説明

液体現像剤、液体現像装置、湿式画像形成装置及び湿式画像形成方法

【課題】湿式現像法における消費エネルギーの削減及び画質の向上を課題とする。
【解決手段】感光体ドラム10の表面を帯電させる帯電装置11と、帯電された感光体ドラム10の表面に静電潜像を形成させる露光装置12と、液体現像剤を用いて感光体ドラム10表面の静電潜像を現像する液体現像装置14と、現像された画像を記録媒体に転写する一次転写ローラ20及び二次転写部4とを備える湿式画像形成装置1Aにおいて、液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有する液体現像剤であって、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料であることを特徴とする液体現像剤が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、又はこれらの機能を併せ持つ複合機等に採用され得る電子写真方式の1つである湿式現像法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、帯電した着色粒子で静電潜像を顕像化する電子写真方式を用いた画像形成装置に採用される現像方式は、現像剤の形態により、乾式現像法と湿式現像法とに大別される。そのうち、湿式現像法では、電気絶縁性のキャリア液中に着色粒子を分散させた液体現像剤が用いられる。液体現像剤中で帯電した着色粒子は、電気泳動の原理により現像ローラ表面から感光体ドラム表面に移動し、感光体ドラム表面の静電潜像を顕像化する。得られた画像は感光体ドラムから記録媒体に転写される。液体現像剤は、着色粒子が大気中に飛散する可能性がほとんどないため、例えば平均粒子径がサブミクロンサイズの微細な着色粒子が使用でき、高解像度で階調性に優れた高画質な画像が得られる。
【0003】
電子写真方式を採用した画像形成装置では、画像すなわち着色粒子を記録媒体に定着させる方式として、熱定着方式と光定着方式とが知られている。熱定着方式は、例えば特許文献1に記載されるように、着色粒子が顔料を結着樹脂に分散させたトナーである場合に、結着樹脂を熱で溶融させることによりトナーを記録媒体に定着させる方式である。光定着方式は、例えば特許文献2に記載されるように、着色粒子が顔料を結着樹脂に分散させたトナーである場合に、結着樹脂として光反応性官能基を有する結着樹脂を用い、結着樹脂を光で重合させることによりトナーを記録媒体に定着させる方式である。
【0004】
その中でも、特許文献3は、特定の共重合樹脂と特定の顔料を用いることにより、電気絶縁性分散媒に不溶な核部分と分散媒に溶解する外縁部分とをもつ顔料を包含した共重合樹脂粒子を分散した液体現像剤が得られること、並びにその液体現像剤を使用することで、粒子濃度を高くしても、ゲル化、凝集、沈殿等が生じることがなく、優れた分散安定性及び転写効率が得られることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−242039号公報
【特許文献2】特開2003−241440号公報
【特許文献3】特開平8−262809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来法においては、顔料を包含した液体現像剤を記録紙に定着するために、依然として高い温度で樹脂を溶解させる加熱定着が必要である。つまり、従来の湿式現像法を採用した湿式画像形成装置における熱定着方式や光定着方式では、着色粒子を記録媒体に定着させるために多大な熱エネルギーや光エネルギーを消費している。本発明は、そのような多大な熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、着色粒子を記録媒体に定着させ、もって湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減すること、並びに画像の質の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、キャリア液に溶解する、着色粒子を定着させるための有機高分子化合物を液体現像剤に含有させ、かつ着色粒子を顔料そのものにすることにより、現像剤を高温で加熱する定着工程を経なくとも、非加熱又は低温で着色粒子が記録媒体に定着されることを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、前記課題を解決するための本発明の一局面は、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有する液体現像剤であって、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、前記着色粒子が顔料であることを特徴とする液体現像剤である。
【0009】
前記液体現像剤において、有機高分子化合物は、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル又はポリビニルブチラールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
前記液体現像剤において、有機高分子化合物の含有量が1〜10質量%であることが好ましい。
【0011】
前記液体現像剤において、キャリア液の堆積抵抗率が1012Ω・cm以上であることが好ましい。
【0012】
前記課題を解決するための本発明の他の局面は、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置であって、液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料である液体現像剤を用いることを特徴とする液体現像装置である。
【0013】
前記課題を解決するための本発明のさらなる他の局面は、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置と、現像された画像を記録媒体に転写する転写装置とを備える湿式画像形成装置であって、液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料である液体現像剤を用いることを特徴とする湿式画像形成装置である。
【0014】
前記課題を解決するための本発明のさらに他の局面は、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電工程と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光工程と、液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料である液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する現像工程と、現像された画像を記録媒体に転写する転写工程と、画像が転写された記録媒体を排出部に排出する排出工程とを有することを特徴とする湿式画像形成方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液体現像剤、液体現像装置、湿式画像形成装置及び湿式画像形成方法によれば、多大な熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、着色粒子としての顔料を非加熱又は低温で記録媒体に定着させることができ、湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減が図られる。また、従来から用いられてきた多大な熱や光のエネルギーを用いた定着装置自体も削減又は簡素化することができ、湿式画像形成装置の簡素化やコストダウンを行うことができる。