説明

液体浄化装置

【課題】浄化処理に用いられる電力(エネルギー)の低下を図り、かつ、液体浄化装置の簡略化を図ることができる液体浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体浄化装置1においては、サイフォンの原理を利用して外部の液体を汲み上げる汲水管16と、液体の比重と略同一の比重とすることによって外部の液体に浮き沈みするように形成された液体保持体10と、気体ポンプ21と、伸縮によって体積を変化させる気密袋体20と、液体を浄化するフィルタ部14と、フィルタ部14を通過させた液体を外部へ排水させる排水管13aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥した湖底水、海底水などを浄化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼、海、池、ダム、溜池、貯水池、河川、用水路、堀、運河などの浄化対象水域において、水質汚染対策として、水質浄化装置を設置することが行われている。一般に浄化装置においては、岸辺など陸上に設置されることが多くなることから、水底にある液体を汲み上げるにはポンプなどが用いられている。また、陸上に浄化装置を設置することが困難な地域では、水面に浮かばせながら水底にある液体をポンプなどで汲み上げて浄化する浄化装置もある。
【0003】
これらの浄化装置は、水底にある液体を汲み上げるポンプなどを常時作動させることが必要となるため、例えば、電源線敷設工事を行ってポンプなどの動力源として商用電力が常時供給するよう提案されている。また、電源線敷設工事が困難である水面設置の浄化装置においては、蓄電池や太陽電池などをポンプなどの動力源とするものも提案されている。
【0004】
ここで、従来の液体浄化装置において、蓄電池を使用することなく太陽電池のみでそのポンプおよび洗浄装置を駆動させる場合、太陽電池の発電電圧が所定の電圧を下回るときには、コントローラが洗浄装置を停止状態としつつポンプを駆動状態とするような制御を行うように形成されていた(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−102618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、太陽電池の発電電力の有効活用についてのもので、太陽電池の発電電圧が所定の電圧を下回る場合にコントローラが洗浄装置を停止状態とするが、ポンプは常時駆動状態としている。
【0007】
また、一般的に液体ポンプは、気体ポンプに比べて、駆動に必要な電力が大きいことが知られている。そのため、動力源としてポンプ(特許文献1では、液体ポンプの一種である水中ポンプ。)に供給される電力を常時確保して発電する必要があり、日照不足などに対応できるようにポンプ駆動用としての太陽電池の発電量を十分に確保する必要があった。その結果、液体浄化装置は、浄化処理に必要な電力(エネルギー)の低下や装置自体の簡略化を図ることが困難であった。
【0008】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、電力(エネルギー)の低下装置の簡略化を図ることができる液体浄化装置を提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の液体浄化装置は、その第1の態様として、サイフォンの原理を利用して外部の液体を汲み上げる汲水管と、汲み上げられた液体を保持すると共に液体の比重と略同一の比重とすることによって外部の液体に浮き沈みするように形成された液体保持体と、気体ポンプと、液体保持体の下方に配置されると共に気体ポンプにより加圧された気体が注入されると伸縮によって体積を変化させる気密袋体と、液体保持体内に配置されると共に汲み上げられた液体を浄化するフィルタ部と、気体ポンプが気密袋体内に気体を注入して液体保持体を浮上させることにより液体保持体においてフィルタ部を通過させた液体を外部へ排水させる排水管とを備えていることを特徴としている。
【0010】
本発明の第1の態様の液体浄化装置によれば、電力消費の比較的少ない気体ポンプを駆動させて浄化対象である液体の汲上、浄化および排水を行うため、浄化処理に用いられる電力(エネルギー)の低下を図ることができる。
【0011】
本発明の第2の態様の液体浄化装置は、サイフォンの原理を利用して外部の液体を汲み上げる汲水管と、汲み上げられた液体を保持すると共に液体の比重と略同一の比重とすることによって外部の液体に浮き沈みするように形成された複数の液体保持体と、気体ポンプと、液体保持体の下方にそれぞれ配置されると共に気体ポンプにより加圧された気体が注入されると伸縮によって体積を変化させる気密袋体と、液体保持体内にそれぞれ配置されると共に汲み上げられた液体を浄化するフィルタ部と、複数の液体保持体のうち1の液体保持体から他の液体保持体を連結すると共に気体ポンプが気密袋体内に気体を注入して複数の液体保持体を浮上させることによりフィルタ部を通過させた液体を1の液体保持体から他の液体保持体へ移送する1又は2以上の連結管と、気体ポンプが気密袋体内に気体を注入して液体保持体を浮上させることによって液体保持体において連結管を通過させた液体を外部へ排水させる排水管とを備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第2の態様の液体浄化装置によれば、電力消費の比較的少ない気体ポンプを駆動させて浄化対象である液体の汲上、浄化および排水を行うため、浄化処理に用いられる電力(エネルギー)の低下を図ることができる。また、複数の液体保持体にそれぞれ異なるフィルタを配設することにより、多段階の浄化処理を行うこともできる。
【0013】
本発明の第3の態様の液体浄化装置は、第2の態様の液体浄化装置において、連結管は、逆サイフォンの原理を利用して液体を1の液体保持体から他の液体保持体へ移送することを特徴としている。
【0014】
本発明の第3の態様の液体浄化装置によれば、液体保持体液体内に配置されているフィルタ部を液体が通過する際に生じる抵抗が存在する場合であっても、逆サイフォンの原理を利用するため、液体を1の液体保持体から他の液体保持体へ移送させることができる。
【0015】
本発明の第4の態様の液体浄化装置は、第1から第3のいずれか1の態様の液体浄化装置において、排水管は、サイフォンの原理を利用して液体を外部へ排水させることを特徴としている。
【0016】
本発明の第4の態様の液体浄化装置によれば、サイフォンの原理を利用して液体を外部へ排水させるため、浄化された液体の排出先を水面近傍に限らず所望の場所に設定することができる。
【0017】
本発明の第5の態様の液体浄化装置は、第1から第4のいずれか1の態様の液体浄化装置において、液体保持体は、当該液体保持体の上面が外部の液体面以下になることを防止する沈下防止部を有することを特徴としている。
