液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法
【課題】
液体試料の粘度に加え、濃度や密度をも測定すること。
【解決手段】
測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定装置10であって、音叉振動式の粘度計本体12と、粘度計本体12から得られた数値に基づいて試料の粘度を算出する演算処理部46と、演算処理部46で算出された粘度が記憶されるメモリ48とを備え、粘度計本体12は、試料の温度を検出する試料温度センサ26を備え、メモリ48には、試料の「濃度と粘度と試料温度」の関係式が記憶されるものであり、演算処理部46は、算出された粘度を、試料温度センサ26で検出された試料温度と、関係式に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する。
液体試料の粘度に加え、濃度や密度をも測定すること。
【解決手段】
測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定装置10であって、音叉振動式の粘度計本体12と、粘度計本体12から得られた数値に基づいて試料の粘度を算出する演算処理部46と、演算処理部46で算出された粘度が記憶されるメモリ48とを備え、粘度計本体12は、試料の温度を検出する試料温度センサ26を備え、メモリ48には、試料の「濃度と粘度と試料温度」の関係式が記憶されるものであり、演算処理部46は、算出された粘度を、試料温度センサ26で検出された試料温度と、関係式に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法に関し、特に、試料の粘度に加え、濃度及び/又は密度を測定する液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料の粘度と密度等、複数種類の物性値を1台の測定器で同時に測定しようとする場合、特許文献1、特許文献2または特許文献3に記載されるような装置及び方法が用いられていた。
【0003】
特許文献1に示される液体物性値測定装置及び方法では、振動子に印加した振動電圧の共振周波数から被測定液体の密度ρを検出し、振動センサの電気出力から被測定液体の密度ρと粘度ηの積ξを検出し、この積ξと密度ρから粘度ηを求めていた。
【0004】
また、特許文献2に示される液体物性値測定装置及び方法では、攪拌機のトルクT、回転数n、および、攪拌機の動力特性を用いて、演算を行い、缶内の内容物の粘度η、密度ρを測定していた。
【0005】
また、特許文献3に示される液体物性値測定装置及び方法では、被測定液体内に音叉型振動片22を浸漬し、振動片22を数kHz〜20kHzという高い共振周波数fで振動させ、共振周波数fと共振先鋭度Qと入出力位相差Pの特性から、被測定液体の粘度ηと密度ρを求めていた。
【0006】
しかし、これらの液体物性値測定装置及び方法には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−183353号公報
【特許文献2】特開平9−222387号公報
【特許文献3】特開平11−173968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2に示された液体物性値測定装置及び方法では、複数種類の物性値を求めるにあたって試料の温度が一切考慮されていないが、粘度は、温度依存性が高く、一般的な液体では1℃の温度変化で5〜10%も変化するものである。
【0009】
従って、特許文献1や特許文献2記載の装置や方法で、試料の物性値を精密に管理したり評価しようとする場合には、例えば恒温槽設備を用いて、試料の温度が一定になるように調整する必要があり、コスト増の要因となっていた。しかも、精密な測定を行なえば行なおうとする程、試料の温度を調整するのに時間がかかるため、作業が大幅に遅れたり、試料の経時的物性変化を招くという問題点もあった。
【0010】
また、特許文献2記載の回転トルク検出方式、特許文献1及び特許文献3記載の共振周波数検出方式では、特に水などの低粘度領域での粘度、濃度、密度などの測定精度が悪いこと、高粘度領域での測定の再現性が乏しいこと、検出される物理量の検出範囲が狭く、1台の測定器(センサ)ではワイドレンジでの検出が出来ないなどの問題があった。
【0011】
これは、上記方式で検出される各物理量の検出感度が低いという技術的問題に由来している。例えば、回転トルク検出方式ではトルクセンサ1個で検出されるトルク範囲が狭いため、多くの回転子を用意し、レンジを細分化して対応している。この技術の本質的な問題点は、トルク検出にバネ材を利用した発条(ゼンマイ)の変位量として検出していることにある。この回転トルク検出方式は、質量計では「バネばかり」に相当し、最も測定精度の低い方式である。
【0012】
また、共振周波数方式では、振動子に数kHz以上の高周波振動を数十ミクロン程度の微小変位として加えるため、被測定液体と振動子の界面でのすべり・摩擦・摩擦による発熱や機械的ストレスによる試料の物性変化などが発生し、検出精度が向上しないという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、試料の温度を所定値に調整する必要なく、粘度と試料温度を測定するだけで、迅速かつ高精度に、密度や濃度をも求めることが出来る液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明にかかる液体物性値測定装置は、測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定装置であって、マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計本体と、前記粘度計本体から得られた数値に基づいて前記試料の粘度を算出する演算処理部と、前記演算処理部で算出された粘度が記憶されるメモリとを備え、前記粘度計本体は、前記試料の温度を検出する試料温度センサを備え、前記メモリには、前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が予め記憶されるものであり、前記演算処理部は、前記試料について算出された粘度を、前記試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算するようにした。
【0015】
また、本発明にかかる液体物性値測定方法は、測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定方法であって、前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係を、予めメモリに記憶する第1の過程と、マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計で算出された前記試料の粘度を、試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する第2の過程とを有するようにした。
【0016】
このように構成した液体物性値測定装置及び方法によれば、予めメモリに記憶された「濃度と粘度と試料温度」の相対関係及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係に基づいて、測定対象物について算出された粘度と、検出された試料温度から、濃度及び/又は密度が換算されるので、電磁力を利用した音叉振動式の液体物性値測定装置1台によって、粘度だけでなく、濃度や密度等の複数の物性値を、高精度かつ幅広いダイナミックレンジで求めることが出来る。
【0017】
更に、「濃度と粘度」又は「密度と粘度」の相対関係に加えて、試料温度が変数として加わっているため、特に温度依存性の高い試料にあっては、恒温槽等により試料温度を一定に保って測定する必要がなく、任意の試料温度で複数種類の物性値を測定することが出来るので、迅速な測定に寄与する。
【0018】
更に、現在、機械オイル・グリス、液晶用レジスト、印刷用インク、その他産業用液体に求められる各種物理量の測定精度向上、測定時間短縮化、管理評価時間短縮化は、工場ラインでの生産性に直結し、同時に商品の品質改善につながるため、各企業にとっては重要課題となっていて、本発明により、上記産業用液体市場に液体試料の管理評価レベルの向上を提案することが可能となる。
【0019】
また、前記演算処理部は、前記相対関係が未知である場合、濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶するものであってもよい。
【0020】
また、前記相対関係が未知である場合、前記第1の過程で、濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶するものであってもよい。
