説明

液体混合方法および液体混合装置

【課題】2種類以上の反応液を瞬時に混合することができる液体混合方法および液体混合装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の液体を回転ステージ20の中心部から回転ステージ20上に吐出して、複数の液体を積層させた積層体を形成する積層体形成工程と、積層体を回転ステージ20が回転する遠心力で中心部から外周部側に拡げることにより薄層化する薄層化工程と、薄層化した積層体を層間で拡散させることにより混合する混合工程と、を備えたことを特徴とする液体混合方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体混合方法および液体混合装置に係り、特に、液体を薄い層の積層構造を形成し、拡散により液体を混合する液体混合方法および液体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の流体を効率的に混合するための装置の一つとして、例えば、下記の特許文献1に記載されているマイクロデバイスは、例えば種類の液体を微細流路であるマイクロ流路の入口に合流させることで、均一な瞬時混合を行うことのできるように構成したものである。このマイクロデバイスは図4に示されるように、複数の流体F1、F2を薄片状の層流として流通させつつ、混合あるいは混合を伴う反応を行わせるマイクロ流路114と、マイクロ流路114に流体F1、F2を供給する2本の流体供給路118A、118BとによってY字型流路として形成される。そして、流体供給路118A、118Bに供給された流体F1、F2は、合流部120で1本のマイクロ流路114に合流し、これらの流体F1、F2を薄片状の層流として流通させつつ混合反応を行わせ、混合反応液FMはマイクロ流路114の末端から排出される。
【特許文献1】特開2005−77219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されているように流路をマイクロ化すると分子拡散による混合効果が大きくなる。分子拡散による拡散時間は、T=L/D(D:拡散係数、L:時間Tの間に分子が拡散して到達する代表的な距離)で示されるように、距離の2乗で影響する。したがって、拡散混合する複数種の液体が積層された積層体を、如何に薄くするかが重要になる。このため、マイクロデバイスの流路を微細幅の流路に形成する必要がある。
【0004】
しかしながら、流路幅を狭くすれば拡散時間が短縮される一方、製作加工が難しい、流路の圧力損失が大きくなり過ぎる、また、拡散混合により微粒子を生成する場合には微粒子で流路を目詰まりさせるなどの問題点があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、従来の問題点を解消でき、かつ、流体の流れを薄くすることができるので、迅速混合を行うことができる液体混合方法および液体混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、複数の液体を回転ステージの中心部から回転ステージ上に吐出して、前記複数の液体を積層させた積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を前記回転ステージが回転する遠心力で前記中心部から外周部側に拡げることにより薄層化する薄層化工程と、前記薄層化した積層体を層間で拡散させることにより混合する混合工程と、を備えたことを特徴とする液体混合方法を提供する。
【0007】
請求項1によれば、複数の液体を回転ステージの中心部から回転ステージ上に吐出して、液体の積層体を形成した後、回転ステージを回転させることにより、その遠心力で積層体を薄層化させることができる。したがって、その後の混合工程において、層間での拡散を迅速に行うことができるので、液体の混合を速やかに行うことができる。
【0008】
請求項2は請求項1において、前記回転ステージの回転速度を制御することにより、前記積層体の薄膜化を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2によれば、回転ステージの回転速度を制御することにより、液体の薄層化と、混合の終了を回転ステージ上で行うことができるように調節することができる。
【0010】
本発明の請求項3は前記目的を達成するために、回転ステージと、鉛直上向きに2種以上の液体を通過する流路を備える液体混合装置であって、前記流路は、前記回転ステージに対して垂直に設置され、前記流路の出口は、前記回転ステージの中心に設けられており、前記流路は、同心円状の多層管構造であることを特徴とする液体混合装置を提供する。
【0011】
請求項3によれば、液体を同心円状の多層管構造を有する流路から回転ステージ上に流出している。そして、回転ステージの回転により発生する遠心力によって、液体は円周方向に移動しながら、延ばされるため、液体の薄い積層体が回転ステージ上で形成される。その後、形成された積層体が、拡散により混合する。回転ステージの回転により液体は薄い層の積層体となっているため、拡散による混合で速やかに混合させることができる。
【0012】
請求項4は請求項3において、前記流路が二層、または三層以上の層状の多層管構造であることを特徴とする。
【0013】
請求項4によれば、流路を二層、または三層以上の層状の多層管構造とすることにより、回転ステージ上で液体の積層体を容易に形成することができる。また、三層以上の多層管構造とすることにより、反応させる液体の間に他の液体を積層させることができるので、流路からの吐出直後の反応を抑制することができ、流路吐出部付近での結晶の析出を抑制することができる。
