説明

液体用コンテナとその組み立て方法

【課題】内部の液体の汚染を抑制する液体用コンテナとその組み立て方法の提供。
【解決手段】液体容器本体と、前記液体容器本体の下部に設けられた排出管とからなる液体収容部と、
排出管連結管とバルブとからなるバルブ部材と、
内部に液体を貯蔵することができる内側ライナーと
を具備する液体用コンテナ。前記内側ライナーは、ライナー本体部分と管状液体排出部分とを具備する形状を有している。また、前記管状液体排出部分は前記排出管内部を貫通し、前記管状液体排出部分の内側が前記排出管連結管と連結するように配置され、前記管状液体排出部分の端部が前記排出管と前記排出管連結管との間に挟まれて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状食品または薬品、特に電子工業用薬品などの液体を貯蔵または輸送するのに用いられる液体用コンテナ、およびそれに用いるライナー、ならびにそのライナーのコンテナ本体への組込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液状食品または薬品等の液体を貯蔵または輸送するためには、金属製やプラスチック製のコンテナが一般的に用いられてきた。この種のコンテナは高価であるため、使い捨てにはできず、洗浄して繰り返して使用するのが一般的である。ところが、このようなコンテナは、内部に充填された液体を取り出すためのバルブ構造を備えていることが多いが、その部分の洗浄はかなり煩雑であった。またこのようなコンテナを用いて電子工業用薬品を貯蔵または輸送する場合、コンテナの繰り返し利用にあたっては洗浄後の容器内の残留ダストを管理することが必要になるため、かなりの労力が必要である。
【0003】
このような問題点を改善するため、近年、合成樹脂フィルム等よりなる内側ライナーを剛性のある外枠コンテナと組み合わせて使用し、この内側ライナーを使用のたびに交換することで洗浄を省略または簡略化し、さらには内容物を最後までスムーズに排出できるようにした液体用コンテナが提案されている(特許文献1および2)。
【0004】
特許文献1または2に開示されている液体用コンテナ用ライナーには液体を充填するための注入口と、充填された液体を排出するための排出口用口部材が取り付けられている。この口部材をスパウトということがある。このスパウトは、ライナーをコンテナ底部またはコンテナが備えるバルブ付き排出管に連結するためのものであり、ライナーに充填された液体はスパウトおよび排出管を経由して外部に排出される。
【0005】
そのため、このような液体用コンテナ用ライナーには、液体の充填に先立ってスパウトが設置されている必要がある。スパウトをライナーに取付ける際には、例えば、ライナー内部に冶具を挿入してライナーに穴を開けるなどの作業によりスパウトを取付ける必要がある。しかし、このような一連の作業を行う際にライナー内に異物が混入して、ライナー内部が汚染されてしまう。
【0006】
また、前記特許文献1または2に開示されている液体用コンテナ用ライナーは、液体用コンテナの本体部分をカバーするので、充填されている液体はコンテナ本体には接触しない。しかし、スパウトを通過した後、排出管内側には液体が直接接触する。この結果、排出管の洗浄を行う必要があり、十分な洗浄が行われない場合には、排出管内の汚染または残留ダストが問題となる。
【0007】
このような問題を改善するための方法も提案されている。すなわち、特許文献3には、コンテナ本体部だけではなく排出管の部分においても液体が直接接触しない構造を有するコンテナ用容器用内袋が開示されている。しかし、このコンテナ用容器用内袋は構造が複雑であるために製造コストが高いうえ、内袋本体に対して取り付け筒などの部品を取り付ける必要があるため、内袋内側を汚染してしまうという問題を解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−337288号公報
【特許文献2】特開2004−244104号公報
【特許文献3】特開2007−302273号公報
【特許文献4】特許3464232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液体用コンテナ内に貯蔵される液体がコンテナ本体内部のみでなく排出管内部に直接接触せず、また貯蔵された液体が異物などにより汚染されない液体用コンテナと、そのような液体用コンテナの組み立て方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による液体用コンテナは、