【0021】
この構成によれば、「濃度と粘度と試料温度」又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が未知の試料についても、異なる濃度の試料で、試料温度を変化させて、粘度を測定することで、これらの関係式が得られ、濃度や密度を求めることが出来るようになる。
【0022】
また、前記演算処理部は、前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記メモリに記憶された相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算するものであってもよい。
【0023】
また、前記液体物性値測定方法は、前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算する第3の過程を有するものであってもよい。
【0024】
この構成によれば、例えば、試料管理や試料評価を行なう際に、試料温度を一定に管理する設備や手間が不要となり、設備投資の削減、管理・評価の容易化が図られる。
【0025】
また、前記相対関係は、構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶され、前記演算処理部は、入力部からの試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係を前記メモリから呼出すものであってもよい。
【0026】
また、前記相対関係は、構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶されるものであり、前記第2の過程では、試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係が前記メモリから呼出されてもよい。
【0027】
この構成によれば、演算処理部は、いつでもメモリから測定対象物に対応する関係式を呼出して、任意の試料の粘度、濃度を求めることが出来、測定の迅速化に寄与する。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法によれば、予めメモリに記憶された「濃度と粘度と試料温度」の相対関係及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係に基づいて、測定対象物について算出された粘度と、検出された試料温度から、濃度及び/又は密度が換算されるので、1台の装置によって、粘度だけでなく、濃度や密度等の複数の物性値を求めることが出来る。
【0029】
更に、「濃度と粘度」又は「密度と粘度」の相対関係に加えて、試料温度が変数として加わっているため、特に温度依存性の高い試料にあっては、恒温槽等により試料温度を一定に保って測定する必要がなく、任意の試料温度で複数種類の物性値を測定することが出来るので、迅速な測定に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。本実施例の液体物性値測定装置10は、測定対象物である液体試料Xの粘度を測定する音叉振動式粘度計であり、図1は、粘度を算出するために必要な数値を検出するための粘度計本体12のうち、駆動機構部の構造図である。
【0031】
この粘度計本体12は、以下詳述するように、マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式を採用している。
【0032】
この粘度計本体12の駆動機構部は、断面が概略逆凸型のフレーム14を有している。フレーム14の上端側側面には、同一形状の板バネ16がそれぞれ固設されている。
【0033】
各板バネ16の下端側には、試料X中に浸漬される同一形状の一対の音叉型振動子18がそれぞれ固設されている。各振動子18は、セラミック部材や金属部材等の薄肉平板状の板材から形成され、先端に円形状の拡大部が設けられ、一対の振動子18は、厚み方向の中心軸が試料X中で同一平面上に位置するように配置される。尚、振動子18は、対になって2以上あればよい。また、振動子18は、測定中の試料Xの温度変化を出来るだけ少なくするため、熱容量の少ない形状、材質が望ましい。
【0034】
各振動子18の上端側には、フレーム14側に突出するマグネット20(マグネットと継鉄により構成された磁気回路)が固設されている。このマグネット20は、フレーム14の側面に支持された電磁コイル22の内側に一端側が挿入されており、このマグネット20と電磁コイル22との組み合わせにより電磁力を発生させ、振動子18を電磁振動させる電磁駆動部23を構成している。一対の振動子18には、各電磁駆動部23により相互に逆位相の電磁振動が供給される。
【0035】
フレーム14には、一方の電磁コイル22の上方側に、変位センサ24が設けられており、この変位センサ24は、板バネ16の近くに配置され、電磁振動による板バネ16の振幅値、すなわち、振動子18の変動量を検出する。
【0036】
又、フレーム14の中心には、試料X中に浸漬されて、その温度を検出する試料温度センサ26が設けられている。
【0037】
図2は、本実施例にかかる液体物性値測定装置10(音叉振動式粘度計)の制御駆動系のブロック図であるが、当該構成は、従来の音叉振動式粘度計の構成と実質的に変わらないものである。尚、図2に記載の機能ブロックが、電子部品により主としてハードウェア的に実現されるか、CPUのプログラムにより主としてソフトウェア的に実現されるかは問わない。また、AD変換器その他の機能ブロックは、マイコン等の演算処理部46に含まれていてもよい。
【0038】
まず、本実施例の液体物性値測定装置10は、粘度計本体12の変位センサ24の出力信号が入力されるアンプ30、整流器32、整流器32からの出力と基準振幅値が入力される比較器34とを備えている。
【0039】
また、比較器34の出力信号を受けて、その値に応じて制御信号を自動減衰器38に出力する制御器36を有している。自動減衰器38には、常時一定の駆動信号、例えば、30Hzの共振駆動信号が入力され、自動減衰器38では、この駆動信号を制御器36から送出される制御信号で制御して、アンプ30を介して、電磁駆動部23の各電磁コイル22に供給している。
【0040】
この際の駆動電流は、電流検出器40で検出され、I/V変換器42及びA/D変換器44を介して、演算処理部46(マイコン)に入力される。また、試料温度センサ26の入力信号は、A/D変換器44を介して演算処理部46に入力されている。
【0041】
演算処理部46には、メモリ48、表示部50、キースイッチ部52が接続されている。以上の構成を備えた液体物性値測定装置10では、振動子18を所定の振幅値で共振振動させた際の、電磁駆動部23の電磁コイル22への駆動電流が電流検出器40で測定される。そして、得られた駆動電流の値と所定の検量線とに基づいて、演算処理部46で、測定対象物である液体試料Xの粘度を算出することが出来る。
【0042】
以上説明したような方式の音叉振動式の粘度計本体12では、電磁力を利用し、数10Hz(本実施例では約30Hz)と低い周波数で、約0.4mm程度の移動量(変動量、振幅値)を振動子18に加えることで、試料Xに大きなエネルギーを加えることなく、また、試料Xと振動子18の界面で発生するすべりを極力抑えるので、試料Xの組成を破壊することなく安定した物理量検出が可能となる。
【0043】
また、比較器34、制御器36などの構成により、電磁力により振動子18の振幅値(変位量)を一定に保ちながら、試料の持つ物理量に合わせて振動子18の駆動力を制御しているので、質量計では現在最も高精度となる分析用天秤同様、高精度で幅広いダイナミックレンジの測定が可能となる。
【0044】
また、本実施例の粘度計本体12の振動子18は、薄肉金属製であるため熱容量が小さく試料Xに対する熱的干渉が少なく、同時に、低周波数での振動子18の変動量は試料Xの量がわずかな量(10ml程度)でも検出可能であるため、試料温度が一定となるために必要となる時間が短くて済み、その結果、高精度かつ短時間に粘度を測定することが可能となる。
【0045】
ここで、本実施例の液体物性値測定装置10は、上述の構成により試料Xの粘度を算出する他、以下に説明する点に顕著な特徴がある。
【0046】
すなわち、本実施例の液体物性値測定装置10では、予めメモリ48に「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が既知である試料Xについて、当該「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が、構成材料の異なる試料(例えば、食塩水、酢、酒等)毎に記憶されている。
【0047】