【0014】
請求項5は請求項3または4において、前記流路の最外層の内径が3mm以上であり、最内層の内径が1mm以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項5によれば、流路の最外層の内径および最内層の内径を上記範囲とすることにより、回転ステージ上で形成される積層体の各層の厚さを薄くする(500μm以内とする)ことができるので、液体同士の混合を速やかに行うことができる。
【0016】
請求項6は請求項3から5いずれかにおいて、前記回転ステージの回転数が500rpm以上6000rpm以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、回転ステージの回転数を上記範囲とすることにより、遠心力により液体を薄層化するとともに、回転ステージ上で混合を終了させることができる。
【0018】
請求項7は請求項3から6いずれかにおいて、前記流路の最外層を通過する液体と、前記回転ステージとの接触角が90°以下であることを特徴とする
請求項5によれば、流路の最外層を通過する液体、つまり、回転ステージ上に流出した際に回転ステージと接する液体と回転ステージの接触角を上記範囲とすることにより、速やかに回転ステージ上で流体が円周方向に移動することができ、好ましい。
【0019】
請求項8は請求項3から7いずれかにおいて、前記液体を混合し、反応させることにより、微粒子を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明の液体混合装置は、液体の合流場が回転ステージ上であるため、混合により微粒子が形成する場合において、流路を目詰まりさせることがないので、効果的に用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回転ステージの中心部から複数の液体を流出し、回転ステージを回転させることで、遠心力により、各液体が円周方向に移動すると同時に、各反応液を薄層化することができ、さらに、拡散による混合を瞬時に行うことができる。また、従来のように、マイクロ流路内で混合させないので、混合液が流路壁面と接し、流路内にて滞留することがなく、また、微粒子が生成する場合においても、目詰まりを起こすことがなく、液体を効率よく混合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って、本発明に係る液体混合装置の好ましい実施の形態について説明する。図1は本発明にかかる液体混合装置の概略を表わす斜視図、図2は液体を流通した際の液体混合装置の断面図である。
【0023】
本発明の液体混合装置10は、回転ステージ20と、液体を通過させる流路30とから形成されている。回転ステージ20と流路30は、回転ステージ20に対して垂直に設置され、流路30を通過しノズル31から流出された反応液が回転ステージ20上の各方向に均一に広がるように設置されていることが好ましい。また、均一に拡げるため、流路30は回転ステージ20の中心に設置されている。
【0024】
流路30は、各反応液を個別に通過させるため、同心円な多層管構造に形成されている。流路30に対応して、ノズル31も同様に同心円状に形成されている。流路30、ノズル31を通過した各反応液は、ノズル31から吐出直後に合流する。
【0025】
図1においては、流路30を三層状の多層管構造で行っているが、層の数は限定されず、混合させる液体の数に応じて、増やすことができる。なお、三層とすることにより、最外層と最内層に同一の液を通過させ、中間層の別の溶液を通過させることにより、回転ステージ20上で積層された中間層の液体を上層および下層から拡散により反応させることができるので、迅速に混合を行うことができる。
【0026】
また、流路30の内径は、回転ステージ20上に液体が流出した際、各反応液が500μm以下の厚みの層を形成することができれば、特に限定されないが、好ましくは、最外層の内径は、3mm以上であり、最内層の内径が1mm以上であることが好ましい。
【0027】
また、ノズル31の先端は、図2に示すように、外層から内層にいくにつれ、突出差を設けることにより、外層から吐出された液体の上に内層から吐出された液体を積層し易くすることができる。図2によれば、流路30の最外層から吐出した液体Cが回転ステージ20上で積層体の下層となり、以下、液体Bが中間層、流路30の中心から吐出した液体Aが積層体の上層となる。
【0028】
内層とその外層との突出差L1および回転ステージ20とその内層との突出差L2は50μm以上300μm以下であることが好ましい。突出差が上記範囲より狭くなると、液体の積層体を形成することが困難であり、逆に広くなると各層が厚くなるため、薄層化が困難となり混合に時間がかかる場合がある。
【0029】
ノズル31から吐出した各液体は、回転ステージ20の回転により、図2に示すように、遠心力で回転ステージ20の外周部側に移動する。図3は回転ステージ20上の外周部付近の液体の積層体の図である。積層体は、遠心力により強制的に薄層化される。薄層化された液体は、図3に示すように、回転ステージ20上で、中間層の液体Bは上層の液体A、下層の液体Cとの間で、拡散による混合が始まる。液体は遠心力により薄層化しているため、瞬時に終わらせることができる。
【0030】
