説明

液体用紙容器

【課題】 手指等で簡単に紙主体の外面部分と、それ以外のプラスチックフィルム主体の内面部分とに分離することができるようにして、廃棄し易くすると共に資源(特に紙層)の再利用を有効に行えるようにした液体用紙容器を提供することである。
【解決手段】 外面から順に熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層と剥離層とガスバリアー層と熱可塑性樹脂層とが積層された積層体からなる液体用紙容器であって、前記剥離層が前記ガスバリアー層側に位置する第1剥離層と、前記接着樹脂層側に位置する第3剥離層と、前記第1剥離層と前記第3剥離層との間に設けられる第2剥離層との3層からなり、前記剥離層にて前記熱可塑性樹脂層と前記紙層と前記接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分と、前記ガスバリアー層と前記熱可塑性樹脂層とを少なくとも含む内面部分とに分離可能に構成されてなることを特徴とする液体用紙容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器を構成する積層体を剥離層にて容易に剥離させて、紙主体の外面部分とプラスチック主体の内面部分とに容易に分離できるようにして廃棄し易くすると共に資源を再利用し易くした液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、環境保護が叫ばれ、包装材料の再利用が話題となっており、ゲーベルトップ型紙容器においても、ポリエチレン/紙/ポリエチレンの積層体からなる牛乳包装用の紙容器等においては、リサイクル活動が行われ、資源の再利用による有効利用がなされている。
【0003】
しかしながら、酒、ワイン、コーヒー等の包装に使用されるゲーベルトップ型の紙容器は、内容物の保護、流通手段、流通期間の長期化などの理由から、ガスバリアー性の優れた紙容器とする必要があり、紙層の内容物側にガスバリアー層が積層された積層体、たとえば、ポリエチレン層/紙層/接着樹脂層/アルミニウム箔/接着剤層/ポリエチレンテレフタレート層/ポリエチレン層からなる積層体が一般的に使用されている。
【0004】
しかしながら、上記のような構成の積層体からなる紙容器は、安定したガスバリアー性が得られるものの、紙層とガスバリアー層とが強固に接着しており、紙層とガスバリアー層とを容易に剥離することができず、紙層を剥離し、紙のリサイクルとして再使用することができないという問題があった。
【0005】
そこで、この種の問題を解決するものとして、紙層とガスバリアー層との間に水溶性樹脂層を設け、この水溶性樹脂層を溶解して紙主体の部分とそれ以外の部分とに分離するようにした液体用紙容器を提案(たとえば、特許文献1、2参照)し、また、紙層とガスバリアー層との間にアルカリ可溶性樹脂層を設け、このアルカリ可溶性樹脂層を溶解して紙主体の部分とそれ以外の部分とに分離するようにした液体用紙容器を提案(たとえば、特許文献3参照)した。
【0006】
この特許文献1〜3の技術は、「水」や「温水」、あるいは、「アルカリ水溶液」という剥離手段を用いて剥離するものであり、紙の再利用の観点で紙主体の部分とそれ以外の部分とに分離する技術としては価値あるものであるが、「水」や「温水」、あるいは、「アルカリ水溶液」という剥離手段を用いることなく、紙主体の部分とそれ以外の部分とに容易に分離することができれば、尚一層、一般消費者に分別を求め易く、かつ、受け入れ易い液体用紙容器とすることができるということを見出して本発明を完成させたものである。
【特許文献1】特開平10−218170号公報
【特許文献2】特開平10−291279号公報
【特許文献3】特開平10−071662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、手指等で簡単に紙主体の部分、すなわち、熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分と、それ以外の部分、すなわち、ガスバリアー層と熱可塑性樹脂層とを少なくとも含むプラスチック主体の内面部分とに分離することができるようにして、廃棄し易くすると共に資源(特に紙層)の再利用を有効に行えるようにした液体用紙容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明は、外面から順に熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層と剥離層とガスバリアー層と熱可塑性樹脂層とが積層された積層体からなる液体用紙容器であって、前記剥離層が前記ガスバリアー層側に位置する第1剥離層と、前記接着樹脂層側に位置する第3剥離層と、前記第1剥離層と前記第3剥離層との間に設けられる第2剥離層との3層からなり、前記剥離層にて前記熱可塑性樹脂層と前記紙層と前記接