【0018】
本発明の第5の態様の液体浄化装置によれば、沈下防止部が浮き作用を生じさせるため、液体保持体の沈下及び液体浄化装置の沈下を回避することができる。
【0019】
本発明の第6の態様の液体浄化装置は、第1から第5のいずれか1の態様の液体浄化装置において、気密袋体は、液体保持体の底面に設けられた気密袋体収容部内に外部の流体と共に収容され、気密袋体収容部に1又は2以上の孔を有することによって、気体ポンプの送気により気密袋体が膨張するときには外部の流体を気密袋体収容部内から1又は2以上の孔を介して流出させる一方、気体ポンプの排気又は気密袋体収容部内の外部の流体の水圧により気密袋体が収縮するときには外部の流体を気密袋体収容部内へ1又は2以上の孔を介して流入させるように形成されていることを特徴としている。
【0020】
本発明の第6の態様の液体浄化装置によれば、気体ポンプの送気により液体浄化装置全体の比重を調整するため、液体浄化装置の簡略化を図ることができる。
【0021】
本発明の第7の態様の液体浄化装置は、第1から第6のいずれか1の態様の液体浄化装置において、気体ポンプは、気密袋体を膨張させるときにのみ作動することを特徴としている。
【0022】
本発明の第7の態様の液体浄化装置によれば、気体ポンプを常時駆動させる必要がないため、気体ポンプの駆動による電力消費を更に抑えることができる。
【0023】
本発明の第8の態様の液体浄化装置は、第6の態様又は第7の態様の液体浄化装置において、液体保持体の底面又は気密袋体収容部は、液体保持体に作用する浮力を調整する重りを有することを特徴としている。
【0024】
本発明の第8の態様の液体浄化装置によれば、液体浄化装置の下方に重りを設けることによって重心位置が液体浄化装置の下方に配置されるため、特に、液体保持体内の液体を排出し終える際又は液体保持体内へ液体を汲上し始める際の液体浄化装置の横転を防止することができる。
【0025】
本発明の第9の態様の液体浄化装置は、第1から第8のいずれか1の態様の液体浄化装置において、気体ポンプは、少なくとも気密袋体へ加圧された気体の送気時間または送気量を制御する制御部と気体ポンプの駆動用電源を供給する蓄電池を備えていることを特徴としている。
【0026】
本発明の第9の態様の液体浄化装置によれば、液体の汲上又は排出を適切に操作することができる。
【0027】
本発明の第10の態様の液体浄化装置は、第9の態様の液体浄化装置において、重りは、気体ポンプ又は蓄電池であることを特徴としている。
【0028】
本発明の第10の態様の液体浄化装置によれば、液体浄化装置の下方に気体ポンプ又は蓄電池を設けることによって重心位置が液体浄化装置の下方に配置されるため、特に、液体保持体内の液体を排出し終える際又は液体保持体内へ液体を汲上し始める際の液体浄化装置の横転を防止することができる。
【0029】
本発明の第11の態様の液体浄化装置は、第1から第10のいずれか1の態様の液体浄化装置において、フィルタ部は、物理フィルタ、生物フィルタ、化学フィルタおよびその他の液体浄化に用いられるフィルタのうち1種又は2種以上から形成されていることを特徴としている。
【0030】
本発明の第11の態様の液体浄化装置によれば、液体の水質に応じてフィルタ部を自由に形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の液体浄化装置によれば、電力消費の比較的少ない気体ポンプを駆動させて浄化対象である液体の汲上、浄化および排水を行うことができる。また、気体ポンプの送気により液体浄化装置全体の比重を調整することができる。その結果、浄化処理に用いられる電力(エネルギー)の低下を図り、かつ液体浄化装置の簡略化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の液体浄化装置の第1実施形態を示す部分斜視図
【図2】第1実施形態の液体浄化装置が湖に浮かんでいる状態において湖底から水を汲み上げている様子を示す断面図
【図3】第1実施形態の液体浄化装置の浄化処理方法を示す断面図;(A)は湖水の汲み上げ開始の一例、(B)は湖水の汲み上げ途中の一例、(C)は湖水の汲み上げ終了の一例、(D)は浄化済みの湖水の排水開始の一例、(E)は浄化済みの湖水の排水途中の一例、(F)は浄化済みの湖水の排水終了の一例、を示す。
【図4】第1実施形態の液体浄化装置に備えられた制御部のポンプ制御処理方法を示すフローチャート
【図5】第2実施形態の液体浄化装置に備えられた制御部のポンプ制御処理方法を示すフローチャート
【図6】第3実施形態の液体浄化装置が湖に浮かんでいる状態において浄化済みの湖水を湖底へ排水する様子を示す断面図
【図7】第4実施形態の液体浄化装置の浄化処理状態を示す断面図;(A)は湖水の汲み上げ途中の一例、(B)は浄化済みの湖水の排水途中の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の液体浄化装置をその一実施形態である第1から第4の実施形態により説明する。
【0034】
はじめに、第1実施形態を説明する。
【0035】
第1実施形態の液体浄化装置1は、図1に示すように、液体保持体10、沈下防止部11、気密袋体収容部12、排水管13a、フィルタ部14及び通気管15を備えている。また、図1には図示しないが、第1実施形態の液体浄化装置1は、汲水管16(図2を参照)、気密袋体収容部12に内在する気密袋体20(図2を参照)、及び、通気管15に接続される気体ポンプ21(図示せず)を備えている。
【0036】
液体保持体10は、アルミニウムやマグネシウムなどの軽金属又はそれらの合金などから円筒状に形成されていることが好ましい。また、液体保持体10の上面には、汲水管16(図2を参照)を通過した水を流入するため、図1に示すように開口部10aを有する。
【0037】
沈下防止部11は、液体浄化装置1が水底へ沈み込むことを防止するための浮き具である。この沈下防止部11は、リング状に形成されており、液体保持体10の開口部10aの外周に、接着、溶接又はボルトなどの周知の固着方法により固定されている。また、沈下防止部11は、例えば、気泡を含ませたポリスチレン(発砲ポリスチレン)などの合成樹脂環や、アルミニウムやマグネシウムなどの軽金属又はそれらの合金を用いた中空金属環など、浮き具に適した材料及び形状により形成されていることが好ましい。これにより、沈下防止部11は、水に対して比重が小さくなるように、つまり、液体浄化装置1の外部にある水から大きな浮力が発生するようになるため、液体浄化装置1が水底へ沈み込むことを防止する。
【0038】
気密袋体収容部12は、アルミニウムやマグネシウムなどの軽金属又はそれらの合金などを用いて、中空円柱状若しくはコップ状に形成されている。気密袋体収容部12の円筒外径は、液体保持体10と同一外径であることが好ましい。この気密袋体収容部12は、気密袋体収容部12の上面と液体保持体10の底面が接合するように、接着、溶接又はボルトなどで固定されている。
