説明

液体消臭剤

【課題】 様々な臭いが混在するような繊維製品に対して高い消臭性能を示す消臭剤の提供。
【解決手段】 (a)緑茶の乾留による抽出物0.001〜2.0重量%と、(b)リン酸類及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種のpH緩衝効果を有する化合物0.1〜2.0重量%とを含有し、水分量が80〜99重量%、且つ25℃でのpHが6.0〜8.0の液体消臭剤、並びにこの液体消臭剤を手動式噴霧装置付き容器に充填した液体消臭剤物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消臭剤及びそれを充填した液体消臭剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯習慣の変化により、着用した衣料はその都度洗濯することが一般的になっているが、スーツやセーター等の衣料は一般家庭では洗濯が難しく、洗濯回数も一般の衣料に比べて格段に少ない。このため、体臭、たばこ臭、焼き肉等の調理臭が混在して付着し、不快感を生じさせる。また、絨毯や玄関マット等も同様に洗濯することが難しく、部分的な汚れに由来する不快臭の問題がある。
【0003】
かかる不快臭の問題を解決するために、特許文献1及び特許文献2に開示されているように消臭剤に植物エキス等の消臭成分を配合したり、組成物に緩衝能を持たせることが行われている。しかしこれらの方法は、植物エキス等の消臭性能が満足のいくレベルでなかったり、緩衝能により消臭できる臭い以外の悪臭には充分な消臭性能を発現出来ない場面がある。例えば、たばこ臭や焼き肉臭などの各々の臭い成分には効果を示しても、たばこ臭と焼き肉臭が混在する場合には十分な効果を発現出来ないといった場面が発生する。
【特許文献1】特開昭61−193665号公報
【特許文献2】特開平4−257514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、様々な臭いが混在するような繊維製品に対して高い消臭性能を示す消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)緑茶の乾留による抽出物0.001〜2.0重量%と、(b)リン酸類及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種のpH緩衝効果を有する化合物0.1〜2.0重量%とを含有し、水分量が80〜99重量%、且つ25℃でのpHが6.0〜8.0の液体消臭剤、並びにこの液体消臭剤を手動式噴霧装置付き容器に充填した液体消臭剤物品を提供する。
【0006】
また本発明は、更に、(c)分子中に4級アンモニウム基又はアミンオキサイド基を少なくとも1個、炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を1〜2個有する化合物を0.1〜2.0重量%含有する上記液体消臭剤及び液体消臭剤物品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体消臭剤及び液体消臭剤物品は、衣料等の各種繊維製品に対して優れた消臭性能を発揮し、特にたばこ臭や焼き肉臭等の様々な臭いが混在するような繊維製品に対して高い消臭性能を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は緑茶の乾留による抽出物である。緑茶の乾留による抽出物とは、緑茶の乾燥した葉を減圧条件下、加熱することにより気化した成分を乾留物として抽出したものである。減圧下で加熱する工程の条件としては、圧力は消臭性能を有する化合物の性能を損なうことなく効率的に抽出出来る観点から、0.67〜13kPa(5〜100mmHg)が好ましく、1.3〜11kPa(10〜80mmHg)がより好ましく、2〜6.7kPa(15〜50mmHg)が特に好ましい。加熱温度は100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましく、140〜200℃が更に好ましい。具体的な抽出方法としては、繊維工学,Vol.40,No.3(1987)のP132〜140に記載されている方法を参考に出来る。乾留物として抽出した成分を用いることで対象物の着色を抑制することもできる。
【0009】
本発明の(a)成分として、市販の緑茶乾留抽出物等を用いることもできる。特に、白井松新薬(株)製の緑茶乾留エキス(フレッシュシライマツ)が、消臭性能に優れ、更に白物衣料に噴霧しても黄変せず好ましい。
【0010】
[(b)成分]
本発明の(b)成分はリン酸類及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種のpH緩衝効果を有する化合物であり、カルボン酸類から選ばれる少なくとも1種のpH緩衝効果を有する化合物が好ましい。ここでpH緩衝効果を有する化合物とは、pHが6.0〜8.0の範囲外に変動するのを抑制する性能を有する化合物である。
【0011】