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分と、前記ガスバリアー層と前記熱可塑性樹脂層とを少なくとも含む内面部分とに分離可能に構成されてなることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の液体用紙容器において、前記剥離層の剥離界面が前記第1剥離層と前記第2剥離層との間であることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1記載の液体用紙容器において、前記剥離層の剥離界面が前記第2剥離層と前記第3剥離層との間であることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4記載の本発明は、請求項2記載の液体用紙容器において、前記第1剥離層がポリアミド、シェラック、ブチラールのいずれかからなり、前記第3剥離層がウレタン、ブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかからなり、前記第2剥離層が酢酸セルロース、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ビニルアセタール、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のいずれかからなり、前記第1剥離層と前記第2剥離層と前記第3剥離層とがそれぞれ異なる樹脂から形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5記載の本発明は、請求項3記載の液体用紙容器において、前記第1剥離層がポリアミド、シェラック、ブチラール、ウレタンのいずれかからなり、前記第3剥離層がエチレン−酢酸ビニル共重合体からなり、前記第2剥離層がニトロセルロース、アクリル、ウレタン、ブチラール、ポリアミド、シェラック、酢酸セルロース、ポリエステルのいずれかからなり、前記第1剥離層と前記第2剥離層と前記第3剥離層とがそれぞれ異なる樹脂から形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6記載の本発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の液体用紙容器において、前記ガスバリアー層が、アルミニウム箔と2軸延伸プラスチックフィルムの積層体、金属または金属酸化物を蒸着した2軸延伸プラスチックフィルムであることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7記載の本発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の液体用紙容器において、その形状が、前面板と後面板と両側面板と頂部形成板と底部形成板とからなるゲーベルトップ型であって、前記頂部形成板および前記底部形成板の外面同士が熱接着される領域に部分的に接着強度調整層が形成されていることを特徴とするものである。このように構成することにより、頂部および底部の外面同士の熱接着部が剥離し易くなるので、折り畳み易くすることができると共に、剥離層にて積層体の層間で簡単に剥離させ、紙主体の外面部分、すなわち、熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分と、それ以外の部分、すなわち、ガスバリアー層と熱可塑性樹脂層とを少なくとも含む内面部分とに分離することができる。
【0015】
また、請求項8記載の本発明は、請求項7記載の液体用紙容器において、前記両側面板および前記両側面板の上下に連接されてなる頂部形成板および底部形成板の中央部にそれぞれ縦方向の折曲線が形成されてなる構成からなることを特徴とするものである。このように構成することにより、両側面板を内側に折り込んで折り畳むのが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
外面から順に熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層と剥離層とガスバリアー層と熱可塑性樹脂層とが積層された積層体からなる液体用紙容器であって、前記剥離層が前記ガスバリアー層側に位置する第1剥離層と、前記接着樹脂層側に位置する第3剥離層と、前記第1剥離層と第3剥離層との間に設けられる第2剥離層との3層からなり、前記剥離層にて前記熱可塑性樹脂層と前記紙層と前記接着樹脂層とを少なくとも含む紙主体の外面部分と、前記ガスバリアー層と前記熱可塑性樹脂層とを少なくとも含む内面部分とに分離可能に構成されてなる液体用紙容器であるので、使用後に紙容器を解体し、紙容器の端部ないし角隅部を折り曲げるなり、ほぐすなりして剥離層にて紙主体の外面部分と、それ以外のプラスチック主体の内面部分とに剥離して分離することができるので、使用済みの紙容器の廃棄ないしは資源の再利用がし易くなるという優れた効果を奏するものである。