【0039】
また、この気密袋体収容部12は、その内部に空間を設けて気密袋体20と外部からの水を収容するように形成されていることが好ましい。この場合、気密袋体収容部12の側面又は底面には、その内部に入水・出水するための数個の孔12aが設けられていることが好ましい。
【0040】
排水管13aは、液体保持体10の側面下方に設けられており、汲水管16(図2を参照)を通過して液体保持体10の内部に流入及び保持された水を排水する。排水管13aには、図示しないが、液体保持体10の外部から水が液体保持体10の内部へ侵入することを防ぐための逆止弁を有することが好ましい。
【0041】
フィルタ部14は、物理フィルタ、生物フィルタ、化学フィルタおよびその他の液体浄化に用いられるフィルタのうち1種又は2種以上のフィルタから板状に形成されていることが好ましい。液体保持体10の内部側面及び内部底面には、図示しないが、スリットが設けられており、板状に形成されたフィルタ部14がそのスリットに嵌め合うように配置される。これにより、汲み上げられた水の全てがフィルタ部14を通過して浄化される。
【0042】
通気管15は、アルミニウムやマグネシウムなどの軽金属又はそれらの合金などを用いて、角パイプなどのパイプ状に形成されている。この通気管15は、気体ポンプ21から送られた空気を気密袋体20に通気するように形成及び接続されている。
【0043】
また、通気管15は、板状に形成されたフィルタ部14の両面を挟むようにそれぞれ少なくとも1本ずつ配置されていることが好ましい。これにより、水の浄化の際に生じる圧力差によってフィルタ部14が撓むのを防ぐので、フィルタ部14がスリットから外れることを防ぐことができる。
【0044】
次に、第1実施形態の液体浄化装置1の使用状態を断面図(図1の一点鎖線Xにおける断面)である図2を参照して説明する。
【0045】
液体浄化装置1は、例えば、湖や海などに気密袋体収容部12が液体浄化装置1の下方となって浮かぶように使用される。本実施形態においては、液体浄化装置1は、湖水を浄化するために湖に浮かんでいる。このとき、図2に示すように、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルを「OLL」とし、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルを「ILL」として、以下を説明する。
【0046】
第1実施形態の液体浄化装置1は、図2に示すように、液体保持体10、沈下防止部11、気密袋体収容部12、排水管13a、フィルタ部14及び通気管15や、以下に詳細に説明する汲水管16、気密袋体20及び気体ポンプ21の他に、任意の部材として、蓄電池23、制御部24及びセンサ26を備えている。
【0047】
気密袋体20は、伸縮自在の合成ゴムなどの弾性体を用いて袋状に形成されている。また、気密袋体20は、気体ポンプ21から吸排気管22を介して気密袋体20の内部に送気されることによって膨張し、気密袋体20の内部の気体が吸排気管22を介して気密袋体20の外部に放出されることによって収縮するようになっている。
【0048】
気体ポンプ21としては、遠心圧縮機、軸流圧縮機、容積圧縮機またはその他一般的に気体に働く運動エネルギーにより圧力を与える気体圧縮機を用いることが好ましい。本実施形態においては、蓄電池23から気体ポンプ21に電力が動力として供給されることによって、気体ポンプ21は、通気管15を介して取り込んだ空気を圧縮し、その圧縮された空気を気密袋体20の内部へ吸排気管22を介して送気する。なお、圧縮された空気が不要となった場合(例えば、気密袋体20が収縮する場合など)には、通気管15を介して不要な空気を放出する。
【0049】
ここで、気密袋体収容部12には、前述の通り、数個の孔12a、12bが設けられていることが好ましい。これにより、気密袋体収容部12が水中にある状態で気密袋体20が収縮する場合(例えば、気体ポンプ21が停止している場合)には、湖水が孔12a、12bを介して侵入し、気密袋体収容部12の内部が湖水で満たされるようになっている。また、気密袋体収容部12が水中にある状態で気密袋体20が膨張する場合には、気密袋体収容部12の内部を満たしていた湖水は、孔12a、12bを介して気密袋体収容部12の外部へ放出される。
【0050】
一方、気密袋体収容部12の内部が空気で満たされている状態(例えば、陸上、船上またはその他水面上に液体浄化装置1全体が表れている状態など)から液体浄化装置1の下方より湖に沈める場合には、湖水が孔12bから気密袋体収容部12の内部に侵入することによって、気密袋体収容部12の内部で満たされていた空気は孔12aを介して放出される。
【0051】
蓄電池23としては、リチウムイオン蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池又はその他一般的に充電を行うことにより電気を蓄えて電池として使用できる様になって繰り返し使用することが出来る化学電池を用いることが好ましい。
【0052】
制御部24は、センサ26からの出力信号に応じて気体ポンプ21の作動を制御するように形成されている。
【0053】
センサ26としては、例えば、ステンレベラなどの微圧水位センサを用いることが好ましい。ステンレベラとは、ステンレス薄膜を用いて液面レベルの変化を電気的に検出するセンサである。液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLがセンサ25の設置場所に達すると、センサ25は検出信号を制御部24に送信する。これにより、気体ポンプ21が作動して気密袋体20が膨張するようになっている。
【0054】
次に、湖水を液体保持体10の内部に汲み上げる仕組について説明する。
【0055】
湖水の汲み上げにはサイフォンの原理を用いる。サイフォンの原理とは、隙間のない管を利用して、液体を出発地点から目的地点まで、途中出発地点より高い地点を通って導く原理をいう。サイフォンの効果を生じさせるには、出発地点の液面レベルが目的地点の液面レベルよりも高い位置にある必要があり、管内の液体が移動することによって管内に真空状態を作り出そうとする。これによって、出発地点の液体を汲み上げる。
【0056】
具体的には、管の最高地点において重力が液体を両方に引っ張ることによって真空状態を作り出そうとするが、出発地点における液体表面にかかる大気圧が管内の液体を伝わって真空状態が作られるのを防ごうとし、その結果、液体が出発地点から目的地点まで移動する。1気圧下において、水ならば管の最高地点を最高約10mの高さまで設定することができるため、図2に示すように、液体保持体10の底面からの管の高さHは、10m以内に設定することが好ましい。
【0057】
