説明

液体粘度測定装置

【課題】測定完了後、次の測定作業に迅速に入れるようにした液体粘度測定装置を提供する。
【解決手段】圧力伝達膜17によって仕切られ、その内部に被測定液9が注入される測定容器7と、測定容器7内へ被測定液9を注入する被測定液注入装置11と、前記測定容器7と接続連通し前記測定容器内に注入された被測定液9が外へ向かって流れる流路管25と、前記被測定液注入装置11による被測定液9の注入時に測定容器7内にかかる圧力を前記圧力伝達膜17を介して外から検出する圧力検出装置13と、その圧力検出装置による圧力値から被測定液9の粘度を算出する制御部53とで構成し、前記測定容器7を流路管25と一緒に装置本体3の外へ取出し自在に装着セットし、新しいものと迅速に交換が行なえるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液等の粘度を測定するのに適する液体粘度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に被測定液の粘度を測定する測定手段としては、多数の手段が知られており、その内でも、例えば、被測定液を注入する注入時の圧力に基づいて粘度を測定する粘度測定装置が提案されている。
【0003】
圧力に基づいて粘度を測定する粘度測定装置の概要は、試料の入ったシリンダと、シリンダに接続された細管と、シリンダ内を移動可能なピストンと、シリンダ内の圧力を計測する圧力計測手段とを備えた構造となっている。測定は、シリンダに対してピストンを予め設定された一定の相対速度で移動させることで、シリンダ内に注入された試料を細管から流出させ、その時のシリンダ内の圧力(圧力と粘度は比例関係にある)に基づき試料の粘度を求めるようになっている。
【特許文献1】特開平9−304261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体粘度測定装置は、シリンダ内に試料を入れて測定するところから、その試料が血液の場合、次に待機する血液を測定する時、先に使用した測定済みの血液はシリンダ内に付着して残るところから、そのシリンダ内に付着した測定済みの血液をきれいに洗い流し乾燥させる洗浄工程と乾燥工程を必要とする。
【0005】
このため、次の測定に入るまでの時間が長くなり作業能率の面で望ましくないこと。また、採血した血液はピストンを抜き取った後のシリンダ内へ注入する作業となるため、長時間にわたって外気と直接触れる結果、凝固が加速され正確な粘度測定のデータが得られにくなる等の問題をかかえる。しかも、多量の血液を必要とする。
【0006】
そこで、本発明にあっては、前記問題点の解消を図った液体粘度測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、圧力伝達膜によって仕切られ、その内部に被測定液が注入される測定容器と、測定容器内へ被測定液を注入する被測定液注入装置と、前記測定容器と接続連通し前記測定容器内に注入された被測定液が外へ向かって流れる流路管と、前記被測定液注入装置による被測定液の注入時に測定容器内にかかる圧力を前記圧力伝達膜を介して外から検出する圧力検出装置と、その圧力検出装置による圧力値から被測定液の粘度を算出する制御部とを有し、前記測定容器は流路管と一緒に装置本体の外へ取出し自在に装着セットされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被測定液の粘度測定完了後、使用済みの測定容器及び流路管を一緒に装置本体の外へ取り外し、新たな測定容器及び流路管を装置本体内へ装着セットすることで、迅速に次の測定に入ることができる。この結果、洗浄工程、乾燥工程の省略が図れると共に、測定完了から次の測定に入るまでの時間を短くし作業能率の大幅な向上が図れる。また、被測定液注入装置によって直接測定容器内へ被測定液を注入するため、外気と直接触れる機会をなくし、正確な測定結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は第1に、前記測定容器を、圧力伝達膜により被測定液が注入される第1の部屋と液体が充填される第2の部屋とに仕切ると共に、第1の部屋には挿入可能なシール膜によって閉塞された被測定液取入口を設ける一方、第2の部屋には挿入可能なシール膜によって閉塞された圧力検出用取入口を設けることで、圧力伝達膜によって伝達される圧力を、流体を介して確実、正確に圧力検出装置に伝達できるようにする。