そして、演算処理部46は、粘度が未知の測定対象物である試料Xについて、粘度を算出し、算出された粘度を、試料温度センサ26で検出された温度と、予めメモリ48に記憶された関係式とに基づいて、濃度及び/又は密度へ換算することが出来る。
【0048】
尚、本実施例の液体物性値測定装置10は、試料温度センサ26を備えており、物性値の温度依存性が高いような試料でも正確にこれらの物性値を算出することが出来るよう、「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係をメモリ48に記憶しているが、物性値の温度依存性が比較的低い試料や、測定精度が要求されない試料については、試料温度センサ26は必須の構成要素ではなく、「濃度と粘度」及び/又は「密度と粘度」の相対関係をメモリ48に記憶するだけで、算出された粘度と、当該相対関係とに基づいて、粘度から濃度及び/又は密度への換算処理が行なわれるようにしてもよい。
【0049】
次に、メモリ48への関係式の記憶処理と、演算処理部46が行なう換算処理の具体的な内容について、図4,図5のフローチャートを参照しながら説明する。尚、以下においては、粘度及び濃度が未知の試料Xの粘度と濃度を算出する場合を説明するが、濃度に代えて密度もしくは濃度と密度の両方を算出するものであってもよい。
【0050】
まず、試料X(例えば、食塩水とする)について、「濃度と粘度と試料温度」の相対関係が既知である場合には(S110)、「濃度と粘度と試料温度」の関係式(例えば、c=Aη+BT:c=濃度、η=粘度、T=試料温度)を、キースイッチ部52やキーボード等の入力手段(図示せず)から入力する等してメモリ48に記憶させる(S120)。尚、密度を求めたい場合には、「密度と粘度と試料温度」の関係式をメモリ48に記憶させればよい。
【0051】
試料Xの「濃度と粘度と試料温度」の相対関係が未知である場合には(S110)、濃度の異なる複数の試料X1〜Xnを作製し(S130)、それぞれの試料X1〜Xnにつき、温度コントローラ等の温度制御装置により試料温度を変化させながら、演算処理部46で、各試料温度における粘度を算出する(S140)。そして、演算処理部46は、粘度を算出した結果に基づいて、各濃度における粘度と試料温度の相対関係を式に表し、メモリ48に記憶する(S150)。尚、試料温度は、試料温度センサ26で検出された値を用い、粘度は、上述した液体物性値測定装置10の構成により演算処理部46で算出される。
【0052】
本実施例では、濃度0%、10%、20%の食塩水(試料X1〜X3)を作製し、温度コントローラで加熱(25℃で開始、40℃まで加熱)しながら、5℃毎に粘度を算出する。測定結果(濃度毎の粘度と試料温度の相対関係)は、図6のグラフの通りとなる。この測定結果に基づいて、試料X1〜X3の粘度ηと試料温度Tの相対関係を1次近似すると、試料Xの濃度cと粘度ηと試料温度Tの相対関係(温度Tを変数とした濃度cと粘度ηの相対関係)は、(1−1)〜(1−3)式の3つの式で表され、これらの式がキースイッチ部52等の入力手段から入力され、メモリ48に記憶される。
【0053】
η1(c=20%)=−0.025T+2.2[mPa/s]・・・(1−1)
η2(c=10%)=−0.018T+1.585[mPa/s]・・・(1−2)
η3(c=0%)=−0.015T+1.257[mPa/s]・・・(1−3)
【0054】
尚、例えば、粘度と試料温度の測定結果(濃度毎の粘度と試料温度の数値)や、図6のグラフそのものがメモリ48に記憶され、これらの測定結果(数値)やグラフに基づいて、演算処理部46が、自動的に試料Xの濃度cと粘度ηと試料温度Tの関係式(1−1)〜(1−3)を演算して、メモリ48に記憶するものであってもよい。
【0055】
また、例えば、粘度に温度依存性がほとんどないことが予め分かっている場合には、濃度の異なる複数の試料X1〜Xnを作製した後、試料温度を一定(例えば、25℃)にして、それぞれの濃度の試料X1〜Xnについて粘度を算出し、粘度と濃度の相対関係を算出して、メモリ48に記憶しておけばよい。温度依存性がない試料の濃度と粘度の相対関係を表すグラフの一例を図7に示す。
【0056】
図7の測定結果より、2次近似を行なうと、濃度と粘度の関係式は、c=−31.71η2+106.59η−69.24[%]・・・(2−1)で表され、この関係式がキースイッチ部52等の入力手段により入力され、メモリ48に記憶される。
【0057】
尚、上述したS110〜150の手続きは、試料Xのみならず、その他の試料Y(例えば、酒)、Z(例えば、砂糖水)についても同様に行なわれていてもよい。また、試料Y,ZについてのS110〜150の手続きは、後述するフローにおいて物性値が未知の測定対象物である試料Y、Zの濃度を算出する直前に行なわれるものであってもよい。
【0058】
また、試料X,Y,Zの全てについて予め関係式をメモリ48に記憶しておく場合には、各測定対象物の濃度を算出する際に、試料の種類がXかYかZかを、キースイッチ部52等の入力手段から選択入力する必要がある。複数種類の試料について関係式をメモリ48に記憶しておけば、演算処理部46は、いつでもメモリ48から測定対象物に対応する関係式を呼出して、任意の試料の粘度、濃度を求めることが出来、測定の迅速化に寄与する。
【0059】
次に、液体物性値測定装置10は、粘度及び濃度が未知の測定対象物である試料X(食塩水)の粘度η0を算出し、試料温度センサ26から試料温度T0を検出して、これらをメモリ48に記憶する(S210)。尚、粘度η0は、先のフロー同様にして演算処理部46で算出されるものであり、温度T0は、試料温度センサ26から検出される値である。本実施例では、η0=1.27[mPa・s]、T0=27.5[℃]である。
【0060】
ここで、先にメモリ48に記憶された試料Xの「濃度と粘度と試料温度」の関係式が、1つである場合には(S220)、演算処理部46は、当該関係式をメモリ48から呼出して、関係式の変数η(粘度)と変数T(試料温度)に、先に求められたη0とT0をそれぞれ代入し、濃度cを算出する(S230)。例えば、粘度に温度依存性のない試料の場合は、濃度cと粘度ηの関係式が1つ、メモリ48に記憶されているので、例えば先の(2−1)式の変数ηにη0を代入すれば、試料Xの濃度cが算出される。
【0061】
また、先の(1−1)〜(1−3)式のように、「濃度と粘度と試料温度」の関係式が複数である場合には(S220)、演算処理部46は、当該関係式をメモリ48から呼出して、それぞれの式の変数TにT0を代入し、各濃度cにおける粘度η1〜η3を算出する(S240)。
【0062】
具体的には、関係式(1−1)〜(1−3)式の各変数TにT0=27.5を代入し、27.5℃での粘度を濃度毎に算出すると、以下の(3−1)〜(3−3)式が得られる。
【0063】
η1(c=20%)=1.51[mPa・s]・・・(3−1)
η2(c=10%)=1.09[mPa・s]・・・(3−2)
η3(c=0%)=0.84[mPa・s]・・・(3−3)
【0064】
(3−1)〜(3−3)式を、濃度と粘度の相対関係として、グラフに表すと、図8のようになる。このグラフ、ないし、(3−1)〜(3−3)式の数値(粘度と濃度)に基づき、濃度と粘度の相対関係を式に表すと、(4−1)式が得られる。尚、(4−1)式は2次近似により得られたものである。
【0065】
c=−24.17η2+86.64η−55.73[%]・・・(4−1)
【0066】
つまり演算処理部46は、試料温度センサ26で検出された試料温度Toにおける濃度と粘度の関係式を算出し、メモリ48に記憶するものである(S250)。
【0067】
演算処理部46は、メモリ48に記憶された関係式(4−1)を呼出して、(4−1)式の変数ηにη0=1.27を代入し、濃度cを算出する(S260)。具体的には、c=−24.17(1.27)2+86.64(1.27)−55.73=15.3[%]となる。
【0068】
尚、確認のため、この試料Xについて、T=27.5℃の時の濃度を液体物性値測定装置10以外の測定器によって測定すると、15%であり、本実施例の液体物性値測定装置10によって、正しく濃度の測定が行なわれることが分かった。
【0069】
表示部50は、演算処理部46によって算出された粘度及び濃度と、試料温度センサ26で検出された試料温度を表示する(S270)。
【0070】
以上のように構成された液体物性値測定装置10によれば、予めメモリ48に記憶された「濃度と粘度と試料温度」の相対関係及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係に基づいて、測定対象物について算出された粘度と、検出された試料温度から、濃度及び/又は密度が換算されるので、1台の装置によって、粘度だけでなく、濃度や密度等の複数の物性値を求めることが出来る。
【0071】
