチップ101外周部にホコリや異物が付着することはない。
【0077】
また、空気を吸引することによりダクト103内に上昇気流が発生しているので以下の飛沫はダクト103内を上昇し、吸収部材107に吸収される。
・ピペットチップ101が溶液109に突入する際に液面で発生した飛沫
・ピペットチップ101から吐出された溶液が液中で泡になり液面で破れたときに生じる飛沫
・攪拌時にできた泡が液面でつぶれて生じる飛沫
その後、制御部200は、所定時間ファン106を駆動し停止してからダクト103とピペットチップ101を一体的に上昇させる。
【0078】
ここで、ダクト103は、容器開口を覆い、かつ1つの容器を覆う大きさになっているので、隣接する容器、すなわち異なる検体を取り扱う容器とは遮断されるため、各容器で取り扱っている核酸が別の容器に混入することはない。
【0079】
なお、本実施例のダクト103の大きさは、1つの容器の開口を覆う大きさになっているが、1つの容器に限定されることはなく、コンタミネ−ションに無関係な、すなわち同じ検体を扱う容器群をまとめて覆う構成にしてもよい。
【0080】
また、ダクト103は容器開口を覆う必要最小限の大きさになっているので大量の空気を吸引する必要がない。したがって圧力発生手段であるファンを大きくする必要がなく騒音をおさえることができる。
【0081】
また、ピペットチップ101はダクト103に対して相対的に移動可能である。よって、溶液に対するピペットチップ101の各動作(吐出、吸引、攪拌)における適切な位置にダクト103を配置できる。これによってピペットチップ101を液内に深く挿入してもダクト103を液面に到達させずにかつ安定的な飛沫処理が可能となる。
【0082】
次に図4及び図5を用いて増幅工程について説明する。
【0083】
ピペットチップ101が所定の容器に溶液を吐出した後、ピペット部6はPCRプレート8上から退避し、退避していた天板ユニット21がPCRプレート8の開口10と対向する位置まで戻る。天板ユニット21の加熱板16に対してPCRプレート8と金属ブロック11が不図示の駆動機構により図面下方より上昇し、押圧されることによりPCRプレート8の先端部9と金属ブロック11の嵌合部分が密着し図5の状態となる。このときに天板ユニット21はPCRプレート8の容器を1ヶ所あたり0.49N〜0.98N、場合によってはそれ以上の力で押圧できる構造となっている。
【0084】
このように容器を押圧した状態でPCRを開始する。約92℃〜55℃〜72℃の間にて、所定の保持時間、サイクル数でPCRを実施することにより容器内のDNAが増幅される。
【0085】
増幅終了後、各容器の増幅産物はピペットにより吸引されて不図示の精製部まで搬送される。
【0086】
精製部にも抽出容器やPCRプレートと同様な容器がセットされており、その容器の中にはあらかじめ精製に用いる磁性粒子や精製液、洗浄液、溶出液などが充填されている。増幅産物を精製容器に吐出する際のダクト103、ピペットチップ101の動作は抽出部から増幅部に溶液を移動したときと同じなので説明は省略する。
【0087】
精製容器の中で磁性粒子が充填されている容器において精製を実施する。磁性粒子は10μl充填されており、ここに50μlの精製液と、50μl程度の増幅産物を吐出して攪拌を行なった後、容器からピペットチップ101を引き上げる。磁性粒子と核酸が結合してから不図示の磁石を容器に近づけて磁性粒子を容器の壁面に捕捉した状態でピペットチップ101により溶液を吸引する。この間ファン106は継続して駆動している。ピペットチップ101を引き上げてから所定時間が経過した後にファン106を停止してダクト103とピペットチップ101を一体的に上昇させる。
【0088】
ここで吸引した溶液は廃液なので所定の廃却部に吐出する。このときの廃却部へのダクト103、ピペットチップ101の移動および吐出動作はこれまで説明してきた溶液の移動、吐出と同様である。
【0089】
吐出時は吸引、攪拌、ピペットチップ101の突入、離脱時よりも多めの流量で駆動する。
【0090】
次に150μlの洗浄液を磁性粒子が残っている容器に移動する。移動するときのダクト103、ピペットチップ101の動作はこれまでと同様である。ただしこのとき磁性粒子が残っている容器にはほとんど液体が残っていないため容器壁面に直接吐出することになり、跳ね返った液体が飛散する距離はより大きくなる可能性がある。これは洗浄液の次に充填する溶出液についても同様である。