液体容器本体と、前記液体容器本体の下部に設けられた排出管とからなる液体収容部と、
排出管連結管とバルブとからなるバルブ部材と、
内部に液体を貯蔵することができる内側ライナーと
を具備するものであって、
前記内側ライナーが、ライナー本体部分と管状液体排出部分とを具備してなり、
前記管状液体排出部分が前記排出管内部を貫通し、前記管状液体排出部分の内側が前記排出管連結管と連結するように配置され、前記管状液体排出部分の端部が前記排出管と前記排出管連結管との間に挟まれて固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による液体用コンテナの組み立て方法は、前記の液体用コンテナの組み立てるためのものであって、
前記ライナーのライナー本体部分を巻く、または折りたたんでライナーを棒状にして管状液体排出部分を先頭として液体容器本体に挿入し、
前記管状液体排出部分を排出管に貫通させ、
前記管状液体排出部分の端部を広げて、排出管の端部と、バルブ部材の排出管連結管の端部との間に挟んで圧着して固定する、
ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明による内側ライナーは、前記の液体用コンテナに用いられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部に貯蔵する液体の汚染が抑制された液体用コンテナが提供される。すなわち、内側ライナーに取り付け部材などを設ける必要が無いため、ライナー内部に異物が混入することがなく、使用のたびに内部ライナーを交換することにより、容器の洗浄を行わなくても内部が汚染されることがない。さらに内部ライナーの構造が複雑でないので製造コストも低い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施態様に係る液体用コンテナの側面図(A)、ならびに液体収容部およびバルブ部材の断面図(B)。
【図2】本発明の液体用コンテナに用いられる内側ライナーを示す正面図。
【図3】本発明の一実施態様に係る液体用コンテナの組み立て方法を示す模式図。
【図4】本発明の一実施態様に係る液体用コンテナに用いることができるヘルール(オス)の断面図(A)とヘルール(メス)の断面図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
図1(A)は本発明の一実施形態である液体用コンテナ100の側面図である。ここで、液体用コンテナの外枠104には、液体収容部100Aが固定されており、この液体収容部100Aは、金属製の液体容器本体101と、その底部には設けられた排出管105とから構成されている。液体容器本体の上側部には開口部102が設けられており、この開口部102から後述する内側ライナーを液体容器本体内に導入し、その内側ライナー内に液体が充填される。開口部102は終始開放されていてもよいが、一般的には液体充填後に蓋部材103により密閉される。
【0017】
排出管105は中空パイプからなり、図示された液体用コンテナにおいては、液体容器本体101の底部から垂下して途中から屈曲した形状になっている。この排出管105の液体容器本体の反対側端部には、排出管連結管109とそれに接続されたバルブ108からなるバルブ部材100Bが、クランプ110により固定されている。なお、図示された液体用コンテナにおいては、排出管105の端部にはヘルール(オス)106が設けられ、排出管連結管109の端部には、前記ヘルール106と嵌合するヘルール(メス)が設けられ、これらが嵌合している。後述するように、このようなヘルールを用いることにより、液体漏出を防止することができるので好ましい。
【0018】
図1(B)は液体収容部100Aおよびバルブ部材100Bの概念断面図である。液体収容部100Aには内側ライナー200(図中、破線で示されている)が挿入されており、管状液体排出部分の端部がヘルール106および107の間に挟まれ、固定されている。この内側ライナー200の内部には液体導入部分から液体が導入されるが、導入完了後、液体導入部は一般的には封じられる。液体導入部を封じる方法は任意の選択され、特に限定されないが、例えば液体導入部を縛る方法、ヒートシールなどで封じるなどの方法、液体導入部を開口部102と蓋部材103とにより挟み込むことにより封じる方法が用いられる。この液体用コンテナに貯蔵された液体は、バルブ108を経由して外部に取り出される。
【0019】