【0017】
また、剥離層を第1剥離層と第2剥離層と第3剥離層とからなる3層構成とすると共に、各層を形成する樹脂を特定することにより、剥離界面を第1剥離層と第2剥離層の界面あるいは第2剥離層と第3剥離層の界面のいずれかに決定することができると共に、その剥離界面のラミネート強度を液体用紙容器を構成する積層体の各層間ラミネート強度の中で一番弱い強度とすることができ、決定された剥離界面で容易に剥離することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかる液体用紙容器に用いる積層体の層構成を図解的に示す図、図2はゲーベルトップ型紙容器のブランク板の表面の状態を示す平面図、図3はゲーベルトップ型紙容器の一実施例を示す斜視図、図4はゲーベルトップ型紙容器の底部形成板の外面同士の接着部を剥離して分解する手順を示す部分斜視図、図5はゲーベルトップ型紙容器の折り畳んだ状態を示す斜視図、図6はポリエチレン層と紙層と接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分をゲーベルトップ型紙容器の端部から剥離し始める状態を示す斜視図、図7はポリエチレン層と紙層と接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分をゲーベルトップ型紙容器の全長に亘って剥離した状態を示す斜視図、図8はゲーベルトップ型紙容器の外面部分と内面部分とを剥離させるきっかけを作る方法を示す斜視図であり、図中の1,6はポリエチレン層、2は紙層、3は接着樹脂層、4は剥離層、4aは第1剥離層、4bは第2剥離層、4cは第3剥離層、5はガスバリアー層、7,8は接着強度調整層、11,12,13,14は側面板、11a,12a,13a,14aは頂部形成板、11b,12b,13b,14bは底部形成板、15は接着板、16,17は折曲線、18は注出口取付孔、19は底部の端縁接着部、Pはゲーベルトップ型液体用紙容器、Sは積層体をそれぞれ示す。
【0019】
図1は本発明にかかる液体用紙容器に用いる積層体の層構成を図解的に示す図であって、液体用紙容器Pに用いる積層体Sは外面から順にポリエチレン層1と紙層2と接着樹脂層3と剥離層4とガスバリアー層5とポリエチレン層6とから構成され、さらに前記剥離層4は前記ガスバリアー層5側に位置する第1剥離層4aと、前記接着樹脂層3側に位置する第3剥離層4cと、前記第1剥離層4aと前記第3剥離層4cとの間に設けられる第2剥離層4bとの3層から構成され、いずれの剥離層も全面ベタで形成される。なお、印刷絵柄は、通常、ポリエチレン層1の外面に設けられるものであるが、必要に応じて紙層2のポリエチレン層1側の面に設けてもよいものである。
【0020】
前記第1剥離層4a、前記第2剥離層4b、前記第3剥離層4cの3層から構成される前記剥離層4は、剥離界面を前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bとの間、あるいは、前記第2剥離層4bと前記第3剥離層4cとの間のいずれかを適宜選択することができ、積層体Sの端面を手指等で折り曲げるなり、ほぐすなりすることにより、剥離界面を前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bとの間、あるいは、前記第2剥離層4bと前記第3剥離層4cとの間で剥離して、ポリエチレン層1と紙層2と接着樹脂層3とからなる紙主体の外面部分と、ガスバリアー層5とポリエチレン層6とからなるプラスチック主体の内面部分とに容易に剥離して分離することができる。
【0021】
上記した剥離界面は、前記第1剥離層4a、前記第2剥離層4bおよび前記第3剥離層4cを形成する樹脂を適宜選択することにより決定することができる。最初に、前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bとの間で剥離させる場合について説明する。この場合、前記第1剥離層4aを形成する樹脂としては、前記ガスバリアー層5を構成するアルミニウム箔面またはアルミニウム等の金属、あるいは、酸化アルミニウムや酸化珪素等の金属酸化物を蒸着した2軸延伸プラスチックフィルムの蒸着面との接着性のよい(接着強度が強い)ポリアミド、シェラック、ブチラールのいずれかの樹脂が使用でき、また、前記第3剥離層4cを形成する樹脂としては、前記接着樹脂層3との接着性のよい(接着強度が強い)ウレタン、ブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかの樹脂が使用でき、また、前記第2剥離層4bを形成する樹脂としては、前記第1剥離層4aよりも前記第3剥離層4cとの接着性がよく(接着強度が強く)、かつ、前記ガスバリアー層3と前記第1剥離層4aとの間の接着強度あるいは前記接着樹脂層