さらに、着色粒子が剥がれたり、画像を汚したりしないため、高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る湿式画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1に示される湿式画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<液体現像剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、基本構成として電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子とを有している。液体現像剤は、さらに着色粒子を記録媒体に定着させるための有機高分子化合物を含有しており、その有機高分子化合物はキャリア液に溶解している。着色粒子は顔料である。画像が記録媒体に転写された後、キャリア液が記録媒体の内部に吸収される際に、前記有機高分子化合物が、記録媒体の表面上に留まっている顔料を被覆しつつ、記録媒体の表面上に留まって被膜を形成するので、この有機高分子化合物の被膜によって顔料が記録媒体に定着される。これにより、多大な熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、顔料すなわち画像を非加熱又は低温で記録媒体に定着させることができ、湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減が図られる。
【0018】
[キャリア液]
一般に、電気絶縁性のキャリア液は液体キャリアの役割を果たし、得られる液体現像剤の電気絶縁性を高めることを目的として用いられる。電気絶縁性のキャリア液としては、後述の有機高分子化合物を溶解させることができるもの(有機高分子化合物の溶解度が相対的に高いもの)が用いられる。
【0019】
さらに前記物性に加えて、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。
【0020】
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油等が挙げられる。
【0021】
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素、又はそれらの混合物等が好ましい。より具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタン等が用いられ得る。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤、及び揮発性の相対的に低い有機溶剤(例えば沸点が200℃以上のもの等)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィン等が好ましく用いられ得る。
【0022】
また、植物油の具体的な例示としては、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油等が挙げられ、なかでもトール油脂肪酸等が好ましく用いられ得る。
【0023】
前記キャリア液としては市販のものを用いてもよく、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートールFA−1P」、「ハートールFA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」等が好ましく用いられ得る。
【0024】
本実施形態では、有機高分子化合物がキャリア液に溶解する限り、キャリア液として、有機高分子化合物の溶解度が相対的に高いもの(有機高分子化合物の良溶媒)のみを用いてもよく、又は、有機高分子化合物の溶解度相対的に低いもの(有機高分子化合物の貧溶媒)を混合して用いてもよい。その場合、用いるキャリア液の種類によってキャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くならないように留意する。例えば、トール油脂肪酸をはじめ、植物性の油等は、流動パラフィン等のような脂肪族炭化水素等と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、有機高分子化合物をキャリア液に良好に溶解させるために、キャリア液として前記油類を含むときは、その含有量に留意する必要がある。
【0025】
キャリア液全体における前記油類の含有量が多いほど、有機高分子化合物の溶解度の点で有利となるが、導電率の点で不利となる。一方、キャリア液全体における前記油類の含有量が少ないほど、導電率の点で有利となるが、有機高分子化合物の溶解度の点で不利となる。
【0026】
以上より、キャリア液全体における前記油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる有機高分子化合物の種類や含有量等に依存するが、例えば、2〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜60質量%である。2質量%未満では、有機高分子化合物をキャリア液に良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。液体現像剤の導電率が過度に高くなると、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性がある。
【0027】
本実施形態では、液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸等の前記油類に有機高分子化合物を溶解させ、得られた溶液(以下、本明細書において「樹脂溶液」ともいう)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
【0028】
[着色粒子]
本実施形態では、着色粒子として、顔料を結着樹脂に分散させたトナーではなく、顔料そのものを用いる。そのような顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0029】
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0030】
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0031】
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0032】
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。顔料の平均粒子径が0.1μm未満であると、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性がある。顔料の平均粒子径が1.0μmを超えると、定着性が低下する可能性がある。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
【0033】
[分散安定剤]
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」等が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」等も好ましく用いられ得る。
【0034】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
【0035】
[有機高分子化合物]
本実施形態に係る液体現像剤は、前記キャリア液に溶解でき、かつ前記着色粒子を記録媒体に定着させることのできる有機高分子化合物を含有する。このような有機高分子化合物としては、キャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、記録媒体への画像の転写後に、記録媒体の表面上でキャリア液中の有機高分子化合物の濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、有機高分子化合物が記録媒体の表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、特に限定なく用いることができる。