更に、「濃度と粘度」又は「密度と粘度」の相対関係に加えて、試料温度が変数として加わっているため、特に温度依存性の高い試料にあっては、恒温槽等により試料温度を一定に保って測定する必要がなく、任意の試料温度で複数種類の物性値を測定することが出来るので、迅速な測定に寄与する。
【0072】
また、「濃度と粘度と試料温度」又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が未知の試料についても、異なる濃度の試料で、試料温度を変化させて、粘度を測定することで、これらの関係式が得られ、濃度や密度を求めることが出来るようになる。
【0073】
また、「濃度と粘度と試料温度」又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係がメモリ48に記憶されているため、演算処理部46は、この相対関係に基づいて、検出された試料温度における物性値から所定の試料温度における物性値への換算を行なうことも出来る。この構成により、例えば、試料管理や試料評価を行なう際に、試料温度を一定に管理する設備や手間が不要となり、設備投資の削減、管理・評価の容易化が図られる。
【0074】
従来の試料管理においては、試料温度の管理精度が物性値の測定精度に及ぼす影響が大きいものであったが、特に、粘度計本体12の振動子18が、金属製薄板状である場合には、振動子18の熱容量が小さく、試料の温度管理を行いながら物性値を測定する必要がなくなるため、試料の評価管理にかかる時間が短縮され、かつ、物性値の測定精度が維持される。
【0075】
また、試料中に浸漬される振動子18の熱容量が小さいと同時に、試料の量がわずかで済む音叉振動式粘度計本体12を用いれば、試料温度の安定時間が短く、その結果、短時間での物性値測定、試料評価・管理が可能となる。
【0076】
現在、機械オイル・グリス、液晶用レジスト、印刷用インク、その他産業用液体に求められる各種物理量の測定精度向上、測定時間短縮化、管理評価時間短縮化は、工場ラインでの生産性に直結し、同時に商品の品質改善につながるため、各企業にとっては重要課題となっていて、本発明により、上記産業用液体市場に液体試料の管理評価レベルの向上を提案することが可能となる。
【0077】
以上、液体物性値測定装置10の実施例につき説明したが、本発明の液体物性値測定装置は、上記実施例で説明した構成要件の全てを備えた液体物性値測定装置に限定されるものではなく、各種の変更及び修正が可能である。又、かかる変更及び修正についても本発明の特許請求の範囲に属することは言うまでもない。
【0078】
例えば、関係式を記憶するメモリ48、濃度及び/又は密度の換算を行なう演算処理部46は、先の実施例の液体物性値測定装置10のその他の構成手段と一体に構成されている必要はなく、外部に設置されたコンピュータ等の外部機器13が有していてもよい。この場合の、液体物性値測定装置10aの制御系ブロック図の一例を図3に示す。尚、図3の粘度計本体12aのハードウェア構成例は図2のメモリ48と演算処理部46以外の構成手段と同様であり、図3の粘度計本体12aは、図2の液体物性値測定装置10の一部の構成のみを抽出したものであり、その他は省略されている。
【0079】
図3に示した外部機器13は、演算処理部46と、演算処理部46に接続されたメモリ48、入力部52a、表示部50を有している。又、外部機器13と粘度計本体12aとは、各々に設けられた通信手段54によって接続され、これら外部機器13と粘度計本体12aとが液体物性値測定装置10aを構成している。
【0080】
尚、演算処理部46及びメモリ48が、外部機器13と粘度計本体12aとにそれぞれ設けられていてもよく、その場合には、粘度計本体12a側の演算処理部46が粘度を算出する機能を有し、外部機器13側の演算処理部46が粘度から濃度及び/又は密度を算出する機能を有する、というように、機能を分けることが出来る。これによって、外部機器13は市販のコンピュータを採用し、粘度計本体12aは従来の音叉振動式粘度計を採用して、これに粘度の値を外部に送信するような通信機能を設けるだけでよい。尚、双方向通信は必ずしも必要ではないので、外部出力端子付きの音叉振動式粘度計が粘度計本体12aを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】液体物性値測定装置の駆動機構部の側面図である。
【図2】液体物性値測定装置の電気的構成を示す制御ブロック図である。
【図3】液体物性値測定装置の電気的構成を示す他の制御ブロック図である。
【図4】本発明にかかる液体物性値測定装置で関係式を記憶する際の手順を示すフローチャート図である。
【図5】本発明にかかる液体物性値測定装置で濃度を算出する際の手順を示すフローチャート図である。
【図6】粘度と試料温度の相対関係を濃度毎に示すグラフである。
【図7】粘度と濃度の相対関係を示すグラフである。
【図8】試料温度27.5℃における粘度と濃度の相対関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0082】
10:液体物性値測定装置
12:粘度計本体
13:外部機器
14:フレーム
16:板バネ
18:振動子
20:マグネット
22:電磁コイル
23:電磁駆動部
24:変位センサ
26:試料温度センサ
30:アンプ
32:整流器
34:比較器
36:制御器
38:自動減衰器
40:電流検出器
42:I/V変換器
44:A/D変換器
46:演算処理部
48:メモリ
50:表示部
52:キースイッチ部(入力部)
54:通信手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法に関し、特に、試料の粘度に加え、濃度及び/又は密度を測定する液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料の粘度と密度等、複数種類の物性値を1台の測定器で同時に測定しようとする場合、特許文献1、特許文献2または特許文献3に記載されるような装置及び方法が用いられていた。
【0003】
特許文献1に示される液体物性値測定装置及び方法では、振動子に印加した振動電圧の共振周波数から被測定液体の密度ρを検出し、振動センサの電気出力から被測定液体の密度ρと粘度ηの積ξを検出し、この積ξと密度ρから粘度ηを求めていた。
【0004】
また、特許文献2に示される液体物性値測定装置及び方法では、攪拌機のトルクT、回転数n、および、攪拌機の動力特性を用いて、演算を行い、缶内の内容物の粘度η、密度ρを測定していた。
【0005】
また、特許文献3に示される液体物性値測定装置及び方法では、被測定液体内に音叉型振動片22を浸漬し、振動片22を数kHz〜20kHzという高い共振周波数fで振動させ、共振周波数fと共振先鋭度Qと入出力位相差Pの特性から、被測定液体の粘度ηと密度ρを求めていた。
【0006】
しかし、これらの液体物性値測定装置及び方法には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−183353号公報
【特許文献2】特開平9−222387号公報
【特許文献3】特開平11−173968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2に示された液体物性値測定装置及び方法では、複数種類の物性値を求めるにあたって試料の温度が一切考慮されていないが、粘度は、温度依存性が高く、一般的な液体では1℃の温度変化で5〜10%も変化するものである。
【0009】
従って、特許文献1や特許文献2記載の装置や方法で、試料の物性値を精密に管理したり評価しようとする場合には、例えば恒温槽設備を用いて、試料の温度が一定になるように調整する必要があり、コスト増の要因となっていた。しかも、精密な測定を行なえば行なおうとする程、試料の温度を調整するのに時間がかかるため、作業が大幅に遅れたり、試料の経時的物性変化を招くという問題点もあった。
【0010】
また、特許文献2記載の回転トルク検出方式、特許文献1及び特許文献3記載の共振周波数検出方式では、特に水などの低粘度領域での粘度、濃度、密度などの測定精度が悪いこと、高粘度領域での測定の再現性が乏しいこと、検出される物理量の検出範囲が狭く、1台の測定器(センサ)ではワイドレンジでの検出が出来ないなどの問題があった。
【0011】
これは、上記方式で検出される各物理量の検出感度が低いという技術的問題に由来している。例えば、回転トルク検出方式ではトルクセンサ1個で検出されるトルク範囲が狭いため、多くの回転子を用意し、レンジを細分化して対応している。この技術の本質的な問題点は、トルク検出にバネ材を利用した発条(ゼンマイ)の変位量として検出していることにある。この回転トルク検出方式は、質量計では「バネばかり」に相当し、最も測定精度の低い方式である。
【0012】
