説明

液体検知装置

【課題】極めて簡単な構造で液体の有無を高精度に検知可能で、ポンプにより液体を吐出する装置に容易に取り付けることが可能な液体検知装置を提供する。
【解決手段】液体検知装置20は、ポンプ2に供給される液体が無くなったことを検知して、ポンプ2を停止させるためのものである。ポンプ2の吸水管3の一部を構成する管体21に、液体検知センサとして液体を検知した際に液体の有無を示す信号を出力する回路基板22と、回路基板22に電気的に接続されて液体検知センサの電極として機能するネジ24とを設ける。管体21をポンプ2の吸水管3となる部分に接続する。ネジ24は、回路基板22を管体21に締結するネジ24としての機能と、回路基板22に電気的に接続されて液体検知センサの電極としての機能とを有する。液体検知装置20は、管体21の周囲より高くなったピーク部14のポンプ2側に下り傾斜する部分に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプから吐出される液体の残量が有るか否かを検知し、液体が無い場合にポンプを停止する液体吐出装置において、液体の有無を検知するために用いられる液体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農機具として用いられる噴霧装置(液体吐出装置)において、薬液タンクの底部およびポンプの吐出口側の管体とに、それぞれ、液体の有無を検知する液体検知センサを設け、両方の液体検知センサが液体を検知できない場合に、噴霧装置のポンプを停止するポンプ自動停止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このポンプ自動停止装置における液体検知センサは、液体検知センサの一対の電極がタンク等の内部に配置され、両方の電極が導電性の液体に接触し、一対の電極間で電気が通電することで液体を検知する通電式のものである。
また、管路内を流れる流体に非接触で、この流体の有無を検知可能な静電容量式の近接センサを用いるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2515113号公報
【特許文献2】特開平11−230815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、農機具としての噴霧装置では、例えば、農薬を薬液として散布する。農薬としては、乳剤と水和剤とが代表的であり、薬剤が水に完全に溶解した状態となっていない場合が多い。また、農薬の原液の希釈倍率は農薬によって異なり、例えば、50〜2000倍と幅広い範囲となっている。これにより、農薬としての薬液の粘度も幅広いものとなっており、粘度の高い薬液も存在する。
電極間に液体がある場合に通電する通電式の液体検知センサでは、電極に異物が付着したり、液体や液体に含まれる成分による電極表面が変化か(腐食等)したりすることで、電極における感度が低下する。農薬には、上述のように、薬剤が水に完全に溶解していないものや、さらに、粘性が高いものもあることから、液体検知センサは、農薬によって影響を受け易く、使用中に液体検知センサの感度が低下してしまう虞がある。
【0005】
そこで、薬液用の液体検知センサでは、電極の材料として、導電性が高く、耐薬品性の材料を選択する必要があり、液体検知センサのコストが高くなる虞がある。しかし、このような電極でも、表面に導電性の低い異物や導電性の低い液体が付着すると、感度の低下を招くことになる。
また、電極を液体内に挿入する必要があることから、電極の取り付け部分から液体が漏出しないように、電極の取り付け部分のシールを確実に行わなければならず、電極の取り付け部分の構造が複雑になり易く、製造コストの増加の要因となる。
【0006】
特に、薬液タンクの底部等に液体検知センサを取り付けるためには、例えば、タンクに取付用の孔を設け、さらに、その部分のシールを確実に行わなければならず、製造およびメンテナンスを煩雑なものとする虞がある。特に、液体検知センサの組み付け作業が煩雑になる虞がある。
また、タンクに液体検知センサを設け、かつ、タンクとポンプおよびその制御回路を備えたポンプユニットとが離れている場合に、タンクの液体センサからポンプユニットまで長い配線を行う必要があり、配線の取り回しおよび固定が煩雑になる虞がある。
【0007】
また、吐出管に液体検知センサを設けた場合に、ポンプ作動時に薬液が無くなった際に、ポンプが空気を吸い込んでしまい、配管内に残った微量の薬液が、空気の動きや、配管の配置等によって、同じ場所を行ったり来たりするハンチング運動を起こす虞があり、これが液体検知センサでの誤作動の原因となる。
特に、ピストンポンプの場合には、吸水力が時間的に変化して、強くなったり弱くなったりすることを繰り返すので、上述のハンチング運動が起こり易い。
