説明

液体組成物を混合及びスクリーニングする方法

1つ以上の液体組成物を混合するための方法であって、
a.前記液体組成物用の、約10mL〜約200mLの容量を有する1つ以上の容器を与える工程と、
b.前記1つ以上の容器に前記1つ以上の液体組成物を充填する工程と、
c.前記組成物をヘリカル型ミキサーで約10rpm〜約750rpmの速度で攪拌する工程と、
を含み、
前記液体組成物の少なくとも1つが約0.5Pa・s〜約20,000Pa・sの粘度を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘリカル型ミキサーを使用して液体組成物を混合及びスクリーニングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの企業の成功にとって製品のサンプリング及びスクリーニングが効率的に行えることは非常に重要である。パーソナルケア用の組成物の場合、サンプリング及びスクリーニングのコストは分析にかかる時間と、適正な分析に必要な製品の体積の両方に依存する。したがってコストを低減し、販売までの速度を増すためには小体積の液体パーソナルケア組成物をサンプリング及びスクリーニングすることが望ましい。今日市販されているパーソナルケア組成物には多岐にわたる成分が含まれている。したがって、小さな体積の液体パーソナルケア組成物で適当なサンプルを得るには、極めて効率的な混合技術が必要とされる。
【0003】
液体組成物を混合するためのピッチブレードタービン(PBT)型のインペラが知られている。PBTは広範な範囲の大きな又は小さな体積の液体を混合するために使用することができる。一般にインペラの回転速度は混合能力を維持するために液体の体積が減少するにしたがって増大する。低粘度の組成物が高速度で混合されると、液体組成物は液体の渦及び旋回による空気混入の影響を受ける恐れがある。渦の発生を防止するため、系内にしばしばバッフルが導入される。しかしながら、バッフルによって混合槽中に「死角(dead zones)」が生じ、効率的な混合が妨げられてしまう。系の体積が減少すると、PBTでは液体組成物を効果的に混合するために回転速度を増大させる必要がある。したがって、PBTが比較的小さな体積の系で用いられる場合、空気混入及び渦の発生の問題は大きな問題となる。
【0004】
液体組成物を混合する各種の他のタイプのインペラも知られている。こうしたインペラとしては、改変パドル型ミキサー、アンカー型ミキサー、リボン型ミキサー、及びヘリカル型ミキサーが挙げられる。特定のタイプの攪拌機を選択する上で考慮される幾つかの要因の1つとして、混合される液体組成物の粘度がある。低粘度の組成物を混合するにはPBTが一般に好ましい。これに対し、高粘度の液体を混合する目的ではヘリカル型のミキサーが一般に使用される。ヘリカル型ミキサーが大量生産において使用される場合、ヘリカル型ミキサーは他のタイプのミキサーと比較して低粘度の液体には望ましくないことが示されている。これはずり減粘する液体において特にあてはまる。ヘリカル型ミキサーは低粘度の液体を上から下まで混合するには不充分又は非効率であると一般に考えられている。充分な混合は、小体積の実験サンプルにおける配合が、大量生産設備における結果と一致又は結果を予測していると仮定するためには非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、PBT型ミキサーに伴う難点を生じることなく、小体積の低粘度の液体組成物を充分に混合する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1つ以上の液体組成物を混合するための方法であって、
a.前記1つ以上の液体組成物用の、約10mL〜約200mLの容量を有する1つ以上の容器を与える工程と、
b.前記1つ以上の容器に前記1つ以上の液体組成物を充填する工程と、
c.前記組成物をヘリカル型ミキサーで約10rpm〜約750rpmの速度で攪拌する工程と、
を含み、
前記1つ以上の液体組成物の少なくとも1つは約0.5Pa・s〜約20,000Pa・sの粘度を有する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書の末尾には本発明を詳細に指し示し、個別に特許請求する特許請求の範囲が添付されているが、本発明は以下の説明からより明確に理解されるものと考えられる。
【0008】
本明細書で云う「ずり減粘」とは、剪断速度とともに粘度が低下する物質を意味する。
【0009】
本明細書で云う「ずり増粘」とは、剪断速度とともに粘度が増大する物質を意味する。