3と前記第3剥離層4cとの間の接着強度あるいはその他の界面や層間の接着強度よりも前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bとの間の接着強度が弱く構成される樹脂が適当であり、酢酸セルロース、ニトロセルロース(硝化綿)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ビニルアセタール、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のいずれかの樹脂を使用でき、前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bと前記第3剥離層4cとをそれぞれ異なる樹脂で形成するのが、剥離界面の安定性(必ず同じ剥離界面から剥離することができるという意)から好ましいものである。
【0022】
次に、前記第2剥離層4bと前記第3剥離層4cとの間で剥離させる場合について説明する。この場合、前記第1剥離層4aを形成する樹脂としては、前記ガスバリアー層5を構成するアルミニウム箔面またはアルミニウム等の金属、あるいは、酸化アルミニウムや酸化珪素等の金属酸化物を蒸着した2軸延伸プラスチックフィルムの蒸着面との接着性のよい(接着強度が強い)ポリアミド、シェラック、ブチラール、ウレタンのいずれかの樹脂が使用でき、また、前記第3剥離層4cを形成する樹脂としては、前記接着樹脂層3と接着性のよい(接着強度が強い)ウレタン、ブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかの樹脂が使用できるが、前記第2剥離層4bを形成する樹脂と前記第3剥離層4cとの間で剥離させる必要があり、この間の接着強度を前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bとの接着強度あるいは前記ガスバリアー層3と前記第1剥離層4aとの接着強度あるいは前記接着樹脂層3と前記第3剥離層4cとの間の接着強度あるいはその他の界面や層間の接着強度よりも弱く構成する必要があり、これを考慮すると共に、前記第2剥離層4bを形成する樹脂の選択肢を広くするためにはエチレン−酢酸ビニル共重合体が最も好ましい樹脂であり、そして前記第2剥離層4bを形成する樹脂としては、ニトロセルロース(硝化綿)、アクリル、ウレタン、ブチラール、ポリアミド、シェラック、酢酸セルロース、ポリエステルのいずれかの樹脂を使用でき、前記第1剥離層4aと前記第2剥離層4bと前記第3剥離層4cとをそれぞれ異なる樹脂で形成するのが、剥離界面の安定性(必ず同じ剥離界面から剥離することができるという意)から好ましいものである。
【0023】
また、前記剥離層4(第1剥離層4a、第2剥離層4b、第3剥離層4c)の形成方法は、ガスバリアー層5を構成するアルミニウム箔面またはアルミニウム等の金属、あるいは、酸化アルミニウムや酸化珪素等の金属酸化物を蒸着した2軸延伸プラスチックフィルムの蒸着面に、たとえば、グラビア印刷法にて第1剥離層4a、第2剥離層4b、第3剥離層4cを順に重ね刷り(それぞれの層を1度ずつ刷って3度刷り)することにより形成される。また、第1剥離層4a、第2剥離層4b、第3剥離層4cの各層には、所望の剥離強度(接着強度)を得るためにマイクロクリスタリンワックス、シリコーン等を添加してもよいものである。
【0024】
前記ポリエチレン層1としては低密度ポリエチレンが使用され、前記ポリエチレン層6としては低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン−αオレフィン共重合体等が使用できる。紙層2としては、坪量が250〜450g/m2の板紙(厚紙)が使用される。接着樹脂層3としては、低密度ポリエチレン、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等が使用される。ガスバリアー層5としては、厚さが6〜9μmのアルミニウム箔と2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ナイロンフィルムとの積層体、アルミニウム等の金属あるいは酸化アルミや酸化珪素等の金属酸化物を蒸着した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ナイロンフィルムが使用される。
【0025】