【0008】
ここで、静電容量式の液体検知センサを用い、薬液と非接触で薬液の残量があるか否を判定する場合に、電極が薬液に接触しないことから、薬液との接触による電極の汚れや腐食等に由来する感度の低下といった問題が生じない。
さらに、電極を薬液に接触させない場合に、タンクや配管に、孔を開ける必要がなく、シールをする必要がない。
【0009】
しかし、静電容量式の液体検知センサでは、電極間の静電容量の変化に基づいて、信号の出力をオン・オフさせるなどして、液体の有る無しを判定する電子回路が必要であり、電極と電子回路(回路基板)と流体が流れる管路との構造が煩雑になる虞がある。
また、静電容量式の液体検知センサでも、液体検知の精度を高めるために、電極を液体に接触させる構成も考えられるが、この場合には、上述のシールの問題が生じ、液体検知センサの構造や組み付け作業が煩雑なものとなる。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、極めて簡単な構造で液体の有無を高精度に検知可能で、ポンプにより液体を吐出する装置に容易に取り付けることが可能な液体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の液体検知装置は、ポンプ(2)に供給される液体が無くなったことを検知して、前記ポンプ(2)を停止させるための液体検知装置(20)であって、前記ポンプ(2)の吸水管(3)の一部を構成する管体(21)に液体検知センサ(22,24)を設け、前記管体(21)をポンプ(2)の吸水管(3)となる部分に接続したことを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明においては、液体検知センサが吸水管の一部を構成する管体に設けられ、この管体を吸水管部分に接続することで、液体検知センサを取り付けることが可能であり、例えば、タンク等に液体検知センサを取り付ける場合に比較して、農薬の噴霧装置等に液体検知センサを組み付ける作業を極めて容易なものとすることができる。
また、ポンプの吐出側ではなく、吸水側に液体検知センサを備えた管体を取り付ける構造なので、ポンプの吐出側の配管に液体検知センサを設けた場合のように、ポンプの吐出側の配管に接続される機構を制限するようなことがなく、かつ、逆にポンプの吐出側の配管に接続される機構により、液体検知センサの取り付けが阻害されるようなことがない。
したがって、既設の装置に取り付ける場合に取付を容易にでき、かつ、新たに設計する場合でもポンプの吸水側に液体検知センサを設けることで、設計の自由度が大きくなる。
【0013】
請求項2に記載の液体検知装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記吸水管(3)が、液体を貯留するタンク(1)とポンプ(2)との間に配管され、
前記吸水管(3)は、この吸水管(3)のポンプ(2)側端部およびタンク(1)側端部よりも高くされるとともに、上流側が上り傾斜で下流側が下り傾斜となるピーク部(14)を有し、このピーク部(14)に前記液体検知センサ(22,24)を備えた前記管体(21)が配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明においては、タンクが空になった際に、回りより高くなったピーク部から液体が流下し、ピーク部ではタンクが空になった後に速やかに液体が無い状態となり、液体検知センサが吸水管に液体が無い状態であることを、確実かつ迅速に検知することが可能となる。また、速やかに液体がピーク部から流下することでピーク部内に残った液体がハンチング運動を起こすのを抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の液体検知装置は、請求項2に記載の発明において、前記ピーク部(14)の前記吸水管(3)が前記ポンプ(2)側に向って下り傾斜する部分に前記液体検知センサ(22,24)を備える前記管体(21)が配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3の記載の発明においては、液体検知装置が配置される部分で、ポンプによる液体の吸水方向と、重力による液体の流下方向が一致するため、より速やかに液体が流下し、液体のハンチング運動がより起こりにくい状態となり、確実に誤作動を防止できる。例えば、重力による液体の流下方向と、ポンプの吸水方向とが逆の場合に、吸水管内に残った液体がポンプに吸引されて傾斜を上がった後に重力により傾斜を流下して戻ることを繰り返す虞があるが、ポンプによる液体の吸水方向と、重力による液体の流下方向が一致していれば、残った微量の液体が速やかに液体の吸水方向でかつ重力による流下方向である方向に流下し、残った液体のハンチング運動をより確実に防止できることから、液体検知センサの誤作動をより確実に防止することができる。
