説明

液体計量装置

【課題】 構造簡単でありながら正確な計量を反復して行え、又、計量値の変更設定も可能となる計量装置を提供する。
【解決手段】 試薬タンク17内の薬液を吸引して吐出する第1チューブポンプ18と、この第1チューブポンプ18の吐出側流路21に吸引口19aが接続された第2チューブポンプ19とを備えて液体計量装置を構成する。第チューブポンプ18の吐出側流路21のうちの、第2チューブポンプ19の吸引口19a部分から排出口21aまでの間の流路容積が目的とする計量値に相当する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、試薬等の液体を計量して供給する動作を反復して行える液体計量装置に係り、詳しくは、簡単な構造で連続して計量できるようにする技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の液体計量装置としては、ニューマティック式のものと固定式のものとがあり、夫々の構造は次の様である。
(ニューマティック式)
これは、図3に示すように、密閉型の試薬タンク1内の底付近に一端を位置させ、かつ、他端を計量器2内に位置させた送り管3と、試薬タンク1内に一端を位置させ、かつ、他端を計量器2内に位置させたエアー供給管4と、計量器2内の底付近に一端を位置させ、かつ、他端をフラスコ5内に位置させた計量管6とを備えるとともに、エアー供給管4の途中にエアーポンプ7を接続し、その接続箇所の両側におけるエアー供給管4に開閉弁8,9を配置した構造である。
【0003】
先ず、計量器2側の第1開閉弁8を閉じ状態に、かつ、試薬タンク側の第2開閉弁9を開き状態に夫々操作し、それからエアーポンプ7を駆動して試薬タンク1内に強制的に空気を送り込むことにより、試薬タンク内の薬液を送り管を通して計量器2に供給する。計量器2に送り込まれた薬液が所定量に達すると第2開閉弁9を閉じるとともにエアーポンプ7を停止し、計量器2への薬液供給を迅速に止める。次に、第1開閉弁8のみ開き状態にしてからエアーポンプ7を駆動することにより、計量器2内に溜められた所定量の薬液の全部がフラスコ5に移送され、計量された所定量の薬液を得ることができるのである。
(固定式)
これは、図4に示すように、試薬タンク10と上端部に漏れ口11aを備えた計量器11と、試薬タンク10内の薬液を計量器11の下端部に供給するポンプ12と、ポンプ12の吐出側流路13における計量器11の下方に配置した電磁式等による三方弁14と、漏れ口11aから溢れ出た薬液を試薬タンク10内に戻す戻り管15と、三方弁14からの薬液をフラスコ5に供給する供給管16とを備えて構成されている。
【0004】
先ず、三方弁14を、上部吐出側流路13Aと下部吐出側流路13Bとのみが連通接続される状態に操作してからポンプ12を駆動し、試薬タンク10内の薬液を計量器11に下方から供給する。供給された薬液が漏れ口11aから溢れ出すまで充填されたらポンプ12を停止し、それから三方弁14を、上部吐出側流路13Aと供給管16とのみが連通接続される状態に操作することにより、落差による重力によって計量器11に溜められた薬液の全部がフラスコ5に移送され、計量された所定量の薬液を得ることができる。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
前記前者の手段では、計量値を任意に変更設定できるとか、薬液が開閉弁を通らないのでリークや錆混入おそれが無いといった長所はあるが、・配管が長く複雑になり、コストや装置配設スペースが大となる・試薬タンクに密閉性が必要であり高価である・計量器の断面積が比較的広いので、計量精度の点で不利である・空気圧による薬液押出し式のため、薬液残量によって計量時間が異なる等の短所があった。
【0006】
又、前記後者の手段では、前記前者の計量装置に比べて構造が簡単であり、コストや装置配設スペースの点で有利であるという長所はあるが、・所定量が一義的に決まるので、計量値に合わせた計量器の製作が必要である・計量された薬液を落差で供給する構造のため、レイアウト自由度が少ない・三方弁内を通過するので薬液の汚染おそれがあり、又、弁内の液溜まり(所謂、コンタメ部)により、計量精度に悪影響が出易いという短所があった。
【0007】
つまり、いずれの手段でも改善の余地が残されているものであるため、本考案は、構造簡単でありながら正確な計量を反復して行え、又、計量値の変更設定も可能となる計量装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