【0091】
また廃液部へ吐出する場合、以降の工程に廃液が混じることを避けるためにピペットチップ101を廃液の中に挿入しないことが望ましい。したがって工程が進行して廃液が増加してくると廃液部の液面が上昇に伴い、吐出位置も上昇せざるを得ず、液滴飛散および跳ね返りの発生がより高い位置に移動してくる。図9にその状態を示す。111は廃液容器であり、112は最初に廃棄するときのピペットチップ101の先端位置、以降2回目113、3回目114と徐々に上昇していく。
【0092】
そこで制御部200は、跳ね返りが発生する位置が低いと予想されるときにはファン106の駆動を強力に行なう、長時間行なう、といった制御を行なう。液面が高いときに強力もしくは長時間の駆動を行なってもよいが、液面が高い場合、液面に不必要に強い圧力が加わって液滴が飛散するといった弊害を避けるため、各状態における適切な駆動をすることが望ましい。
【0093】
本実施例においては制御部200は、容器がほぼ空の状態にあるときに吐出する上記の洗浄液および溶出液については制御を変更する。すなわち、制御部200は、この場合、ファン106を強力に駆動する、もしくは長時間駆動する、もしくはその両方を実施し、容器の底で発生したミストを確実にダクト103内に回収する。
【0094】
ファン106の制御条件(駆動力および駆動時間)を決定するには以下の2通りが考えられる。
1)公知手段を用いて得られた容器内の液面高さについての検知結果とこれからのピペットチップ101の動作条件との組み合わせにより制御条件を決定する。なお、容器内の液面高さを検出する公知の手段としては、以下のものが適用可能である。例えば、ピペットチップ101の先端が液面に接したときのピペットチップ101内の圧力変化の利用や、あるいは導電性ピペットチップの抵抗値の変化を利用が考えられる。ピペットの動作条件とは吸引、吐出における量、時間および攪拌の量、回数(時間)を表わす。
2)動作シーケンスをモニタリングし、各段階における記憶部201にあらかじめ記憶された、液面高さ及びそのときのピペットの配置や動作条件との組み合わせにより制御条件を決定する。ここで、記憶部201には、液面高さの他、容器内の溶液量、吐出、吸引する溶液量の情報も記憶されている。
【0095】
すなわち、1)の方法は、制御部200は、その都度ファン106の制御条件を決定する方法といえ、2)の方法は記憶部201に記憶された情報に基づき、ファン106の制御条件を予め決めておく方法といえる。
【0096】
本装置では、検査終了後、ピペットチップ101を捨てる前に装置内の清掃を行なうことも可能である。分注機のピペット取り付け部102にホコリや異物が付着するのは避けたいので、検査に用いたピペットチップ101を分注機に装着したまま、圧力発生手段を駆動してダクト103内に空気を取り入れる方法である。
【0097】
基本的にピペットチップ101による液体操作の時には容器周辺を略密閉状態にして飛沫を処理しているので空気中に核酸が浮遊している可能性はかなり低い。しかしながら、念のため、次の検査の前に、装置内の任意位置で停止させてもしくは動かしながら空気を吸引する。これによりコンタミネ−ションの可能性をさらに低減させることが可能である。このとき圧力調整手段は吐出時の流量よりも駆動してもよい。
(第2実施例)
第1実施例においてはファンでダクト内の空気を吸引する構成であったが、本発明を適用したDNA検査装置は、これとは反対にファンでダクト内を加圧することも可能である。以下にその実施例を説明する。なお、第1実施例と同じ機能を果たす部材等については同じ符号を用いて説明する。
【0098】
ダクト103周辺の構造は第1実施例とほぼ同じである。異なるのは図10に示す抽出容器108側の開口付近に異物や液体を保持可能な吸収部材115が配置されている点である。これは第1実施例で説明したダクト内側に配置されている吸収部材107と同じ材料のものでよい。吸収部材115はダクト103と同様、円形であり抽出容器108の開口の全周囲に配置されている(他の容器においても同様である)。
【0099】
第1実施例と同様、抽出部2から増幅部3へ移動させるときの動作を説明する。
【0100】