【0017】
請求項4に記載の液体検知装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記液体検知センサ(22,24)が、電極に接続されて液体の有無を検知し、この液体の有無に基づく信号を出力する回路基板(22)と、この回路基板(22)を前記管体(21)に固定するネジ(24)とを備え、前記ネジ(24)が前記回路基板(22)に電気的に接続されて前記電極として機能するとともに、前記ネジ(24)の先端部が前記管体(21)内に突出してこの管体(21)内を流れる液体に接触可能とされ、かつ、前記ネジ(24)がタッピングネジもしくはシール剤付きのネジとされ、前記ネジ(24)がタッピングネジの場合に、前記管体(21)が弾性材料からなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明においては、電極とともに液体検知センサを構成する回路基板を管体に固定するネジが電極を兼ねており、電極のコストを低減できるとともに、液体検知センサの構造を簡素化して液体検知センサ全体のコストの低減を図ることができる。
また、ネジの先端部が管体内に挿入されることで、管体に孔が形成されているが、管体が例えば、合成樹脂等の弾性材料からなるとともに、ネジがタッピンネジ(タッピングネジ)とされていれば、ネジがネジ溝を彫りながら、管体に固定された際に、ネジの外周面に弾性材料からなる管体が密着した状態となり、シールされた状態となる。
【0019】
すなわち、電極としてネジを管体に形成された下孔に回転しながら装着するだけで、管体を貫通する電極部分がその周囲の弾性材料でシールされた状態となり、十分な防水性能を確保することができる。これにより、更に液体検知センサを簡便な構造とすることができ、コストの低減を図ることができる。なお、弾性材料としては、配管に使用可能な周知の合成樹脂を用いることができる。すなわち、弾性材料は、タッピングネジが使用可能で、かつ、タッピングネジを下孔に挿入してタッピングしならがねじ込んだ際に弾性変形して、タッピングネジ外周に密着する材料であれば、特に限定されるものではない。
【0020】
また、ネジがシール剤付きのネジ、すなわち、ネジの雄ネジ部分の外周面にシール剤がコーティングされているネジの場合に、このネジを管体に形成されたネジ孔(雌ネジ)に螺合させた際に、ネジの外周面とネジ孔の内周面との間がネジにコーティングされたシール剤により、シールされた状態となる。これにより、ネジの先端が管体内に突出していても、十分な防水性能を確保することができる。この場合に、管体が弾性材料でなくても、シールが可能であるが、管体が弾性材料からなっていてもよい。
【0021】
なお、上記における括弧内の符号は、図面において対応する要素を便宜的に表記したものであり、したがって本発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは、「特許請求の範囲」の記載についても同様である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液体検知装置によれば、極めて簡単な構造で、かつ、容易にポンプの吸水管に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る液体検知装置を備えた薬液噴霧装置を示すブロック図である。
【図2】前記薬液噴霧装置において、薬液をポンプに供給するための薬液容器からポンプユニットまでの概略構成を示す概略図である。
【図3】前記液体検知装置を説明するための図である。
【図4】前記液体検知装置に設けられた回路基板に形成された電子回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1から図4に示すように、本発明の実施の形態の液体検知装置20は、農機具としての各種薬液噴霧装置において好適に用いられるものである。この液体検知装置20は、薬液容器(タンク)1から供給される液体としての薬液をポンプ2に吐出して噴霧している際に、薬液容器1内に貯留された薬液がほぼ無くなった場合に、ポンプ2を自動停止するために、液体としての薬液の有無を検知するためのものである。
【0025】
ここで、液体検知装置20を説明する前に、この液体検知装置20を備えた液体吐出装置としての薬液噴霧装置について説明する。
液体検知装置20が用いられる農機具としての薬液噴霧装置は、例えば、農薬を散布するためのものであり、農薬としての薬液を貯留する前記薬液容器1と、薬液容器1に接続された吸水管3により薬液を薬液容器1側から吸水して吐出する前記ポンプ2と、このポンプ2を駆動する原動機としてのDCモータ4と、このDCモータ4の作動開始および作動停止等を制御するモータ・コントローラ5と、このモータ・コントローラ5およびDCモータ4に電力を供給するバッテリー6と、吐出管としての噴霧ホース7と、この噴霧ホース7に開閉バルブ8を介して接続されて薬液を噴霧するノズル9とを備えている。