【0036】
なお、「記録媒体」とは、例えば、上質普通紙、プリント専用紙、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート等、画像を形成することが可能なあらゆる記録媒体を意味する。以下の説明では、それらの記録媒体を指して単に「シート」という用語を用いることもある。
【0037】
具体的な例示としては、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラール等が挙げられる。好ましくは、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー等を用いると、より優れた効果が得られる。これらは単独で用いることも、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0038】
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液に溶解した状態で存在する。また、有機高分子化合物がキャリア液に溶解している状態とは、ゲルの状態も含まれる。有機高分子化合物の種類や分子量等によっては、有機高分子化合物がキャリア液中で相互に絡み合って流動性が相対的に低いゲルの状態になることがある。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合や、有機高分子化合物とキャリア液との親和性が低い場合、あるいは気温が低い場合等はゲルの状態となることが多い。一方、キャリア液中での有機高分子化合物の相互の絡み合いが少なく、流動性が相対的に高いときは溶液の状態となる。
【0039】
本実施形態においては、有機高分子化合物が全てあるいは大半がキャリア液に溶解していることが必要となるため、キャリア液に溶解しない有機高分子化合物を使用することはできない(あるいは有機高分子化合物を溶解させることができないキャリア液を使用することはできない)。有機高分子化合物が粒子としてキャリア液中に存在すると、粒子は画像部にのみ存在し、記録媒体上に着色粒子等と一緒に転写される。不揮発性のキャリア液は記録媒体内部に浸透するため、少なくともキャリア液以外の着色粒子および粒子などが記録媒体表面上に留まるが、有機高分子化合物の粒子が残っているとその粒子は固着が不十分であり、擦ったりすることにより着色粒子と共に記録媒体上から脱離してしまい画像が乱れる。しかし、有機高分子化合物が十分にキャリア液中に溶解して存在している場合には、キャリア液が記録媒体内部に浸透すると、有機高分子化合物が絡み合って析出し、着色粒子表面を覆うため、着色粒子は記録媒体表面へ強固に固着され、高品質な画像を得ることが可能となる。
【0040】
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類によっても異なるが、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、2〜6質量%であり、さらに好ましくは、3〜4質量%である。
【0041】
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、記録媒体の表面上に留まる有機高分子化合物被膜の量が少なくなり過ぎ、造膜性ひいては定着性が過度に不足する可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、記録媒体の表面上に留まる有機高分子化合物被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。また、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性もある。
【0042】
以下、本実施形態において使用し得る有機高分子化合物について、それぞれより具体的に説明する。
【0043】
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れたものである。より詳しくは、本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0044】
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体としては、環状オレフィン共重合体がキャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、シートへの画像の転写後に、シートの表面上でキャリア液中の環状オレフィン共重合体の濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、環状オレフィン共重合体がシートの表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物、等が挙げられる。
【0045】
前記環状オレフィンの具体例としては、
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の3環の環状オレフィン;
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等の4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィン;等が挙げられる。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
前記α−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましく、その具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
本実施形態においては、環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0048】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はなく、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0049】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられ得るが、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。その場合の、共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液への環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
【0050】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体として、市販されているものを使用することができる。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で使用できるスチレン系エラストマーとしては、スチレン系エラストマーがキャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、シートへの画像の転写後に、シートの表面上でキャリア液中のスチレン系エラストマーの濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、スチレン系エラストマーがシートの表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。その具体例としては、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体等が挙げられる。前記ブロック共重合体としては、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、式1で表される構造を有するブロック共重合体等が挙げられる。
