説明

液体殺菌装置

【課題】液体を連続的に交番磁界中を通過させて液体中の菌を殺菌させることができる液体殺菌装置を提供する。
【解決手段】非磁性の円筒体内面に円周方向にN極とS極が交互に配置されるように永久磁石7が鉄製のパイプ1b上に固定された交番磁界を発生させる回転可能な磁石円筒体1からなり、送液パイプ2が磁石円筒体1の回りに間隔をおいてコイル状に巻かれて配置され、送液パイプ2中を菌類を含む液体が通過することにより、液体を殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プール水、風呂水、下水処理水などの菌類を含む液体を交番磁界により殺菌処理する液体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プール、浴場などで循環あるいは排水される水は大腸菌などで汚染されているので、水質基準を満足するように殺菌処理されている。例えば、プールの循環水では高濃度の塩素を添加することにより殺菌処理してプールに戻している。また、砂濾過器を利用して風呂水を処理することが知られている。さらに、磁界を利用した殺菌処理として、純水タンクの外側を磁極の極性がNタイプとSタイプの円筒状永久磁石を対向させて囲み、貯水タンクの純水に磁界をかけて水中の微生物を不活性化して死滅させるものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平1−254289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の塩素消毒では、発ガン性物質のトリハロメタンが生成されてしまうという問題がある。また、砂濾過器の場合は、入浴者が約200人を越える場合は約150人を目安に営業時間中であっても一旦止めて逆洗しており、また、珪素土濾過器では珪素の追加を必要とするため、手間がかかるという欠点がある。
【0004】
また、従来の磁気を利用した処理は、タンクに貯水したものを滅菌するものであり、連続的に大量に処理することができず、また、タンクを挟んで対向する磁石の距離が離れているので、高い殺菌効率が得られない。
【0005】
そこで、本発明は、菌類を含む液体を連続的に交番磁界中を通過させて液体中の菌を殺菌させることができる液体殺菌装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、永久磁石の高速回転または電磁誘導コイルへの高周波電圧の印加により、交番磁界を発生させ、この交番磁界中に液体流路となる送液パイプを配置して菌類を含む液体を通過させることにより、液体中の菌を殺菌することができる。
【0007】
本発明の液体殺菌装置は、具体的には、交番磁界を発生させる交番磁界発生装置と、この交番磁界発生装置で発生する交番磁界中に一端から菌類を含む液体が流入して他端から交番磁界により殺菌された液体が流出する送液パイプを配置してなる。
【0008】
また、交番磁界発生装置が非磁性の円筒体内面に円周方向にN極とS極が交互に配置されるように永久磁石が磁性を有する円筒体上に固定された交番磁界を発生させる回転可能な磁石円筒体からなり、送液パイプを磁石円筒体の回りに間隔をおいてコイル状に巻かれて配置することにより構成することができる。
【0009】
また、交番磁界発生装置が磁性を有する円板上に円周方向にN極とS極が交互に配置されるように永久磁石が固定された交番磁界を発生させる回転可能な磁石円盤からなり、送液パイプを円盤上に永久磁石と間隔をおいて配置することにより構成することができる。
【0010】
また、交番磁界発生装置が高周波電圧により交番磁界を発生する高周波誘導コイルからなり、高周波誘導コイルで発生した交番磁界中に送液パイプを配置する構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は次のとおりである。
【0012】
(1)処理する菌類を含有する液体を送液パイプに流して交番磁界中を連続的に通すので、大量に連続処理することができる。
【0013】
(2)駆動電力は、交番磁界を発生させるために、永久磁石を用いる場合には磁石円筒体あるいは磁石円盤を回転させる電力、また、高周波誘導コイルを用いる場合には高周波電流を流すために必要な電力で滅菌が可能となる。特に、送液パイプに非金属を使用すれば、無負荷に近い状態になるので、金属製の液送パイプに比べて電力を低減させることができる。
【0014】
(3)永久磁石を用いる場合、汎用性の高いモータを駆動源として用いるので、低価格で製作でき、万一の故障時にも代替品を早急に入手しやすい。
【0015】