【0026】
モータ・コントローラ5は、DCモータ4への電力の供給をオン・オフすることで、DCモータ4の作動と停止を制御する制御回路であり、この例では液体検知装置20からの後述の薬液(液体)空信号が入力した場合に、作動中のDCモータ4を停止するように制御する機能を有するものとなっている。
【0027】
また、この例では、液体検知装置20が吸水管3のポンプ2の近傍側に配置されるため、ポンプ2の作動開始時に吸水管3の液体検知装置20が配置される部分に液体としての薬液が到達しておらず、液体検知装置20から薬液空信号が出力されてしまう。したがって、このままでは、ポンプ2を作動開始してすぐにモータ・コントローラ5によりポンプ2が停止されてしまうので、モータ・コントローラ5は、DCモータ4の作動が開始されてから吸水管3の液体検知装置20の位置に薬液が到達するのに必要十分な第1所定時間だけ、薬液空信号が入力しても、ポンプ2を停止せずに作動させた状態に制御するようになっている。
【0028】
例えば、この例では、モータ・コントローラ5が、ポンプ2の作動開始から第1所定時間として20秒間は、液体検知装置20から薬液空信号が入力しても、ポンプ2を停止しないように制御する。また、モータ・コントローラ5は、ポンプ2の作動開始から第1所定時間が経過した後に、薬液空信号が入力してもすぐにポンプ2を停止せずに、第2所定時間として例えば5秒間連続して薬液空信号が入力した場合にポンプを停止するようになっている。
【0029】
これは、吸水管3を気泡が通過した場合に、液体検知装置20から薬液空信号が短い時間だけ出力される虞があり、気泡により出力される薬液空信号によりポンプが停止する誤作動を防止するためのものである。したがって第2所定時間は、気泡により薬液空信号が出力された場合の薬液空信号の連続出力時間より長い時間に設定される。
【0030】
この例の液体検知装置20は、薬液容器1からポンプ2に至る吸水管3に設けられている。また、ポンプ2、DCモータ4、モータ・コントローラ5およびバッテリー6等と、液体検知装置20とからポンプユニット11が構成されている。
なお、図2においては、ポンプユニット11に、DCモータ4、モータ・コントローラ5およびバッテリー6等が含まれるものとして、これらの図示を省略している。
【0031】
図2に示すように吸水管3は、ポンプ2側から順に、ポンプ接続管3a、液体検知装置20の後述の管体21、屈曲部12を有する曲がり管3bおよび吸水ホース3cからなっている。また、吸水ホース3cの薬液容器1内に配置される薬液容器1側端部には、異物の吸入を防止するストレーナ13が取り付けられている。
吸水管3を構成する管状部材のうち、ポンプ接続管3a、管体21および曲がり管3bは、形状が変化しないようにポンプユニット11の架台等に固定されるか、または、曲げることができない硬質の部材により構成されている。それに対して、吸水管3の吸水ホース3cは、軟質の部材からフレキシブルな管として構成されており、曲げることが可能となっている。なお、ポンプ接続管3aおよび曲がり管3bと管体21とが接続される接続部だけをフレキシブルなホースとしてもよい。
【0032】
曲がり管3bは、ほぼ直角に曲がった屈曲部を有し、概略L字状に形成されている。
また、曲がり管3bは、屈曲部が一番高い位置に配置されるように位置を固定されている。なお、曲がり管3bの位置は、例えば、ポンプユニット11のケーシング等に曲がり管3bを固定することで決められている。
曲がり管3bは、屈曲部が一番高い位置に配置されることで、曲がり管3bの屈曲部の頂点部分より上流側となる薬液容器1側は、吸水される液体(薬液)が上昇しながら流れる上り傾斜とされている。また、曲がり管3bの屈曲部の頂点部分より下流側となるポンプ2側の部分は、吸水される液体が下降しながら流れる下り傾斜となる。
【0033】
また、曲がり管3bの下流側端部には、管体21がポンプ2側に下り傾斜した状態で接続され、さらに管体21のポンプ2側端部に、ポンプ2側に下り傾斜したポンプ接続管3aの端部が接続され、曲がり管3bの屈曲部からポンプ接続管3aの管体21側端部まで下り傾斜した状態に管路が形成されている。
【0034】
これらポンプ接続管3a、管体21および曲がり管3bの部分は、曲がり管3bの屈曲部を頂点として、屈曲部よりポンプ2側が下り傾斜し、屈曲部より薬液容器1側が上り傾斜しており、これらの部分において、屈曲部の高さが極大となっている。この極大となる部分は、下流側が下り傾斜し、上流側上り傾斜することによりピークを有し、このピークの前後の上り傾斜部分と下り傾斜部分を含むピーク部14に、前記液体検知装置20の管体21が配置されていることになる。