【0010】
本明細書で云う「ヘリカル型ミキサー」とは、各混合要素の前縁がその前の要素の後縁に対して垂直であるような一連の混合要素を備えるミキサーを意味する。各混合要素は、約180°の螺旋状の捩じれ部分が所望の長さだけ繰り返す構成となっている。ヘリカル型ミキサーは当該技術分野では周知のものであり、好ましいヘリカル型ミキサーの1タイプがフォーシュナー(Forschner)に付与された欧州特許第0,515,852号に述べられている。
【0011】
本明細書で云う「高スループットスクリーニング」とは、効率的な、通常は自動化されたプロセスによって多数の製品配合物をサンプリング及び評価する方法を意味する。こうしたプロセスは一般的に、従来の分析方法に対して時間及びコストが節約できるとされている。
【0012】
本明細書で云う「死角」とは、液体組成物の運動、攪拌、又は混合が液体組成物全体に対して低減している容器内の領域を意味する。
【0013】
本明細書で云う「充填する」とは、製品又は組成物を容器内に移すことを意味する。容器が「充填された」とみなされるには、必ずしも容器の容量に達する必要はない。
【0014】
本文書に記載される本発明の各態様及び実施形態は、比較的小さい体積に対してヘリカル型ミキサーを使用して低粘度の液体組成物を混合することに関連する多くの利点を有するものである。例えば、PBT型ミキサーに関連する上記の難点の多くは、小さい体積に対してヘリカル型ミキサーを用いることによって回避されることが示されている。ヘリカル型ミキサーは周知のものであるが、高粘度の組成物でかつ大きな体積での使用が適当であることが知られている。したがって、ヘリカル型ミキサーが比較的小さい体積に使用される場合に非常に望ましい混合が行われることは更なる知見であり、これは大きな体積で同等の効率で再現することはできないものである。
【0015】
容器
本方法では先ず、混合すべき液体組成物用の、1つ以上の容器を与える。容器は約10mL〜約200mL、より好ましくは約20mL〜約100mL、最も好ましくは約30mL〜約50mLの容量を有する。小さい体積で混合することによって、PBT型のミキサーに関連する上記の難点の多くが回避されることが示されている。容器は例えば、カップ、円筒又は円錐形状に似たものでよい。ヘリカル型ミキサーの最大表面積を容器の壁に近接させるには丸底のカップが最も好ましい。ブレードが容器の壁に近接する場合に上から下までの最適な混合が行われることが示されている。更に、こうした容器の設計により、容器がこうした設計を有さない場合にブレードによって攪拌されない隅及び辺縁において死角が形成されることが防止される。更に、こうした構成により、組成物と容器壁との間の均一な熱移動が維持されることから組成物全体にわたる安定性及び稠度が促進される。
【0016】
容器の充填
本方法の第2の工程は上記の容器を1つ以上の液体組成物で充填することである。複数の液体組成物の場合、各組成物は異なる稠度を有し得る。組成物としては、例えば、クリーム及びソースなどの食品、工業用の液体、洗濯用洗剤、及び柔軟仕上げ剤、又はパーソナルケア用の組成物がある。好ましくは組成物はパーソナルケア組成物である。前記1つ以上の液体組成物は、場合に応じて固体又は半固体材料と混合して分散液又は懸濁液を形成してもよい。
【0017】
容器に液体組成物を充填する方法は当該技術分野では周知であり、いずれのこうした方法も本方法に適当である。
【0018】
一実施形態では、1個よりも多い容器を高スループットスクリーニング又は実験プロセスの一部において同時に又は連続して充填する。高スループットの実験法及びスクリーニング技術についてはロッゲン(Roggen)らに付与された米国特許公報第2002/0019009号、及びクリス・ホーキンス(Chris Hawkins)による高スループット実験法(High Throughput Experimentation)(2004年7月)に述べられている。
【0019】
組成物の攪拌
本方法の第3の工程はヘリカル型ミキサーを使用して組成物を混合又は攪拌することである。
【0020】
通常、低又は中程度の粘度を有する液体を混合するには、壁から一定の距離を置いて配置される梁形のブレードを有する混合要素を使用する。梁形ブレードには一般にプロペラ型のブレード及びPBT型のブレードが含まれる。これらの要素は大規模な体積の液置を攪拌する場合に効果的に機能する。より小さい体積では液体材料を充分に混合するにはより高い混合速度が通常必要とされる。しかしながら、混合速度を増大させると混合される組成物に悪影響を及ぼし得る。これまで、ヘリカル型ミキサーは高粘度の液体組成物が用いられる用途に限定して使用されてきたが、小体積の組成物の混合速度を増大させることに伴う難点を解決する上で、ヘリカル型ミキサーは低粘度の液体組成物を、低回転速度(回転/分(rpm))かつ小体積で効果的に攪拌することが見出された。
