説明

液体現像剤、現像剤カートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置

【課題】液体現像剤中のトナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好である液体現像剤を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂を含むトナー粒子と、脂肪酸ポリエステルアミン重合体と、オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物と、非水溶媒と、を含む液体現像剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、現像剤カートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現像容器内に収容した液体現像剤を撹拌した後、像担持体と対向する現像領域に搬送し、該液体現像剤を用いて該潜像担持体上の潜像を現像する現像方法において、上記液体現像剤として、チキソトロピックな性質を有するものを用い、上記現像領域に到達した液体現像剤の粘性率が上記現像に必要な許容範囲内に入るように、上記液体現像剤の粘性率を低下させる上記撹拌の条件と、該液体現像剤の粘性率が時間経過とともに上昇する上記搬送の条件とを設定したことを特徴とする現像方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、絶縁性炭化水素系有機溶媒である2−オクチル−1−ドデセン及び/又は2−オクチルドデカン(溶媒(a))、少なくとも顔料及び前記溶媒(a)に溶解しないバインダー樹脂の2成分からなる着色樹脂粒子、前記溶媒(a)に溶解する分散剤、並びに、荷電制御剤を含有し、前記溶媒(a)の合計含有量が、液体現像剤に含まれる絶縁性炭化水素系有機溶媒の全量100質量%中、70質量%以上であることを特徴とする液体現像剤が開示されている。
【0004】
特許文献3には、トナー粒子と、キャリア液と、分散剤とを含む湿式現像剤であって、前記トナー粒子は、ポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、酸成分としてフタル酸と3官能以上の芳香族系の酸を含み、前記分散剤は、塩基性の高分子分散剤を含むことを特徴とする湿式現像剤が開示されている。
【0005】
特許文献4には、キャリア液と不溶性マーキング粒子とを含む液体現像剤において、前記キャリア液は、ポリブテンからなる、もしくはそれを含むことを特徴とする液体現像剤が開示されている。
【0006】
特許文献5には、絶縁性液体中にトナー粒子が分散しており、前記絶縁性液体は、第1の植物油と、第2の植物油と1価のアルコールとのエステル交換反応により生成される反応生成物とを含むことを特徴とする液体現像剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−005297号公報
【特許文献2】特開2009−157254号公報
【特許文献3】特開2009−175670号公報
【特許文献4】特開2003−195573号公報
【特許文献5】特開2008−046596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、液体現像剤中のトナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好である液体現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
ポリエステル樹脂を含むトナー粒子と、
脂肪酸ポリエステルアミン重合体と、
オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物と、
非水溶媒と、
を含む液体現像剤である。
【0010】
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジである。
【0011】
請求項3に係る発明は、
潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、請求項1に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着工程と、
を有する、画像形成方法である。
【0012】
請求項4に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、請求項1に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、
を有する画像形成装置である。
【0013】
請求項5に係る発明は、
トナー粒子と、非水溶媒を含有するキャリア液体と、を含み、
前記トナー粒子の濃度が全体の40質量%となるように液体現像剤を濃縮して得られた分散液における、せん断速度0.2s−1での粘度が0.01Pa・s以上30Pa・s以下であり、
前記分散液が、せん断速度10s−1以上100s−1以下においてニュートン流体である、液体現像剤である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、脂肪酸ポリエステルアミン重合体又はオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を用いない場合に比べ、液体現像剤中のトナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好である。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、脂肪酸ポリエステルアミン重合体又はオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を含まない現像剤を用いた場合に比べ、画像欠陥が抑制される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、脂肪酸ポリエステルアミン重合体又はオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を含まない現像剤を用いた場合に比べ、画像欠陥が抑制される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、脂肪酸ポリエステルアミン重合体又はオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を含まない現像剤を用いた場合に比べ、画像欠陥が抑制される。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、上記分散液におけるせん断速度と粘度との関係が上記条件を満たさない場合に比べ、液体現像剤中のトナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施例1及び比較例1の液体現像剤を用いて得られた濃縮分散液における粘度のせん断速度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[液体現像剤]