第1実施形態の液体浄化装置1において、サイフォンの効果を生じさせるために、パイプ状の汲水管16の一方(出発地点)を湖の浄化したい部分(一般的には、浄化が特に必要な湖底や海底など)に配置し、他方(目的地点)を液体保持体10の内部に配置させる。そして、汲水管16の内部の湖水に弾みを付けてサイフォンの効果を始動するため、汲上口16a(汲水管16の他方の端部であってもよい。)には図示しない給水ポンプを一時的に作動させることが好ましい。
【0058】
図2においては、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にある。そのため、汲水管16に表記した矢印の方向に上記サイフォンの効果が生じる。
【0059】
湖水の汲み上げ時において、発生したサイフォンの効果が継続的に生じるようにするためには、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあり続ける必要がある。
【0060】
そこで、液体保持体10の下方が湖に沈み込んでも、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあり続けるように、気密袋体20が収縮した状態で、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和が、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなるように、液体浄化装置1の形状および材質を選択する必要がある。つまり、沈み込んだ液体浄化装置1の比重が、約1となるように液体浄化装置1の形状および材質を選択する必要がある。
【0061】
前述のとおり、液体保持体10および気密袋体収容部12は、アルミニウム(比重約2.7)やマグネシウム(比重約1.7)などの軽金属又はそれらの合金などから形成されている。そのため、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和が、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなうように、液体保持体10および気密袋体収容部12には、中空部分などを設けることが好ましい。これにより、湖水の汲み上げ時において、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあり続けることができ、その結果、サイフォンの効果を継続的に生じさせることができる。
【0062】
また、本実施形態の液体浄化装置1は、海水などの湖水と異なる比重を有する液体の浄化処理についても用いられるが、その場合には、気密袋体20が収縮した状態において、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和が、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなうように、気体ポンプ21、蓄電池23および制御部24を所定の場所に配置させたときに生じる隙間などに比重調整材25を充填して比重を調整することが好ましい。
【0063】
これにより、浄化対象にかかわらず、また、液体保持体10および気密袋体収容部12の形状および材質を変更することなく、気密袋体20が収縮した状態において、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和が、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなうように、比重調整材25の増減又は選択などによって容易に調整することができる。
【0064】
なお、前述のとおり、排水管13aには、液体保持体10の外部から湖水が液体保持体10の内部へ侵入することを防止する逆止弁を備えている場合、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLと液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLとの距離は一定に保たれる。
【0065】
次に、第1実施形態の液体浄化装置1の一連の浄化処理方法を図3および図4を参照して説明する。
【0066】
液体浄化装置1の浄化処理方法のうち、図3(A)は湖水の汲み上げ開始の一例を示すものである。これは、液体浄化装置1の下方を湖に沈めた直後の場合、又は気密袋体20が膨張した状態(液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にある状態)から収縮した状態(液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にある状態)になった直後の場合に相当する。
【0067】
ここで、液体浄化装置1の下方を湖に沈めた直後の場合には、制御部24は、センサ26の初期化を行う(S01)。具体的には、液体によって加圧されていない状態の基準値を初期値として設定する。更に、蓄電池23の蓄電残量が十分である場合(S02・・Yes)には、制御部24は、タイマ初期化を行う(S03)。
【0068】
前述のとおり、汲水管16の内部の湖水に弾みを付けてサイフォンの効果を始動させるために、汲上口16aに設けられた図示しないポンプが一時的に作動する。液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあるため、汲水管16の内部でサイフォンの効果が生じて、液体浄化装置1は湖水の汲み上げを開始する。
【0069】
図3(B)は湖水の汲み上げ途中の一例を示すものである。汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和は、前述の通り、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなうように設計されている。そのため、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあり続けることができ、液体浄化装置1は湖水の汲み上げを継続する。また、液体保持体10の内部では、汲み上げられた湖水がフィルタ部14を通過して浄化される。更に、制御部24は、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLがセンサ26の設置高さに達するまで、その制御を待機させている(S04・・No)。
【0070】
図3(C)は湖水の汲み上げ終了の一例を示すものである。液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLがセンサ26の設置高さに達したとき、センサ26は水面を検知する(S04・・Yes)。これにより、制御部24は、気体ポンプ21をONにする(S05)。気体ポンプ21は、通気管15を介して取り込んだ空気を圧縮し、その圧縮された空気を気密袋体20の内部へ吸排気管22を介して送気し始める。