(4)永久磁石を用いる場合、モータの回転数をインバータ等により可変することにより、殺菌能力を調整することができる。また、電磁誘導コイルを用いる場合には、電流値や周波数の変化により、殺菌能力を調整することができる。
【0016】
(5)装置の構造がシンプルであり、メンテナンスしやすく、故障しにくい。
【0017】
(6)殺菌のために、水への添加物は不要であるため、添加物を用いるものに比べて、安全性が向上し、構造がシンプルとなり、運転コストを抑えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、交番磁界を発生させる交番磁界発生装置には、永久磁石による方式、あるいは、高周波誘導コイルによる方式を利用する。送液パイプには、非金属製、例えば樹脂製パイプを使用することもできるが、永久磁石を用いる場合には、樹脂よりも銅のような非磁性導電体を用いた方が、高い殺菌効果が得られる。
【実施例】
【0019】
図1は交番磁界発生装置として永久磁石を有する磁石円筒体を利用した液体殺菌装置の一実施例を示し、(a)は同正面概略図、(b)は磁石円筒体の磁石と送液パイプの配置を示す断面図である。
【0020】
図1(a)において、回転する磁石円筒体1の回りに液体が流れるコイル状の送液パイプ2が配置されている。
【0021】
磁石円筒体1の軸3は、磁石円筒体1を挟んで配置された一対の軸受4に支持され、軸3の一端はカップリング5を介して駆動用モータ6に連結され、磁石円筒体1を回転させることにより交番磁界を発生させる。
【0022】
送液パイプ2は、磁石円筒体1の回りに間隔をおいてコイル状に巻かれ、一端から菌類を含む液体が流入し、流入した液体は、交番磁界の作用により滅菌した液体が他端から連続的に流出する。送液パイプ2と磁石円筒体1の間隔は、液体に交番磁界を効率よく作用させるために、できる限り至近距離となるように配置する。
【0023】
図1(b)において、磁石円筒体1は、ステンレス鋼等の非磁性の円筒体1aの内面に、N極とS極が交互に配置されるように永久磁石7が円周方向に同心円上に配置され、磁性材、例えば鉄製のパイプ1bに固定されている。永久磁石7を鉄製のパイプ1bに固定することにより、送液パイプ側(永久磁石の上側)の磁力を強くすることができる。永久磁石7としては強力な磁石を使用し、例えば、ネオジウム系の磁石が適している。
【0024】
磁石円筒体1は、駆動用モータ6により高速回転、例えば1000rpm以上で回転させることにより、送液パイプ2の一端から流入した菌類を含む液体に交番磁界が作用して滅菌された液体が他端から流出する。
【0025】
交番磁界の強さは、磁石円筒体1の永久磁石7の強さ、永久磁石7の個数、回転速度を適宜変えることにより調整することができる。また、複数台の液体殺菌装置を直列に接続することにより、より滅菌効果を向上させることができ、また並列に接続することにより液体処理量を増加させることができる。
【0026】
図1に示す永久磁石を利用した液体殺菌装置について試験した結果を示す。
【0027】
(1)試験1
風呂水について次の条件で試験した。
処理水 :風呂水
磁石円筒体回転数:1500rpm
永久磁石形状 :φ135mm×300mm
表面磁束密度 :0.3Tesla(円筒体表面)
送液パイプ内の処理水流速:1.8リットル/分
送液パイプの材質:テフロン(登録商標)
送液パイプの形状:外径φ8、内径φ6
永久磁石と送液パイプとの距離:5.5mm
試験の結果を表1に示す。
【表1】

表1から、滅菌効果が得られることが確認された。
【0028】
(2)試験2
下水処理水(下水処理場での処理後の処理水)について、送液パイプ内の下水処理水流速を実施例1より速くし、送液パイプの材質をテフロン(登録商標)及び銅の送液パイプを使用したものについて次の条件で試験した。
処理水 :下水処理水
磁石円筒体回転数:1500rpm
永久磁石形状 :φ135mm×300mm
表面磁束密度 :0.3Tesla
送液パイプ内の下水処理水流速:4リットル/分
送液パイプの材質:テフロン(登録商標)、銅
送液パイプの形状:外径φ8、内径φ6
永久磁石と送液パイプとの距離:5.5mm
試験の結果を表2に示す。
【表2】

表2から、滅菌効果が得られることが確認された。また、銅の送液パイプがテフロン(登録商標)の送液パイプに比べて高い滅菌効果が得られる。
【0029】
図2は永久磁石を有する磁石円盤を利用した液体殺菌装置の別実施例を示し、(a)は同正面概略図、(b)は磁石円盤の磁石の配置を示し、(c)磁石円盤と送液パイプの配置を示す平面図である。
【0030】