【0052】
【化1】

【0053】
前記ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0054】
重合体ブロックAは、前記芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0055】
前記ブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテン等が挙げられる。
【0056】
前記ブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0057】
重合体ブロックBは、前記オレフィン系化合物及び前記共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0058】
前記ブロック共重合体の好ましい具体例としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体等が挙げられる。
【0059】
また、本実施形態で使用し得るスチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
【0060】
【化2】

【0061】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。
【0062】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
【0063】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
【0064】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
【0065】
本実施形態においては、スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」等;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;組成物として、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子であり、置換率は45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が例えばヒドロキシル基等によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性、熱安定性等に優れている。
【0067】
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとしては、セルロースエーテルがキャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、シートへの画像の転写後に、シートの表面上でキャリア液中のセルロースエーテルの濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、セルロースエーテルがシートの表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
【0068】
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(ポリビニルブチラール)
本実施形態において使用できるポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等のシートに対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液及びシートの両方に対して親和性が高いものである。
【0070】
【化3】

【0071】
本実施形態で使用し得るポリビニルブチラールとしては、ポリビニルブチラールがキャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、シートへの画像の転写後に、シートの表面上でキャリア液中のポリビニルブチラールの濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、ポリビニルブチラールがシートの表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、特に限定されない。例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−C等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0072】
[製造方法]
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液、顔料、有機高分子化合物、及び、状況に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミル等を用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、状況に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解あるいは混合・分散させることにより、製造することができる。
【0073】
前記混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。前述したように、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数等を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、前述したように、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、前述したように、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性がある。
【0074】
本実施形態においては、キャリア液に有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、樹脂溶液(キャリア液に有機高分子化合物を溶解させたものをいう)と、顔料分散体(キャリア液に顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
【0075】
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するためには、顔料の粒度分布を測定する必要がある。顔料の粒度分布は、例えば次のようにして測定することができる。製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液と同じキャリア液で10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いて、フロー方式により測定する。
【0076】
<液体現像装置及び湿式画像形成装置>
次に、図面を参照して、本実施形態に係る液体現像装置及び湿式画像形成装置を説明する。なお、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を表す用語は、単に説明の明瞭化を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、以下の説明で用いられる「シート」という用語は、例えば、上質普通紙、プリント専用紙、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート等、画像を形成することが可能なあらゆる記録媒体を意味する。
【0077】