本発明の液体用紙容器としては、ゲーベルトップ型、フラットトップ型(ブリック型)等任意であるが、これ以後、ゲーベルトップ型の液体用紙容器について説明する。ゲーベルトップ型容器を作製するためのブランク板は、図2に示すように、側面板11、12、13、14と接着板15が折罫を介してそれぞれ連接すると共に、側面板11、12、13、14の上下端縁には頂部形成板11a、12a、13a、14aおよび底部形成板11b、12b、13b、14bが折罫を介してそれぞれ連接し、側面板12および側面板14の中央部には縦方向にそれぞれ折曲線16が、頂部形成板12a、14aと底部形成板12b、14bの中央部には縦方向にそれぞれ折曲線17が、側面板11、12、13、14と頂部形成板11a、12a、13a、14aないしは底部形成板11b、12b、13b、14bを連接する折罫の上下の所定寸法を除いた状態で形成されている。そして、底部形成板11b、12b、13b、14bの表面同士が熱接着される領域および頂部形成板11a、12a、13a、14aの表面同士が熱接着される領域にはそれぞれ部分的な接着強度調整層7および接着強度調整層8が形成されている。印刷絵柄層はブランク板の表面の熱接着される領域を除いた領域に形成される。
【0026】
接着強度調整層7、8は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、環化ゴム、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド樹脂の単体またはこれらの混合物からなる樹脂インキを使用して印刷することにより形成することができる。接着強度調整層7、8を形成する面積は、底部形成板11b、12b、13b、14bおよび頂部形成板11a、12a、13a、14aの表面同士が熱接着される領域の20%以上の面積とするのがよい。
【0027】
図2に示すブランク板を、側面板11と接着板15とを熱接着して筒状に成形し、底部形成板11b、12b、13b、14bを折り曲げて熱接着することにより底部を形成した後に、頂部形成板11a、12a、13a、14aを折り曲げて熱接着することにより頂部を形成して図3に示すようなゲーベルトップ型紙容器が得られる。ゲーベルトップ型紙容器を廃棄する際には、接着強度調整層8が設けられた頂部形成板12a、14aの表面同士が熱接着された部分を剥離すると共に、接着強度調整層7が設けられた底部形成板12b、13b、14bの表面同士が熱接着された部分を剥離して、ゲーベルトップ型紙容器の頂部および底部を解体してから、両側面板12、14を幅方向の中央部の折曲線16にて内方に折り曲げると共に、頂部形成板12a、14aおよび底部形成板12b、14bを幅方向の中央部の折曲線17にてそれぞれ内方に折り曲げることにより、図5に示すように折り畳むことができる。
【0028】
接着強度調整層7が設けられた底部形成板12b、13b、14bの表面同士が熱接着された部分を剥離してゲーベルトップ型紙容器の底部を解体する手順は、図4に示すように、図4(イ)に示す状態から、底部の端縁接着部19を底部形成板13bから剥離して起こし、図4(ロ)に示す状態とする。さらに、底部形成板12b、14b(図2参照)の表面同士が熱接着された部分を剥離して端縁熱接着部19を分離し、図4(ハ)に示す状態とする。次いで、側面板12、14を幅方向の中央部の折曲線16にて内方に折り曲げ、図4(ニ)に示す状態とすると共に、頂部形成板12a、14aを幅方向の中央部の折曲線17にて内方に折り曲げることにより、ゲーベルトップ型紙容器を、図5に示す折り畳んだ状態とすることができる。
【0029】
図5に示すゲーベルトップ型紙容器の折り畳んだ状態で、後面板11と頂部形成板11a、と底部形成板11bの接着板15と接着された側端部、すなわち、積層体Sの端部が露出している部分ないしはその角隅部を折り曲げるなり、ほぐすなりすることにより積層体Sの剥離層4を構成する上記した所望の剥離界面で剥離させることができるので、図6に示すように、頂部形成板11aおよび底部形成板11bの角隅部から、ポリエチレン層1と紙層2と接着樹脂層3とを少なくとも含む外面部分を剥離させることができ、図7に示すように、後面板11と頂部形成板11aと底部形成板11bの側端部の全長に亘って剥離させることができる。また、図8に示すように、頂部熱接着部の外面同士の接着部を剥がした後、内面同士の熱接着部を引っ張って内面接着部を接着端部より破断し開封することにより、ポリエチレン層1と紙層2と接着樹脂層3とを少なくとも含む外面部分とそれ以外の内面部分との分離した部位を作り、頂部の前記外面部分とそれ以外の前記内面部分を剥離することにより、図6に示すように、頂部形成板11aの角隅部からポリエチレン層1と紙層2と接着樹脂層3とを少なくとも含む外面部分をそれ以外の内面部分から剥離させることができる。分離した外面部分と内面部分(ガスバリアー層5とポリエチレン層6とを少なくとも含むプラスチックを主体とする内面部分)とは、それぞれ別々に処理できるので廃棄ないしは再利用が容易となる。
【0030】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0031】