本発明において液体用コンテナの容量は特に限定されず、貯蔵する液体の種類や用途、あるいは液体用コンテナ自体の取り扱い性などに応じて任意の大きさを採用できるので特に限定されない。例えば、液体用コンテナがトラックなどにより搬送され、工場内などにおいてフォークリフトで運ばれるようなものである場合には、容量は10〜1000リットル程度とされる。しかし、より大きな液体用コンテナとして、例えばタンクローリー車などのタンクに適用することも可能であり、そのような場合には本発明による液体用コンテナの容量を1000〜10000リットルとすることもできる。特に電子工業用薬品用に用いる場合には500〜2000リットルとされることが好ましい。
【0020】
本発明による液体用コンテナは、液体容器本体101の内側に、特定の形状を有する内側ライナーを具備してなる。本発明による液体用コンテナにおいて、液体はこの内側ライナー内部に充填される。
【0021】
この内側ライナーの形状は、例えば図2(A)に示されるものである。内側ライナー200は、液体を貯蔵するためのライナー本体部分201と、管状液体排出部分202と、ライナー本体に液体を充填する際に液体を導入するための液体導入部分203とが設けられている。
【0022】
ライナー本体部分201は、液体容器本体101の形状および容量に応じた形状および容量とされる。本発明による液体用コンテナにおいて、液体は液体容器本体101に収納されたライナー本体部分201の内側に貯蔵される。このため、ライナー本体部分201が液体容器本体101に比較して小さすぎると、液体充填後にライナー本体部分201と液体容器本体101との間に隙間ができ、輸送時などにライナー本体部分201が破損する可能性がある。一方、ライナー本体部分201が液体容器本体101に比較して大きすぎると、液体容器本体101の内部でライナー本体部分201に過大な皺ができてしまい、液体排出時に内部の液体を完全に排出できないでロスが発生する可能性がある。このため、内側ライナーの形状を立体的なものとし、液体容器本体の形状に一致するように形成することが好ましい。しかし、後述するような平面状ライナーを用いる場合には、液体用本体よりわずかに大きなサイズのものを用いて、液体容器本体の内側に密着させて使用するのが一般的である。ライナーの内部の清浄度や製造コストを考慮するとこのような平面状ライナーを用いることが好ましい。
【0023】
また、管状液体排出部分202は、後述するように排出管105の内側に挿入される部分である。そして、管状液体排出部分の端部は、排出管105の端部においてヘルール106および107により固定されるので、管状液体排出部分202の長さは一般に排出管105の長さより長く形成される。
【0024】
液体導入部分203は、ライナー本体部分201の内部に液体を充填するためのものであり、その形状は特に限定されない。例えば、図2に示されるように、管状液体排出部分と同様にライナー本体部分201から管状に形成してもよい。このように形成した場合、液体を導入した後に、管状部分を縛るなどにより封じたり、ヒートシールなどにより封じたりすることもできる。また、液体導入部分203をねじり、留め具により密閉したり、開口部102と蓋部材103との間に挟みこみなどの方法で密閉したりすることもできる。なお、液体導入部分203は一般的に充填する液体よりも高い部分に位置し、運搬時などに振動を加えられる場合以外には当該部位は液体と接触する機会が少ないので、液体充填後は当該部分の清浄度は液体排出部分ほど厳密な制御は要求されない。このため、液体導入部分にスクリューキャップなどの密閉構造を形成することもできるが、ライナー内部の汚染の危険性を減らし、製造コストを低くするためには、そのような密閉構造を形成することの利益は少ない。
【0025】
このようなライナー本体部分201は、目的に応じて任意の材料で製造することができる。ここで、ライナーの内側は充填される液体と直接接触するため、液体に対する耐薬品性が高く、また溶解性が低いものが好ましい。また、一方で輸送時などにライナー本体に応力がかかることがあるので、耐突き刺し性または耐衝撃性などの強度が高いものが好ましい。なお、液体容器本体101の内側面に対して柔軟に密着するものである場合、強度は重要ではないこともある。さらに、液体や気体を透過させないものが好ましい。
【0026】
ライナー本体部分の材料としては一般的にフィルムが用いられるが、上記したようなすべての条件を同時に満たすものを選択せずに、多層構造のフィルムを用いてフィルム全体で十分な特性を得ることもできる。例えば液体の接触する内側層に耐薬品性の高い材料を用い、液体容器本体と接触する外側層に耐摩擦性や耐衝撃性の高い材料を用い、これらをラミネートなどにより積層したフィルムを、用いることができる。また、同一材料を用いて2層以上の構造にすることで、フィルムの強度を高くすることもできる。このような場合、フィルムは2層構造に限られず、3層以上とすることもできる。なお、ここでは最も内側にある層を内側層、最も外側にある層を外側層、それらの中間にある層を中間層という。