図1は、本実施形態に係る湿式画像形成装置の概略構成図であり、図2は、図1に示される湿式画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。なお、本実施形態に係る湿式画像形成装置はカラープリンタであるが、例えば、モノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等、シート、すなわち記録媒体に画像を形成することができるその他のあらゆる湿式画像形成装置でも構わない。
【0078】
図1に示されるように、本実施形態に係る湿式画像形成装置1Aは、画像形成のための様々なユニットや部品を収納している。画像形成装置1Aは、図1に示された部分の下部に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色用の液体現像剤循環装置をさらに収納しているが、ここではその図示を省略している。
【0079】
湿式画像形成装置1Aは、画像データに基づいて画像を形成するタンデム式の画像形成部2と、シートを収容するシート収容部3と、画像形成部2で形成された画像をシート上に転写する二次転写部4と、画像の定着が完了したシートを機外に排出する排出部6と、シート収容部3から排出部6までシートを搬送するシート搬送部7とを備えている。
【0080】
一般に、湿式画像形成装置は、通常は、二次転写部4と排出部6との間に、図中仮想線で示すように、転写された画像をシートに定着させるための定着部5(シートを挟んで対向配置された加熱ローラ51及び加圧ローラ52を備える)が配置される。しかし、本実施形態に係る湿式画像形成装置1Aでは、そのような定着部がなくてもよく、代わりに、単なるシート搬送用のローラ8,8が備えられているだけでもよい。つまり、本実施形態に係る湿式画像形成装置1Aでは、前述の本実施形態に係る液体現像剤を用いることにより、定着部を必要とすることなく、シートに転写された画像をシートに定着させることができる。よって、この場合には、従来から用いられてきた熱や光のエネルギーを用いた定着部5を削減することができ、湿式画像形成装置1Aの簡素化やコストダウンを行うこともできる。
【0081】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、FBとを備える。
【0082】
中間転写ベルト21は、導電性を有する、幅広の、無端状のベルト部材であり、図1において時計回りに循環駆動される。中間転写ベルト21の循環駆動において外側を向く面を「表面」と記し、内側を向く面を「裏面」と記す。
【0083】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、中間転写ベルト21の下側走行面に沿って並べて配置されている。なお、画像形成ユニットFY、FM、FC、FBの配置の順番は図示された限りではないが、図1に示された配置は、各色の混色による完成画像への影響を少なくする観点から好ましい配置の1つである。
【0084】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、感光体ドラム10と、帯電装置11と、LED露光装置12と、液体現像装置14と、一次転写ローラ20と、クリーニング装置26と、除電装置13と、キャリア液除去ローラ30とを備える。なお、画像形成ユニットのうち、最も二次転写部4に近接して位置するブラックの画像形成ユニットFBには、キャリア液除去ローラ30が設けられていないが、その他の構成は同じである。
【0085】
円柱状の感光体ドラム10の表面(周面)は、帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)された着色粒子で顕像化された画像を担持可能である。図示される感光体ドラム10は、反時計回りに回転可能である。
【0086】
帯電装置11は、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる。この帯電装置11の動作は、帯電工程を構成する。
【0087】
LED露光装置12は、LEDを光源として有し、外部の機器から入力された画像データに基づいて、一様に帯電された感光体ドラム10の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム10の表面に、画像データに基づいた静電潜像が形成される。この露光装置12の動作は、露光工程を構成する。
【0088】
液体現像装置14は、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子とを有する液体現像剤を、感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に対向するように保持する。これにより、帯電された着色粒子で感光体ドラム10表面の静電潜像がトナー像(顕像)化され、トナー像として現像される。この液体現像装置14の動作は、現像工程を構成する。なお、本実施形態に係る液体現像装置14及び湿式画像形成装置1Aは、液体現像剤として、上述した液体現像剤を用いる。
【0089】
図2に示されるように、液体現像装置14は、現像容器140、現像ローラ141、供給ローラ(アニロックスローラ)142、支持ローラ143、供給ローラブレード144、現像クリーニングブレード145、現像剤回収装置146及び現像ローラ帯電装置147を含む。
【0090】
現像容器140は、その内部に、液体現像剤が供給され、液体現像剤を貯留する。液体現像剤は、キャリア液と着色粒子との濃度調整が予め行われた後、供給ノズル278から現像容器140の内部へ供給される。その場合、液体現像剤は、供給ローラ142と支持ローラ143とのニップ部へ向けて供給され、余剰分は支持ローラ143の下方へ落下し、現像容器140の底部に貯留される。貯留された液体現像剤は、パイプ82を通して回収された後、再生・再利用される。
【0091】
支持ローラ143は現像容器140の略中央に配置され、供給ローラ142に下方から当接されてニップ部を形成する。供給ローラ142は、支持ローラ143の直上ではなく、供給ノズル278から離れる方向にずれて配置される。供給ローラ142の周面には液体現像剤を保持するための溝が設けられる。図中に点線矢印で示すように、支持ローラ143は反時計方向に、供給ローラ142は時計方向に回転する。
【0092】
供給ノズル278から供給される液体現像剤は、供給ローラ142と支持ローラ143とのニップ部の支持ローラ143の回転方向上流側で一時的に滞留され、両ローラ142,143の回転に伴って、供給ローラ142の溝に保持された状態で上方へ運ばれる。供給ローラブレード144は、供給ローラ142の周面に圧接され、供給ローラ142の溝に保持される液体現像剤の量が所定量になるように規制する。供給ローラブレード144により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器140の底部に貯留される。
【0093】
現像ローラ141は、現像容器140の上部開口部に、供給ローラ142と接するように配置される。現像ローラ141は供給ローラ142と同方向に回転される。この結果、現像ローラ141と供給ローラ142とが当接するニップ部では、現像ローラ141の表面は供給ローラ142の表面と逆方向に移動する。これにより、現像ローラ141の周面には、供給ローラ142の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラ142の溝に保持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)が所定値に規制されているので、現像ローラ141の表面に担持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)もまた所定値に保たれる。
【0094】