本実施形態に係る液体現像剤は、トナー粒子と、非水溶媒を含有するキャリア液体と、を含む液体現像剤である。そして本実施形態の液体現像剤においては、液体現像剤をトナー粒子の濃度が全体の40質量%となるように濃縮して得られた分散液(以下「濃縮分散液」と称する場合がある)におけるせん断速度0.2s−1(以下「低せん断条件」と称する場合がある)での粘度が、0.01Pa・s以上30Pa・s以下である。また本実施形態では、前記濃縮分散液が、せん断速度10s−1以上100s−1以下(以下「高せん断条件の領域」と称する場合がある)においてニュートン流体である。
本実施形態の液体現像剤は、上記特徴を有するものであることにより、上記特徴を有さない場合に比べ、液体現像剤中のトナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好となる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0021】
従来の液体現像剤は、液体現像剤として用いられるトナー粒子の濃度(例えば全体の1質量%以上20質量%以下の範囲)においてはニュートン流体であることが多いが、トナー粒子の濃度が40質量%に濃縮されるとチキソトロピック性を示し、低せん断速度における粘度が非常に高くなってしまう。具体的には、例えば従来の液体現像剤における前記濃縮分散液は、上記高せん断条件の領域においてせん断速度が下がるにつれて粘度が上がる非ニュートン流体であるのに加えて、上記低せん断条件での粘度が30Pa・sよりも大きいものである。
これに対して、本実施形態の液体現像剤は、上記の通り、濃縮分散液における低せん断条件での粘度が前記範囲であり、かつ、高せん断条件の領域では濃縮分散液がニュートン流体である。
【0022】
ここで、前記濃縮分散液は、液体現像剤中においてトナー粒子が偏在化した際に、トナー粒子が偏在している領域において部分的にトナー濃度が上昇した状態を擬似的に再現したものである。
具体的には、液体現像剤を用いた画像形成においては、現像装置内の現像剤保持体の表面に保持された液体現像剤中のトナー粒子が電位によって力を受け、一方向に動くことで偏在化すると考えられる。そして、液体現像剤中においてトナー粒子が集まって偏在している領域においては、トナー粒子の濃度が部分的に上昇し、トナー粒子の濃度を40質量%に濃縮して得られた上記濃縮分散液に近い状態になると考えられる。そのため、濃縮分散液における流体特性を制御することで、前記トナー粒子が偏在している領域における流動状態が調整されると考えられる。
【0023】
また現像剤保持体の表面に保持された液体現像剤においては、撹拌が行われず、トナー粒子が電位によって一方向に力を受けていることから、流れが滞っている状態であると考えられる。よって濃縮分散液において、高せん断速度から低せん断速度に変化させたときの粘度変化や、低せん断速度における粘度の絶対値が、トナー粒子偏在化後の再分散性に影響を与えているものと推測される。
【0024】
そして本実施形態の液体現像剤では、上記の通り、濃縮分散液における粘度のせん断速度依存性小さく、少なくとも上記高せん断条件の領域ではニュートン流体であり、低せん断条件での粘度が前記範囲である。そのため、液体現像剤中においてトナー粒子が偏在化し、トナー粒子が偏在している領域において流れが滞ってせん断速度が小さくなっても、その領域における粘度が高くなりにくく、従来のように部分的に粘度が上昇することによってトナー粒子が再分散しにくくなるという現象が起こりにくくなると考えられる。すなわち、濃縮分散液が高せん断条件の領域でニュートン流体であることにより、液体現像剤の流れが滞ってせん断速度が低くなる過程においても粘度が上昇しにくいことに加えて、濃縮分散液における低せん断条件での粘度が前記範囲であることで、偏在化したトナー粒子の再分散性が確保されると考えられる。
【0025】
このように、本実施形態の液体現像剤では、従来に比べ、トナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好である。そのため本実施形態の液体現像剤を用いると、現像剤保持体上で液体現像剤中のトナー粒子が一度偏在化した後、液体現像剤が現像に用いられずに現像装置内に回収されても、従来の液体現像剤を用いた場合に生じるトナー粒子が再分散されにくいことに起因する画像欠陥が抑制されると考えられる。なお、上記画像欠陥としては、例えば、凝集したトナー粒子が液体現像剤の搬送経路を詰まらせることに起因する画像の抜け等が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、上記濃縮分散液における上記低せん断条件における粘度が上記範囲であり、0.1Pa・s以上25Pa・s以下であってもよく、0.2Pa・s以上20Pa・s以下であってもよい。濃縮分散液における低せん断条件での粘度が前記範囲であることにより、前記範囲よりも低い場合に比べて、画像が形成される過程におけるトナー像の乱れが抑制される。
【0027】
ここで、「ニュートン流体」とは、せん断速度を変化させても粘度が変化しない流体のことをいう。そして「上記高せん断条件の領域においてニュートン流体」とは、上記高せん断条件の領域全体にわたって粘度が変化しない流体をいい、高せん断条件の領域においてニュートン流体であるか否かについては、以下のようにして判断する。
具体的には、粘度粘弾性測定機(HAAKE社製、型番:MARS)を用い、直径35mmのコーンプレートを用いて、粘度測定モードで、せん断速度を10s−1から100s−1まで変化させ、2s−1おきに粘度の測定を行う。得られた粘度の値のうち、最も高い値を最も低い値で除した値(粘度の比)(以下「初期せん断条件粘度と安定せん断条件の粘度比:TI値」と称する場合がある)が1.2以下であれば、「上記高せん断条件の領域においてニュートン流体」とする。
また低せん断条件における粘度の測定についても、せん断速度の値を0.2s−1とする以外は、上記高せん断条件における粘度の測定と同様にして行う。
【0028】
以上説明した本実施形態の液体現像剤のように、上記流体特性を有する液体現像剤の具体例としては、例えば、ポリエステル樹脂を含むトナー粒子と、脂肪酸ポリエステルアミン重合体と、オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物と、非水溶媒と、を含む液体現像剤が挙げられる。