第1考案は、液体計量装置において、タンク内の液体を吸引して吐出する第1チューブポンプと、この第1チューブポンプの吐出側流路に吸引口が接続された第2チューブポンプとを備えたことを特徴とする。
【0009】
第2考案は、第1考案において、第1チューブポンプを所定時間駆動して停止させた後に、第2チューブポンプを駆動するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第3考案は、第1又は第2考案において、第1チューブポンプの吐出側流路の排出口をタンク内に配置してあることを特徴とする。
〔作用〕
チューブポンプは、詳しくは実施形態の項において説明するが、チューブ自体の撓み変形を利用しての正圧によって液体を送り出すとともに、それによって生じる負圧によって液体の吸引を行う自吸式であり、所謂呼び水を必要としない。
ポンプを停止させるとそのポンプ部分においてチューブ内空間が遮断される状態となるので、吸引側及び吐出側の双方におけるチューブ内の液体の動きが制動される特徴を備えている。すなわち、ポンプを停止すれば、そのときの吸引側及び吐出側のチューブ内に存在する液体は、チューブから漏れ出ることなくそのままの状態でチューブ内に保持されるようになる。
【0011】
しかして、請求項1の構成によれば、第1チューブポンプを駆動すれば、タンク内の液体を吸引して吐出側流路に液体を供給することができ、第2チューブポンプを駆動すれば、第1チューブポンプの吐出側流路における第2チューブポンプの吸引口接続部分から吐出口までの間に存在する液体を吸引して吐出することができる。加えて、第1チューブポンプの吐出側流路における吸引口接続部分から吐出口までの容積を計量用の所定量に設定してあるから、第1チューブポンプを駆動してその吐出側流路に液体を充填してから第2チューブポンプを駆動することにより、所望量の液体を計量して供給できるようになる。
【0012】
計量値を変更するには、第1チューブポンプの吐出側チューブ長さを変更する等、吐出側流路の容積を変更するだけで良いとともに、タンクには密閉性が必要なく、その他には2個のチューブポンプ、及びこれらに接続されるチューブを用意するだけの簡単な構造で済むものとなる。又、チューブポンプには弁部分が存在しないので、リークや異物混入による汚染が生じない点も好ましい。
【0013】
請求項2の構成によれば、第2チューブポンプから所望の計量液体を得るための作動、すなわち、第1チューブポンプを駆動してその吐出側流路に液体を充填してから第2チューブポンプを駆動すること、が自動的に行われるようになり、スイッチを入れるといった単純な操作指令を行うだけで、2個のチューブポンプを連係させての一連の計量作動を行わせることができるようになる。
【0014】
請求項3の構成によれば、第1チューブポンプの吐出側流路の排出口をタンク内に配置してあるので、第1チューブポンプの駆動によってその吐出側流路から溢れ出た液体はタンク内に還元できるようになり、他の容器に回収させる場合に比べて、余分な容器が不要になるとともに、タンク内液体を有効に計量用として用いることができる。
【0015】
〔効果〕
請求項1〜3のいずれに記載の液体計量装置でも、チューブポンプを2段重ねに接続して用いる工夫により、構造簡単で配設スペースが小で済み、レイアウトに融通が効くようにしながら、装置通過に伴う液体の汚染おそれのない好ましい状態で、正確な計量を繰り返し行える優れたものとして提供できるに至った。
【0016】
請求項2に記載の液体計量装置では、第1チューブポンプを必要となる時間だけ駆動することになり、無駄な駆動時間が減らせて計量作動効率が向上する利点がある。
【0017】
請求項3に記載の液体計量装置では、タンク内の薬液を計量用として無駄無く使用できる利点がある。
【0018】
【考案の実施の形態】
以下に、本考案の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に試薬計量装置が示され、17は試薬タンク、18は試薬タンク17内の薬液を吸引して吐出する第1チューブポンプ、19は第1チューブポンプ18の吐出側流路21に吸引口19aが接続された第2チューブポンプ、20は第2チューブポンプ19から吐出された薬液を受け止めるフラスコである。
【0019】
第1チューブポンプ18の吸引側流路22の下端は、試薬タンク17の底付近に配置され、吐出側流路21は螺旋状に形成されるとともに、その下端の排出口21aを試薬タンク17内に臨設させてあり、余剰の薬液は試薬タンク17内に還元されるようにしてある。第チューブポンプ18の吐出側流路21のうちの、第2チューブポンプ19の吸引口19a部分から排出口21aまでの間の流路容積を計量のための目的とする所定量に設定してある。