また、共振周波数方式では、振動子に数kHz以上の高周波振動を数十ミクロン程度の微小変位として加えるため、被測定液体と振動子の界面でのすべり・摩擦・摩擦による発熱や機械的ストレスによる試料の物性変化などが発生し、検出精度が向上しないという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、試料の温度を所定値に調整する必要なく、粘度と試料温度を測定するだけで、迅速かつ高精度に、密度や濃度をも求めることが出来る液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明にかかる液体物性値測定装置は、測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定装置であって、マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計本体と、前記粘度計本体から得られた数値に基づいて前記試料の粘度を算出する演算処理部と、前記演算処理部で算出された粘度が記憶されるメモリとを備え、前記粘度計本体は、前記試料の温度を検出する試料温度センサを備え、前記メモリには、前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が予め記憶されるものであり、前記演算処理部は、前記試料について算出された粘度を、前記試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算するようにした。
【0015】
また、本発明にかかる液体物性値測定方法は、測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定方法であって、前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係を、予めメモリに記憶する第1の過程と、マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計で算出された前記試料の粘度を、試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する第2の過程とを有するようにした。
【0016】
このように構成した液体物性値測定装置及び方法によれば、予めメモリに記憶された「濃度と粘度と試料温度」の相対関係及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係に基づいて、測定対象物について算出された粘度と、検出された試料温度から、濃度及び/又は密度が換算されるので、電磁力を利用した音叉振動式の液体物性値測定装置1台によって、粘度だけでなく、濃度や密度等の複数の物性値を、高精度かつ幅広いダイナミックレンジで求めることが出来る。
【0017】
更に、「濃度と粘度」又は「密度と粘度」の相対関係に加えて、試料温度が変数として加わっているため、特に温度依存性の高い試料にあっては、恒温槽等により試料温度を一定に保って測定する必要がなく、任意の試料温度で複数種類の物性値を測定することが出来るので、迅速な測定に寄与する。
【0018】
更に、現在、機械オイル・グリス、液晶用レジスト、印刷用インク、その他産業用液体に求められる各種物理量の測定精度向上、測定時間短縮化、管理評価時間短縮化は、工場ラインでの生産性に直結し、同時に商品の品質改善につながるため、各企業にとっては重要課題となっていて、本発明により、上記産業用液体市場に液体試料の管理評価レベルの向上を提案することが可能となる。
【0019】
また、前記演算処理部は、前記相対関係が未知である場合、濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶するものであってもよい。
【0020】
また、前記相対関係が未知である場合、前記第1の過程で、濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶するものであってもよい。
【0021】
この構成によれば、「濃度と粘度と試料温度」又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が未知の試料についても、異なる濃度の試料で、試料温度を変化させて、粘度を測定することで、これらの関係式が得られ、濃度や密度を求めることが出来るようになる。
【0022】
また、前記演算処理部は、前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記メモリに記憶された相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算するものであってもよい。
【0023】
また、前記液体物性値測定方法は、前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算する第3の過程を有するものであってもよい。
【0024】
この構成によれば、例えば、試料管理や試料評価を行なう際に、試料温度を一定に管理する設備や手間が不要となり、設備投資の削減、管理・評価の容易化が図られる。
【0025】
また、前記相対関係は、構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶され、前記演算処理部は、入力部からの試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係を前記メモリから呼出すものであってもよい。
【0026】
また、前記相対関係は、構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶されるものであり、前記第2の過程では、試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係が前記メモリから呼出されてもよい。
【0027】
この構成によれば、演算処理部は、いつでもメモリから測定対象物に対応する関係式を呼出して、任意の試料の粘度、濃度を求めることが出来、測定の迅速化に寄与する。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる液体物性値測定装置及び液体物性値測定方法によれば、予めメモリに記憶された「濃度と粘度と試料温度」の相対関係及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係に基づいて、測定対象物について算出された粘度と、検出された試料温度から、濃度及び/又は密度が換算されるので、1台の装置によって、粘度だけでなく、濃度や密度等の複数の物性値を求めることが出来る。
【0029】
更に、「濃度と粘度」又は「密度と粘度」の相対関係に加えて、試料温度が変数として加わっているため、特に温度依存性の高い試料にあっては、恒温槽等により試料温度を一定に保って測定する必要がなく、任意の試料温度で複数種類の物性値を測定することが出来るので、迅速な測定に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。本実施例の液体物性値測定装置10は、測定対象物である液体試料Xの粘度を測定する音叉振動式粘度計であり、図1は、粘度を算出するために必要な数値を検出するための粘度計本体12のうち、駆動機構部の構造図である。
【0031】
この粘度計本体12は、以下詳述するように、マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式を採用している。
【0032】
この粘度計本体12の駆動機構部は、断面が概略逆凸型のフレーム14を有している。フレーム14の上端側側面には、同一形状の板バネ16がそれぞれ固設されている。
【0033】
各板バネ16の下端側には、試料X中に浸漬される同一形状の一対の音叉型振動子18がそれぞれ固設されている。各振動子18は、セラミック部材や金属部材等の薄肉平板状の板材から形成され、先端に円形状の拡大部が設けられ、一対の振動子18は、厚み方向の中心軸が試料X中で同一平面上に位置するように配置される。尚、振動子18は、対になって2以上あればよい。また、振動子18は、測定中の試料Xの温度変化を出来るだけ少なくするため、熱容量の少ない形状、材質が望ましい。
【0034】
各振動子18の上端側には、フレーム14側に突出するマグネット20(マグネットと継鉄により構成された磁気回路)が固設されている。このマグネット20は、フレーム14の側面に支持された電磁コイル22の内側に一端側が挿入されており、このマグネット20と電磁コイル22との組み合わせにより電磁力を発生させ、振動子18を電磁振動させる電磁駆動部23を構成している。一対の振動子18には、各電磁駆動部23により相互に逆位相の電磁振動が供給される。
【0035】
フレーム14には、一方の電磁コイル22の上方側に、変位センサ24が設けられており、この変位センサ24は、板バネ16の近くに配置され、電磁振動による板バネ16の振幅値、すなわち、振動子18の変動量を検出する。
