説明

液体滴下器具

【課題】1滴あたりの液量が一定の液体を滴下することができる液体滴下器具を提供すること。
【解決手段】液体滴下器具は、液体Qを供給する供給部と、供給部から供給された液体Qを滴下する口部3とを備えるものである。この口部3は、球体5と、球体5に臨む部分の最大外径が球体5の直径よりも小さい線状体で構成された送液部材4であって、その先端部に設けられ、球体5を支持する支持部と、線状体の長手方向に沿って形成され、液体Qが通過する流路とを有する送液部材4とを備え、流路を通過した液体Qは、球体5の表面51に沿って流下し、表面51の鉛直下方の位置で滴下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体滴下器具に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼薬(目薬)を目にさす際には、当該目薬が収納されている点眼薬容器を用いてそれを行なう。この点眼薬容器としては、点眼薬が収納される容器本体と、容器本体から突出し、点眼薬が滴下される口部とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の点眼薬容器の口部は、容器本体と連通する内腔部を有する筒状の基部と、基部の先端部に設けられたドーム状(半球状)のヘッド部(頂部)とで構成されている。このヘッド部の外周部には、基部の軸方向に沿って形成され、基部の内腔部と連通する溝が複数形成されている。このような構成の点眼薬容器を使用する際には、ヘッド部を容器本体よりも下方に向け、この状態で点眼薬を滴下する。
【0004】
しかしながら、点眼薬容器を使用する際、その点眼薬容器の姿勢(鉛直方向に対する傾き等)によっては、ヘッド部の先端面(溝が形成されていない部分)から点眼薬が滴下される場合と、ヘッド部の溝から点眼薬が滴下される場合とがあり(例えば、特許文献1の図4参照)、それぞれの場合で滴下される1滴あたりの点眼薬の液量が変化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−118536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、1滴あたりの液量が一定の液体を滴下することができる液体滴下器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 液体を供給する供給部と、該供給部から供給された前記液体を滴下する口部とを備える液体滴下器具であって、
前記口部は、球体と、
前記球体に臨む部分の最大外径が前記球体の直径よりも小さい線状体で構成された送液部材であって、その先端部に設けられ、前記球体を支持する支持部と、前記線状体の長手方向に沿って形成され、前記液体が通過する流路とを有する送液部材とを備え、
前記流路を通過した液体は、前記球体の表面に沿って流下し、該表面の鉛直下方の位置で滴下されることを特徴とする液体滴下器具。
【0008】
(2) 前記送液部材は、少なくとも1つの内腔部を有する管状の管状部を備え、前記内腔部が前記流路として機能するものである上記(1)に記載の液体滴下器具。
【0009】
(3) 前記送液部材は、前記内腔部内に挿入された棒状体を備え、
前記棒状体の先端部は、前記管状部の先端開口から突出し、前記支持部として機能する上記(2)に記載の液体滴下器具。
【0010】
(4) 前記管状部には、2つの内腔部が形成されており、該2つの内腔部のうちの一方の内腔部が前記流路として機能し、他方の内腔部には、前記棒状体が挿入されている上記(3)に記載の液体滴下器具。
【0011】
(5) 前記管状部には、2つの内腔部が形成されており、該2つの内腔部は、それぞれ、前記流路として機能する上記(3)に記載の液体滴下器具。
【0012】
(6) 前記管状部の先端面は、前記球体の表面から離間している上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の液体滴下器具。
【0013】
(7) 前記管状部の先端面と前記球体の表面との離間距離が可変である上記(6)に記載の液体滴下器具。
【0014】
(8) 前記送液部材は、その外周部に長手方向に沿って溝が形成され、前記溝が前記流路として機能するものである上記(1)に記載の液体滴下器具。
【0015】
(9) 前記支持部は、前記送液部材の中心軸回りに間欠的に複数配置されている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の液体滴下器具。
【0016】
(10) 前記送液部材の前記最大外径は、前記球体の直径の5〜50%である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の液体滴下器具。
【0017】