このとき、回転ステージ20の回転数は500rpm以上6000rpm以下であることが好ましい。回転数を上記範囲とすることにより、効率よく回転ステージ20上に流出した液を薄層化することができ、かつ、回転ステージ20上にて混合を終了させることができる。同様に、液体の粘度は1mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましい。液体の粘性が高くなると、遠心力による薄層化が起こりにくく、また、拡散による混合にも時間がかかるため、粘度を上記範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明の液体混合器に用いる液体としては、単に液体を混合させるのみではなく、液体を混合させることにより、溶解度を変化させ、微粒子の析出、形成を行う流体を用いることができる。
【0032】
なお、用いる液体としては、流路30の最外層を通過する液体、つまり、回転ステージ20上に流出した際に、回転ステージ20と接する液体は、回転ステージ20との接触角が90°以下であることが好ましい。接触角が大きく、回転ステージとの濡れ性が悪いと、反応液の薄層化、および、移動が効率よく行われず、混合不良が起こる可能性がある。
【0033】
また、ビルドアップによる単分散ナノ粒子析出法、例えば、顔料粒子析出を行うのであれば、顔料溶解液はできるだけ固体壁のような部分(本発明においては、回転ステージ20)に触れないように流すことが好ましい。つまり、回転ステージ20上で複数の液体のより積層体が形成された場合、積層体の最上層となるように顔料溶解液を流すことが好ましい。これは、顔料溶解液を最上層とすることにより、片側は空気(気相)に触れていることになり、その下層にある貧溶媒とのみ反応させることができるので、より均一に反応させることができる。仮に、回転ステージ20に接触(積層体の最下層)させて顔料溶解液を流すと、回転ステージと接触することにより、粒子析出が促進されてしまう可能性があり、好ましくない。
【0034】
このようにして形成された混合液は、回転ステージ20の外周から放出される。
【0035】
また、流路30から吐出された液体を混合させるのみでなく、滴下装置40により、回転ステージ20上で混合された混合液に別の液体を滴下し、混合または反応させることもできる。これにより、ノズル31からと出した液体を混合させたのち、滴下装置40からの液体を混合させるなどのステップ混合をすることも可能である。滴下装置40から滴下する液体についても、流路30を通過する液体と同様の物性の液体を用いることができる。
【0036】
次に本発明の液体混合方法および液体混合装置に用いられる材料について説明する。
【0037】
混合させ微粒子を形成する場合には、良溶媒に粒子形成材料を溶解した材料溶液と、良溶媒と相溶し粒子形成材料に対して貧溶媒である貧溶媒溶液と、を接触させて良溶媒中の粒子形成材料の溶解度を変化させることにより、微粒子を析出させることができる。粒子形成材料としては、顔料、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、バナジン酸ビスマス、ルチル型混合相顔料、ハロゲン化銀、シリカ、及びカーボンブラックなどを用いることができるが、これらに限定されず使用することができる。
【0038】
有機顔料としては、色相的に限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料であることができる。詳しくは、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンまたはイソビオラントロン系顔料またはそれらの混合物などのマゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料である。更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料である。
【0039】
好ましい顔料は、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ジスアゾ縮合系、アゾ系、またはフタロシアニン系、ジオキサジン系顔料である。
【0040】
次に、良溶媒について説明する。有機顔料を溶解する良溶媒としては、使用する有機顔料を溶解することができ、かつ貧溶媒との相溶する又は均一に混ざるものであれば、特に限定されない。良溶媒に対する有機顔料の溶解度は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この有機顔料の溶解度は、特に上限はないが、通常用いられる有機材料を考慮すると、50質量%以下であることが実際的である。なお、上記有機顔料の溶解度は、酸又はアルカリの存在下の溶解度であってもよい。
【0041】
貧溶媒と良溶媒との相溶性又は均一混合性は、貧溶媒に対する良溶媒の溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好まく、90質量%以上であることが最も好ましい。つまり、貧溶媒に対する良溶媒の溶解量は、特に上限はないが、任意の割合で混ざり合う範囲であるのが実際的である。
【0042】
良溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が好ましく、水性溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒がさらに好ましく、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が特に好ましい。