【0036】
又、フレーム14の中心には、試料X中に浸漬されて、その温度を検出する試料温度センサ26が設けられている。
【0037】
図2は、本実施例にかかる液体物性値測定装置10(音叉振動式粘度計)の制御駆動系のブロック図であるが、当該構成は、従来の音叉振動式粘度計の構成と実質的に変わらないものである。尚、図2に記載の機能ブロックが、電子部品により主としてハードウェア的に実現されるか、CPUのプログラムにより主としてソフトウェア的に実現されるかは問わない。また、AD変換器その他の機能ブロックは、マイコン等の演算処理部46に含まれていてもよい。
【0038】
まず、本実施例の液体物性値測定装置10は、粘度計本体12の変位センサ24の出力信号が入力されるアンプ30、整流器32、整流器32からの出力と基準振幅値が入力される比較器34とを備えている。
【0039】
また、比較器34の出力信号を受けて、その値に応じて制御信号を自動減衰器38に出力する制御器36を有している。自動減衰器38には、常時一定の駆動信号、例えば、30Hzの共振駆動信号が入力され、自動減衰器38では、この駆動信号を制御器36から送出される制御信号で制御して、アンプ30を介して、電磁駆動部23の各電磁コイル22に供給している。
【0040】
この際の駆動電流は、電流検出器40で検出され、I/V変換器42及びA/D変換器44を介して、演算処理部46(マイコン)に入力される。また、試料温度センサ26の入力信号は、A/D変換器44を介して演算処理部46に入力されている。
【0041】
演算処理部46には、メモリ48、表示部50、キースイッチ部52が接続されている。以上の構成を備えた液体物性値測定装置10では、振動子18を所定の振幅値で共振振動させた際の、電磁駆動部23の電磁コイル22への駆動電流が電流検出器40で測定される。そして、得られた駆動電流の値と所定の検量線とに基づいて、演算処理部46で、測定対象物である液体試料Xの粘度を算出することが出来る。
【0042】
以上説明したような方式の音叉振動式の粘度計本体12では、電磁力を利用し、数10Hz(本実施例では約30Hz)と低い周波数で、約0.4mm程度の移動量(変動量、振幅値)を振動子18に加えることで、試料Xに大きなエネルギーを加えることなく、また、試料Xと振動子18の界面で発生するすべりを極力抑えるので、試料Xの組成を破壊することなく安定した物理量検出が可能となる。
【0043】
また、比較器34、制御器36などの構成により、電磁力により振動子18の振幅値(変位量)を一定に保ちながら、試料の持つ物理量に合わせて振動子18の駆動力を制御しているので、質量計では現在最も高精度となる分析用天秤同様、高精度で幅広いダイナミックレンジの測定が可能となる。
【0044】
また、本実施例の粘度計本体12の振動子18は、薄肉金属製であるため熱容量が小さく試料Xに対する熱的干渉が少なく、同時に、低周波数での振動子18の変動量は試料Xの量がわずかな量(10ml程度)でも検出可能であるため、試料温度が一定となるために必要となる時間が短くて済み、その結果、高精度かつ短時間に粘度を測定することが可能となる。
【0045】
ここで、本実施例の液体物性値測定装置10は、上述の構成により試料Xの粘度を算出する他、以下に説明する点に顕著な特徴がある。
【0046】
すなわち、本実施例の液体物性値測定装置10では、予めメモリ48に「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が既知である試料Xについて、当該「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が、構成材料の異なる試料(例えば、食塩水、酢、酒等)毎に記憶されている。
【0047】
そして、演算処理部46は、粘度が未知の測定対象物である試料Xについて、粘度を算出し、算出された粘度を、試料温度センサ26で検出された温度と、予めメモリ48に記憶された関係式とに基づいて、濃度及び/又は密度へ換算することが出来る。
【0048】
尚、本実施例の液体物性値測定装置10は、試料温度センサ26を備えており、物性値の温度依存性が高いような試料でも正確にこれらの物性値を算出することが出来るよう、「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係をメモリ48に記憶しているが、物性値の温度依存性が比較的低い試料や、測定精度が要求されない試料については、試料温度センサ26は必須の構成要素ではなく、「濃度と粘度」及び/又は「密度と粘度」の相対関係をメモリ48に記憶するだけで、算出された粘度と、当該相対関係とに基づいて、粘度から濃度及び/又は密度への換算処理が行なわれるようにしてもよい。
【0049】
次に、メモリ48への関係式の記憶処理と、演算処理部46が行なう換算処理の具体的な内容について、図4,図5のフローチャートを参照しながら説明する。尚、以下においては、粘度及び濃度が未知の試料Xの粘度と濃度を算出する場合を説明するが、濃度に代えて密度もしくは濃度と密度の両方を算出するものであってもよい。
【0050】
まず、試料X(例えば、食塩水とする)について、「濃度と粘度と試料温度」の相対関係が既知である場合には(S110)、「濃度と粘度と試料温度」の関係式(例えば、c=Aη+BT:c=濃度、η=粘度、T=試料温度)を、キースイッチ部52やキーボード等の入力手段(図示せず)から入力する等してメモリ48に記憶させる(S120)。尚、密度を求めたい場合には、「密度と粘度と試料温度」の関係式をメモリ48に記憶させればよい。
【0051】
試料Xの「濃度と粘度と試料温度」の相対関係が未知である場合には(S110)、濃度の異なる複数の試料X1〜Xnを作製し(S130)、それぞれの試料X1〜Xnにつき、温度コントローラ等の温度制御装置により試料温度を変化させながら、演算処理部46で、各試料温度における粘度を算出する(S140)。そして、演算処理部46は、粘度を算出した結果に基づいて、各濃度における粘度と試料温度の相対関係を式に表し、メモリ48に記憶する(S150)。尚、試料温度は、試料温度センサ26で検出された値を用い、粘度は、上述した液体物性値測定装置10の構成により演算処理部46で算出される。
【0052】
本実施例では、濃度0%、10%、20%の食塩水(試料X1〜X3)を作製し、温度コントローラで加熱(25℃で開始、40℃まで加熱)しながら、5℃毎に粘度を算出する。測定結果(濃度毎の粘度と試料温度の相対関係)は、図6のグラフの通りとなる。この測定結果に基づいて、試料X1〜X3の粘度ηと試料温度Tの相対関係を1次近似すると、試料Xの濃度cと粘度ηと試料温度Tの相対関係(温度Tを変数とした濃度cと粘度ηの相対関係)は、(1−1)〜(1−3)式の3つの式で表され、これらの式がキースイッチ部52等の入力手段から入力され、メモリ48に記憶される。
【0053】
η1(c=20%)=−0.025T+2.2[mPa/s]・・・(1−1)
η2(c=10%)=−0.018T+1.585[mPa/s]・・・(1−2)
η3(c=0%)=−0.015T+1.257[mPa/s]・・・(1−3)
【0054】
尚、例えば、粘度と試料温度の測定結果(濃度毎の粘度と試料温度の数値)や、図6のグラフそのものがメモリ48に記憶され、これらの測定結果(数値)やグラフに基づいて、演算処理部46が、自動的に試料Xの濃度cと粘度ηと試料温度Tの関係式(1−1)〜(1−3)を演算して、メモリ48に記憶するものであってもよい。
【0055】
また、例えば、粘度に温度依存性がほとんどないことが予め分かっている場合には、濃度の異なる複数の試料X1〜Xnを作製した後、試料温度を一定(例えば、25℃)にして、それぞれの濃度の試料X1〜Xnについて粘度を算出し、粘度と濃度の相対関係を算出して、メモリ48に記憶しておけばよい。温度依存性がない試料の濃度と粘度の相対関係を表すグラフの一例を図7に示す。
【0056】
図7の測定結果より、2次近似を行なうと、濃度と粘度の関係式は、c=−31.71η2+106.59η−69.24[%]・・・(2−1)で表され、この関係式がキースイッチ部52等の入力手段により入力され、メモリ48に記憶される。
【0057】
尚、上述したS110〜150の手続きは、試料Xのみならず、その他の試料Y(例えば、酒)、Z(例えば、砂糖水)についても同様に行なわれていてもよい。また、試料Y,ZについてのS110〜150の手続きは、後述するフローにおいて物性値が未知の測定対象物である試料Y、Zの濃度を算出する直前に行なわれるものであってもよい。
【0058】
また、試料X,Y,Zの全てについて予め関係式をメモリ48に記憶しておく場合には、各測定対象物の濃度を算出する際に、試料の種類がXかYかZかを、キースイッチ部52等の入力手段から選択入力する必要がある。複数種類の試料について関係式をメモリ48に記憶しておけば、演算処理部46は、いつでもメモリ48から測定対象物に対応する関係式を呼出して、任意の試料の粘度、濃度を求めることが出来、測定の迅速化に寄与する。