また、本発明の液体滴下器具では、前記球体の表面は、撥液性を有するのが好ましい。
また、本発明の液体滴下器具では、前記球体の表面には、撥液処理が施されているのが好ましい。
【0018】
また、本発明の液体滴下器具では、前記棒状体は、該棒状体が挿入されている前記内腔部と同心的に配置されているのが好ましい。
【0019】
また、本発明の液体滴下器具では、前記管状部の先端面は、前記球体の表面に固着され、前記支持部として機能するのが好ましい。
【0020】
また、本発明の液体滴下器具では、前記送液部材は、その途中が屈曲または湾曲しているのが好ましい。
【0021】
また、本発明の液体滴下器具では、前記送液部材の中心軸は、前記球体の中心に対して偏心しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液体滴下器具を鉛直方向に対して平行または傾斜させ、その状態で液体を滴下させた際、球体ではその鉛直可能の位置の部分が常に球面となる。このため、液体滴下器具の前述した姿勢に関わらず、当該球面からは、1滴あたりの液量が一定の液体を確実に滴下することができる。
【0023】
また、球体の表面が撥液性を有している場合には、球体の表面上の液体は、過剰に広がるのが防止される、すなわち、一箇所に集まり易くなる。これにより、1滴あたりの液量が一定の液体をより確実に滴下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の液体滴下器具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1中のB−B線断面図である。
【図4】図1に示す液体滴下器具の使用状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の液体滴下器具の第2実施形態を示す部分縦断面斜視図である。
【図6】本発明の液体滴下器具の第3実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の液体滴下器具の第4実施形態を示す斜視図である。
【図8】図7中のC−C線断面図である。
【図9】本発明の液体滴下器具の第5実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の液体滴下器具の第6実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明の液体滴下器具の第7実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11中のD−D線断面図である。
【図13】本発明の液体滴下器具の第8実施形態を示す縦断面図である。
【図14】本発明の液体滴下器具の第9実施形態を示す部分縦断面斜視図である。
【図15】本発明の液体滴下器具の第10実施形態を示す部分縦断面斜視図である。
【図16】液体滴下器具(口部)の鉛直方向に対する傾きと、滴下される液滴の液量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の液体滴下器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本発明の液体滴下器具の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1中のB−B線断面図、図4は、図1に示す液体滴下器具の使用状態を示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図1、図2および図4中(図5〜図11、図13)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、液体滴下器具の口部側を「先端」、その反対側を「基端」と言う。
【0027】
図1に示すように、液体滴下器具1は、器具本体(供給部)2と、器具本体2の先端部に設けられた口部3とを備えている。以下、各部の構成について説明する。なお、この液体滴下器具1は、例えば、接着剤を収納する接着剤容器(生体用接着剤容器)、点眼薬を収納する点眼薬容器、うがい薬を収納するうがい薬容器等に適用することができる。
【0028】
器具本体2は、薬液等のような液体Qを収納し、供給するものである。器具本体2は、その形状が細長い箱状(直方体)をなし、その内部に中空部21が形成されている。すなわち、器具本体2は、中空の箱体で構成されている。そして、この中空部21に、液体Qが収納されている。
【0029】
器具本体2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。また、その他、アルミニウム等のような各種金属材料も用いることができる。
【0030】
なお、器具本体2の外形形状としては、図1に示す構成では直方体であるが、これに限定されず、例えば、立方体、球体、円筒状(外形形状が円柱状)、ペン型等であってもよい。