【0027】
まず、液体に直接接触する内側層は、耐薬品性および対溶解性に優れる材料を用いることが好ましい。また、外側層と積層する際に低温シール性が優れたものであることがより好ましい。このような観点から、内側層の材料はポリエチレンが好ましく、更にはヒートシール強度や充填される薬液への影響の観点から、分子量分布が狭い、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0028】
また、液体に直接接触しない外側層や中間層には、耐突き刺し性や耐衝撃性などの機械的特性や、窒素、酸素、水蒸気、または溶剤等に対するガスバリア性が求められる。特に、液体容器本体と内側ライナーとの間に気体を導入し、内側ライナーの中に充填された液体を押出すような利用方法が採用されることがあるが、このような場合には特にガスバリア性が重要となる。さらに外側層は液体容器本体と直接接触するために耐摩擦性が高いことが好ましい。また、液体充填の際に、誤操作などにより液体が外側層に接触することがあるので、内側層に要求されるレベルほど高くないが、耐薬品性が高いことが好ましい。
【0029】
このような観点から、外側層または中間層に用いるフィルムの材料は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される、一種またはそれ以上からなる樹脂を用いることが好ましい。これらのうち、ポリエチレン、更には直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0030】
また、酸素や水蒸気、溶剤等のガスバリア性を付与するためには、フィルムの材料として、アルミニウム、銅等の金属箔、あるいは、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のフィルム、あるいはポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどを用いることもできる。
【0031】
これらのフィルム材料は、目的に応じて複数のフィルムを組み合わせた複合フィルムとして用いることができる。例えば、同じ材料からなるフィルムを複数重ね合わせて多重構造とすることで、一方のフィルムがライナーの挿入時などの接触などによって破断した場合や、フィルムそのものの不良によってピンホールなどがあった場合であって、フィルムが多重構造を有することによって液漏れを防止することができる。また、異なる材料からなるフィルムを組み合わせ、それぞれのフィルムの特性を兼ね備える複合フィルムとすることができる。ここで、複合フィルムは、フィルムの全面が貼り合わされている必要は無く、例えば端部などだけが貼り合わせられていてもよい。複数のフィルムを貼り合わせる場合には接着剤などを用いることもできるが、ヒートシールにより貼り合わせる方法が好ましい。ヒートシールを用いた場合には、後述するようにライナーを形成させるときに複合フィルムの貼り合わせとライナーの形成とを同時に行うことができるので好ましい。
【0032】
複合フィルムが、同一材料からなるフィルムを重ね合わせたものである場合、これらをヒートシールすることは容易である。しかし、複合フィルムを異なった材料からなるフィルムを重ね合わせたものであり、それらの接触面が異なる材料からなる場合には、そのままではヒートシールが困難な場合がある。例えば、ポリエチレンフィルムとナイロンフィルムとからなる複合フィルムを用いようとする場合、これらは容易にヒートシールすることができない。このような場合には、一方のフィルムの接触面に、他方のフィルムとヒートシールが容易な材料からなる溶着層を設けることが好ましい。例えばポリエチレンフィルムとナイロンフィルムとからなる複合フィルムを用いる場合、ナイロンフィルムの一方の面にポリエチレン層を形成させておくことにより、これらをヒートシールが容易なものとすることができる。このような溶着層は、例えばフィルムを形成させるときに共押出により形成させることができる。共押出に際して、フィルム本体と溶着層との剥離を防止するための接着層を設けることもできる。
【0033】
また、複合フィルムは、共押出などにより形成させた多層フィルムであってもよい。例えば機械強度の大きなフィルムの表面に、耐薬品性やガスバリア性に優れた材料からなる層を被覆した多層材料などを用いることもできる。