さらに、管体21は、ピーク部14の頂点となる屈曲部よりポンプ2側のポンプ2に向って下り傾斜する部分に設けられている。
【0035】
図2においては、吸水管3の吸水ホース3cが薬液容器1の上端側開口から薬液容器1内に挿入されることで、吸水ホース3cの薬液容器1の上端を乗り越える部分が一番高くなっているが、ピーク部14は、薬液容器1内に挿入された吸水ホース3cの薬液容器1側端部およびポンプ接続管3aからなるポンプ2側端部より高い位置に配置されている。
なお、例えば、吸水ホース3cの端部を薬液容器1の下端部に接続する構成として、ピーク部14の頂点部分が吸水管3の中で最も高くなるようにしてもよいが、ピーク部14の頂点部分は、任意の範囲内で最も高い位置となっていれば、吸水管3全体の中で最も高い位置となっていなくてもよい。
また、吸水管3の中にフレキシブルな部分を設けたが、固定した配管を使用可能ならば、吸水管3の全体を曲がらない硬質な部材で構成してもよい。
【0036】
次に、図3を参照して液体検知装置20について説明する。液体検知装置20は、上述の吸水管3の一部を構成する管体21と、液体を検知した際に薬液空信号を出力する液体検知回路を有する回路基板22と、管体21と一体に設けられて回路基板22を収納するケーシング23と、回路基板22の回路に電気的に接続されて電極として機能するとともに、回路基板22をケーシング23および管体21に固定するための一対のネジ24とを備えている。なお、一対のネジ24と回路基板22とが液体検知装置20において液体検知センサとして機能することになる。
【0037】
管体21は、円筒状に形成され、下流側端部にポンプ接続管3aが接続され、上流側端部に曲がり管3bが接続され、薬液容器1からポンプ2に至る吸水管3(液体の流路)の一部を構成するようになっている。
ケーシング23は、管体21と例えば一体成形もしくは一体に接合された合成樹脂製の部材であり、上側が開放された箱状に形成されている。また、ケーシング23には、上側に開放される上部開口を閉塞する蓋部25が着脱自在に取り付けられている。
【0038】
また、ケーシング23と、管体21との間には、接続部26が設けられており、管体21の円筒状の外周部とケーシング23の平板状の底部とが接続されている。したがって、ケーシング23の底部において接続部26の部分が底部の他の部分より肉厚となっている。ケーシング23の底部を構成する底板27の上面に回路基板22が配置されている。
また、ケーシング23の底板27の接続部26と重なる肉厚になった部分には、底板27の上面から接続部26を介して管体21の内周面に至る下穴が設けられ、この部分に回路基板22を固定するネジ24が螺合されて回路基板22がケーシング23および管体21に固定(締結)されるようになっている。
【0039】
一対のネジ24は、ステンレス製の樹脂用タッピングネジとされており、ネジ溝を切りながら下穴に螺合するようになっている。ケーシング23、接続部26および管体21に形成された下穴の内径は、ネジ24の径(有効径もしくは谷の径)より少し小さなものとなっている。したがって、ネジ24がタッピングしながら螺合した際に、下孔側が弾性変形し、ネジ24の外周面に下孔の内周面が密着した状態となり、下孔が管体21の内周に貫通した状態で、かつ、ネジ24の先端が管体21の内側に突出した状態で、下孔からの液漏れを防止するようにシールされた状態となる。したがって、下孔にタッピングネジとしてのネジ24をねじ込んだ状態で、他のシール構造を必要としない。
特に、管体21は、吸水管3側に配置されるので、ポンプ2の作動に際して、内圧が高くなることがないので、上述の構成により十分なシール性能を確保することができる。
【0040】
このように、下孔に螺合された一対のネジ24により、回路基板22がケーシング23および管体21に締結された状態に固定される。
回路基板22には、ネジ24を挿通させる一対のネジ孔28が形成されている。このネジ孔28は、回路基板22をケーシング23に配置した際に、ケーシング23の下孔と重なる位置に形成されている。なお、液体検知装置20を配置する際に、管体21の略真上にケーシング23を配置し、管体21の内周面の上側部分(天井側部分)にネジ24の先端部が露出することが好ましい。これにより、管体21内に少し薬液が残留しても、天井側のネジ24に接触することがない。
【0041】
回路基板22の基板部品面(部品実装面)29には、一対のネジ24を電極として静電容量方式で、液体の有無を検知する電子回路用の複数の電子部品30が実装されている。
また、回路基板22の基板部品面29の反対側となる回路基板22の裏面32には、銅箔33が付けられている。