【0031】
器具本体2の先端壁部22には、口部3が設けられている。図4に示すように、この口部3から、液体Qを滴下することができる。
【0032】
口部3は、全体として線状体で構成された送液部材4と、送液部材4の先端側に位置する球体5で構成されている。口部3を下方に向けた状態(図1示す状態)で器具本体2の長手方向の中央部付近を押圧した際には、液体Qは、器具本体2内から押し出され、送液部材4を介して球体5に至る。そして、球体5に到達した液体Qは、滴下される(図4参照)。
【0033】
送液部材4は、1つの内腔部(第1の内腔部)411を有する管状の管状部41と、内腔部411内に挿入されたワイヤ(棒状体)42を備えている。
【0034】
管状部41は、器具本体2の先端壁部22に先端方向に向かって突出形成されている。
この管状部41は、管状をなすものであるため、その長手方向に沿って内腔部411が形成されている。そして、管状部41には、内腔部411が先端に開口した先端開口412が形成されている。また、内腔部411は、その基端側で器具本体2内と連通している。図2に示す構成では、管状部41(内腔部411)の内径は、管状部41の長手方向に沿って一定となっている。
【0035】
このような構成の管状部41(内腔部411)により、器具本体2から押し出された液体Qは、内腔部411を介して、先端開口412から球体5に(先端側に)向かって流出する。このように、送液部材4では、管状部41の内腔部411が器具本体2からの液体Qが通過する流路として機能する。
【0036】
本実施形態では、管状部41の先端開口412が形成されている先端面413は、球体5の表面51から離間している(例えば図2参照)。これにより、先端開口412から液体Qが容易に流出することができ、よって、その流出した液体Qを球体5の表面51に確実に供給することができる。
【0037】
なお、管状部41の先端面413と球体5の表面51との離間距離h1は、特に限定されないが、例えば、0.1〜3.0mmであるのが好ましく、0.5〜1.0mmであるのがより好ましい。
【0038】
また、管状部41は、外径がその長手方向に沿って一定となっている。送液部材4では、管状部41(特に球体5に臨む部分)が送液部材4の最大外径φD1を担う(有する)部分となっている。そして、この最大外径φD1は、球体5の直径φD2よりも小さい(図2参照)。
【0039】
管状部41は、器具本体2と一体的に形成されたものであってもよいし、器具本体2と別体で構成され、器具本体2に接続されたものであってもよい。なお、管状部41の構成材料としては、特に限定されず、例えば、器具本体2の構成材料と同様のものを用いることができる。これにより、管状部41を器具本体2と一体的に形成する場合には、その形成を容易に行なうことができる。
【0040】
管状部41の内腔部411には、ワイヤ42が挿入されている。
このワイヤ42は、その内腔部411に挿入されている部分が支持部43を介して、管状部41に対して固定されている(図2、図3参照)。これにより、離間距離h1が規制される。なお、支持部43は、管状部41の内腔部411からその径方向に突出した複数(図3に示す構成では4つ)突出部(突片)で構成され、各突出部の頂部がそれぞれワイヤ42の外周面に当接、支持している。
【0041】
図3に示すように、このような支持部43によって固定された(支持された)ワイヤ42は、管状部41の内腔部411と同心的に配置される。これにより、例えば図4(a)に示すように液体滴下器具を送液部材4(中心軸O1)が鉛直方向と平行となるような姿勢とした場合には、液体Qが管状部41の先端開口412から流出する際、当該液体Qは、ワイヤ42の外周側から均等に流出することができる。また、例えば図4(b)、(c)に示すように液体滴下器具を送液部材4が鉛直方向に対して傾斜するような姿勢とした場合には、液体Qが管状部41の先端開口412から流出する際、当該液体Qは、中心軸O1回りのいかなる角度でも(回転角度に関わらず)、管状部41の先端開口412から容易かつ確実に流出することができる。
【0042】
また、図2(図1、図4も同様)に示すように、ワイヤ42は、その先端部421が管状部41の先端開口412から突出している。この突出した先端部421は、その一部が球体5に刺さっている。これにより、球体5を確実に支持することができる。このように、送液部材4では、ワイヤ42の先端部421が球体5を支持する支持部として機能する。
【0043】
なお、ワイヤ42の基端部422は、器具本体2内にまで到達せずに、管状部41の途中に位置していてもよいし、器具本体2内に到達していてもよい。ワイヤ42の基端部422が器具本体2内に到達している場合、支持部43で固定しなくてもよい(支持部43を省略することができる)。すなわち、ワイヤ42は、管状部41の少なくとも一部または全長にわたって延びている。