ピペットチップ101を核酸溶液が入った抽出容器108の開口に向かって移動させる。抽出容器108の開口部よりも大きく構成されたダクト103を、その先端の弾性部材105が吸収部材115に接するまで下降させて停止させる。ある程度下降してから接するまではファン106を駆動してダクト103内に空気を吸引し、周囲の空気中のホコリや異物を容器内に押し込まないようにする。このときの駆動は極めて弱く行なうのでダクト103内部に周囲のホコリや異物を吸引することはほとんどない。
【0101】
また、ダクト103先端部近傍に配置したフィルタ部材104を介して十分空気が排気されて抽出容器108に空気を押し込まないような速度でダクト103を下降させることが可能であれば必ずしもファン106を駆動させなくてもよい。
【0102】
ダクト103の下降、停止とともに不図示のファン106の駆動も停止する。次にピペットチップ101だけを下降させ、核酸溶液を吸引できる高さに到達したらピペットチップ101の下降を停止する。このときピペットチップ101の先端が溶液中に突入する前からファンの駆動を開始してダクト103上方から空気を供給する。弾性部材105によってダクト103と抽出容器108の接触部はすき間がなく、ファンを駆動するとフィルタ部材104を経由して空気が外部に排出される。
【0103】
なお、本実施例では吸収部材115は容器側に形成されているが、ダクト103の先端部にあってもよい。このとき吸収部材115を弾性材料でかつ空気は通過させる材料で構成すれば弾性部材105およびフィルタ部材104とを兼ねることができる。
【0104】
また、第2実施例のように吸収部材115を開口付近に配置したものにおいても、第1実施例のようにファンで空気を吸引する方式を構成することができるのは当然である。
【0105】
溶液を吸引したら、ピペットチップ101を上昇させてダクト103まで戻す。この間もファン106の駆動を継続しておく。ファン106を駆動するとフィルタ部材104を介してダクト103内部の空気が外部に排出される。しかしながら、ピペッティングのときにミスト化した溶液は下方へ流されて抽出容器108内に戻るかフィルタ部材104もしくは吸収部材115に保持されて外部には排出されない。したがって検査結果に影響を与えるような核酸が装置内を浮遊することを防ぐことができる。その後、所定時間ファンを駆動し停止してからダクト103とピペットチップ101を一体的に上昇させる。
【0106】
本実施例のように吸引と加圧の両方を行なう場合、流路を複数備え、そして、吸引路と加圧路を互いに独立して設けた構成とするのが望ましい。図11に吸引路と加圧路を個別に形成した構成例を示す。吸引用のファン116、吸引用の流路117が集合するバッファ空間128と、加圧用ファン118、加圧用流路119が集合するバッファ空間129とが個別に構成されている。制御部200は、吸引用のファン116あるいは加圧用流路119のうち、必要な方だけを駆動する。ダクト103の内壁には吸引用の吸収部材145と加圧用フィルタ部材146が配置されている。
【0107】
また、吸引用フィルタ部材145、加圧用フィルタ部材146が相互の吸引圧をまったく影響しあわないようにするには弁を用いた構成とすればよい。
【0108】
図12に弁を備えた構成例を示す。
【0109】
吸引用の吸収部材145の、吸引用のファン116が配置された側と反対側に弁147が設けられている。また、加圧用フィルタ部材146の、加圧用ファン118が配置された側とは反対側に弁148が配置されている。
を配置した構成となっている。
【0110】
制御部200は、吸引用のファン116を駆動してダクト103から吸引用の流路117を経由してミストなどを処理するときは弁147を開放し、弁148は閉じておく。
【0111】
一方、制御部200は、加圧用ファン118を駆動してダクト103から加圧用流路119を経由してミストなどを処理するときは弁148を開放し、弁147は閉じておく。
【0112】
制御部200により、このような制御を行うことにより吸引時に加圧用フィルタ部材146に負圧がかかることがないので、加圧用フィルタ部材146にいったん保持された核酸などがはがれて流路内に再浮遊することがない。また、一方の弁が閉じているため、吸引時には加圧流路からの、加圧時には吸引流路からの、それぞれ空気の流入がなく、ファンの駆動を効率的に容器方向に伝えることができる。