【0059】
次に、液体物性値測定装置10は、粘度及び濃度が未知の測定対象物である試料X(食塩水)の粘度η0を算出し、試料温度センサ26から試料温度T0を検出して、これらをメモリ48に記憶する(S210)。尚、粘度η0は、先のフロー同様にして演算処理部46で算出されるものであり、温度T0は、試料温度センサ26から検出される値である。本実施例では、η0=1.27[mPa・s]、T0=27.5[℃]である。
【0060】
ここで、先にメモリ48に記憶された試料Xの「濃度と粘度と試料温度」の関係式が、1つである場合には(S220)、演算処理部46は、当該関係式をメモリ48から呼出して、関係式の変数η(粘度)と変数T(試料温度)に、先に求められたη0とT0をそれぞれ代入し、濃度cを算出する(S230)。例えば、粘度に温度依存性のない試料の場合は、濃度cと粘度ηの関係式が1つ、メモリ48に記憶されているので、例えば先の(2−1)式の変数ηにη0を代入すれば、試料Xの濃度cが算出される。
【0061】
また、先の(1−1)〜(1−3)式のように、「濃度と粘度と試料温度」の関係式が複数である場合には(S220)、演算処理部46は、当該関係式をメモリ48から呼出して、それぞれの式の変数TにT0を代入し、各濃度cにおける粘度η1〜η3を算出する(S240)。
【0062】
具体的には、関係式(1−1)〜(1−3)式の各変数TにT0=27.5を代入し、27.5℃での粘度を濃度毎に算出すると、以下の(3−1)〜(3−3)式が得られる。
【0063】
η1(c=20%)=1.51[mPa・s]・・・(3−1)
η2(c=10%)=1.09[mPa・s]・・・(3−2)
η3(c=0%)=0.84[mPa・s]・・・(3−3)
【0064】
(3−1)〜(3−3)式を、濃度と粘度の相対関係として、グラフに表すと、図8のようになる。このグラフ、ないし、(3−1)〜(3−3)式の数値(粘度と濃度)に基づき、濃度と粘度の相対関係を式に表すと、(4−1)式が得られる。尚、(4−1)式は2次近似により得られたものである。
【0065】
c=−24.17η2+86.64η−55.73[%]・・・(4−1)
【0066】
つまり演算処理部46は、試料温度センサ26で検出された試料温度Toにおける濃度と粘度の関係式を算出し、メモリ48に記憶するものである(S250)。
【0067】
演算処理部46は、メモリ48に記憶された関係式(4−1)を呼出して、(4−1)式の変数ηにη0=1.27を代入し、濃度cを算出する(S260)。具体的には、c=−24.17(1.27)2+86.64(1.27)−55.73=15.3[%]となる。
【0068】
尚、確認のため、この試料Xについて、T=27.5℃の時の濃度を液体物性値測定装置10以外の測定器によって測定すると、15%であり、本実施例の液体物性値測定装置10によって、正しく濃度の測定が行なわれることが分かった。
【0069】
表示部50は、演算処理部46によって算出された粘度及び濃度と、試料温度センサ26で検出された試料温度を表示する(S270)。
【0070】
以上のように構成された液体物性値測定装置10によれば、予めメモリ48に記憶された「濃度と粘度と試料温度」の相対関係及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係に基づいて、測定対象物について算出された粘度と、検出された試料温度から、濃度及び/又は密度が換算されるので、1台の装置によって、粘度だけでなく、濃度や密度等の複数の物性値を求めることが出来る。
【0071】
更に、「濃度と粘度」又は「密度と粘度」の相対関係に加えて、試料温度が変数として加わっているため、特に温度依存性の高い試料にあっては、恒温槽等により試料温度を一定に保って測定する必要がなく、任意の試料温度で複数種類の物性値を測定することが出来るので、迅速な測定に寄与する。
【0072】
また、「濃度と粘度と試料温度」又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が未知の試料についても、異なる濃度の試料で、試料温度を変化させて、粘度を測定することで、これらの関係式が得られ、濃度や密度を求めることが出来るようになる。
【0073】
また、「濃度と粘度と試料温度」又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係がメモリ48に記憶されているため、演算処理部46は、この相対関係に基づいて、検出された試料温度における物性値から所定の試料温度における物性値への換算を行なうことも出来る。この構成により、例えば、試料管理や試料評価を行なう際に、試料温度を一定に管理する設備や手間が不要となり、設備投資の削減、管理・評価の容易化が図られる。
【0074】
従来の試料管理においては、試料温度の管理精度が物性値の測定精度に及ぼす影響が大きいものであったが、特に、粘度計本体12の振動子18が、金属製薄板状である場合には、振動子18の熱容量が小さく、試料の温度管理を行いながら物性値を測定する必要がなくなるため、試料の評価管理にかかる時間が短縮され、かつ、物性値の測定精度が維持される。
【0075】
また、試料中に浸漬される振動子18の熱容量が小さいと同時に、試料の量がわずかで済む音叉振動式粘度計本体12を用いれば、試料温度の安定時間が短く、その結果、短時間での物性値測定、試料評価・管理が可能となる。
【0076】
現在、機械オイル・グリス、液晶用レジスト、印刷用インク、その他産業用液体に求められる各種物理量の測定精度向上、測定時間短縮化、管理評価時間短縮化は、工場ラインでの生産性に直結し、同時に商品の品質改善につながるため、各企業にとっては重要課題となっていて、本発明により、上記産業用液体市場に液体試料の管理評価レベルの向上を提案することが可能となる。
【0077】
以上、液体物性値測定装置10の実施例につき説明したが、本発明の液体物性値測定装置は、上記実施例で説明した構成要件の全てを備えた液体物性値測定装置に限定されるものではなく、各種の変更及び修正が可能である。又、かかる変更及び修正についても本発明の特許請求の範囲に属することは言うまでもない。
【0078】
例えば、関係式を記憶するメモリ48、濃度及び/又は密度の換算を行なう演算処理部46は、先の実施例の液体物性値測定装置10のその他の構成手段と一体に構成されている必要はなく、外部に設置されたコンピュータ等の外部機器13が有していてもよい。この場合の、液体物性値測定装置10aの制御系ブロック図の一例を図3に示す。尚、図3の粘度計本体12aのハードウェア構成例は図2のメモリ48と演算処理部46以外の構成手段と同様であり、図3の粘度計本体12aは、図2の液体物性値測定装置10の一部の構成のみを抽出したものであり、その他は省略されている。
【0079】
図3に示した外部機器13は、演算処理部46と、演算処理部46に接続されたメモリ48、入力部52a、表示部50を有している。又、外部機器13と粘度計本体12aとは、各々に設けられた通信手段54によって接続され、これら外部機器13と粘度計本体12aとが液体物性値測定装置10aを構成している。
【0080】
尚、演算処理部46及びメモリ48が、外部機器13と粘度計本体12aとにそれぞれ設けられていてもよく、その場合には、粘度計本体12a側の演算処理部46が粘度を算出する機能を有し、外部機器13側の演算処理部46が粘度から濃度及び/又は密度を算出する機能を有する、というように、機能を分けることが出来る。これによって、外部機器13は市販のコンピュータを採用し、粘度計本体12aは従来の音叉振動式粘度計を採用して、これに粘度の値を外部に送信するような通信機能を設けるだけでよい。尚、双方向通信は必ずしも必要ではないので、外部出力端子付きの音叉振動式粘度計が粘度計本体12aを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】液体物性値測定装置の駆動機構部の側面図である。
【図2】液体物性値測定装置の電気的構成を示す制御ブロック図である。
【図3】液体物性値測定装置の電気的構成を示す他の制御ブロック図である。
【図4】本発明にかかる液体物性値測定装置で関係式を記憶する際の手順を示すフローチャート図である。
【図5】本発明にかかる液体物性値測定装置で濃度を算出する際の手順を示すフローチャート図である。
【図6】粘度と試料温度の相対関係を濃度毎に示すグラフである。
【図7】粘度と濃度の相対関係を示すグラフである。
【図8】試料温度27.5℃における粘度と濃度の相対関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0082】
10:液体物性値測定装置
12:粘度計本体
13:外部機器