【0044】
また、ワイヤ42は、支持部43を介して固定されているのに限定されず、例えば、管状部41の内周部に直接的に固定されていてもよい。
【0045】
また、ワイヤ42の構成材料としては、特に限定されず、例えば、器具本体2の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0046】
図4に示すように、ワイヤ42の先端部421には、球体5が支持されており、この球体5は、管状部41から供給された(流出した)液体Qを滴下するものである。
【0047】
図2に示すように、球体5は、球状をなすコア部52と、コア部52を被覆する外層53とで構成されている。この球体5では、コア部52を例えばアルミナのような金属材料で構成し、外層53を例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のコート層で構成することができる。この場合、球体5の表面51は、撥液処理(撥水処理)が施されたものとなる、すなわち、撥液性を有することとなる。
【0048】
また、前述したように、送液部材4(管状部41)の最大外径φD1は、球体5の直径φD2よりも小さい。この最大外径φD1は、例えば、直径φD2の5〜50%であるのが好ましく、10〜30%であるのがより好ましい。
【0049】
以上のような構成の液体滴下器具1の使用状態(滴下状態)について、図4を参照しつつ説明する。
【0050】
図4(a)に示すように、送液部材4の中心軸O1が鉛直方向と平行な状態では、管状部の内腔部411(流路)を通過した液体Qは、管状部41の先端開口412から流出する。この流出した液体Qは、球体5の表面51に沿って流下し、当該球体5(表面51)の鉛直下方に位置する最下面511aに向かう。最下面511aでは、液体Qは、一定量集まるまで一旦留まる。ここで「一定量」とは、最下面511aでの液体Qに作用する重力が液体Qの表面張力を上回り、液体Qの自重で当該液体Qが最下面511aから離脱するまでの液量のことを言う。すなわち、「一定量」とは、最下面511aにおいて、液体Q自身の表面積を最小にしようとする表面張力と、液体Q自身に作用する重力との釣り合いにより形成される液体Qの1つの液滴が、先端開口412からの流出により膨張し、液体Qに作用する重力が液体Qの表面張力を上回り、液体Qの自重で当該液体Qが最下面511aから離脱するまでの液量のことを言う。
【0051】
そして、前記一定量に達した液体Qは、それ自身の自重で、液滴Q’となって最下面511aから離脱する。これにより、前記一定量の液体Qを滴下することができる。
【0052】
図4(b)に示すように、送液部材4の中心軸O1が鉛直方向に対して角度θ(鋭角)傾斜した状態では、図4(a)に示す状態と同様に、管状部の内腔部411(流路)を通過した液体Qは、管状部41の先端開口412および球体5の表面51を順に経て(流下し)、当該球体5(表面51)の最下面511bに向かう。このときの最下面511bは、図4(a)に示す状態のときの最下面511aと異なる位置の部位であるが最下面511aと同様の球面であるため、最下面511bでも、液体Qは、前記一定量集まるまで一旦留まる。
【0053】
そして、最下面511bで前記一定量に達した液体Qは、それ自身の自重で、液滴Q’となって最下面511bから離脱する。このときも、前記一定量の液体Qを滴下することができる。
【0054】
図4(c)に示すように、送液部材4の中心軸O1が鉛直方向に対して角度θが図4(b)に示す状態よりも大きく(鈍角)傾斜した状態でも、図4(b)に示す状態と同様に、管状部41の内腔部411(流路)を通過した液体Qは、管状部41の先端開口412および球体5の表面51を順に経て、当該球体5(表面51)の最下面511cに向かう。このときの最下面511cは、図4(a)に示す状態のときの最下面511aや図4(b)に示す状態のときの最下面511bと異なる位置の部位であるがこれらの面と同様の球面であるため、最下面511cでも、液体Qは、前記一定量集まるまで一旦留まる。
【0055】
そして、最下面511cで前記一定量に達した液体Qは、それ自身の自重で、液滴Q’となって最下面511cから離脱する。このときも、前記一定量の液体Qを滴下することができる。
【0056】
また、管状部41と球体5とは離間しているため、図4(c)に示す状態で、管状部41の先端開口412から一旦流出した液体Qは、再度管状部41内に流入する(逆流する)のが防止される。
【0057】
このように、液体滴下器具1(中心軸O1)を鉛直方向に対していかなる大きさの角度θで傾けても(角度θが180°のときを除く)、球体5では、その表面51の一部、すなわち、球面が常に最も下方に位置する。これにより、前述したように、1滴あたりの液量が一定(前記一定量)の液滴Q’を確実に滴下することができる。