液体現像剤が上記構成を有することにより、濃縮分散液における低せん断条件での粘度が前記範囲内となり、かつ、濃縮分散液が高せん断条件の領域においてニュートン流体となるため、液体現像剤中のトナー粒子が偏在化した後の再分散性が良好となる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0029】
本実施形態では、上記のように、ポリエステル樹脂を含むトナー粒子を用い、かつ、キャリア液体に脂肪酸ポリエステルアミン重合体とオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物とを含有させている。
脂肪酸ポリエステルアミン重合体は、キャリア液体中においてトナー粒子を分散させる分散剤としての役割を果たすとともに、トナー粒子に対する吸着性が他の分散剤に比べて良好であるため、トナー粒子に吸着した上記分散剤に起因する立体反発が生じると考えられる。
【0030】
そしてさらに、オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物は、液体現像剤中において帯電制御剤としての役割を果たすとともに、他の帯電制御剤に比べて上記分散剤(脂肪酸ポリエステルアミン重合体)に吸着しやすいと考えられる。そのため、帯電制御剤を用いない場合や、上記帯電制御剤の代わりに他の帯電制御剤を用いた場合に比べて、上記分散剤による立体反発に加え、分散剤に吸着した帯電制御剤に起因する静電反発が生じると考えられる。
そして、上記帯電制御剤を用いることによって、上記帯電制御剤の変わりに他の帯電制御剤として、例えば低分子化合物や低分子金属塩等を用いた場合のように、極性が不安定になったり、キャリア液体の導電性が上昇したりすることも起こりにくくなると考えられる。
【0031】
このように、上記液体現像剤においては、立体反発に加えて静電反発が生じ、これらが組み合わさることによって、濃縮分散液が高せん断条件の領域においてニュートン流体となり、濃縮分散液の低せん断条件における粘度が上記範囲内になると推測される。
以下、上記液体現像剤を構成する成分についてさらに詳細に説明する。
【0032】
<トナー粒子>
トナー粒子は、上記の通り少なくともポリエステル樹脂を含み、必要に応じて、その他の樹脂、着色剤、離型剤等のその他成分を含んでもよい。
【0033】
−ポリエステル樹脂−
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとから合成されるものである。
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。
【0034】
ポリエステル樹脂の製造方法としてはとくに制限はなく、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法が挙げられ、具体的には、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられる。具体的には、例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150℃以上250℃以下で加熱し、副次的に生成する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、予め定められた酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物が取得される。
【0035】
ポリエステル樹脂の製造時に使用される触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられる。触媒の添加量としては、例えば、原材料の総量に対して0.01質量%以上1.00重量%以下の範囲が挙げられる。
【0036】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されるものではないが、例えば、10000以上1000000以下の範囲が挙げられる。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。そして上記重量平均分子量のは、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。重量平均分子量の測定については、以下同様である。
【0037】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に限定されるものではないが、例えば20以上80以下の範囲が挙げられる。
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(島津製作所社製:DSC−60、熱分析システム)を用い、JIS 7121−1987に準拠した測定により求める。なお、装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。試料はアルミニウム製パンに入れ、試料の入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットし、昇温速度10℃/minで測定する。測定により得られるDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をもってガラス転移温度とする。
また、トナー粒子全体に対するポリエステル樹脂の含有量としては、例えば30質量%以上95質量%以下の範囲が挙げられる。
【0038】
−その他成分−
その他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられるが、特に限定されず、形成する画像に求められる特性等に応じて選択される。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン、フタロシアニン顔料、縮合多環系顔料等が挙げられるが、特に限定されず、形成する画像の色等に応じて選択される。
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス、天然ワックス、合成ワックス、鉱物・石油系ワックス、エステル系ワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
トナー粒子は、必要に応じて、シリカ、酸化チタン、メタチタン酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化クロム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の公知の外添剤を外添させてもよい。
【0040】
−トナー粒子の製造方法−