【0034】
内側ライナー200は、上記したような材料を用いて形成されるが、形成方法は特に限定されない。例えば、図2(B)に示されているように、管状フィルムを平坦につぶし、その4つの角部にL字型のヒートシール部204を設けて、その部分で溶着させた上で、余剰部分205を除去することにより、平面状ライナーとして製造することができる。また、シート状フィルムを、図2(A)に示されるような形状に切断し、切断された複数のフィルムを重ねあわせ、周辺部をヒートシールまたは接着剤により接着することにより、平面状ライナーとして製造することもできる。ここで管状フィルムまたはシート状フィルムは単一のフィルムであってもよいし、複数のフィルムを重ねたものであってもよい。前記したように、相互にヒートシール可能な複数のフィルムを重ねて用いて、ライナーを形成させるためにヒートシールする際に、フィルム同士もヒートシールすることによりライナーを複合フィルムから形成されるものとすることができる。なお、管状チューブを用いて内側ライナーを製造するほうが、シート状フィルムを用いる場合よりも溶着または接着させる部分が少ないので、清浄度を高く保てるので好ましい。なお、内側ライナー200を液体用コンテナに組み付ける際には管状液体排出部分202の末端部が、ライナー本体部分201に液体を充填する際には液体導入部分203が、それぞれ開口している必要がある。しかし、これらは液体導入時に開口していればよく、ライナー本体部分201を形成するとき、および液体容器本体の内部に設置するときにはこれらは開口している必要は無い。むしろ液体導入前には閉じていたほうが内部に異物が侵入するのを防いで内部の清浄度を保つことができる。この場合、必要なときに切断等によって開口される。
【0035】
このように形成された内側ライナー200は、液体用コンテナを用いる前に液体容器本体内101に設置される。この設置の手順を図を参照しながら説明すると以下の通りである。
【0036】
まず、内側ライナー200を液体容器本体101内に導入する前に、ライナー本体部分201を巻く、または折りたたむなどにより、細い棒状にすることが好ましい(図3(A)および(B))。一般的に液体容器本体101の上部にある開口部102は開口部面積が小さいので、内側ライナー200を挿入し易くするためである。そして、内側ライナー200を管状液体排出部分202を先頭にして液体容器本体内部に挿入し、さらに管状液体排出部分202を液体容器本体101の下部に設けられた排出管105の内部に挿入し、管状液体排出部分202の先端部を排出管105の端部から引き出す(図3(C))。この結果、管状液体排出部分202は排出管105を貫通する。
【0037】
管状液体排出部分202の先端が封じられている場合には、排出管105から引き出されたあと切断され、筒状とされる。筒状とされた管状液体排出部分の先端は広げられ、排出管105の末端に設けられたへルール(オス)106を覆うようにして折り返される(図3(D))。
【0038】
次に、バルブ部材100Bを取り付ける。管状液体排出部分202の折り返された端部を挟み込むように圧着する。なお、折り返された端部にしわがあると、圧着部分に隙間が報じて液体漏出の原因となるので、管状液体排出部分202の開口径と、排出管105の開口径とが同程度であることが好ましい。排出管および排出管連結管にヘルールが設けられている場合には、ヘルール(オス)106とヘルール(メス)107を嵌合させる(図3(E))。さらにクランプ110等を用いてバルブ部材100Bを排出管105に固定する(図3(F))。このような構成により、ライナーの一部、すなわち管状液体排出部分の端部がパッキングの機能を果たし、液体漏出が防止される。
【0039】
このように、内側ライナー200が取り付けられた液体用コンテナにおいて、液体容器本体101の内部はライナー本体部分201により覆われ、排出管105の内部は管状液体排出部分202で覆われるので、内側ライナー内部に充填された液体は液体容器本体101または排出管105の内部には直接接触しない。このために本発明による液体用コンテナを用いれば、使用の都度内側ライナー200を交換することにより、液体収容部100Aの内部、具体的には液体容器本体101および排出管105の内側の洗浄が不要となり、また内部に充填された液体が容器等に接触して汚染されることもない。
【0040】