銅箔33は、一対の電極となるネジ24が配置される一対のネジ孔28のそれぞれに対応して二つの領域に分けられており、一方のネジ孔28を含む銅箔33の一方の領域と、他方のネジ孔28を含む銅箔33の他方の領域とが、絶縁された状態となっている。
【0042】
また、銅箔33は、回路基板22の裏面32からネジ孔28の内周面に連続した状態で付けられ、さらに、連続して回路基板22の基板部品面29のネジ孔28の周囲に円環状に付けられている。
銅箔33は、回路基板22の基板部品面29の周囲の部分が、ネジ孔28に挿入されて上述のようにケーシング23の下孔に螺合したネジ24の頭部と接触し、電極としてのネジ24と、銅箔33とが導通した状態とされている。
【0043】
また、回路基板22の基板部品面29の電子部品を備える回路と、銅箔33とは、前記ネジ孔28の部分で導通した状態に接続されており、ネジ24が回路基板22の電子回路に接続されて電極として機能するようになっている。
回路基板22の電子回路は、図4の回路図に示すように、電極としての一対のネジ24どうしの間に液体が近接した際に静電容量が大きくなると、コンパレータ41からトランジスタtrに電流が流れる構成となっており、最終的にトランジスタTrから液体の有無を示す信号が出力される。
【0044】
なお、上述のように、この例では、電極としての一対のネジ24間に液体がない場合に、薬液空信号を出力するものとしたが、信号はプラスでもマイナスでも良く、また、電圧が高い側でも電圧が低い側でもよく、信号が途切れた状態を薬液空信号が出力された状態と判断するものとしてもよい。
図4に示す電子回路においては、作動中は、発振回路42から高周波パルス44が一対のネジ24のうちの一方のネジ24に出力されている。一対のネジ24間に液体が近接していない状態では、一対のネジ24における静電容量が低い状態となり、高周波パルスが電極としての一対のネジ24間を通電することができない。それに対して、一対のネジ24間に液体が近接した状態では、一対のネジ24における静電容量が高くなり、一対のネジ24がキャパシタ(コンデンサ)として機能し、高周波パルスがネジ24間で通電することが可能となる。
【0045】
例えば、電極間に誘電率の低い空気しかない場合に、静電容量が低く、電極間に誘電率の高い水溶液がある場合に静電容量が大きくなる。このように、電極間に液体としての水溶液が近接した場合に静電容量が大きくなることで、一対の電極が十分にキャパシタとして機能するようになる。
他方の電極となるネジ24は、コンパレータ41に配線43で接続されている。この配線43には、ダイオードD1が配置されるとともに、当該配線43とグランドとの間にダイオードD2が配置され、交流の高周波パルスを直流に変換している。そして、直流に変換された高周波パルスは、配線43とグランドとの間に配置されたコンデンサC1に蓄積されて、この蓄積された電荷による電圧がコンパレータ41の入力電圧となる。
【0046】
コンパレータ41には、可変抵抗VRを介して任意に調整可能な基準電圧が入力されている。このコンパレータ41に入力される入力電圧がコンパレータ41に入力される基準電圧より大きくなると、コンパレータ41からトランジスタTrのベースに電流が流れることになる。これにより液体の有無を検知して、液体の有無を示す信号を出力することが可能である。
この例では、液体としての薬液に電極としての一対のネジ24が接触するようになっているので、薬液が導体として機能した場合に、直接的に高周波パルスが一対のネジ24間を導通することになるが、この場合も薬液がある場合に高周波パルスが比較的高い導電率で導通し、薬液がほとんどない場合に高周波パルスの導通が抑制される。
【0047】
ここで、ネジ24の管体21の内部に露出する部分が薬液の成分等により、接触する液体との間での導電率が低下した場合や、元々薬液の導電率が低い場合や、ネジ24の先端部の表面に絶縁性の被膜が形成されている場合に、一対のネジ24間での電気の導通がなくなり、一対のネジの間に静電容量が生じることになる。したがって、上述のように液体を近接させた場合と同様に電極間に液体が有る状態で静電容量が高く高周波パルスを導通させ、液体が無い状態で静電容量が低く、高周波パルスの導通を抑制する状態となる。
【0048】
この場合に、電極としてのネジ24と液体としての薬液との間で電気が導通する必要がないので、従来の通電式の液体検知センサのように、電極が汚れたり、異物が付着したり、表面が腐食したりすることで、検知精度が大きく低下することがなく、農業用の散布液で多く使用される乳液や水和液等の薬液でも問題なく好適に使用することができる。
【0049】