現像ローラ帯電装置147は、着色粒子の帯電極性と同極性のバイアス電位(本実施形態ではプラス極性のバイアス電位)を現像ローラ141に外表面側から与えること(現像コロナチャージ)により、現像ローラ141の表面に担持された液体現像剤の薄層中の着色粒子を現像ローラ141の表面側に移動させる。この結果、液体現像剤の薄層中の着色粒子が電界的作用により現像ローラ141側に集合・圧縮され(コンパクション処理)、現像ローラ141側に高濃度の着色粒子の層が形成される。この後、液体現像剤の薄層は、感光体ドラム10に供給されて、感光体ドラム10上の静電潜像が現像される。これにより、現像効率が向上されるので、精細な画像が形成される。現像ローラ帯電装置147は、現像ローラ141と供給ローラ142との間の接触部よりも現像ローラ141の回転方向下流側であって、現像ローラ141と感光体ドラム10との間の接触部よりも現像ローラ141の回転方向上流側において、現像ローラ141の周面に対向するように設けられる。つまり、現像ローラ帯電装置147は、現像コロナチャージによって電界を発生させる。これにより、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層が、現像ローラ141表面上の着色粒子層と、着色粒子層上のキャリア液層とに2層化する。現像領域(現像ローラ141と感光体ドラム10との対接領域及びその周辺領域)においては、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層がこのように2層化した状態で感光体ドラム10表面に接触する。このとき、現像ローラ141側に集合・圧縮された着色粒子が電気泳動の原理により現像ローラ141表面から感光体ドラム10表面に移動し、感光体ドラム10表面の静電潜像を画像として顕像化する。現像ローラ帯電装置147による現像コロナチャージによって、現像前に、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層内の着色粒子が現像ローラ141の表面上に圧縮されているので(コンパクション処理)、感光体ドラム10上の非画像域においては、着色粒子が接触しないため、カブリを抑制することができる。また、現像コロナチャージによる電界形成によって、現像ローラ141上の液体現像剤の薄層内の着色粒子に電荷が注入されるので、現像電界によって着色粒子が感光体ドラム10上の静電潜像上に反応よく現像されるとともに、感光体ドラム10の表面上に着色粒子が静電気的に強固に付着する。
【0095】
現像ローラ141は感光体ドラム10と接し、感光体ドラム10の表面の静電潜像の電位と現像ローラ141に印加される現像電界との電位差によって、画像データに基づいたトナー像が感光体ドラム10の表面に形成される。
【0096】
現像クリーニングブレード145は、現像ローラ141の感光体ドラム10との接触部の回転方向下流側に接触するように配置され、感光体ドラム10への現像動作を終えた現像ローラ141の表面の液体現像剤を除去する。
【0097】
現像剤回収装置146は、現像クリーニングブレード145で除去された液体現像剤を回収して、液体現像剤循環装置のパイプ81へ液体現像剤を送り出す。液体現像剤は現像クリーニングブレード145の表面に沿って流下するが、液体現像剤の粘度が高いことから、現像剤回収装置146には液体現像剤の送り出しを補助する送り出しローラが備えられている。
【0098】
一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21の裏面に、感光体ドラム10と対向して配置される。一次転写ローラ20には、電源(図示せず)から画像中の着色粒子とは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧を印加される。一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21と接触している位置で、中間転写ベルト21に着色粒子と逆極性の電圧を印加する。中間転写ベルト21は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト21の表面側及びその周辺に着色粒子が引き付けられる。つまり、感光体ドラム10の表面に現像された画像が中間転写ベルト21に転写される。中間転写ベルト21は、画像を担持して、シートまで搬送する像担持体として機能する。
【0099】
本実施形態に係る湿式画像形成装置では、前述の本実施形態に係る液体現像剤を用いることにより、感光体ドラムと中間転写体とのニップ部における液体現像液の堆積を抑えることができ、画像形成におけるにじみの発生を抑制することができる。
【0100】
クリーニング装置26は、感光体ドラム10から中間転写ベルト21に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置である。クリーニング装置26は、残留現像剤搬送スクリュー261と、クリーニングブレード262とを備える。クリーニング装置26内に配置される残留現像剤搬送スクリュー261は、クリーニングブレード262によって掻き取られ、クリーニング装置26内に収納された残留現像剤をクリーニング装置26の外部に搬送する。
【0101】
板状のクリーニングブレード262は、感光体ドラム10の表面に残留した液体現像剤を掻き取るように、感光体ドラム10の回転軸方向に延びる。クリーニングブレード262の一端部は、感光体ドラム10の表面に摺接し、感光体ドラム10の回転に伴って感光体ドラム10上に残留した液体現像剤を掻き取る。
【0102】
除電装置13は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード262による液体現像剤の除去後、感光体ドラム10の表面を光源からの光によって除電する。
【0103】
略円柱状のキャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10の回転軸と平行な回転軸を中心として感光体ドラム10と同方向に回転可能である。キャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10と中間転写ベルト21とが接触する位置よりも二次転写部4が配置されている側に配置されており、中間転写ベルト21の表面からキャリア液を除去する。
【0104】
図1に示されるシート収容部3は、その表面に画像を定着させ、形成させるシートを収容する。シート収容部3は、湿式画像形成装置1Aの下部に配置される。また、シート収容部3は、シートを収容可能に形成された給紙カセット(図示せず)を含む。
【0105】
二次転写部4は、中間転写ベルト21上に形成された画像をシートに転写する。二次転写部4は、中間転写ベルト21を支持する支持ローラ41と、支持ローラ41に対向して配置された二次転写ローラ42とを有する。なお、本実施形態では、この二次転写部4と、前記中間転写ベルト21、前記一次転写ローラ20とが、転写装置を構成する。そして、この二次転写部4の動作、前記中間転写ベルト21の動作及び前記一次転写ローラ20の動作は、転写工程を構成する。
【0106】
二次転写部4の上側には、前述したように、定着部5に代えて、搬送ローラ8,8が備えられていてもよい。
【0107】
湿式画像形成装置1Aの上面に設けられた排出部6には、画像が転写され、画像の定着が完了したシートが排出される。シート搬送部7は、複数の搬送ローラ対を備え、シート収容部3から、二次転写部4を経て、排出部6までシートを搬送する。このシート搬送部7の、画像が転写されたシートを排出部6に排出する動作は、排出工程を構成する。
【0108】
<湿式画像形成方法>