内側ライナー200の取り付けを容易にするために、管状液体排出部分202の先端に、錘を取り付けることができる。すなわち、内側ライナー200の材料は比較的比重が軽いので、開口部102の狭い液体容器本体101の内部で、底部にある排出管105に管状液体排出部分202の先端を誘導することが難しい場合がある。そこで、管状液体排出部分202の先端に錘を取り付けることで、重力により先端を容易に排出管105に誘導することができる。このとき、液体容器本体の底部が錘状に形成されていると、さらに操作が容易になる。
【0041】
また、錘に代えて、強磁性体を管状液体排出部分に取り付けることもできる。このようにすることで、排出管端部から磁石を挿入し、管状液体排出部分202の先端を磁石により引き寄せ、排出管105から引き出すことが可能となる。
【0042】
また、排出管105の端部とバルブ部材100Bとを連結するヘルール(オス)106とヘルール(メス)107は、目的に応じて任意に選択することができる。また、ヘルール(オス)とヘルール(メス)は逆に取り付けてもよい。さらに、結合に用いるクランプ110にも依存するが、いわゆる山部が設けられたヘルールでなく、接触面が平坦なものであってもよい。なお、本発明においては、このような接触面が平坦な部材であっても便宜的に「ヘルール」とよぶ。
【0043】
しかしながら、排出管105とバルブ部材100Bとの密着性が十分でないと、内部に充填した液体が漏出する可能性がある。一般的に管の接合部分等には液体漏出のためにOリングを組み込むことが多いが、本願発明においては結合部に挟み込む内側ライナーとヘルールとにより、このようなOリングが必要なく、その交換の手間も省略することができる。このような目的を達成するため、本発明においてはヘルールの形状は特殊なものであることが好ましい。具体的には、本発明においてはヘルールは以下のような形状であることが好ましい。
【0044】
本発明に用いるのに好ましいヘルールは、開口部に沿って円状の山部分または谷部分を有することが好ましく、特に液体漏出防止の効果の観点から、それぞれが2重になっているものが好ましい。このようなヘルールの一実施態様の断面図は図4(A)および(B)に示すものである。山部分または谷部分は3重以上とすることも可能であるが、構造が複雑になってヘルールの製造コストが増大するのに対して、液体漏出防止効果は劇的に改善されないので、2重とすることがコストパーフォーマンスの観点から有利である。
【0045】
ヘルール(オス)において、液体漏出防止効果を改善するために、内側の山部401は外側の山部402よりも高くすることが好ましいが、内側山部401と外側山部402を同じ高さにすることも出来る。
【0046】
また、内側山部401および外側山部402の頂点の断面の角度θは一般に50〜60°、内側山部401の稜線と外側山部402の稜線との間の断面の角度θも一般に50〜60°とされる。通常、θとθとは同じにすることが多いが、異なる角度とすることもできる。例えば、θを60°、θを55°とすることもできる。
【0047】
また、ヘルール(メス)の形状は、それに嵌合するヘルール(オス)の形状に応じて適宜決定される。例えば、ヘルール(メス)の内側谷部403および外側谷部404の角度はヘルール(オス)の山部頂点の角度に、ヘルール(メス)の谷部の直径は対応するヘルール(オス)の山部頂点の直径に、それぞれ同じとするのが一般的である。なお、ヘルール(メス)の谷部の深さはヘルール(オス)の山部の高さより、挟まれるフィルムの厚さに応じて、例えば0.5mm程度、浅くすることが好ましい。このような形状とすることで、液体漏出防止効果がより高くなる。
【0048】
へルールを構成する材料は特に限定されないが、例えば、アルミウム、ステンレス、または鉄等の金属、あるいはテフロン(商標名)、ポリエチレン等のある程度硬度を持った樹脂などを用いることが出来る。
【0049】
実施例1
80μmの無添加の低密度ポリエチレンフィルムからなる、2つの管状フィルムを準備した。この2つの管状フィルムを用い、内側ライナーを作製した。具体的には、一方の管状フィルムの内側に他方のフィルムを挿入して二重とし、図2(B)に示されるようにヒートシール加工をしたうえ、さら両端の開口部もヒートシール加工により封じておき、余剰部分を切除して、2重フィルムからなる本体部分の大きさが約2m×3mである内側ライナーを作製した。なお、封じられている開口部は使用直前にシール部分を切除して、開口させてから使用した。
【0050】
実施例2
厚さ80μmの、ナイロンフィルムの表面にポリエチレンからなる溶着層が設けられた2層管状フィルムと、厚さ80μmの無添加の低密度ポリエチレンフィルムからなる管状フィルムを準備した。この2つの管状フィルムを用いて、実施例1と同様にして内側ライナーを作成した。このとき、ナイロンフィルムを外側とし、ナイロンフィルムの溶着層がポリエチレンフィルムと接触するようにした。この内側ライナーにおいて、外側のナイロンフィルムはガスバリア層として機能する。