(b)成分のうち、リン酸類としては、リン酸、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム等が挙げられる。また、カルボン酸類としては、乳酸、グルコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸、フタル酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、ジエチルバルビツル酸、あるいはこれらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアミン塩等が挙げられる。
【0012】
これら(b)成分の中では、リン酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸又はこれらのアルカリ金属塩が好ましく、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、クエン酸、クエン酸2ナトリウム、クエン酸3ナトリウムが更に好ましく、クエン酸、クエン酸2ナトリウム、クエン酸3ナトリウムが特に好ましい。
(b)成分は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
[(c)成分]
本発明の(c)成分は、分子中に4級アンモニウム基又はアミンオキサイド基を少なくとも1個、炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を1〜2個有する化合物であり、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、スルホベタイン、カルボベタイン、アミンオキシド等の両性界面活性剤を挙げることができる。これらの中でも好ましくは炭素数8〜22、特に炭素数8〜18のアルキル基もしくはアルケニル基を1つ有する4級アンモニウム塩又はアミンオキシド型界面活性剤、より好ましくは下記一般式(I)で表される4級アンモニウム塩及び一般式(II)又は(III)で表されるアミンオキシドであり、最も好ましくは一般式(II)又は(III)で表されるアミンオキシドである。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、R1は炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R5は炭素数1〜5のアルキレン基であり、Yは−CONR6−、−NR6CO−、−COO−又は−OCO−(ここで、R6は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す)であり、X-は陰イオンである。〕
一般式(I)〜(III)において、R1としては、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。R2、R3及びR4としては、メチル基又はエチル基が好ましい。R5としては、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましい。Yとしては、−CONH−、−COO−が好ましい。X-としては、ハロゲンイオン、炭素数1〜14の脂肪酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンが好ましい。
(c)成分は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
[液体消臭剤及び液体消臭剤物品]
本発明の液体消臭剤中の(a)成分の含有量は、消臭性能の観点から、0.001〜2.0重量%であり、0.01〜1.0重量%が好ましい。本発明の液体消臭剤中の(b)成分の含有量は、pHが本発明の範囲外に変動するのを抑制する観点から、0.1〜2.0重量%であり、0.1〜1.0重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。また、本発明の消臭剤が(c)成分を含有する場合、消臭剤中の(c)成分の含有量は、消臭持続性と繊維の風合い付与の観点から、0.1〜2.0重量%が好ましく、0.2〜1.5重量%が更に好ましい。
【0017】
本発明の液体消臭剤は、十分な消臭効果と繊維製品に対する風合いを損なわない観点から、水分量が80〜99重量%であり、90〜96重量%が好ましい。また、本発明の液体消臭剤の25℃でのpHは、十分な消臭効果を得る観点から、6.0〜8.0であり、6.5〜7.5が好ましい。
【0018】
本発明の液体消臭剤は、処理後の繊維製品からの消臭剤の揮発を容易にして乾燥させやすくするため、エタノールを1〜10重量%、更に2〜8重量%含有することが好ましい。なお、エタノールは変性エタノールを使用することができ、特に8−アセチル化蔗糖変性エタノール又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム変性エタノールを用いることが好ましい。
【0019】
香料成分は、マスキング作用を考慮して使用することで、より好まれる仕上がりになる。香料成分は、他の成分に影響されない化合物が選ばれる。
【0020】
本発明の液体消臭剤は、中性付近で緩衝能を有することで、(a)成分の中性付近での消臭性能が長期に渡り効果的に発現される。