前記湿式画像形成装置1Aを用いてシートに画像を形成することにより、本実施形態に係る湿式画像形成方法が達成される。すなわち、本実施形態に係る湿式画像形成方法は、感光体ドラム10の表面を帯電させる帯電工程と、帯電された感光体ドラム10の表面に静電潜像を形成させる露光工程と、液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子とを有し、キャリア液に溶解する有機高分子化合物を含有し、着色粒子が顔料である液体現像剤を用いて感光体ドラム10表面の静電潜像を現像する現像工程と、現像された画像をシートに転写する転写工程と、画像が転写されたシートを排出部6に排出する排出工程とを有する。本実施形態に係る湿式画像形成方法では、前記液体現像剤を用いることにより、シートに転写された画像を熱や光のエネルギーを用いてシートに定着させる定着工程を経ることなく(あるいは、たとえ定着工程を経ても、従来の加熱よりは大幅に低い温度での定着工程でよい)、シートに転写された画像をシートに定着させることができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
1.液体現像剤の製造
(液体現像剤A〜E、G〜K)
キャリア液1としての流動パラフィン(松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−55」)72質量部に、着色粒子としてのシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)20質量部と、分散安定剤としてのISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」8質量部とを、ロッキングミル(セイワ技研社製 RM-10)を用いて、駆動周波数60Hzにて、1時間、室温(25℃)において混合・分散させることにより、高濃度顔料分散体を調製した。なお、この混合・分散過程において発熱が見られたが温度調整は行っていない。顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は0.5μmであった。
【0110】
次に、下記表1に示すそれぞれの有機高分子化合物(樹脂)15質量部を、同じく表1に示すそれぞれの樹脂溶液溶剤85質量部に、攪拌装置(アズワン社製のトルネード SM−102)を用いた撹拌混合(室温(25℃)、回転数:800rpm、時間:30分)によって溶解し、樹脂溶液を得た。ここで前記キャリア液1と異なるキャリア液を用いた場合には、表1においてキャリア液2と記した。すなわち、本実施例において、キャリア液1およびキャリア液2とは、それぞれの現像剤に用いる1種類目のキャリア液(キャリア液1)および2種類目のキャリア液(キャリア液2)を指す。
【0111】
続いて、得られた樹脂溶液と高濃度の前記顔料分散体と追加のキャリア液とを、それぞれ下記表2に示す混合比で、攪拌装置(アズワン社製のトルネード SM−102)を用いて撹拌混合(室温(25℃)、回転数:800rpm、時間:30分)することによって、液体現像剤A〜E(実施例1〜5)および液体現像剤G〜K(比較例1〜5)を得た。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
(液体現像剤F)
キャリア液としてのひまし油(伊藤製油社製の精製ひまし油「LAV」)36.5質量部にポリビニルブチラール(積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)BL−S」)3.8質量部を溶解し、樹脂溶液を作製した。樹脂溶液40.3部とキャリア液としてのカネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」54.7質量部に、着色粒子としてのシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)5質量部とを、ロッキングミル(セイワ技研社製 RM-10)を用いて、駆動周波数60Hzにて、1時間、混合・分散(室温25℃において、発熱が見られたが温度調整せず)させることにより、液体現像剤F(実施例6)を調製した。なお、液体現像剤F中の顔料の平均粒子径(D50)は0.4μmであった。
【0115】
(液体現像剤M)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.0mol、テレフタル酸4.5mol、無水トリメリット酸0.5molと酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、230℃で8時間かけて反応させ、さらに8.3kPaにて軟化点120℃のポリエステル樹脂を得た。
【0116】
上記ポリステル樹脂60重量部とシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)40重量部とをヘンシェルミキサーで乾式混合し、二軸押出機を用いて溶融混練した後、気流式粉砕機で粉砕、風力分級機で分級して、体積平均粒径9.5μmのトナーを得た。
【0117】
次いで、キャリア液としての流動パラフィン(松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−55」)92.9質量部に、上記のトナー5質量部と、分散安定剤としてのISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」2.1質量部とを、室温でボールミル(ヤマト科学社製 ユニバーサルボールミル UB32)を用いて、回転数100rpmにて、96時間、混合・分散させることにより、液体現像剤を調製した。液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)は0.4μmであった。
【0118】
なお、前記で得られた液体現像剤A〜Mにおける、顔料、分散剤、有機高分子化合物、キャリア液の配合比(質量%)を、下記表3にまとめて示す。下記表3におけるキャリア液1およびキャリア液2は、前記キャリア液1または表1および表2中のキャリア液1および2に該当する。
【0119】
【表3】

【0120】
(画像の形成)
図1に示された、定着部を備えていない湿式画像形成装置(カラープリンタ)1A(京セラミタ社製の湿式画像形成装置の実験機、線速:116mm/s)を用い、シアンの画像形成ユニットFCにシアンの前記液体現像剤A〜Dを仕込んで、シートとしてのプリント専用紙(三菱製紙社製の湿式現像専用紙「EP−L」:128g/m)上に、顔料載り量で0.026mg/cm相当の均一塗りつぶしの正方形のソリッド画像(5cm×5cm)を形成した。その場合に、現像ローラ141の周面上における液体現像剤層の厚みを5μmに設定した。また、画像データに基づいた画像を感光体ドラム10の表面に形成するときに現像ローラ141に印加する現像電界を400Vとした。そして、排出部6に排出されたシートを画像評価に供した。その他の画像形成条件を以下に示す。
・現像ローラ帯電装置147による現像コロナチャージのバイアス電位:4000V
・中間転写ベルト21:ポリイミド製
・感光体ドラム10の暗電位:+550V
・感光体ドラム10の明電位:+10V
・一次転写ローラ20による一次転写電圧:300V(定電圧制御)
・二次転写部4における二次転写電流:40μA(定電流制御)
(コスリ試験(定着判定))
前記液体現像剤A〜Dを用いて5cm×5cmのソリッド画像を印字し、印字部分を300gの錘で10往復擦り、ソリッド部分の周囲の濃度をマクベス分光濃度計で測色した。ソリッド画像以外の非画像部の濃度を分光濃度計(グレタグマクベス社製の「X−riteスペクトロアイ」)を用いて測定した。より詳しくは、画像形成後の非画像部の濃度から画像形成前の非画像部の濃度を差し引いた値をコスリ試験後の「定着評価非画像部濃度」として算出した。評価基準は、かぶり濃度が0.02未満のものを「○」、0.02以上0.06未満のものを「△」、0.06以上のものを「×」とした。結果を表3に示す。
【0121】
(結果考察)
表1から明らかなように、キャリア液中に顔料が分散された液体現像剤において、キャリア液に溶解する有機高分子化合物を含有する液体現像剤A〜J(実施例1−10)では、着色粒子として顔料そのものを用いても、用紙への定着性が示された。さらに、液体現像液中の有機高分子化合物の含有量が1〜10質量%の範囲内であった液体現像剤A〜F(実施例1〜6)では、より良好な定着性を示した。