図2(a)において、回転する磁石円盤8の上に液体が流れる送液パイプ2が配置されている。磁石円盤8の軸9は、駆動用モータ10に連結されている。送液パイプ2は、磁石円盤上の磁石7と間隔をおいてコイル状に巻かれ、一端から菌類を含む液体が流入し、流入した液体は、交番磁界の作用により菌類数の減少した液体が他端から連続的に流出する。送液パイプ2と磁石円盤8の永久磁石7との間隔は、液体に交番磁界を効率よく作用させるために、できる限り至近距離となるように配置する。
【0031】
図2(b)において、永久磁石7は、送液パイプ側(永久磁石の上側)の磁力を強くするため、鉄製の円板8aの上にN極とS極が交互に配置されるように固定され、上下面及び側面を非磁性のステンレス鋼で覆い保護する。永久磁石7としては強力な磁石、例えば、ネオジウム系の磁石を使用する。
【0032】
磁石円盤8は、駆動用モータ10により高速回転、例えば1000rpm以上で回転させることにより、送液パイプ2の一端から流入した液体に交番磁界が作用して滅菌された液体が他端から流出する。
【0033】
交番磁界の強さは、磁石円盤8の永久磁石の強さ、磁石の個数、回転速度を適宜変えることにより調整することができる。また、複数台の液体殺菌装置を直列に接続することにより、より滅菌効果を向上させることができ、また並列に接続することにより処理量を増加させることができる。
【0034】
図3は高周波誘導コイルを利用した液体殺菌装置の実施例の概略図である。図3において、液体殺菌装置は円形に巻かれた銅製またはアルミ製の高周波誘導コイル11と送液パイプ2で構成される。高周波誘導コイル11により発生する交番磁界中に送液パイプ2を配置する。この液送パイプの一端から流入した菌類を含む液体に高周波誘導コイルの高周波電圧により、高周波誘導コイル周辺には交番磁界が発生し、菌類数の減少した液体を連続的に得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】永久磁石を有する磁石円筒体を利用した液体殺菌装置の一実施例を示し、(a)は同正面概略図、(b)は磁石円筒体の磁石と送液パイプの配置を示す断面図である。
【図2】永久磁石を有する磁石円盤を利用した液体殺菌装置の別実施例を示し、(a)は同正面概略図、(b)は磁石円盤の磁石の配置を示し、(c)磁石円盤と送液パイプの配置を示す平面図である。
【図3】高周波誘導コイルを利用した液体殺菌装置の実施例の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1:磁石円筒体
1a:円筒体
1b:鉄製のパイプ
2:送液パイプ
3:軸
4:軸受
5:カップリング
6:駆動用モータ
7:永久磁石
8:磁石円盤
8a:鉄製の円板
9:軸
10:駆動用モータ
11:高周波誘導コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番磁界を発生させる交番磁界発生装置と、この交番磁界発生装置で発生する交番磁界中に一端から菌類を含む液体が流入して他端から交番磁界により殺菌された液体が流出する送液パイプを配置したことを特徴とする液体殺菌装置。
【請求項2】
交番磁界発生装置が非磁性の円筒体内面に円周方向にN極とS極が交互に配置されるように永久磁石が磁性を有する円筒体上に固定された交番磁界を発生させる回転可能な磁石円筒体からなり、送液パイプが磁石円筒体の回りに間隔をおいてコイル状に巻かれて配置されていることを特徴とする請求項1記載の液体殺菌装置。
【請求項3】
交番磁界発生装置が磁性を有する円板上に円周方向にN極とS極が交互に配置されるように永久磁石が固定された交番磁界を発生させる回転可能な磁石円盤からなり、送液パイプが円盤上に永久磁石と間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1記載の液体殺菌装置。
【請求項4】
交番磁界発生装置が高周波電圧により交番磁界を発生する高周波誘導コイルからなり、高周波誘導コイルで発生した交番磁界中に送液パイプが配置されていることを特徴とする請求項1記載の液体殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−81977(P2006−81977A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267285(P2004−267285)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(591233595)日本マグネティックス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】