以上のような噴霧装置においては、モータ・コントローラ5の図示しない作動開始スイッチをオンとすることで、モータ・コントローラ5からポンプ2に電力が送られ、ポンプ2が作動する。この際には、吸水管3のポンプ接続管3aと曲がり管3bとの間に配置された管体21を有する液体検知装置20の部分には、薬液が存在せず、液体検知装置20では、一対の電極としてのネジ24間に液体が存在しないことで、薬液空信号が出力されるが、上述のようにモータ・コントローラ5において、ポンプ2の作動開始から第1所定時間が経過するまで、薬液空信号が入力してもポンプ2を作動し続けることになる。
【0050】
この状態で、薬液容器1が空になった状態でポンプ2が作動していると、吸水管3内部が空となり、液体検知装置20から薬液空信号が出力されることになる。この際に、ポンプ2が空気を吸い込むと、吸水管3内に残った少量の薬液が吸い込まれる空気によって動かされる可能性がある。この場合に、吸水管3内の残留薬液が同じ場所を行ったり来たりするハンチング運動が起こる虞がある。このハンチング運動が起こると、一時的に一対のネジ24間の静電容量が高くなり、薬液空信号が途切れ途切れとなる虞がある。
【0051】
この場合に、薬液空信号が途切れ途切れとなることにより、薬液容器1が空になって、吸水管3から薬液がほとんどなくなっても、上述の第2所定時間に渡って、連続して薬液空信号が出力されず、ポンプ2の停止が遅れる可能性がある。
それに対して、この例では、上述のように液体検知装置20が吸水管3のポンプ2側端部および薬液容器1側端部より高く、上流側が上り傾斜となり下流側が下り傾斜となるピーク部14に液体検知装置20があることで、薬液容器1が空となると、液体検知装置20の部分で、薬液が上流側および下流側の傾斜を下側に流下し、液体検知装置20の管体21に薬液が多く残留するのを防止することができる。
【0052】
また、管体21がピーク部14でも頂点よりポンプ2側でポンプ2側に向って下り傾斜する部分に液体検知装置20の管体21が配置されているので、薬液のポンプ2に吸水方向と重力による薬液の流下方向とが一致し、速やかに管体21内の薬液がポンプ2側に流下する。
したがって、液体検知装置20の管体21内部の薬液が速やかにポンプ2側に流れて、上述の液体のハンチング運動を防止することができ、これにより液体検知装置20の誤作動を防止することができる。
【0053】
吸水管3内部から薬液が無くなることで、液体検知装置20からは薬液空信号がモータ・コントローラ5に出力される。また、ハンチング現象が防止されていることから、吸水管3内部が空となった状態では、確実に第2所定時間に渡って薬液空信号が連続して出力される。モータ・コントローラ5は、第2所定時間に渡って連続して薬液空信号が入力されることに基づいてポンプ2を停止する。
【0054】
ポンプ2が停止した状態で、薬液の噴霧を継続したい場合には、薬液容器1に薬液を補充し、モータ・コントローラ5の図示しないリセットスイッチをオンとすることで、再び、薬液の噴霧が可能となる。
【0055】
このような噴霧装置に設けられた液体検知装置20によれば、液体検知装置20の液体検知センサとなる電極としてのネジ24が、ポンプ2の吸水管3に配置されるので、ポンプ2の設計に際し、他の部材が接続される可能性のあるポンプ2の吐出側に配置するよりも、容易に設計が可能で、設計の自由度も高くなる。
特に、液体検知装置20の管体21を配管に接続するだけで設置が可能なので、薬液容器1等のポンプ2に液体を供給するタンク側に液体検知センサを設ける場合よりも、構造を簡単なものとできるとともに、極めて容易に液体検知装置20を液体吐出装置に取り付けることができる。この場合に、液体検知装置20を取り外すのも容易であり、容易にメンテナンスを行うことができる。
【0056】
また、既設のポンプ2を用いた吐出装置にも容易に後付けすることができる。また、液体検知センサ(ネジ24および回路基板22)を備える液体検知装置20を、吸水管3のポンプ2の近傍に配置できるので、ポンプ2の近傍に配置されるモータ・コントローラ5と液体検知装置20が近くに配置され、これらの間に長く配線を行う必要がなく、配線が容易なものとなる。これにより、ポンプ2、DCモータ4、モータ・コントローラ5等と液体検知装置20とをポンプユニット11として容易にまとめることが可能となり、噴霧装置等の液体吐出装置の構成を簡略化することができる。
【0057】
また、回路基板22を管体21およびケーシング23に固定するためのネジ24を電極と兼用しているので、液体検知装置20の部品点数および組立て工数の削減を図りコストを低減することができる。また、液体検知装置20を通電式ではなく静電容量式とすることで、上述のようにステンレス製のネジ24を電極として使用しても、電極の表面の変質や、電極の表面の汚れ等による影響が少なく、十分な精度で、液体検知を可能とすることができる。
【0058】