【0058】
また、前述したように球体5の表面51が撥液性を有しているため、球体5の表面51上の液体Qは、過剰に広がるのが防止される、すなわち、一箇所に集まり易くなる。これにより、前記一定量の液滴Q’を安定して(より確実に)滴下することができる。
【0059】
<第2実施形態>
図5は、本発明の液体滴下器具の第2実施形態を示す部分縦断面斜視図である。
【0060】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、管状部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0061】
図5に示す口部3Aでは、管状部41Aには、内腔部411の他に、内腔部(第2の内腔部)414が形成されている。
【0062】
管状部41Aでは、前記第1実施形態の管状部41と同様に内腔部411に球体5を支持するワイヤ42が挿入されているが、この内腔部411は、器具本体2内とは連通してないない。また、内腔部411の内周部とワイヤ42との間には、間隙が形成されている。すなわち、内腔部411は、その内径がワイヤ42の外径よりも大きくなっている。
【0063】
そして、この管状部41Aでは、内腔部414が器具本体2内と連通している。これにより、器具本体2から押し出された液体Qは、内腔部414を介して、当該内腔部414が先端面413に開口する先端開口415から球体5に向かって流出する(図5参照)。このように、口部3Aでは、管状部41Aの内腔部414が器具本体2からの液体Qが通過する流路として機能する。
【0064】
<第3実施形態>
図6は、本発明の液体滴下器具の第3実施形態を示す斜視図である。
【0065】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、管状部の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0066】
図6に示す口部3Bでは、管状部41Bには、その途中が屈曲(または湾曲)した屈曲部416が形成されている。これにより、例えば口部3Bを生体表面100に形成された孔101を介して体腔102(生体)内に挿入して、液体Qを滴下する際(図6参照)、口部3Bの屈曲部416よりも先端側の部分が体腔102内に挿入し易いものとなり、よって、滴下操作を容易に行なうことができる。
なお、屈曲部416は、その屈曲角度が可変に構成されていてもよい。
【0067】
<第4実施形態>
図7は、本発明の液体滴下器具の第4実施形態を示す斜視図、図8は、図7中のC−C線断面図である。
【0068】
以下、これらの図を参照して本発明の液体滴下器具の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0069】
本実施形態は、口部(送液部材)の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0070】
図7に示す口部3Cでは、前記第1実施形態の口部3とは異なり、ワイヤ42が省略されたものとなっている。
【0071】
この口部3Cでは、管状部41の先端面413は、球体5の表面51に固着されている。これにより、球体5を管状部41に対して確実に支持することができる。このように、口部3Cでは、管状部41の先端面413が球体5を支持する支持部として機能する。なお、この固着方法としては、特に限定されず、例えば、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法等が挙げられる。また、管状部41と球体5とは、別体同士を固着したものに限定されず、例えば、一体的に形成されたものであってもよい。
【0072】
また、管状部41の先端面413には、中心軸O1回りに複数(本実施形態では4つ)の凹部(欠損部)417が形成されている。図8に示すように、管状部41の内腔部411を通過した液体Qは、各凹部417を介して、外部(球体5の表面51上)に流出することができる。
【0073】
また、このように管状部41の先端面413に4つの凹部417が形成されているため、管状部41の先端面413は、中心軸O1回りの4つの箇所で球体5を支持することとなる。これにより、球体5を管状部41に対して安定して支持することができる。これにより、液体Qを滴下するときに液体滴下器具1の操作者の手が振動しても、その振動が球体5に伝達され、当該球体5が不本意に過剰に振動するのを(術者の手の振動以上に振動するのを)確実に抑止または防止することができる。これにより、1滴あたりの液量が一定の液体Qを安定して滴下することができる。
【0074】
<第5実施形態>
図9は、本発明の液体滴下器具の第5実施形態を示す斜視図である。