【0051】
評価
作製したライナーを上記手順でコンテナ内に設置後、ライナー内をクリーンエアーでブローして内側ライナーを膨らませた。この内側ライナーにろ過したフォトレジスト組成物(AZ SR−300(商品名)、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、粘度3cp)を充填し、室温(約25℃)で1時間静置した。静置後、バルブ108からフォトレジスト組成物を採取し、微粒子数の測定を行った。微粒子は粒径が0.23μm、0.3μm、0.5μm、および1.0μmを超える大きさのものをそれぞれ測定した。この測定を内側ライナーを交換しながら3回繰り返した。得られた結果は表1に示すとおりであった。なお、比較例として、従来用いられている液体薬品用容器(特許文献4)を用いて、同じフォトレジスト組成物を充填し、室温(約25℃)で1時間静置した後の微粒子数を測定した。この比較例に用いた容器は、内側ライナーを有しているが、その開口部に液体充填時または排出時に接続部材を結合させるための部材を有しているものである。
【0052】
【表1】

【0053】
この結果から明らかなように、本発明による液体用コンテナは、従来用いられていた液体薬品用容器以上に、容器内部の汚染に起因する微粒子増加が抑制されており、薬液を安定した品質で供給することができることがわかる。
【符号の説明】
【0054】
100 液体用コンテナ
100A 液体収容部
101 液体容器本体
102 開口部
103 蓋部材
104 液体用コンテナ外枠
105 排出管
106、107 ヘルール
108 バルブ
100B バルブ部材
109 排出管連結管
110 クランプ
200 内側ライナー
201 ライナー本体部分
202 管状液体排出部分
203 液体導入部分
401、402 山部
403、404 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器本体と、前記液体容器本体の下部に設けられた排出管とからなる液体収容部と、
排出管連結管とバルブとからなるバルブ部材と、
内部に液体を貯蔵することができる内側ライナーと
を具備する液体用コンテナであって、
前記内側ライナーが、ライナー本体部分と管状液体排出部分とを具備してなり、
前記管状液体排出部分が前記排出管内部を貫通し、前記管状液体排出部分の内側が前記排出管連結管と連結するように配置され、前記管状液体排出部分の端部が前記排出管と前記排出管連結管との間に挟まれて固定されていることを特徴とする液体用コンテナ。
【請求項2】
前記内側ライナーが低密度ポリエチレンで形成されている、請求項1に記載の液体用コンテナ。
【請求項3】
前記内側ライナーが、管状フィルムから形成されたものである、請求項1または2に記載の液体用コンテナ。
【請求項4】
前記排出管の端部と、前記排出管連結管の端部とに、相互に嵌合するヘルールが設けられており、前記管状液体排出部の端部が、そのヘルールの間に挟まれて固定されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体用コンテナ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体用コンテナの組み立て方法であって、
前記ライナーのライナー本体部分を巻く、または折りたたんでライナーを棒状にして管状液体排出部分を先頭として液体容器本体に挿入し、
前記管状液体排出部分を排出管に貫通させ、
前記管状液体排出部分の端部を広げて、排出管の端部と、バルブ部材の排出管連結管の端部との間に挟んで圧着して固定する、
ことを特徴とする液体用コンテナの組み立て方法。
【請求項6】
前記管状液体排出部分の先端に錘を取り付け、重力を利用して前記管状液体排出部分を前記排出管に貫通させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記管状液体排出部分の先端に強磁性体を取り付け、排出管の端部から磁石を挿入し、前記強磁性体を引き寄せて前記管状液体排出部分を前記排出管に貫通させる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体用コンテナに用いられることを特徴とする内側ライナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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