一方の面にアルミニウム蒸着層を有する12μm厚さの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以後、PETと呼称する)の他方の面にウレタン系接着剤を介して60μm厚さの低密度ポリエチレンフィルム(以後、LDPEと呼称する)を積層した積層フィルムを作製した。次に、この積層フィルムのアルミニウム蒸着層面に、表1に示す組成1の樹脂インキA、B、Cを使用し、いずれも深さ30μmのグラビア版を用いて樹脂インキAにて第1剥離層を、樹脂インキBにて第2剥離層を、樹脂インキCにて第3剥離層をこの順でベタ印刷を行って3層構成からなる剥離層を形成した中間積層体を作製した。
【0032】
別に、400g/m2の板紙の一方の面に30μm厚さのLDPEを押出コートにより積層し、板紙の他方の面と前記中間積層体の剥離層面とをエチレン−メタクリル酸共重合体(以後、EMAAと呼称する)を25μm厚さで押出ラミネーションして積層することにより、LDPE30μm/板紙400g/m2/EMAA25μm/第3剥離層(樹脂インキC)/第2剥離層(樹脂インキB)/第1剥離層(樹脂インキA)/アルミニウム蒸着層/PET12μm/ウレタン系接着剤/LDPE60μmからなる最終積層体1を作製した。
【実施例2】
【0033】
表1に示す組成1の樹脂インキA、B、Cに代えて組成2の樹脂インキA、B、Cを用いた以外は実施例1と同様にして最終積層体2を作製した。
【実施例3】
【0034】
表1に示す組成1の樹脂インキA、B、Cに代えて組成3の樹脂インキA、B、Cを用いた以外は実施例1と同様にして最終積層体3を作製した。
【実施例4】
【0035】
表1に示す組成1の樹脂インキA、B、Cに代えて組成4の樹脂インキA、B、Cを用いた以外は実施例1と同様にして最終積層体4を作製した。
【0036】
【表1】

【0037】
得られた最終積層体1、2の剥離層はいずれの層間も積層体と一体化してゲーベルトップ型紙容器としての接着力を有するものであった。また、最終積層体1、2の端部ないしは角隅部を手指で折り曲げるなり、ほぐすなりすることにより、第1剥離層と第2剥離層との界面で、LDPE30μm/板紙400g/m2/EMAA25μmからなる外面部分と、アルミニウム蒸着層/PET12μm/ウレタン系接着剤/LDPE60μmからなる内面部分とに容易に分離することができた。
【0038】
上記で作製した最終積層体1、2の30μm厚さのLDPE面に印刷絵柄を形成すると共に、所定の領域に接着強度調整層を印刷により形成した後に、打ち抜きによりゲーベルトップ型紙容器用のブランク板を作製し、そのブランク板を筒貼りして頂部および底部を熱接着により形成してゲーベルトップ型紙容器を作製した。このゲーベルトップ型紙容器の頂部および底部における外面同士の接着部を剥離して紙容器を折り畳んだ状態とし、折り畳まれた紙容器の角隅部の端部を折り曲げることにより、第1剥離層と第2剥離層との界面で剥離して、LDPE30μm/板紙400g/m2/EMAA25μmからなる外面部分と、アルミニウム蒸着層/PET12μm/ウレタン系接着剤/LDPE60μmからなる内面部分とに容易に分離することができた。
【0039】
また、得られた最終積層体3、4の剥離層はいずれの層間も積層体と一体化してゲーベルトップ型紙容器としての接着力を有するものであった。また、最終積層体3、4の端部ないしは角隅部を手指で折り曲げるなり、ほぐすなりすることにより、第2剥離層と第3剥離層との界面で、LDPE30μm/板紙400g/m2/EMAA25μmからなる外面部分と、アルミニウム蒸着層/PET12μm/ウレタン系接着剤/LDPE60μmからなる内面部分とに容易に分離することができた。
【0040】
上記で作製した最終積層体3、4の30μm厚さのLDPE面に印刷絵柄を形成すると共に、所定の領域に接着強度調整層を印刷により形成した後に、打ち抜きによりゲーベルトップ型紙容器用のブランク板を作製し、そのブランク板を筒貼りして頂部および底部を熱接着により形成してゲーベルトップ型紙容器を作製した。このゲーベルトップ型紙容器の頂部および底部における外面同士の接着部を剥離して紙容器を折り畳んだ状態とし、折り畳まれた紙容器の角隅部の端部を折り曲げることにより、第2剥離層と第3剥離層との界面で剥離して、LDPE30μm/板紙400g/m2/EMAA25μmからなる外面部分と、アルミニウム蒸着層/PET12μm/ウレタン系接着剤/LDPE60μmからなる内面部分とに容易に分離することができた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる液体用紙容器に用いる積層体の層構成を図解的に示す図である。
【図2】ゲーベルトップ型紙容器のブランク板の表面の状態を示す平面図である。
【図3】ゲーベルトップ型紙容器の一実施例を示す斜視図である。
【図4】ゲーベルトップ型紙容器の底部形成板の外面同士の接着部を剥離して分解する手順を示す部分斜視図である。