また、液体検知装置20を吸水管3のピーク部14に配置することで、吸水管3の液体検知装置20の配置される部分の排水性が良くなり、薬液容器1が空となったことを迅速かつ確実に検知することが可能である。また、ピーク部14のポンプ2側に下り傾斜する側に液体検知装置20を配置することで、上述のように液体のハンチングを運動を防止し、液体検知装置20の誤作動を防止することができる。
【0059】
なお、この液体検知装置20は、農機具以外の噴霧装置や、噴霧装置以外でも、タンク等の液体容器(薬液容器1を含む)から液体を供給されてポンプ2により液体を吐出する装置(液体吐出装置)であれば、使用可能である。
また、ポンプ2としては、周知の液体用の各種ポンプを用いることが可能である。
また、DCモータ4をACモータとしてもよいし、ポンプ2を駆動するモータとして各種モータを使用可能であり、モータ以外の原動機を用いてもよい。
また、ポンプ2を駆動する原動機がモータ以外の場合には、モータ・コントローラ5に代えて、原動機の作動と停止を制御する制御装置を用いればよく、この制御装置が、上述の液体検知装置20からの液体空信号が入力した場合に、作動中の原動機を停止する機能等の上述のモータ・コントローラ5の機能を有していればよい。
【0060】
また、ネジ24をタッピングネジに代えてシール剤が雄ねじの外周面にコーティングされたシール剤付きのネジとしてよい。シール剤付きのネジとしては、例えば、市販のものを用いることが可能である。管体21には、シール剤付きのネジが螺合されるネジ孔を設けておき、このネジ孔にシール剤付きのネジを螺合するだけで、ネジ孔がシールされた状態となり、別途ネジ孔の部分にシール構造を設ける必要がなく、タッピングネジの場合と同様に手間の削減と構造の簡便化を図ることができる。この場合に管体21は、必ずしも弾性材料からなるものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 薬液容器(タンク)
2 ポンプ
3 吸水管
14 ピーク部
20 液体検知装置
21 管体
22 回路基板(液体検知センサ)
24 ネジ(電極、液体検知センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ(2)に供給される液体が無くなったことを検知して、前記ポンプ(2)を停止させるための液体検知装置(20)であって、前記ポンプ(2)の吸水管(3)の一部を構成する管体(21)に液体検知センサ(22,24)を設け、前記管体(21)をポンプ(2)の吸水管(3)となる部分に接続したことを特徴とする液体検知装置(20)。
【請求項2】
前記吸水管(3)が、液体を貯留するタンク(1)とポンプ(2)との間に配管され、
前記吸水管(3)は、この吸水管(3)のポンプ(2)側端部およびタンク(1)側端部よりも高くされるとともに、上流側が上り傾斜で下流側が下り傾斜となるピーク部(14)を有し、このピーク部(14)に前記液体検知センサ(22,24)を備えた前記管体(21)が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体検知装置(20)。
【請求項3】
前記ピーク部(14)の前記吸水管(3)が前記ポンプ(2)側に向って下り傾斜する部分に前記液体検知センサ(22,24)を備える前記管体(21)が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液体検知装置(20)。
【請求項4】
前記液体検知センサ(22,24)が、電極に接続されて液体の有無を検知し、この液体の有無に基づく信号を出力する回路基板(22)と、この回路基板(22)を前記管体(21)に固定するネジ(24)とを備え、前記ネジ(24)が前記回路基板(22)に電気的に接続されて前記電極として機能するとともに、前記ネジ(24)の先端部が前記管体(21)内に突出してこの管体(21)内を流れる液体に接触可能とされ、かつ、前記ネジ(24)がタッピングネジもしくはシール剤付きのネジとされ、前記ネジ(24)がタッピングネジの場合に、前記管体(21)が弾性材料からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液体検知装置(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145178(P2011−145178A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6309(P2010−6309)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【出願人】(391026003)フジマイクロ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】