【0021】
本明細書で述べるヘリカル型ミキサーは、それぞれ2個の同心円状の半楕円によって画定される2個の攪拌ブレードを好ましくは備える。こうしたヘリカル型ミキサーは当該技術分野では周知である。好ましいヘリカル型ミキサーの設計についてはフォーシュナー(Forschner)に付与された欧州特許第0,515,852号に述べられている。この好ましいヘリカル型ミキサーは、モーター駆動可能なシャフトに連結されるとともに内側及び外側の周縁部を有する平らな環状セグメントの形状を有する、少なくとも1個の攪拌ブレードを備えた少なくとも1個の攪拌要素を備え、各攪拌ブレードの内側及び外側周縁部は楕円の一部によって形成され、攪拌ブレードはその中央部において最も小さな幅を、その端部において最も大きな幅を有している。こうしたヘリカル型ミキサーは空気の混入及び渦の発生を最小に留めつつ上から下までの極めて望ましい混合を実証するものである。混合ブレードは、容器内へと下方に延びるか、容器の基部から上方に延びる攪拌シャフトに取り付けることができる。好ましくは混合ブレードが容器の基部から上方に延びるシャフトに取り付けられることで、混合された製品を上からサンプリングすることが容易となる。
【0022】
上記に述べたように液体系の体積が減少するにしたがい、充分な混合を行うためには公知の混合用インペラでは混合速度を増大させなければならない。これにより、組成物のずりの変化、空気混入、及び製品の上から下までの不充分な混合につながる。梁形ブレードは当該技術分野では一般に好ましいものであるが、小体積及び低回転速度(rpm)ではヘリカル型ミキサーによって極めて望ましい混合効果が得られることが予期せずして見出された。具体的には、本明細書で前述した容器の小体積では、ヘリカル型ミキサーは約10rpm〜約750rpm、より好ましくは約20rpm〜約500rpm、最も好ましくは約25rpm〜約200rpmの回転速度を有する。重要な点として、ヘリカル型ミキサーが比較的低い回転速度(rpm)で最適な混合を実現する能力は、PBT及び梁形の混合ブレード一般に伴う渦の発生及び空気の混合を抑制するという利点を有する。更に、ヘリカル型ミキサーによる低い回転速度(rpm)における最適な混合によって、容器内の液体は、より大きな体積において通常見られるものにより近いせん断速度分布に晒されることになる。これにより、エマルジョンの形成及びサイズなどが、より一致したプロセス転換の利点が与えられる。副次的な利点として、本明細書で記載される低い回転数(rpm)では系にバッフルを導入する必要がなくなる。
【0023】
スクリーニング法の一部として小体積の複数のサンプルを試験するため、自動化されたプロセスによって多数のサンプルを同時又は連続して混合することも考えられる。
【0024】
液体の粘度
有用な液体組成物は約0.5Pa/s〜約20,000Pa・s、より好ましくは約0.5Pa・s〜約5000Pa/s、最も好ましくは約0.5Pa/s〜約2000Pa・sの粘度を有する。前述したように、ヘリカル型ミキサーは通常、高粘度の液体組成物用に使用される。これは粘度が高くなるにつれて、組成物のすべての領域が連動しなくなるのを一般的に補償するためである。ヘリカル型ミキサーのブレードは、梁形ブレードを有するミキサーと比較してこうした組成物の混合においてより高い効率を示す。
【0025】
本方法の攪拌工程では多くの液体組成物で粘度が変化し得る点を認識することも重要である。こうした変化は、プロセス中に組成物のテクスチャ−及び粘度を改変する成分が液体組成物に添加される場合に生じる。こうした変化はずり減粘及びずり増粘組成物において特に生じる。パーソナルケア組成物は一般にずり減粘性のため、好ましい変化である。したがって前述の粘度範囲は、粘度が攪拌工程の際の剪断応力に依存するずり減粘及びずり増粘組成物の両者に当てはまる。上記の記載に基づけば、前述の粘度範囲は粘度が攪拌工程のいずれかの時点において前述の範囲となる液体組成物に当てはまるものである。
【0026】
前述したように、ずり減粘性及びずり増粘性の液体の粘度は異なる剪断速度で一定ではない。ずり減粘性の液体では、剪断速度が高くなると見かけ粘度は低くなる。こうした変化を説明するため、流動学的流量曲線から異なる剪断速度における粘度を求めた。TA AR−2000レオメーターを使用して3分間にわたって0.1〜300/sの剪断速度を測定した。測定は25℃で行った。一般的な試験は、円錐及びプレートの形状を用いて行い、その際の円錐は直径4cm、角度が2°であり、約150ミクロンの間隙を有する。