【0075】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、ワイヤの本数が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0076】
図9に示す口部3Dでは、4本のワイヤ42が中心軸O1回りに等角度間隔に(間欠的に)配置されている。また、各ワイヤ42は、それぞれ、その基端部422が管状部41の外周部に対して例えば接着(接着剤や溶媒による接着)または融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)により固定されている。
【0077】
このような4本のワイヤ42により、球体5が安定して支持される。これにより、球体5を管状部41に対して安定して支持することができる。よって、前述したように、液体Qを滴下するときに液体滴下器具1の操作者の手が振動しても、その振動が球体5に伝達され、当該球体5が不本意に過剰に振動するのを(術者の手の振動以上に振動するのを)確実に抑止または防止することができる。これにより、1滴あたりの液量が一定の液体Qを安定して滴下することができる。
【0078】
<第6実施形態>
図10は、本発明の液体滴下器具の第6実施形態を示す斜視図である。
【0079】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、ワイヤの設置位置が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0080】
図10に示す口部3Eでは、ワイヤ42は、球体5の中心軸O1を通らない位置に配置されている。これにより、送液部材4は、その中心軸O1が球体5の中心O2に対して偏心して(ズレて)いる。
【0081】
このような構成により、液体Qを滴下する際に、送液部材4を球体5の中心O2よりも上方に位置した状態で滴下操作を行いたい場合や、送液部材4を球体5の中心O2よりも下方に位置した状態で滴下操作を行いたい場合等、使用状況に応じて送液部材4(口部3E)の向きを適宜変更することができる。これにより、滴下操作を容易に行なうことができる。
【0082】
<第7実施形態>
図11は、本発明の液体滴下器具の第7実施形態を示す斜視図、図12は、図11中のD−D線断面図である。
【0083】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、送液部材の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0084】
図11に示す口部3Fでは、送液部材4がワイヤ(棒状体)45で構成されている。このワイヤ45は、その先端部451の一部(支持部)が球体5に刺さっており、球体5を支持している。
【0085】
また、ワイヤ45の外周部には、その長手方向に沿って溝452が形成されている(図11、図12参照)。この溝452は、その基端側で器具本体2内と連通している。液体Qを滴下する際には、溝452を鉛直上方に向けた状態とし、この状態で、器具本体2内から流出した液体Qが溝452を通過することができる。これにより、滴下操作を確実に行なうことができ、よって、1滴あたりの液量が一定の液体Qを滴下することができる。
このように、口部3Fでは、溝452が、溝452を通過する流路として機能する。
【0086】
<第8実施形態>
図13は、本発明の液体滴下器具の第8実施形態を示す縦断面図である。
【0087】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、ワイヤの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0088】
図13に示す口部3Gでは、ワイヤ42Gが、複数(図示の構成では2つ)の支持部43によって、管状部41に対しその長手方向に沿って摺動可能に支持されている。これにより、球体5と管状部41とが互いに接近・離間可能となり、よって、離間距離h1が可変となる。また、ワイヤ42Gは、管状部41に対し摺動可能に支持されているため、その摺動抵抗によって、任意の位置で固定される。
【0089】
このような構成により、例えば液体Qの粘度に応じて、離間距離h1を調整することができる。例えば、液体Qの粘度が比較的低い場合には、口部3Gを図13(a)に示す状態とし(離間距離h1を小さくし)、液体Qの粘度が比較的高い場合には、口部3Gを図13(b)に示す状態とする(離間距離h1を大きくする)ことができる。このような調整により、滴下される液滴Q’(液体Q)の液量を一定とすることができる。
【0090】
また、ワイヤ42Gの基端部422には、その外径が拡径したフランジ部423が形成されている。図13(b)に示すように、フランジ部423が、複数の支持部43のうちの最も基端側に位置する支持部43に当接することにより、ワイヤ42Gの先端方向への移動限界、すなわち、離間距離h1の最大距離が規制される。