【0071】
図3(D)は浄化済みの湖水の排水開始の一例を示すものである。気密袋体20の内部に圧縮された空気が送気されることにより、気密袋体20が膨張する。そうすると、気密袋体収容部12の内部を満たしていた湖水が気密袋体収容部12の外部へ孔12a、12bを介して放出される。これにより、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和は液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量よりも小さくなるため、液体浄化装置1は上昇する。
【0072】
このとき、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLは、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にある状態から、一時的に、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLと同一の位置にある状態に達するため、液体浄化装置1はサイフォンの効果を失う。これにより、液体浄化装置1は湖水の汲み上げを停止する。
【0073】
更に液体浄化装置1が上昇すると、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLは液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にある状態になる。これにより、ポテンシャル(位置)エネルギーに差が生じ、液体保持体10の内側において浄化された湖水は、排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出される。
【0074】
なお、汲上口16aは、液体保持体10の内部から浄化前の湖水が汲水管16を介して排出することを防ぐための逆止弁を有することが好ましい。
【0075】
図3(E)は浄化済みの湖水の排水途中の一例を示すものである。制御部24は、液体保持体10の内部を満たした湖水が排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出するのに最低限必要な時間(Tmax)を経過するまで、カウントを行う(S06、S07・・No)。その間、液体保持体10の内部では、汲み上げられた湖水がフィルタ部14を通過して浄化され、その浄化された湖水が、排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出される。
【0076】
図3(F)は浄化済みの湖水の排水終了の一例を示すものである。制御部24は、液体保持体10の内部を満たした湖水が排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出するのに最低限必要な時間(Tmax)を経過すると(S07・・Yes)、気体ポンプ21をOFFにする(S08)。このとき、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが排水管13aよりも低い位置にある状態になり、浄化された湖水の全てが、排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出されたことになる。
【0077】
液体浄化装置1がもっとも上昇した状態においては、液体浄化装置1が横転する可能性が高くなるため、気体ポンプ21および蓄電池23などを重りにして、液体浄化装置1の横転を回避することが好ましい。なお、同一の理由により、気密袋体収容部12の比重を液体保持体10の比重よりも高めに設計してもよい。
【0078】
気体ポンプ21がOFF状態になると、気密袋体20の内部を満たしていた圧縮された空気が吸排気管22及び通気管15を介して放出するので、気密袋体20は収縮する。そうすると、液体浄化装置1の外側の湖水は、気密袋体収容部12の内部を満たすように、孔12a、12bから気密袋体収容部12の内部に侵入する。これにより、沈み込んだ液体浄化装置1の質量が、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなるため、液体浄化装置1が降下し、湖水の汲み上げ開始の状態に戻る(図3(A)参照)。
【0079】
このとき、制御部24は、蓄電池23に対して次に汲み上げる湖水を浄化して排出するのに必要な電力を供給できるか否かをチェックし(S02)、上記処理(S02〜S08、図3(A)〜(F))を再度繰り返す。
【0080】
なお、蓄電池23に十分な電力が残されていない場合には(S02・・No)、制御部24は、蓄電池23の充電又は交換が必要である旨を警告して(S09)、蓄電池23の充電又は交換を促す。
【0081】
次に、本発明の第2実施形態を以下に説明する。
【0082】
なお、本実施形態は、前述の第1実施形態と比較し、気密袋体20を膨張及び収縮するための気体ポンプ21の制御処理のみが相違するものである。従って、その相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一構成および同一の処理については、説明を省略する。
【0083】
第1実施形態では、図3及び図4に示すように、液体保持体10の内部を満たした湖水が排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出するのに最低限必要な時間(Tmax)を設定した場合、制御部24は、気体ポンプ21をONにしてから最低限必要な時間Tmaxを経過することを条件に気体ポンプ21をOFFにする制御をおこなう例を示した。
【0084】
これに対して、本実施形態では、液体保持体10の内部を満たした湖水が排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出するのに最低限必要な気体ポンプ21の送付量(Vmax)を設定する。この場合、制御部24は、気体ポンプ21をONにしてから最低限必要な気体ポンプ21の送付量Vmaxを超えた場合、気体ポンプ21をOFFにする制御をおこなう。
【0085】
具体的には、第2実施形態の液体浄化装置1の一連の浄化処理方法を図3および図5を参照して説明する。
【0086】
液体浄化装置1の浄化処理方法のうち、図3(A)は湖水の汲み上げ開始の一例を示すものである。これは、液体浄化装置1の下方を湖に沈めた直後の場合、又は気密袋体20が膨張した状態(液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にある状態)から収縮した状態(液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にある状態)になった直後の場合に相当する。
【0087】