トナー粒子の製造方法としては、例えば、ポリエステル樹脂及び必要に応じて上記その他成分を混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法等が挙げられる。
またトナーの製造方法としては、上記方法の他に、ポリエステル樹脂及び必要に応じて上記その他成分を有機溶媒に混合した混合物を、分散剤を加えた水性媒体中分散し、次いで溶剤を除去してトナー粒子を得る方法、樹脂の単量体及び必要に応じて上記その他成分を混合した混合物を、分散剤を加えた水性媒体中分散し、重合させトナー粒子を得る懸濁重合による方法、並びにポリエステル樹脂及び必要に応じて上記その他成分を水系分散媒中に分散する分散工程、分散したポリエステル樹脂の粒子等を金属イオンによって凝集させる凝集工程、及び凝集粒子を熱融着する熱融着工程を経て製造する方法等も挙げられる。
【0041】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子の体積平均粒径D50vとしては、例えば0.5μm以上5.0μm以下が挙げられ、0.8μm以上4.0μm以下であってもよく、1.0μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0042】
トナー粒子の体積平均粒径D50vは、2μm以上のトナー粒子に対しては、コールターマルチサイザー(コールター社製)測定器で測定される。2μmを下回るトナー粒子に対しては、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、LB−500(堀場製作所社製)、マイクロトラックUPA(日機装社製)等)、又はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、LS13 320(BECKMAN COULTER社製)等)を用いて測定される。上記測定によって得られた粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒子径を体積D50vと定義する。
【0043】
トナー粒子の含有量としては、液体現像剤全体に対し、例えば0.5質量%以上40質量%未満の範囲が挙げられ、1質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0044】
<キャリア液体>
キャリア液体は、非水溶媒、脂肪酸ポリエステルアミン重合体、及びオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
【0045】
−非水溶媒−
非水溶媒とは、水以外の溶媒を含むものをいい、水と水以外の溶媒との混合物でもよいが、水を積極的に含まない溶媒であってもよい。
非水溶媒としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロテトラシロキサン等のシリコーン系溶剤、エクソン社製アイソパーH、アイソパーM、アイソパーL(商品名)、松村石油研究所製モレスコホワイトP−40、P−60、P−70(商品名)、等のパラフィン系溶剤、大豆油、亜麻仁油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ホホバ油等の植物油、ガソリン等の鉱物油等が用いられる。
非水溶媒は、上記成分のうち、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。キャリア液体を2種以上の混合系として用いる場合、例えば、パラフィン系溶剤と植物油との混合系や、シリコーン系溶剤と植物油との混合系が挙げられる。
【0046】
−脂肪酸ポリエステルアミン重合体−
キャリア液体は、上記の通り、脂肪酸ポリエステルアミン重合体を含む。
脂肪酸ポリエステルアミン重合体は、具体的には、脂肪族の多価カルボン酸及び脂肪族多価アルコールの重合、又は脂肪族のヒドロキシカルボン酸の縮重合等によって得られるポリエステルにおいて、末端カルボン酸(すなわちポリエステルの末端のカルボキシル基)がポリ低アルキレンイミン化合物又はアミノ化合物と反応した重合体である。上記ポリ低アルキレンイミン化合物としては、例えば炭素数1以上4以下のアルキレンイミン化合物の重合体が挙げられる。上記イミン化合物が反応する位置としては、例えばポリエステル鎖の末端カルボン酸の位置が挙げられる。
上記ポリエステルの製造に用いられる化合物としては、上記の通り、例えば、脂肪族多価カルボン酸及び脂肪族の多価アルコール、又は分子内に水酸基とカルボキシル基とを有する脂肪族のヒドロキシカルボン酸等が挙げられ、例えば12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
脂肪酸ポリエステルアミン重合体の重量平均分子量としては、例えば500以上20000以下の範囲が挙げられ、1000以上10000以下であってもよく、2000以上8000以下であってもよい。
【0047】
脂肪酸ポリエステルアミン重合体としては、直鎖型の重合体でも分岐型(櫛型)の重合体でもよいが、分岐型の重合体の方が直鎖型の重合体に比べてポリエステル樹脂への吸着性は良好であると考えられる。なお、分岐型の脂肪酸ポリエステルアミン重合体とは、分岐した炭素鎖を有する上記ポリエステル及び分岐した上記ポリ低アルキレンイミン化合物の少なくとも1種を用いて製造された脂肪酸ポリエステルアミン重合体をいう。
分岐型の脂肪酸ポリエステルアミン重合体の具体例としては、例えば、ソルスパース13940(すなわち、脂肪族の12−ヒドロキシステアリン酸の縮重合によって得られるポリエステルにおける末端カルボン酸に、アミノ化合物が反応した重量平均分子量約3000の脂肪酸ポリエステルアミン重合体)が挙げられる。脂肪酸ポリエステルアミン重合体は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
脂肪酸ポリエステルアミン重合体の添加量としては、例えば、トナー粒子100質量部に対し、0.01質量部以上20質量部以下の範囲が挙げられ、0.05質量部以上15質量部以下であってもよく、0.1質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0049】
−その他の分散剤−
キャリア液体は、上記の通り少なくとも脂肪酸ポリエステルアミン重合体を含むが、その他の分散剤を併用してもよい。
併用されるその他の分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
その他の分散剤を用いる場合、脂肪酸ポリエステルアミン重合体の割合としては、分散剤全体(脂肪酸ポリエステルアミン重合体とその他の分散剤との合計)に対し、例えば0.1質量%以上が挙げられる。
【0050】
−オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物−
キャリア液体は、上記の通り、オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を用いる。
オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物とは、オレフィン炭化水素と無水マレイン酸との共重合体をアミン化合物で変性させた化合物である。具体的には、上記共重合体を構成する構成単位のうち、無水マレイン酸に由来する構成単位の少なくとも一部が上記アミン化合物と反応したものである。そして上記アミン化合物による変性の結果得られる構造としては、例えば、マレイミド骨格や、マレイミド骨格が加水分解により開環した構造等が挙げられる。
【0051】
上記オレフィン炭化水素としては、例えば、二重結合を有する脂肪族炭化水素が挙げられ、直鎖状でも分岐状でもよい。オレフィン炭化水素の炭素数としては、例えば、1以上100以下が挙げられ、3以上60以下であってもよく、3以上40以下であってもよい。またオレフィン炭化水素に含まれる二重結合の数としては、1分子中に少なくとも1個あればよく、例えば1個以上3個以下の範囲が挙げられる。またオレフィン炭化水素は、純粋な脂肪族炭化水素であってもよいが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族又は芳香族カルボン酸類、脂肪族又は芳香族アルコール類、脂肪族置換ビニルエーテル又はアリルエーテル類、芳香族置換ビニルエーテル又はアリルエーテル類、脂肪族カルボン酸のビニルエステル又はアリルエステル類、芳香族カルボン酸のビニルエステル又はアリルエステル類等であってもよい。
上記オレフィン炭化水素の具体例としては、例えば、1−オクタデセン、プロペニレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−オクヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、テトラコセン、2−エチルヘキセン、ω−フェニル−1−プロペン、アリルアルコール、10−ウンデセン酸ヘキシル、シクロペンテン、シクロヘキセン、スチレン、4−メチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、4−ヘキシルオキシスチレン、等が挙げられる。
上記無水マレイン酸は、無置換であってもよいが、例えば、メチル、エチル、等の置換基を有していてもよい。
【0052】
オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体は、交互共重合体でもよく、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。オレフィン炭化水素と無水マレイン酸共重合体との重合比としては、例えば、オレフィン炭化水素100質量部に対する無水マレイン酸共重合体の量として、0.5質量部以上1000質量部以下が挙げられ、30質量部以上300質量部以下であってもよい。
【0053】
アミン化合物としては、1分子中にアミノ基を1つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、アルキルアミン化合物(1級アミノ化合物、2級アミノ化合物)等が挙げられる。アミン化合物中のアミノ基は、アミン化合物1分子中に1つあればよいが、例えば1個以上10個以下の範囲で有していてもよい。
【0054】
上記アルキルアミン化合物は、アルキル基及びアミノ基を有する化合物であり、アルキル基は直鎖状でも分岐上でもよく、アルキル基の炭素数としては例えば1以上40以下が挙げられ、6以上20以下であってもよい。
アルキルアミン化合物の具体例としては、例えば、1−ヘキサデシルアミン、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、1−ノニルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−トリデシルアミン、1−テトラデシルアミン、1−ペンタデシルアミン、1−オクタデシルアミン、1−ノナデシルアミン、1−ドコサニルアミン、2−エチルへキシルアミン、3,3−ジメチルペンチルアミン、アリルアミン、N−ブチルアミノプロピルアミン、4−ブトキシプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0055】
上記オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物において、無水マレイン酸に由来する構造単位のうちアミン変性された割合(以下、「アミン変性率」と称する場合がある)としては、例えば、すべての無水マレイン酸に由来する構造単位がアミン変性された場合を100としたとき、20以上100以下の範囲が挙げられ、50以上100以下の範囲であってもよい。
また、上記オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物の無水率(すなわち、無水マレイン酸に由来する構造単位の全体に対するマレイン酸アミドの割合)としては、10以上90以下の範囲が挙げられ、30以上70以下の範囲であってもよい。
さらに、上記オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物の重量平均分子量例えば1000以上500000以下の範囲が挙げられ、2000以上10000以下であってもよく、5000以上50000以下であってもよい。
【0056】
上記オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物の添加量としては、例えば、脂肪酸ポリエステルアミン重合体100質量部に対し、0.1質量部以上1000質量部以下の範囲が挙げられ、1質量部以上100質量部以下であってもよく、1質量部以上50質量部以下であってもよい。また、オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を1種のみ用いてもよいが、2種以上併用してもよい。
【0057】
−その他の帯電制御剤−
キャリア液体は、上記の通り少なくともオレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物を含むが、その他の帯電制御剤を併用してもよい。
併用されるその他の帯電制御剤としては、例えば、有機カルボン酸の金属塩、有機カルボン酸のアンモニウム塩、有機スルホン酸の金属塩、有機スルホン酸のアンモニウム塩等が挙げられる。