【0043】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0044】
本発明において、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体又は有機顔料と無機顔料の組み合わせも使用することができる。有機顔料は、良溶媒中に均一に溶解されなければならないが、酸性又はアルカリ性で溶解することも好ましい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が用いられ、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。たとえば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で溶解され、フタロシアニン系顔料は、酸性で溶解される。
【0045】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基である。使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは2.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは3〜20モル当量である。有機塩基の場合は好ましくは顔料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0046】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
【0047】
アルカリ又は酸を有機溶媒と混合した良溶媒を用いる場合、アルカリ又は酸を良溶媒に完全に溶解させるため、アルカリ又は酸に対して高い溶解性を示す溶剤を、有機溶媒に添加することが好ましい。このような溶剤としては、たとえば、水や低級アルコール等が挙げられる。低級アルコールとしては、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール等を使用できる。溶剤量は、良溶媒全量に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0048】
次に貧溶媒について説明する。有機顔料を溶解しにくい貧溶媒としては、有機顔料を溶解する良溶媒と相溶する又は均一に混ざるものであれば、特に限定されない。このような貧溶媒は、有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。貧溶媒に対する有機顔料の溶解度は、特に下限はない。この溶解度は、酸又はアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性の好ましい範囲は前述の通りである。
【0049】
貧溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、又は塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒またはエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0050】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0051】
本発明では、均一に溶解した溶液を流路に投入することが好ましい。懸濁液を投入すると粒子サイズが大きくなったり、粒子分布が広い顔料微粒子になったりする。場合によっては容易に流路を閉塞してしまう。「均一に溶解」の意味は可視光線下で観測した場合にほとんど濁りが観測されない溶液であり、本発明では1μm以下のミクロフィルターを通して得られる溶液、または1μmのフィルターを通した場合に濾過される物を含まない溶液を均一に溶解した溶液と定義する。
【0052】
顔料微粒子を形成する場合、顔料溶液または貧溶媒溶液のいずれか、または両方に分散剤を添加することが好ましい。分散剤は析出した顔料微粒子に素早く吸着して、顔料微粒子同士が再び凝集することを防止するからである。分散剤には、一般的にアニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両イオン分散剤、顔料性分散剤の低分子、及び高分子分散剤がある。
【0053】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
【0056】
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
顔料性分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料分散剤、スルホンアミド基を有する顔料分散剤、エーテル基を有する顔料分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料分散剤などがある。
【0058】
高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール一部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール一部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル―メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、アニオン性分散剤を水性媒体に含有させ、かつノニオン性分散剤および/または高分子分散剤を、顔料を溶解した溶液に含有させる態様を挙げることができる。