ここで、液体浄化装置1の下方を湖に沈めた直後の場合、制御部24は、図5に示すように、センサ26の初期化を行う(S11)。具体的には、液体によって加圧されていない状態の基準値を設定する。更に、蓄電池23の蓄電残量が十分である場合(S12・・Yes)には、制御部24は、送付量初期化を行う(S13)。
【0088】
前述のとおり、汲水管16の内部の湖水に弾みを付けることによりサイフォンの効果を始動させるため、汲上口16aに設けられた図示しないポンプが一時的に作動する。液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあるため、汲水管16の内部においてサイフォンの効果が生じて、液体浄化装置1は湖水の汲み上げを開始する。
【0089】
図3(B)は湖水の汲み上げ途中の一例を示すものである。汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和は、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなうように設計されている。このことから、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLは液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にあり続けることができるので、液体浄化装置1は湖水の汲み上げを継続する。また、液体保持体10の内部では、汲み上げられた湖水がフィルタ部14を通過して浄化される。更に、制御部24は、図5に示すように、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLがセンサ26の設置高さに達するまで、その制御を待機する(S14・・No)。
【0090】
図3(C)は湖水の汲み上げ終了の一例を示すものである。液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLがセンサ26の設置高さに達したため、図5に示すように、センサ26は水面を検知する(S14・・Yes)。これにより、制御部24は、気体ポンプ21をONにする(S15)。気体ポンプ21は、通気管15を介して取り込んだ空気を圧縮し、その圧縮された空気を気密袋体20の内部へ吸排気管22を介して送気し始める。
【0091】
図3(D)は浄化済みの湖水の排水開始の一例を示すものである。気密袋体20の内部に圧縮された空気が送気されることにより、気密袋体20が膨張する。その結果、気密袋体収容部12の内部を満たしていた湖水が孔12a、12bを介して気密袋体収容部12の外部へ放出される。これにより、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和は、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量よりも小さくなるため、液体浄化装置1が上昇する。このとき、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLは、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも高い位置にある状態から、一時的に、液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLと同一の位置にある状態に達するため、液体浄化装置1はサイフォンの効果を失う。これにより、液体浄化装置1は湖水の汲み上げを停止する。
【0092】
更に液体浄化装置1が上昇すると、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にある状態になるため、ポテンシャル(位置)エネルギーの差が生じる。その結果、浄化された湖水は、排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出される。
【0093】
なお、汲上口16aは、液体保持体10の内部から浄化前の湖水が汲水管16を介して排出することを防ぐための逆止弁を有することが好ましい。
【0094】
図3(E)は浄化済みの湖水の排水途中の一例を示すものである。制御部24は、液体保持体10の内部を満たした湖水が排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出するのに最低限必要な気体ポンプ21の送付量(Vmax)を経過するまで、カウントを行う(S16、S17・・No)。その間、液体保持体10の内部では、汲み上げられた湖水がフィルタ部14を通過して浄化され、浄化された湖水が、排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出される。
【0095】
図3(F)は浄化済みの湖水の排水終了の一例を示すものである。図3(F)及び図5に示すように、液体保持体10の内部を満たした湖水が排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出するのに最低限必要な気体ポンプ21の送付量(Vmax)を超えた場合(S17・・Yes)、制御部24は、気体ポンプ21をOFFにする制御をおこなう(S18)。このとき、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが排水管13aよりも低い位置にある状態になり、浄化された湖水の全てが排水管13aを介して液体保持体10の外へ排出されたことになる。
【0096】
液体浄化装置1がもっとも上昇した状態においては、液体浄化装置1が横転する可能性が高くなるため、気体ポンプ21および蓄電池23などを重りにして、液体浄化装置1の横転を回避することが好ましい。なお、同一の理由により、気密袋体収容部12の比重を液体保持体10の比重よりも高めに設計してもよい。
【0097】
気体ポンプ21がOFF状態になると、気密袋体20の内部を満たしていた圧縮された空気が吸排気管22及び通気管15を介して放出し、気密袋体20が収縮する。そうすると、湖水は、気密袋体収容部12の内部を満たすように、孔12a、12bを介して気密袋体収容部12の内部に侵入する。これにより、沈み込んだ液体浄化装置1の質量が液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とほぼ等しくなるため、液体浄化装置1は降下し、湖水の汲み上げ開始の状態に戻る(図3(A)参照)。
【0098】
このとき、図5に示すように、制御部24は、蓄電池23に対して次に汲み上げる湖水を浄化して排出するのに必要な電力を供給できるか否かをチェックして(S12)、上記処理(S12〜S18、図3(A)〜(F))を再度繰り返す。
【0099】
なお、図5に示すように、蓄電池23に十分な電力が残されていない場合には(S12・・No)、制御部24は、蓄電池23の充電又は交換が必要である旨を警告して(S19)、蓄電池23の充電又は交換を促す。