その他の帯電制御剤を用いる場合、上記オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物の割合としては、帯電制御剤全体(オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物とその他の帯電制御剤との合計)に対し、例えば0.5質量%以上が挙げられる。
【0058】
−その他の成分−
キャリア液体は、必要に応じてその他の成分を含んでもよく、その他の成分としては、例えば、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等が挙げられる。
【0059】
−キャリア液体の特性−
以上の成分を含むキャリア液体は、絶縁性であることがよく、体積導電率としては、例えば1.0×10−14S/m以上1.0×10−8S/m以下の範囲が挙げられる。
【0060】
<液体現像剤の製造方法>
液体現像剤は、既述のトナー粒子とキャリア液体とを、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機を用いて混合し、粉砕して、トナー粒子をキャリア液体中に分散することにより得られる。
なお、トナー粒子のキャリア液体中への分散は分散機に限られず、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散してもよいし、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散してもよいし、超音波によって分散してもよい。
その後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去してもよい。
【0061】
<液体現像剤の特性>
本実施形態では、濃縮分散液だけでなく液体現像剤そのものにおいても、上記高せん断条件の領域においてニュートン流体であることがよい。上記範囲においてニュートン流体である液体現像剤においては、トナー粒子の分散性がプロセス速度(画像形成速度)に依存しにくい。
【0062】
[現像剤カートリッジ]
本実施形態の現像剤カートリッジは、上記本実施形態の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジであり、例えば、現像剤カートリッジ内に貯留された液体現像剤が、供給管等を通じて、画像形成装置の現像装置に供給される。現像剤カートリッジは、現像剤カートリッジ内における液体現像剤の残量が無くなった際に交換するため、画像形成装置に着脱される構成としてもよい。
【0063】
[画像形成方法、及び画像形成装置]
本実施形態の画像形成方法は、潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、潜像保持体の表面に形成された潜像を、現像剤保持体の表面に保持された上記本実施形態の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着工程と、を有する画像形成方法である。
【0064】
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、現像剤保持体を有し、潜像保持体の表面に形成された潜像を、現像剤保持体の表面に保持された上記本実施形態の液体現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、を有する画像形成装置である。
以下、本実施形態における、液体現像剤を用いた画像形成方法及び画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0065】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、感光体10(潜像保持体)、帯電装置20、露光装置12(帯電装置20と露光装置12とで静電潜像形成手段を構成)、現像装置14(現像手段)、中間転写体16、クリーナ18、転写定着ローラ28(中間転写体16と転写定着ローラ28とで転写手段を構成し、転写定着ローラ28は定着手段も兼ねる)を含んで構成される。感光体10は円柱形状を有し、該感光体10の外周に、帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、及び、クリーナ18が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0066】
帯電装置20が感光体10の表面を予め定められた電位に帯電させ、帯電された表面を画像信号に基づき、露光装置12が、例えばレーザ光線によって露光して静電潜像を形成する。
現像装置14は、現像ローラ14a(現像剤保持体)と現像剤貯蔵容器14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤貯蔵容器14bに貯蔵される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。尚、現像剤貯蔵容器14bには、図示しない液体現像剤カートリッジから液体現像剤24が供給される構成としてもよい。また、上記液体現像剤カートリッジは、液体現像剤24の残量が無くなった際に交換し得るよう画像形成装置に着脱される構成としてもよい。
【0067】
液体現像剤24中では、トナー粒子は分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材によって撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子の濃度の位置ばらつきを低減してもよい。これにより図の矢印A方向に回転する現像ローラ14aには、トナー粒子の濃度バラツキが低減された液体現像剤24が供給される。
【0068】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、規制部材によって一定の供給量に制限された状態で感光体10に搬送され、現像ローラ14aと感光体10とが近接(あるいは接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像26となる。
【0069】
現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する感光体10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、感光体10からのトナー像の剥離効率を含めた記録媒体への転写効率を向上させ、さらに記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。このとき、感光体10及び中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0070】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写されると共に定着される。