【0059】
分散剤の配合量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、更に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0060】
次に、製造された顔料微粒子の粒径サイズの計測法について説明する。製造された顔料微粒子の体積平均粒径は動的光散乱法によって測定することができる。具体的には、動的光散乱法を採用した粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LB−500)を用いて測定することができる。
【実施例】
【0061】
1.2液混合
二層の多層管構造を有する流路を用いて、2液の混合を行った。液は、フェノールフタレインpH指示薬入りのpH8の酸性水溶液(無色)と、pH12のアルカリ水溶液を用いて行った。ノズル中心から酸性水溶液、外側からアルカリ水溶液を流し、回転ステージ上で1層目を酸性水溶液、2層目をアルカリ水溶液として、積層体を形成した後、回転ステージ上で瞬時混合を行った。流量は酸性水溶液が5ml/min、アルカリ水溶液を同じく5ml/minとした。また、ノズル中心の直径は2mm、同心円の直径は3mmとした。ステージの回転数は4000rpmで行った。
【0062】
混合後の液を目視により確認した。混合された液の色は、赤色となり瞬時に混合されていることが確認できた。
2.3液混合
三層の多層管構造を有する流路を用いて、3液の混合を行った。低分子界面活性剤を含んだ4質量%キナクリドンPR122顔料溶解液(積層体における3層目)を流路の中心から流し、その周りから顔料に対して良溶媒であるDMSO(2層目)、最外層から貧溶媒である水(1層目)を流した。回転ステージの回転数は4000rpm、顔料溶液の流量を10ml/min、DMSOの流量を30ml/min、水の流量を5ml/minで混合を行った。これにより、体積平均粒径Mv20.6nm、単分散度を示すMv(体積平均粒径)/Mn(数平均粒径)が1.33という非常に良好な粒子を得ることができた。
【0063】
また、このように、固体壁となる回転ステージ上で顔料溶解液を積層構造の最上層に来るようにし、中間層を良溶媒であるDMSOとすることにより、ノズル付近で顔料溶液と貧溶媒が接触し、粒子が析出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の液体混合装置の概略を示す斜視図である。
【図2】液体を吐出した際の液体混合装置の断面図である。
【図3】回転ステージの外周部付近の液体の積層体の図である。
【図4】従来のマイクロデバイスを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10…液体混合装置、20…回転ステージ、30…流路、31…ノズル、40…滴下装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体を回転ステージの中心部から回転ステージ上に吐出して、前記複数の液体を積層させた積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体を前記回転ステージが回転する遠心力で前記中心部から外周部側に拡げることにより薄層化する薄層化工程と、
前記薄層化した積層体を層間で拡散させることにより混合する混合工程と、を備えたことを特徴とする液体混合方法。
【請求項2】
前記回転ステージの回転速度を制御することにより、前記積層体の薄膜化を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体混合方法。
【請求項3】
回転ステージと、鉛直上向きに2種以上の液体を通過する流路を備える液体混合装置であって、
前記流路は、前記回転ステージに対して垂直に設置され、
前記流路の出口は、前記回転ステージの中心に設けられており、
前記流路は、同心円状の多層管構造であることを特徴とする液体混合装置。
【請求項4】
前記流路が二層、または三層以上の層状の多層管構造であることを特徴とする請求項3に記載の液体混合装置。
【請求項5】
前記流路の最外層の内径が3mm以上であり、最内層の内径が1mm以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の液体混合装置。
【請求項6】
前記回転ステージの回転数が500rpm以上6000rpm以下であることを特徴とする請求項3から5いずれかに記載の液体混合装置。
【請求項7】
前記流路の最外層を通過する液体と、前記回転ステージとの接触角が90°以下であることを特徴とする請求項3から6いずれかに記載の液体混合装置。
【請求項8】
前記液体を混合し、反応させることにより、微粒子を形成することを特徴とする請求項3から7いずれかに記載の液体混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226261(P2009−226261A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72180(P2008−72180)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】