14:フレーム
16:板バネ
18:振動子
20:マグネット
22:電磁コイル
23:電磁駆動部
24:変位センサ
26:試料温度センサ
30:アンプ
32:整流器
34:比較器
36:制御器
38:自動減衰器
40:電流検出器
42:I/V変換器
44:A/D変換器
46:演算処理部
48:メモリ
50:表示部
52:キースイッチ部(入力部)
54:通信手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定装置であって、
マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計本体と、
前記粘度計本体から得られた数値に基づいて前記試料の粘度を算出する演算処理部と、
前記演算処理部で算出された粘度が記憶されるメモリとを備え、
前記粘度計本体は、
前記試料の温度を検出する試料温度センサを備え、
前記メモリには、
前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が予め記憶されるものであり、
前記演算処理部は、
前記試料について算出された粘度を、前記試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する
ことを特徴とする液体物性値測定装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記相対関係が未知である場合、
濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体物性値測定装置。
【請求項3】
前記演算処理部は、
前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記メモリに記憶された相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体物性値測定装置。
【請求項4】
前記相対関係は、
構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶され、
前記演算処理部は、
入力部からの試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係を前記メモリから呼出す
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体物性値測定装置。
【請求項5】
測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定方法であって、
前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係を、予めメモリに記憶する第1の過程と、
マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計で算出された前記試料の粘度を、試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する第2の過程とを
有することを特徴とする液体物性値測定方法。
【請求項6】
前記相対関係が未知である場合、前記第1の過程で、
濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶する
ことを特徴とする請求項5に記載の液体物性値測定方法。
【請求項7】
前記液体物性値測定方法は、
前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算する第3の過程を
有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液体物性値測定方法。
【請求項8】
前記相対関係は、
構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶されるものであり、
前記第2の過程では、
試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係が前記メモリから呼出される
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の液体物性値測定方法。
【請求項1】
測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定装置であって、
マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計本体と、
前記粘度計本体から得られた数値に基づいて前記試料の粘度を算出する演算処理部と、
前記演算処理部で算出された粘度が記憶されるメモリとを備え、
前記粘度計本体は、
前記試料の温度を検出する試料温度センサを備え、
前記メモリには、
前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係が予め記憶されるものであり、
前記演算処理部は、
前記試料について算出された粘度を、前記試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する
ことを特徴とする液体物性値測定装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記相対関係が未知である場合、
濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体物性値測定装置。
【請求項3】
前記演算処理部は、
前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記メモリに記憶された相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体物性値測定装置。
【請求項4】
前記相対関係は、
構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶され、
前記演算処理部は、
入力部からの試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係を前記メモリから呼出す
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体物性値測定装置。
【請求項5】
測定対象物である液体試料の物性値を測定する液体物性値測定方法であって、
前記試料の「濃度と粘度と試料温度」及び/又は「密度と粘度と試料温度」の相対関係を、予めメモリに記憶する第1の過程と、
マグネットと継鉄により構成される磁気回路と電磁コイルの組み合わせにより発生する電磁力により、対になった2以上の振動子を駆動し、駆動された振動子の変動量を変位センサにより測定検出する方式の音叉振動式粘度計で算出された前記試料の粘度を、試料温度センサで検出された試料温度と、前記相対関係に基づいて、濃度及び/又は密度に換算する第2の過程とを
有することを特徴とする液体物性値測定方法。
【請求項6】
前記相対関係が未知である場合、前記第1の過程で、
濃度及び/又は密度が異なる複数の前記試料について、試料温度を変化させて粘度を算出し、前記試料温度をパラメータとした濃度と粘度及び/又は密度と粘度の相対関係から近似式を算出して前記メモリに記憶する
ことを特徴とする請求項5に記載の液体物性値測定方法。
【請求項7】
前記液体物性値測定方法は、
前記算出された粘度と、前記換算された濃度及び/又は密度とを、前記相対関係に基づいて、所定の温度における値に換算する第3の過程を
有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液体物性値測定方法。
【請求項8】
前記相対関係は、
構成材料の異なる試料毎に前記メモリに記憶されるものであり、
前記第2の過程では、
試料種類の選択入力に応じて、測定対象物に対応する前記相対関係が前記メモリから呼出される
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の液体物性値測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−214842(P2006−214842A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27255(P2005−27255)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000127570)株式会社エー・アンド・デイ (136)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000127570)株式会社エー・アンド・デイ (136)
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