【0010】
第2に、前記圧力伝達膜を、第1の部屋へ向かって張り出す半球状の形状とすることで、被測定液が注入される第1の部屋の容積を小さく抑え、使用する被測定液の使用量を少なくする一方、確実な圧力伝達を確保する。
【実施例】
【0011】
以下、図1乃至図5に基づき本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0012】
図1は本発明にかかる液体粘度測定装置全体の概要説明図を示している。
【0013】
液体粘度測定装置1は、装置本体3の内部に設けられた手等の挿入が可能な測定空間5(点線)内に、測定容器7と測定容器7内に被測定液9を注入する被測定液注入装置11と、前記測定容器7内にかかる圧力を検出する圧力検出装置13とを有している。
【0014】
被測定液9としては、血液の外に、ソース等の調味料や塗料等がある。
【0015】
測定容器7は、図3、図4に示すように測定容器支持部材15の内部に装着セットされると共に、内部は圧力伝達膜17によって上下に仕切られている。上下に仕切られた上位側は被測定液9が注入される第1の部屋19、下位側は第2の部屋21となっている。第1の部屋19には、被測定液取入口23と流路管25とをそれぞれ有している。被測定液取入口23は、一方(図面右側)の側壁から延長され第1の部屋19と連続連通し合うと共に、採血針等の挿入が可能なシール膜27によって閉塞されている。流路管25は図1に示すように径の細いパイプで作られていて保温筒29の内部に設けられたセット溝31に沿って配置されている。流路管25の一端は測定液取入口23を介して前記第1の部屋19と接続連通し、他端は測定空間5内において大気に開放している。
【0016】
保温筒29は、ヒンジ33を支点として二つに分かれるアングル状に形成され、図1、実線の如く保温筒29が二つに開いた時にセット溝31が露出し、セット溝31に対する流路管25のセット及び取り外しが可能となる。
【0017】
保温筒29は熱伝導性に優れるアルミ等の材質によって作られ、ヒータ35によって熱が与えられることで流路管25を暖め、保温する。
【0018】
第2の部屋21は、液体37が充填されると共に圧力検出用取入口39を有している。液体37は圧力伝達膜17からの圧力を効率よく伝達する伝達触媒となっていて、飽和蒸気圧の低い液体、例えば、商品名:フロリナートFC70が使用されている。
【0019】
圧力検出用取入口39は、第2の部屋21の底部に設けられていて、伝達針等の挿入が可能なシール膜41によって閉塞されている。
【0020】
圧力伝達膜17は、第1の部屋19へ向かって張り出した半球状の形状となっている。半球状の形状は、第1の部屋19の容積を小さく抑えることで被測定液9の使用量を少なくすることと、圧力Pに対してその圧力方向に対する大きな変形量を確保し、確実な圧力伝達が得られる機能を備えている。
【0021】
一方、測定容器7を装着セットする測定容器支持部材15は、固定台43に前面が開放されたケース部材45が固定支持された形状となっている。固定台43には、図2に示すようにケース部材45の内部へ測定容器7を装着セットした時に測定容器7が付勢ばね46により、常時上方(矢印イ)へ向け付勢される付勢保持具48が設けられている。
【0022】
ケース部材45には、図3に示すように前面開放口45a側から測定容器7の出し入れが可能となっている。ケース部材45の天井部には、前面が開放されたスリット溝47が設けられ、測定容器7の出し入れ時に、上方へ延長された流路管25がスリット溝47に沿って移動することで測定容器7の出し入れに支障が起きないようになっている。
【0023】
圧力検出装置13は、検出装置本体49から伝達針51が延長された構造となっていて、伝達針51が第2の部屋21への挿入時に針内部に満たされる液体37を介して検出装置本体49に圧力が伝達される手段となっている。検出装置本体49によって検出された圧力値は制御部53に入力されることで粘度が算出されるようになっている。
【0024】