【0027】
本明細書に開示される寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ特に断らない限り、こうした寸法はそれぞれ記載された値及びその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものである。例えば「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味するものである。
【0028】
本発明の「発明を実施するための形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に援用するが、いずれの文献の引用もそうした文献が本発明に対する先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。本書における用語の任意の意味又は定義が、援用文献における同一の用語の任意の意味又は定義と相反する限りにおいては、本書においてその用語に与えられた意味又は定義が優先するものとする。
【0029】
以上、本発明の特別な実施形態を図示、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び改変を実施できることは当業者には自明であろう。したがって本発明の範囲に包含されるこうした変更及び修正はすべて付属の特許請求の範囲で網羅するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の液体組成物を混合するための方法であって、
a)前記1つ以上の液体組成物用の、約10mL〜約200mLの容量を有する1つ以上の容器を準備する工程と、
b)前記1つ以上の容器に前記1つ以上の液体組成物を充填する工程と、
c)前記液体組成物をヘリカル型ミキサーで約10rpm〜約750rpmの速度で攪拌する工程と、
を含み、
前記1つ以上の液体組成物のうち少なくとも1つが約0.5Pa・s〜約20,000Pa・sの粘度を有する方法。
【請求項2】
前記1つ以上の容器が約30mL〜約50mLの容積容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の液体組成物がパーソナルケア組成物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の容器がそれぞれ攪拌シャフトを備え、前記攪拌シャフトが前記1つ以上の容器の底部から上方に延びる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘリカル型ミキサーが約25rpm〜約200rpmの速度で回転する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の液体組成物が約0.5Pa・s〜約5,000Pa・sの粘度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の液体組成物が約0.5Pa・s〜約2,000Pa・sの粘度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘリカル型ミキサーが、モーター駆動可能なシャフトに連結されるとともに内側及び外側の周縁部を持つ平らな環状セグメントの形状を有する少なくとも1個の攪拌ブレードを備えた少なくとも1個の攪拌要素を備え、各攪拌ブレードの前記内側及び外側の周縁部は楕円の一部によって形成され、前記攪拌ブレードはその中央部において最小の幅、及びその端部において最大の幅を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の容器が、高スループットのスクリーニング又は実験プロセスの一部として充填される1つ以上の容器を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523332(P2010−523332A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503659(P2010−503659)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051827
【国際公開番号】WO2008/135955
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】