【0113】
また、図11、図12は吸引用のファン116と加圧用ファン118を個別に使用する構成であるが、共通のファンを用い、制御部200が、その都度駆動方向を変える構成としてもよい。
【0114】
図13に駆動方向を変更可能なファンを備えた構成例を示す。
【0115】
ファン120の手前のバッファ空間130の中に弁121、122を配置して必要な方の弁を開放するといった構成である。このような構成とすることで一度吸引して吸収部材に保持されたミスト、異物が加圧されて再度装置内に浮遊するのを防ぐことができる。
【0116】
第1実施例の吸引方式、第2実施例の加圧方式においていずれも流路内に圧力センサを配置してフィルタの目詰まりを検出できるように構成してもよい。以下にその説明をする。
【0117】
図14において、123は装置内の任意位置に構成された目詰まり検知部に配置された平面板である。124は流路内に配置された圧力センサでファンを駆動している間のダクト103内の圧力を検出しておく。125は圧力センサ124が接続され、信号を受信しファンの駆動を制御するファン駆動制御部である。なお、ファン駆動制御部125は制御部200に含まれているものであってもよい。
【0118】
目詰まり検出は、検査中以外のタイミングで、あらかじめ決められた所定の期間ごと、例えば1日、1週間、1ヶ月毎に、図15に示す動作フローの要領にて行われる。
【0119】
所定の期間毎に平面板123上にピペット部6を移動させて、ダクト103先端の弾性部材105が平面板123に接するまで下降させる(ステップS1)。
【0120】
所定位置まで下降させて停止させた後、次いで不図示のファンを駆動して吸引もしくは加圧を通常動作における流速で所要時間実施する。そして、この際の圧力を圧力センサ124にてモニタリングする(ステップS2)。
【0121】
制御部200は、所定時間内の圧力値(大気圧との差圧)が所定の範囲内にあれば、問題無し(Y)と判断し(ステップS3)、目詰まり検査を終了する(ステップS4)。この場合、フィルタは目詰まりを起こしておらず、続けて本装置による検査を行うことが可能である。
【0122】
一方、ステップS3にて、大気圧との差圧が時間とともに上昇し所定値以上となった場合(N)、その時点でファンの駆動を停止していったんダクト103を上昇させてダクト103内の圧力を大気圧に戻す。再度ダクト103を所定位置以下まで下げて、前回より流速を下げて、その分時間を長くして吸引もしくは加圧を実施する(ステップS5)。このときの大気圧との差が所定の範囲内であれば、制御部200は、問題無し(Y)と判断し(ステップS6)、目詰まり検知を終了し待機状態に戻す。
【0123】
以降の検査におけるファンの駆動制御はこのときの駆動条件に変更して実施する。また、制御部200は、このとき装置の不図示の表示部にフィルタ交換時期が近づいていることを報知し(ステップS7)、目詰まり検知を終了する(ステップS8)。この場合、フィルタは目詰まりを起こしておらず、続けて本装置による検査を行うことが可能である。
【0124】
ステップS6にて、所定時間内に圧力が所定範囲内におさまらない場合、制御部200は、何回か流速を下げて圧力の確認を繰り返す(ステップS9〜ステップS11)。
【0125】
所定値まで流速を下げて駆動しても大気圧との差圧の上昇がおさまらない場合は、制御部200は、その時点でファンの駆動を停止する。そして、制御部200は、フィルタが交換時期であることを表示部に報知し(ステップS12)、以降の検査は実行しないようにする(ステップS13)。
【0126】
また、ファンを駆動したときのダクト103内の大気圧との差圧が所定値以上となるまでの時間(越えない場合はある上限値で駆動を停止)と、通常動作における所定時間と、を比較して時間差を算出し、これに基づき、制御する方法もある。すなわち、比較結果の時間差が、所定の範囲内に入った時点でフィルタの交換時期が近いことを報知し、通常動作における所定時間の方が長くなった時点でフィルタが交換時期であることを報知し、以降の検査は実施しないようにする。
【0127】
圧力センサ124は図14のようにダクト103ごとに配置してもよいし、ダクト103を集合させてまとめた部分に1つ配置してもよい。前者の場合は複数あるダクト103のうち1本でも目詰まりを検出したら以降の検査はできないようにしてもよいし、目詰まりを発生した部分は報知しながらも残りの部分だけを使って検査を継続する仕様になっていてもよい。