圧力と粘度は比例関係にあって粘度は次の式から導き出せる。
【0025】
η=π×γ4 ×P/(8×Q×L)
η:粘度 π:円周率 γ:流路管の内径 P:圧力 Q:流量 L:流路管の長さ
したがって、制御部53に予め、円周率、流路管の内径及び長さ、流量の情報を入力しておくことで、圧力検出装置13からの圧力値が圧力情報として制御部53に入力されると、与えられた各情報に基づき前記式から粘度の算出を行い表示部55に表示されるようになっている。
【0026】
圧力検出装置13の検出装置本体49は、昇降台57に固定支持され、昇降台57は3箇所に配置されたガイドレール59に沿って上下動可能となっている。
【0027】
伝達針51は、昇降台57の上昇時に図3から図4に示すように圧力検出用取入口39から第2の部屋21内への挿入が可能となり、下降時には、第2の部屋21からの後退が可能となっている。
【0028】
昇降台57を上下にガイドするガイドレール59の上端は前記固定台43に、下端はベース台61にそれぞれ固定支持されている。昇降台57の上下動は、その前面に設けられた手動操作部63の取手63aを持って上へ引き上げることで上昇する。この時、手動操作部63は、図2に示すように測定容器7の前方(図左側)への動きを規制するストッパとして機能している。上昇完了時の昇降台57は、ストッパ部材65を昇降台57の下位に突出させることで、下方への動きが阻止された測定状態が確保されるようになっている。
【0029】
ストッパ部材65は、前記ベース台61に固定支持されたストッパケース67から付勢ばね69によって常時前方(矢印ロ)へ向け付勢されると共に、手動用のストッパ操作部71を有している。
【0030】
したがって、ストッパ操作部71を図3に示すように付勢ばね69に抗して矢印のように引張ることで、ストッパ部材65が後退し昇降台57の下降が可能となる。
【0031】
測定液注入装置11は、血液を血管から直接採血する採血器73をセットするセット台75と採血器73内の血液を押し出す押し出し部材77とを有している。セット台75は図5に示すように、採血器固定バンド76と、V溝に形成された受面79とを有している。受面79のV溝は、そのV溝に沿って採血器73を前進、移動させた時に採血器73の採血針81がケース部材45に設けられた開口45aから第1の部屋19に設けられた被測定液取入口23と対応し進入可能な位置決め機能を備える。
【0032】
押し出し部材77は、採血器73のピストン83を押圧するもので、ねじ棒85の正転又は逆転によりガイドレール87に沿って矢印(図1矢印ハ方向)に移動可能となっている。ねじ棒85及びガイドレール87は支持ブラケット89により両端支持されると共に、ねじ棒85は軸受により回転自在となっている。ねじ棒85はギヤによる減速機構91を介して正転及び逆転可能な駆動モータ93からの回転動力が与えられるようになっている。
【0033】
駆動モータ93としては設定された正確な回転動力が得られるステッピングモータが好ましいが、いずれのモータであってもよい。
【0034】
駆動モータ93の回転動力、即ち、押し出し部材77の押し出し速度及びヒータ35の加熱温度は、前記した制御部53からの信号に基づいて作動制御される。
【0035】
制御部53は、圧力値から粘度を算出する外に、ヒータ制御機能及びモータ制御機能を有している。ヒータ制御機能は、ヒータ35周囲の雰囲気温度を検出する温度センサ95からの温度情報が入力されるとその温度情報に基づき、例えば、被測定液9が血液の場合、体温に近い37℃となるようヒータ35に指令信号を出力する。
【0036】
モータ制御機能は、ずり速度、採血器73の内径、流路管25の内径の各条件がタッチパネル釦97によって入力されると、被測定液9に対応した送り出し速度が得られるよう駆動モータ93に指令信号を出力するようになっていて、その送り出し量、即ち、ストロークLは前後一対のリミットスイッチS1,S2によって制御管理されるようになっている。
【0037】
このように構成された液体粘度測定装置1に測定に入るには、始めに、図4に示すように第2の部屋21内へ圧力検出装置13の伝達針51を挿入した後、採血した採血器73をセット台75にセットし、前進、移動させて採血針81を被測定液取入口23へ挿入する。挿入完了後、採血器73を採血器固定バンド76で固定することで測定に入れる。