【0100】
以上説明した以外の構成および処理は、第1実施形態と同じである。
【0101】
次に、本発明の第3実施形態を以下に説明する。
【0102】
なお、本実施形態は、前述の第1実施形態または第2実施形態と比較し、排水管13aに替えて排水管17を用いることのみが相違するものである。従って、その相違点を中心に説明し、第1実施形態または第2実施形態と同一構成および同一の処理については、説明を省略する。
【0103】
第1実施形態または第2実施形態では、排水管13aは、図1及び図2に示すように、液体保持体10の側面下方に設けられており、液体保持体10の内部に保持された湖水を排水する例を示した。
【0104】
これに対して、本実施形態では、サイフォンの原理を利用した汲水管16と一部の構成のみが異なる排水管17を用いて、液体保持体10の内部に保持された水を排水する。
【0105】
具体的には、第3実施形態の液体浄化装置1において図6を参照して説明する。
【0106】
第3実施形態の液体浄化装置1においては、図6に示すように、サイフォンの効果を生じさせるために、パイプ状の排水管17の一方(出発地点)が液体保持体10の内部に配置されており、その他方(目的地点)が湖の排水したい部分(一般的には、浄化が特に必要な湖底や海底など)に配置されている。
【0107】
また、排水管17内の浄化済み湖水に弾みを付けてサイフォンを始動するために、排出口17aには図示しないポンプが設けられており、その排水時(例えば、気密袋体20が膨張した直後など)にその排出用ポンプが一時的に作動する。そして、図6に示すように、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にあるため、上記サイフォンの効果が生じて、浄化済み湖水を排水することができる。
【0108】
浄化済み湖水の排水時において、発生したサイフォンの効果が継続的に生じるようにするためには、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にあり続ける必要がある。
【0109】
そこで、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にあり続けるようにするため、気密袋体20が膨張した状態において、汲み上げた湖水の質量と沈み込んだ液体浄化装置1の質量の和が、液体浄化装置1の沈み込みにより排除された湖水の質量とよりも小さくなるようにする必要がある。
【0110】
つまり、気密袋体20が膨張した状態で、沈み込んだ液体浄化装置1の比重が、1未満となるようにする必要がある。これにより、浄化済み湖水の排水時において、液体浄化装置1の外側に位置する湖の水面レベルOLLが液体保持体10の内側に汲み上げられた湖水の水面レベルILLよりも低い位置にあり続けることができ、その結果、サイフォンの効果を継続的に生じさせることができる。
【0111】
なお、排出口17aは、湖水の汲み上げ時において、液体保持体10の外部から内部へ湖水が排水管17を介して侵入することを防ぐための逆止弁を有することが好ましい。
【0112】
以上説明した以外の構成および処理は、第1実施形態または第2実施形態と同じである。
【0113】
次に、本発明の第4実施形態を以下に説明する。
【0114】
なお、本実施形態は、前述の第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態と比較して、例えば図7(A)に示すように、流入管13bおよび連結管18を用いて複数個の液体浄化装置1を互いに連結させている。これにより、複数個の液体浄化装置1を1つの大きな液体浄化装置として浄化処理を複数回行う点が相違するものである。従って、その相違点を中心に説明し、第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態と同一構成および同一の処理については、説明を省略する。
【0115】
第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態では、液体浄化装置1の単体で湖水を浄化する例を示した。
【0116】
これに対して、本実施形態では、例えば図7(A)に示すように、1つの大きな液体浄化装置を構成する複数個の液体浄化装置1を連結管18で互いに連結させることによって、汲み上げた湖水が各液体浄化装置1に設けられたフィルタ部14を通過する毎に浄化される。
【0117】
具体的には、第4実施形態の液体浄化装置1において図7を参照して説明する。
【0118】
第4実施形態では、例えば、図7(A)に示すように、4つ液体浄化装置1a〜1dを一列に配置する。
【0119】
液体浄化装置1aには、汲水管16が用いられ、前述のとおり、サイフォンの原理によって液体保持体10aの内部に湖水を汲み上げる。汲水管16によって汲み上げられた湖水は、フィルタ部14を通過することによって浄化される。
【0120】
液体保持体10aの内部で浄化された湖水は、液体保持体10aに備えられた排水管13aと液体保持体10bに備えられた流入管13bとをつなぐ連結管18を介して、逆サイフォンの原理によって液体保持体10bの内部に流れ込む。
【0121】
ここで、逆サイフォンの原理とは、隙間のない管を利用して、液体を出発地点から目的地点まで、途中出発地点より低い地点を通って導く原理をいう。逆サイフォンの効果を生じさせるには、出発地点の液面レベルが目的地点の液面レベルよりも高い位置にある必要がある。高低差によって、ポテンシャル(位置)エネルギーの差が生じて出発地点の液体が目的地点へ移動する。
【0122】
液体保持体10bの内部に移動した湖水は、フィルタ部14を通過することによって更に浄化され、液体保持体10bの内部で浄化された湖水は、液体保持体10bに備えられた排水管13aと液体保持体10cに備えられた流入管13bとをつなぐ連結管18を介して、逆サイフォンの原理によって液体保持体10cの内部に流れ込む。
【0123】
更に、液体保持体10cの内部に移動した湖水は、フィルタ部14を通過することによって更に浄化され、液体保持体10cの内部で浄化された湖水は、液体保持体10cの排水管13aと液体保持体10dの流入管13bとをつなぐ連結管18を介して、逆サイフォンの原理によって液体保持体10dの内部に流れ込む。
【0124】
最後に、液体保持体10dの内部に移動した湖水は、フィルタ部14を通過した後にサイフォンの原理を利用した排水管17によって排出される(図7(B)参照)。
【0125】
なお、流入管13bは、図示しないが、逆流を防ぐための逆止弁を有することが好ましい。
【0126】
以上説明した以外の構成および処理は、第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態と同じである。
【0127】