【0021】
本発明の液体消臭剤には、さらに可溶化剤として、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、p−トルエンスルホン酸塩、m−キシレンスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸塩類を配合することができる。その他、色素、増粘剤等を所望により配合してもよく、エタノールを配合しないか又は配合量が少なく抗菌性が懸念される場合は、防腐・防黴剤、殺菌剤等を配合することが好ましい。
【0022】
本発明の液体消臭剤の使用方法としては、液体消臭剤をスプレー等により繊維製品に噴霧して使用する方法か、又は布帛、不織布、スポンジ等の可撓性で吸水性の基体に含浸させたもので繊維製品を拭くもしくは擦る方法が挙げられる。このうち、本発明の液体消臭剤を手動式噴霧装置付き容器に充填した液体消臭剤物品として用いるのが好ましい。手動式噴霧装置としてはトリガー式スプレー容器が好ましく、特に実開平4−37554号公報の第1図に示されているような液垂れや噴霧の均一性に優れる蓄圧式トリガーを用いることが好ましい。
【0023】
本発明の液体消臭剤の繊維製品に対する使用量は、擦る場合は湿らせる程度であり、噴霧の場合は繊維製品100〜800cm2 に対して、好ましくは0.2〜0.7gの割合である。
【実施例】
【0024】
実施例1
表1に示す各成分を用い、表1に示す組成の液体消臭剤を調製した。なお、液体消臭剤は、1/10規定NaOH又は1/10規定HClにより25℃でのpHを7に調整した。得られた液体消臭剤について、下記方法で消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
【0025】
<消臭性能の評価法>
下記方法で消臭対象布を調製し、市販の手動式スプレー容器(花王(株)製アイロン用スムーザー400mlの中身を抜いた手動式スプレー容器を匂いが無くなるまで洗浄し、自然乾燥させたもの)に、液体消臭剤を400ml充填し、消臭対象布の全体が一通り均一に湿るように噴霧を行った。その後、温度30℃で湿度が60%RHの調湿された室内で対象布を1時間放置したものについて下記方法で消臭性能を評価した。
・たばこ、焼き肉混在臭繊維製品の調製
5m×5mの密閉された喫煙室の1方の壁に、1m×1mの木綿金布2003#を床から布の上辺までの高さが3mになるように床に対して垂直に吊るした。この喫煙室で、2時間の間、10人の男性が各人3本づつのたばこを喫煙した。その後、IHクッキングヒーターを用いてタレをつけた牛肉を50gフライパン上で5分間焼くことで、たばこ臭と焼き肉臭が混在する布を調製した。上記布を20cm×20cmの試験片として実験に供した。
・消臭性能の評価
30歳代の男性及び女性10人(各5人ずつ)に消臭対象布のたばこと焼き肉の臭いを嗅ぎ分けてもらい、下記の六段階臭気強度表示法で評価し、平均点を求めた。平均点0以上1未満を◎、平均点1以上2未満を○、2以上3未満を△、3以上5以下を×とした。
【0026】
0:無臭
1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ(検知閾値のレベル)
2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い(認知閾値のレベル)
3:明らかに感じる臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
【0027】
【表1】

【0028】
*1:緑茶乾留エキス(白井松新薬(株)製、フレッシュシライマツ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)緑茶の乾留による抽出物0.001〜2.0重量%と、(b)リン酸類及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種のpH緩衝効果を有する化合物0.1〜2.0重量%とを含有し、水分量が80〜99重量%、且つ25℃でのpHが6.0〜8.0の液体消臭剤。
【請求項2】
(b)成分が、カルボン酸類から選ばれる少なくとも1種のpH緩衝効果を有する化合物である請求項1記載の液体消臭剤。
【請求項3】
更に、(c)分子中に4級アンモニウム基又はアミンオキサイド基を少なくとも1個、炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を1〜2個有する化合物を0.1〜2.0重量%含有する請求項1又は2記載の液体消臭剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の液体消臭剤を手動式噴霧装置付き容器に充填した液体消臭剤物品。

【公開番号】特開2007−77545(P2007−77545A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267930(P2005−267930)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】