【0038】
測定に入る準備が完了すると採血器73によって採血された血液を押し出し部材77によって第1の部屋19へ押し出し注入する。この時、血液は外気と直接触れることなく注入が行なえる。と同時に第1の部屋19は圧力伝達膜17によって容積が小さく仕切られているため、少ない量で一杯となる。一杯になった血液は、流路管25を介して外へ向かって流れる。この時、第1の部屋19に作用する圧力は圧力検出装置13によって検出され、その圧力値は制御部53に入力される。入力された圧力値に基づき制御部53は粘度を算出し、その値を表示部55に表示する。
【0039】
測定完了後、次の測定に入るには、保温管29を開いてガイド溝31を露出させると共に、採血器固定バンド76を緩めて採血器73を後退させて採血針81を抜き取る。
【0040】
続いて、昇降台57を下降させ、第2の部屋21から圧力検出装置13の伝達針51を抜き取ることで、測定容器支持部材15のケース部材45から測定容器7及び流路管25を一緒に取り外すことができる。取り外し完了後は、図3、図4に示すように、新しい測定容器7をケース部材45に装着セットすることで、従来行なっていた被測定液の洗浄工程、乾燥工程の省略が図れるようになり、迅速に次の測定に入ることができる。
【0041】
なお、本実施形態にあっては、第1の部屋に作用する圧力を液体を介して圧力検出装置に伝達する手段を採用しているが、圧力伝達膜17を半球面から水平な板状に形成し、その外側に圧力検出装置のセンサ部を直接接触させた手段としてもよい。この実施形態の場合には構造がシンプルとなり測定容器7を安く作れるメリットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかる流体測定装置全体の概要説明図。
【図2】図1のA−A線切断概要説明図。
【図3】測定容器と圧力検出装置の動作説明図。
【図4】採血器の採血針を被測定液取入口へ挿入する動作説明図。
【図5】セット台の切断概要説明図。
【符号の説明】
【0043】
3 装置本体
7 測定容器
9 被測定液
11 被測定液注入装置
13 圧力検出装置
17 圧力伝達膜
19 第1の部屋
21 第2の部屋
23 被測定液取入口
27 シール膜
37 液体
39 圧力検出用取入口
41 シール膜
53 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力伝達膜によって仕切られ、その内部に被測定液が注入される測定容器と、測定容器内へ被測定液を注入する被測定液注入装置と、前記測定容器と接続連通し前記測定容器内に注入された被測定液が外へ向かって流れる流路管と、前記被測定液注入装置による被測定液の注入時に測定容器内にかかる圧力を前記圧力伝達膜を介して外から検出する圧力検出装置と、その圧力検出装置による圧力値から被測定液の粘度を算出する制御部とを有し、前記測定容器は流路管と一緒に装置本体の外へ取出し自在に装着セットされていることを特徴とする液体粘度測定装置。
【請求項2】
前記測定容器は、圧力伝達膜により被測定液が注入される第1の部屋と液体が充填される第2の部屋とに仕切られると共に、第1の部屋には挿入可能なシール膜によって閉塞された被測定液取入口が設けられる一方、第2の部屋には挿入可能なシール膜によって閉塞された圧力検出用取入口が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体粘度測定装置。
【請求項3】
前記圧力伝達膜は、第1の部屋へ向かって張り出す半球状の形状となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体粘度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−147496(P2007−147496A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343646(P2005−343646)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000114891)ヤマト科学株式会社 (17)