【0091】
<第9実施形態>
図14は、本発明の液体滴下器具の第9実施形態を示す部分縦断面斜視図である。
【0092】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第9実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0093】
本実施形態は、管状部のワイヤが挿入される内腔部の構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0094】
図14に示す口部3Hでは、内腔部411の内径がワイヤ42の外径とほぼ同等またはそれより若干小さくなっている。これにより、ワイヤ42の基端側の部分は、内腔部411に突き刺さった状態(嵌合した状態)となる。
【0095】
このような構成により、ワイヤ42が管状部41Aに確実に固定されるため、操作者の手の振動によりワイヤ42が過剰に(異常に)振動するのが抑制され、液滴Q’1滴あたりの液量が安定するという利点がある。
【0096】
なお、内腔部411は、器具本体2内に連通していないが、器具本体2内に連通している場合、管状部41Aの基端部が器具本体2内で固定され、さらにワイヤ42の基端部422が器具本体2内で固定される。
【0097】
<第10実施形態>
図15は、本発明の液体滴下器具の第10実施形態を示す部分縦断面斜視図である。
【0098】
以下、この図を参照して本発明の液体滴下器具の第10実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0099】
本実施形態は、管状部のワイヤが挿入される内腔部の構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0100】
図15に示す口部3iでは、ワイヤ42が挿入された内腔部411も、内腔部414と同様に、器具本体2内と連通している。これにより、器具本体2から押し出された液体Qは、内腔部411を介して、当該内腔部411が先端面413に開口する先端開口412から球体5に向かって流出することができるとともに、内腔部414を介して、当該内腔部414が先端面413に開口する先端開口415から球体5に向かって流出することができる。このように、口部3iでは、管状部41Aの内腔部411および414がそれぞれ器具本体2からの液体Qが通過する流路として機能する。なお、ワイヤ42の基端部422は、器具本体2内に延びている。
【0101】
例えば図15に示すように器具本体2の中空部21が壁部23によって2つの部屋211、212に仕切られている場合、部屋211が内腔部411と連通し、部屋212が内腔部414と連通したものとすることができる。このような構成の場合、部屋211内に収納された液体Q1は、内腔部411を介して球体5へ流出し、部屋212内に収納された液体Q2は、内腔部414を介して球体5へ流出する。そして、内腔部411および414のうちの一方に仮に目詰まりが生じたとしても、他方が開通していれば、球体5から液滴Q’を確実に滴下することができる。
【0102】
なお、液体Q1と液体Q2とは、互いに液組成が異なるものであってもよいし、液組成が同じものであってもよい。
【0103】
以上、本発明の液体滴下器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、液体滴下器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0104】
また、本発明の液体滴下器具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0105】
また、球体は、構成材料が異なる2つの部分(コア部および外層)で構成されたものに限定されず、例えば、球体全体が、器具本体についての説明で挙げたようなオレフィン系樹脂材料構成されたものであってもよい。この場合でも球体の表面は、撥水性を有することとなる。
また、球体は、中実のものに限定されず、中空のものであってもよい。
【実施例】
【0106】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.液体滴下器具の作製
(実施例1)
まず、ポリエチレンで構成され、外径:1.2mm、内径:0.9mm、長さ:50mmの管状部と、管状部に挿入され、ステンレス鋼で構成されたワイヤとを有する送液部材と、ポリプロピレンで構成されたコア部とポリテトラフルオロレチレンで構成された外層とを有し、直径が4.0mmの球体とを備える、図1に示す液体滴下器具を製作した。
【0107】
(実施例2)