【0128】
また、フィルタ部が構成されたダクト部先端が着脱可能になっていてユーザがフィルタ付ダクトを交換してもよいし、サービスマンが交換するようになっていてもよい。
【0129】
以上のとおり、フィルタの目詰まり検査及びフィルタの交換を適切に実施することで、液面に不用意に大きな圧力が加わって液滴が周囲に飛散するといった弊害を生ずることなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1実施例におけるDNA検査装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例におけるピペット部の概略構成図である。
【図3】フィルタ用のガイド部材を備えたダクトの構成例の正面図および側面図である。
【図4】本発明に適用可能なPCRプレートの一例の斜視図である。
【図5】本発明の第1実施例における増幅部の構成を示す模式的な側面図である。
【図6】図5に示す増幅部の、増幅反応中の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の第1実施例において、ダクトが容器に接した状態を示す側面図である。
【図8】本発明の第1実施例において、ダクト内に空気を吸引している状態を示す側面図である。
【図9】本発明の第1実施例において、廃液部における吐出に応じたピペットチップ先端の位置を示す図である。
【図10】本発明の第2実施例におけるピペット部の側面図である。
【図11】本発明の第2実施例において、吸引経路と加圧経路とを分けた構成のピペット部の概略図である。
【図12】本発明の第2実施例において、吸引経路と加圧経路とを分けた他の構成のピペット部の概略図である。
【図13】本発明の第2実施例において、吸引経路と加圧経路とを分けたさらに他の構成のピペット部の概略図である。
【図14】本発明のDNA検査装置における、フィルタの目詰まり検査の状況を示す図である。
【図15】フィルタの目詰まり検査における動作フローのフローチャートである。
【符号の説明】
【0131】
101 ピペットチップ
103 ダクト
104 フィルタ部材
106 ファン
107 吸収体
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内への液体の吐出及び前記容器内に保持された前記液体の吸引を行う複数の液体吐出吸引手段と、
前記液体吐出吸引手段及び前記液体吐出吸引手段に対応した前記容器の内部を、他の前記液体吐出吸引手段及び他の前記容器の内部から遮蔽する複数の遮蔽手段と、
前記遮蔽手段内に連通しており、前記遮蔽手段の内部に圧力を印加する圧力発生手段と、
前記遮蔽手段の内側に配置された、異物及び前記液体を捕捉する吸収部材と、を有し、
前記液体吐出吸引手段及び前記遮蔽手段は、前記容器に対して移動可能に構成されているとともに、前記液体吐出吸引手段は前記遮蔽手段に対して相対的に移動可能に構成されており、
前記液体吐出吸引手段の吐出動作及び吸引動作、前記液体吐出吸引手段及び前記遮蔽手段の移動動作、及び前記圧力発生手段の駆動を制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、少なくとも前記前記液体吐出吸引手段の吐出動作時には、前記遮蔽手段を移動させて前記容器に当接させ、かつ前記圧力発生手段を駆動する液体検査装置。
【請求項2】
前記遮蔽手段の壁面に外部に連通して設けられ、空気は通過させ、異物及び前記液体を捕捉するフィルタを有し、
前記遮蔽手段が前記容器に当接した状態における、前記遮蔽手段と前記容器とにより形成された空間は、前記フィルタ及び前記圧力発生手段を介してのみ外部と連通している、請求項1に記載の液体検査装置。
【請求項3】
前記フィルタは、隣接する前記遮蔽手段に対応する前記容器と対向しない位置に配置されている、請求項2に記載の液体検査装置。
【請求項4】
前記遮蔽手段内の圧力を検出する圧力検知手段と、前記フィルタの交換時期を報知する報知手段とを有し、
前記圧力発生手段を所定時間駆動している際に前記圧力検知手段が検出した圧力と、大気圧との差圧が所定値以上であると前記制御部が判断した場合、前記制御部は、前記差圧が前記所定値以下になるまで前記圧力発生手段の駆動条件を繰り返し変更し、かつ前記報知手段に前記フィルタの交換時期が近づいている旨を報知させる、請求項2または3に記載の液体検査装置。