なお、本発明は、前述した第1〜4実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0128】
第1〜4実施形態においては、液体保持体10及び気密袋体収容部12が円柱形に形成されているが、他の実施形態においては多角柱形(例えば、四角柱形など)に形成されてもよい。
【0129】
また、第1〜4実施形態においては、各液体保持体10にフィルタ部が一層のみ設けられているが、多層のフィルタ部を設けることにより1個の液体浄化装置1で第4実施形態の液体浄化装置1と同様の多段浄化処理をおこなってもよい。
【0130】
また、サイフォンの効果をより一層発揮させるために、汲水管16又は排水管17の最高地点近傍に空気室を設けて、管内に溜まった空気を空気室に取り込んで、管内の真空状態を維持させてもよい。
【0131】
また、第1〜4実施形態においては、蓄電池23の充電作業又は交換作業が必要とするが、例えば、太陽光発電装置を沈下防止部11の上面などに配置させ、蓄電池23への電力供給をおこなってもよい。
【0132】
また、第1〜4実施形態においては、蓄電池23を用いて気体ポンプ21への電力供給をおこなっているが、外部から商用電源を用いて気体ポンプへの電力供給をおこなってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 液体浄化装置
10 液体保持体
11 沈下防止部
12 気密袋体収容部
13a 排水管
16 汲水管
20 気密袋体
21 気体ポンプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイフォンの原理を利用して外部の液体を汲み上げる汲水管と、
汲み上げられた前記液体を保持すると共に前記液体の比重と略同一の比重とすることによって前記外部の液体に浮き沈みするように形成された液体保持体と、
気体ポンプと、
前記液体保持体の下方に配置されると共に前記気体ポンプにより加圧された気体が注入されると伸縮によって体積を変化させる気密袋体と、
前記液体保持体内に配置されると共に汲み上げられた前記液体を浄化するフィルタ部と、
前記気体ポンプが前記気密袋体内に気体を注入して前記液体保持体を浮上させることにより前記液体保持体において前記フィルタ部を通過させた前記液体を外部へ排水させる排水管と
を備えていることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項2】
サイフォンの原理を利用して外部の液体を汲み上げる汲水管と、
汲み上げられた前記液体を保持すると共に前記液体の比重と略同一の比重とすることによって前記外部の液体に浮き沈みするように形成された複数の液体保持体と、
気体ポンプと、
前記液体保持体の下方にそれぞれ配置されると共に前記気体ポンプにより加圧された気体が注入されると伸縮によって体積を変化させる気密袋体と、
前記液体保持体内にそれぞれ配置されると共に汲み上げられた前記液体を浄化するフィルタ部と、
前記複数の液体保持体のうち1の液体保持体から他の液体保持体を連結すると共に前記気体ポンプが前記気密袋体内に気体を注入して前記複数の液体保持体を浮上させることにより前記フィルタ部を通過させた前記液体を1の液体保持体から他の液体保持体へ移送する1又は2以上の連結管と、
前記気体ポンプが前記気密袋体内に気体を注入して前記液体保持体を浮上させることによって前記液体保持体において前記連結管を通過させた前記液体を外部へ排水させる排水管と
を備えていることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項3】
前記連結管は、逆サイフォンの原理を利用して前記液体を前記1の液体保持体から前記他の液体保持体へ移送することを特徴とする請求項2に記載の液体浄化装置。
【請求項4】
前記排水管は、サイフォンの原理を利用して前記液体を外部へ排水させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液体浄化装置。
【請求項5】
前記液体保持体は、当該液体保持体の上面が前記外部の液体面以下になることを防止する沈下防止部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体浄化装置。
【請求項6】
前記気密袋体は、前記液体保持体の底面に設けられた気密袋体収容部内に前記外部の流体と共に収容され、前記気密袋体収容部に1又は2以上の孔を有することによって、前記気体ポンプの送気により前記気密袋体が膨張するときには前記外部の流体を気密袋体収容部内から前記1又は2以上の孔を介して流出させる一方、前記気体ポンプの排気又は前記気密袋体収容部内の前記外部の流体の水圧により前記気密袋体が収縮するときには前記外部の流体を気密袋体収容部内へ前記1又は2以上の孔を介して流入させるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液体浄化装置。
【請求項7】
前記気体ポンプは、前記気密袋体を膨張させるときにのみ作動することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液体浄化装置。
【請求項8】
前記液体保持体の底面又は前記気密袋体収容部は、前記液体保持体に作用する浮力を調整する重りを有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の液体浄化装置。
【請求項9】
前記気体ポンプは、少なくとも前記気密袋体へ加圧された気体の送気時間または送気量を制御する制御部と前記気体ポンプの駆動用としての電源を供給する蓄電池を備えていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液体浄化装置。
【請求項10】
前記重りは、前記気体ポンプ又は前記蓄電池であることを特徴とする請求項9に記載の液体浄化装置。
【請求項11】
前記フィルタ部は、物理フィルタ、生物フィルタ、化学フィルタおよびその他の液体浄化に用いられるフィルタのうち1種又は2種以上から形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の液体浄化装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−251259(P2011−251259A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127423(P2010−127423)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【特許番号】特許第4809489号(P4809489)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(510154796)株式会社Intelligence Station (4)
【Fターム(参考)】