【0020】
この薬液計量装置による計量操作は次のようである。先ず、第1チューブポンプ18のみ駆動し、薬液が吐出側流路21内を充填して排出口21aから溢れ出たら停止する。次に、第2チューブポンプ19のみを駆動して、吐出側流路21に溜められた薬液をフラスコ5内に排出し、吸引口19a部分から排出口21aまでの間に溜められた薬液全部がフラスコ5内に排出されて空駆動状態になれば、フラスコ5に所定量の薬液が計量されたことになるのであり、空駆動状態になると第2チューブポンプ19を停止する。
【0021】
第1チューブポンプ18の吐出側流路21の排出口21aを試薬タンク17内に配置してあるので、第1チューブポンプ18の駆動によってその吐出側流路21から溢れ出た薬液は試薬タンク17内に還元できるようになり、他の容器に回収させる場合に比べて、余分な容器が不要になるとともに、試薬タンク17内の薬液を有効に計量用として用いることができる。
【0022】
ここで、チューブポンプ18(19)の構造を概略説明する。チューブポンプ18は、3個の扱きローラ25が均等間隔で配置された回転体23と、扱きローラ25に扱かれる位置に配置された可撓性を備えたチューブ24と、チューブ24の外側に同心円周に沿って配置された一定幅の凹面26とで構成されている。
つまり、図2(イ),(ロ),(ハ)に示すように、均等配置されて回転する複数のローラ15と凹面26との間でチューブ18を扱きながら移動することにより、連続的に液体を定量移送する構造である。
【0023】
扱きローラ25の個数、その配置半径、回転体23の回転速度、或いはチューブ24の内径等の各要素を変更することにより、単位時間当たりの液体供給量を任意に設定することが可能である。液体はチューブ内を移動するだけであるので汚染されず、かつ、ポンプも汚れないとともに、グランド、シール、弁が無いので、弁漏れやシール漏れ等のリークが生じない特長を備えている。
【0024】
本考案による薬液計量装置では、計量値を変更するには、吐出側流路21のうちの、第2チューブポンプ19の吸引口19a部分から排出口21aまでの間の流路容積を変更すれば良いのであるが、前述したように、吸引側流路22と吐出側流路21とは単一のチューブ24で構成されているので、チューブ24を異なる長さのものに取換えるか、或いは、回転体23との接触を解除して、チューブ24と回転体23との接触箇所をチューブ長手方向にずらせば良い。尚、各チューブを四フッ化樹脂として、優れた耐薬品性を持たせることが可能である。
【0025】
又、第1チューブポンプ18の駆動開始から、排出口21aから薬液が溢れ出るまでに要する時間を第1所定時間(請求項2の所定時間のことである)として設定し、かつ、第2チューブポンプ18の駆動開始から、吸引口19a部分から排出口21aまでの間に溜められた薬液全部がフラスコ5内に排出されて空駆動状態になるに要する時間を第2所定時間として設定し、第1チューブポンプ18の第1設定時間の駆動の後の第2チューブポンプ19の第2所定時間の駆動を1サイクルとして、これを繰り返すように制御すれば、計量作動を反復して(連続して)行わせることが可能である。
【0026】
〔別実施形態〕
第1チューブポンプ18の吐出側流路21に、筒タンク等の大径の管体を接続すれば、大容量の計量を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による薬液計量装置の構造を示す系統図。
【図2】チューブポンプの作動原理を示す作用図。
【図3】ニューマティック式の液体計量装置の構造を示す系統図。
【図4】固定式の液体計量装置の構造を示す系統図。
【符号の説明】
17 タンク
18 第1チューブポンプ
19a 吸引口
19 第2チューブポンプ
21 吐出側流路
21a 排出口

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 タンク内の液体を吸引して吐出する第1チューブポンプと、この第1チューブポンプの吐出側流路に吸引口が接続された第2チューブポンプとを備えて成る液体計量装置。
【請求項2】 前記第1チューブポンプを所定時間駆動して停止させた後に、前記第2チューブポンプを駆動するように構成してある請求項1又は2に記載の液体計量装置。
【請求項3】 前記第1チューブポンプの吐出側流路の排出口をタンク内に配置してある請求項1又は2に記載の液体計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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