【請求項5】
前記差圧が所定値以上であると前記制御部が判断した場合であって、前記制御部が前記圧力発生手段の駆動条件を繰り返し変更しても前記差圧が所定値以下にならない場合、前記制御部は、前記圧力発生手段の駆動を停止し、かつ前記報知手段に前記フィルタ部材を交換しなければならない旨を報知させる、請求項4に記載の液体検査装置。
【請求項6】
前記遮蔽手段内の圧力を検出する圧力検知手段と、前記フィルタの交換時期を報知する報知手段とを有し、
前記制御部は、前記圧力発生手段を駆動してから前記圧力検知手段が検出した圧力と大気圧との差圧が所定値以上となるまでの時間と、通常動作における所定時間とを比較して時間差を算出し、前記時間差が所定の範囲内である場合、前記制御部は、前記報知手段に前記フィルタの交換時期が近づいている旨を報知させる、請求項2または3に記載の液体検査装置。
【請求項7】
前記比較の結果、前記通常動作における所定時間が、前記所定値以上となるまでの時間よりも長い場合、前記制御部は、前記圧力発生手段の駆動を停止し、かつ前記報知手段に前記フィルタ部材を交換しなければならない旨を報知させる、請求項6に記載の液体検査装置。
【請求項8】
前記液体吐出吸引手段の前記吸引動作の際、前記液体吐出吸引手段の前記吐出動作及び前記吸引動作の繰り返しによる前記容器内の前記液体の攪拌動作の際、及び前記容器内の前記液体に対して前記液体吐出吸引手段を突入または脱出させる際には、前記制御部は前記圧力発生手段を駆動する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液体検査装置。
【請求項9】
前記遮蔽手段を移動させて前記容器に当接させるまでの間、前記制御部は前記圧力発生手段を駆動する、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液体検査装置。
【請求項10】
前記容器内の前記液体の液面高さを検知する液面高さ検知手段を有し、
前記制御部は、前記液面高さ検知手段による検知結果及び前記液体吐出吸引手段の動作条件に基づいて前記圧力発生手段の駆動条件を決定し、前記駆動条件に基づいて前記圧力発生手段を駆動する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の液体検査装置。
【請求項11】
前記液体の検査のための各工程における、前記容器内の液体の量及び前記液体吐出吸引手段の配置および動作条件に関する情報を記憶した記憶手段を有し、
前記制御部は、前記記憶手段に記憶された前記情報に基づいて前記圧力発生手段を駆動する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の液体検査装置。
【請求項12】
前記遮蔽手段と前記圧力発生手段とを接続する連通路を複数備え、
前記圧力発生手段によって前記遮蔽手段内に正圧を印加するために用いられる前記連通路と、前記圧力発生手段によって前記遮蔽手段内に負圧を印加するために用いられる前記連通路とは、互いに独立して設けられている、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の液体検査装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記液体の検査終了後、前記液体の検査に使用した前記液体吐出吸引手段を装着したまま、前記遮蔽手段および前記液体吐出吸引手段を前記容器から離れた位置に移動させ、かつ該離れた位置にて、前記遮蔽手段内に負圧が印加されるように前記圧力発生手段を駆動する、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の液体検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−168734(P2009−168734A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9296(P2008−9296)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】