球体の直径を3.2mmとした以外は、前記実施例1と同様の構成の液体滴下器具を製作した。
【0108】
(実施例3)
球体の直径を2.4mmとした以外は、前記実施例1と同様の構成の液体滴下器具を製作した。
【0109】
(比較例1)
球体およびワイヤを省略した以外は、前記実施例1と同様の構成の液体滴下器具を製作した。
【0110】
2.評価
各実施例および比較例で作製した液体滴下器具をそれぞれ鉛直方向に対し0〜85°まで傾ける。そして、傾斜角度θが30°、60°、85°で滴下される液滴の液量が、傾斜角度θが0°で滴下される液滴の液量に対してどの程度変化があるか(変動率)を測定した。その測定結果を図16に示す。
【0111】
図16から明らかなように、各実施例で得られた液体滴下器具では、傾斜角度θの大きさによって、滴下される液滴の液量に変化がほとんど見なれなかった、すなわち、1滴あたりの液量が一定の液滴が滴下された。
【0112】
一方、比較例1で得られた液体滴下器具では、傾斜角度θの大きさによって、滴下される液滴の液量に顕著な変化が見られた。
【0113】
また、図5〜図7、図9〜図11、図13〜図15に示す液体滴下器具を作製し、各液体滴下器具に対してそれぞれ同様の評価を行なった。その結果、各液体滴下器具についても、前記実施例1とほぼ同様の評価結果が得られた。
【符号の説明】
【0114】
1 液体滴下器具
2 器具本体(供給部)
21 中空部
211、212 部屋
22 先端壁部
23 壁部
3、3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G、3H、3i 口部
4 送液部材
41、41A、41B 管状部
411 内腔部(第1の内腔部)
412 先端開口
413 先端面
414 内腔部(第2の内腔部)
415 先端開口
416 屈曲部
417 凹部(欠損部)
42、42G ワイヤ(棒状体)
421 先端部
422 基端部
423 フランジ部
43 支持部
45 ワイヤ(棒状体)
451 先端部
452 溝
5 球体
51 表面
511a、511b、511c 最下面
52 コア部
53 外層
100 生体表面
101 孔
102 体腔
φD1 最大外径
φD2 直径
h1 離間距離
O1 中心軸
O2 中心
Q、Q1、Q2 液体
Q’ 液滴
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する供給部と、該供給部から供給された前記液体を滴下する口部とを備える液体滴下器具であって、
前記口部は、球体と、
前記球体に臨む部分の最大外径が前記球体の直径よりも小さい線状体で構成された送液部材であって、その先端部に設けられ、前記球体を支持する支持部と、前記線状体の長手方向に沿って形成され、前記液体が通過する流路とを有する送液部材とを備え、
前記流路を通過した液体は、前記球体の表面に沿って流下し、該表面の鉛直下方の位置で滴下されることを特徴とする液体滴下器具。
【請求項2】
前記送液部材は、少なくとも1つの内腔部を有する管状の管状部を備え、前記内腔部が前記流路として機能するものである請求項1に記載の液体滴下器具。
【請求項3】
前記送液部材は、前記内腔部内に挿入された棒状体を備え、
前記棒状体の先端部は、前記管状部の先端開口から突出し、前記支持部として機能する請求項2に記載の液体滴下器具。
【請求項4】
前記管状部には、2つの内腔部が形成されており、該2つの内腔部のうちの一方の内腔部が前記流路として機能し、他方の内腔部には、前記棒状体が挿入されている請求項3に記載の液体滴下器具。
【請求項5】
前記管状部には、2つの内腔部が形成されており、該2つの内腔部は、それぞれ、前記流路として機能する請求項3に記載の液体滴下器具。
【請求項6】
前記管状部の先端面は、前記球体の表面から離間している請求項2ないし5のいずれかに記載の液体滴下器具。
【請求項7】
前記管状部の先端面と前記球体の表面との離間距離が可変である請求項6に記載の液体滴下器具。
【請求項8】
前記送液部材は、その外周部に長手方向に沿って溝が形成され、前記溝が前記流路として機能するものである請求項1に記載の液体滴下器具。
【請求項9】
前記支持部は、前記送液部材の中心軸回りに間欠的に複数配置されている請求項1ないし8のいずれかに記載の液体滴下器具。
【請求項10】
前記送液部材の前記最大外径は、前記球体の直径の5〜50%である請求項1ないし9のいずれかに記載の液体滴下器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−178808(P2010−178808A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23099(P2009−23099)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】