【0122】
一方、キャリア液に溶解する有機高分子化合物を含有しない液体現像剤K(比較例1)および結着樹脂に包含される顔料(トナー)を含有する液体現像剤M(比較例2)では、画像がうまく定着しなかった。
【0123】
以上より、着色粒子を定着できる有機高分子化合物をキャリア液に溶解させた液体現像液を用いることによって、顔料そのものをキャリア液に分散させた場合でも、良好な定着性を示し高品質な画像が得られることが示された。
【0124】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、実施形態及び実施例において、液体現像剤が、電気絶縁性のキャリア液と、キャリア液中に分散された着色粒子と、着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、有機高分子化合物がキャリア液に溶解し、着色粒子が顔料である場合においては、キャリア液中に存在する有機高分子化合物が、記録媒体の表面上に留まっている顔料を被覆しつつ、記録媒体の表面上に留まって被膜を形成し、この有機高分子化合物の被膜によって顔料が記録媒体に定着される。これにより、熱エネルギーや光エネルギーの消費をなくすか、若しくは大幅に抑えて、非加熱又は低温加熱で顔料つまり画像を記録媒体に定着させることができ、湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減が図られる。また、従来から用いられてきた熱や光のエネルギーを用いた定着部自体も削減又は簡素化することができ、湿式画像形成装置の簡素化やコストダウンを行うことができる。
【0125】
さらに、本発明の液体現像剤を用紙に転写するとき、画像部ではキャリア液が用紙へ浸透し、用紙の表面に有機高分子化合物が析出し着色粒子が用紙に定着される。非画像部では、キャリア液が用紙へ浸透することで、用紙の表面に有機高分子化合物が析出する。よって、画像部及び非画像部において、析出した有機高分子化合物は用紙に定着されるため、着色粒子がはがれたり、画像を汚したりはしない。そのため、高品質な画像を得ることが可能となる。
【0126】
有機高分子化合物が、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、又はポリビニルブチラールから選択される少なくとも1種であるときは、多大な熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、定着性に優れる液体現像剤が確実に得られる。
【0127】
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量が1〜10質量%であるときは、多大な熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、優れた定着性を維持しつつ、被膜の良好な乾燥性及び画像の耐擦過性が確保される。
【0128】
キャリア液の体積抵抗率が1012Ω・cm以上であるときは、現像性がより良好となる。
【0129】
前記液体現像剤を用いる液体現像装置は、省エネルギーの観点から好ましい液体現像装置である。
【0130】
前記液体現像剤を用いる湿式画像形成方法は、画像を記録媒体に定着させるために熱や光のエネルギーを消費しない、省エネルギーの観点から好ましい湿式画像形成方法である。
【0131】
前記液体現像剤を用いる湿式画像形成方法は、記録媒体に転写された画像を多大な熱や光のエネルギーを用いて記録媒体に定着させる定着工程を経ることなく、記録媒体に転写された画像を記録媒体に定着させることができる、省エネルギーの観点から好ましい湿式画像形成方法である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、カラープリンタ、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等に採用され得る電子写真方式の1つである湿式現像法の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0133】
1A 湿式画像形成装置(カラープリンタ)
2 画像形成部
4 二次転写部(転写装置)
6 排出部
7 シート搬送部
10 感光体ドラム
11 帯電装置
12 露光装置
14 液体現像装置
20 一次転写ローラ(転写装置)
21 中間転写ベルト
141 現像ローラ
142 供給ローラ(アニロックスローラ)
147 現像ローラ帯電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性のキャリア液と、キャリア液中に分散された着色粒子と、着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有する液体現像剤であって、
前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており
前記着色粒子が顔料であることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
有機高分子化合物が、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル又はポリビニルブチラールから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
有機高分子化合物の含有量が1〜10質量%である、請求項1又は2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
キャリア液の体積抵抗率が1012Ω・cm以上である、請求項1から3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置であって、
液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料である液体現像剤を用いる液体現像装置。
【請求項6】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光装置と、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する液体現像装置と、現像された画像を記録媒体に転写する転写装置とを備える湿式画像形成装置であって、
液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料である液体現像剤を用いることを特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項7】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電工程と、帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光工程と、液体現像剤として、電気絶縁性のキャリア液とキャリア液中に分散された着色粒子と着色粒子を記録媒体に定着させる有機高分子化合物とを有し、前記有機高分子化合物がキャリア液に溶解しており、かつ前記着色粒子が顔料である液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する現像工程と、現像された画像を記録媒体に転写する転写工程と、画像が転写された記録媒体を排出部に排出する排出工程とを有することを特徴とする湿式画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−248171(P2011−248171A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122304(P2010−122304)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】