【図5】ゲーベルトップ型紙容器の折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図6】ポリエチレン層と紙層と接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分をゲーベルトップ型紙容器の端部から剥離し始める状態を示す斜視図である。
【図7】ポリエチレン層と紙層と接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分をゲーベルトップ型紙容器の全長に亘って剥離した状態を示す斜視図である。
【図8】ゲーベルトップ型紙容器の外面部分と内面部分とを剥離させるきっかけを作る方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1,6 ポリエチレン層
2 紙層
3 接着樹脂層
4 剥離層
4a 第1剥離層
4b 第2剥離層
4c 第3剥離層
5 ガスバリアー層
7,8 接着強度調整層
11,12,13,14 側面板
11a,12a,13a,14a 頂部形成板
11b,12b,13b,14b 底部形成板
15 接着板
16,17 折曲線
18 注出口取付孔
19 底部の端縁接着部
P ゲーベルトップ型液体用紙容器
S 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面から順に熱可塑性樹脂層と紙層と接着樹脂層と剥離層とガスバリアー層と熱可塑性樹脂層とが積層された積層体からなる液体用紙容器であって、前記剥離層が前記ガスバリアー層側に位置する第1剥離層と、前記接着樹脂層側に位置する第3剥離層と、前記第1剥離層と前記第3剥離層との間に設けられる第2剥離層との3層からなり、前記剥離層にて前記熱可塑性樹脂層と前記紙層と前記接着樹脂層とを少なくとも含む外面部分と、前記ガスバリアー層と前記熱可塑性樹脂層とを少なくとも含む内面部分とに分離可能に構成されてなることを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
前記剥離層の剥離界面が前記第1剥離層と前記第2剥離層との間であることを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器。
【請求項3】
前記剥離層の剥離界面が前記第2剥離層と前記第3剥離層との間であることを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器。
【請求項4】
前記第1剥離層がポリアミド、シェラック、ブチラールのいずれかからなり、前記第3剥離層がウレタン、ブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体のいずれかからなり、前記第2剥離層が酢酸セルロース、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ビニルアセタール、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のいずれかからなり、前記第1剥離層と前記第2剥離層と前記第3剥離層とがそれぞれ異なる樹脂から形成されていることを特徴とする請求項2記載の液体用紙容器。
【請求項5】
前記第1剥離層がポリアミド、シェラック、ブチラール、ウレタンのいずれかからなり、前記第3剥離層がエチレン−酢酸ビニル共重合体からなり、前記第2剥離層がニトロセルロース、アクリル、ウレタン、ブチラール、ポリアミド、シェラック、酢酸セルロース、ポリエステルのいずれかからなり、前記第1剥離層と前記第2剥離層と前記第3剥離層とがそれぞれ異なる樹脂から形成されていることを特徴とする請求項3記載の液体用紙容器。
【請求項6】
前記ガスバリアー層が、アルミニウム箔と2軸延伸プラスチックフィルムの積層体、金属または金属酸化物を蒸着した2軸延伸プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体用紙容器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液体用紙容器の形状が、前面板と後面板と両側面板と頂部形成板と底部形成板とからなるゲーベルトップ型であって、前記頂部形成板および前記底部形成板の外面同士が熱接着される領域に部分的に接着強度調整層が形成されていることを特徴とする液体用紙容器。
【請求項8】
請求項7記載の液体用紙容器において、前記両側面板および前記両側面板の上下に連接されてなる頂部形成板および底部形成板の中央部にそれぞれ縦方向の折曲線が形成されてなることを特徴とする液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−13161(P2010−13161A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175212(P2008−175212)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】