転写定着ローラ28は、中間転写体16とともに用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写し、用紙上にトナー像が定着され、定着画像29となる。トナー像の定着は、転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧及び加熱により行ってもよい。定着温度としては、例えば100℃以上180℃以下が挙げられる。
【0071】
中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16及び転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ及び押圧ローラに準じた構成となって定着機能を発揮する。すなわち、用紙30が転写定着ローラ28と中間転写体16との接触部を通過する際、例えば、トナー像が転写されると共に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して加熱及び押圧される。これにより、例えば、トナー像を構成するトナー粒子中の結着樹脂が軟化すると共に、トナー像が用紙30の繊維中に浸潤して、用紙30に定着画像29が形成される。
本実施形態では用紙30への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。
【0072】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した感光体10では、転写されずに感光体10に残留したトナー粒子がクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
画像形成装置は、さらに、転写後かつ次の帯電までに感光体10の表面を除電する除電装置(図示せず)を備えていてもよい。
画像形成装置100に備えられる帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、及び、クリーナ18は、例えば、すべてが感光体10の回転速度と同期をとって動作されていてもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0074】
<帯電制御剤の合成>
−帯電制御剤1の合成−
以下のようにして、1−オクタデセンと無水マレイン酸との共重合体を合成した。具体的には、オレフィン炭化水素である1−オクタデセンを378質量部、無水マレイン酸を98質量部、トルエンを1850質量部、過酸化ベンゾイル14質量部、を窒素雰囲気下セパラブルフラスコに入れ、90℃において8時間反応させることで、共重合体1を得た。
得られた共重合体1を15質量部用い、アミン化合物である1−ヘキサデシルアミンを12質量部及びピリジン1質量部を添加し、溶媒還流6時間反応させたのち、メタノールで析出後、乾燥させ帯電制御剤1を得た。
得られた帯電制御剤の重量平均分子量は7000、アミン変性率は100、無水率は50であった。
【0075】
−帯電制御剤2の合成−
アミン化合物として、N−メチルオクタデシルアミンを372質量部と、n−ヘキシルアミンを2質量部と、用いた以外は、帯電制御剤1と同様にして、帯電制御剤2を得た。
得られた帯電制御剤の重量平均分子量は7000、アミン変性率は100、無水率は70であった。
【0076】
−帯電制御剤3の合成−
オレフィン炭化水素として、ステアリン酸ビニルを372質量部用いた以外は、共重合体1と同様にして、共重合体2を得た。また共重合体1の代わりに共重合体2を用い、アミンとしてn−オクチルアミンを用いた以外は、帯電制御剤1と同様にして帯電制御剤3を得た。
得られた帯電制御剤の重量平均分子量は17000、アミン変性率は100、無水率は70であった。
【0077】
<トナー粒子の調整>
−トナー粒子1の調整−
ポリエステル樹脂1(花王社製、品名FS−1、数平均分子量3400、重量平均分子量14000、ガラス転移温度:60℃、架橋タイプ)を90質量部に、銅フタロシアニン顔料を10質量部加え、卓上型ニーダー(入江商会社製、型番:PBV−0.1)で混錬した後、サンプルミル(協立理工社製、型番:SK−M10)で粉砕し、粗粉砕粒子1を得た。
粗粉砕粒子1を25質量部用い、非水溶媒であるモレスコホワイトP−40(松村油脂研究所社製)を75質量部加え、5mmジルコニアビーズとともにボールミル(入江商会社製、型番:650mL)で5日間湿式粉砕を行い、オイル中に分散したトナー粒子分散液1に分散したトナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子の体積平均粒径は1.0μmであった。
【0078】
−トナー粒子2の調整−
上記ポリエステル樹脂の代わりに、ポリエステル樹脂2(花王社製、品名FS−4、数平均分子量:3700、重量平均分子量:11000、ガラス転移温度:70℃、線形タイプ)を90質量部用いた以外は、トナー粒子1と同様にして、トナー粒子分散液2に分散したトナー粒子2を得た。
得られたトナー粒子の体積平均粒径は1.2μmであった。
【0079】
−トナー粒子3の調整−
上記ポリエステル樹脂の代わりに、スチレン−アクリル樹脂1(積水化学社製、エスレックP−SE−0020)を90質量部用いた以外は、トナー粒子1と同様にして、トナー粒子分散液3に分散したトナー粒子3を得た。
得られたトナー粒子の体積平均粒径は0.7μmであった。
【0080】
<液体現像剤の調整>
−液体現像剤1の調整−
【0081】
トナー粒子分散液1を99質量部用い、分散剤であるソルスパース13940(ルーブリゾール社製、脂肪酸ポリエステルアミン重合体)を1質量部、上記帯電制御剤1を0.1質量部加え、撹拌することで、シアントナー粒子が分散した液体現像剤1を得た。
得られた液体現像剤1のキャリア液体(トナー粒子を除いた液体部分)における体積導電率は0.8×10−10S/mであった。
【0082】
−液体現像剤2から液体現像剤9の調整−
用いたトナー粒子分散液の種類、分散剤の種類及び添加量、並びに帯電制御剤の種類及び添加量を表1に示すように変更した以外は、液体現像剤1と同様にして、液体現像剤2から液体現像剤9を得た。
なお表1中、帯電制御剤の種類における「4」は、帯電制御剤としてナフテン酸コバルト(低分子化合物、和光純薬社製)を用いたことを示す。また表1中、帯電制御剤の種類及び添加量における「−」は、帯電制御剤を用いなかったことを示す。
【0083】
<液体現像剤の評価>
−濃縮分散液の調整及び評価−
得られた液体現像剤40gを、50mL遠沈管(ベクトンディッケンソン社製)にとり、遠心分離機(MT−300、トミー社製)を用いて、回転速度10000rpmで10分間遠心分離し、トナー粒子の濃度が40質量%になるように上澄み液を取り除いた後、撹拌によりトナー粒子を再分散させ、濃縮分散液を得た。
【0084】
得られた濃縮分散液について、粘度粘弾性測定機(HAAKE社製、型番:MARS)を用い、直径35mmのコーンプレートを用いて、粘度測定モードで、せん断速度を0.01s−1から1000s−1まで変化させたときにおける粘度のせん断速度依存性を確認した。
【0085】
図2に、実施例1における濃縮分散液(液体現像剤1を用いて得られた濃縮分散液「−◆−」)及び比較例1における濃縮分散液(液体現像剤7を用いて得られた濃縮分散液「・・・□・・・」)における粘度のせん断速度依存性のグラフを示す。図2のグラフにおいては、横軸にせん断速度(s−1)を示し、縦軸に粘度(Pa・s)を示す。
図2に示すように、実施例1においては、低せん断条件(0.2S−1)における粘度が10Pa・sであった。また高せん断条件においては、せん断速度10s−1において0.17Pa・s、12s−1において0.17Pa・s、14s−1において0.17Pa・s、16s−1において0.17Pa・s、18s−1において0.17Pa・s、20s−1において0.17Pa・sであった。
なお、実施例1における濃縮分散液について、せん断速度を10s−1から100s−1まで変化させて2s−1おきに粘度を測定した結果、最大せん断速度における粘度の値は0.17Pa・sであり、TI値は1.0であった。
【0086】
一方、図2に示すように、比較例1においては、低せん断条件における粘度が35Pa・sであった。また高せん断条件においては、せん断速度10s−1において0.55Pa・s、12s−1において0.53Pa・s、14s−1において0.5Pa・s、16s−1において0.48Pa・s、18s−1において0.43Pa・s、20s−1において0.43Pa・sであった。
なお、実施例1における濃縮分散液について、せん断速度を10s−1から100s−1まで変化させて2s−1おきに粘度を測定した結果、最大せん断速度における粘度の値は0.43であり、TI値は1.3であった。
実施例及び比較例の濃縮分散液における低せん断条件の粘度及びTI値について表1に示す。
【0087】
−液体現像剤の再分散性評価−
実施例及び比較例で得られた液体現像剤を、遠心分離機(MT−300、トミー社製)を用いて、回転速度10000rpmで30分遠心分離した。その後、遠心分離した試料をそのまま振とう機(東京理化器械社製、型番:CM−1000)にセットして10分間(条件:1500rpm)撹拌し、液体現像剤を取り出して目視にて再分散性を確認した。再分散性の評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
【0088】
(評価基準)
G1:再分散性が良好であり、遠心分離前の状態を再現していた。

G2:凝集部分が残留して遠心分離前の状態を再現せず、遠心分離前と同じ状態にするためには超音波分散をする必要があった。
G3:凝集部分が残留して遠心分離前の状態を再現せず、超音波分散を行っても凝集部分が残留した。
なお、上記超音波分散は、ランジュバン型超音波分散装置(アズワン社製、型番:US−3R、周波数:40kHz)を用い、Highの条件で2分行った。
【0089】
−画像形成評価−
液体現像システムに改造した画像形成装置(富士ゼロックス社製、型番:2000)の現像装置に得られた液体現像剤をセットし、3.5cm×3.5cmのベタ画像(トナー載り量:4g/m)を3時間かけて100枚形成した。100枚目の画像について、画像欠陥の有無を目視で確認した。画像欠陥の評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
【0090】
(評価基準)
G1:画像欠陥が全く確認されなかった。
G2:わずかに画像欠陥(具体的には未現像部分)が確認された。
G3:画像欠陥(具体的には未現像部分)が顕著に確認された。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果からわかるように、実施例では、比較例に比べ、トナー粒子の再分散性が良好であり、画像欠陥が抑制されている。
【符号の説明】
【0093】
10 感光体(潜像保持体)
12 露光装置
14 現像装置(現像手段)
14a 現像ローラ(現像剤保持体)
16 中間転写体
18 クリーナ
20 帯電装置(帯電手段)
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写手段、定着手段)
29 定着画像
30 用紙(記録媒体)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を含むトナー粒子と、
脂肪酸ポリエステルアミン重合体と、
オレフィン炭化水素−無水マレイン酸共重合体のアミン変性化合物と、
非水溶媒と、
を含む液体現像剤。
【請求項2】
請求項1に記載の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジ。
【請求項3】
潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、現像剤保持体の表面に保持された請求項1に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着工程と、
を有する、画像形成方法。
【請求項4】
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
現像剤保持体を有し、前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、前記現像剤保持体の表面に保持された請求項1に記載の液体現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項5】
トナー粒子と、非水溶媒を含有するキャリア液体と、を含み、
前記トナー粒子の濃度が全体の40質量%となるように液体現像剤を濃縮して得られた分散液における、せん断速度0.2s−1での粘度が0.01Pa・s以上30Pa・s以下であり、
前記分散液が、せん断速度10s−1以上100s−1以下においてニュートン流体である、液体現像剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−173437(P2012−173437A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33990(P2011−33990)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】